(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に設けられた照明手段と、車両の乗員の前側に配置されて透光率が可変な防眩バイザーとしての可変透光手段と、当該車両の前方領域に存在する輝体を検出する輝体検出手段と、前記輝体検出手段で検出した輝体に基づいて前記照明手段の発光光度と発光タイミングを制御する照明制御手段と、前記検出した輝体と前記制御された発光タイミングに基づいて前記可変透光手段の透光率を変化制御する透光率制御手段とを備え、前記照明制御手段は、検出された輝体の輝度が所定輝度よりも低輝度のときに前記照明手段を連続発光に制御し、高輝度のときに当該照明手段をパルス発光に切替え制御し、かつパルス発光の光度を連続発光時の高度よりも高光度に制御し、前記透光率制御手段は、前記パルス発光における非発光時の前記可変透光手段の透光率を発光時よりも低くすることを特徴とする車両の防眩装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、自車のヘッドランプ光が照射されていないときにはスクリーンの透光率が低く抑えられている。そのため、対向車のヘッドランプ光を減光する上では有効であるが、これと同時に道路照明や市街地照明等の外部光も減光されてしまう。特に、対向車が存在しない場合や、対向車のヘッドランプ光によって眩惑されるおそれが少ないような場合においてもスクリーンの低い透光率によって運転者が視認する領域が減光されてしまう。そのため、自車のヘッドランプ光で十分に照明できない周囲領域の視認性が低下し、安全確認が不十分になるという問題がある。また、自車のヘッドランプを周期的にパルス発光させるために、当該ヘッドランプ光によるトータルの光量(時間軸上で積分した光量)が連続発光している場合に比較して低いものになり、自車のヘッドランプ光で照明している前方領域の視認性も低下して当該領域での安全確認も不十分なものになる。
【0005】
本発明の目的は、対向車のヘッドランプ光やその他の照明光による眩惑を防止する一方で自車の前方領域を十分に安全確認することが可能な視認性を確保するようにした防眩装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防眩装置は、車両に設けられた照明手段と、車両の乗員の前側に配置されて透光率が可変な防眩バイザーとしての可変透光手段と、当該車両の前方領域に存在する輝体を検出する輝体検出手段と、輝体検出手段で検出された輝体に基づいて照明手段の光度と発光タイミングを制御する照明制御手段と、検出された輝体と制御された発光タイミングに基づいて可変透光手段の透光率を変化制御する透光率制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明において、照明制御手段は、
検出された輝体の輝度が所定輝度よりも低輝度のときに照明手段を連続発光に制御し、高輝度のときに照明手段をパルス発光に切替え制御し、かつパルス発光時の光度を連続発光時の高度よりも高光度に制御する。さらに、透光率制御手段は、パルス発光の非発光時の可変透光手段の透光率を発光時よりも低くする。
【0008】
本発明において、透光率制御手段
は、パルス発光において、検出した輝体の違いに応じて
非発光時の透光率を変化制御する。また、可変透光手段は少なくとも運転者の視認領域に対応する領域の透光率が変化制御可能に構成される。これらにおける透光率は単位時間当たりの透光量とも言えるものであり、単純に防眩バイザーの光透過率に限定されるものではなく、光透過率を時間軸上で積分した光透過量と言い換えることも可能である。さらに、可変透光手段は車両のフロントウインドに一体的に設けられ、あるいはフロントウインドとは別体に構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防眩装置よれば、自車の前方領域に対向車のヘッドランプ光等の高い輝度の輝体が存在し、当該輝体によって運転者が眩惑されるおそれのある状況となったときに、ランプユニットをパルス発光させるとともに発光光度を高め、さらにこのパルス発光に同期して防眩バイザーの透光率を変化制御するので、当該輝体による運転者の眩惑を防止する一方で自車の前方領域を安全確認するのに十分な視認性を確保することができる。
