【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施例は、(I)シリカ担持タングステン触媒(A)を用いるメタセシス反応、(II)シリカ担持タングステン触媒(B)を用いるメタセシス反応、(III)末端オレフィンの二重結合異性化、及び(IV)該二重結合異性化によって調製された内部オレフィンを原料オレフィンとするメタセシス反応、の四つの項目に分けて実施例を説明する。なお、以下の実施例番号の末尾のa、b、sおよびpの符号は各々前記項目(I)、(II)、(III)および(IV)についての実験結果であることを示す。
【0062】
(I)シリカ担持タングステン触媒(A)を用いるメタセシス反応
[1]触媒調製
イオン交換水にメタタングステン酸アンモニウムを溶解させて水溶液を調製した。この水溶液に富士シリシア化学株式会社製のシリカCARiACT−G10を含浸させた後、エバポレーターで水分を蒸発させた。得られた粉末を電気炉で500℃、5時間空気焼成し、メタセシス触媒WO
3/SiO
2を調製した。このとき、WO
3担持量は10重量%(酸化物換算)であった(以下の説明では触媒
REFと呼ぶ場合がある)。
【0063】
メタセシス触媒にアルカリ金属化合物を担持する場合は、上記水溶液に所定量のアルカリ金属水酸化物(NaOH、KOH、CsOH)を加えた以外は上記と同じ方法でメタセシス触媒を調製した。アルカリ金属の担持量については後述する各実施例(比較例)の項に記載した。
【0064】
[2]エチレンと4−メチル−2−ペンテンのメタセシス反応
メタセシス触媒0.4gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、さらに500℃で30分水素還元した。反応温度まで降温した後、エチレンとトランス−4−メチル−2−ペンテン(t−4MP2)のモル比が3.5、かつt−4MP2流量とメタセシス触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが5h
-1となるようにエチレンとt−4MP2を触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。水素を共存させる場合は、エチレンとt−4MP2に加えて所定流量の水素も触媒層に供給した。
【0065】
供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された4MP2の割合から4MP2転化率を計算した。なお、トランス−4−メチル−2−ペンテンとシス−4−メチル−2−ペンテンは区別していない。また3−メチル−1−ブテン(3MB1)選択率は、転化した4MP2から3MB1が生成した割合として計算した。炭素数が5であるオレフィン(C5オレフィン)中の3MB1の割合は、生成したC5オレフィン合計に対する3MB1の割合として計算した。
【0066】
なお、以下の実施例では、生成物としてプロピレンも確認された。
【0067】
〔実施例1a〕
アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するナトリウムの担持量は酸化物換算で0.5重量%であった。反応温度300℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は59%、3MB1選択率は92mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は99%であった。結果の一部を表1に示す。
【0068】
〔実施例2a〕
アルカリ金属化合物として水酸化ナトリウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するナトリウムの担持量は酸化物換算で0.2重量%であった。反応温度340℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は93%、3MB1選択率は81mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は95%であった。結果の一部を表1に示す。
【0069】
〔実施例3a〕
アルカリ金属化合物として水酸化カリウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するカリウムの担持量は酸化物換算で0.7重量%であった。反応温度300℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は67%、3MB1選択率は91mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は99%であった。結果の一部を表1に示す。
【0070】
〔実施例4a〕
アルカリ金属化合物として水酸化セシウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するセシウムの担持量は酸化物換算で2.2重量%であった。反応温度300℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は90%、3MB1選択率は91mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は99%であった。結果の一部を表1に示す。
【0071】
〔比較例1a〕
アルカリ金属化合物を担持していないメタセシス触媒(触媒
