特許第6108914号(P6108914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6108914弾性体を備えた発電装置及び弾性体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108914
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】弾性体を備えた発電装置及び弾性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20170327BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20170327BHJP
   H01L 41/314 20130101ALI20170327BHJP
【FI】
   H02N2/18
   H01L41/113
   H01L41/314
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-76199(P2013-76199)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-204468(P2014-204468A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
(72)【発明者】
【氏名】松田 宏
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−087838(JP,U)
【文献】 特開2008−099489(JP,A)
【文献】 特開2005−237156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
H01L 41/113
H01L 41/314
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を受けることによって一側面で圧縮変形と引張変形とが生じる弾性を有する基材と、
この基材の前記一側面側に沿って配置し、前記基材の変形と共に圧縮変形する圧縮領域と引張変形する引張領域で圧電効果が生じる圧電性膜と、
この圧電性膜の前記基材側の第1側面に接触した第1電極と、
前記圧電性膜の前記第1側面とは反対側の第2側面に接触した第2電極とを有する弾性体を備えており、
前記弾性体は、前記第1電極及び前記第2電極が、前記圧縮領域のみに設けられる電極と、前記引張領域のみに設けられる電極と、に夫々分割されており、
前記発電性膜の圧電効果によって前記圧縮領域に発生した電荷と前記引張領域に発生した電荷とが相殺し合うことなく合成した電力を出力することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記弾性体は、前記圧電性膜が、前記圧縮領域のみに設けられる圧電性膜と、前記引張領域のみに設けられる圧電性膜と、に分割されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記弾性体は、前記圧電性膜が前記圧縮領域と前記引張領域とで反対の極性を有していることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項4】
前記弾性体の縁部を支持する支持部を備えており、前記弾性体の中央部分とその外側部分の一方が前記圧縮領域であり、他方が前記引張領域に分割することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の発電装置。
【請求項5】
外部電界を前記圧縮領域と前記引張領域とで反転させつつ、前記第1電極上に圧電性膜生成塗料を塗布し、前記圧縮領域と前記引張領域とで反対の極性を有する前記圧電性膜を前記第1電極上に形成する第1工程と、
前記第2電極を前記圧電性膜上に形成する第2工程とを備えていることを特徴とする請求項記載の弾性体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性体を備えた発電装置及び弾性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の発電装置を開示している。この発電装置は、平板状の圧電基板と、圧電基板の一方の側面に形成した共通電極と、他方の側面に形成した2つに分割した分割電極とを備えている。各分割電極は、検出部と、検出部に連続した引き出し部とを有している。検出部は引き出し部に比べて非常に大きい面積を有している。この発電装置を圧力検出器に利用した場合、圧電基板は、検出部が形成されている部分で引っ張り変形し、引き出し部が形成されている部分で圧縮変形する。この際、圧電基板が検出部と引き出し部とで極性が異なった電荷を発生するため、電荷の相殺が生じる。しかし、この発電装置は、検出部が引き出し部に比べて非常に大きい面積を有しているため、電荷の相殺を抑えることができ、電力を出力することができる。