(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄系金属箔の少なくとも片面にヒートシール用樹脂をラミネートしたラミネート金属箔を折り曲げ加工することで、ケース上端部における四辺にそれぞれフランジ部を有するケース本体を成形し、これらのフランジ部に蓋部材を前記ヒートシール用樹脂を熱融着させて接合することによって、前記ケース本体を封止したシールケースであって、
前記鉄系金属箔の厚みは、15〜150μmであり、前記ケース本体の深さは少なくとも8mm以上あり、前記ケース本体の理想容積率が0.800よりも高いことを特徴とするシールケース。
前記ケース本体は、底面部と、互いに対向して平行に延びる一対の第1側面部と、互いに対向して平行に延びる一対の第2側面部と、これらの第1側面部及び第2側面部の上端に形成された前記フランジ部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のシールケース。
前記ヒートシール用樹脂が露出する前記フランジ部の端部は、溶接により金属封止されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のシールケース。
厚みが15〜150μmである鉄系金属箔の少なくとも片面にヒートシール用樹脂をラミネートしたラミネート金属箔を折り曲げることにより、筒端部にフランジ部を備えた有底筒状のケース本体を形成する第1のステップと、
折り曲げ時に重ねられた前記ラミネート金属箔の重なり部分を加熱することで、当該重なり部分における前記ヒートシール用樹脂を熱融着させて接合する第2のステップと、
前記フランジ部と蓋部材とを、前記フランジ部における前記ヒートシール用樹脂を熱融着させて接合することにより、前記ケース本体を封止する第3のステップと、を有し、
前記第1のステップにおいて、下記の形状条件を満足するように折り曲げを行うことを特徴とするシールケースの製造方法。
H≧8mm・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
IVE>0.800・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
ただし、Hは、前記ケース本体の深さである。IVEは、前記ケース本体の理想容積率である。
前記第1のステップにおいて、前記ケース本体を、底面部と、互いに対向して平行に延びる一対の第1側面部と、互いに対向して平行に延びる一対の第2側面部と、これらの第1側面部及び第2側面部の上端に形成された前記フランジ部とを含む形状に成形することを特徴とする請求項5又は6に記載のシールケースの製造方法。
前記ヒートシール用樹脂が露出する前記フランジ部の端部を、溶接により金属封止することを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか一つに記載のシールケースの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、二次電池の断面図であり、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する三軸である。X軸、Y軸及びZ軸の定義は、他の図面においても同様である。
図2は高容量シールケースの分解斜視図である。X軸はケースの長手に対応しており、Y軸はケースの幅方向に対応しており、Z軸はケースの高さ方向に対応している。
【0017】
二次電池は、高容量シールケースAと、高容量シールケースAの内部に収容された発電要素Bとを含む。高容量シールケースAは、ケース本体1と、蓋体2とを含む。高容量シールケースAは、食品包装用のケース、磁気シールドケース、電池部品絶縁ケース、二次電池のケースなど、容積の拡大が求められる様々な用途に用いることができる。本明細書では、特に耐電解液性等の高度の耐食性を金属箔に求められる、二次電池のケースを実施形態として説明する。
【0018】
発電要素Bとは、充放電を行う要素のことである。発電要素Bは、正極体51及び負極体52を、セパレータ53を介して積層することにより構成されており、セパレータ53の内部には電解液が含浸されている。正極体51は、集電箔に正極に応じた活物質などを塗布することで構成されている。負極体52は、集電箔に負極に応じた活物質などを塗布することで構成されている。正極体51の厚み方向に直交する方向の端部には活物質が塗布されていない未塗工部(不図示)が形成されており、これらの未塗工部を纏めることで総プラス端子が形成される。同様に、負極体52の厚み方向に直交する方向の端部には活物質が塗布されていない未塗工部(不図示)が形成されており、これらの未塗工部を纏めることで総マイナス端子が形成される。総プラス端子及び総マイナス端子に対して、タブリードを接続することにより、二次電池の電力を外部に取り出すことができる。ここで、二次電池の個数は、1個或いは複数個であってもよい。二次電池を複数個とする場合、これらの二次電池を電気的に接続し、電池スタックとして用いることができる。接続方式は、直列接続、或いは並列接続であってもよい。