REF)を用いて、反応温度300℃、水素を共存させないで反応を実施した。4MP2転化率は42%、3MB1選択率は23mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は79%であった。結果の一部を表1に示す。実施例1a〜4aの結果と比較して4MP2転化率が低く、3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合も大きく下回った。
【0072】
〔比較例2a〕
アルカリ金属化合物を担持していないメタセシス触媒(触媒
REF)を用いた。反応温度340℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は92%、3MB1選択率は63mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は86%であった。結果の一部を表1に示す。水素の共存により、比較例1aの結果と比較して4MP2転化率は増加したが、3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合は改善しなかった。
【0073】
〔比較例3a〕
水素を共存させない以外は実施例1aと同様に反応を実施したところ、4MP2転化率は2%、3MB1選択率は93mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は100%であった。結果の一部を表1に示す。水素を共存させないことにより、実施例1aの結果と比較して4MP2転化率は著しく減少した。
【0074】
〔比較例4a〕
水素を共存させない以外は実施例2aと同様に反応を実施したところ、4MP2転化率は23%、3MB1選択率は59mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は95%であった。結果の一部を表1に示す。水素を共存させないことにより、実施例2aの結果と比較して4MP2転化率は著しく減少した。
【0075】
〔比較例5a〕
イオン交換水に水酸化セシウムを溶解させて水溶液を調製した。この水溶液にシリカを含浸させた後、エバポレーターで水分を蒸発させた。得られた粉末を電気炉で500℃、5時間空気焼成し、CsOH/SiO
2を調製した。このとき、セシウムの担持量は酸化物換算で0.9重量%であった。
【0076】
アルカリ金属化合物を担持していないメタセシス触媒(触媒
REF)0.2gと、前記CsOH/SiO
2 0.2gを物理混合して反応管に充填し、反応温度340℃、水素濃度9%にて反応を実施した。4MP2転化率は95%、3MB1選択率は52mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は82%であった。結果の一部を表1に示す。比較例2aの結果と比較して、WO
3/SiO
2メタセシス触媒とCsOH/SiO
2との物理混合による3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合の改善はみられなかった。
【0077】
〔比較例6a〕
反応温度を390℃に変更した以外は比較例4aと同様に反応を実施したところ、4MP2転化率は89%、3MB1選択率は65mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は82%であった。結果の一部を表1に示す。反応温度を上げることにより、比較例4aの結果と比較して4MP2転化率は増加した一方、3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合は減少した。また、実施例2aと比較して4MP2転化率はほぼ同等であるのに対し、3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合は大きく下回った。
【0078】
[3]1−ブテン(B1)2分子のメタセシス反応
メタセシス触媒0.4gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、さらに500℃で30分水素還元した。反応温度である380℃まで降温した後、1−ブテン流量とメタセシス触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが10h
-1となるように1−ブテンを触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。水素を共存させる場合は、1−ブテンに加えて所定流量の水素も触媒層に供給した。
【0079】
供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された1−ブテンの割合から1−ブテン転化率を計算した。また、エチレン選択率およびトランス体とシス体の合計としての3−ヘキセン選択率は、転化した1−ブテンからエチレン、3−ヘキセンが生成した割合として計算した。結果を表1に示した。
【0080】
〔実施例5a〕
アルカリ金属化合物として水酸化カリウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するカリウムの担持量は酸化物換算で0.7重量%であった。水素濃度9vol%における1−ブテン転化率は24%、エチレンと3−ヘキセンの選択率合計は90mol%であった。結果を表1に示す。
【0081】
〔実施例6a〕
アルカリ金属化合物として水酸化セシウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するセシウムの担持量は酸化物換算で2.2重量%であった。水素濃度9vol%における1−ブテン転化率は35%、エチレンと3−ヘキセンの選択率合計は88mol%であった。結果を表1に示す。
【0082】
〔比較例7a〕
