(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建造物を建築する際には、各種作業を行うために足場が組まれることが一般的である。
この際、昨今では、安全性を考慮し、先行足場が組まれることが多い。
先行足場とは、建造物を立てる前に組まれる足場であり、この足場を使用して作業を行う。
このような先行足場を組む方法として様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、単管(メッキ若しくは亜鉛ドブズケした鋼管)で控えをとって、足場を立設する技術が開示されている。
この技術においては、単管の両端に補助金具を取付けて控えをとる。
補助金具は、単管ホルダとその単管ホルダの下部に回動可能に固定された単管ホルダ下部固定回転部材を主要構成とする。
単管ホルダ下部固定回転部材は、ベースに取付けられており、各々の単管ホルダに単管の両端部を把持した状態で、ベースを地表面及び工作物適宜位置に各々取付けることにより、地表面と工作物との間に控えをとることができる。
このとき、単管ホルダは、単管ホルダ下部固定回転部材により、ベースに対し回動可能であるため、地表に対する控えの角度を適宜調整することができる。
【0004】
このように、特許文献1に記載の技術においては、確かに、単管ホルダが単管の外周に沿って回動することが可能であるため、控えをとる際に、ベースが地表面に密接した状態で、控えの角度を調整すること(つまり、位置調整)が可能となる。
しかし、このような技術においては、確かに、単管を把持する際にある程度の位置調整を行うことができるが、単管の径に影響を受けること、単管の長さ調整が困難であること、控えの角度及び位置調整に限界があること等の問題があった。
また、このような従来技術を利用して、先行足場を取付ける際には、足場の外側に単管パイプで控えをとって対応する必要があるが、狭小地にて建築を行う場合には、スペースの問題でこのような控えをとることができないという問題があった。
つまり、足場の内側から単管パイプで控えを取るためには、より柔軟に角度調整及び位置調整が可能であるとともに、単管パイプの長さ調整をも行える作業性の高い治具の開発が強く求められていた。
【0005】
このような背景のもと、本願出願人は、鋭意開発の上、上記問題を解決するための技術を開発した(特許文献2参照)。
特許文献2の技術においては、ベース部を基礎となる構造体(つまり、コンクリート基礎や梁ジョイントボックス等)に固定した状態において、このベース部に対してアーム部を角度調整できるとともに、このアーム部に対して長尺部材もまた角度調整できるため、結果として2箇所で角度調整が可能であり、よってこれにより、長尺部材の調整を行うことができる。
つまり、このような倒壊防止用治具においては、控えとなる長尺部材の角度調整及び位置調整を柔軟に行うことが可能である。
また、クランプによって、長尺部材を把持するとともにアーム部に固定される構成であるため、このクランプによる長尺部材の把持位置を変えることによって、長尺部材の長さ(使用有効長)を調整することができる。
以上のように、特許文献2の技術によれば、狭小地に先行足場を立設する際に、控えの角度調整及び位置調整を柔軟に行うことが可能であるとともに、控えの長さをもまた柔軟に調整することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の技術によると、基礎となる構造体(つまり、コンクリート基礎や梁ジョイントボックス等)に固定されるベース部の一端側に、アーム部を固定する構成をとるため、荷重に対する耐性が異なる慮があった。
特許文献2に係る技術では、ベース部には、あらゆる使用箇所や使用状態に対応するために複数のボルト孔が形成されている。
そのため、特許文献2に係る技術では、アーム部とベース部の連結位置と、ボルト孔と、の距離が各々のボルト孔によって異なる。
このため、構造体に固定するためのボルト締結位置とアーム部との距離が異なると荷重耐性が異なるという慮があった。
換言すると、アーム部の固定位置と遠い位置にあるボルト孔での締結と、近い位置にあるボルト孔での締結とを比較すると、遠い位置にあるボルト孔での締結の方が荷重耐性が低くなるという慮があった。