【0019】
ケース本体1は、有底筒状に形成されており、矩形状に形成された底面部11と、X軸方向において対向する一対の短辺側側面部12と、Y軸方向において対向する一対の長辺側側面部13と、各短辺側側面部12の上端(Z軸方向における端部)に形成される短辺側フランジ部14と、各長辺側側面部13の上端に形成される長辺側フランジ部15と、短辺側側面部12及び長辺側側面部13の各境界からX軸方向に突出する本体融着部16とを含む。ケース本体1の深さHは、少なくとも8mm以上確保する必要がある。短辺側フランジ部14及び長辺側フランジ部15は、X−Y面を含む面内方向に延在している。Z軸方向視において、蓋体2は、その外縁と上記フランジの外縁とが重なる位置に熱融着される。
【0020】
図3は、ケース本体1に用いられるラミネート金属箔10を厚み方向に切断したときの断面図である。ラミネート金属箔10は、鉄系金属箔10aと、鉄系金属箔10aの片面にラミネートされたヒートシール用樹脂10bとからなる。ただし、ヒートシール用樹脂10bは、鉄系金属箔10aの両面にラミネートされていてもよい。ラミネート金属箔10の製造方法の一例を以下に示す。鉄系金属箔10a及びヒートシール用樹脂10bは互いに異なるローラ(不図示)に巻きつけられており、これらのローラから繰り出されて、ローラ対(不図示)のニップ部に搬送される。鉄系金属箔10aは、ニップ部に向かう途中で加熱炉(不図示)により加熱される。ニップ部において、ヒートシール用樹脂10bは、加熱された鉄系金属箔10aに押し付けられることで、熱融着される。鉄系金属箔10aは高容量シールケースAの外面側に位置し、ヒートシール用樹脂10bは高容量シールケースAの内面側に位置する。
【0021】
鉄系金属箔10aには、例えば、純鉄、IF鋼、炭素鋼、低合金鋼、フェライトステンレス鋼、オーステナイトステンレス鋼、二相ステンレス鋼を用いることができる。また、鉄系金属箔10aには、めっき被覆金属を用いることもできる。めっき被覆金属には、酸化クロム層及び金属クロム層を有するティンフリースティール、ニッケル層、あるいはニッケル層とニッケル−鉄合金層を有するニッケルめっき鋼を用いることができる。
【0022】
鉄系金属箔10a以外の金属箔として、アルミニウム箔、高純度銅箔が考えられるが、これらの金属箔は強度が低く、ケースとして形状を保つことが難しい。そのため、これらの材料を用いた場合には、容積確保を目的とする本願の課題を解決することができない。また、アルミニウム系合金、銅系合金を粒子分散等によって強度を高めた材料は、加工性及びコストを両立できないため、本願の金属箔として用いることができない。ニッケル箔、タンタル箔、チタン箔等、ある程度高強度の箔は、鉄系箔以外にも考えられるが、取り扱い性、流通、コスト等を考慮すると、実用的には鉄系の金属箔が選択される。
【0023】
ヒートシール用樹脂10bは、高容量シールケースAの内面側に位置するため、電解液に接触する。したがって、ヒートシール用樹脂10bは、電解液に接触しても腐食が起こりにくい耐電解液性を備えている必要がある。ヒートシール用樹脂10bには、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂とは、下記(式1)の繰り返し単位を有する樹脂を少なくとも50質量%以上含む樹脂のことである。
−CR1H−CR2R3− (式1)
(式1中、R1、R2は各々独立に炭素数1〜12のアルキル基または水素を示し、R3は炭素数1〜12のアルキル基、アリール基又は水素を示す)
ポリオレフィン系樹脂は、これらの構成単位の単独重合体、或いは2種類以上の共重合体であってもよい。繰り返し単位は,5個以上化学的に結合していることが好ましい。5個未満では高分子効果(例えば,柔軟性,伸張性など)が十分に得られない。上記繰り返し単位を例示すると,プロペン,1−ブテン,1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテン,1−デセン,1−ドデセン等の末端オレフィンを付加重合した時に現われる繰り返し単位,イソブテンを付加したときの繰り返し単位等の脂肪族オレフィンや,スチレンモノマーの他に,o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,o−エチルスチレン,m−エチルスチレン,o−エチルスチレン,o−t−ブチルスチレン,m−t−ブチルスチレン,p−t−ブチルスチレン等のアルキル化スチレン,モノクロロスチレン等のハロゲン化スチレン,末端メチルスチレン等のスチレン系モノマー付加重合体単位等の芳香族オレフィン等が挙げられる。