アルカリ金属化合物を担持していないメタセシス触媒(触媒
REF)を用いて、水素を共存させないで反応を実施したところ、1−ブテン転化率は71%、エチレンと3−ヘキセンの選択率合計は27mol%であった。結果を表1に示す。実施例5a、6aと比較して、エチレンと3−ヘキセンの合計選択率は大幅に減少した。
【0083】
[4]エチレンとシス−2−ブテンのメタセシス反応
メタセシス触媒0.4gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、さらに500℃で30分水素還元した。反応温度である370℃まで降温した後、エチレンとシス−2−ブテンのモル比が1、かつシス−2−ブテン流量とメタセシス触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが7h
-1、および全ガス中の水素濃度が9vol%となるようにエチレンとシス−2−ブテン、水素を触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。
【0084】
供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された2−ブテンの割合から2−ブテン転化率を計算した。この場合の2−ブテンとは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンの合計を指す。また、2−ブテン基準のプロピレン選択率は、転化した2−ブテンからプロピレンが生成した割合として計算した。
【0085】
〔実施例7a〕
アルカリ金属化合物として水酸化セシウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するセシウムの担持量は酸化物換算で0.4重量%であった。前記した方法によって、エチレンとシス−2−ブテンとのメタセシス反応を行った結果、2−ブテン転化率は35%、2−ブテン基準のプロピレン選択率は94%であった。結果を表1に示す。
【0086】
〔比較例8a〕
アルカリ金属化合物を担持していないメタセシス触媒(触媒
REF)を用いて、実施例7aと同様にエチレンとシス−2−ブテンとのメタセシス反応を行った。その結果、2−ブテン転化率は41%、2−ブテン基準のプロピレン選択率は58%であった。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
(II)シリカ担持タングステン触媒(B)を用いるメタセシス反応
[1]触媒調製
イオン交換水にメタタングステン酸アンモニウムを溶解させて水溶液を調製した。この水溶液に富士シリシア化学株式会社製のシリカCARiACT−G10を含浸させた後、エバポレーターで水分を蒸発させた。得られた触媒前駆体粉末を電気炉で500℃、5時間空気焼成し、メタセシス触媒WO
3/SiO
2を調製した。イオン交換水に溶解させるメタタングステン酸アンモニウムの量を変え、WO
3担持量が、酸化物(WO
3)換算で、1重量%、3重量%、5重量%、7重量%、10重量%の5種類のWO
3/SiO
2触媒を得た。
【0088】
[2]粉末X線回折(XRD)測定とピーク強度比(I
WO3/I
0)の算出
WO
3担持量の異なる5種類のWO
3/SiO
2触媒およびシリカ(CARiACT−G10)粉のXRD測定を実施した。株式会社リガク製のX線回折装置MultiFlexを用いて、本明細書中に記載の条件で、連続スキャン法にて測定した。
【0089】
測定結果を
図1に示す。WO
3担持量が1重量%および3重量%のWO
3/SiO
2触媒では、2θ=22〜25°および2θ=32〜35°の範囲にXRDパターン形状の変化がみられなかったことから、これらの触媒は実質的に結晶性のWO
3を含んでいないと判定した。一方、WO
3担持量が5重量%、7重量%および10重量%のWO
3/SiO
2触媒では、2θ=22〜25°および2θ=32〜35°の範囲にXRDパターン形状の変化が確認され、その変化はWO
3担持量の増加とともに顕著になった。そこで、WO
3担持量が7重量%および10重量%のWO
3/SiO
2触媒について、2θ=22〜25°の範囲においてXRDパターン形状の変化が認められる範囲の前後2点を結んで直線を引き、上記範囲内で最も相対強度の大きい回折ピーク強度(I
WO3)と、そのときの2θ角度において、直線で切られるまでの回折強度(非晶部由来強度に相当:I
0)との比(I
WO3/I
0)を計算したところ、WO
3担持量が7重量%のWO
3/SiO
2触媒ではI
WO3/I
0=1.2、WO
3担持量が10重量%のWO
3/SiO
2触媒ではI
WO3/I
0=1.4であった。さらに2θ=32〜35°の範囲でも同様の計算を行った結果、WO
3担持量が7重量%のWO
3/SiO
2触媒ではI
WO3/I
0=1.1、WO
3担持量が10重量%のWO
3/SiO
2ではI
WO3/I
0=1.5であった。計算結果を
図2、
図3に示す。
【0090】
次に、日本無機化学工業株式会社製のWO
3と富士シリシア化学株式会社製のシリカCARIACT-G10を、WO
3濃度が0.5重量%、1重量%、3重量%になるように各々物理混合した試料をXRD測定した。2θ=22〜25°および2θ=32〜35°の範囲におけるI
WO3/I
0の比を計算し検量線を作成したところ、2θ=22〜25°および2θ=32〜35°の範囲ともWO
3濃度が1重量%以下の場合に、I
WO3/I
0の比が1.4を下回った。この結果から、WO
3担持量が1重量%、3重量%、5重量%および7重量%のWO
3/SiO
2触媒における結晶性のWO
3濃度はいずれも1重量%未満であると判定した。検量線を