【0008】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、狭小地に先行足場を立設する際に、控えの角度調整及び位置調整を柔軟に行うことが可能であるとともに、控えの長さをもまた柔軟に調整することが可能であり、複数の締結位置のすべてにおいて同等の荷重耐性を実現することが可能な倒壊防止用治具を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、安価かつ簡易な構成で先行足場を内側より立設可能とする倒壊防止用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、請求項1に係る倒壊防止用治具によれば、組立物の倒壊を防止するための長尺部材を固定する倒壊防止用治具であって、該倒壊防止用治具は、基礎となる構造体に固定されるベース部と、該ベース部に対して角度調整可能となるように、前記ベース部に取付けられたアーム部と、該アーム部に固定されるとともに、前記長尺部材を把持可能なクランプと、を備えて構成され、前記クランプは、前記アーム部に固定されるアーム把持部と、該アーム把持部に回動可能に取付けられるとともに、前記長尺部材を把持可能な長尺部材把持部を少なくとも一つ備えて構成されており、前記アーム部は、前記ベース部に対して角度を調整することができるよう構成されるとともに、前記長尺部材把持部は、前記アーム把持部を介して前記アーム部に対して角度を調整することができるよう構成されており、前記ベース部には、設置位置調整を可能とするための複数のボルト孔が形成されており、複数の前記ボルト孔は、前記ベース部において前記アーム部からの荷重集中地点から等距離に形成され
、前記ベース部の角部以外の部分に非対称に配置されており、前記ボルト孔の径は、複数のサイズで構成されていることにより解決される。
【0010】
このように本発明に係る倒壊防止用治具では、ベース部に形成された複数のボルト孔は、アーム部からの荷重集中地点から等距離に形成される。
なお、アーム部からの荷重集中地点とは、ベース部におけるアーム部の接続地点付近となる。
換言すれば、ベース部において、アーム部の接続地点から等距離となる位置に、複数のボルト孔は各々形成されることとなる。
このように、複数のボルト孔と形成することによって、ボルト締結点を、どのボルト孔に設定しても、等しく高荷重耐性を実現することができる。
よって、倒壊防止用治具の設置地点の自由度が増大する。
また、これに加え、本発明に係る倒壊防止用治具では、アーム部を備えることにより、フレキシブルな位置調整及び角度調整を行うことが可能になる。
つまり、アーム部は、ベース部に対して角度を調整できるように構成されており、また、控えをとるための単管等である長尺部材を把持するクランプもまたアーム部に対して角度を調整できるように構成されている。
つまり、ベース部を基礎となる構造体(つまり、コンクリート基礎や梁ジョイントボックス等)に固定した状態において、このベース部に対してアーム部を角度調整できるとともに、このアーム部に対して長尺部材もまた角度調整できるため、結果として2箇所で角度調整が可能であり、よって調整段階において、長尺部材の位置調整等を行うことが可能となる。
なお、最終的には、他の固定クランプにより、アーム部と長尺部材とを把持して長尺部材が不動となるように固定する。
このように、本発明にかかる倒壊防止用治具においては、控えとなる長尺部材の角度調整及び位置調整を柔軟に行うことが可能である。
また、クランプによって、長尺部材を把持するとともにアーム部に固定される構成であるため、このクランプによる長尺部材の把持位置を変えることによって、長尺部材の長さ(使用有効長)を調整することができる。
つまり、クランプを直接ベース部に固定した場合と異なり、本発明においては、アーム部を介してベース部とクランプを連結している。
このため、アーム部が介在する分、長尺部材端部がクランプからベース部方向へ突出する長さをかせげるため、この分の長さ調整が可能となる。
また、ボルトによって、ベース部を基礎となる構造体(つまり、コンクリート基礎や梁ジョイントボックス等)に簡易に固定することができ、ベース部に複数のボルト孔が形成されていることにより、取付け位置選択の自由性が高くなる。
以上のように構成されているため、本発明に係る倒壊防止用治具は、適用性の自由度が大きいため、狭小地等の立設面積や使用自由度に制限がある場所において、有効に適用することができる。
【0011】
また、具体的には、複数の前記ボルト孔は、前記荷重集中地点を中心とした円周上に形成されていると、複数のボルト孔を、荷重集中地点から等距離に効率よく配置できるため好適である。
【0012】
更に、このとき、前記クランプは、前記アーム部の前記ベース部への取付け位置と所定距離離隔して、前記アーム部へ取付けられている。
このように構成されていると、控えとして使用される長尺部材の長さ調整を行うことができる。
つまり、クランプは長尺部材を把持した状態でアーム部に取付けられるため、このクランプの位置をアーム部上でずらせば、ずらした分長尺部材の長さを調整することが可能となる。
よって、本発明によれば、クランプの長尺部材把持位置と、クランプのアーム部取付け位置と、の2点により、長尺部材の長さ(使用有効長)を調整することが可能となる。
【0013】
また、このとき、具体的には、前記長尺部材は、単管であって、組立物の控えとして使用され、前記アーム部は、略円筒形部材であって、その一端部において前記ベース部と連結される構成をとるとよい。