【0024】
このような繰り返し単位の単独重合体として,末端オレフィンの単独重合体である低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン 架橋型ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリペンテン,ポリへキセン,ポリオクテニレン,ポリイソプレン,ポリブタジエン等を用いることができる。また,上記繰り返し単位の共重合体には,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ブテン共重合体,エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体,エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボーネン共重合体等の脂肪族ポリオレフィンや,スチレン系共重合体等の芳香族ポリオレフィン等を用いることができるが,これらに限定されるものではなく,上記の繰り返し単位を満足していればよい。また,ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。また,これらの樹脂を単独もしくは2種類以上混合して使用してもよい。
【0025】
また,上記のポリオレフィンは,上記のオレフィン単位が主成分であればよく,上記の単位の置換体であるビニルモノマー,極性ビニルモノマー,ジエンモノマーがモノマー単位もしくは樹脂単位で共重合されていてもよい。共重合組成としては,上記オレフィン単位に対して好ましくは50質量%以下であり,より好ましくは30質量%以下である。50質量%超では腐食原因物質に対するバリア性等のオレフィン系樹脂としての特性が低下する。上記極性ビニルモノマーには、アクリル酸,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル等のアクリル酸誘導体,メタクリル酸,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル等のメタクリル酸誘導体,アクリロニトリル,無水マレイン酸,無水マレイン酸のイミド誘導体,塩化ビニル等を用いることができる。低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、架橋型ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの2種類以上の混合物は、取扱性,腐食原因物質のバリア性が優れており、ヒートシール用樹脂10bとして好適に用いることができる。
【0026】
さらに、ヒートシール用樹脂10bには、ポリプロピレンを主とする樹脂を用いることが、より好適である。上述のポリオレフィン系樹脂は好適な材料であるが、その中でも、工業的にはポリプロピレンを主とする樹脂が、コスト、流通、熱ラミネートの容易性等の観点で、より好適である。(PPはポリオレフィン系樹脂です。)ここで、ポリプロピレンを主とする樹脂とは、ポリプロピレンを50質量%以上含有する樹脂のことであり、ポリプロピレン純粋樹脂の他に、合計が50質量%未満の割合で低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなど各種ポリエチレン、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィンを重合した樹脂などを用いることができる。また、金属箔との密着性を向上させるために酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることもできる。ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でも、また、重合するポリプロピレン以外のオレフィンが1種類でも2種類以上でも、主となるポリプロピレンが50質量%以上含まれていればよい。より好ましくは、ポリプロピレンが70質量%以上、90質量%以上含まれたヒートシール用樹脂10b、ポリプロピレンが100質量%であるヒートシール用樹脂10bを用いることができる。
【0027】
