(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6108580
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】天井施工用ハンガー
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20170327BHJP
E04B 9/20 20060101ALI20170327BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20170327BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
E04B9/18 L
E04B9/20 C
F16B1/00 A
F16B2/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-117300(P2016-117300)
(22)【出願日】2016年6月13日
【審査請求日】2016年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167211
【氏名又は名称】イイファス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝夫
【審査官】
多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−044459(JP,A)
【文献】
特開平07−207809(JP,A)
【文献】
特開2013−057216(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3200385(JP,U)
【文献】
特開2000−009127(JP,A)
【文献】
特開2005−036940(JP,A)
【文献】
実開昭52−035466(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B9/00−9/36
F16B1/00、2/10、39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造体に支持された吊りボルトに対して長尺状の野縁受けを水平に吊り下げるための天井施工用ハンガーであって、
前記野縁受けを嵌め入れる嵌入手段と、この嵌入手段に嵌め入れられた野縁受けを固定する固定手段とを有し、
前記嵌入手段は、ボルト挿通孔が形成された上板部と、この上板部から下方向に延出されるとともにその下端側を略水平かつ外側方向に折り曲げ、さらにその先端側を略垂直上方向に折り曲げることにより前記野縁受けを嵌め入れ可能に上方向が略凹状に開口してなる嵌入凹部とを有し、
前記固定手段は、前記嵌入凹部の一端部を基端として上下方向に開閉揺動可能に連結された揺動連結部と、この揺動連結部が閉じる方向に揺動した際に前記嵌入凹部に嵌め入れられた野縁受けを固定する固定部と、この固定部から上方に延出されるとともにその先端側が折り曲げられており前記固定部が前記野縁受けを固定する位置に配置された際に前記上板部の上面に重なり合う固定部側上板部とを有し、
前記固定部は、前記嵌入凹部の上方開口面を塞ぐとともに、前記嵌入凹部に嵌め入れられた野縁受けを上方から押さえて固定しうるように、前記揺動連結部に対して略直角方向に折り曲げられて形成されている、前記天井施工用ハンガー。
【請求項2】
前記嵌入手段の前記上板部の下面には、前記吊りボルトに螺合可能であって野縁受けの高さレベルの調整が可能なナットが予め前記ボルト挿通孔と同軸上に回転自在に取り付けられている、請求項1に記載の天井施工用ハンガー。
【請求項3】
前記固定部側上板部には、前記上板部に重なった際に吊りボルトを嵌入しうる切り欠きが形成されており、この切り欠きの縁部には、上方に屈曲されており、この上方に屈曲されていた状態から前記固定部側上板部に沿った真っ直ぐな状態に変形した際に、その先端が吊りボルトのねじ谷部に食い込むように係合して前記固定部側上板部の上下動を規制するボルト係合片が形成されている、請求項1または請求項2に記載の天井施工用ハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造体に支持された吊りボルトに対して長尺状の野縁受けを水平に吊り下げるための天井施工用ハンガーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造体において天井材は、一般的に、次のような構成で支持されている。
【0003】