図4に示す。
【0091】
[3]エチレンと4−メチル−2−ペンテンのメタセシス反応
メタセシス触媒0.4gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、さらに500℃で30分水素還元した。反応温度まで降温した後、エチレンとトランス−4−メチル−2−ペンテン(t−4MP2)のモル比が3.5、かつt−4MP2流量とメタセシス触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが5h
-1となるようにエチレンとt−4MP2を触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。水素を共存させる場合は、エチレンとt−4MP2に加えて所定流量の水素も触媒層に供給した。
【0092】
供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された4MP2の割合から4MP2転化率を計算した。なお、t−4MP2とシス−4−メチル−2−ペンテン(c−4MP2)は区別していない。また3−メチル−1−ブテン(3MB1)選択率は、転化した4MP2から3MB1が生成した割合として計算した。C5オレフィン中の3MB1の割合は、生成したC5オレフィン合計に対する3MB1の割合として計算した。
【0093】
なお、以下の実施例では、生成物としてプロピレンも確認された。
【0094】
〔実施例1b〕
WO
3が1重量%担持されたWO
3/SiO
2触媒を使用した。反応温度400℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は87%、3MB1選択率は93mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は98%であった。結果の一部を表2に示す。
【0095】
〔実施例2b〕
WO
3が3重量%担持されたWO
3/SiO
2触媒を使用した。反応温度340℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は94%、3MB1選択率は91mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は99%であった。結果の一部を表2に示す。
【0096】
〔実施例3b〕
WO
3が5重量%担持されたWO
3/SiO
2触媒を使用した。反応温度340℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は94%、3MB1選択率は87mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は97%であった。結果の一部を表2に示す。
【0097】
〔実施例4b〕
WO
3が7重量%担持されたWO
3/SiO
2触媒を使用した。反応温度340℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は94%、3MB1選択率は85mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は97%であった。結果の一部を表2に示す。
【0098】
〔比較例1b〕
WO
3が10重量%担持されたWO
3/SiO
2触媒を使用した。反応温度340℃、水素濃度9vol%における4MP2転化率は94%、3MB1選択率は65mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は87%であった。実施例1b〜4bと比較して、WO
3/SiO
2メタセシス触媒が実質的に結晶性のWO
3を含むことにより、3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合は大きく減少した。結果の一部を表2に示す。なお本比較例1bは、前述した比較例2aの再現実験に相当する。
【0099】
〔比較例2b〕
水素を共存させない以外は実施例4bと同様に反応を実施したところ、4MP2転化率は52%、3MB1選択率は74mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は94%であった。水素を共存させないことにより、実施例4bの結果と比較して4MP2転化率は著しく減少した。結果の一部を表2に示す。
【0100】
〔比較例3b〕
反応温度360℃、水素を共存させない以外は実施例2bと同様に反応を実施したところ、4MP2転化率は91%、3MB1選択率は80mol%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は94%であった。反応温度を上げることにより、実施例2bと同等の4MP2転化率が得られた一方、3MB1選択率およびC5オレフィン中の3MB1の割合は大きく減少した。結果の一部を表2に示す。
【0101】
[3]エチレンとシス−2−ブテンのメタセシス反応
メタセシス触媒0.4gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、さらに500℃で30分水素還元した。反応温度である370℃まで降温した後、エチレンとシス−2−ブテンのモル比が1、かつシス−2−ブテン流量とメタセシス触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが7h
-1、および全ガス中の水素濃度が9vol%となるようにエチレンとシス−2−ブテン、水素を触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。
