(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加速度をベクトル量として測定可能な加速度センサを備え、測定された加速度ベクトルに基づいて、装置を携帯したユーザの歩行に係る情報を取得する携帯型情報装置であって、
測定された複数の加速度ベクトルが円錐状に分布している可能性があるか否かを判定する軸分布判定手段と、
前記軸分布判定手段によって真の判定がなされた当該複数の加速度ベクトルの分布を円錐で近似し、当該円錐の狭まり具合である当該円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する円錐評価手段と
を有することを特徴とする携帯型情報装置。
前記軸分布判定手段は、前記携帯型情報装置に固定された装置座標系の軸であって、当該複数の加速度ベクトルが当該軸の正負双方にまたがって分布していない軸が少なくとも1つ存在する際、真の判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯型情報装置。
前記円錐評価手段は、正規化された当該複数の加速度ベクトルの分布を近似した当該円錐における高さhの所定高さ閾値Hに対する比率が高いほど、当該円錐における底面半径rの所定半径閾値Rに対する比率が低いほど、又は当該円錐における中心線と母線とのなす角度θの所定角度閾値Θに対する比率が低いほど、当該円錐がより狭小であると評価する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯型情報装置。
前記円錐評価手段は、正規化された当該複数の加速度ベクトルの分布を近似した当該円錐の高さhが所定高さ閾値H以上である際、当該円錐の底面半径rが所定半径閾値R以下である際、又は当該円錐における中心線と母線とのなす角度θが所定角度閾値Θ以下である際、当該円錐が狭小であると判定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯型情報装置。
前記歩行推定手段は、測定された加速度ベクトル群から重力加速度ベクトルを算出し、当該重力加速度ベクトルを用いて各時点での加速度ベクトルの重力方向成分を算出して、当該重力方向成分の時系列から歩行の候補となる加速度変動を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の携帯型情報装置。
前記歩行評価手段は、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して当該時間間隔の標準偏差sを算出し、当該時間間隔が指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する当該標準偏差sの比率s/Sが低いほど、当該加速度変動の歩行該当性がより高いと評価する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の携帯型情報装置。
前記歩行評価手段は、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して当該時間間隔の標準偏差sを算出し、当該時間間隔が指定範囲内に収まっており、且つ当該標準偏差sが所定の標準偏差閾値S以下である際、当該加速度変動は歩行に該当すると判定する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の携帯型情報装置。
前記円錐評価手段は、前記歩行評価手段から取得した標準偏差sの値が大きいほど、前記所定高さ閾値Hをより小さな値に決定若しくは更新し、又は前記所定半径閾値R若しくは前記所定角度閾値Θをより大きな値に決定若しくは更新する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の携帯型情報装置。
前記円錐評価手段は、正規化された当該複数の加速度ベクトルの分布を近似した当該円錐における高さhの所定高さ閾値Hに対する比率が高いほど、当該円錐における底面半径rの所定半径閾値Rに対する比率が低いほど、又は当該円錐における中心線と母線とのなす角度θの所定角度閾値Θに対する比率が低いほど、円錐狭小性がより高いと評価し、
前記歩行評価手段は、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して当該時間間隔の標準偏差sを算出し、当該時間間隔が指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する当該標準偏差sの比率s/Sが低いほど、当該加速度変動の歩行該当性がより高いと評価し、
評価された当該円錐狭小性と評価された当該歩行該当性とに基づいて歩行安定性を決定する歩行安定性決定手段を更に有する
ことを特徴とする請求項5、6、7又は9に記載の携帯型情報装置。
加速度をベクトル量として測定可能な加速度センサを備え、測定された加速度ベクトルに基づいて、装置を携帯したユーザの歩行に係る情報を取得する装置に搭載されたコンピュータを機能させる歩行安定性評価プログラムであって、
測定された複数の加速度ベクトルが円錐状に分布している可能性があるか否かを判定する軸分布判定手段と、
