(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各撹拌翼は、該各撹拌翼の羽根が撹拌軸の周方向における他の撹拌翼の羽根の位置から同方向にずれた位置に配置されるように、撹拌軸に取り付けられる請求項4に記載の撹拌装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、被撹拌物を撹拌する撹拌装置として、円筒形状の撹拌槽と、該撹拌槽の中心部に配置される撹拌軸と、該撹拌軸の下部側に取り付けられる撹拌翼とが設けられたものが知られている。撹拌翼には、撹拌軸の周方向に沿って複数の羽根が設けられている。
【0003】
撹拌軸が軸芯を中心に回転すると、撹拌翼が撹拌軸とともに回転する。そして、撹拌翼の複数の羽根は、撹拌槽内を旋回して受けた被撹拌物を後方に流動させ、撹拌翼の回転で発生する回転流により又は羽根自体により被撹拌物をせん断する。
【0004】
このような機能を有する撹拌翼には、被撹拌物をせん断するせん断性能に特化したせん断特化型撹拌翼と、被撹拌物を流動させて被撹拌物を循環させる循環性能に特化した循環特化型撹拌翼とがある。
【0005】
せん断特化型撹拌翼には、例えば、板状の羽根を凹形状にしたコンケーブ翼などのような、羽根が受けた被撹拌物を撹拌軸の径方向に流動させるものが多い。これらの撹拌翼は、羽根近傍で被撹拌物をせん断することにより被撹拌物を細分化することに特化している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
循環特化型撹拌翼には、例えば、軸流翼タイプの撹拌翼などのような、羽根が受けた被撹拌物を下方に流動させるものが多い。これらの撹拌翼は、撹拌槽内で被撹拌物を循環させることに特化している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
撹拌翼による被撹拌物の混合性能は、このせん断性能と循環性能との両方の性能の掛け合わせにより評価される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題を鑑みてなされたもので、せん断性能と循環性能との両方の性能を併せ持つ撹拌翼を有する撹拌装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る撹拌装置は、
液体または高粘度の液状物を含む被撹拌物を収容する撹拌槽と、該撹拌槽内に回転可能に取り付けられる撹拌軸と、該撹拌軸に取り付けられる撹拌翼とを備える撹拌装置であって、撹拌翼は、
前記撹拌軸の径方向に突出するサポートアームと、該サポートアームの先端側に取り付けられる羽根
とを有し、該羽根は、羽根本体と、回転方向において開口する溝部とを有し、該溝部は、撹拌軸の軸芯を中心とする回転半径を通る方向と交差する方向に伸びることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、撹拌軸を回転させることにより、撹拌翼の羽根は、撹拌槽内を回転して、溝部で被撹拌物をせん断する。さらに、回転する撹拌翼の羽根は、溝部で受けた被撹拌物を溝部に沿って撹拌軸の軸芯方向に向けて流動させることにより、撹拌槽内の被撹拌物の循環にも寄与する。よって、この撹拌翼は、せん断性能と循環性能との両方の性能を併せ持つ。
【0012】
また、本実施形態に係る撹拌装置の一態様として、溝部は、回転軌道上における撹拌軸の軸芯方向に対して回転方向に所定角度で傾斜することが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、溝部で受けた被撹拌物が撹拌軸の軸芯方向に対して回転方向に傾斜した溝部の方向に沿って流動することにより、溝部に加わる抵抗が低くなり、撹拌槽内における被撹拌物の循環を起こしやすくなる。
【0014】
また、本実施形態に係る撹拌装置の他態様として、溝部は、断面視半円状に形成されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、溝部は、被撹拌物を中央に寄せつつ、撹拌軸の軸芯方向に向けて流動させることができ、被撹拌物を撹拌軸の径方向に向かって流動しにくくなり、撹拌槽内における被撹拌物の循環を促進する。