【0014】
このとき、前記ボルト孔の径は、複数のサイズで構成されていると好適である。
このように構成されていると、使用する様々なボルトのサイズに対応できるため、自由度が高まり好適である。
また、ボルトサイズに応じたバージョンを複数作る必要がないため、コストを低減することが可能となる。
【0015】
更に、このとき、具体的には、前記ボルト孔は、アンカーボルトの径と整合しており、前記ベース部は、基礎となる前記構造体から突出した前記アンカーボルトに固定されると好適である。
また、別の形態の具体例では、前記ボルト孔は、構成部材に形成されたボルト孔の径と整合しており、前記ベース部は、前記梁鋼製部材に取付けられると好適である。
【0016】
このように構成されていると、具体的に様々な場所に有効に適用することができるため、好適である。
また、使用場所にあわせたバージョンを複数作る必要がないため、コストを低減することが可能となる。
なお、鋼製部材としては、特に限定されるものではないが、例えば、H型鋼等で鋼製された鋼製梁や、梁ジョイントボックス等が想定される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る倒壊防止用治具においては、ベース部において、アーム部の接続地点から等距離となる位置に、複数のボルト孔が各々形成されるため、ボルト締結点を、どのボルト孔に設定しても、等しく高荷重耐性を実現することができる。
また、倒壊防止用治具の設置地点の自由度が増大する。
更に、本発明に係る倒壊防止用治具においては、ベース部に対してアーム部を角度調整できるとともに、このアーム部に対して長尺部材もまた角度調整できるため、結果として2箇所で角度調整ができ、このため、狭小地に先行足場を立設する際に、控え(やらず)の角度調整及び位置調整を柔軟に行うことが可能となる。
また、クランプの長尺部材把持位置と、クランプのアーム部取付け位置と、の2点により、長尺部材の長さ(使用有効長)を調整することが可能であるため、控え(やらず)の長さをもまた柔軟に調整することが可能となる。
このように、本発明に係る倒壊防止用治具を用いて控え(やらず)をとることにより、安価かつ簡易な構成で先行足場を内側より立設することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0020】
本実施形態は、狭小地に先行足場を立設する際に、やらず(控え)の角度調整及び位置調整を柔軟に行うことが可能であるとともに、控えの長さをもまた柔軟に調整することが可能な倒壊防止用治具に関するものである。
そして、本実施形態に係る倒壊防止用治具は、複数の締結位置のすべてにおいて同等の荷重耐性を実現することが可能であるという機能もまた重ねて実現されている。
【0021】
図1乃至
図11は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、
図1は倒壊防止用治具の使用状態説明図、
図2は倒壊防止用治具の斜視図、
図3は倒壊防止用治具の側面図、
図4は倒壊防止用治具を構成するアーム部の三面図、
図5はベース部の斜視図、
図6はベース部の三面図、
図7はアーム部のベース部に対する回動状態を示す説明図、
図8はアーム部に対する単管の回動状態を示す説明図、
図9乃至
図11は倒壊防止用治具の長さ調整機能を示す説明図である。
【0022】
図1乃至
図3により、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sについて説明する。
なお、本実施形態に係る「倒壊防止用治具S」とは、単管で足場を組む際、この足場等が転倒しないように斜めに入れる「やらず」(控え)を取付けるために使用する治具であり、本実施形態においては、先行足場を組立てる際の使用例を説明する。
先行足場とは、建造物を立設するに先立ち組まれる足場であり、本実施形態においては、単管と言われる鉄パイプを組合わせて立設される単管足場とする。
【0023】
図1に示す例のように、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sは、コンクリート基礎からやらず(控え)を足場に向って斜めに渡すために使用される。
コンクリート基礎からは、上方向にアンカーボルトV2(の脚)が突出しており、本実施形態においては、このアンカーボルトV2に倒壊防止用治具Sが取付けられる。
後に詳述するが、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sは、ベース部3に対して、フレキシブルに角度を変えることができるため、地表面に対して、あらゆる角度及び方向にやらずとなる単管Pを渡すことができる。
なお、
図2には、アンカーボルトV2ではなく、鋼製の梁に対してボルト留めしている例を示した。