【0010】
本発明の防眩装置によれば、
検出された輝体の輝度が所定輝度よりも低輝度のときに照明手段を連続発光に制御し、高輝度のときに照明手段をパルス発光に切替え制御し、かつパルス発光時の光度を連続発光時よりも高光度に制御し、さらに、透光率制御手段は、パルス発光の非発光時の可変透光手段の透光率を発光時よりも低くするので、通常時と同じ明るさで前方領域を照明することができ、かつ前方領域の安全確認が可能になる。
【0011】
本発明の防眩装置によれ
ば、パルス発光において、検出された輝体の輝度の違いに対応して
非発光時の透光率を変化制御するので、高輝度の輝体の場合においても眩惑を有効に防止することができる。また、可変透光手段は少なくとも運転者の視認領域に対応する領域の透光率が変化制御可能に構成されるので、前方領域の安全確認の信頼性を高めることができる。さらに、可変透光手段は車両のフロントウインドに一体的に設けられ、あるいはフロントウインドとは別体に構成されるので、本発明を車両に適用することは容易である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を適用した実施形態1の自動車の概念構成図である。自動車の前部にはランプユニット2を有するヘッドランプHLが配設されており、当該自動車のフロントウインドFWの内面に沿ったダッシュボードDB内にはスライド上昇されたときに運転者に対面される防眩バイザー3が配設されている。また、当該フロントウインドFWの上部領域に前方監視カメラ4が配設されている。これらランプユニット2、防眩バイザー3、前方監視カメラ4は防眩コントローラ1に接続されており、この防眩コントローラ1での制御によって対向車のヘッドランプ光による眩惑を防止する一方で自車の周囲領域ないし前方領域を十分に安全確認することが可能な視認性を確保している。すなわち、前方監視カメラ4で自動車の前方領域を撮像し、得られた画像に基づいて前方領域に存在する輝体、特に対向車のヘッドランプ光を検出し、その検出結果に応じて自車のヘッドランプHL、すなわちランプユニット2の明るさ(光度)と点灯タイミングを制御し、同時に防眩バイザー3の透光率を制御するように構成している。
【0014】
前記防眩コントローラ1は、前方領域監視部11と、ランプ制御部12と、防眩バイザー制御部13と備えており、前方領域監視部11、ランプ制御部12、防眩バイザー制御部13はそれぞれ前記前方監視カメラ4、ランプユニット2、防眩バイザー3に接続されている。前記前方監視カメラ4は、従来から提供されているCCD撮像素子やMOS撮像素子を用いたデジタルカメラで構成されており、自車の前方領域を撮像し、撮像した画像を前記前方領域監視部11に出力する。この前方領域監視部11は当該撮像した画像に存在する輝点を検出し、この輝点から自車の前方領域に存在する輝体、例えば対向車を判定し、あるいは自車の前方に存在する先行車や、建物の照明灯や道路標識灯などを判定する。
【0015】
前記ヘッドランプHLに内装されているランプユニット2は、ここではLED(発光ダイオード)を光源としたランプユニットとして構成されており、LED21、リフレクタ22、照射レンズ23をユニット化したプロジェクタ型のランプユニットが用いられている。このランプユニット2では、LED21が発光したときに出射された光はリフレクタ22で反射されて照射レンズ23に入射され、この照射レンズ23によって所要の配光パターンで自車の前方領域に照射される。前記ランプ制御部1は、前記LED21の発光状態を制御することができ、特にこの発光状態として発光タイミングと発光光度を制御する。前者は、LED21を連続発光または所定の周期でのパルス発光のいずれかに制御する。後者はLED21の発光光度を高光度、中光度、低光度のいずれかに制御する。
【0016】
前記防眩バイザー3はフロントウインドFWにおける透光率が可変な可変透光フィルターとして構成されており、ここでは印加電圧を調整することによって透光率が変化されるLCD(液晶)フィルターで構成されている。この防眩バイザー3は、前記防眩コントローラ1によって制御される図には表れない駆動機構によってフロントウインドFWの内面に沿って上下にスライド移動可能に構成されており、ダッシュボードDBからスライド上昇されたときには、