上述の実施形態において、鉄系金属箔10aのうちヒートシール用樹脂10bがヒートシールされる面とは反対側の面、つまり、高容量シールケースAの外面側に、絶縁層を形成してもよい。絶縁層には、酸化物層、めっき被覆層、あるいは種々のラミネート樹脂からなる層を用いることができる。例えば、厚みが20μm以下のPETフィルムを、高容量シールケースAの外側の面に形成する方法は、経済性、折り曲げ加工性の観点から、好適である。さらに、鉄系金属箔10aのうちヒートシール用樹脂10bがヒートシールされる側の面に、耐電解液性を向上させるための表面処理を施すことができる。この表面処理は、電解クロメート、樹脂クロメート等の各種クロメート処理、三価クロム処理、その他のクロメートフリー化成処理であってもよい。また、鉄系金属箔10aに予め電解クロム酸処理を施したティンフリースティールを用いることもできる。
【0028】
次に、
図4を参照しながら、ケース本体1の製造方法について説明する。
図4は、シールケース本体の一部における展開図であり、表面(
図4に図示されている面)にヒートシール用樹脂10b、裏面(
図4に図示されていない面)に鉄系金属箔10aが配置されているものとする。ケース本体1は、ラミネート金属箔10を折り曲げることで成形される。鉄系金属箔10aを深絞り加工した場合には、絞り深さに限界があるため、加工中に鉄系金属箔10aが断裂する。鉄系金属箔10aが破れれば、ケース本体1のガスバリア性が損なわれる。ケース本体1を、鉄系金属箔10aを折り曲げて成形することで、深絞り加工の上記問題点を解消することができる。
【0029】
同図において、I1〜I6はラミネート金属箔10を折り曲げる際の折線であり、これらの折線I1〜I6に沿ってラミネート金属箔10を折り曲げることで、ケース本体1を成形することができる。実線T1〜T11は、折り曲げ工程の説明を容易化するための便宜的な符号である。まず、ヒートシール用樹脂10bがケース本体1の内面側に位置するように、ラミネート金属箔10を折線I1、折線I2及び折線I3に沿って折り曲げる。すなわち、折線I3、折線I5、実線T1及び実線T9によって囲まれた台形領域と、折線I3、実線T2、実線T4及び実線T6によって囲まれた台形領域とが重なるように、ラミネート金属箔10を折り曲げる。
【0030】
ラミネート金属箔10を折線I1、折線I2及び折線I3に沿って折り曲げる際に、実線T3、実線T5、実線T6及び実線T7によって囲まれた矩形領域が邪魔になるため、この矩形領域を折線I6に沿って折り畳むことで、ケース本体1の外側に退避させる。つまり、実線T3及び実線T6が重なるように前記矩形領域を折線I6に沿って折り畳むことで、折り曲げ時に前記矩形領域が干渉するのを防止することができる。このように、ラミネート金属箔10を折り曲げる際に邪魔となる前記矩形領域を切断せずに折り畳むことで、高容量シールケースAの封止性を高めることができる。また、前記矩形領域の分だけ放熱面積が増すため、二次電池の劣化を抑制することができる。
【0031】
前記矩形領域を折り畳む際には、折線I4に沿ってラミネート金属箔10が折り曲げられるため、短辺側フランジ部14を同時に形成することができる。折線I5に沿ってラミネート金属箔10を折り曲げることで、長辺側フランジ部15を形成することができる。以上の処理によって、ラミネート金属箔10をケース形状、つまり、フランジ付きの有底筒形状に形成することができる。
【0032】
次に、ケース本体1の形状を折り曲げ後の形状に維持するために、ラミネート金属箔10の重なり部分を熱融着する。具体的には、折線I3、折線I5、実線T1及び実線T9によって囲まれた台形領域と、折線I3、実線T2、実線T4及び実線T6によって囲まれた台形領域との重なり領域(つまり、
図1の本体融着部16)を加熱することで、ラミネート金属箔10に含まれるヒートシール用樹脂10bが熱溶融して、これらの台形領域を互いに熱融着することができる。この際、実線T3、実線T5、実線T6及び実線T7によって囲まれた前記矩形領域を、加熱してもよい。これにより、折線I6、実線T5及び実線T6によって囲まれた三角形領域と、折線I6、実線T3及び実線T7によって囲まれた三角形領域とが互いに熱融着される。以上説明した折り曲げ処理及び熱融着処理によって、高容量シールケースAにおけるケース本体1が製造される。
【0033】
再び
図1及び
図2を参照して、ケース本体1の製造後に、発電要素Bをケース本体1の内部に収容し、蓋体2を短辺側フランジ部14及び長辺側フランジ部15に載置し、これらを互いに部分的に熱融着させる。ここで、部分的としたのは、ケース本体1の内部に電解液を注液するための注液口を確保するためである。すなわち、蓋体2と短辺側フランジ部14(または、長辺側フランジ部15)との間の非熱融着部から電解液を注入するためのチューブを滑り込ませ、ケース本体1の内部に電解液を注入するとともに、電解液注入後に当該非熱融着部からノズルをすべり込ませ、真空引きしながら、当該非熱融着部を徐々に熱融着する。真空引きすることで、電解液をセパレータ53に含浸させる時間を短くすることができる。