このように、倒壊防止用治具Sは、使用箇所が限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でどのような場所においても適用可能である。
以下、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sの構成について説明する。
【0024】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sは、アーム部1、クランプ2、ベース部3、固定クランプ4と、を有して構成されている。
図2乃至
図4に示すように、アーム部1は、ベース取付部11と、単管取付部12とを有して構成されている。
なお、説明の便宜上、アーム部1は、略円筒形状の部材であるが、ベース部3に取付けられる一端側(下方に配置される側)を「ベース取付部11」とし、クランプが取り付けられる側であり、ベース取付部11に比して他端側(上方側に配置される側)全体を「単管取付部12」と記している。
【0025】
本実施形態のベース取付部11には、ベース取付孔11a,11aが形成されている。
このベース取付孔11a,11aは、横断面において中心に対して対称となる位置に穿孔されている。
つまり、ベース取付部11の外側から、連結ボルトV1がベース取付孔11a,11aを貫通するように構成されている。
また、本実施形態の単管取付部12の適宜位置には、後述するクランプ2が取付けられる。
【0026】
クランプ2は、単管把持部21とアーム把持部22とが回動自在に連結された、2連の単管自在クランプである。
アーム把持部22には、アーム部1の単管取付部12が貫通された状態で把持されており、単管把持部21には、やらずとして使用される単管が貫通された状態で把持される。
この際、クランプ2を構成するアーム把持部22は、アーム部1のどの位置においても及びどの方向に向けても設定可能である。
つまり、アーム部1の軸線(長手方向)に対して、どの角度方向にも単管把持部21を設定可能であり、よって、単管把持部21をアーム部1の軸線(長手方向)に対して、どの角度方向にも設定することができる。
換言すれば、アーム部1に対してアーム把持部22を回すことにより、アーム部1からの単管把持部21の突出方向をアーム部1の軸線(長手方向)に対して360°どの方向にでも設定可能である。
また、単管把持部21は、アーム把持部22に対して回動可能であるから、これらの自在性により、単管Pの配設方向の自由度が従来例に比して飛躍的に大きくなる。
更に、固定クランプ4は、2連の固定単管クランプであり、一方には、アーム部1の単管取付部12が貫通された状態で把持されており、他方には、やらずとして使用される単管Pが貫通された状態で把持される。
なお、本例においては、固定クランプ4は、クランプ2よりもベース部3に近接する側に配設され、角度・位置調整が終了した時点で、アーム部1に対して単管Pを固定する。
【0027】
図5及び
図6に示すように、ベース部3は、略矩形平板状の支持部31と、略平行に一定間隔離隔して略垂直に起立する平板状のアーム取付部32,32と、を有して構成されている。
支持部31には、複数のボルト孔31aが形成されている。
なお、後に詳述するが、この複数のボルト孔31aは、支持部31の平面視における中心点をOとすると、この中心点Oから等距離の位置(つまり、中心点Oを中心とした略円周上)に形成されている。
【0028】
また、アーム取付部32,32は、中心点Oに対して対称となるように配置されるとともに、アーム部1を構成するベース取付部11の横断面外径幅と整合する距離離隔している。
つまり、アーム取付部32,32の内側には、ベース取付部11が納まるように構成されている。
本実施形態においては、支持部31は略矩形に形成されており、アーム取付部32,32は、支持部31の相対向する2辺と平行となるように起立している。
また、アーム取付部32の上方は、略半円状にアールを描いており、そのアールを描く上方中央部には、アーム取付孔32aが形成されている。
【0029】
両アーム取付部32,32に形成された両アーム取付孔32aは、中心点Oに対して対称となる水平位置であって、支持部31から同高さとなる位置に形成されている。
つまり、アーム取付孔32a,32aには、連結ボルトV1が水平に貫通できるように構成されている。
また、このアーム取付孔32aは、ベース取付孔11aと整合するように構成されており、ベース取付部11をアーム部取付部32,32の間に納めた状態において、アーム取付孔32aとベース取付孔11aとは、連通するようになる。
つまり、この連通孔Rは、2個形成されることとなり、この連通孔R,Rを連結ボルトV1が水平に貫通された状態で締結されることとなる。
【0030】
また、支持部31に形成されるボルト孔31aは、本実施形態においては、例示として、同径に図示してあるが、これに限られることはなく、複数サイズのボルトに対応することが可能となるように、径サイズを変えて形成されている。