前記軸分布判定手段によって真の判定がなされた当該複数の加速度ベクトルの分布を円錐で近似し、当該円錐の狭まり具合である当該円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する円錐評価手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする歩行安定性評価プログラム。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ユーザの歩行を検出して、ユーザの位置・移動状況を把握する際、安定的な歩行が行われているかどうかを判断した上で、装置に内蔵されたセンサによって取得されたデータを解析する必要がある。ここで安定的な歩行とは、内蔵センサの出力において、当該出力からユーザの位置・移動状況を推定することが所定の精度で可能となる程度の、歩行に該当するデータが取得される状態を指す。
【0008】
尚、歩行が不安定であるために又は取り付けが不安定であるために、ユーザの所持する装置の姿勢がユーザに対して変動し、これによって歩行運動が原因ではないセンサ出力の変動が引き起こされた際、このような出力変動は、ユーザの位置・移動状況を推定する場合の障害となる。従って、安定的な歩行が行われている、とするためには、装置姿勢が歩行中のユーザに対して概ね変動せず安定していることも重要となる。
【0009】
しかしながら、上述したような従来技術を用いても、装置姿勢が安定していて歩行が安定的に行われているか否か、を判断することは困難である。
【0010】
例えば、特許文献1に開示された技術は、あくまでも装置が静止しているか否かを判定するのみであり、非静止時には、装置姿勢がユーザに対して安定しているか否かを判断することはできない。また、特許文献2に開示された技術も、加速度変動が歩行によるものであるか否かを判定するのみであり、歩行中の装置姿勢がユーザに対して安定しているか否かを判断できるものではない。
【0011】
さらに、特許文献3に開示された技術を用いても、環境の影響による外乱磁界の有無を判定するのみであり、装置姿勢の変動による磁界の外乱の有無を判定することはできない。
【0012】
尚、以上に述べた課題を解決することは、特に、装置内蔵のセンサ出力を用いて歩行者の室内等での位置を推定する際、非常に重要となる。実際、室内環境のようなGPS(Global Positioning System)が使用困難な場所において、そのような位置推定を高い信頼性をもって行うためには、装置姿勢が安定していて、位置推定を行えるまで十分に安定した歩行状態にあるか否か、を見極めることが必須となる。
【0013】
そこで、本発明は、装置姿勢が安定していて安定的な歩行が行われているか否かを評価することが可能な携帯型情報装置、プログラム、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、加速度をベクトル量として測定可能な加速度センサを備え、測定された加速度ベクトルに基づいて、装置を携帯したユーザの歩行に係る情報を取得する携帯型情報装置であって、
測定された複数の加速度ベクトルが円錐状に分布している可能性があるか否かを判定する軸分布判定手段と、
軸分布判定手段によって真の判定がなされた複数の加速度ベクトルの分布を円錐で近似し、この円錐の狭まり具合である円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する円錐評価手段と
を有する携帯型情報装置が提供される。
【0015】
この携帯型情報装置の軸分布判定手段に係る一実施形態として、軸分布判定手段は、携帯型情報装置に固定された装置座標系の軸であって、複数の加速度ベクトルが軸の正負双方にまたがって分布していない軸が少なくとも1つ存在する際、真の判定を行うことも好ましい。
【0016】
また、円錐評価手段に係る一実施形態として、円錐評価手段は、正規化された複数の加速度ベクトルの分布を近似した円錐における高さhの所定高さ閾値Hに対する比率が高いほど、この円錐における底面半径rの所定半径閾値Rに対する比率が低いほど、又はこの円錐における中心線と母線とのなす角度θの所定角度閾値Θに対する比率が低いほど、円錐がより狭小であると評価することも好ましい。
【0017】
さらに、円錐評価手段に係る他の実施形態として、円錐評価手段は、正規化された複数の加速度ベクトルの分布を近似した円錐の高さhが所定高さ閾値H以上である際、この円錐の底面半径rが所定半径閾値R以下である際、又はこの円錐における中心線と母線とのなす角度θが所定角度閾値Θ以下である際、円錐が狭小であると判定することも好ましい。
【0018】
また、本発明の携帯型情報装置は、測定された加速度ベクトルのデータにおける歩行の候補となる加速度変動を検出する歩行推定手段と、
加速度変動が歩行によるものかどうかの歩行該当性を評価する歩行評価手段と
を更に有することも好ましい。
【0019】
ここで、この歩行推定手段に係る一実施形態として、歩行推定手段は、測定された加速度ベクトル群から重力加速度ベクトルを算出し、重力加速度ベクトルを用いて各時点での加速度ベクトルの重力方向成分を算出して、重力方向成分の時系列から歩行の候補となる加速度変動を検出することも好ましい。