【0016】
また、本実施形態に係る撹拌装置の他態様として、撹拌翼は、撹拌軸に対して2段以上設けることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、撹拌槽内における被撹拌物の撹拌軸方向の循環性能を高めることができ、高容量の撹拌槽や高粘度の被撹拌物にも対応できる。
【0018】
また、本実施形態に係る撹拌装置の他態様として、各撹拌翼は、該各撹拌翼の羽根が撹拌軸の周方向における他の撹拌翼の羽根の位置から同方向にずれた位置に配置されるように、撹拌軸に取り付けられることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、撹拌槽内における被撹拌物の撹拌軸方向の流れに合わせて、各撹拌翼の羽根を配置することにより、被撹拌物の撹拌軸方向の流れが円滑になるように制御することができる。
【0020】
また、本実施形態に係る撹拌装置の他態様として、各撹拌翼は、他の撹拌翼の羽根の回転半径と異なる回転半径の羽根を有することが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、撹拌槽内における被撹拌物の撹拌軸方向の流れに合わせて、各撹拌翼の羽根の回転半径を変えることにより、被撹拌物の撹拌軸方向の流れが促進されるように制御することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の如く、本発明によれば、せん断性能と循環性能との両方の性能を併せ持つ撹拌翼を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態に係る撹拌装置について、
図1〜
図3を参照して説明する。同実施形態に係る撹拌装置1は、竪型撹拌装置であり、被撹拌物を収容する撹拌槽2と、該撹拌槽2内に回転可能に取り付けられる撹拌軸3と、該撹拌軸3に取り付けられる撹拌翼4と、撹拌軸3を駆動する駆動部5とを備える。本実施形態に係る被撹拌物としては、液体Lを例に説明するが、これに限定されず、被撹拌物には、高粘度の液状物なども含まれる。
【0025】
撹拌槽2は、縦方向に長い円筒形状の撹拌槽である。撹拌槽2は、円筒状の直胴部21と、該直胴部21の下端に取り付けられる断面形状が半楕円形状の底部22と、直胴部21の上端に取り付けられる断面形状が半楕円形状の頂部23とを備える。撹拌槽2は、軸芯が垂直となるように保持される。
【0026】
撹拌軸3は、撹拌槽2の中心軸上に配置される。そして、撹拌軸3は、下端側が撹拌槽2の底部22に設けられる軸受(図示しない)を介して支持される。さらに、撹拌軸3は、上端側が撹拌槽2の上部より上方に設けられる駆動部5(ここでは、モータとする)に接続され、周方向Aに回転可能に構成される。なお、撹拌軸3は、下端側がどこにも支持されず、撹拌槽2内に有してもよい。また、駆動部5が撹拌槽2の下部より下方に設けられ、駆動部5が撹拌軸3の下端側と接続されるようにしてもよい。
【0027】
撹拌翼4は、撹拌軸3に取り付け可能な円筒状のボス41と、該ボス41から撹拌軸3の径方向に突出するサポートアーム42と、該サポートアーム42の先端部に取り付けられる羽根43とを備える。ボス41、サポートアーム42及び羽根43とは、それぞれ溶接等により固定されている。
【0028】
ボス41は、円筒形状をしており、撹拌軸3の下端部に挿通される貫通孔41aを有する。撹拌翼4は、このボス41の貫通孔41aに撹拌軸3を挿通し、ねじ締結又は溶接等により撹拌軸3に取り付けられる。
【0029】
サポートアーム42は、ボス41の外周面から径方向に突出して設けられる。サポートアーム42は、ボス41の周方向に等間隔に設けられる。具体的には、サポートアーム42は、3つ設けられており、3つのサポートアーム42は、ボス41の周方向に撹拌軸3を中心に120度間隔に設けられている。サポートアーム42の形状は、長尺状で且つ平板状に形成されており、基端側(撹拌軸3側)がボス41に接続され、先端側(撹拌槽2の内側面側)が羽根43に接続される。
