特許第6108775号(P6108775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6108775片状物集合体及び該片状物集合体を用いたクッション体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108775
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】片状物集合体及び該片状物集合体を用いたクッション体
(51)【国際特許分類】
   D04H 13/00 20060101AFI20170327BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20170327BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20170327BHJP
   D04H 1/4266 20120101ALI20170327BHJP
【FI】
   D04H13/00
   A47C27/12 B
   A47G9/10 C
   D04H1/4266
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-248178(P2012-248178)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-95168(P2014-95168A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】500200638
【氏名又は名称】株式会社 ワタセ
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(74)【代理人】
【識別番号】100185454
【弁理士】
【氏名又は名称】三雲 悟志
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】辻 貴史
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−070515(JP,A)
【文献】 特開2006−061670(JP,A)
【文献】 特開平04−367624(JP,A)
【文献】 特開2001−040559(JP,A)
【文献】 実開昭63−124861(JP,U)
【文献】 実開平01−112773(JP,U)
【文献】 米国特許第04243446(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00− 18/04
A47C 27/12
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片状物の集合体であり、
前記片状物のうち、みかけ体積が0.2〜10cmであるへちま片が0容量%以上を占め、
前記へちま片は、切り口が平面状またはなだらかな面状になるようにへちま繊維が切断されて成り、
前記へちま繊維では、その構成繊維が三次元の網状に連なることにより、前記構成繊維の間に空隙が形成されており、
隣接する前記へちま片同士は、それぞれの切断端部において互いの前記構成繊維が互いの前記空隙に喰い込んで自着し、
前記集合体のみかけ体積が該集合体を構成する前記片状物のみかけ体積の総和の0.65〜0.倍であることにより、自立性の立体となっている片状物集合体。
【請求項2】
前記隣接するへちま片同士がさらに接着剤を介して接合した請求項1に記載の片状物集合体。
【請求項3】
請求項に記載の片状物集合体が板状にスライスされてなる片状物板状集合体。
【請求項4】
請求項1もしくは請求項2に記載の片状物集合体または請求項3に記載の片状物板状集合体が、クッション体用の外皮で被覆されてなるクッション体。
【請求項5】
枕、敷布団、及びベッド用マットかなる群より選ばれた請求項に記載のクッション体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕、敷布団、ベッド用マットなどのクッション体と、そのクッション体の中身として用いるクッション性の片状物集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