【0020】
また、歩行評価手段に係る一実施形態として、歩行評価手段は、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して時間間隔の標準偏差sを算出し、時間間隔が指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する標準偏差sの比率s/Sが低いほど、加速度変動の歩行該当性がより高いと評価することも好ましい。
【0021】
さらに、歩行評価手段に係る他の実施形態として、歩行評価手段は、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して時間間隔の標準偏差sを算出し、時間間隔が指定範囲内に収まっており、且つ標準偏差sが所定の標準偏差閾値S以下である際、加速度変動は歩行に該当すると判定することも好ましい。
【0022】
また、本発明の携帯型情報装置における他の実施形態として、円錐評価手段は、歩行評価手段から取得した標準偏差sの値が大きいほど、所定高さ閾値Hをより小さな値に決定又は更新し、又は所定半径閾値R若しくは所定角度閾値Θをより大きな値に決定又は更新することも好ましい。
【0023】
さらに、本発明の携帯型情報装置における他の実施形態として、円錐評価手段は、正規化された複数の加速度ベクトルの分布を近似した円錐における高さhの所定高さ閾値Hに対する比率が高いほど、この円錐における底面半径rの所定半径閾値Rに対する比率が低いほど、又はこの円錐における中心線と母線とのなす角度θの所定角度閾値Θに対する比率が低いほど、円錐狭小性がより高いと評価し、
歩行評価手段は、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して時間間隔の標準偏差sを算出し、時間間隔が指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する標準偏差sの比率s/Sが低いほど、加速度変動の歩行該当性がより高いと評価し、
評価された円錐狭小性と評価された歩行該当性とに基づいて歩行安定性を決定する歩行安定性決定手段を更に有することも好ましい。
【0024】
本発明によれば、さらに、加速度をベクトル量として測定可能な加速度センサを備え、測定された加速度ベクトルに基づいて、装置を携帯したユーザの歩行に係る情報を取得する装置に搭載されたコンピュータを機能させる歩行安定性評価プログラムであって、
測定された複数の加速度ベクトルが円錐状に分布している可能性があるか否かを判定する軸分布判定手段と、
軸分布判定手段によって真の判定がなされた複数の加速度ベクトルの分布を円錐で近似し、この円錐の狭まり具合である円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する円錐評価手段と
してコンピュータを機能させる歩行安定性評価プログラムが提供される。
【0025】
本発明によれば、さらにまた、加速度をベクトル量として測定可能な加速度センサを備え、測定された加速度ベクトルに基づいて、装置を携帯したユーザの歩行に係る情報を取得する装置
に搭載されたコンピュータにおける
ソフトウェアの情報処理による歩行安定性評価方法であって、
測定された複数の加速度ベクトルが円錐状に分布している可能性があるか否かを判定する第1のステップと、
第1のステップで真の判定がなされた複数の加速度ベクトルの分布を円錐で近似し、この円錐の狭まり具合である円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する第2のステップと
を有する歩行安定性評価方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の携帯型情報装置、歩行安定性評価プログラム及び方法によれば、装置姿勢が安定していて安定的な歩行が行われているか否かを評価することができる。また、その結果、ユーザの位置・移動状況をより正確に推定することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明による携帯型情報装置を所持して歩行する状況を説明するための概略図である。尚、
図1において、本発明による携帯型情報装置の一実施形態として携帯端末1が挙げられているが、携帯型情報装置は当然、携帯端末に限定されるものではない。
【0030】
図1(A)によれば、ユーザは、携帯端末1を所持しながら建物内を歩行している。この携帯端末1は、加速度をベクトル量として測定可能な加速度センサ100を備えている。携帯端末1において、この加速度センサ100から出力される加速度情報を入力した安定歩行評価・判定部10は、携帯端末1の姿勢が歩行中のユーザに対して概ね変動せず安定していて歩行が安定的に行われているか否かを判定し、又は歩行(端末姿勢)の安定性を評価する。
【0031】
ここで、安定的な歩行とは、加速度センサ100の出力において、当該出力からユーザの位置・移動状況を推定することが所定の精度で可能となる程度の、歩行に該当するデータが取得される状態を指す。