【0034】
ここで、鉄系金属箔10aの厚みは、15〜150μmであり、より好ましくは40〜150μmである。鉄系金属箔10aが15μm未満になると、ケースの形状を維持するための剛性・強度が不足し、一定の形状を有するケースとして成り立たなくなる。例えば、鉄系金属箔10aの厚みが15μm未満だと、上述の真空引きの際に、高容量シールケースAが収縮して、ケースとしての形状を維持できなくなるおそれがある。鉄系金属箔10aの厚みが150μmを超えると、剛性が高すぎて、形状の自由度が不十分となるおそれがある。さらに、鉄系金属箔10aの厚みが150μmを超えると、重量が重くなる。
【0035】
ヒートシール用樹脂10bの厚みは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは30〜100μmである。ヒートシール用樹脂10bの厚みが10μm未満だと、ヒートシール時に溶融する樹脂が不足し、金属箔間に樹脂の存在しない、密着不良によるシールの欠陥が発生するおそれがあり、また、折り曲げ部近傍でヒートシール用樹脂10bが曲げ変形に追従できずに隙間が発生するおそれがある。
【0036】
また、ヒートシール用樹脂10bの厚みが200μmを超えると、ヒートシール用樹脂10bの断面積が大きくなり、高容量シールケースAの外部からヒートシール用樹脂10bの内部に水蒸気が流入しやすくなる。つまり、ヒートシール用樹脂10bの内部においてその面方向に流れる水蒸気の流路面積が増大するため、ガスバリア性が低下する。さらに、ヒートシール時にはみ出す樹脂量が増えて、ケースや電池の製造プロセスを阻害する。また、ヒートシール用樹脂10bを内側にして折り曲げる場合、ヒートシール用樹脂10bに対する変形の負荷が大きくなり、ヒートシール用樹脂10bの内面が損傷するおそれもある。
【0037】
上述したように、高容量シールケースAの組み立て工程は、ラミネート金属箔10を折り曲げる折曲げ工程と、ラミネート金属箔10の重なり部分を熱融着する融着工程とを含み、折曲げ工程ではラミネート金属箔10の曲げ部にのみ負荷が加わるため、負荷が加わらない底面部11、短辺側側面部12及び長辺側側面部13における厚みは変化しない。本実施形態は、直方体形状に形成された高容量シールケースAの容積効率の低下を抑制することを目的としているため、曲げ部の曲率半径が大きくなると、発電要素Bとケース本体1の内面との間にデッドスペースが発生し、容積率が低下する。鉄系金属箔10aの厚みが150μm以下に制限できれば、十分な理想容積率を確保することができる。
【0038】
なお、短辺側フランジ部14又は長辺側フランジ部15には、タブリードを高容量シールケースAの外部に引き出すための微小凹部を形成することができる。この微小凹部は、例えば、深絞り加工で形成することができる。この際、減肉量を30%未満に制限するのが好ましい。微小凹部の深さは、例えば、0.5mmであってもよい。
【0039】
(変形例1)
上述の実施形態では、有底筒状のケース本体1を平板状の蓋体2で閉塞したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、二つの有底筒状のケース本体1を準備し、これらの短辺側フランジ部14及び長辺側フランジ部15を互いに熱融着することで、高容量シールケースAを形成してもよい。この場合、一方のケース本体1によって、請求項1に記載の蓋部材が構成される。
【0040】
(変形例2)
上述の折り曲げ方法は、例示であり、底面部と、互いに対向して平行に延びる第1側面部と、互いに対向して平行に延びる第2側面部と、これらの第1側面部及び第2の側面部の上端に形成されるフランジ部とを含むケース本体1を成形することができれば、如何なる折り曲げ方法であってもよい。例えば、
図4の実線T3、実線T5、実線T6及び実線T7で囲まれた矩形領域のないラミネート金属箔10(
図5参照)を折り曲げることにより、ケース本体1を成形してもよい。この場合、上記実施形態の折り曲げ方法において、上記矩形領域を折り畳む処理が不要となるため、折り曲げ工程を簡素化することができる。また、
図4の実線T5、実線T6及び折線I6で囲まれた三角形領域のないラミネート金属箔10(
図6参照)を折り曲げることにより、ケース本体1を成形してもよい。
【0041】
図7の折り曲げ方法を用いてケース本体1を成形することもできる。P1は切り込み線であり、折線I6が省略されている点で上記実施形態の折り曲げ方法と相違する。本変形例では、実線T5、実線T6、実線T7及び切り込み線Pで囲まれた矩形領域を、実線T6に沿ってケースの外側に折り曲げることで、当該矩形領域が折り曲げ時に干渉するのを防止することができる。
【0042】