【0030】
また、サポートアーム42は、平面が撹拌軸3の軸芯方向に対して直交するようにボス41に固定されている。しかし、長尺状で且つ平板状に形成されたサポートアーム42の側面、上面又は下面は、水平面から傾斜していてもよい。撹拌槽2内で長尺方向が略水平方向となるようにサポートアーム42が配置されたときに、横方向に向いた面がサポートアーム42の側面であり、上方向に向いた面がサポートアーム42の上面であり、下方向に向いた面がサポートアーム42の下面である。これにより、サポートアーム42が撹拌槽2内に満たされた液体Lやスラリー(被撹拌物)の中から抜き出される際に、液体Lやスラリーがサポートアーム42の側面、上面又は下面を伝って垂れ易くなり、液体Lやスラリーがサポートアーム42の表面に残留しない。サポートアーム42の形状は、棒状であってもよいし、柱状であってもよい。
【0031】
羽根43は、半円筒形状に形成されている。羽根43は、一端から他端まで同一径で形成されており、つまり、羽根43の幅が一定である。羽根43は、サポートアーム42が取り付けられる羽根本体44と、該羽根本体44の回転方向Bにおいて開口する溝部45とを有する。羽根本体44は、溝部45が回転方向B(羽根43が旋回する旋回方向B)に開口するように、サポートアーム42に取り付けられる。また、羽根本体44は、筒芯方向Eの略中間位置でサポートアーム42に取り付けられている。溝部45は、撹拌軸3の軸芯を中心とする回転半径を通る方向Dと直交する方向Eに伸びる。本実施形態においては、溝部45は、撹拌軸3の軸芯方向に沿って平行に形成されており、つまり、上下方向に形成されている。溝部45は、羽根本体44の回転方向Bに向いた面を窪ませて形成されており、断面視半円状に形成された溝であり、よって、羽根43全体は、断面視半円弧状に形成されている。溝部45は、羽根本体44における筒芯方向Eの一端から他端まで連続して形成されている。そのため、筒芯方向Eにおける溝部45の両端は、開放している。
【0032】
次に、この本実施形態に係る撹拌装置1の作用について説明する。まず、撹拌装置1の駆動部5を駆動して撹拌軸3を回転させると、撹拌翼4が撹拌槽2内を撹拌軸3を中心に回転し、溝部45で液体Lをせん断する。溝部45で液体Lを受けて、溝部45に沿って液体Lを軸芯方向C(上下方向)に流動させる。具体的には、撹拌翼4は、液体Lを溝部45に沿って下方に向けて流動させる。液体Lは、撹拌槽2の底部で流れを外側に転回し、撹拌槽2の側壁で上方に転回し、撹拌槽2の上部で内側に転回し、撹拌槽2の中心部で下方に転回し、再び撹拌翼4に戻る。液体Lは、このように撹拌槽2内を循環する。
【0033】
以上、本実施形態に係る撹拌装置1は、液体Lを収容する撹拌槽2と、該撹拌槽2内に回転可能に取り付けられる撹拌軸3と、該撹拌軸3に取り付けられる撹拌翼4とを備え、撹拌翼4は、羽根43を有し、該羽根43は、羽根本体44と、回転方向Bにおいて開口する溝部45とを有し、該溝部45は、撹拌軸3の軸芯を中心とする回転半径を通る方向Dと直交する方向Eに伸びる構成である。そのため、本実施形態に係る撹拌装置1は、撹拌軸3を回転させることにより、撹拌翼4は、撹拌槽2内を回転して、溝部45で液体Lをせん断する。さらに、回転する撹拌翼4は、溝部45で受けた液体Lを溝部45に沿って撹拌軸3の軸芯方向Cに向けて流動させることにより、撹拌槽2内の液体Lの循環にも寄与する。よって、この撹拌翼4は、せん断性能と循環性能との両方の性能を併せ持つ。
【0034】
また、本実施形態に係る撹拌装置1において、溝部45は、断面視半円状に形成されている構成である。そのため、本実施形態に係る撹拌装置1において、溝部45は、液体Lを中央に寄せつつ、撹拌軸3の軸芯方向Cに向けて流動させることができ、液体Lを撹拌軸3の(半)径方向Dに向かって流動しにくくなっている。また、溝部45は、液体Lを撹拌軸3の軸芯方向Cに流動させながら、液体Lを溝部45の中央に寄せて液体Lにかかる圧力を上げ、溝部45に沿って流動していた液体Lが溝部45から吐出される際に、液体Lの圧力が一気に解放されることで、液体Lの撹拌反応が促進される。
【0035】