【0032】
携帯端末1は、さらに、地磁気センサ102及び/又はジャイロセンサ103と、加速度センサ100を含むこれらのセンサからの出力を用いてユーザの位置・進行方向を推定する位置・進行方向推定部16とを備えていることも好ましい。位置・進行方向推定部16は、例えば加速度センサ100及び地磁気センサ102からの出力を用いてユーザの進行する方位を決定し、さらに、例えばジャイロセンサ103からの出力を用いてユーザの進行向きの転換量を決定する。さらに、例えば加速度センサ100からの出力を用いて、歩数及び進行距離(道のり)を求め、進行距離情報と進行方向の変化情報とを勘案して、現在位置を推定する。
【0033】
位置・進行方向推定部16は、このようなユーザの位置・進行方向の推定の際、安定歩行評価・判定部10によって実施された歩行安定性の評価・判定結果に基づき、(所定以上の)歩行安定性があると評価・判定された場合にのみ、所定の精度・信頼性が確保された位置・進行方向を推定したものと判断する。または、評価された歩行安定性の度合いに応じ、推定した位置・進行方向に合わせてその推定の精度・信頼性を提示してもよい。
【0034】
携帯端末1は、このように装置姿勢が安定していて安定的な歩行が行われているか否かを適切に評価・判定するべく、具体的には、
(a)加速度センサ100によって測定された複数の加速度ベクトルが円錐状に分布している可能性があるか否かを判定し、
(b)上記(a)で真の判定がなされた複数の加速度ベクトルの分布を円錐(直円錐)で近似し、この円錐の狭まり具合である円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する。
【0035】
携帯端末1は、歩行安定性の評価・判定のため、さらに、
(c)加速度センサ100によって測定された加速度ベクトルのデータにおける歩行の候補となる加速度変動を検出し、
(d)検出された加速度変動が歩行によるものかどうかの歩行該当性を評価する
ことも好ましい。ここで、上記(d)においては、
(d’)検出された加速度変動の時間間隔を抽出してこの時間間隔の標準偏差sを算出し、この時間間隔が指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する当該標準偏差sの比率s/Sが低いほど、当該加速度変動の歩行該当性がより高いと評価してもよい。
【0036】
このように、携帯端末1を用い、複数の加速度ベクトルの分布の円錐狭小性を、歩行の安定性として評価・判定することができる。ここで、円錐狭小性は、加速度ベクトルの変動が歩行時に観測されるようなある方向範囲内の周期的な変化に相当するか否か、また相当する場合、加速度ベクトルの向きがどの程度小さな範囲内に収まるかを示す指標となる。
【0037】
さらに、携帯端末1を用いて、加速度データの歩行該当性を評価・判定することも可能となる。その結果、携帯端末1に内蔵されたセンサのみを用いることによって、装置姿勢が安定していて安定的な歩行が行われているか否かを評価・判定することができる。また、この評価・判定結果を用いて、ユーザの位置・移動状況をより正確に推定することも可能となるのである。
【0038】
尚、本発明による歩行安定性評価は、当然に、
図1(A)に示したようなユーザの建物内での歩行に対する評価・判定に限定されるものではない。例えば、
図1(B)に示したように、市街地での移動によって収集された端末内蔵のセンサからの出力データに基づいて、本発明による歩行安定性評価を実施することもできる。即ち、
図1(B)によれば、ユーザは、携帯端末1を所持しながら市街地の道路(歩道)を歩行によって進行する。携帯端末1は、このようなユーザの歩行の安定性をも、上述した方法によって評価・判定することができるのである。
【0039】
[携帯端末1の機能構成]
図2は、本発明による携帯端末1の一実施形態を示す機能構成図である。
【0040】
図2によれば、携帯端末1は、加速度センサ100と、表示部101と、プロセッサ・メモリとを有する。また、地磁気センサ102及び/又はジャイロセンサ103(
図1)を有していてもよい。さらに、通信部104を有することも好ましい。ここで、プロセッサ・メモリは、プログラムを実行することによってその機能を実現させる。
【0041】
また、プロセッサ・メモリは、機能構成部として、加速度データ蓄積部11と、円錐判断部12と、歩行判断部13と、歩行安定性決定部14と、歩行安定性データ蓄積部15とを有する。尚、これらの機能構成部が、安定歩行評価・判定部10(
図1)を構成する。また、地磁気センサ102及び/又はジャイロセンサ103が搭載された場合、更に位置・進行方向推定部16(
図1)を有することも好ましい。
【0042】
加速度センサ100は、加速度をベクトル量として測定する加速度測定計であり、例えばMEMS技術を用いて形成された、例えば静電容量方式又はピエゾ抵抗方式による、3軸タイプの加速度計測計とすることができる。加速度センサ100として、重力加速度を計測し、携帯端末1を所持したユーザの歩数をカウントすることを可能とする加速度センサを用いることも好ましい。
【0043】
地磁気センサ102(