このため、この発電装置を利用した圧力検出器は検出感度を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−87838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発電装置は検出部と引き出し部とが連続して形成されている。このため、この発電装置は、少なからず検出部で発生した電荷と、引き出し部とで発生した電荷とが相殺し合う。よって、この発電装置は圧電基板が発電し得る電力を有効に出力することができない。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、大きな発電力を得ることができる弾性体を備えた発電装置、及び弾性体の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発電装置は、
外力を受けることによって一側面で圧縮変形と引張変形とが生じる弾性を有する基材と、
この基材の前記一側面側に沿って配置し、前記基材の変形と共に圧縮変形する圧縮領域と引張変形する引張領域で圧電効果が生じる圧電性膜と、
この圧電性膜の前記基材側の第1側面に接触した第1電極と、
前記圧電性膜の前記第1側面とは反対側の第2側面に接触した第2電極とを有する弾性体を備えており、
前記弾性体は、前記第1電極及び前記第2電極が、前記圧縮領域のみに設けられる電極と、前記引張領域のみに設けられる電極と、に夫々分割されており、
前記発電性膜の圧電効果によって前記圧縮領域に発生した電荷と前記引張領域に発生した電荷とが相殺し合うことなく合成した電力を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発電装置は、圧電性膜の圧電効果によって圧縮領域に発生した電荷と引張領域に発生した電荷とが相殺し合うことなく合成した電力を出力することができるため、大きな発電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の発電装置を示す概略図である。
図2】実施例1及び2における出力波形の変化を示すグラフである。
図3】実施例2の発電装置を示す概略図である。
図4】実施例3の発電装置を示す概略図と出力波形を示すグラフである。
図5】実施例3の弾性体の第1電極を製造する工程を示す概略図である。
図6】実施例3の圧電性膜を第1電極上に形成する第1工程を示す概略図である。
図7】実施例3の第2電極を圧電性膜上に形成する第2工程を示す概略図である。
図8】実施例4の支持部を備えた弾性体の変形を示す断面図である。
図9】実施例4の長方形状の平板の弾性体の変形を示す平面図であり、(A)は弾性体の縁部全周に支持部を設けたもの、(B)は弾性体の長辺の2辺に支持部を設けたもの、(C)は弾性体の4隅に支持部を設けたものである。
図10】実施例4の正方形状の平板の弾性体の変形を示す平面図であり、(A)は弾性体の縁部全周に支持部を設けたもの、(B)は弾性体の平行な位置にある2辺に支持部を設けたもの、(C)は弾性体の4隅に支持部を設けたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の発電装置において、前記弾性体は、前記圧電性膜が、前記圧縮領域のみに設けられる圧電性膜と、前記引張領域のみに設けられる圧電性膜と、に分割され得る。この場合も、圧電性膜の圧電効果によって圧縮領域で発生する電荷と引張領域で発生する電荷が相殺することなく、夫々の領域から極性の異なる電力を出力させることができる。そして、この発電装置は、圧電性膜の夫々の領域から出力した電力を整流化等して合成することによって、大きな発電力を得ることができる。また、このような構成を有する場合、第1電極、圧電性膜、及び第2電極をこの順に積層した積層体を作成し、この積層体を圧縮領域及び引張領域に合わせた形状にカットして、基材上に貼着するようにして弾性体を形成することができる。また、その積層体を複数積層してもよい。
【0012】
本発明の発電装置において、前記弾性体は、前記圧電性膜が前記圧縮領域と前記引張領域とで反対の極性を有し得る。この場合、圧電性膜の圧電効果によって圧縮領域と引張領域で同じ側面に発生する電荷を同じ極性にすることができる。このため、弾性体自身が、圧縮領域と引張領域とで発生する電荷が相殺し合うことなく、圧縮領域と引張領域とで発生した同じ極性の電荷を合成して出力することができるため、大きな発電力を得ることができる。また、敢えて圧縮領域のみから電荷を出力するようにしてもよい。
【0013】
この弾性体の製造方法は、外部電界を前記圧縮領域と前記引張領域とで反転させつつ、前記第1電極上に圧電性膜生成塗料を塗布し、前記圧縮領域と前記引張領域とで反対の極性を有する前記圧電性膜を前記第1電極上に形成する第1工程と、前記第2電極を前記圧電性膜上に形成する第2工程とを備え得る。この場合、圧縮領域と引張領域とで反対の極性を有する圧電性膜を有する弾性体を容易に製造することができる。