また、本実施形態に係る撹拌装置1において、羽根43は、サポートアーム42の先端側に取り付けられ、撹拌軸3から(半)径方向Dに離間した位置に取り付けられている構成である。そのため、本実施形態に係る撹拌装置1は、撹拌翼4が液体Lをせん断するせん断面が撹拌槽2の(半)径方向Dに占める面積の一部にすぎず、撹拌翼4を回転させるために撹拌軸3を回転させる動力が低く抑えられる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態に係る撹拌装置について、
図4〜
図6を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に係る撹拌装置と第1実施形態に係る撹拌装置1とが異なる点は、撹拌翼の形状であり、それ以外については、基本的に同じであるため、同じ構成については同じ符号を採番し、その説明は繰り返さない。
【0037】
本実施形態に係る撹拌翼4は、第1実施形態の羽根43と異なる羽根143を有し、該羽根143は、回転軌道上における撹拌軸3の軸芯方向Cに対して回転方向Bに所定角度αで傾斜する(
図6参照)。具体的には、羽根143は、第1実施形態と同様に、羽根本体144と溝部145とを有する。羽根本体144は、筒芯方向Eの略中間位置でサポートアーム42に取り付けられており、この筒芯方向Eの略中間位置を中心に、撹拌軸3の軸芯方向Cにおける上端側を旋回方向F1に傾斜させ(回転させ)、撹拌軸3の軸芯方向における下端側を旋回方向F1と逆方向F2に傾斜させた(回転させた)姿勢でサポートアーム42に取り付けられている。
【0038】
溝部145は、回転軌道上における撹拌軸3の軸芯方向Cに対して回転方向Bに所定角度αで傾斜する。溝部145の所定角度αは、45度以下の範囲の角度で傾斜する。なお、溝部145は、羽根143自体を傾斜させることにより、傾斜しているが、溝部145のみが傾斜していてもよい。また、溝部145は、回転方向Bにおいて斜め下方に開口する。よって、溝部145は、液体Lを斜め下方に流動させる。溝部145は、断面視半円状に形成されており、羽根143自体は、断面視円弧状に形成されている。溝部145がせん断するせん断面積は、羽根143の旋回方向と逆方向F2側(撹拌軸3の回転方向Bと反対側)から見た投影面積に相当する。なお、撹拌槽2内の液体Lの循環流によりせん断面積は変わり得る。
【0039】
以上、本実施形態に係る撹拌装置1は、撹拌翼4の溝部145は、回転軌道上における撹拌軸3の軸芯方向Cに対して回転方向Bに所定角度αで傾斜する構成である。そのため、本実施形態に係る撹拌装置1は、溝部145で受けた液体Lが撹拌軸3の軸芯方向Cに対して回転方向Bに傾斜した溝部145の方向に沿って流動することにより、溝部145に加わる抵抗が低くなり、撹拌槽2内における液体Lの循環を起こしやすくなる。
【0040】
なお、本発明に係る撹拌装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
【0041】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、撹拌翼4を構成する羽根43,143の枚数が3つである例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、撹拌軸に取り付けられる撹拌翼の枚数は、2枚であってもよいし、4枚以上であってもよい。また、撹拌翼は、撹拌軸の周方向において、2枚又は4枚以上の羽根が撹拌軸を中心に一定の角度をあけて配置されていてもよい。つまり、各羽根が撹拌軸の周方向に略等間隔離間させて設けられていてもよい。
【0042】
また、一つの撹拌翼は、1又は複数の羽根を有する撹拌翼を複数組み合わせて、所定の枚数の羽根を有するものであってもよい。具体的には、一つの撹拌翼に4枚の羽根が必要な場合、2枚の羽根を有する撹拌翼を2つ重ね合わせることにより、4枚の羽根を有する一つの撹拌翼を形成してもよい。