図1)は、例えば、磁気抵抗(AMR、GMR又はTMR)効果、磁気インピーダンス(MI)効果、フラックスゲート(FG)方式又はホール効果を利用して地磁気を測定する3軸タイプの地磁気計測計とすることができる。尚、この地磁気センサ102と加速度センサ100とを組み合わせて、携帯端末1の方位を測定する方位測定部とすることも可能である。
【0044】
ジャイロセンサ103(
図1)は、角速度を検出するジャイロスコープであって、向きの転換(変化)を検知・測定する向き転換測定部として機能する。ジャイロセンサ103として、例えば、振動したアームに作用するコリオリ力による構造体の変形から角速度を検出する3軸タイプの振動ジャイロセンサを用いることができる。ここで、構造体は、水晶、圧電セラミックス等の圧電材料を素材として、ダブルT型、音叉型、H型、三角柱、円柱等の形状に形成されたものである。また、構造体を、シリコン等を素材として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で形成することもできる。さらに、ジャイロセンサ103として、流体式ジャイロセンサ、光学式ジャイロセンサ等を採用することも可能である。
【0045】
加速度データ蓄積部11は、加速度センサ100によって測定された各軸成分の加速度測定値を入力して、各(サンプリング)時点での加速度ベクトルを蓄積する。また、この加速度ベクトル(群)データを円錐判断部12に出力する。
【0046】
円錐判断部12は、軸分布判定部120と、円錐評価部121とを有する。軸分布判定部120は、測定された複数の加速度ベクトル(加速度ベクトル群)が円錐状に分布している可能性があるか否かを判定する。ここで、携帯端末1に固定された端末座標系の軸であって、加速度ベクトル群が当該軸の正負双方にまたがって分布していない軸が少なくとも1つ存在する際、真の判定(円錐状に分布している可能性があるとの判定)を行うことも好ましい。
【0047】
円錐評価部121は、軸分布判定部120によって真の判定がなされた加速度ベクトル群の分布を円錐で近似し、この円錐の狭まり具合である円錐の狭小性を、歩行の安定性として評価する。具体的には、正規化された加速度ベクトル群の分布を近似した円錐における高さhにおける、所定高さ閾値Hに対する比率が高いほど、この円錐がより狭小であると評価することも好ましい。また、正規化された加速度ベクトル群の分布を近似した円錐の高さhが所定高さ閾値H以上である際、この円錐が狭小であると判定することも好ましい。
【0048】
歩行判断部13は、歩行推定部130と、歩行評価部131とを有する。歩行推定部130は、測定された加速度ベクトルのデータにおける歩行の候補となる加速度変動を検出する。また、歩行評価部131は、加速度変動が歩行によるものかどうかの歩行該当性を評価する。具体的には、検出された加速度変動の時間間隔を抽出して、これらの時間間隔の標準偏差sを算出し、時間間隔が指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する当該標準偏差sの比率s/Sが低いほど、加速度変動の歩行該当性がより高いと評価することも好ましい。また、時間間隔が指定範囲内に収まっており、且つ標準偏差sが所定の標準偏差閾値S以下である際、加速度変動は歩行に該当すると判定することも好ましい。
【0049】
歩行安定性決定部14は、円錐評価部121において評価された円錐狭小性と、歩行評価部131において評価された歩行該当性とに基づいて、歩行安定性を決定する。
【0050】
歩行安定性データ蓄積部15は、歩行安定性決定部14によって、各期間において決定された歩行安定性を蓄積する。表示部101は、例えばディスプレイであり、決定された歩行安定性の情報を表示する。また、通信部104は、信号の送受信のための通信インタフェースであり、決定された歩行安定性の情報を、通信ネットワークを介して、例えば歩行安定性データ管理サーバに送信する。ここで、歩行安定性データ管理サーバは、複数の携帯端末1を所持したユーザにおける歩行安定性情報を、蓄積・集計・管理するサーバである。
【0051】
[軸分布判定]
図3は、加速度ベクトル群が円錐評価可能であるか否かを判定する軸分布判定を説明するためのグラフである。
【0052】
最初に、所定の評価・判定期間における各(サンプリング)時点での加速度ベクトルの群を取得し、端末(装置)に固定された端末座標系(xyz座標系)に、この加速度ベクトル群を取り込んで分布させる。
図3(A1)及び(A2)には、それぞれ円錐評価が可能である加速度ベクトル群、及び円錐評価が可能ではない加速度ベクトル群の分布を示す。
【0053】
図3(A1)の円錐評価可能な加速度ベクトル群は、端末座標系の原点から見て2π(半球)未満の立体角を張るように分布している。この分布は、各加速度ベクトルを大きさが1となるように正規化すれば、原点を頂点とし1つの高さhを有する円錐で近似されることが可能となる。
【0054】
一方、
図3(A2)の円錐評価が可能ではない加速度ベクトル群は、端末座標系の原点から見て2π(半球)以上の立体角を張るように分布している。この分布は、1つの円錐で近似することができない(高さhを規定することができない)。尚、