【0014】
本発明の発電装置は、前記弾性体の縁部を支持する支持部を備えており、前記弾性体の中央部分とその外側部分の一方が前記圧縮領域であり、他方が前記引張領域に分割し得る。この場合、発電装置が弾性体の縁部を支持する支持部を備えた建築材等に応用されると、圧縮領域と引張領域とが基材の中央部分とその外側部分とに分かれて生じる。このように領域を分割して、第1電極、第2電極、又は圧電性膜を形成すると、圧縮領域に発生した電荷と引張領域に発生した電荷とを有効に出力することができ、大きな発電力を得ることができる。
【0015】
次に、本発明の発電装置を具体化した実施例1〜4について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施例1>
実施例1の発電装置は、図1に示すように、基材20、第1電極30、圧電性膜40、及び第2電極50を有する弾性体10を備えている。基材20は、ガラス、樹脂、金属製等であり、建築材として使用されるものを適用することができる。この基材20は、弾性を有し、外力を受けることによって、一側面(図1において、基材20の上側面)で、変形方向が凹となる圧縮変形と、変形方向が凸となる引張変形とが生じる。図1は弾性体10を模式的に示したものである。このため、基材20に圧縮変形と引張変形とが一箇所ずつ生じる状態を示しているが、圧縮変形及び引張変形は複数か所に生じる場合も同様に考えられる。
【0017】
第1電極30は、基材20の圧縮変形する部分と引張変形する部分との境界部で分割されている。つまり、圧電性膜40が基材20の変形とともに圧縮変形する圧縮領域Aと引張変形する引張領域Bとの境界で分割されている。第1電極30は、基材20上で圧縮領域Aに拡がった圧縮領域用第1電極31と、基材20上で引張領域Bに拡がった引張領域用第1電極32とを有している。これら第1電極30は、圧電性膜40の縁部より外側に位置し、後述する整流回路61、62に連結した導線71、72を接続した銅製等の導電性を有する取出し部31A、32Aと、圧電性膜40の基材20側の第1側面(図1において、圧電性膜40の下側面。以下同じ。)に接触した導電性樹脂等から形成した導電性を有する接触部31B、32Bを有している。基材20が外力を受けて圧縮変形すると、それに伴って、圧縮領域用第1電極31も圧縮変形する。また、同様に、基材20が外力を受けて引張変形すると、それに伴って、引張領域用第1電極32も引張変形する。
【0018】
圧電性膜40は、圧縮領域用第1電極31の上側面、及び引張領域用第1電極32の上側面上に形成されている。つまり、圧電性膜40は、第1電極30を挟んで基材20の一側面側に沿って配置され、第1電極30は圧電性膜40の第1側面に接触している。圧電性膜40は、基材20の圧縮変形と共に圧縮変形する圧縮領域Aと、基材20の引張変形と共に引張変形する引張領域Bとを有している。圧電性膜40は、圧縮領域Aで圧縮変形して圧電効果が生じると、第1側面側に正電荷、第2側面(図1において、圧電性膜40の上側面。以下同じ。)側に負電荷が集まる。一方、圧電性膜40は、引張領域Bで引張変形して圧電効果が生じると、第1側面側に負電荷、第2側面側に正電荷が集まる。この圧電性膜40は、絶縁体であるため、圧電性膜40内において、圧縮領域Aと引張領域Bとの間で電荷が移動せず、圧電効果によって発生する電荷が相殺し合うことはない。
【0019】
第2電極50は、圧電性膜40の圧縮領域Aと引張領域Bとの境界で分割され、圧電性膜40上で圧縮領域Aに拡がった圧縮領域用第2電極51と、圧電性膜40上で引張領域に拡がった引張領域用第2電極52とを有している。これら第2電極50は、圧電性膜40の縁部より外側に位置し、後述する整流回路61、62に連結した導線73、74を接続した銅製等の導電性を有する取出し部51A、52Aと、圧電性膜40の第1側面とは反対側の第2側面に接触した導電性樹脂等から形成した導電性を有する接触部51B、52Bとを有している。
【0020】
発電装置は、第1整流回路61、第2整流回路62、及び同期回路63を備えている。第1整流回路61は、入力部が圧縮領域Aに設けた圧縮領域用第1電極31の取出し部31Aと、圧縮領域用第2電極51の取出し部51Aの夫々に導線71、73によって接続している。第2整流回路62は、入力部が引張領域に設Bけた引張領域用第1電極32の取出し部32Aと、引張領域用第2電極52の取出し部52Aの夫々に導線72、74によって接続している。同期回路63は入力部が第1整流回路61と第2整流回路62の夫々の出力部に導線75、76によって接続している。
【0021】
このような構成を有する発電装置は、基材20が外力を受けることによって、一側面で圧縮変形と引張変形が生じると、その変形と共に圧電性膜40も変形して圧電効果を生じる。すると、図2に示すように、圧縮領域用第1電極31及び圧縮領域用第2電極51からは出力1−1の出力波形が得られる。また、引張領域用第1電極32及び引張領域用第2電極52からは出力2−1の出力波形が得られる。出力1−1の出力波形と出力2−1の出力波形とは、時間遅れΔTを有し、略逆位相の関係である。
