(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管理区間生成手段は、前記走行予定経路を構成する構成リンクを、当該構成リンクの区間長の合計値が前記最小区間長以上となるまで結合することにより前記管理区間を生成するととともに、
前記走行予定経路のうち互いに結合可能な前記構成リンクが連続している結合範囲の端において、前記構成リンクの区間長の合計値が前記最小区間長未満となる余りの区間が生じた場合に、前記結合範囲において当該余りの区間に隣接する前記管理区間と当該余りの区間とを結合する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の勾配情報生成システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2において、登坂角度や傾斜角の誤差が大きいと、これらに基づいて算出したエネルギー量の精度が悪くなるという問題があった。一般に、ある区間における登坂角度や傾斜角は、当該区間の両端の標高差に基づいて算出される。そのため、登坂角度や傾斜角は、区間長が小さい区間ほど、区間の両端の標高の誤差の影響を大きく受けることとなる。従って、区間長が小さい区間について算出したエネルギー量の精度が悪くなるという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、区間ごとに道路勾配を示す勾配情報において、区間における道路勾配の誤差を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明においては、車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、走行予定経路を分割した複数の管理区間を生成する管理区間生成手段と、管理区間ごとに道路勾配を示す勾配情報を生成する勾配情報生成手段とが構成される。そして、管理区間生成手段は、道路勾配の誤差に基づいて管理区間の最小区間長を設定する。このように、道路勾配の誤差に基づいて管理区間の最小区間長を設定することにより、管理区間の区間長が小さくなり過ぎることを防止し、道路勾配の誤差を抑制できる。従って、各管理区間における道路勾配の誤差を抑制した勾配情報を生成することができ、当該勾配情報が示す道路勾配に応じた制御を適切に行うことができる。
【0006】
走行予定経路は、車両が走行する予定の経路であればよく、現在地から目的地までを接続するように探索された経路であってもよい。また、走行予定経路は、現在地から目的地までの経路のうち、現在地から所定距離以内の経路であってもよい。走行予定経路取得手段は、車両の走行予定経路を取得すればよく、地図情報に基づいて走行予定経路を探索してもよいし、走行予定経路を外部の装置から取得してもよい。管理区間生成手段は、走行予定経路を分割した複数の管理区間を生成すればよく、走行予定経路が複数の管理区間によって構成されるように管理区間を生成すればい。例えば、管理区間生成手段は、もともと管理区間よりも細かく分割されている走行予定経路上の複数の構成リンクを結合することにより、管理区間を生成してもよい。また、走行予定経路を管理区間よりも上位の区間(例えば道路種別や車速ごとの区間)に分割し、当該上位の区間内にて最小区間長に基づいて複数の管理区間を生成してもよい。
【0007】
管理区間生成手段は、道路勾配の誤差に基づいて管理区間の最小区間長を設定すればよく、各管理区間における道路勾配の誤差が小さくなるように最小区間長を設定すればよい。区間長を大きくするほど道路勾配の誤差を小さくすることができるが、勾配情報の用途(運転案内、車両制御等)に応じて区間長が長くなり過ぎないように、最小区間長に上限値を設けてもよい。管理区間生成手段は、走行予定経路全体に対して一定の最小区間長を設定してもよいし、走行予定経路を構成する区間ごとに異なる最小区間長を設定してもよい。例えば、道路勾配の誤差特性が地域に依存する場合、管理区間生成手段は、走行予定経路が存在する地域ごとの誤差特性に応じて最小区間長を設定してもよい。ここで、道路勾配の誤差とは、勾配情報が示す道路勾配の真の道路勾配に対する偏差の大きさを表す指標であればよい。
【0008】
勾配情報生成手段は、管理区間ごとに少なくとも道路勾配を示す勾配情報を生成すればよく、例えば管理区間ごとに車両の走行状態(車速等)や渋滞度や道路形状(道路勾配以外)等を示す勾配情報を生成してもよい。
【0009】
さらに、管理区間生成手段は、管理区間における道路勾配の誤差の大きさが、所定の許容値以下となるように最小区間長を設定してもよい。これにより、各管理区間における道路勾配の誤差の大きさを許容値以下に抑制できる。許容値は、予め設定された一定の値であってもよいし、勾配情報を利用する外部装置等の要求や、ユーザの指定に応じて設定されてもよい。また、許容値は、走行予定経路を構成する区間に応じて異なる値が設定されてもよい。
【0010】
勾配情報生成手段は、管理区間の両端の地点の標高差に基づいて道路勾配を取得してもよい。この場合、各地点の標高を規定した地図情報を用意しておくことにより、各管理区間についての道路勾配を取得することができる。また、各管理区間における道路勾配の誤差の大きさは、管理区間の両端の地点の標高の誤差の大きさによって推定できる。そのため、管理区間生成手段は、管理区間の両端の地点の標高の誤差に基づいて、管理区間における道路勾配の誤差を取得してもよい。標高の誤差とは、地図情報が示す標高の真の道路勾配に対する偏差の大きさを表す指標であればよい。例えば、ある地点について複数回標高を計測した場合の計測値の平均値を真の標高と見なし、当該計測値の標準偏差を標高の誤差の指標として採用してもよい。標高の誤差特性は地形や標高の計測方法に依存するため、地形や標高の計測方法が異なる地域ごとに異なる標高の誤差が取得されてもよい。
