【実施例】
【0018】
図1〜4は本発明の電気加熱装置1の一実施例を示している。電気加熱装置1は、シラン架橋ポリエチレンからなる長尺の管体2を有しており、この管体2は
図2〜4に示されるように横断面円形で、外径10mm、内径6.8mm、肉厚1.6mmの大きさとされている。この管体2は可撓性を有している。また、この管体2の融点は140℃程度である。
【0019】
前記管体2の両端部には樹脂カラー3,4がそれぞれ嵌合されている。前記樹脂カラー3,4の中心部には、それぞれ管体2の内外に延びるように、被覆されたリード線5,6が軸方向に挿通されている。前記管体2内において、リード線5,6の管体2内側の端部にはニクロム線からなる発熱線7の両端部がそれぞれ圧着接続端子8,9により電気的および機械的に接続されている。これにより、発熱線7は、管体2内に、該管体2の長さ方向に沿って延びるように収容されている。
【0020】
前記発熱線7は、
図2に示されているように、横断面細長い矩形状とされている。発熱線7の横断面がなす矩形の短辺の長さは0.16mm、長辺の長さは3.2mmとされている。また、発熱線7は、圧着接続端子8,9に圧着接続されている部分を除いて、
図2に示されているように、シリコーン樹脂、シリコーンゴム等からなる融点または軟化点の高い被覆材10により被覆されている。前記圧着接続端子8,9の外面は絶縁伸縮チューブ11により被覆されている。
【0021】
前記管体2内には、空気12が収容されており、これにより、管体2の内面と発熱線7との間には空気12が介在されている。前記管体2の内面と樹脂カラー3,4の外周面との間およびリード線5,6の外周面と樹脂カラー3,4のリード線5,6挿通部との間には防水処理剤13が施されており、これにより外部から管体2内への水の浸入が阻止されるとともに、前記空気12が管体2内に実質的に密封されている。
【0022】
図5は、本実施例の電気加熱装置1を板金屋根の融雪に用いる場合の設置状態の一例を示す断面図である。板金材14を一旦剥ぎ、垂木15上に配置された野地板16上にアスファルトフェールト17を貼り、さらにこのアスファルトフェールト17上に複数のパネル材18および電気加熱装置1を載置する(このとき、多数のパネル材18間に電気加熱装置1が延びるように電気加熱装置1を蛇行させて引き回して配設する)。また、
図6に示されるように、電気加熱装置1の適当な部分において、管体2の外面に温度センサ19をテープ(図示せず)を巻いて装着し、管体2の外面に温度センサ19が接触している状態とする。そして、パネル材18の上面および電気加熱装置1の管体2にアルミテープ20を貼付した後、その上に板金材14を設置し直す。
【0023】
この電気加熱装置1においては、リード線5,6を介して発熱線7に電流を流すことにより、発熱線7を発熱させる。そして、
図5の屋根融雪の例では、制御装置(図示せず)を用いて、温度センサ19により検出される管体2外面の温度に基づき、発熱線7に対する通電を制御することにより、電気加熱装置1の発熱を制御する。具体的には、管体2外面の温度が70℃に維持されるように発熱線7に対する通電を制御する。
【0024】
この電気加熱装置1においては、管体2が発熱線7によって直接加熱されるのではなく、管体2内の空気12を介して加熱される。そして、上述のように管体2外面の温度が70℃に維持されるように発熱線7に対する通電を制御すると、《管体2内かつ管体2の内面からある程度以上離れた部分の空気12》の温度は、管体2の融点より高い150〜200℃程度となる。しかしながら、管体2の内面が溶けてしまうことはない。何故ならば、空気12は熱伝
導率および比熱が小さく、かつ管体2は外部から冷却されているので、通電中においても、《管体2の内面に接触する空気12》の温度は、前記《管体2内かつ管体2の内面からある程度以上離れた部分の空気12》の温度よりかなり低くなり、管体2の融点より低い温度となるからである(これは、90〜100℃もの温度があるサウナで、入浴者が火傷しないのと同様の原理である)。