まず、建築構造体には、吊りボルト控用インサートまたはアンカー等が設置されており、吊りボルトに対して複数本の長尺状の野縁受けが水平に支持されている。また、これら野縁受けの下方には天井施工用クリップを介して直交するように複数本の長尺形状の野縁が取り付けられている。そして、天井材は、複数本の前記野縁にビス等により固定されている。
【0004】
天井施工用ハンガーは、吊りボルトに対して長尺状の野縁受けを水平に吊り下げるための部材であり、その一部を吊りボルトに挿通させ上下のナットにより挟持することで設置される。そして、下端側の略凹状に形成された嵌入凹部に野縁受けを嵌入させることで野縁受けを支持するようになっている。このとき、吊りボルトに設置する際の下側のナットの位置を調整することで野縁受けの高さレベルが調整できるようになっている。
【0005】
しかし、天井施工用ハンガーは、設置個数が多いため、レベル調整を均一にするのが困難である。そのため、部分的な天井施工用ハンガーに野縁受け等による荷重負荷が集中してしまい、前記嵌入凹部が集中荷重に耐えきれず広がってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、これまでに嵌入凹部を広がり難くするため、特開平7−207809号公報では、野縁受けを嵌め入れる嵌入凹部の外側壁部上端に切欠溝を形成し、本体部には、上下方向に延びる支持部片およびこれの上端部の係止部片からなる受け部広がり阻止片を形成する切り込みを、前記支持部片の下端部を切り残した状態に形成し、前記受け部広がり阻止片を本体部の表側へ引き起こすことによって、その係止部片を切欠溝に係止させ得るように構成した、天井施工用ハンガーに関する発明が提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、天井施工用ハンガーについてはJIS規格(JIS A 6517)が定められており、当該天井施工用ハンガーによる野縁受けの取り付け方法は学会等において様々な規定や方針が定められている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−207809号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】文部科学省、「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」、[online]、平成25年8月、文部科学省、[平成28年3月16日検索]、インターネット<URL:http://www.nier.go.jp/shisetsu/pdf/ceiling_all.pdf>
【非特許文献2】日本耐震天井施工協同組合、「耐震Power天井(RPクリップ仕様)施工要領書」、[online]、2012年4月27日、日本耐震天井施工協同組合、[平成28年3月16日検索]、インターネット<URL:http://www.jacca.or.jp/download-gc/doc/001_taishin_Power_tenjo.pdf>
【非特許文献3】日本建築学会 非構造材の安全評価及び落下事故防止に関する特別調査委員会、「天井等の非構造材の落下事故防止ガイドライン」、[online]、2013年4月4日、日本建築学会、[平成28年3月16日検索]、インターネット<URL:http://www.aij.or.jp/scripts/request/document/20130304.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、受け部広がり阻止片を切欠溝に係止させるに当たり、係止が不十分であったり、地震による振動、室内外の温度差により出入口開口時の生じる風圧による天井の上下の揺れ等、種々の振動を受けることにより、前記受け部広がり阻止片が前記切欠溝から外れてしまうという問題がある。
【0011】
そのため、受け部広がり阻止片の係止作業を慎重に行う必要があるが、現状、天井に対する天井施工用ハンガーの設置個数が非常に多く、しかも単純作業であるため迅速に作業することも求められることから、不確実な施工が行われ易い。また、天井材を野縁に貼ると天井施工用ハンガーの施工状態が隠れてしまい目視できなくなるため、不確実な施工が行われたとしてもその瑕疵を事前に見つけることは困難である。
【0012】
また、JIS規格(JIS A 6517)では、吊りボルトには吋規格の3/8ウイットねじを用いることとされているところ、許容範囲を考慮して外径9.0mm〜9.1mmのボルトが使用されている。これに対して、ナットは吋規格の3/8−16ウイットねじを用いることとなり、このナットはミリ単位に換算すると谷の径が9.525mmであることから、吊りボルトとナットとの間に比較的大きな隙間が生じ、振動等によって直ぐに弛むという問題もある。
【0013】