【0011】
上述のように、管理区間生成手段は、もともと管理区間よりも細かく分割されている走行予定経路上の複数の構成リンクを結合することにより、管理区間を生成してもよい。この場合、管理区間の区間長は、構成リンクの区間長の合計値となる。従って、管理区間生成手段は、管理区間を構成する構成リンクの区間長の合計値が最小区間長以上となるまで構成リンクを結合することにより管理区間を生成できる。この場合、走行予定経路のうち互いに結合可能な構成リンクが連続している結合範囲の一方の端から順に構成リンクを結合していった場合、当該結合範囲の端において、構成リンクの区間長の合計値が最小区間長未満となる余りの区間が生じる。このような場合、管理区間生成手段は、結合範囲において当該余りの区間に隣接する管理区間と当該余りの区間とを結合してもよい。このように、区間長が最小区間長未満の余りの区間をそのままにするのではなく、隣接する管理区間に結合することにより、区間長が最小区間長未満の管理区間が生成されることを防止できる。結合範囲とは、互いに結合可能な構成リンクが連続している範囲であり、例えば道路種別が同一となる構成リンクが連続している範囲であってもよいし、車速や渋滞度や道路形状(道路勾配以外)等が所定基準よりも類似する構成リンクが連続している範囲であってもよい。すなわち、結合範囲とは、道路勾配の誤差に基づいて分割するよりも前に、走行予定経路を道路種別等に基づいて分割することにより形成された上位の区間であってもよい。
【0012】
以上のようにして生成した勾配情報に基づいて、管理区間ごとの車両の制御計画を生成する制御計画生成手段がさらに備えられてもよい。これにより、誤差の小さい道路勾配に基づいて精度よい車両の制御計画を立てることができる。車両の制御計画とは、道路勾配に応じた車両の制御であればよく、例えば道路勾配の変化に応じた車両の走行エネルギーを考慮した車両の制御であってもよい。ただし、勾配情報は、必ずしも車両の制御計画を生成するために生成されなくてもよく、例えば道路勾配を運転者に案内するために生成されてもよい。
【0013】
ところで、管理区間生成手段は、管理区間における道路勾配の誤差の大きさが所定の許容値以下となるように管理区間を生成するための手法として、管理区間の最小区間長を設定する以外の手法を採用してもよい。例えば、管理区間生成手段は、暫定的に生成した管理区間について道路勾配の誤差を算出し、当該道路勾配の誤差が許容値以下である場合に当該管理区間を確定してもよい。
【0014】
さらに、本発明のように、道路勾配の誤差に基づいて管理区間を生成する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような手段を備えた運転支援装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)勾配情報生成処理:
(3)他の実施形態:
【0017】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる勾配情報生成システムを構成するナビゲーション装置10および車両の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、車両に備えられている。ナビゲーション装置10は、制御部20と記録媒体30とを備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体30は、地図情報30aと勾配情報30bとを記録する。
【0018】
地図情報30aは、道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータと、ノード同士を接続するリンクについての情報を示すリンクデータと、ノード同士を接続する道路の形状を示す形状補間点データとを含んでいる。ノードは交差点に対応し、リンクは交差点間を接続する道路に対応する。ノードデータは、各ノードの位置(水平方向)と標高とを示す。なお、地図情報30aを予め作成する際に、各ノードの標高は、地図上に形成されたメッシュごとに標高を規定した標準標高データ(例えば国土地理院が提供する標高データ)に基づいて特定されている。各ノードの位置は標準標高データが示すメッシュ上にて標高が特定された標高点と異なるため、複数の標高点における標高を補間することにより各ノードの標高が特定されている。本実施形態では、地図上のすべてのメッシュについて同一の計測方法によって標高が計測されており、地図上のすべてのメッシュについて標高の標準偏差が同一となる標準標高データに基づいて各ノードの標高が特定されていることとする。従って、各ノードの標高の標準偏差も一定である。なお、標高の標準偏差とは、同一の地点において複数回標高を計測した場合の計測値の標準偏差であり、当該計測値の平均値を真の標高と見なした場合の真の標高に対する計測値の偏差の大きさを示す指標である。リンクデータは、リンクごとに水平方向におけるリンクの長さ(区間長)を示す情報と、リンクごとに道路種別を示す情報とを含んでいる。本実施形態において、道路種別によって一般道路と高速道路とが区別される。
【0019】