【0102】
供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された2−ブテンの割合から2−ブテン転化率を計算した。この場合の2−ブテンとは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンの合計を指す。また、2−ブテン基準のプロピレン選択率は、転化した2−ブテンからプロピレンが生成した割合として計算した。
【0103】
〔実施例5b〕
実施例3bで用いた、WO
3が5重量%担持されたWO
3/SiO
2触媒を使用し、エチレンと2−ブテンのメタセシス反応を実施した。その結果、2−ブテン転化率は26%、2−ブテン基準のプロピレン選択率は89%であった。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
(III)末端オレフィンの二重結合異性化
[1]触媒調製
Y
2O
3、La
2O
3、CeO
2、ZrO
2は硝酸塩(ただし、ZrO
2はオキシ硝酸塩)を原料とする沈殿法で得た沈殿物を洗浄、乾燥後、550℃で5h空気焼成することにより調製した。ハイドロタルサイト焼成体は協和化学のキョーワード500を550℃で5h空気焼成することにより調製した。MgOはMERCK製のMgO(GR for analysis)を80℃で一晩水中加熱した後、乾燥および550℃で5h空気焼成することにより調製した。Na
2O/Al
2O
3(Na
2O換算で7重量%)は活性アルミナに水酸化ナトリウムを含浸担持した後、乾燥および550℃で5h空気焼成することにより調製した。CaOは関東化学製の水酸化カルシウムを550℃で5h空気焼成することにより調製した。比較例で用いた酸触媒のうち、H−ZSM−5(SiO
2/Al
2O
3=39)とシリカ・アルミナ(アルミナ換算で13重量%)については、市販品を使用した。H
3PO
4/Al
2O
3(H
3PO
4換算で13重量%)は活性アルミナにリン酸を担持後、500℃で5h空気焼成することにより調製した。
【0105】
[2]4−メチル−1−ペンテンの二重結合異性化(気相流通式)
二重結合異性化触媒 0.5gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、反応温度まで降温した。窒素と4−メチル−1−ペンテンのモル比が3.5、かつ4−メチル−1−ペンテン流量と二重結合異性化触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが4h
-1となるように窒素と4−メチル−1−ペンテンを触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された4−メチル−1−ペンテンの割合から4−メチル−1−ペンテン転化率を計算した。4−メチル−2−ペンテン選択率は、転化した4−メチル−1−ペンテンから4−メチル−2−ペンテンが生成した割合として計算した。
【0106】
〔実施例1s〕
Y
2O
3を触媒に用い、130℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は81%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は96%であった。結果を表3にまとめた。
【0107】
〔実施例2s〕
MgOを触媒に用い、90℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は81%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は97%であった。結果を表3にまとめた。
【0108】
〔実施例3s〕
ハイドロタルサイト焼成体を触媒に用い、250℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は56%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は92%であった。結果を表3にまとめた。
【0109】
〔実施例4s〕
La
2O
3を触媒に用い、100℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は75%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は97%であった。結果を表3にまとめた。
【0110】
〔実施例5s〕
CeO
2を触媒に用い、230℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は44%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は98%であった。結果を表3にまとめた。
【0111】
〔実施例6s〕
Na
2O/Al
2O
3を触媒に用い、230℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は76%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は99%であった。結果を表3にまとめた。
【0112】
〔実施例7s〕
ZrO
2を触媒に用い、110℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は59%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は95%であった。結果を表3にまとめた。
【0113】
〔比較例1s〕
H−ZSM−5(SiO
2/Al
2O