このベース部3は、例えば、コンクリート基礎から突出するアンカーボルトV2等を利用して固定される。
よって、この各アンカーボルトV2や通常のボルトの径に対応できるように径サイズを複数設定することも可能であり、これにより、アンカーボルトV2や通常のボルトのサイズに関わらず使用することができる。
また、同じ径サイズのボルト孔31aが複数形成されていると、引張力に対応できる設置場所を選択する自由度を上げることができ、これにより、単管Pの適切な引張力を保つことができる。よって、強風等への耐性も増す。
【0031】
更に、ボルト孔31aの配設個数等は本例に限られることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
また、上記はコンクリートから突出したアンカーボルトV2に支持部31を固定する例を示したが、構成はこれに限られることはなく、鋼製部材(例えば、梁ジョイントボックス等)に形成されたボルト締結用孔とボルト孔31aを連通させてボルト締めを行うことにより、鋼製部材(例えば、梁ジョイントボックス等)にも取付けることが可能である。
このように、設置場所は本例に限定されるものではなく、広く適用可能である。
【0032】
このように形成された各部材は、次のように組立てられる。
まず、アーム部1をベース部3に取付ける。
これは、連通孔R,Rから、両側ボルトである連結ボルトV1を締結することにより行う。
【0033】
この連通孔Rでの固定は、部品状態(使用前状態)では、仮固定程度の固定としておき、現場で実際に使用する際に、ベース部3に対するアーム部1の角度を確定した後、本固定して不動とするとよい。
そして、クランプ2を構成するアーム把持部22を、アーム部1に取付け、倒壊防止用治具Sとする。
【0034】
次いで、倒壊防止用治具Sの使用方法を説明する。
ベース部3は、ボルト孔31aからボルト締結することにより、適宜所定箇所に取付けられる。例えば、
図1に示す例においては、アンカーボルトV2に締結される。
【0035】
前述の通り、本実施形態に係る支持部31には、複数のボルト孔31aが形成されている。
そして、
図6に示すように、この複数のボルト孔31aは、中心点Oから等距離p1の位置に形成されている。
つまり、複数のボルト孔31aは、中心点Oを中心とした略円周上に形成されている。
これにより、複数のボルト孔31aのうち、どのボルト孔31aにアンカーボルトV2を締結しても、締結位置は中心点Oから等距離の位置となる。
そして、この中心点Oは、アーム取付部32,32から等距離の位置にある(中心点Oに対して対称となる位置に形成されているため)。
換言すると、単管Pを立設して足場を形成した場合に、アーム取付部32,32を介して荷重が付加される位置から、ほぼ等距離となる位置に、複数のボルト孔31aが形成される。
このため、複数のボルト孔31aのうち、どの位置において、アンカーボルトV2等を締結したとしても、荷重耐性の差異はなくなり、均等となる。
【0036】
また、
図7に示すように、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sは、仮固定の状態では、連通孔R,Rを中心に回動可能である。
よって、ベース部3に対するアーム部1の角度α1が決定した段階で、連結ボルトV1の本固定を行い、ベース部3に対してアーム部1が不動となるようにする。
例えば、
図7(a)の状態で本固定を行えば、ベース部3に対してアーム部1が角度α1を成した状態で、アーム部1がベース部3に対して固定されることとなる。
【0037】
このように、本実施形態に係るアーム部1はベース部3に対して、フレキシブルに角度をとることができる(
図7参照)。
よって、使用箇所がどのような場所であっても、柔軟に対応することができる。
特に、先行足場を組む場所が狭小地であり、内側から単管Pを渡して足場を支持したい場合には、このように適応性が大きいと有効に使用することができる。
【0038】
次いで、クランプ2に単管Pを固定する。
上記の通り、クランプ2を構成するアーム把持部22は、アーム部1に取付けられているため、単管把持部21に単管Pを取付ける。
なお、本例においては、アーム部1からの単管把持部21の突出方向を、アーム部1の軸線(長手方向)に対して360°どの位置にでも設定可能である。
また、このとき、クランプ2は、自在クランプであるため、単管把持部21とアーム把持部22との境界部で互いに対して回動が可能となっている。
つまり、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、単管把持部21をアーム把持部22に対して回動させることによって、アーム部1に対する単管Pの角度を変えて、調整を行うことができる。
そして、調整が終了すると、