勾配情報30bは、走行予定経路を分割した複数の管理区間Kのそれぞれについて生成された区間別情報(
図1の勾配情報30bの一列分の情報)によって構成されている。区間別情報は、管理区間Kを構成する構成リンクLと、管理区間Kにおける道路勾配Cと、管理区間Kにおける平均推定車速Vと、管理区間Kの区間長Yとを示す情報である。ここで、走行予定経路とは、車両の現在地から目的地までの経路であり、現在地から目的地までを接続する複数の構成リンクLの集合である。構成リンクLとは、地図情報30aのリンクデータに規定されたリンクのうち、走行予定経路の一部を構成するリンクである。
【0020】
図2Aは、走行予定経路Rの全体を示す模式図である。同図に示すように、走行予定経路Rは現在地から目的地までの経路である。
図2B,2Cは、走行予定経路Rの一部を詳細に示す模式図である。同図に示すように、走行予定経路Rは、複数の構成リンクLによって構成されている。管理区間Kは、走行予定経路Rを分割した区間であり、走行予定経路R上において連続する複数の構成リンクLで構成される。ただし、管理区間Kは、走行予定経路R上の単数の構成リンクLによって構成されてもよい。
図2Aに示す走行予定経路Rは、道路種別が一般道路である構成リンクLが連続している2個の通常区間(2個)と、道路種別が高速道路である構成リンクLが連続している高速区間(1個)とで構成されている。
【0021】
平均推定車速Vは、管理区間Kを構成する各構成リンクLにおける推定車速の平均値である。本実施形態において、推定車速は、外部のサーバから取得された交通情報に基づいて構成リンクLごとに特定される。外部のサーバは、リンクごとに収集したプローブ情報に基づいて、各リンクを車両が走行した場合の平均的な車速を推定車速として特定し、当該推定車速をリンクごとに示す交通情報を車両に送信する。管理区間Kの区間長Yは、管理区間Kを構成する構成リンクLの区間長の合計値である。構成リンクLの区間長は、水平方向における構成リンクLの長さを意味する。
【0022】
道路勾配Cは、走行予定経路R上の単位距離あたりの標高の変化量を表す。
図2Dは、道路勾配Cを説明する模式図である。
図2Dにおいて、始点が地点Aであり、終点が地点Bである管理区間Kについての道路勾配Cを示す。地点A,Bの標高Hをそれぞれ標高H
A,H
Bと表記し、標高H
A,H
Bの標準偏差をS
A,S
Bと表記する。管理区間Kの両端の地点A,Bは、管理区間Kの両端を構成する構成リンクLのノードであって、管理区間Kの両端に存在するノードに対応する。地点A,Bにおける標高H
A,H
Bの標準偏差S
A,S
Bは、地点A,Bを含む各ノードにおける標高Hの標準偏差Sである。本実施形態において、地図情報30aが示す各ノードの標高Hの標準偏差Sは一定であるため、地点A,Bにおける標高H
A,H
Bの標準偏差S
A,S
Bは互いに同一の値となっている。なお、各ノードの標高Hの標準偏差Sは、地図情報30aを作成するために各ノードの標高Hを算出する際に使用した標準標高データにおける標高の標準偏差であり、当該標準標高データにて指定された値である。各ノードの標高Hの標準偏差Sは、予め記録媒体30に記録されている。
【数1】
前記の(1)式に示すように、道路勾配Cは、管理区間Kにおいて最後に車両が走行する地点Bの標高H
Bから、当該管理区間Kにおいて最初に車両が走行する地点Aの標高H
Aを減算した標高差を、水平方向における管理区間Kの区間長Yで除算した値である。最後に走行する地点Bの標高H
Bが、最初に走行する地点Aの標高H
Aよりも大きい場合、道路勾配Cは正の値となり、正の道路勾配Cは上り勾配を意味する。反対に、最後に走行する地点Bの標高H
Bが、最初に走行する地点Aの標高H
Aよりも小さい場合、道路勾配Cは負の値となり下り勾配を意味する。
【0023】
地図情報30aが示す地点Aの標高H
Aが10mで、地図情報30aが示す地点Bの標高H
Bが0mである場合について考える。管理区間Kの区間長Yが50mである場合には、地図情報30aに基づく道路勾配Cは−20%となり、管理区間Kの区間長Yが500mである場合には地図情報30aに基づく道路勾配Cは−2%となる。ここで、地図情報30aが示す地点A,Bの標高H
A,H
Bがそれぞれ±5mの誤差を有すると仮定する。この場合、地点Bにおける真の標高は−5〜5mとなり得、地点Aにおける真の標高は5〜15mとなり得る。従って、地点A,Bにおける真の標高差は−20〜0mとなり得る。従って、管理区間Kの区間長Yが50mである場合には真の道路勾配Cは−40〜40%(−20±20%)となり得、地図情報30aに基づく道路勾配C(−20%)は真の道路勾配C(−20±20%)に対して±20%の誤差を有する。一方、管理区間Kの区間長Yが500mである場合には真の道路勾配Cは−4〜0%(−2±2%)となり得、地図情報30aに基づく道路勾配C(−2%)は真の道路勾配C(−2±2%)に対して±2%の誤差を有する。道路勾配Cの分母を構成する管理区間Kの区間長Yが大きくなるほど、分子を構成する標高差の誤差の影響は抑制され、標高の誤差が一定であれば管理区間Kの区間長Yが大きいほど道路勾配Cの誤差は小さくなる。
【0024】
車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とユーザI/F部44と通信I/F部45と動力ECU46と動力部47とを備える。