図2に運転席側からみた概略図を示すように、運転者がフロントウインドFWを透して前方領域を視認したときに、当該前方領域の大部分を視認する領域にわたって延設されるように構成されている。
図1に示した前記防眩バイザー制御部13は防眩バイザー3、すなわちLCDフィルターに印加する電圧を3段階に変化制御して当該LCDフィルターを構成する偏光角を変化制御することにより、当該防眩バイザー3の透光率を高透光率、中透光率、低透光率のいずれかに制御することが可能とされている。
【0017】
図3は前記防眩コントローラ1のブロック構成図である。前記前方領域監視部11は、前記前方監視カメラ4で撮像した画像中に存在する輝点の輝度を検出する輝度検出部111と、各輝点の座標位置を検出する座標検出部112を備えている。さらに、これら輝度検出部111と座標検出部112の各検出出力に基づいて、所定のアルゴリズムで検出した輝点の主体となる輝体を判定する輝体判定部113を備えている。この実施形態では、当該輝体判定部113は、各輝点の主体となる輝体が対向車のヘッドランプであるか、接近した先行車のテールランプであるのか、あるいは、その他の運転者を眩惑するおそれがない低輝度の輝体、例えば遠方の先行車のテールランプ、建物の照明灯や道路標識灯等の低輝度輝体であるのかを判定する。
【0018】
前記前記ランプ制御部12は、発光タイミング制御部121と発光光度制御部122を備えている。発光タイミング制御部121は前記前方領域監視部11において判定した輝体が対向車または接近した先行車のときには前記LED21を所定の周期で断続的にパルス発光する制御を行ない、前方領域監視部11において判定した輝体がそれ以外の低輝度輝体のときには前記LED21を連続発光する制御を行う。このパルス発光の周波数は、例えば300Hz程度の運転者の肉眼ではパルス発光による点滅が認識できない周波数とする。また、ここではパルス発光のパルス幅のデューティ比は1/2としている。また、前記発光光度制御部122は発光タイミング制御部121において連続発光制御を行っているときには前記LED21に所定の通常電圧を供給して所定の光度(通常光度)で発光する制御を行うが、パルス発光制御を行っているときには当該LED21の発光光度を通常光度よりも高い光度、ここでは輝体が対向車のときには2倍の光度で発光するように高電圧を供給する。また、接近先行車のときには対向車の場合よりも低い光度、例えば通常光度の1.5倍の光度で発光するように中電圧を供給する。
【0019】
前記防眩バイザー制御部13は、防眩タイミング制御部131と透光率制御部132とを備えている。透光率制御部132は前記前方領域監視部11での輝体の判定に対応して前記防眩バイザー3に印加する電圧を3段階に変化制御し、この電圧制御により防眩バイザー3の透光率を高透光率、中透光率、低透光率のいずれかに制御する。ここでは、前方領域監視部11が輝体として対向車を判定したときには低透光率となるように印加電圧を第1透光電圧に制御し、輝体として接近先行車を判定したときには中透光率となるように第1透光電圧よりも低電圧の第2透光電圧に制御し、低輝度輝体を判定したときには高透光率となるように電圧の印加を停止する。なお、この高透光率はほぼ100%の透光率となって防眩バイザー3として機能しない状態である。また、前記防眩タイミング制御部131は前記ランプ制御部12の発光タイミング制御部121と同期して前記防眩バイザー13に印加する電圧を制御する。すなわち、透光率制御部が防眩バイザーに第1透光電圧または第2透光電圧を印加する際には、ランプユニット2でのパルス発光に同期して電圧の印加を停止する制御を実行する。
【0020】
以上の構成の防眩装置による防眩作用について説明する。前方監視カメラ4で自車の前方領域を撮像すると、前方領域監視部11は撮像した画像中の輝点を検出し、輝度検出部111は当該輝点の輝度を検出し、座標検出部112は当該輝点の座標を検出する。そして、所定以上の輝度の輝点を検出したときには、速やかに防眩バイザー3をスライド上昇させて運転者の前方領域に位置させる。次いで、輝体判定部113は当該輝点の輝度と座標を予め設定しているデータと対照することによって、当該輝点の元となる輝体が対向車のヘッドランプであるのか、接近した先行車のテールランプであるのか、遠方の先行車のテールランプ、あるいは建物の照明灯や道路標識灯であるのかを判定する。例えば、輝体が対向車のヘッドランプの場合には、