図8の折り曲げ方法を用いてケース本体1を成形することもできる。本変形例のラミネート金属箔10は、フランジ部の端部が三角形に面取りされており、実線Q1及び実線Q2が接するように、ラミネート金属箔10を折れ線I4及び折れ線I5に沿って折り曲げることで、ケース本体1を成形することができる。
【0043】
図9の折り曲げ方法を用いてケース本体1を成形することもできる。P2及びP3は切り込み線であり、I6及びI7は折れ線である。本変形例では、折線I6、切り込み線P2及び実線T5で囲まれた三角形領域を、折線I6に沿ってケースの外側に折り畳むとともに、折線I7、切り込み線P3及び実線T10で囲まれた三角形領域を、折線I7に沿ってケースの外側に折り畳むことで、ケース本体1を成形することができる。折線I6、切り込み線P2及び実線T5で囲まれた三角形領域は、実線T2、実線T4、折線I3及び切り込み線P2で囲まれた台形領域のケース外面側の面に、ヒートシール用樹脂10bを熱融着させることで接合できる。折線I7、切り込み線P3及び実線T10で囲まれた三角形領域は、実線T1、実線T9、折線I3及び切り込み線P3で囲まれた台形領域のケース外面側の面に、ヒートシール用樹脂10bを熱融着させることで接合できる。
【0044】
図10の折り曲げ方法を用いてケース本体1を成形することもできる。実線T5、実線T6及び折線I6で囲まれた三角形領域を、折線I6に沿ってケースの外側に折り曲げ、実線T10、折線I5及び折線I7で囲まれた三角形領域を、折線I7に沿ってケースの外側に折り曲げるとともに、これらの三角形領域をケース本体1の外側で、ヒートシール用樹脂10bを熱融着させて接合することにより、ケース本体1を成形することができる。
【0045】
以上説明したように、ラミネート金属箔10を折り曲げてケース本体1を製造することで、ケース本体1の深さが少なくとも8mm以上で、かつ、容積率の高い高容量シールケースAを製造することができる。以下、実施例を示して、本発明についてより具体的に説明する。
【0046】
(実施例1)
本発明の条件を満足する折り曲げ方法により製造されたケース本体1(発明例)と、本発明の条件を満足しない折り曲げ方法により製造されたケース本体(比較例)とを比較した、また、これらの発明例及び比較例で用いられるラミネート金属箔10を用いて、深絞り成形を行うことが可能か検証した。鉄系金属箔10aとして、表1に示すステンレス箔、ティンフリースティール(TFS)、スーパーニッケル(SN)などのメッキ鋼箔を使用した。ティンフリースティール(TFS)以外の鉄系金属箔10aの内面(ヒートシール用樹脂10bがヒートシールされる面)には、クロメート処理を施した。クロメート処理は、無水クロム酸が25g/L、硫酸が3g/L、硝酸が4g/L含まれる常温浴に、適宜リン酸、塩酸、フッ化アンモニウム等を加え、この中に鉄系金属箔10aを浸漬した状態で、陰極電流密度を25A/dm2に設定して、20秒間放置することにより実施した。
【0047】
ヒートシール用樹脂10bとして、内面樹脂A、内面樹脂Bを使用した。内面樹脂Aとして、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP EA7Aを25μm厚みのフィルム状に形成した内面用フィルム(1)と、三井化学東セロ株式会社製アドマーQE060を25μm厚みのフィルム状に形成した内面用フィルム(2)とを重ね、内面用フィルム(2)を鉄系金属箔10a側に貼り付けたものを使用した。内面樹脂Bとして、同三井化学東セロ株式会社製アドマーQE060を50μm厚みのフィルム状に形成した内面用フィルム(3)を使用した。これらの樹脂は、Tダイスを装着した押出成形機にて250℃の押し出し温度でフィルム形状(幅300mm)に無延伸成形することにより生成した。
【0048】
ヒートシール用樹脂10bを、加熱温度:200度、圧力:1MPa、保定時間:1分の製造条件で鉄系金属箔10aにホットプレスすることにより、ラミネート金属箔10を製造した。鉄系金属箔10aよりもサイズの大きいヒートシール用樹脂10bを、鉄系金属箔10aからはみ出して張り付け、このはみ出した部分を鉄系金属箔10aの外縁に沿って切断することで、形状を整えた。
【0049】