【0043】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、撹拌翼4に設けられた羽根43,143が撹拌軸3の周方向に互いに等間隔に配置される例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、4枚の羽根が設けられた撹拌翼4が撹拌軸3の周方向に撹拌軸3を中心に60度、120度、180度、240度の位置に設けられていてもよい。つまり、各羽根が撹拌軸の周方向に略等間隔離間させて設けられていなくてもよい。
【0044】
また、
図7に示すように、この2つの撹拌翼4,4が、撹拌軸3に対して2段以上設けられていてもよく、つまり、撹拌軸3の軸芯方向Cに所定間隔離間させて2か所以上設けられていてもよい。この撹拌軸3の軸芯方向Cにおける2つの撹拌翼4,4の位置は、撹拌する対象である液体Lの性状、撹拌槽2内における液体Lの上面の高さ(被撹拌物が液体である場合における液面)などにより、下端部に偏って配置され、又は、軸芯方向Cに等間隔に配置される。そのため、撹拌槽2内における液体Lの撹拌軸3の軸芯方向Cの循環性能を高めることができ、撹拌槽2内の液体Lの流動状態が向上する。また、高容量の撹拌槽2や高粘度の液体Lにも対応できるようになる。
【0045】
また、
図12に示すように、撹拌軸3の軸芯方向に複数の撹拌翼4が設けられ、各撹拌翼4は、該各撹拌翼4の羽根143a〜143eが撹拌軸3の周方向における他の撹拌翼4の羽根143a〜143eの位置から同方向にずれた位置に配置されるように、撹拌軸3に取り付けられていてもよい。また、各撹拌翼4の羽根143a〜143eは、撹拌軸3の周方向Bにおける他の撹拌翼4の羽根143a〜143eの位置から同方向にずれた位置に配置されていてもよい。つまり、撹拌翼4相互の羽根143a〜143eの位置(位相)が撹拌軸3の軸芯方向視において位置ずれしていてもよい。
【0046】
例えば、最上段である1段目の撹拌翼4の羽根143aの周方向Bにおける位置に対して、2段目の撹拌翼4の羽根143bは、撹拌軸3の旋回方向(周方向)Bに25度回転した位置に設けられていてもよい。3段目の撹拌翼4の羽根143cは、2段目の撹拌翼4の羽根143bの周方向Bにおける位置に対して、撹拌軸3の旋回方向Bに25度回転した位置に設けられていてもよい。4段目及び5段目の撹拌翼4の羽根143d,143eについても同様である。つまり、各撹拌翼4の羽根143a〜143eは、撹拌軸3を中心に螺旋状に配置されていてもよい。なお、各撹拌翼4の羽根は、渦巻状に配置されていてもよい。
【0047】
そのため、撹拌槽2内における液体L(被撹拌物)の撹拌軸方向(上下方向)の流れに合わせて、各撹拌翼4の羽根143a〜143eを配置することにより、液体Lの撹拌軸方向の流れが円滑になるように制御することができ、撹拌槽2内の液体Lの流動状態が向上する。
【0048】
なお、撹拌翼4相互の撹拌軸3の周方向Bにおける羽根143a〜143eが25度ずつ位置ずれしている例を
図12に示したが、これに限定されるものではない。例えば、周方向Bにおける羽根が90度ずつ位置ずれしていてもよいし、これ以外の角度であってもよい。また、羽根が周方向に位置ずれしていなくてもよい。
【0049】
また、
図13及び
図14に示すように、撹拌軸3の軸芯方向Cに複数の撹拌翼4が設けられ、一方の撹拌翼4の羽根143の溝部が回転軌道B上における撹拌軸3の軸芯方向Cに対して回転方向Bに所定角度で傾斜しており、他方の撹拌翼4の羽根43の溝部が回転軌道B上における撹拌軸3の軸芯方向Cに対して回転方向Bに傾斜していなくてもよい。特に、上段の撹拌翼4の溝部が傾斜しており、下段の撹拌翼4が傾斜していないことが好ましい。更に、最下段の撹拌翼4が傾斜していないことが好ましい。これにより、上段の撹拌翼4が液体Lの巻き込みを促進し、下段又は最下段の撹拌翼4が液体Lの吐出を促進し、撹拌槽2内の液体Lの流動状態が向上する。
【0050】
また、
図15に示すように、各撹拌翼4は、他の撹拌翼4の羽根43の回転半径と異なる回転半径の羽根43を有していてもよい。特に、上段の撹拌翼4から下段の撹拌翼4に向かうにつれて回転半径が大きくなるか小さくなることが好ましい。これにより、撹拌槽2内における液体L(被撹拌物)の撹拌軸方向の流れに合わせて、各撹拌翼4の羽根43の回転半径を変えることにより、液体Lの撹拌軸方向の流れが促進されるように制御することができる。