図3(A1)及び(A2)に示した分布を構成するに当たって、所定の大きさ範囲内に入らない大きさを有する加速度ベクトルデータは、ノイズとして除外することも好ましい。
【0055】
ここで、軸分布判定は、加速度ベクトル群が円錐評価可能であるか否かの判定であるが、このような
図3(A1)及び(A2)に示した2種類の分布を判別することに相当する。この判別方法の一実施形態を以下に説明する。
【0056】
図3(B)に、
図3(A1)の円錐評価の可能な加速度ベクトル群の分布の一例を示す。この分布内の複数の加速度ベクトルにおいて、加速度ベクトルのx成分A
X、y成分A
Y及びz成分A
Zにおける、
(a)最小値を、それぞれmin(A
X)、min(A
Y)及びmin(A
Z)とし、
(b)最大値を、それぞれmax(A
X)、max(A
Y)及びmax(A
Z)とする。
【0057】
図3(B)の分布においては、
(1) max(A
X)×min(A
X)<0,max(A
Y)×min(A
Y)<0,且つ
max(A
Z)×min(A
Z)>0
の関係が成り立つ。これは、複数の加速度ベクトルが、x軸及びy軸に関しては、軸の正負双方にまたがって分布しているが、z軸に関しては、軸の一方側(
図3(B)では負側)にのみ分布していることを示している。
【0058】
このように、円錐評価の可能な加速度ベクトル群の分布においては、xyz軸のうち、複数の加速度ベクトルが当該軸の正負双方にまたがって分布していない軸が少なくとも1つ存在する(
図3(B)ではz軸となる)ことが理解される。一方、円錐評価が可能ではない加速度ベクトル群の分布においては、
(2) max(A
X)×min(A
X)≦0,max(A
Y)×min(A
Y)≦0,且つ
max(A
Z)×min(A
Z)≦0
の関係が成り立ち、xyz軸の全てにおいて、複数の加速度ベクトルが軸の正負双方にまたがって分布することが理解される。
【0059】
これにより、
(3) max(A
X)×min(A
X)>0,又はmax(A
Y)×min(A
Y)>0,又は
max(A
Z)×min(A
Z)>0ならば、円錐評価が可能である、
(4) max(A
X)×min(A
X) ≦0,且つmax(A
Y)×min(A
Y) ≦0,且つ
max(A
Z)×min(A
Z) ≦0ならば、円錐評価が可能でない、
として、軸分布判定を行うことができる。
【0060】
この軸分布判定を行われた加速度ベクトル群は、(円錐評価が可能であるとの)真の判定が行われた際、次の円錐評価の処理に移行し、一方、偽の判定が行われた際、以後の処理を行うまでもなく、動作(歩行)が不安定であると判定されてもよい。
【0061】
[円錐評価・判定]
次いで、加速度ベクトル群の分布を近似した円錐の広がり具合に基づいて、当該円錐の狭小性を評価する。
【0062】
最初に、軸分布判定で真の判定がなされた加速度ベクトル群の分布を、円錐(直円錐)で近似する。この際、予め、複数の加速度ベクトルA
i=(A
Xi,A
Yi,A
Zi)(i=1,2,・・・,n:nはサンプリング数)を、次式
(5) x
i=A
Xi/|A
i|,y
i=A
Yi/|A
i|,z
i=A
Zi/|A
i|
|A
i|=(A
Xi2+A
Yi2+A
Zi2)
0.5
を用いて、正規化された加速度ベクトルa
i=(x
i,y
i,z
i)に変換する。
【0063】
次いで、正規化された加速度ベクトルa
iの先端位置(x
i,y
i,z
i)を、最小二乗法を用いて円錐の底面(平面)に近似する。ここで、最小二乗法は、残差の二乗の和が最小となるように、その現象に対し、予測関数f(x)のそれぞれの係数を決定する方法である。ここで、残差とは、i番目のデータa
iに対して予測された関数値f(a
i)と、測定されたデータm
iとの差、即ち、m
i−f(a
i)である。
【0064】
平面(円錐の底面)は、一般に、
(6) ax+by+cz=0
によって表される。ここで、(a,b,c)は、この平面に対する法線ベクトルとなる。正規化された加速度ベクトルa
i=(x
i,y
i,z
i)については以下の関係が成立する。
【数1】
【0065】
上式(7)を変形すると、次式
【数2】
が成立し、(a,b,c)を算出することができる。ここで、式(8)における「−1」は、逆行列であることを表す。
【0066】
算出されたベクトル(a,b,c)から決定される平面(円錐の底面)ax+by+cz=0と、原点(円錐の頂点)との距離、即ち円錐の高さhを、次式
【数3】
を用いて算出する。
【0067】
得られた高さhは、この円錐が正規化された加速度ベクトルa
iによることから、円錐の広がり具合を表す。即ち、高さhが大きいほど(1に近いほど)、円錐の広がりはより小さく、円錐がより狭小であることになる。これは、ユーザの動作による加速度ベクトルの向きの変動範囲がより小さいことを意味し、動作(歩行)が安定していることに相当する。そこで、一実施形態として、高さhが所定の高さ閾値H以上(h≧H)である際、円錐が狭小であると判定してもよい。
【0068】
図4は、加速度ベクトル群の分布を近似した円錐の広がり具合に基づいて、当該円錐の狭小性を評価する円錐評価を説明するためのグラフである。