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の位置を算出するための信号を制御部20に出力する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を制御部20に出力する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角加速度に対応した信号を制御部20に出力する。
【0025】
制御部20は、車速センサ42およびジャイロセンサ43から出力された信号に基づく自立航法情報と地図情報30aとに基づいて車両が存在し得る比較対象道路を複数設定し、GPS受信部41にて取得されたGPS信号の誤差円に基づいて比較対象道路を絞り込む。そして、制御部20は、絞り込まれた比較対象道路のうち、自立航法軌跡と形状が最も一致する道路を車両が走行している走行道路として特定するマップマッチング処理を行い、当該マップマッチング処理によって特定された走行道路上で車両の現在地を特定する。
【0026】
ユーザI/F部44は、制御部20から出力された映像信号や音声信号に基づいて各種案内を出力する出力装置(ディスプレイ,スピーカ等)と、ユーザから目的地の指定等の各種操作を受け付ける入力装置(操作ボタン、タッチセンサ等)とを含む。
通信I/F部45は、外部のサーバから上述の交通情報を受信するための通信回路を備える。通信I/F部45が受信した交通情報は制御部20に出力される。
【0027】
動力ECU46は、動力部47を制御するコンピュータである。本実施形態の動力部47は、動力源としてモータ47aとエンジン47bとを備える。また、動力部47は、モータ47aに電力を供給するバッテリ47cを備える。バッテリ47cは充電可能な電池であり、動力ECU46はバッテリ47cに充電されている残電力量を取得する。本実施形態の車両において、モータ47aとエンジン47bとから駆動輪に供給される動力比が可変であり、動力ECU46はモータ47aの残電力量等に基づいて動力比を変化させる。
【0028】
制御部20はナビゲーションプログラム21を実行する。ナビゲーションプログラム21は、走行予定経路取得部21aと管理区間生成部21bと勾配情報生成部21cと送信部21dとを含む。
走行予定経路取得部21aは、車両の走行予定経路を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、地図情報30aに基づいて、公知の経路探索手法によって出発地から目的地までを接続する経路を探索する。走行予定経路Rは、出発地から目的地までを接続する経路のうち、車両の現在地よりも目的地側の部分である。従って、
図2Aに示すように、走行予定経路Rは、現在地から目的地までを接続する経路となる。なお、走行予定経路Rを特定する情報として、走行予定経路Rを構成する構成リンクLを示す情報(不図示)が記録媒体30に記録される。
【0029】
管理区間生成部21bは、走行予定経路Rを分割した複数の管理区間Kを生成する機能を制御部20に実行させるモジュールである。本実施形態において、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、走行予定経路Rを構成する複数の構成リンクLを結合することにより、結果として、走行予定経路Rを分割した複数の管理区間Kを生成する。そして、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、道路勾配Cの誤差に基づいて管理区間Kの最小区間長Xを設定する。
【0030】
具体的に、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、管理区間Kにおける道路勾配Cの誤差の大きさが、所定の許容値G以下となるように最小区間長Xを設定する。管理区間生成部21bの機能により制御部20は、記録媒体30に記録されている許容値G(
図1で不図示)を取得する。許容値Gは、例えば動力ECU46やユーザによって設定される値であり、動力ECU46やユーザが許容できる道路勾配Cの標準偏差の上限値を意味する。
【0031】
最小区間長Xを設定するにあたり、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、管理区間Kの両端の地点の標高Hの誤差に基づいて、管理区間Kにおける道路勾配Cの誤差を取得する。すなわち、制御部20は、道路勾配Cの誤差の指標として道路勾配Cの標準偏差Zを採用し、当該道路勾配Cの標準偏差Zを管理区間Kの両端の地点の標高Hの標準偏差Sに基づいて取得する。道路勾配Cの標準偏差Zは、地図情報30aに基づく道路勾配Cの真の道路勾配Cに対する誤差の大きさを表す指標である。制御部20は、任意の区間長Yの管理区間Kにおける道路勾配Cの標準偏差Zを示す関数を、管理区間Kの両端の地点の標高Hの標準偏差Sに基づいて取得する。
図2Dに示す任意の区間長Yを有する管理区間Kにおける道路勾配Cの標準偏差Zは、下記の(2)式によって得ることができる。
【数2】
前記の(2)式に示すように、区間長Yを有する管理区間Kにおける道路勾配Cの標準偏差Zは、当該管理区間Kの両端の地点A,Bにおける標高H
A,H
Bの標準偏差S
A,S
Bに基づく関数であって、区間長Yに反比例する関数で表される。本実施形態において、標高H
A,H
Bの標準偏差S
A,S
Bは地点(ノード)に依存しないため、前記の(2)式の分子は走行予定経路R上の全区間において一定の定数となる。
【0032】