鉄系金属箔10aのヒートシール用樹脂10bとは反対側の面に、絶縁層としての外面樹脂を張り付けた。外面樹脂として、PET6、PET12、PET16、Ny25を用いた。PET6は、厚み6μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで、東レ株式会社のルミラーを用いた。PET12は、厚み12μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで、ユニチカ株式会社製エンブレットPETを用いた。PET16は、厚み16μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムで、ユニチカ株式会社製エンブレットPETを用いた。Ny25は、厚み25μmの延伸ナイロンフィルムで、ユニチカ株式会社製エンブレムONを用いた。外面樹脂は、鉄系金属箔10aにウレタン系接着剤(東亜合成株式会社製アロンマイティPU7000D)を塗布して、貼り付け、圧力:0.1MPa、加熱温度:25℃、保定時間:90分の硬化条件で圧着した。外面樹脂を貼り付けない場合、表1の外面樹脂の欄には、non0と表記した。
【表1】
【0050】
それぞれのラミネート金属箔10を表1に示す寸法条件で箱型形状に成形した。ここで、表1に示す寸法条件について
図11を参照しながら、説明する。
図11は、高容量シールケースAの平面図であり、X1−X2断面図を平面図の右に、Y1−Y2断面図を平面図の下に示している。aはケース本体1の長辺側の外寸であり、bはケース本体1の短辺側の外寸であり、Hはケース本体1の底部から上部までの長さであり、SRは短辺側フランジ部14から短辺側側面部12に至る部分のケース外面側の曲率半径であり、CRは平面視における底面部11の角部の曲率半径であり、CLは絞り成形に用いられるポンチ及びダイスのクライアランスである。長さの単位はすべてmmである。なお、短辺側側面部12から底面部11に至る部分の内面側の曲率半径は、上記SRと同じ値である。
【0051】
絞り成形では、長辺がa+H+60(mm)、短辺がb+H+60(mm)の長方形に形成されたラミネート金属箔10をブランクサイズとして、その中央をプレス成形した。皺が発生しないように皺抑え力を調整し、少なくとも8mm以上プレス成形して、割れの有無を確認した。
【0052】
ケース本体1の容積効率を、理想容積率IVEを算出することにより評価した。一般的に、短辺側側面部12から底面部11に至る部分の内面側の曲率半径が小さくなると、理想容積率IVEが大きくなり、ケース本体1の容積効率が向上する。理想容積率IVEは、次式で算出した。
理想容積率IVE=Vp÷Vq
図12を参照して、Vpは、ハッチングで示す領域の体積、つまり、短辺側フランジ部14及び長辺側フランジ部15を除いた高容量シールケースAに外接する直方体の体積である。
図13を参照して、Vqは、ハッチングで示す領域の体積、つまり、高容量シールケースAに収容できる直方体の最大体積である。ケース本体1に発電要素Bを収納した際に、発電要素Bの角部がケース本体1にR部に接触すると、ケース本体1が疵付くおそれがある。そのため、底面部11の長辺に接する直方体の最大体積をVqとした。ケースの深さHが8mm以上のケース本体1を成形することを前提条件として、プレス成型の条件及び折り曲げ工程の条件を設定した。ここで、本発明者は、理想容積率が0.800よりも高い場合、曲率半径SR、つまり、最大曲率半径が1mm以下となることを確認している。
【0053】
表1の「プレス可否」の欄には、割れの発生の有無を記載している。割れが認められた場合には、不良として「×」で評価した。プレス成形では、ケース本体1の深さHを8mm以上に設定すること、理想容積率を0.800超に設定すること、これらの容積条件を満足させようとすると、ラミネート金属箔10に割れが発生することがわかった。つまり、プレス成型では、深さがあり、理想容積率の高い高容量シールケースAを製造することができない。
【0054】
一方、折り曲げ方法によれば、ラミネート金属箔10の切断を防止しながら、上述の容積条件を満足する高容量シールケースAを製造することができる。すなわち、本実施形態の高容量シールケースAを用いることにより、発電要素Bを構成するセルの積層数を増加できるため、出力の大きな二次電池を提供することができる。
【0055】
高容量シールケースAの自立性(強度)を評価するために、それぞれの高容量シールケースAの上から荷重を付与した。具体的には、水が封入された高容量シールケースAを水平に載置し、その上に同じ高容量シールケースAを重ね、撓みによる深さの変形が2%以下のものを自立性が高いとして「2」で評価し、変形が2%超5%未満のものを自立性が普通として「1」で評価し、変形が5%超のものを自立性が低いとして「0」で評価した。鉄系金属箔10aの厚みが15μm未満の高容量シールケースA(つまり、比較例1及び比較例2)は、自立性の評価が「0」であった。また、鉄系金属箔10aの厚みが15μm以上40μm未満の高容量シールケースAは、自立性の評価が「1」であった。鉄系金属箔10aの厚みが40μm以上の高容量シールケースAは、自立性の評価が「2」であった。したがって、鉄系金属箔10aの厚みを15μm以上に設定することにより、高容量シールケースAの強度が高くなることがわかった。また、鉄系金属箔10aの厚みを40μm以上に設定することにより、高容量シールケースAの強度がより高くなることがわかった。