よって、非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3等の規定や方針が定められているものの、熟練施工者の人手不足もあって天井施工用ハンガーの破損による天井材の落下事故が後を絶たない。
【0014】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、耐震性が高く、かつ熟練を要さずに確実な施工を能率良く行うことのできる、天井施工用ハンガーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る天井施工用ハンガーは、建築構造体に支持された吊りボルトに対して長尺状の野縁受けを水平に吊り下げるための天井施工用ハンガーであって、前記野縁受けを嵌め入れる嵌入手段と、この嵌入手段に嵌め入れられた野縁受けを固定する固定手段とを有し、前記嵌入手段は、ボルト挿通孔が形成された上板部と、この上板部から下方向に延出されるとともにその下端において前記野縁受けを嵌め入れ可能に上方向が略凹状に開口してなる嵌入凹部とを有し、前記固定手段は、前記嵌入凹部の一端部を基端として上下方向に開閉揺動可能に連結された揺動連結部と、この揺動連結部が閉じる方向に揺動した際に前記嵌入凹部に嵌め入れられた野縁受けを固定する固定部と、この固定部から上方に延出されるとともにその先端側が折り曲げられており前記固定部が前記野縁受けを固定する位置に配置された際に前記上板部の上面に重なり合う固定部側上板部とを有する。
【0016】
また、本発明の一実施形態として、前記上板部の下面には、前記吊りボルトに螺合可能なナットが前記ボルト挿通孔と同軸上に回転自在に取り付けられていてもよい。
【0017】
さらに、本発明の一実施形態として、前記固定部側上板部には、前記上板部に重なった際に吊りボルトを嵌入しうる切り欠きが形成されており、この切り欠きの縁部には、上方に屈曲させてなるボルト係合片が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐震性が高く、かつ熟練を要さずに確実な施工を能率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る天井施工用ハンガーの第一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本第一実施形態の天井施工用ハンガーを示す斜視図である。
【
図3】本第一実施形態の天井施工用ハンガーを用いた野縁受けの取り付け方法を示す正面図である。
【
図4】本第一実施形態の天井施工用ハンガーの使用状態を示す正面図である。
【
図5】本発明に係る天井施工用ハンガーの第二実施形態の使用状態を示す(a)正面図および(b)右側面図である。
【
図6】本第二実施形態の天井施工用ハンガーを用いた野縁受けの取り付け方法を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る天井施工用ハンガーの第一実施形態について図面を用いて説明する。
【0021】
天井施工用ハンガー1Aは、
図1に示すように、建築構造体に支持された吊りボルト10に対して長尺状の野縁受け11を水平に吊り下げるためのものである。本第一実施形態における天井施工用ハンガー1Aは、プレス加工による順送金型で容易に製造されるものであり、
図2に示すように、主に、野縁受け11を嵌め入れる嵌入手段2と、この嵌入手段2に嵌め入れられた野縁受け11を固定する固定手段3とから構成されている。以下、各構成について説明する。
【0022】
嵌入手段2は、野縁受け11を嵌入保持して吊りボルト10に対して水平に支持するものであり、
図2に示すように、上端側の上板部21と、この上板部21から下方向に延出された嵌入凹部22とを有している。
【0023】
上板部21は、略矩形板状に形成されており中央に吊りボルト10を挿通させるボルト挿通孔23が形成されている。また、上板部21の下面には、前記吊りボルト10に螺合し得るナット24が前記ボルト挿通孔23と同軸上に回転自在に取り付けられている。
【0024】
嵌入凹部22は、野縁受け11を嵌め入れるものであり、その下端において野縁受け11を嵌め入れ可能に上方向が略凹状に開口されている。具体的には、
図2ないし
図4に示すように、上板部21の一縁部を略垂直下方向に折り曲げて延出されているとともに、その下端側を略水平かつ外側方向に折り曲げ、さらにその先端側を略垂直上方向に折り曲げることにより形成されている。
【0025】
また、前記嵌入凹部22の外側面には、後述する固定手段3の揺動連結部31を連結させるための連結掛止部25が形成されている。この連結掛止部25は、前記嵌入凹部22の外側面を外方向に膨出するように折り曲げられ、断面略台形状に形成されているとともに、前記揺動連結部31を上下方向に開閉揺動可能に掛止させる揺動掛止孔26が形成されている。また、前記揺動掛止孔26には、下方に向けて嵌入凹部22の底部まで縦長状に開口された挿入溝27が形成されており、前記揺動連結部31を連結する際に下方まで挿入できるようになっている。また、前記挿入溝27は、前記揺動連結部31を嵌入凹部22に対して直交させた状態で挿入する溝であるため、前記揺動連結部31の厚さよりも若干大きい幅に形成されている。