【0022】
出力1−1を第1整流回路61で整流し、出力2−1を第2整流回路62で整流すると、第1整流回路61及び第2整流回路62の夫々からは、出力1−2及び出力2−2の出力波形が得られる。出力1−2の出力波形と出力2−2の出力波形とは、時間遅れΔTを有し、負の半波を正の半波に変換している。
【0023】
第1整流回路61から出力された出力1−2と第2整流回路62から出力された出力2−2とを同期回路63で同期して加算する。すると、この発電装置は出力値が大きい出力3を得ることができる。このように、この発電装置は、第1電極30及び第2電極50が圧縮領域Aと引張領域Bとの境界で分割されているため、圧電性膜40の圧電効果によって圧縮領域Aで発生する電荷と引張領域Bで発生する電荷が相殺することなく、夫々の領域から極性の異なる電力を出力させ、整流化等して合成することによって、大きな発電力を得ることができる。
【0024】
<実施例2>
実施例2の発電装置は、図3に示すように、弾性体110の圧電性膜140の形態が実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0025】
この発電装置において、弾性体110の圧電性膜140は、第1電極30及び第2電極50と同様に圧縮領域Aと引張領域Bとの境界で分割されている。このため、この弾性体110は、第1電極30、圧電性膜140、及び第2電極50をこの順に積層した積層体を作成し、この積層体を基材20の圧縮変形する部分と引張変形する部分の形状に合わせてカットし、基材20上に貼着して形成することができる。
【0026】
このような構成を有する発電装置も、実施例1の発電装置と同様、図2に示すように、出力1−1、出力2−1、出力1−2、出力2−2、出力3を得ることができる。このように、この発電装置は、第1電極30、圧電性膜140、及び第2電極50が圧縮領域Aと引張領域Bとの境界で分割されているため、圧電性膜140の圧電効果によって圧縮領域Aで発生する電荷と引張領域Bで発生する電荷が相殺することなく、夫々の領域から極性の異なる電力を出力させ、整流化等して合成することによって、大きな発電力を得ることができる。
【0027】
<実施例3>
実施例3の発電装置は、図4に示すように、基材20、第1電極230、圧電性膜240A、240B、及び第2電極250を有する弾性体210と、整流回路260とを備えている。基材20は、ガラス、樹脂、金属製等であり、建築材として使用されるものを適用することができる。この基材20は、弾性を有し、外力を受けることによって、一側面(図4において、基材20の上側面)で、変形方向が凹となる圧縮変形と、変形方向が凸となる引張変形とが生じる。図4は、弾性体210を模式的に示したものである。このため、基材20に引張変形の両側に圧縮変形が生じる状態を示しているが、圧縮変形及び引張変形は複数か所に生じる場合も同様に考えられる。
【0028】
第1電極230は、圧電性膜240A、240Bの縁部より外側に位置し、後述する整流回路260に連結した導線271を接続した銅製等の導電性を有する取出し部231と、圧電性膜240A、240Bの基材20側の第1側面(図4において、圧電性膜240A、240Bの下側面。以下同じ。)の全面に接触した導電性樹脂等から形成した導電性を有する接触部232を有している。基材20が外力を受けて圧縮変形及び引張変形をすると、それに伴って、第1電極230も圧縮変形及び引張変形する。
【0029】
圧電性膜240A、240Bは第1電極230の上側面上に形成されている。つまり、圧電性膜240A、240Bは、基材20の一側面側に沿って配置され、第1電極230は圧電性膜240A、240Bの第1側面側に接触している。圧電性膜40は、基材20の圧縮変形と共に圧縮変形する圧縮領域Aと、基材20の引張変形と共に引張変形する引張領域Bとを有している、圧電性膜240A、240Bは圧縮領域Aと引張領域Bとで反対の極性を有している。つまり、圧縮領域Aでは、圧縮変形すると、圧電性膜240Aの第2側面(図4において、圧電性膜240Aの上側面。以下同じ。)側に正電荷、第1側面側に負電荷が集まるような極性を有した圧電性膜240Aが配置されている。一方、引張領域Bでは、引張変形すると、圧電性膜240Bの第2側面(図4において、圧電性膜240Bの上側面。以下同じ。)側に正電荷、第1側面側に負電荷が集まるような極性を有した圧電性膜240Bが配置されている。このため、基材20が外力を受けることによって、一側面で圧縮変形と引張変形が生じると、その変形と共に圧電性膜240A、240Bも変形して圧電効果を生じ、発電性膜240A、240Bの全領域において第2側面側に正電荷が集まり、第1側面側に負電荷が集まる。つまり、この圧電性膜240A、240Bは、圧縮領域Aと引張領域Bとの間で電荷が相殺し合うことはない。