【0069】
図4(A)、
図4(B)及び
図4(C)に、それぞれ(高さh)<(高さ閾値H)、(高さh)=(高さ閾値H)及び(高さh)>(高さ閾値H)の場合の円錐の状態を示す。ここで、
図4(B)及び
図4(C)の場合、即ち、
(10) (高さh)≧(高さ閾値H)
の際に、円錐の広がり具合が十分に小さく、円錐が狭小である(動作(歩行)が安定している)とする。尚、高さ閾値Hは、例えば0.9に設定される。
【0070】
また、
図4(D)に示すように、変更態様として、円錐の高さhの代わりに、円錐の底面半径rが所定半径閾値R以下である際、又は円錐中心線と母線とのなす角度θが所定角度閾値Θ以下である際、円錐が狭小であると判定することも可能である。ここで、特に、角度閾値Θは、動作(歩行)時における加速度ベクトルの向きのブレとして許容できる範囲に相当する。従って、判定のパラメータとして、円錐の高さh(=cosθ)の代わりに角度θを用い、角度閾値Θを採用することによって、直感的に所望の判定を行うことが容易となる。
【0071】
尚、底面半径rについては、例えば、正規化された加速度ベクトル群と平面ax+by+cz=0との交点が形成する領域を円で近似し、この円の半径をrとすることで導出される。また、角度θについては、例えば、複数の加速度ベクトル群における平均ベクトルを中心線とし、加速度ベクトルの各々と中心線とのなす角度のうちで最大値をθとすることで導出される。
【0072】
さらに、変更態様として、円錐における高さhの所定高さ閾値Hに対する比率が高いほど、円錐における底面半径rの所定半径閾値Rに対する比率が低いほど、又は円錐における角度θの所定角度閾値Θに対する比率が低いほど、この円錐がより狭小である、と評価することも可能である。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、加速度ベクトルの変動が歩行時に観測されるようなある方向範囲内の周期的な変化に相当するか否か、また相当する場合、加速度ベクトルの向きがどの程度小さな範囲内に収まるかを示す指標となる円錐狭小性を評価・判定することが可能となる。
【0074】
[歩行推定]
次いで、加速度データの歩行該当性を評価・判定する実施形態について説明する。最初に、測定された加速度ベクトルのデータにおける歩行の候補となる加速度変動を検出する。このような加速度変動の検出方法として、既知の方法を用いることが可能である。ここでは、測定された加速度ベクトル群から重力加速度ベクトルを算出する代表的な方法(ステップ1〜3)を説明する。
【0075】
(ステップ1)重力加速度ベクトルGを、所定時間(例えば2秒間)内に観測された複数の加速度ベクトルA
iの平均をもって近似的に導出する。即ち、
(11) G=ΣA
i/n
とする。ここで、Σは、iについての1からn(当該所定時間での加速度ベクトルのサンプリング数)までの総和(Summation)である。
(ステップ2)観測された各時点での加速度ベクトルA
iの重力方向成分g
iを、次式
(12) g
i=A
i・G (・は内積を示す)
を用いて算出する。
(ステップ3)重力方向成分g
iの時系列から、ピークを検出する。このピークをなす加速度変動が、歩行の候補となる。
【0076】
ここで、ピークの検出方法として、以下の3条件(a)〜(c)を全て満たす点をピークとする方法を用いることができる。
(a)前後の点よりも値が大きい(極大値をとる)。
即ち、g
i>g
i-1,且つg
i>g
i+1
(b)時間軸上のiを中心とする指定ウィンドウ{i−W,・・・,i+W}内で最大値である。
即ち、g
i=max(g
i-W,・・・,g
i+W)
(c)当該指定ウィンドウ{i−W,・・・,i+W}内での最大値と最小値との差が所定閾値D以上である。
即ち、max(g
i-W,・・・,g
i+W)−min(g
i-W,・・・,g
i+W)>D
【0077】
次いで、以上に説明したように、検出された歩行の候補となるピーク(加速度変動)が歩行によるものかどうかの歩行該当性を評価する。
【0078】
[歩行該当性評価・判定]
図5は、加速度変動が歩行によるものかどうかを評価・判定する歩行該当性評価を説明するためのグラフ及び概略図である。
【0079】
図5(A)に、検出された歩行の候補となるピーク(加速度変動)を示す。ここで、このピークが歩行によるものかどうかを判定する。この判定方法として、既知の方法を用いることが可能である。ここでは、ピークの時間間隔の標準偏差を算出する方法(ステップ4〜6)を説明する。
(ステップ4)検出されたピーク(の極大値又は極小値)の時間間隔T
1,T
2,・・・を算出する。
(ステップ5)時間軸上の指定ウィンドウ(例えば5秒)内における時間間隔T
1,T
2,・・・,T
mの標準偏差sを算出する。
(ステップ6)時間間隔T
1,T
2,・・・,T
mが、指定範囲(下限閾値と上限閾値との間の範囲)に収まっており、且つ標準偏差sが所定の標準偏差閾値S以下である際、当該ウィンドウ内のピーク(加速度変動)は歩行に該当する、と判定する。
【0080】
尚、上記ステップ6において、歩行に該当するか否かの判定の代わりに、