【0026】
次に、固定手段3について説明する。固定手段3は、嵌入手段2に嵌め入れられた野縁受け11を固定するものであり、
図2に示すように、上下方向に開閉揺動可能に連結された揺動連結部31と、嵌入凹部22に嵌め入れられた野縁受け11を固定する固定部32と、この固定部32から上方に延出されて上板部21の上面に重なり合う固定部側上板部33とを有する。
【0027】
揺動連結部31は、嵌入凹部22に形成された揺動掛止孔26および挿入溝27に直交させて挿入後、約90°回転させて連結掛止部25に掛止させることで、容易に嵌入手段2と固定手段3との組み立てができるようになっている。具体的には、先端側に前記連結掛止部25の裏側に掛止する掛止部34と、揺動掛止孔26に係合するくびれ部35とを有しており、固定手段3が揺動掛止孔26を中心に上下方向に開閉揺動可能とされている。
【0028】
また、当該掛止部34は、
図3に示すように、固定手段3が略水平に揺動されて嵌入凹部22が開いている状態では、その先端が嵌入凹部22の内側方向若干突出されている。
【0029】
次に、固定部32は、
図4に示すように、嵌入凹部22の上方開口面を塞ぐことにより前記嵌入凹部22に嵌め入れられた野縁受け11を上方から押さえて固定するためのものである。本第一実施形態では、揺動連結部31に対して略直角方向に折り曲げられて形成されている。
【0030】
固定部側上板部33は、固定部32による野縁受け11の固定状態を保持するためのものである。本第一実施形態では、前記固定部32から嵌入手段2の嵌入凹部22に沿うようにして上方に延出されるとともに、
図2および
図4に示すように、固定部32が野縁受け11を固定する位置に配置された際に上板部21の上面に重なり合うようにその先端側を略直角に折り曲げて形成されている。
【0031】
また、
図2に示すように、固定部側上板部33には、上板部21に重なった際に吊りボルト10を嵌入しうる切り欠き36が形成されている。この切り欠き36の縁部には、挿入された吊りボルト10のねじ谷部に食い込むように係合するボルト係合片37が形成されている。本第一実施形態では、
図2に示すように、前記切り欠き36の縁部に一対のスリットを切り込んで、それらスリット間の縁部を上方に屈曲させることにより形成されている。
【0032】
次に、本第一実施形態の天井施工用ハンガー1Aにおける各構成の作用について、取り付け方法とともに説明する。
【0033】
まず、
図3に示すように、天井施工用ハンガー1Aを固定するための上側ナット12を吊りボルト10に螺合させる。そして、吊りボルト10を上板部21のボルト挿通孔23に挿通させるとともに、上板部21の下面に取り付けられたナット24を螺合させる。
【0034】
次に、固定手段3を下方向に揺動させて嵌入凹部22の開口を開いた状態にし、野縁受け11を前記嵌入凹部22の開口側から挿入する。
【0035】
このとき、揺動連結部31における掛止部34の先端が嵌入凹部22の内方向に若干突出しているため、野縁受け11を嵌入凹部22に挿入すると、前記掛止部34の先端が前記野縁受け11の底面によって下方に押される。これにより、固定手段3は、揺動連結部31を基端として、てこのように上方向へ揺動する。
【0036】
固定手段3が上方向へ揺動し、
図4に示すように、固定部側上板部33が上板部21の上面に重なり合う位置まで揺動すると、固定部32が野縁受け11の上面を押さえるようにして当該野縁受け11を嵌入凹部22に固定する。
【0037】
次に、上板部21の下面に取り付けられたナット24を上下方向に適宜螺進させることによって、野縁受け11の高さレベルの調整を行う。そして、予め螺合させておいた上側ナット12を下方に螺進させることによって嵌入手段2の上板部21と固定手段3の固定部側上板部33とを共に挟持し、天井施工用ハンガー1Aを固定する。
【0038】
ボルト係合片37は、上側ナット12によって上板部21と固定部側上板部33とを挟持するのに伴い、上方に屈曲されていた状態から固定部側上板部33に沿った真っ直ぐな状態に変形し、その先端が吊りボルトのねじ谷部に食い込むように係合する。そのため、仮に上側ナット12が弛んでも固定部側上板部33は上下方向の動きが規制され、吊りボルト10に固定されたままの状態を保つ。
【0039】
以上のような本第一実施形態の天井施工用ハンガー1Aによれば、以下の効果を得ることができる。