図4(a)のように、自車の右前方領域に周囲よりも輝度が極めて高い輝点BP1が現れる。また、輝体が接近している先行車のテールランプやリアフォグランプの場合には、
図4(b)のように、自車の直進領域に中程度ないし高い輝度の輝点BP2が現れる。さらに、輝体が遠方の先行車のテールランプ、建物の照明灯、街路灯、標識灯等の場合には、
図4(c)のように、低輝度の輝点BP3が現れる。
【0021】
前方領域監視部11において輝体の判定が行われると、ランプ制御部12と防眩バイザー制御部13は
図5のテーブルに基づいてそれぞれランプユニット2と防眩バイザー3の制御を実行する。すなわち、前方領域監視部11が輝体を低輝度輝体であると判定したときには、ランプ制御部12はランプユニット2に対して通常電圧を連続して供給し、ランプユニット2を通常光度で連続発光させる。同時に防眩バイザー制御部13は防眩バイザー3の透光率を高透光率にすべく防眩バイザー3には電圧を印加しない。前方領域監視部11が輝体を対向車と判定したときには、ランプ制御部12はランプユニット2に対して高電圧を所定の周波数のパルス電圧で供給し、当該ランプユニット2を高光度でパルス発光させる。同時に防眩バイザー制御部13は防眩バイザー3の透光率を低透光率にすべくそのパルス発光に同期して防眩バイザー3に第1透光電圧を印加する。前方領域監視部11が接近先行車と判定したときには、ランプ制御部12はランプユニット2に対して中電圧を所定の周波数のパルス電圧で供給し、当該ランプユニット2を中光度でパルス発光させる。同時に防眩バイザー制御部13はそのパルス発光に同期して防眩バイザー3の透光率を中透光率にすべく防眩バイザー3に第2透光電圧を印加する。
【0022】
図6は前方領域監視部11における輝体の判定結果と、これに対応するランプユニット2の発光状態と、防眩バイザー3の透光率の関係を示す図である。同図において、(a)は前方領域監視部11において輝体を判定したときの輝度を示しており、(b)はランプユニット2における発光光度を示しており、(c)は防眩バイザー3における透光率を示している。いずれも横軸を時間軸とし、輝体の違いに基づく時間経過に伴う変化を示している。TH状態時では前方領域監視部11が前方領域に存在する輝体を対向車のヘッドランプと判定している。このときには、輝体の輝度が高輝度であるので、ランプ制御部12はランプユニット2を通常光度の2倍の高光度で発光させ、かつ所定の周期でデューティ比1/2でパルス発光する。同時に防眩制御部13は当該パルス発光に同期して防眩バイザー3に印加する第1透光電圧を制御し、ランプユニット2の発光時には透光率が高透光率となるように制御し、発光していないときには透光率が低透光率となるように制御する。
【0023】
このため、ランプユニット2がパルス発光したタイミング時には防眩バイザー3が高透光率となるため、自車の運転者はランプユニット2で照明された自車の前方領域を防眩バイザー3を透して視認することができる。このとき、ランプユニット2のパルス発光は高周期であるのでパルス発光による断続発光を運転者が認識することはない。また、パルス発光のデューティ比は1/2であり、ランプユニット2の光度は通常の2倍であるので、時間軸上におけるランプユニット2の照明光量は通常発光と同じになり、前方領域を通常時と同じ明るさで照明することができる。その一方で、ランプユニット2がパルス発光しないタイミング時では防眩バイザー3は低透光率に制御されるので、この間は防眩バイザー3を透して運転者の眼に入る対向車のヘッドランプの光は減光されることになる。すなわち、対向車のヘッドランプの光量を時間軸上で1/2以下の光量に減光できる。これにより、対向車のヘッドランプによる運転者の眩惑が抑制されるとともに、自車の前方領域の視認性を良好な状態に確保することが可能になる。
【0024】