枕、敷布団、ベッド用マットなどの、人と人を支持する物体との間に介在するクッション体には、適度のクッション性に加えて通気性や吸湿性や復元性や形体安定性が要求される。
クッション性はスポンジや、樹脂製の小片の集合体や、種子の殻などを用いることによりある程度充足させることができるが、吸湿性や形体安定性については満足すべきものがなかった。
吸湿性、通気性を有する素材として、へちまの利用が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)が、へちま繊維を詰め物として望みの所定の形状のクッション体に適用して利用するためにへちま繊維を粉砕などして引き千切って用いるので、微細な繊維屑の発生と製品への混入が避けられず、また、粉砕後のへちま繊維片の集合体はかさだかにならずクッション性や通気性がかならずしも満足できないという問題が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
[特許文献1]特開2001−40559号公報
[特許文献2]実開02−146166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
へちまは生分解性を有する天然物であり、クッション体として利用できれば、廃棄物の環境負荷の問題を解決でき、また、農業の活性化にも寄与することができるので、本発明は、上述の問題点を克服して、望みの所定の形状のクッション体に適用して利用でき、適度のかさだか性を有し、吸湿性は勿論のこと、クッション性や通気性にすぐれ、クッション体としての形体安定性も良好なクッション体と、そのクッション体の中身として用いるクッション性の片状物集合体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨とするところは、
片状物の集合体であり、
該片状物のうち、みかけ体積が0.2〜10cmのへちま片が50容量%以上を占め、
前記へちま片は、構成繊維が三次元の網状に連なって該構成繊維間に空隙が形成されてなるへちま繊維を、切り口が平面状またはなだらかな面状になるように切断してなるものであり、
隣接の前記へちま片同士が相手の前記へちま片の前記空隙に自分の構成繊維の切断端部を喰い込ませて自着し、
前記集合体のみかけ体積が前記集合体を構成する前記片状物のみかけ体積の総和の0.65〜0.95倍である片状物集合体であることにある。
【0006】
前記片状物集合体においては、前記片状物のうち、みかけ体積が0.2〜10cmの前記へちま片が90容量%以上を占め得、前記集合体のみかけ体積が前記集合体を構成する前記片状物のみかけ体積の総和の0.65〜0.9倍であり得る。
【0007】
前記片状物集合体においては、前記隣接のへちま片同士がさらに接着剤を介して接合し得る。
【0008】
また、本発明の要旨とするところは、前記片状物集合体が板状にスライスされてなる片状物板状集合体であることにある。
【0009】
また、本発明の要旨とするところは、前記片状物集合体または前記片状物板状集合体が、クッション体用の外皮で被覆されてなるクッション体であることにある。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、枕、敷布団、ベッド用マット、から選択される前記クッション体であることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、望みの所定の形状のクッション体に適用して利用でき、適度のかさだか性を有し、吸湿性は勿論のこと、クッション性や通気性にすぐれ、クッション体としての形体安定性も良好なクッション体と、そのクッション体の中身として用いるクッション性の片状物集合体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】へちま片の形状を示す説明用斜視模式図。
図2】へちま繊維の輪切り断面図。
図3】本発明の本発明の片状物集合体の構造を示す模式図。
図4】へちま片同士の接合の状態を説明する説明図。