【0030】
第2電極250は、圧電性膜240A、240Bの縁部より外側に位置し、後述する整流回路260に連結した導線272を接続した銅製等の導電性を有する取出し部251と、圧電性膜240A、240Bの基材20側の第2側面の全面に接触した導電性樹脂等から形成した導電性を有する接触部252とを有している。
【0031】
整流回路260は、入力部が第1電極230の取出し部231と、第2電極250の取出し部251の夫々に導線271、272によって接続している。整流回路260は、第1電極230の取出し部231と第2電極250の取出し部251から取り出した出力波形を整流し、出力部から出力3を出力する。つまり、整流回路260は負の半波を正の半波に変換している。
【0032】
このような構成を有する発電装置は、基材20が外力を受けることによって、一側面で圧縮変形と引張変形が生じると、その変形と共に圧電性膜240A、240Bも変形して圧電効果を生じる。この際、この発電装置は圧縮領域Aと引張領域Bで同じ側面に発生する電荷を同じ極性にすることができる。このため、この発電装置は、圧縮領域Aと引張領域Bとで発生する電荷が相殺し合うことなく、合成した電力を出力することができるため、大きな発電力を得ることができる。
【0033】
次に、この弾性体10の製造方法を説明する。
【0034】
先ず、図5に示すように、第1電極230を基材20上に形成する工程を実行する。この工程は、横方向に長い直方体形状の第1電極230の取出し部231を基材20上に接着する。そして、この取出し部231が延びている方向に沿って、ノズルNを移動し、導電性樹脂Rを基材20上に塗布する。これによって、基材20上に取出し部231の厚さと略等しい厚さであり、取出し部231の横方向の長さと略等しい長さを有し、基材20上に拡がった平板状の第1電極230の接触部232を形成する。
【0035】
次に、図6に示すように、外部電界を圧縮領域Aと引張領域Bとで反転させつつ、第1電極230上に圧電性膜生成塗料Pを塗布し、圧縮領域Aと引張領域Bとで反対の極性を有する圧電性膜240A、240Bを第1電極230上に形成する第1工程を実行する。第1工程を実行する際、第1電極230はアースされているが、アースしていなくてもよい。
【0036】
第1工程において、圧縮領域Aに圧電性膜生成塗料Pを塗布する際は、ノズルNが負の電荷を有するようにノズルNに連結した電圧制御装置Cを制御する。これによって、圧縮領域Aに圧電性膜生成塗料Pを塗布する際は、ノズルNから第1電極230方向への電界が生成される。この雰囲気下で圧電性膜生成塗料Pを塗布して形成された圧電性膜240Aは、圧縮変形すると、圧電性膜240Aの第2側面側に正電荷、第1側面側に負電荷が集まるような極性を有するものになる。
【0037】
一方、引張領域Bに圧電性膜生成塗料Rを塗布する際は、ノズルNが正の電荷を有するようにノズルNに連結した電圧制御装置Cを制御する。これによって、引張領域Bに圧電性膜生成塗料Rを塗布する際は、第1電極230方向からノズルN方向への電界が生成される。この雰囲気下で圧電性膜生成塗料Pを塗布して形成された圧電性膜240Bは、引張変形すると、圧電性膜240Bの第2側面側に正電荷、第1側面側に負電荷が集まるような極性を有するものとなる。
【0038】
次に、図7に示すように、第2電極250を圧電性膜240A、240B上に形成する第2工程を実行する。第2工程は、圧電性膜240A、240B上に沿って、ノズルNを移動し、導電性樹脂Rを圧電性膜240A、240B上に塗布する。これによって、圧電性膜240A、240B上の全域に第2電極250の接触部252を形成する。そして、第2電極250の接触部252の端部に横方向に長い直方体形状の第2電極250の取り出し部2B51を圧電性膜240A、240Bの縁部より外側に形成する。このようにして、圧縮領域Aと引張領域Bとで反対の極性を有する圧電性膜240A、240Bを有する弾性体210を製造することができる。
【0039】
<実施例4>
実施例4の発電装置は、図8図10に示すように、弾性体80の縁部を支持する支持部81を備えている。図8では、支持部81が、フレーム81Aと、フレーム81Aと弾性体80との間に介在する弾性部材81Bとを有している。弾性体80は、両端縁部に弾性体81Bを介してフレーム81Aに支持されており、一側面(図8において、弾性体10の上面)側に上方から下方に向けた圧力P(例えば、風等による外力を想定)がかかると、弾性体80の上面(載荷面)では、中央部分が圧縮変形する圧縮領域Aになり、その両端部(外側部分)が引張変形する引張領域Bになる。また、弾性体80の下面では、中央部分が引張変形する引張領域Bになり、その両端部(外側部分)が圧縮変形する圧縮領域Aになる。このように、弾性体80の両端縁部に支持部81を備えると、圧縮領域Aと引張領域Bとが弾性体80の中央部分とその外側部分とに分かれて生じる。