3=39)を触媒に用い、120℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は18%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は55%であった。結果を表3にまとめた。
【0114】
〔比較例2s〕
シリカ・アルミナ(アルミナ 13wt%)を触媒に用い、120℃で反応した4−メチル−1−ペンテン転化率は35%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は40%であった。また、ガスクロマトグラム(GCチャート)には4MP1や4MP2よりも保持時間の長い高沸点成分の副生も確認された。結果を表3にまとめた。
【0115】
〔比較例3s〕
H
3PO
4/Al
2O
3(H
3PO
4 13wt%)を触媒に用い、250℃で反応した。4−メチル−1−ペンテン転化率は48%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は78%であった。結果を表3にまとめた。
【0116】
[3]4−メチル−1−ペンテンの二重結合異性化(液相回分式)
〔実施例8s〕
0.015gのCaOを5mlの4−メチル−1−ペンテン中に加え、室温で2h攪拌した。このときの4−メチル−1−ペンテン転化率は81%で、4−メチル−2−ペンテン選択率は99.7%であった。結果を表3にまとめた。
【0117】
【表3】
(IV)二重結合異性化によって調製された内部オレフィンを原料オレフィンとするメタセシス反応
前記「(III)末端オレフィンの二重結合異性化」に係わる実施例によって、末端オレフィンが選択的に隣接位に二重結合した内部オレフィンが得られることが明らかになった。本実施例では、メタセシス反応における原料オレフィンが該内部オレフィン以外に末端オレフィンを含んだ混合オレフィンであっても、本発明に係わるメタセシス触媒(A)および/または触媒(B)を用いてメタセシス反応を行うことで、該内部オレフィンのみがメタセシス反応に関与し、該末端オレフィンはメタセシス反応に関与しないため、前記3工程からなる、各々プロピレンと3MB1の製造、又はプロピレンの製造が可能であることを示す。
【0118】
実施例として、末端オレフィンの二重結合異性化によって濃度が高められた内部オレフィン(4MP2)および末端オレフィン(4MP1)混合オレフィンと、エチレンを用い、本発明に係わるメタセシス触媒(A)を用いてメタセシス反応を行った場合に、4MP2のみが反応に関与し、4MP1は反応に関与することなく、3MB1が異性化を起こすことなく選択的に製造する方法を説明する。
【0119】
[1]エチレンと4−メチル−ペンテン(4MP1と4MP2混合物)のメタセシス反応
メタセシス触媒0.4gを反応管に充填し、前処理として500℃、30分窒素を流通させた後、さらに500℃で30分水素還元した。反応温度まで降温した後、エチレンと4−メチル−ペンテン(主に4MP1と4MP2からなる混合物)のモル比が7、かつ4−メチル−ペンテン流量とメタセシス触媒重量の比によって表される空間速度WHSVが5h
-1、および全ガス中の水素濃度が9vol%となるようにエチレンと4−メチル−ペンテン、水素を触媒層に供給した。圧力は前処理時、反応時とも0MPaGであった。
【0120】
なお、4−メチル−ペンテンの原料をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、4MP2(トランス体とシス体の合計)の濃度は64.5重量%、4MP1の濃度は33.4重量%、2−メチル−2−ペンテンの濃度は1.6重量%、2−メチル−1−ペンテンの濃度は0.5重量%であった。
【0121】
供給開始後3時間目の組成を分析することにより、反応によって消費された4MP2の割合から4MP2転化率を計算した。なお、トランス−4−メチル−2−ペンテンとシス−4−メチル−2−ペンテンは区別していない。同様に4MP1転化率は、反応によって消費された4MP1の割合から計算した。また3MB1選択率は、転化した4MP2から3MB1が生成した割合として計算した。炭素数が5であるオレフィン(C5オレフィン)中の3MB1の割合は、生成したC5オレフィン合計に対する3MB1の割合として計算した。
【0122】
〔実施例1p〕
前記(I)の[1]「シリカ担持タングステン触媒(A)の調製」の項で述べた方法に準じて、アルカリ金属化合物として水酸化セシウムを担持させた触媒を使用した。担体に対するセシウムの担持量は、酸化物換算で1.0重量%であった。前記した方法によって、エチレンと4−メチル−ペンテンとのメタセシス反応を行った結果、反応温度380℃における4MP2転化率は90%、4MP1転化率は4%で、4MP2基準の3MB1選択率は95%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は99%であった。
【0123】
〔実施例2p〕
実施例3bにおいて用いた、WO
3が5重量%(酸化物換算)担持されたシリカ担持タングステン触媒(B)を用いた。前記した方法によって、エチレンと4−メチル−ペンテンとのメタセシス反応を行った結果、反応温度350℃における4MP2転化率は92%、4MP1転化率は7%で、4MP2基準の3MB1選択率は95%、生成したC5オレフィン中の3MB1の割合は98%であった。
【0124】
以上の結果から、4MP1と4MP2からなる4−メチル−ペンテン原料を用いた場合でも、4MP2原料を用いた場合と同等に高い3MB1選択率が得られたことから、4MP1と4MP2を分離することなくメタセシス反応器に供給可能であることが理解される。