図5】枕の圧縮−荷重曲線。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0014】
へちま繊維:ウリ科の一年草であるヘチマ(和名)の果実を、水にさらして軟部組織を腐敗させて種などとともに除き、繊維だけにして乾燥した、三次元網状のものをいう。
構成繊維:へちま繊維を構成する繊維をいう。構成繊維が三次元網状に連なってへちま繊維となっている。
【0015】
本発明の片状物集合体は、へちま繊維を略サイコロ状に切断して得られたへちま片を主な片状物とする、片状物の集合体である。
【0016】
へちま片を得るためのへちま繊維の切断は、切り口からなる切断面が平面状またはなだらかな面状になるようにへちま繊維を切断することにより行われる。一個の片状物を得るために、互いに異方向の複数回の切断が行われる。切断のたびに異なる部位に切り口が形成される。
【0017】
へちま繊維の切り口は、へちま繊維が刃物などで切断されるときに刃の頂上部分をなす稜線が通過する軌跡面とほぼ合致する。
【0018】
なだらかな面状とは、極端な凹凸のない面のことであり、面をある平面と交差させたときの交差部のなす曲線の曲率半径が3mm以上であるような面である。
【0019】
このような切断は、はさみ、断裁、打ち抜き、レーザーカット、水流カット、回転刃物、往復運動刃物、走行運動刃物、などによって行うことができる。
【0020】
図1によりへちま片の形状を説明する。へちま片2は略サイコロ状の形状をなす。この形状の稜線4が点線で示されている。稜線4の角(かど)であるA、B、C、Dをめぐる四角形が切り口6の面のうちのひとつを表わす。へちま片2の構成繊維8の切断端10が切り口6の面上に位置している。なお、図1はへちま片の形状を説明するために明解さを優先して要部をデフォルメして描かれており、構成繊維8の太さや三次元網状構造のセルのサイズや形状は必ずしも実物の縮尺と完璧には一致していない。
【0021】
なお、略サイコロ状は、必ずしも各稜の長さが等しくないものであってもよい。また、本明細書においては、略サイコロ状は、立方体形状のみならず、略直方体形状、略多面体形状、柱状をも含むものとする。また、各面のうちのいずれかが丸みを帯びていてもよい。へちま片2は製造上の制約が少なければ略球状、略回転楕円状などであってもよく、これらの形状は技術上略サイコロ状という形状に関して均等論の及ぶ範囲である。
【0022】
へちま片2のサイズは縦、横、高さそれぞれが0.5〜3cmであることが好ましいが、この範囲に限定されない。また、図1においてはへちま片2は切り口6をはじめとする6面体の面状の切り口を有するものが例示されているが、このような複数個の切り口で囲まれた立体の体積を、本明細書においてはへちま片2のみかけ体積と定義する。へちま片2の外面のうちに、もとのへちま繊維の外周面や、空洞による内周面などが含まれる場合は、その外周面や内周面と複数個の切り口とで囲まれた立体の体積がへちま片のみかけ体積である。
【0023】
へちま片のみかけ体積は0.2〜10cmであることが好ましい。0.5〜8cmであることがさらに好ましい。
【0024】
へちま片のみかけ体積が0.2cmを下回ると、へちま片の径がへちま繊維の三次元網状構造のセルのサイズと同レベルになることがあり、単なる繊維屑となって略サイコロ状が得られない場合が多い。へちま片のみかけ体積が10cmを上回ると、へちま片がへちま繊維3のレンコンの孔状の空洞部30(図2)を含むことが多くなり、へちま片に空洞やえぐられた部分ができたりすることが多く、均一な密度の片状物集合体が得られないことがある。
【0025】
図3に示すように、本発明の片状物集合体12は、多数のへちま片2が密集状態に集合したものである。
【0026】
図4に示すように、個々のへちま片2は、互いに隣接のへちま片2a、へちま片2bについてみると、互いが接触する接触部14において一方のへちま片(へちま片2a)の構成繊維8aの切断端部9aが、相手のへちま片(へちま片2b)の空隙部22bに食い込んでいる。また、へちま片2bの構成繊維8bの切断端部9bが、相手のへちま片(へちま片2a)の空隙部22aに食い込んでいる。すなわち、隣接のへちま片同士が相手のへちま片の空隙に自分の構成繊維の切断端部を喰い込ませている。この喰い込みにより、隣接のへちま片同士が(接着剤を介さずに)自着している。