図2Eは、管理区間Kの区間長Yと道路勾配Cの標準偏差Zとの関係を示すグラフである。管理区間生成部21bの機能により制御部20は、道路勾配Cの標準偏差Zが許容値Gと等しくなる管理区間Kの区間長Yを算出し、当該算出した区間長Yを最小区間長Xとして設定する。すなわち、最小区間長Xは、前記の(2)における道路勾配Cの標準偏差Zに許容値Gを代入し、区間長Yについて解くことにより得られる。すなわち、最小区間長Xは、下記の(3)式によって表される。
【数3】
本実施形態において、標高H
A,H
Bの標準偏差S
A,S
Bは地点に依存しないため、最小区間長Xは走行予定経路R上の全区間において一定の定数となる。
【0033】
管理区間生成部21bの機能により制御部20は、管理区間Kを構成する構成リンクLの区間長の合計値が最小区間長X以上となるまで構成リンクLを結合することにより管理区間Kを生成する。具体的に、制御部20は、走行予定経路Rのうち互いに結合可能な構成リンクLが連続している結合範囲の一方(現在地側)の端から順に構成リンクLを結合していく。
図2Bの例では、構成リンクL
1〜L
3の区間長の合計値が最小区間長X未満であり、区間長の合計値が最小区間長X以上となる構成リンクL
1〜L
4が結合されることにより管理区間K
1が生成されている。管理区間K
1を生成すると、制御部20は、管理区間K
1に対して目的地側に隣接する構成リンクL
5から順に構成リンクLを結合していく。本実施形態において、結合範囲とは、道路種別が同一の構成リンクLが連続している範囲であり、
図2Aの場合には2個の通常区間と1個の高速区間とがそれぞれ結合範囲となる。
【0034】
図2B,2Cに示すように、管理区間Kを構成する構成リンクLの区間長の合計値が最小区間長X以上となるまで構成リンクLを結合するため、管理区間Kの区間長Yが最小区間長X未満となることはない。
図2Cに示すように、結合範囲の現在地側の端から順に構成リンクLを結合していくと、結合範囲の目的地側の端において、区間長Wが最小区間長X未満となる余りの区間Fが生じる。そこで、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、結合範囲において当該余りの区間Fに隣接する管理区間Kと当該余りの区間Fとを結合する。
図2Cの例では、余りの区間Fが隣接する管理区間K
51に結合されている。
【0035】
勾配情報生成部21cは、管理区間Kごとに道路勾配Cを示す勾配情報30bを生成する機能を制御部20に実行させるモジュールである。上述したように区間別情報は、管理区間Kごとに、管理区間Kにおける道路勾配Cと、管理区間Kを構成する構成リンクLと、管理区間Kにおける平均推定車速Vと、管理区間Kの区間長Yとを示す情報である。勾配情報生成部21cの機能により制御部20は、前記の(1)式によって、管理区間Kの両端の地点の標高差を管理区間Kの区間長Yで除算した値を道路勾配Cとして算出する。
【0036】
勾配情報生成部21cの機能により制御部20は、管理区間Kを構成する各構成リンクLにおける推定車速についての区間長の加重平均値を平均推定車速Vとして算出する。制御部20は、各管理区間Kについて道路勾配Cと構成リンクLと平均推定車速Vと区間長Yとを示す区間別情報を生成し、すべての管理区間Kについての区間別情報で構成される勾配情報30bを記録媒体30に記録する。
【0037】
送信部21dは、勾配情報30bを車両に送信する機能を制御部20に実行させるモジュールである。送信部21dの機能により制御部20は、勾配情報30bが記録媒体30上に生成されると、当該勾配情報30bを車両の動力ECU46に送信する。
【0038】
動力ECU46は、勾配情報30bに基づいて走行予定経路Rにおける動力比制御計画を生成する。動力比制御計画とは、走行予定経路Rを構成する管理区間Kごとにモータ47aとエンジン47bとの動力比を設定する情報である。動力ECU46は、目的地に到達する前にバッテリ47cにおける残電力量が0とならないように、各管理区間Kにおけるモータ47aの動力比を設定する。具体的に、動力ECU46は、勾配情報30bが管理区間Kごとに示す道路勾配Cに基づいて各管理区間Kを走行する際に必要なエネルギー量を算出する。
【0039】
そして、動力ECU46は、管理区間Kを走行する際に必要なエネルギー量を走行予定経路R全体について合計した値が、バッテリ47cにおける残電力量によってモータ47aが出力可能なエネルギー量以下である場合、すべての管理区間Kにおいてモータ47aの動力比を100%とする動力比制御計画を生成する。一方、管理区間Kを走行する際に必要なエネルギー量を走行予定経路R全体について合計した値が、バッテリ47cにおける残電力量によってモータ47aが出力可能なエネルギー量よりも大きい場合、少なくとも1個の管理区間Kにおいてモータ47aの動力比を100%未満とする動力比制御計画を生成する。車速が大きいほどモータ47aに供給する電力のロスが大きくなるため、動力ECU46は、車速が大きい管理区間Kほどエンジン47bとの動力比が大きくなるように動力比制御計画を生成する。
【0040】