【0025】
なお、本実施例では、発熱線7自体の温度を測定することは困難であったため、測定を行っていないが、通電時の発熱線7の最高発熱温度は、当然、前記《管体2内かつ管体2の内面からある程度以上離れた部分の空気12》の温度以上となる。
【0026】
そして、この電気加熱装置1においては、発熱線7と管体2の内面との間に空気12が介在されていることにより、管体2の内面に温度ムラが発生するのを防止できる。このため、管体2外面の温度が70℃に維持されるように発熱線7に対する通電量、ひいては発熱線7の発熱量を制御することにより、管体2を溶かしてしまうことなく、外部に十分な量の熱を放出し、板金屋根の温度を15℃程度として、融雪を十分良好に行うことができる。
【0027】
従来の発熱線をポリマーで被覆してなる電熱線では、被覆が溶けてしまわない範囲内で通電するとすると、被覆の外面の温度が40℃程度までにしか上昇しない一方、それ以上発熱線を発熱させると、被覆が溶けてしまっていた。このため、融雪を十分行うことができなかったのである。
【0028】
なお、この電気加熱装置1においては、管体2外面の温度を70℃よりさらに温度を上昇させて90℃程度としても管体2が溶けてしまうことない。しかし、管体2外面の温度を70℃とすれば融雪を十分良好に行うことができ、それより温度を上げても電気代が無駄になるだけなので、管体2外面の温度を70℃に設定しているのである。
【0029】
また、本実施例において発熱線7に被覆されている被覆材10は、従来技術において発熱線に被覆されていた被覆材とは全く異なる性格を有するものである。従来技術において発熱線に被覆されていた被覆材は、電熱線外部に対し発熱線を電気絶縁するとともに発熱線を機械的に保護するためのものであるが、本実施例の被覆材10の一つの役割は、安全確保を厳重に行うため、万一管体2が破損した場合に備え、管体2の電気絶縁に加えて発熱線7の電気絶縁を二重に行うことである。被覆材10のもう一つの役割は、管体2の内面に対する発熱線7の接触に対する対策である。すなわち、管体2を湾曲させると、発熱線7も湾曲するので、基本的には管体2を湾曲させても発熱線7は管体2の内面に接触しないが、接触してしまう場合もある。しかし、この接触は、点的な接触であってかつ軽く緩い接触である上、管体2は外部から冷却されているので、被覆材10を設けておき、発熱
線7が被覆材10を介して管体2の内面に接触するようにしておけば、管体2が溶けてしまう(または軟化してしまう)のを確実に防止できる。そして、被覆材10には、従来の電熱線の被覆材の場合のように発熱線7を機械的に保護する機能は持たせる必要はないので、比較的薄い層とすることができるため、高融点(または高軟化点)の材料を使用してもコストはあまり増大しない。なお、本発明においては、必要ない場合は、発熱線を本実施例の被覆材10と同様の被覆材で被覆しなくてもよい。
【0030】
上述のようにして、この電気加熱装置1によれば、発熱線7を囲む融点が低いポリマー(管体
2)を溶かしてしまうことなく、外部に十分な量の熱を放出し、融雪を十分良好に行うことができる。
【0031】
また、外部に対し発熱線7を電気絶縁するとともに発熱線7を機械的に保護する機能を果たす管体
2として融点または軟化点が低いポリマーを使用できるので、製造コストを安価にすることがてきる。
【0032】
図7は、本実施例の電気加熱装置1を瓦屋根の融雪に用いる場合の設置状態の一例を示す断面図である。瓦21を一旦剥ぎ、垂木15上に配置された野地板16上に発泡ポリエチレンシート22を敷き、さらにこの発泡ポリエチレンシート22上に、電気加熱装置1を蛇行させて載置するとともにモルタル23を塗布し、モルタル23内に電気加熱装置1が埋め込まれるようにする。また、前記