【0027】
自着は、一の片2と他のへちま片2とが、互いを接合する接合力が無ければ他のへちま片2が自由落下する配置で接しているとき、他のへちま片2が自重で落下しないような接合力で一の片2に接着剤を介さずに接合している接合の状態をいう。
【0028】
空隙部22a、空隙部22bは、へちま繊維の網目構造によるものであり、へちま繊維の構成繊維間に形成された空隙によりもたらされたものである。
【0029】
図4に示すように、互いに隣接のへちま片は互いに相手に喰い込んでいる。このような喰い込みにより、片状物集合体12のみかけ体積は、へちま片2のみかけ体積の総和の0.65〜0.9倍となる。このとき、個々のへちま片の体積は集合体となる前の体積とほとんど変わらない。また、へちま片同士が自着することにより、片状物集合体12は自立性の立体となっている。すなわち、接着剤を用いることなく自立性の立体が形成されている。自立性は、10cm角の立方体形状になっているときに、自身の重さで形状が崩れない状態であることをいう。
【0030】
片状物集合体12のみかけ体積がへちま片2のみかけ体積の総和の0.9倍を超えると自立性の立体が形成されにくい。また、片状物集合体12のみかけ体積がへちま片2のみかけ体積の総和の0.65倍を下回る状態は、個々のへちま片2が過大の圧力や加熱などにより不可逆的に潰れてしまっている状態であり、片状物集合体12は良好なかさだか性とクッション性が得られない。
【0031】
片状物集合体12のみかけ体積が、へちま片2のみかけ体積の総和の0.65〜0.85倍であることが自立性のうえでさらに好ましい。
【0032】
このような自立性の立体は、多数のへちま片を所定形状の容器に収納したのち、加圧し、最終的には除重することにより製造することができる。加圧は、収納されたへちま片全体の体積が加圧によりもとの体積の0.2〜0.8倍になる圧力で行われることが好ましい。この加圧は複数回繰り返されることがさらに好ましい。この加圧は多方向に行われることがさらに好ましい。
【0033】
また、へちま片2のかわりにへちま繊維を細かく引き千切って得た片状物あるいは粉砕して得た片状物を用いた場合は、切り口6からなる切断面が明確には形成されず、へちま片同士の喰い込みが生じにくく、自着しにくい。また、片状物のサイズ(最大径)がへちま片2のサイズ(最大径)とほぼ同じであったとしても、上述の繰り返えしの圧縮などの圧縮により集合体に形成した場合に、圧縮後にかさが充分に回復せず、良好なかさだか性とクッション性が得られない。
【0034】
なお、本発明に用いるへちま片は、片状物集合体にする前に、防ダニ処理などの防虫処理、防かび処理、などの薬剤処理を施すことができる。
【0035】
本発明の片状物集合体12には、へちま片2のほかに一定限度内で他の片状物が混入されていてもよい。他の片状物としては、棉繊維、パンヤ、スポンジ片、樹脂環状片、樹脂チップなどが挙げられる。片状物集合体にする前の片状物について、他の片状物の混合率が、10容量%未満である場合は自立性の片状物集合体を得ることができる。他の片状物の混合率が、10〜50容量%である場合は、もとの集合体のみかけ体積が集合体を構成する片状物のみかけ体積の総和の0.65〜0.95倍である片状物集合体を得ることができる。この片状物集合体は必ずしも自立性の片状物集合体ではないが、全体としてコンパクトであり、使用時に形崩れの少ない片状物集合体を得ることができる。
【0036】
片状物集合体にする前の片状物について、他の片状物の混合率が50容量%を上回ると、へちま片同士の食い込みによる接合部の数が片状物集合体全体としては少なくなり、全体としてコンパクトにならず、また、使用時に形崩れの少ない片状物集合体が得られない。
【0037】
本発明の片状物集合体は、片状物同士を接着剤を介して接合させることにより所定形状の板状にスライスして切り分けて用いることができる。
【0038】
へちま片同士の食い込みによりへちま片同士の接合が確実になされているので、さらに接着剤を介してへちま片同士が接合された本発明の片状物集合体は、スライス時にへちま片が部分的に脱落するトラブルが少なく、確実なスライスを寸法精度よく行うことができる。また、このスライスにより得られた片状物板状集合体はかさ高性が維持されたままコンパクトな構造で形体保持性にすぐれたものとなっている。