【0051】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、羽根43,143自体が断面視半円孤状(C字状)であり、溝部45,145が断面視半円状である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、溝部は、断面視半楕円形状であってもよい。また、羽根自体は、断面視において中心角が180度以上の円弧状であってもよいし、180度以下の円弧状であってもよい。つまり、中心角が180度に限定されない。溝部の形状は、曲面でなくてもよく、矩形状であってもよい。例えば、溝部は、断面視三角形状であってもよいし、断面視(長)方形状や断面視台形状であってもよい。
【0052】
また、羽根自体が断面視V字形状であってもよい。より具体的には、
図8に示すように、断面視V字形状の羽根243は、幅方向の長さが略同一の板状の一対の基材244,244の端同士をV字状に継ぎ合わせて形成されていてもよい。このとき、溝部は、回転方向Bに開口していてもよいし、回転方向Bから径方向Dに向いていてもよい。
【0053】
また、
図9に示すように、羽根343は、幅方向の長さが短い第1基材344の端と、幅方向の長さが長い第2基材345の端とをV字状に継ぎ合わせて形成されていてもよい。この場合、第1基材344が径方向Dの外側に配置され、第2基材345が径方向Dの内側に配置される方が好ましい。第1基材344の幅方向の長さが第2基材345の幅方向の長さよりも短いため、径方向Dの先端部における抵抗が低減される。そのため、第1基材344の幅方向の長さと第2基材345の幅方向の長さとが同じ場合と比べて、同じ回転トルクで撹拌翼4の回転数が高くなり、撹拌翼4に付着する液体Lが減少する。
【0054】
更に、
図10に示すように、羽根443は、表裏を貫通して被撹拌物を裏側に逃がす一対の貫通孔446,446を有してもよい。具体的には、羽根443は、羽根本体444と、該羽根本体444の回転方向Bにおいて開口する溝部445と、羽根本体444を貫通して形成される一対の貫通孔446,446とを有する。羽根本体444は、
図8に示す羽根243と同様に、幅方向Gの長さが略同一の板状の一対の基材447,447の端同士をV字状に継ぎ合わせて形成され、一対の基材447,447の間に隙間を形成することにより、一対の貫通孔446,446が形成される。一対の貫通孔446,446の形状は、矩形状のスリットであって、羽根本体444の筒芯方向H(長手方向)における両端側から筒芯方向Hに向かって設けられている。なお、一対の貫通孔446,446は、
図11に示すように、幅方向の長さが異なる一対の基材547,547をV字状に継ぎ合わせた羽根本体544と溝部545とを有する羽根543に表裏を貫通して被撹拌物を裏側に逃がす一対の貫通孔546,546が形成されていてもよいし、断面視半円弧状の羽根など他の断面形状の羽根に設けられてもよい。また、一対の貫通孔446,446の形状は、矩形状のスリット以外にも、円形や楕円形状であってもよいし、貫通孔446の数量は、1か所であってもよいし、3か所以上であってもよい。そして、一対の貫通孔446,446の位置も羽根本体444の筒芯方向Hにおける両端側に限られず、筒芯方向Hにおける中間であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態に係る撹拌装置1は、羽根43,143の形状が断面視半円孤状(C字状)である例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、羽根の形状は、断面視矩形状(凹状)であってもよい。また、溝部の幅が長手方向の一端側からその反対側の他端側に向かうにつれて狭くなるようにしてもよい。このようにすることによっても、被撹拌物を中央に寄せて被撹拌物にかかる圧力を上げることができ、溝部に沿って流動していた被撹拌物が溝部から吐出される際に、被撹拌物の圧力が一気に解放されることで、被撹拌物の撹拌反応が促進される。