TM状態時では前方領域監視部11が前方領域に存在する輝体を接近した先行車であると判定している。このときには、輝体の輝度は中輝度であるので、ランプ制御部12はランプユニット2を通常光度の約1.5倍の中光度で発光させ、かつ所定の周期でデューティ比1/2でパルス発光する。一方、これと同時に防眩制御部13は当該パルス発光に同期して防眩バイザー3に第2透光電圧を印加し、ランプユニット2の発光時には透光率が高透光率となるように制御し、発光していないときには透光率が中透光率となるように制御する。
【0025】
このため、ランプユニット2がパルス発光したタイミング時には、高輝度と同様に防眩バイザーが高透光率となるため、自車の運転者はランプユニット2で照明された自車の前方領域を防眩バイザー3を透して視認することができる。このときにおいても、ランプユニット2の断続発光を運転者が認識することはない。また、パルス発光のデューティ比は1/2で、ランプユニットの光度は通常の1.5倍であるので、時間軸上におけるランプユニットの照明光量は通常発光よりも低下するが、接近している先行車のテールランプの光が存在するので自車の前方領域の視認性はそれほど低下することはない。一方、ランプユニット2がパルス発光しないタイミング時では防眩バイザー3は中透光率に制御されるので、この間は防眩バイザー3を透して運転者の眼に入る先行車のテールランプの光は減光されることになる。テールランプの輝度は対向車のヘッドランプよりも輝度が低いので、防眩バイザー3のかかる透光率でも十分に眩惑が防止できる。これにより、先行車に接近したときの運転者に対する眩惑が防止がされるとともに、自車の前方領域の視認性を良好な状態に確保することが可能になる。
【0026】
TL状態時では前方領域監視部11が前方領域に存在する輝体を低輝度輝体であると判定している。このときには運転者に対する眩惑のおそれが少ないため、ランプ制御部12はランプユニット2を通常光度で連続発光させる。一方、防眩制御部13は防眩バイザー3に電圧を印加せず、透光率が常に高透光率となるように制御する。このため、ランプユニット2は通常光度で発光して前方領域を照明し、防眩バイザー3は減光機能が停止される。したがって、対向車や接近先行車によって眩惑されるおそれがない状態で、運転者はランプユニット2によって通常光度で照明される前方領域を防眩バイザー3によって減光されることなく視認することができ、自車の前方領域の良好な視認性を確保することが可能になる。
【0027】
以上のように、実施形態1の防眩装置では自車の運転者が眩惑されるおそれのある状況となったときに、ランプユニットをパルス発光させるとともに発光光度を通常光度よりも高め、さらにこのパルス発光に同期して防眩バイザーの透光率を制御するので、対向車のヘッドランプや先行車のテールランプによる運転者の眩惑を防止する一方で自車の前方領域の安全確認に十分な視認性を確保することが可能になる。なお、防眩バイザー3をスライド上昇させる際のタイミングは、ランプユニットをパルス発光に切り替えるのと同時、あるいはそれ以降のタイミングであってもよい。また、パルス発光させる際のデューティ比は、1/2に限定されるものではなく1/2〜1/10の範囲の任意のデューティ比に設定するようにしてもよい。
【0028】
(実施形態2)
図7は実施形態2の概念図である。実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。この実施形態2では自動車のダッシュボード等の運転者の直前位置に運転者の視線を計測する視線計測カメラ5を備えている。この視線計測カメラ5は、既に知られているように、赤外線を運転者の顔に照射し、運転者から反射されてくる赤外線を撮像することにより、撮像した画像から運転者の瞳位置を検出することによって運転者の視線方向を検出する。
【0029】
また、この視線計測カメラ5に対応して、防眩コントローラ1には、検出された運転者の瞳位置と、前記前方監視カメラ4で撮像して得られた輝点とを結ぶ線分が防眩バイザー3と交差する防眩バイザー上の位置およびこの位置を含む所定の領域を防眩領域として設定する防眩領域設定部14を備えている。すなわち、
図8に運転者側から見た概略図を示すように、前記眩惑領域設定部14は、運転者が防眩バイザー3を透して前方領域に存在する対向車や各種照明を視認したときに、
図7に破線Iで示す運転者の視線が防眩バイザー3と交差する位置を検出し、この位置を含む所要の領域を
図8に斜線領域で示すように防眩領域3Aとして設定する。