なお、管理区間Kを走行する際に必要なエネルギー量は、例えば特開2000−287302号公報に記載されるように、管理区間Kにおける加速に要する力と、路面に平行な方向に作用する重力の分力と、空気抵抗力と、車輪の転がり抵抗力とを考慮して算出できる。管理区間Kを走行する際に必要なエネルギー量を算出するために必要な各パラメータ(車両の質量,転がり摩擦係数,空気密度,重力加速度,空気抵抗の効力係数,車両の正面投影面積)は記録媒体30に記録されている。また、動力ECU46は、路面に平行な方向に作用する重力の分力を道路勾配Cに基づいて算出する。また、動力ECU46は、管理区間Kにおける車速として平均推定車速Vを適用する。さらに、動力ECU46は、管理区間Kにおける加速度を、管理区間Kにおける車速の変化量を管理区間Kの区間長Yで除算することにより算出する。管理区間Kにおける車速の変化量は、当該管理区間Kに対して目的地側に隣接する管理区間Kにおける平均推定車速Vから、当該管理区間Kに対して現在地側に隣接する管理区間Kにおける平均推定車速Vを減算した値を、走行時間(区間長Y/平均推定車速V)で除算することにより得られる。
【0041】
以上説明した本実施形態の構成において、道路勾配Cの誤差の大きさを示す標準偏差Zに基づいて管理区間Kの最小区間長Xを設定することにより、管理区間Kの区間長Yが小さくなり過ぎることを防止し、道路勾配Cの誤差を抑制できる。従って、各管理区間Kにおける道路勾配Cを抑制した勾配情報30bを生成することができ、当該勾配情報30bが示す道路勾配Cに応じた動力比の制御を適切に行うことができる。
【0042】
また、各管理区間Kにおける道路勾配Cの標準偏差Zの大きさが許容値G以下となるように最小区間長Xを設定することにより、道路勾配Cの誤差を抑制できる。また、制御部20は、前記の(1)式によって、管理区間Kの両端の地点A,Bの標高差に基づいて道路勾配Cを取得するため、各地点A,Bの標高を規定した地図情報30aを用意しておくことにより、各管理区間Kについての道路勾配Cを取得することができる。また、管理区間Kの両端の地点A,Bの標高差に基づいて道路勾配Cを取得するため、制御部20は、前記の(2)式によって、管理区間Kの両端の地点の標高の標準偏差Sに基づいて道路勾配Cの標準偏差Zを算出できる。さらに、区間長Wが最小区間長X未満の余りの区間Fをそのままにするのではなく、隣接する管理区間Kに結合することにより、区間長Yが最小区間長X未満の管理区間Kが生成されることを防止できる。従って、誤差の小さい道路勾配を示す勾配情報30bに基づいて、精度よい動力比制御計画を生成できる。
【0043】
(2)勾配情報生成処理:
次に、勾配情報生成処理の一例について詳細に説明する。
図3Aは、勾配情報生成処理を含む車両制御処理のフローチャートである。まず、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、公知の経路探索手法によって出発地から目的地までを接続する経路を探索する(ステップS100)。次に、制御部20は、車両の現在地と交通情報とを取得する(ステップS105)。制御部20は、車両が走行している道路である走行道路上において車両の現在地を特定し、通信I/F部45を介して外部のサーバからリンクごとに推定車速を示す交通情報を取得する。
【0044】
次に、制御部20は、勾配情報生成処理を実行する(ステップS110)。すなわち、ステップS100にて探索された出発地から目的地までの経路のうち、車両の現在地から目的地までの経路である走行予定経路Rについて勾配情報30bを生成する勾配情報生成処理を実行する。なお、勾配情報生成処理の詳細については後述する。勾配情報生成処理によって勾配情報30bが記録媒体30上に生成されると、送信部21dの機能により制御部20は、勾配情報30bを車両の動力ECU46に送信する(ステップS115)。
【0045】
勾配情報30bを取得した動力ECU46は、勾配情報30bに基づいて走行予定経路Rにおける動力比制御計画を生成する。すなわち、動力ECU46は、走行予定経路R上においてバッテリ47cにおける残電力量が0とならないように、管理区間Kごとにモータ47aとエンジン47bとの動力比を設定する。ただし、勾配情報30bに応じた動力比の制御がユーザによって許可されている場合には動力比制御計画を生成し、勾配情報30bに応じた動力比の制御がユーザによって許可されていない場合には動力比制御計画を生成しない。動力比制御計画を生成する際に、動力ECU46は、管理区間Kごとに走行に要するエネルギー量を算出する。動力ECU46は、エネルギー量の算出において、勾配情報30bが示す管理区間Kごとの道路勾配Cを使用する。
【0046】
次に、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、ユーザI/F部44にてリルートまたは目的地変更の操作が受け付けられたか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、目的地までの経路を再探索する必要があるか否かを判定する。
【0047】
リルートまたは目的地変更の操作が受け付けられたと判定した場合(ステップS120:Y)、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、ステップS100に戻り経路探索を再度実行する。一方、リルートまたは目的地変更の操作が受け付けられたと判定しなかった場合(ステップS120:N)、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、勾配情報30bの送信から所定の更新期間が経過したか否かを判定する(ステップS125)。更新期間(例えば10分)は、記録媒体30に記録されている。なお、ステップS125において、制御部20は、勾配情報30bの送信から所定距離走行したか否かを判定してもよい。