【0039】
このようなスライス可能な片状物集合体は、もとの片状物集合体に接着剤を含む溶液を含浸させたのち乾燥あるいは加熱乾燥することにより製造することができる。片状物に接着剤を含む溶液を含浸させたのち所定形状の容器に収納して複数回加圧してへちま片同士の食い込みを生じさせ、その後、乾燥あるいは加熱乾燥することにより製造してもよい。
【0040】
接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、澱粉、蒟蒻のりなどが例示される。接着剤の乾燥重量は、片状物集合体に対して0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0041】
本発明の片状物集合体は、クッション体用の外皮で被覆して、クッション用品として好適に用いられる。クッション用品としては、枕、敷布団、ベッド用マットなどが挙げられる。これらのクッション用品は、適度のかさだか性を有し、吸湿性は勿論のこと、クッション性や通気性にすぐれ、クッション用品としての形体安定性も良好である。
【0042】
例えば、本発明の片状物集合体を中綿として用いた敷布団は、形体安定性にすぐれているうえ、吸湿性と通気性にすぐれているので、寝返りが困難な老人が使用すると床ずれが起こりにくい。
【0043】
本発明の片状物集合体をクッション用品に用いる場合、片状物集合体を単独で用いてもよいが、他のクッション体と積層するなど併用して用いてもよい。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
へちま繊維を軸方向に直交する方向に厚さ1cm程度に回転刃で輪切りにした。輪切りされたへちま繊維を、へちま繊維の軸方向と直交する方向のサイズが縦1〜3cm、横1〜3cmになるようにカッターを用いてへちま繊維の軸方向に切り出して、多数の、へちま片からなる片状物を得た。へちま片の平均体積(数平均)は1.2cmであった。
【0045】
この多数のへちま片200gを縦30cm、横30cm、深さ30cmのうちのりの容器にほぼ無荷重で充填しへちま片充填物となした。充填したへちま片の総数は5×10個であった。このへちま片充填物の厚さは11cmであった。このへちま片充填物を上から手のひらで各所10回ほど万遍なく圧縮した。圧縮時には圧縮個所のへちま片充填物の厚さは4〜5cmになった。圧縮終了後(除重後)のへちま片充填物の厚さは5.8cmであった。この圧縮終了後のへちま片充填物(片状物集合体)は容器から取り出した後も多数のへちま片が密集状態に集合しており、個々のへちま片が互いに隣接のへちま片と、互いが接触する接触部において一方のへちま片の構成繊維の切断端部が、相手のへちま片の空隙部に食い込んでへちま片同士が自着することにより、自立性の立体となっていた。
【0046】
この片状物集合体を、この片状物集合体がほぼ隙間なく収納される布袋(縦30cm、横30cm、高さ5.8cm(うちのり))に収納して枕を得た。この片状物集合体は自立性の立体となっているため、布袋に収納するときに崩れにくく、収納がきわめて容易であった。この枕は、適度のかさだか性を有し、吸湿性やクッション性や通気性にすぐれ、クッション体としての形体安定性もきわめて良好であった。
【0047】
この枕の圧縮曲線を図5に示す。
【0048】
[実験例1]
実施例1に用いたと同じサイズの布袋にそばがら、輪切りプラスチックパイプ(ポリエチレン製、外径6mm、肉厚0,3mm、長さ7mm)、を充填物としてほぼすきまなく充填した枕の圧縮−荷重曲線を図5に示す。圧縮速度は30mm/minである。圧縮ヘッドは直径50mmの平面板である。
【0049】
実施例1で得られた枕の中身である片状物集合体の重量は同じ容量の布袋に収納されたそばがらや、輪切りプラスチックパイプに比べほぼ1/(5〜6)程度であり、実施例1で得られた枕が極めて軽量であるにも拘わらず、図5に示すように、ある特定の荷重に対する変位量が実施例1で得られた枕(イ)と、実験例1に用いた枕とで大差がない。また、輪切りプラスチックパイプを充填した枕(ロ)の圧縮−荷重曲線は線図がなめらかでなく、荷重と変位とのあいだに不安定な挙動が見られた。また、そばがらを充填した枕(ハ)の圧縮−荷重曲線は立ち上がりが急峻で、そばがらを充填した枕は実施例1で得られた枕(イ)の圧縮−荷重曲線に比べて圧縮初期のクッション性に劣るように感じられた。