【0056】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、羽根143が筒芯方向Eの略中間位置を中心に、撹拌軸3の軸芯方向Cにおける上端側を旋回方向に傾斜させ、撹拌軸3の軸芯方向Cにおける下端側を旋回方向と反対側F2に傾斜させた姿勢でサポートアーム42に取り付けられている例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、羽根143が筒芯方向Eの略中間位置を中心に、撹拌軸3の軸芯方向Cにおける下端側を旋回方向F1に傾斜させ、撹拌軸3の軸芯方向Cにおける上端側を旋回方向と反対側F2に傾斜させた姿勢でサポートアーム42に取り付けられていてもよい。この場合、上記第2実施形態に係る撹拌装置1の被撹拌物の循環流と逆の循環流を得ることができる。
【0057】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、サポートアーム42と羽根43,143とが固定される例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、サポートアームと羽根がボルト締結されることにより取り付けられてもよい。
【0058】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、羽根43,143が幅方向の長さより筒芯方向Eの長さの方が長い(若しくは、溝部45,145が幅方向の長さより長手方向の長さの方が長い)例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、羽根の形状は、羽根又は溝部における幅方向の長さより羽根における筒芯方向又は溝部における長手方向の長さの方が短くてもよい。
【0059】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、上方から見たときの回転方向Bについて、撹拌軸3が反時計回りに回転し、羽根43が反時計回りに旋回する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、撹拌軸3が時計回りに回転し、羽根43が時計回りに旋回してもよい。この場合、上記第1実施形態及び第2実施形態に係る撹拌装置1の被撹拌物の循環流と逆の循環流を得ることができる。
【0060】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、羽根43がサポートアーム42を介してボス41に接続される例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、羽根43が直接、ボス41に接続されていてもよい。
【0061】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、溝部45,145が撹拌軸3の軸芯を中心とする回転半径を通る方向Dと直交する方向Eに伸びる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、溝部は、撹拌軸3の軸芯を中心とする回転半径を通る方向Dと交差する方向に伸びるように、羽根がサポートアームに接続されていてもよい。例えば、
図3に示す羽根43の上端が径方向D外側に傾斜し、羽根43の下端が径方向D内側に傾斜していてもよいし、その逆であってもよいということである。
【0062】
上記実施形態に係る撹拌装置1は、円筒形状の胴板の両端に半楕円体形鏡板を溶接した半楕円形状の底部22及び頂部23を有する撹拌槽2を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、撹拌槽の底部及び頂部は、他の形状の鏡板を胴板に溶接された部分であってもよい。底部に用いられる、半楕円体形鏡板以外の他の鏡板の例として、10%皿型などの皿型、半球形状の半球型、平坦な形状の平形(フラット型)、円錐形状若しくは円錐台形状のコニカル型などの鏡板が挙げられる。また、頂部に用いられる、半楕円体形鏡板以外の他の鏡板の例として、10%皿型などの皿型、半球形状の半球型、平坦な形状の平形(フラット型)などの鏡板が挙げられる。