(ステップ6’)T
1,T
2,・・・,T
mが指定範囲内に収まっている場合に、所定の標準偏差閾値Sに対する標準偏差sの比率s/Sが低いほど、ピーク(加速度変動)の歩行該当性がより高い、と評価してもよい。
【0081】
[閾値H、R又はΘの更新]
ここで、他の実施形態として、上記ステップ5で算出した時間間隔の標準偏差sを、円錐評価にフィードバックし、例えば円錐の高さ閾値Hを動的に決定することも可能である。
【0082】
具体的には、
図5(A)及び(B)に示すように、上記ステップ5で算出された標準偏差sの値が大きいほど、円錐評価における高さ閾値Hをより小さな値に決定若しくは更新し、又は円錐評価における半径閾値R若しく角度閾値Θをより大きな値に決定若しくは更新することも好ましい。
【0083】
例えば、予め設定された基準高さ閾値H
S、基準半径閾値R
S、若しくは基準角度閾値Θ
Sに対して、決定された比率S/s若しくは比率s/Sを乗じた値を、高さ閾値H、半径閾値R、若しくは角度閾値Θとして決定又は更新してもよい。即ち、
(13) H=H
S×(S/s),R=R
S×(s/S)又はΘ=Θ
S×(s/S)
とすることも好ましい。尚、このような閾値の決定又は更新は、歩行評価部131(
図2)から標準偏差s及び標準偏差閾値Sのデータを入力した円錐評価部121の閾値設定部において、実行される。
【0084】
このようにフィードバックすることによって、閾値Sのみを調整するだけで、より速く歩行した場合であっても、安定歩行と判定することができる設定に調整可能となる。
【0085】
[歩行安定性評価・判定]
以上に説明した評価・判定方法に基づき、以下の条件(a)〜(c)が全て満たされた際、(装置(端末)姿勢が安定していて)安定的な歩行が行われていると判定することも好ましい。
(a)加速度ベクトル群が円錐評価可能であって、円錐の広がり具合(例えば円錐の高さh)が所定閾値以内(高さhが高さ閾値H以上)であり、円錐狭小と判定される。
(b)歩行の候補となる加速度変動(ピーク)が検出される。
(c)ピーク(加速度変動)の時間間隔が指定範囲内であって、その標準偏差sが標準偏差閾値S以下であり、歩行に該当すると判定される。
【0086】
さらに、安定的な歩行か否かを判定するのではなく、歩行の安定性を数値又は幾つかの段階として出力する形態も可能である。例えば、
(a)(円錐狭小性)=h/H (hが大きいほど狭小)
(b)(歩行該当性)=S/s (sが小さいほど該当)
(c)(歩行安定性)=(円錐狭小性)×(歩行該当性)
として、歩行が安定的かどうかを、数値(歩行安定性)で提示してもよい。ここで、(円錐狭小性)として、Θ/θ、又はR/rを用いることも可能である。
【0087】
また、
(a)(円錐狭小性)=(A判定) (h≧0.9)
(B判定) (0.9>h≧0.7)
(C判定) (h<0.7)
(b)(歩行該当性)=(A判定) (s≦0.2)
(B判定) (1≧s>0.2)
(C判定) (s>1)
(c)(歩行安定性)=(円錐狭小性)と(歩行該当性)とのうち判定の低い方(悪い方)
のように段階で提示してもよい。ここで、(円錐狭小性)の判定の段階を決めるパラメータとして、hの代わりに、θ又はrを用いることも可能である。
【0088】
尚、(円錐狭小性)の評価と(歩行該当性)の評価とは、どちらを先に行ってもよい。また、(円錐狭小性)の評価を行い、所定以上の判定(例えばA又はB判定)が得られた場合にのみ、(歩行該当性)を評価することも可能である。
【0089】
このように、歩行安定性を数値又は段階で提示することによって、後に実施されるユーザの位置・移動状況の推定における、要求される種々の精度のレベルに対応することができる。例えば、それほど高い精度を必要としない位置推定に対しては、所定以上の数値又は段階を示す歩行安定性ならば、その加速度データを採用してもよいとすることができる。
【0090】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、装置姿勢が安定していて安定的な歩行が行われているか否かを評価・判定することができる。また、その結果、安定的な歩行のデータを選別して使用することができるので、ユーザの位置・移動状況をより正確に推定することも可能となる。
【0091】
さらに、本発明は、携帯型情報装置(携帯端末1)に内蔵されたセンサのみを用いることによって、装置姿勢が安定していて安定的な歩行が行われているか否かを評価・判定することを可能にするのである。従って、本発明による携帯型情報装置の実施形態として、例えば、加速度センサを常備しているスマートフォン、タブレット型コンピュータ、電子書籍、PDA(Personal Digital Assistant)のようなユーザインタフェース装置も採用可能となる。
【0092】
以上に述べた本発明の種々の実施形態において、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。以上に述べた説明はあくまで例であって、何ら本発明を制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。