図6の場合と同様に、電気加熱装置1の適当な部分において、管体2の外面に温度センサ19をテープ(図示せず)を巻いて装着し、管体2の外面に温度センサ19が接触している状態としておく。そして、モルタル23上に瓦21を置き直す。
【0033】
この場合も、前記
図5の板金屋根の場合と同様にして、管体2外面の温度が70℃に維持されるように発熱線7に対する通電を制御することにより、融雪を十分良好に行うことができる。
【0034】
図8は、本実施例の電気加熱装置1を床暖房に用いる場合の設置状態の一例を示す断面図である。下地材24上に複数のパネル材18および電気加熱装置1を載置する(このとき、多数のパネル材18間に電気加熱装置1が延びるように電気加熱装置1を蛇行させて引き回して配設する)。また、前記
図6の場合と同様に、電気加熱装置1の適当な部分において、管体2の外面に温度センサ19をテープ(図示せず)を巻いて装着し、管体2の外面に温度センサ19が接触している状態としておく。そして、パネル材18の上面および電気加熱装置1の管体2にアルミテープ20を貼付した後、その上に貼り床材25を設置する。
【0035】
この床暖房の場合は、管体2外面の温度が30℃に維持されるように発熱線7に対する通電を制御することにより、床暖房を十分良好に行うことができる。
【0036】
図9は、本実施例の電気加熱装置1を道路の路面の融雪に用いる場合の設置状態の一例を示す断面図である。符号26は道路の砕石層を示している。この砕石層26の上面にコンクリート層27の下層側を打ち込んだ後、その上にワイヤーメッシュ28を載置し、さらにこのワイヤーメッシュ28上に電気加熱装置1を蛇行させた状態で載置する。次に、コンクリート層27の上層側を打ち込み、コンクリート層27内に電気加熱装置1が埋め込まれた状態とする。路面(コンクリート層27の上面)の上方に赤外線温度センサ19を設置し、路面の上方から管体2の外面の温度を検出する。
【0037】
この場合は、管体2外面の温度が30℃に維持されるように発熱線7に対する通電を制御することにより、路面の温度を5℃程度として、路面の融雪を十分良好に行うことができる。
【0038】
なお、前記実施例においては、管体2を構成する材料としてシラン架橋ポリエチレンを使用しているが、本発明においては、管体を構成する材料として、他の種のポリマーを用いてもよい。
【0039】
また、本発明における管体を構成するポリマーとしては、融点が明確でなく、測定が困難であるポリマーや、融点が存在しないポリマーも使用することができ、その場合は融点の代わりに軟化点を考えればよい(本願において、「軟化点」とは、ポリマーが軟化して基本的な機能を果たせなくなる温度を言うものとする)。
【0040】
また、前記実施例においては、管体2は可撓性を有しているが、本発明においては、管体は必ずしも可撓性を有していなくてもよい。ただし、一般的には可撓性を有している方が、蛇行状等に湾曲や屈曲させることにより、管体を面的に使用できるので有利である。
【0041】
また、本発明においては、前記実施例の場合のように、管体内の空気は管体内に実質的に密閉されることが好ましい。密閉されていないと、熱が空気とともに管体の開放された部分から管体外に失われてしまうので、熱を外部の所望の部分に十分伝達することができなくなる虞があるからである。
【0042】
また、本発明における管体の横断面形状は、前記実施例のように円形でなくてもよく、例えば横断面矩形とすることも可能である。
【0043】
また、本発明における発熱線の横断面形状および大きさは、前記実施例のそれらに限定されることはなく、例えば横断面円形とすることもできる。ただし、発熱線の横断面形状を前記実施例の場合のように細長い矩形状とすれば、発熱線が管体の内面に接触してしまっても、その接触をより接触面積が小さい接触とすることができる(特に、管体の横断面形状が円形等の場合)。
【0044】
また、本発明における発熱線としては、ニクロム線以外の材料も使用することができる。