【0056】
高容量シールケースAの形状の自由度を評価するために、それぞれの高容量シールケースAを折り曲げる際の負荷を調査した。具体的には、折り曲げ加工が手作業で可能であった場合には形状の自由度が高いとして「2」で評価し、概ね手作業による折り曲げ加工が可能で、曲げ部についてはペンチなどの治具が必要であった場合には形状の自由度が普通であるとして「1」で評価し、折り曲げ加工の大部分がペンチなどの治具でなければできなかった場合には形状の自由度が低いとして「0」で評価した。鉄系金属箔10aの厚みが150μm未満の場合、形状の自由度が2であったが、150μmになると形状の自由度が1に低下することがわかった。さらに、鉄系金属箔10aの厚みが180μmになると、形状の自由度が0に低下することがわかった。
【0057】
(実施例2)
ヒートシール用樹脂10bの厚みによる影響を考察するために、厚みが5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、120μm、150μm、200μm、300μmのヒートシール用樹脂10bをSUS304(鉄系金属箔10a)にヒートシールし、ヒートシール用樹脂10bの密着性及びはみ出し量を調査した。ヒートシール用樹脂10bには、三井化学東セロ株式会社製アドマーQE060を、Tダイスが装着された押出成形機にて、250℃の押し出し温度でフィルム形状(幅300mm)に無延伸成形した成型シートを使用した。SUS304については、厚みが20μm、50μm、100μmの鉄系金属箔10aを使用した。これらのラミネート金属箔10を表1の発明例8に示す形状に折り曲加工した。
評価はいずれも目視で実施し、密着性については、全ての厚み(SUS304の厚みのことである)で密着性が得られた場合には密着性が良好として◎で評価し、20μm及び50μmの厚みでのみ密着性が得られた場合には密着性が普通として○で評価し、20μmの厚みでのみ密着性が得られた場合には密着性が不良として△で評価した。はみ出し量については、はみ出し長さが0.2mm以下である場合には良好として◎で評価し、はみ出し長さが0.5mm以下である場合には普通として○で評価し、はみ出し長さが0.5mm超である場合には不良として△で評価した。
【表2】
上述の試験結果から、ヒートシール用樹脂10bの厚みを10〜200μmに制限することにより、密着性とはみ出し量とを両立できることがわかった。さらに、ヒートシール用樹脂10bの厚みを30〜100μmに制限することにより、密着性とはみ出し量とをより高い水準に維持できることがわかった。
【0058】
(実施例3)
発明例1〜3の高容量シールケースAに対してレーザー溶接を行い、封止性を評価した。高容量シールケースAにおける四辺のフランジのうち三辺のみをレーザー溶接し、全くレーザー溶接しなかった高容量シールケースAと比較した。すなわち、ヒートシールした端面に対して、これと対向する方向からレーザーを照射して端面を拝み溶接した。レーザーは、光源として日鉄テクノリサーチ社のISL−1000Fを使用し、純Arガスをシールガスに用い、180Wの出力で走査速度2m/分で照射した。レーザー光は溶接部で0.5mm径となるように集光した。溶接端面の外観より、健全溶接長さを測定し、溶接性の評点として、溶接実施長に対する健全溶接長さの割合が、50%未満のものは溶接欠陥の評点を0とし、溶接構造としては否とした。健全溶接長さの割合が、50%以上95%未満を評点1、95%以上を評点2とした。評点1以上は溶接構造が可とした。
【0059】
高容量シールケースAに対して、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルを等容量混合した溶媒を模擬電解液として封入し、ヒートシールだけの場合と、3辺を溶接した場合で、該環境からの水分侵入量を測定する試験を実施した。模擬電解液は露点−80℃以下の乾燥アルゴンガスで置換したグローブボックス内で封入し、試験後も同じ、露点−80℃以下の乾燥アルゴンガスで置換したグローブボックス内で、ラミネート金属箔を切断して内部の電解液を取り出し、電解液中の水分含有量を三菱化学アナリテック社の水分気化装置CA−100を用いて測定した。試験は恒温恒湿試験とし、楠本化成株式会社恒温恒湿槽HIFLEX FX724Pに、試験体を入れ、35℃で90%RHの条件で1400時間保持した。
各構造において、ヒートシールだけの場合に侵入した水分量に比較して、評点が1のものは、60%未満の水分量に抑制でき、評点が2のものは、30%未満の水分量に抑制できた。
【表3】