【0048】
勾配情報30bの送信から更新期間が経過したと判定した場合(ステップS125:Y)、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、ステップS105に戻る。更新期間が経過する間に車両の現在地が目的地に接近しているため、走行予定経路Rの始点を目的地側に進行させることができる。従って、勾配情報30bのデータ量の制限上、現在位置から所定距離以内の管理区間Kについてのみ勾配情報30bが生成可能な構成において、勾配情報30bが生成可能な区間を徐々に目的地側へと進めることができる。一方、勾配情報30bの送信から更新期間が経過したと判定しなかった場合(ステップS125:N)、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、車両が目的地に到達したか否かを判定する(ステップS130)。例えば、制御部20は、現在地と目的地とが所定距離(例えば100m)以内である場合に、車両が目的地に到達したと判定する。車両が目的地に到達したと判定した場合(ステップS130:Y)、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、車両制御処理を終了させる。一方、車両が目的地に到達したと判定しなかった場合(ステップS130:N)、走行予定経路取得部21aの機能により制御部20は、ステップS120に戻る。
【0049】
次に、車両制御処理(
図3A)のステップS110において実行される勾配情報生成処理について説明する。
図3Bは、勾配情報生成処理のフローチャートである。まず、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、道路勾配Cの誤差の許容値Gを取得する(ステップS200)。地図情報30aに基づく道路勾配Cの誤差の許容値Gは、道路勾配Cの標準偏差Zの上限値である。
【0050】
次に、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、走行予定経路R上に存在するノードの標高Hの標準偏差Sを取得する(ステップS205)。走行予定経路R上に存在するノードの標高Hの標準偏差Sは、地図情報30aの作成するために各ノードの標高Hを算出した際に使用した標準標高データ(例えば国土地理院が提供する標高データ)にて指定された値である。本実施形態において、走行予定経路R上に存在するノードを含め、各ノードの標高Hの標準偏差Sは一定である。
【0051】
次に、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、走行予定経路R上に存在するノードの標高Hの標準偏差Sに基づいて最小区間長Xを設定する(ステップS210)。すなわち、制御部20は、前記の(3)式に走行予定経路R上に存在するノードの標高Hの標準偏差S(S
A=S
B)を代入することにより、最小区間長Xを算出し、当該最小区間長Xを設定する。次に、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、走行予定経路Rを構成する各構成リンクLの区間長を地図情報30aのリンクデータから取得する(ステップS215)。
【0052】
次に、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、処理対象の結合範囲を選択する(ステップS220)。すなわち、制御部20は、道路種別が同一の構成リンクLが連続している結合範囲を1個選択する。
図2Aの場合、1個の高速区間と2個の通常区間のなかから1個の区間を選択する。例えば、制御部20は、現在地に近い順に結合範囲を選択してもよい。
【0053】
次に、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、現在地から近い順に、区間長が最小区間長X以上となるまで構成リンクLを結合することにより管理区間Kを生成する(ステップS225)。具体的に、制御部20は、処理対象の結合範囲のうち現在地から近い順に構成リンクLを結合することにより管理区間Kを生成し、当該管理区間Kを構成する構成リンクLの区間長の合計値が最小区間長X以上となった場合に、当該管理区間Kを確定する。処理対象の結合範囲において確定済みの管理区間Kがすでに生成されている場合、制御部20は、処理対象の結合範囲から確定済みの管理区間Kを除いた余りの区間Fにおいて、現在地から近い順に構成リンクLを結合することにより管理区間Kを生成する。例えば、
図2Bにおいて、管理区間K
1が確定済みである場合、制御部20は、余りの区間Fにおいて、最も現在地から近い構成リンクL
5から順に構成リンクLを結合していく。
【0054】
ステップS225にて1個の管理区間Kを生成すると、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、余りの区間Fの区間長Wが最小区間長X未満であるか否かを判定する(ステップS230)。余りの区間Fの区間長Wが最小区間長X未満であると判定しなかった場合(ステップS230:N)、制御部20は、ステップS225に戻る。すなわち、制御部20は、余りの区間Fにおいて最小区間長X以上の管理区間Kが生成できるとして、余りの区間Fにおいて現在地から近い順に構成リンクLを結合することにより管理区間Kを生成する。以上の処理(ステップS225,S230)を繰り返して実行することにより、処理対象の結合範囲において、余りの区間Fの区間長Wが最小区間長X未満となるまで現在地から近い順に管理区間Kを1個ずつ生成していくことができる。
