(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)加水分解ケラチンの配合量が0.1〜5質量%であり、(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合量が0.01〜5質量%であり、(C)パントテニルアルコールの配合量が0.01〜3質量%であり、(D)フェノキシエタノールの配合量が0.1〜2質量%である請求項1に記載の毛髪化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の通り、加水分解ケラチンやパントテニルアルコールは、毛髪にハリ、コシを付与する機能を有する成分として知られている。ところが、本発明者らは、この両者を併用したときには、加水分解ケラチンのみやパントテニルアルコールのみを使用し、単にその配合量を増やした場合と比べて、毛髪に良好なハリ、コシを付与できることを見出した。
【0009】
また、本発明者らは、更に検討を重ね、加水分解ケラチンおよびパントテニルアルコールに加えて、ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合して構成した毛髪化粧料であれば、処理後の毛髪に良好なハリ、コシを付与しつつ、適度な厚み感も付与して優れた髪質とし得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の毛髪化粧料に係る(A)成分である加水分解ケラチンは、前記の通り、(C)成分であるパントテニルアルコールと併用されることで、毛髪に良好なハリ、コシを付与するための成分である。
【0011】
加水分解ケラチンには、羊毛由来のもの、人毛由来のもの、羽毛由来のもののいずれも用いることができるが、羽毛由来のものがより好ましい。また、加水分解ケラチンの数平均分子量(加水分解ケラチンのメーカーから提供されている)は、30000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、また、300以上であることが好ましい。
【0012】
毛髪化粧料における(A)成分である加水分解ケラチンの配合量は、上記の機能をより良好に発揮させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、毛髪化粧料中の(A)成分の量が多すぎると、処理後の毛髪が硬くなりすぎる虞がある。よって、毛髪化粧料における(A)成分である加水分解ケラチンの配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0013】
本発明の毛髪化粧料に係る(B)成分であるジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は、(A)成分および(C)成分による毛髪へのハリ、コシの付与機能を損なうことなく、処理後の毛髪の厚み感を高める機能を有する成分である。
【0014】
ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩としては、例えば、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩(ナトリウム塩など)などが挙げられる。
【0015】
毛髪化粧料における(B)成分であるジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合量は、上記の機能をより良好に発揮させる観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。ただし、毛髪化粧料中の(B)成分の量が多すぎると、毛髪化粧料の製造コストの増大を招き、その生産性を低下させてしまう。よって、毛髪化粧料における(B)成分であるジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明の毛髪化粧料に係る(C)成分であるパントテニルアルコールは、前記の通り、(A)成分である加水分解ケラチンと併用されることで、毛髪に良好なハリ、コシを付与するための成分である。
【0017】
毛髪化粧料における(C)成分であるパントテニルアルコールの配合量は、上記の機能をより良好に発揮させる観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。ただし、毛髪化粧料中の(C)成分の量が多すぎると、処理後の毛髪がごわつくようになりやすい。よって、毛髪化粧料における(C)成分であるパントテニルアルコールの配合量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明の毛髪化粧料には、更に(D)芳香族アルコールを配合することが好ましい。通常、毛髪においては、毛先が最もダメージを受けているが、(D)芳香族アルコールを配合することで、毛髪化粧料による毛髪へのハリ、コシの付与機能、毛髪への厚み感の付与機能、および毛先のダメージ補修機能のバランスが良好な毛髪化粧料とすることができる。このうち、毛髪への厚み感の付与機能や毛先のダメージ補修機能については、(D)芳香族アルコールが、(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩と併用されることで、より良好となっていると考えられる。
【0019】
(D)成分である芳香族アルコールの具体例としては、例えば、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、ベンジルアルコールなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、フェノキシエタノールが特に好ましい。
【0020】
毛髪化粧料における(D)成分である芳香族アルコールの配合量は、上記の機能をより良好に発揮させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。ただし、毛髪化粧料中の(D)成分の量が多すぎると、処理後の毛髪にパサつきが感じられやすくなる虞がある。よって、毛髪化粧料における(D)成分である芳香族アルコールの配合量は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明の毛髪化粧料は、水を溶媒として使用する。毛髪化粧料における水の配合量は、例えば、80〜98質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明の毛髪化粧料には、上記の各成分以外にも、従来から知られている毛髪化粧料に配合されている各種成分を、必要に応じて添加することができる。このような添加成分としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、多価アルコール、アミノ酸およびその誘導体、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0023】
ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(3)ソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。毛髪化粧料におけるノニオン性界面活性剤の配合量は、例えば、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0024】
多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。毛髪化粧料における多価アルコールの配合量は、例えば、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0025】
アミノ酸およびその誘導体の具体例としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リシン、ピロリドンカルボン酸またはその塩、アシル化アミノ酸またはその塩、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ2−オクチルドデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ2−ヘキシルデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・2−オクチルドデシル)などが挙げられる。毛髪化粧料におけるアミノ酸およびその誘導体の配合量は、例えば、0.001〜3質量%であることが好ましい。
【0026】
防腐剤の具体例としては、例えば、安息香酸およびその塩(ナトリウム塩など);パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステルおよびその塩(ナトリウム塩など);サリチル酸およびその塩;ソルビン酸およびその塩;メチルイソチアゾリノン;メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン;などが挙げられる。
【0027】
また、本発明の毛髪化粧料には、上記の各添加成分以外にも、糖類、植物・海藻エキス、香料などを配合することができる。
【0028】
本発明の毛髪化粧料の剤型については、特に制限はなく、ローション状、クリーム状、ゲル状などの各種の剤型とすることができるが、ローション状であることがより好ましい。
【0029】
本発明の毛髪化粧料は、シャンプー、トリートメント剤、スタイリング剤、毛髪変形剤(パーマネントウェーブ剤と縮毛矯正剤とを含む)、毛髪変形処理の前処理剤、毛髪変形処理の中間処理剤、毛髪変形処理の後処理剤、染毛剤、染毛処理の前処理剤、染毛処理の中間処理剤、染毛処理の後処理剤などの各種の毛髪化粧料の形態とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、後記の表1および表2では毛髪化粧料全体で100%となるように、また、表3ではシャンプー全体で100%となるように、それぞれ各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、これらの表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。更に、本実施例で記載する%は、特に断らない限り質量基準(質量%)である。
【0031】
実施例1〜5および比較例1〜7
実施例1〜5および比較例1〜7の毛髪化粧料を、表1および表2に示す組成で調製し、下記の手順に従って評価を行った。ただし、(C)パントテニルアルコールに代えてパントテン酸カルシウムを使用した比較例7の毛髪化粧料は、調製後に成分の析出が見られ、良好な剤型のものが得られなかったため、評価を行わなかった。
【0032】
同一人物から採取した人毛毛束(長さが25cmの人毛からなる毛束で、1毛束あたり5g)を複数用意し、表3に示す組成のシャンプーで洗浄して水ですすぎ流した。
【0033】
上記シャンプー後の濡れた毛束に、実施例1〜5または比較例1〜6のいずれかの毛髪化粧料0.3mlを塗布し、水ですすいだ後に乾燥してから、毛髪のハリ、コシ、厚み感および毛先のダメージ補修の状態を、専門の評価者5名が、それぞれ評価した。
【0034】
上記の各評価については、実施例2の毛髪化粧料で処理した後の毛髪の状態を基準(2点:良い)として、上記基準の場合よりも毛髪の状態が良い場合を3点、上記基準の場合よりも毛髪の状態がやや劣る場合を1点、上記基準の場合よりも毛髪の状態が劣る場合を0点として、上記5名の評価者のそれぞれが点数付けを行い、全評価者の点数を合計することで纏めた。
【0035】
上記の各評価結果を、表1および表2に併記する。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1および表2において、水の欄の「計100とする」とは、毛髪化粧料を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、表1および表2に記載の「メチルイソチアゾリノン水溶液」は、濃度が0.95%のものである。更に、表1および表2に記載の「モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン」には、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20のものを使用した。
【0039】
【表3】
【0040】
表3において、各成分中に記載の「(E.O.)」はエチレンオキサイドのことであり、その前の数値はエチレンオキサイドの平均付加モル数を意味している。また、表3における「クエン酸」の欄の「適量」は、シャンプーのpHを5.1とするのに要した量である。
【0041】
表1および表2に示す通り、(A)加水分解ケラチン、(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩、および(C)パントテニルアルコールを配合した実施例1〜5の毛髪化粧料で処理した毛髪は、(C)パントテニルアルコールを配合していない比較例1〜6の毛髪化粧料で処理した後の毛髪に比べて、ハリ、コシおよび厚み感が良好である。
【0042】
なお、比較例5の毛髪化粧料は、(C)パントテニルアルコールの配合に代えて(A)加水分解ケラチンの配合量を増やした例であるが、実施例1〜5の毛髪化粧料は、(A)加水分解ケラチンおよび(C)パントテニルアルコールの配合量の総量が、比較例5の毛髪化粧料に係る(A)加水分解ケラチンの配合量よりも少ないにも関わらず、処理後の毛髪のハリ、コシを非常に高め得ている。このことから、実施例1〜5の毛髪化粧料においては、(A)加水分解ケラチンと(C)パントテニルアルコールとが相乗的に作用することで、これらのいずれかを単に多く配合した場合よりも優れた毛髪へのハリ、コシの付与機能が確保できていると言える。
【0043】
また、(A)成分、(B)成分および(C)成分に加えて(D)芳香族アルコールを配合した実施例1〜4の毛髪化粧料は、(D)芳香族アルコールを配合していない実施例5の毛髪化粧料に比べて、処理後の毛髪の毛先のダメージも良好に補修できており、毛髪にハリ、コシを付与する機能、毛髪に厚み感を付与する機能、および毛先のダメージを補修する機能が、バランスよく確保できている。