【0050】
[比較例1]
へちま繊維を粉砕機で粉砕して長辺のサイズが0.5〜3cmほどの多数の粉砕へちま片を得た。
この粉砕へちま片は外観が綿くずのようにボサボサであり、平らな切断面を有するものではなかった。
【0051】
この多数の粉砕へちま片200gを実施例1で用いたと同じ容器にほぼ無荷重で充填しへちま片充填物となした。このへちま片充填物の厚さは8cmであった。このへちま片充填物を上から手のひらで各所10回ほど万遍なく圧縮した。圧縮時には圧縮個所のへちま片充填物の厚さは約3cmになった。圧縮終了後(除重後)のへちま片充填物の厚さは3.5cmであり、クッション性に劣るものであった。この圧縮終了後のへちま片充填物は容器から取り出すときにばらばらに崩れた。このへちま片充填物を実施例1に用いたと同じサイズの布袋に収納して枕を得た。布袋の中には隙間ができ、この枕は、かさが小さく、クッション性に劣るものであった。
【0052】
[比較例2]
実施例1で得られたと同様の多数のへちま片200gを縦30cm、横30cm深さ30cmの容器にほぼ無荷重で充填しへちま片充填物となした。このへちま片充填物の厚さは11cmであった。このへちま片充填物からなる片状物集合体を、この片状物集合体がほぼ隙間なく収納される布袋(縦30cm、横30cm、高さ11cm(うちのり))に収納して枕を得た。このへちま片充填物は、へちま片同士が接合していないので、布袋に収納するときに崩れてバラバラになり収納に手間取った。また、この枕は、使用初期にはかさだか性を有していたが、使用するにつれ形状が崩れ、クッション体としての形体安定性が不良であった。
【0053】
[実施例2]
実施例1で得られたと同様のへちま片200gを実施例1で用いたと同じ容器に充填し片状物充填物となした。この片状物充填物を上から手のひらで各所30回ほど万遍なく圧縮した。圧縮時には圧縮個所のへちま片充填物の厚さは3〜4cmになった。圧縮終了後(除重後)のへちま片充填物の厚さは5.5cmであった。この圧縮終了後の片状物片充填物(片状物集合体)は容器から取り出した後も多数のへちま片が密集状態に集合しており、個々のへちま片が互いに隣接のへちま片と、互いが接触する接触部において一方のへちま片の構成繊維の切断端部が、相手のへちま片の空隙部に食い込んでへちま片同士が極めて密に自着して自立性の立体となっていた。
【0054】
参考
実施例1で得られたと同様のへちま片と比重0.1g/cmのポリウレタンフォーム片(サイズ1cm×1cm×2cm)を容量比8:2で混合して片状物の集合体を得た。この片状物の集合体200gを実施例1で用いたと同じ容器に充填し片状物充填物となした。この片状物充填物を上から手のひらで各所10回ほど万遍なく圧縮した。圧縮時には圧縮個所のへちま片充填物の厚さは4〜5cmになった。圧縮終了後(除重後)のへちま片充填物の厚さは6.1cmであった。この圧縮終了後の片状物片充填物(片状物集合体)は容器から取り出した後も多数のへちま片が密集状態に集合しており、個々のへちま片が互いに隣接のへちま片と、互いが接触する接触部において一方のへちま片の構成繊維の切断端部が、相手のへちま片の空隙部に食い込んでへちま片同士が自着していた。
【0055】
この片状物集合体を、この片状物集合体がほぼ隙間なく収納される布袋(縦30cm、横30cm、高さ6.1cm(うちのり))に収納して枕を得た。この枕は、適度のかさだか性を有し、吸湿性やクッション性や通気性にすぐれ、クッション体としての形体安定性も良好であった。
【0056】
[実施例
実施例1で得たと同様の圧縮終了後の片状物片充填物(片状物集合体)を濃度3重量%のアクリル系エマルジョン接着剤水混合液に浸漬後遠心脱水機で10Gの遠心力で脱水後110℃で加熱乾燥して接着剤をキュアして片状物集合体を得た。加熱乾燥による片状物集合体の体積変化はほとんどなかった。
【0057】