【0055】
一方、余りの区間Fの区間長Wが最小区間長X未満であると判定した場合(ステップS230:N)、制御部20は、余りの区間Fを結合範囲内にて隣接する管理区間Kに結合する(ステップS235)。例えば、
図2Cにおいて、目的地を含む余りの区間Fの区間長Wが最小区間長X未満であるため、当該余りの区間Fを隣接する管理区間K
51に結合する。これにより、区間長Yが最小区間長X未満となる管理区間Kが生成されることを防止できる。すなわち、すべての管理区間Kにおいて区間長Yが最小区間長X以上となるように管理区間Kを生成できる。
【0056】
次に、制御部20は、すべての結合範囲を処理対象として選択したか否かを判定する(ステップS240)。すべての結合範囲を処理対象として選択したと判定しなかった場合(ステップS240:N)、制御部20は、ステップS220に戻り、次の結合範囲を処理対象として選択する。以上の処理(ステップS220〜S240)を繰り返して実行することにより、すべての結合範囲において管理区間Kを生成することができ、走行予定経路R全体において管理区間Kを生成することができる。
【0057】
一方、すべての結合範囲を処理対象として選択したと判定した場合(ステップS240:Y)、勾配情報生成部21cの機能により制御部20は、管理区間Kごとに道路勾配Cを取得する。具体的に、制御部20は、地図情報30aに基づいて管理区間Kの両端の地点に対応するノードの標高Hを取得するとともに、管理区間Kを構成する構成リンクLの区間長を合計することにより管理区間Kの区間長Yを取得する。そして、制御部20は、前記の(1)に、管理区間Kの両端の地点に対応するノードの標高Hと、管理区間Kの区間長Yとを代入することにより、道路勾配Cを算出する。上述のように、すべての管理区間Kにおいて区間長Yが最小区間長X以上となるため、すべての管理区間Kにおける道路勾配Cの標準偏差Zを許容値G以下に抑制できる。
【0058】
次に、勾配情報生成部21cの機能により制御部20は、管理区間Kごとに道路勾配Cを示す勾配情報30bを生成する(ステップS250)。すなわち、制御部20は、管理区間Kごとに、管理区間Kにおける道路勾配Cと、管理区間Kを構成する構成リンクLと、管理区間Kにおける平均推定車速Vと、管理区間Kの区間長Yとを示す区間別情報を生成し、すべての管理区間Kについての区間別情報で構成される勾配情報30bを生成する。そして、制御部20は、勾配情報30bを記録媒体30に記録する。以上の処理によって勾配情報30bが生成できると、制御部20は、車両制御処理(
図3A)のステップS115に戻り、勾配情報30bを動力ECU46に送信する。これにより、動力ECU46は、各管理区間Kにおいて誤差の小さい道路勾配Cに基づいて、精度のよい動力比制御計画を生成できる。
【0059】
(3)他の実施形態:
管理区間生成部21bの機能により制御部20は、管理区間Kにおける道路勾配Cの誤差の大きさが所定の許容値G以下となるように管理区間Kを生成するための手法として、管理区間Kの最小区間長Xを設定する以外の手法を採用してもよい。例えば、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、暫定的に生成した管理区間Kについて前記の(2)式によって道路勾配Cの標準偏差Zを算出し、当該道路勾配Cの標準偏差Zが許容値G以下である場合に当該管理区間Kを確定してもよい。この場合、管理区間Kごとに、前記の(2)式によって両端の地点(ノード)の標高H
A,H
Bの標準偏差S
A,S
Bに応じた道路勾配Cの標準偏差Zを取得することができるため、ノードごとに標高Hの標準偏差Sが異なる地図情報30aを使用する場合でも、道路勾配Cの標準偏差Zを許容値G以下に抑制できる。
【0060】
また、管理区間生成部21bの機能により制御部20は、地域ごとに標高Hの標準偏差Sが異なる地図情報30aを使用する場合、地域ごとの標高Hの標準偏差Sに基づいて、地域ごとに異なる管理区間Kの最小区間長Xを設定してもよい。例えば、標準標高データの作成時期が地域ごとに異なる場合や、地域ごとに標高の計測方法が異なる場合には、地域ごとに標高Hの標準偏差Sが異なり得る。なお、前記実施形態では、標高Hや道路勾配Cの誤差の指標として標準偏差を使用したが、標高Hや道路勾配Cの誤差の指標として標準偏差に所定比率を乗じた値や分散等を使用してもよい。上述のように、区間長Yを大きくするほど道路勾配Cの誤差を小さくすることができるが、勾配情報30bの用途(運転案内、車両制御等)に応じて最小区間長Xに上限値を設けてもよい。
【0061】
さらに、許容値Gは、走行予定経路Rの区間ごとに異なってもよい。例えば、
図2Aに示す高速区間よりも通常区間の方が動力比制御計画を精度よく生成する必要がある場合には、高速区間における許容値Gよりも通常区間における許容値Gが小さく設定されてもよい。また、走行予定経路Rは、現在地から目的地までの経路のうち、現在地から所定距離以内の経路であってもよい。走行予定経路Rは外部の装置から取得されてもよい。また、結合範囲は、車速や渋滞度や道路形状(道路勾配以外)等が所定基準よりも類似する構成リンクLが連続している範囲であってもよい。さらに、勾配情報30bは、必ずしも車両の制御計画を生成するために生成されなくてもよく、例えば道路勾配Cを運転者に案内するために生成されてもよい。