1.上板部21および固定部側上板部33を上下のナット24,12で挟持することで、嵌入凹部22に嵌め入れられた野縁受け11を確実に固定することができる。
2.ボルト係合片37が吊りボルト10のねじ谷部に係合して固定されることで、固定部側上板部33が吊りボルト10から外れるのを防止することができる。
3.嵌入手段2と固定手段3とを一部材としたことから、部材管理が容易であるとともに、だれでも容易に取り付け作業を行うことができる。
【0040】
次に、本発明に係る天井施工用ハンガーの第二実施形態について
図5および
図6を用いて説明する。なお、本第二実施形態の天井施工用ハンガー1Bのうち、上述した第一実施形態の構成と同等または相当する構成については、再度の説明を省略する。
【0041】
本第二実施形態の天井施工用ハンガー1Bでは、前述した第一実施形態とは異なり、嵌入手段2の嵌入凹部22は、吊りボルト10が挿通されるボルト挿通孔23の真下に配置されるように形成されている。具体的には、
図5に示すように、上板部21の一縁部を略垂直下方向に折り曲げるとともに、その下端側を略水平かつ内側方向に折り曲げ、さらにその先端側を略垂直上方向に折り曲げることにより形成されている。
【0042】
また、本第二実施形態における固定手段3の固定部32は、嵌入凹部22側に突出するように形成されている。具体的には、
図5(b)に示すように、上下長尺状の固定部32のうち左右両側部において、上端部を切り残して略短冊状に形成した略L字状のスリットを形成し、これら一対のスリットを
図5(a)に示すように、嵌入凹部22側に折り曲げて突出するように形成されている。また、本第二実施形態では、固定部32に対向する嵌入凹部22にも内側方向に突出する突起部28が形成されている。
【0043】
そして、固定部側上板部33は、揺動連結部31に沿うように延出されており、その先端が略直角状に折り曲げられている。
【0044】
次に、本第二実施形態の天井施工用ハンガー1Bにおける各構成の作用について、取り付け方法とともに説明する。
【0045】
まず、
図6に示すように、第一実施形態と同様に、吊りボルト10に予め上側ナット12を螺合させる。そして、上板部21のボルト挿通孔23を吊りボルト10に挿通させ、その下面のナット24を吊りボルト10に螺合させる。
【0046】
次に、野縁受け11を嵌入凹部22の開口側から挿入する。このとき揺動連結部31の掛止部34が野縁受け11の底面によって下方に押されことに連動して、固定手段3が上方に揺動されて、固定部32が前記野縁受け11の上面に配置される。これにより、固定部32は、嵌入凹部22の突起部28とともに野縁受け11の上角部を上方から押さえつけるようにして、前記野縁受け11を確実に固定することができる。
【0047】
そして、固定部側上板部33は、嵌入凹部22とは吊りボルト10の軸に対して軸対称となる位置に配置され、その先端が上板部21の先端と対向するようにして前記上板部21の上面に重ねられた後、上下のナット24,12により挟持される。
【0048】
以上より、本第二実施形態の天井施工用ハンガー1Bによれば、第一実施形態の天井施工用ハンガー1Aと同様の作用効果を奏するとともに、吊りボルト10の軸に対して軸対称に配置された嵌入手段2と固定手段3とで略均等に野縁受け11の荷重を支持することとなり、捻れにも強く野縁受け11を吊り下げることができる。
【0049】
なお、本発明に係る天井施工用ハンガーは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B 天井施工用ハンガー
2 嵌入手段
3 固定手段
21 上板部
22 嵌入凹部
23 ボルト挿通孔
24 ナット
25 連結掛止部
26 揺動掛止孔
27 挿入溝
28 突起部
31 揺動連結部
32 固定部
33 固定部側上板部
34 掛止部
35 くびれ部
36 切り欠き
37 ボルト係合片
10 吊りボルト
11 野縁受け
12 上側ナット
【要約】
【課題】 耐震性が高く、かつ熟練を要さずに確実な施工を能率良く行うことのできる、天井施工用ハンガーを提供する。
【解決手段】 野縁受け11を嵌め入れる嵌入手段2と、この嵌入手段2に嵌め入れられた野縁受け11を固定する固定手段3とを有し、嵌入手段2は、ボルト挿通孔23が形成された上板部21と、この上板部21から下方向に延出されるとともに野縁受け11を嵌め入れ可能に上方向が略凹状に開口してなる嵌入凹部22とを有し、固定手段3は、嵌入凹部22の一端部を基端として上下方向に開閉揺動可能に連結された揺動連結部31と、嵌入凹部22に嵌め入れられた野縁受け11を固定する固定部32と、この固定部32から上方に延出されるとともにその先端側が折り曲げられており固定部32が野縁受け11を固定する位置に配置された際に上板部21の上面に重なり合う固定部側上板部33とを有する。
【選択図】
図2