図8(c)に示すように、固定クランプ4により、アーム部1に対して単管Pを固定する。つまり、固定クランプ4の一方には、アーム部1の単管取付部12を貫通して把持するとともに、他方には、やらずとして使用される単管Pを貫通して把持し、この状態で固定される。
なお、本例においては、固定クランプ4は、クランプ2よりもベース部3に近接する側に配設される。
このように、単管把持部21は、アーム把持部22に対して回動可能であるから、前記アーム把持部22のアーム部1に対する取付自在性と相まって、単管Pの配設方向の自由度が飛躍的に大きくなる。
【0039】
以上のように調整することにより、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sは、フレキシブルにその使用角度を変えることができる。
詳細に説明すると、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sは、2点の角度可変点と、1点の位置調整点を備える。
つまり、角度可変点は、ベース部3とアーム部1との連結点(連通孔Rの位置)及びアーム部1と単管Pとの連結点(単管把持部21とアーム把持部22との連結点)であり、これら2点で角度を変えることができる。
【0040】
また、この2点は独立した可変点であるため、2点を各々独立して回動させることができ、従来よりもはるかに多くの使用状況において、フレキシブルに対応すること(やらずを渡すこと)ができる。
更に、位置調整点は、アーム部1とアーム把持部22の連結点であり、この位置で、アーム部1に対する単管把持部21の突出位置(つまり、アーム部1に対する単管Pの配設位置)を微調整することができる。
よって、従来よりも更に飛躍的に多くの使用状況において、フレキシブルに対応すること(やらずを渡すこと)ができる。
【0041】
また、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sによると、単管Pの長さを調整することも可能となる。
つまり、
図9を例にとり説明すると、単管把持部21による単管Pの把持位置を変更することによって、
図9(a)の位置に比して、
図9(b)の位置は距離t1の分調整されたことになる。
なお、本例においても、調整が終了した後、最終的には、クランプ4による最終固定が実施される。
【0042】
更に、
図10に示すように、本実施形態においては、アーム部1へのクランプ2の取付け位置(アーム把持部22が取付けられる位置)は、ベース取付部11とアーム取付部32との連結位置より所定距離u離隔した位置となるよう構成されている。
なお、所定距離uは、0<uとなるように構成され、上限に関しては、アーム部1のサイズ(倒壊防止用治具Sのサイズ)に応じて適宜設定される。
このため、所定距離uを変化(u1からu2へ変化)させることにより、強度とのバランスをとりながら、単管Pの長さを距離t2の分調整できる。
なお、本例においても、調整が終了した後、最終的には、クランプ4による最終固定が実施される。
【0043】
また、所定距離uを大きくすることにより、長さ調整の幅が広がる。
つまり、
図11に示すように、所定距離uが大きくなる(u2からu1へ変化)と、クランプ2を構成する単管把持部21からベース部3方向へ突出する単管P端部の長さを大きくとれるため、その分、単管Pの長さ調整幅がw2からw1へと広がることとなる。
【0044】
これは、クランプ2をアーム部1に取付けたことにより生じる効果である。
つまり、アーム部1を採用することにより、角度可変点が2個に増えたこと及び位置調整点が付加されたことのみならず、単管Pの長さの微調整もまた行うことが可能となった。
このことより、実際に使用する際には、現場での調整の自由度が上がり、より高い作業性が実現できる。
なお、本例においても、調整が終了した後、最終的には、クランプ4による最終固定が実施される。
【0045】
このように、本実施形態に係る倒壊防止用治具Sによれば、単管Pを立設して足場を形成した場合に、アーム取付部32,32を介して荷重が付加される位置から、ほぼ等距離となる位置に、複数のボルト孔31aが形成されるため、複数のボルト孔31aのうち、どの位置においてアンカーボルトV2等を締結したとしても、荷重耐性の差異はなくなり、均等となる。
また、ベース部3とアーム部1との連結点(連通孔Rの位置)及びアーム部1と単管Pとの連結点(単管把持部21とアーム把持部22との連結点)の2点で角度を変えることができるとともに、位置調整点で、アーム部1に対する単管把持部21の突出位置(つまり、アーム部1に対する単管Pの配設位置)を微調整することができる。
これに加え、更に、単管Pの有効長さを調整することもまた可能となった。
よって、場所に限定されずに使用することができ、先行足場を形成する場合に、建築物の外側からではなく、内側からやらずを渡して足場を支持することができる。
このため、特に、狭小地における建築に有効に活用することができる。