【0040】
また、図9は、弾性体90が長方形状の平板であり、一側面から図8に示すように外力を与えた際の弾性体90の変形を示している。これらは、解析によって求められており、解析を簡略化するために弾性体90を面外方向拘束によるピン支持としている。このため、支持条件によって、圧縮領域と引張領域の形状は多少変化する。
【0041】
弾性体90の縁部全周に支持部91を設けた場合、正の圧力が生じた載荷面側は、図9(A)に示すように、弾性体90の中央部にひし形の上下及び左右をカットした形状の領域X1と、その周囲の各コーナー部に三角形の領域Y1とに分割され、領域X1が圧縮変形する圧縮領域であり、領域Y1が引張変形する引張領域である。弾性体90の長辺の2辺に支持部92を設けた場合、正の圧力が生じた載荷面側は、図9(B)に示すように、弾性体90の中央部に縦長の楕円形の上下をカットした形状の領域X2とその周囲の外側部分の領域Y2とに分割され、領域X2が圧縮変形する圧縮領域であり、領域Y2が引張変形する引張領域である。弾性体90の4隅に支持部93を設けた場合、正の圧力が生じた載荷面側は、図9(C)に示すように、中央部に縦長の楕円形の上下及び左右をカットした形状の領域X3と、その左右の外側部分の領域Y3に分割され、領域X3が圧縮変形する圧縮領域であり、領域Y3が引張変形する引張領域である。
【0042】
また、図10は、弾性体100が正方形状の平板であり、一側面から図8に示すように外力を与えた際の弾性体100の変形を示している。これらは、解析によって求められており、解析を簡略化するために弾性体100を面外方向拘束によるピン支持としている。このため、支持条件によって、圧縮領域と引張領域の形状は多少変化する。
【0043】
弾性体100の全周縁部に支持部101を設けた場合、正の圧力が生じた載荷面側は、図10(A)に示すように、弾性体100の中央部にひし形の上下及び左右をカットした形状の領域X1と、その周囲の各コーナー部に三角形の領域Y1とに分割され、領域X1が圧縮変形する圧縮領域であり、領域Y1が引張変形する引張領域である。弾性体100の平行な位置にある2辺に支持部102を設けた場合、正の圧力が生じた載荷面側は、図10(B)に示すように、弾性体100の中央部に角部が丸くなった長方形(角丸長方形)の上下をカットした形状の領域X2とその周囲の外側部分の領域Y2とに分割され、領域X2が圧縮変形する圧縮領域であり、領域Y2が引張変形する引張領域である。弾性体100の4隅に支持部103を設けた場合、正の圧力が生じた載荷面側は、図9(C)に示すように、中央部に円形の上下及び左右をカットした形状の領域X3と、その周囲の外側部分の領域Y3に分割され、領域X3が圧縮変形する圧縮領域であり、領域Y3が引張変形する引張領域である。
【0044】
このように、弾性体80、90、100の中央部分とその外側部分に分割した領域の夫々に、上述したような第1電極、第2電極、又は圧電性膜を形成すると、圧縮領域に発生した電荷と引張領域に発生した電荷とを有効に出力することができ、大きな発電力を得ることができる。
【0045】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1〜3では、基材上に第1電極を設けたが、基材がアルミ等の金属製で導電体である場合は第1電極を設けず、基材に導線を接続して電力を得てもよい。つまり、基材が絶縁体の場合は第1電極を設け、基材が導電体の場合は基材を第1電極として利用することができる。また、基材が導電体の場合でも、基材と絶縁した第1電極を設けてもよい。
(2)実施例1〜3では、基材の一側面に圧電性膜等を設けたが、基材の両面に圧電性膜などを設けてもよい。
(3)圧電性膜は、実施例3で示したように、圧電性膜生成塗料を塗布して形成してもよいし、フィルム状のものを張り付けてもよい。圧電性膜生成塗料を塗布して圧電性膜を形成する場合は、圧電性膜の形状の自由度が拡大する。
(4)実施例4では、圧縮領域と引張領域を2〜5に分割したが、より細かく分割してもよい。
(5)実施例1〜3では、第1電極及び第2電極の取出し部を圧電性膜の縁部より外側に位置させたが、弾性体の形状等によっては取出し部を中心部に位置させることもあり得るため、取出し部は縁部より外側に位置させなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、サッシ等の建築外皮に応用して、補助電力や防犯センサーとして利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10、80、90、100、110、210…弾性体
20…基材
30、230…第1電極
40、140、240A、240B…圧電性膜
50、250…第2電極
81、91、92、93、101、102、103…支持部
A…圧縮領域
B…引張領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10