この片状物集合体を、実施例1で用いたと同様の布袋に収納して枕を得た。この片状物集合体は自立性の立体となっているため、布袋に収納するときに崩れることがなく。収納がきわめて容易であった。この枕は、適度のかさだか性を有し、吸湿性や通気性にすぐれ、クッション性にきわめてすぐれていた。クッション体としての形体安定性は実施例1、3のクッション体より良好であった。
【0058】
[実施例
実施例1で得られたと同様のへちま片17.5kgを濃度3重量%のアクリル系エマルジョン接着剤水混合液に適量を逐次浸漬後遠心脱水機で10Gの遠心力で脱水し、その後ほぐして縦幅100cm、横幅100cm、深さ100cmのうちのりの容器にほぼ無荷重で充填しへちま片充填物となした。このへちま片充填物を上から各所10回ほど万遍なく圧縮した。圧縮終了後のへちま片充填物の厚さは46cmであった。この圧縮終了後のへちま片充填物(片状物集合体)は容器から取り出した後も多数のへちま片が密集状態に集合しており、個々のへちま片が互いに隣接のへちま片と、互いが接触する接触部において一方のへちま片の構成繊維の切断端部が、相手のへちま片の空隙部に食い込んでへちま片同士が自着することにより、自立性の立体となっていた。
【0059】
この圧縮終了後のへちま片充填物(片状物集合体)を110℃で加熱乾燥して接着剤をキュアして接着剤処理された片状物集合体を得た。加熱乾燥による片状物集合体の体積変化はほとんどなかった。
【0060】
この片状物集合体をスライス用刃付きのスライス機で厚さ15cmにスライスして縦幅100cm、横幅100cm、厚さ15cmの片状物集合体を得た。この片状物集合体は、適度のかさだか性を有し、吸湿性や通気性にすぐれ、クッション性にすぐれていて、外皮で覆ってクッション性のマットレスとして好適に用いることができた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の片状物集合体は、クッション性を必要とする寝具やインテリア用品に、吸湿性を備える素材として好適に適用できる。
【0062】
詳述するならば、へちま繊維は三次元網目構造を有する唯一の利用可能な繊維であり、内部に大きな空気層を有しているために、軽量で、しかも通気性に優れ、更には、吸水性、放水性並びに吸放湿性につても他の繊維に比較して群を抜いている。従って、吸湿性を備える素材として広範囲の用途が期待できる。
【0063】
なお、現状の寝具業界に於いての課題は、如何にすれば湿度を取って、爽やかな睡眠に入る寝具を発明するのか、にある。ちなみに、従来の中材の殆どが、ウレタンフオームや塩化ビニールパイプ等の石油製品であり、弾力性があるものの、湿気を吸わない。また、敷ふとんの場合、ウレタンフオームの場合は、その構造に於いて様々改良がなされ、通気性に富んだ素材が開発されているが、石油製品であることには変わりがなく、吸湿性の問題は、克服されるに至っていない。さらに、石油製品の場合、製造工程のみならず、製品の廃棄時に於いても、二酸化炭素を排出し、環境負荷が多い。更には、石油製品の場合、いずれは枯渇してしまう。
【0064】
その点、へちまは、栽培時には二酸化炭素を吸って酸素を放出し、また廃棄の場合には、プランターの素材としても再利用できる。土に埋めれば、土に戻るという環境に優しい素材である。本発明の片状物集合体は、限りのある資源の石油と違い、農地と太陽と人の手さえあれば、人類が存続する限り永久に利用できる持続可能な資源となり得る。
【0065】
また、わが国の農業は、有史以来の最大の危機に直面していると言っても過言ではないであろう。コメ余り現象により、米作農家には農地の三分の一に及ぶ減反政策が課せられている。そこで麦を栽培するなどすれば補助金が支給されるが、それでも農家は赤字の為に、耕作放棄地が増えている。本発明に於いては、農家にへちま栽培を促し、農家が米作以上の収入が得られることを目指している。因みに昔は、日本各地でへちま栽培が盛んで、戦前は、乾燥へちまが日本の輸出品としても有名であった。本発明の片状物集合体はわが国の農家再生の一助になる可能性を有している。
【符号の説明】
【0066】
2、2a、2b:へちま片
3:へちま繊維
6:切り口
8、8a、8b:構成繊維
9a、9b:切断端部
10:切断端
12:片状物集合体
14:接触部
22a、22b:空隙部
30:空洞部
図1
図2
図3
図4
図5