【0030】
実施形態2によれば、前方領域監視部11において前方領域の輝体を判定し、この判定した輝体に応じてランプユニット2の発光制御と防眩バイザー3の透光率制御を行うことは同じである。しかし、実施形態2では視線計測カメラ5で検出した運転車の瞳位置に基づいて防眩領域設定部14において防眩バイザー3における防眩領域3Aを設定し、防眩バイザー制御部13での各制御をこの設定した防眩領域3Aに限定している。すなわち、防眩バイザー3を構成しているLCDフィルターを構成している多数のセルの内、防眩領域3Aとして設定されたセルについてのみ制御を行っている。
【0031】
したがって、前方領域監視部11において前方領域に存在する輝体を対向車のヘッドランプであると判定したときには、防眩領域設定部14において当該対向車のヘッドランプの位置と視線計測カメラ5による運転者の瞳位置に基づいて防眩バイザー3上における防眩領域3Aを設定し、この設定した防眩領域3Aについてのみ防眩バイザー制御部13の制御を実行する。これにより、設定された防眩領域3Aについてのみ透光率の制御とそのタイミングが制御されることになる。この制御そのものは実施形態1と同様である。これにより、防眩バイザー3では、運転者が対向車のヘッドランプを視認している領域において透光率が低下されることになり、当該対向車のヘッドランプによる眩惑が防止される。また、この防眩領域3Aにおいても実施形態1と同様の制御を行うことで前方領域の視認性が低下されることがないことは同じである。対向車の相対移動に伴って視線計測カメラ5における視線が変化されるので、
図8に鎖線で示すように、防眩領域3Aも防眩バイザー3上で移動されることになる。なお、防眩領域3A以外の領域では透光率は常に高透光率に制御されることになるので、防眩バイザー3を透しても眩惑のおそれのない輝体を含めた前方領域の視認性が低下されることはない。
【0032】
以上の実施形態においては、前方領域監視部11において輝体を判定する形態として、対向車のヘッドランプ、接近先行車のテールランプ、その他の眩惑のおそれのない輝体に区分して判定する形態例を示したが、これに限定されるものではなく、自車の運転者に対する眩惑の程度の違いに基づいて輝体を区分し、この区分に応じて自車のヘッドランプと防眩バイザーを制御するように構成してもよい。あるいは、輝体の輝度を複数に区分するのではなく、輝度の違いを連続的(アナログ的)に判定するようにしてもよい。このようにした場合には、輝度の連続的な変化に応じて自車のヘッドランプの光度と防眩バイザーの透光率を連続的に変化制御するように構成してもよい。このときには、光度と透光率のデューティ比を連続的に変化制御してもよい。なお、LEDは低電流で発光させると発光効率が高くなるので、防眩バイザーの非作動時にLEDの発光を低電流で連続発光させるように構成してもよい。
【0033】
また、実施形態は、本発明における防眩バイザーとしての可変透光手段をLCDフィルターで構成した例を説明したが、マイクロシャッターをマトリクス配列したメカニカルフィルターで防眩バイザーを構成してもよく、当該マイクロシャッターを前方領域の輝度に対応して、あるいはランプユニットのパルス発光に同期して開閉制御するように構成してもよい。また、防眩バイザーはフロントウインドの上部において通常は退避した位置に設置され、防眩時に下方にスライド下降、あるいは下方に回動させることによって自動的に運転者の視界内に移動配置されるように構成されてもよい。あるいは、防眩バイザーをフトントウインドの内面に一体的に貼り付けた構成としてもよい。
【0034】
実施形態においては特に言及していないが、ヘッドランプは複数光源や複数灯具ユニットで構成される場合が多いので、本発明においては少なくとも1つ以上の光源や灯具ユニットをパルス発光制御するように構成してもよい。また、実施形態1のように防眩バイザーの全領域の透光率を低下させる制御を行った場合には、信号機やその他の道路標識、あるいは他車の標識灯等のような眩惑対象とはならないものについても減光されることがある。そのため、前方監視カメラで撮像した画像から得られる道路情報や、ナビゲーション装置から得られる道路情報に基づいて音声等で運転者に注意を喚起するための補助装置を付設してもよい。