(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109145
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】特に繊維強化プラスチック部材を製造する際の予備成形体である、繊維プリフォームを製造する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20170327BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20170327BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
C08J5/04
B29B11/16
B29C67/14 G
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-503038(P2014-503038)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公表番号】特表2014-510178(P2014-510178A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012051309
(87)【国際公開番号】WO2012136394
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年1月13日
(31)【優先権主張番号】102011007018.4
(32)【優先日】2011年4月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ゲッティンガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル カイザー
【審査官】
佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102009042384(DE,A1)
【文献】
特表2001−516406(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0148082(US,A1)
【文献】
特開2007−197896(JP,A)
【文献】
特開昭60−134054(JP,A)
【文献】
特開2007−001046(JP,A)
【文献】
特開2003−305719(JP,A)
【文献】
特開2009−160879(JP,A)
【文献】
米国特許第05882462(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0000608(US,A1)
【文献】
特表2009−533238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08− 15/14
C08J 5/04− 5/10
C08J 5/24
B29C 70/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック部材を製造する際の予備成形体である、繊維プリフォーム(28,28.1)を製造する装置であって、該装置は、複数の糸又は粗糸を準備するための複数の繰出しステーション(1,1.1,2,2.1)と、それぞれ1つ又は複数の糸又は粗糸の始端部(20,20′)を把持することができる複数のグリッパ(5,5.1)とを有し、該各グリッパ(5,5.1)は、最大ポジション(8,8.1)と引取りポジション(9,9.1)との間の移動路において往復動可能であり、前記引取りポジション(9,9.1)は糸引渡し箇所(14,14.1)に設けられていて、前記最大ポジション(8,8.1)よりも前記繰出しステーション(1,1.1,2,2.1)の近傍に位置している、装置において、
前記各グリッパ(5,5.1)は固有の最大ポジション(8,8.1)を有し、固有の糸引渡し箇所(14,14.1)に対応配設されており、前記グリッパ(5,5.1)はそれぞれ個々に、ほぼ互いに平行な移動路において可動であり、
前記グリッパ(5,5.1)は、その移動路において種々異なった個々の中間ポジション(10,10.1,11,11.1,12,12.1)をとることができ、かつ該中間ポジション(10,10.1,11,11.1,12,12.1)において前記糸又は粗糸の各始端部(20)を保持することができる、ことを特徴とする、繊維プリフォームを製造する装置。
【請求項2】
前記個々のグリッパ(5,5.1)はそれぞれ、前記引取りポジション(9,9.1)から前記最大ポジション(8,8.1)へのほぼ直線的な移動路において可動である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記個々のグリッパ(5,5.1)は、1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)の外輪郭に従って該グリッパ(5,5.1)の移動路において位置決めされ得る、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記グリッパ(5,5.1)は、10〜500mmのクランプ幅(b)を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
少なくとも5つのグリッパ(5,5.1)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記グリッパ(5,5.1)は、前記糸引渡し箇所(14,14.1)において前記糸又は粗糸と一緒に、結合材料(18)をも把持することができる、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記糸又は粗糸を1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)と前記グリッパとの間において切り離すことができる切断装置、及び/又は、前記糸又は粗糸を1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)と前記糸引渡し箇所(14,14.1)との間において切り離すことができる切断装置が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記糸又は粗糸を1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)内において又は1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)の周りで形状安定的に結合するのに適した固定装置が設けられており、該固定装置は、加熱装置及び/又はプレス装置として形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)は、装置内において回転することができ、この場合糸又は粗糸から成る立体賦形された第1の層(25,25.1)に、糸又は粗糸から成る別の層(26.1,27.1)を装着することができ、しかもこの場合30°、45°、60°又は90°回転させられた別の繊維方向で、装着することができる、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の装置を使用して、繊維強化プラスチック部材を製造する際の予備成形体である、繊維プリフォーム(28,28.1)を製造する方法であって、下記の方法ステップ、すなわち:
糸又は粗糸の張設(21)、
1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)を用いた前記糸又は粗糸の立体賦形(22)、
繊維プリフォーム(28,28.1)への立体賦形された前記糸又は粗糸の固定、
という方法ステップを有する、方法において、
複数の別個のグリッパ(5,5.1)が、それぞれ個々のグリッパ(5,5.1)に対応配設された複数の糸引渡し箇所(14,14.1)において、個々の又は複数の糸又は粗糸(20,20′)を把持し、次いで前記グリッパ(5,5.1)を、互いにほぼ平行な移動路において移動させ、これによって前記糸又は粗糸(21)を互いに並べて張設することを特徴とする、方法。
【請求項11】
複数のグリッパ(10,10.1,11,11.1,12,12.1)を、1つの張設過程において同時にかつ互いに無関係に独立させて移動させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)を、前記グリッパ(10,10.1,11,11.1,12,12.1)と前記糸引渡し箇所(14,14.1)との間に移動させ、前記糸又は粗糸(23)を1つの成形型を用いて立体賦形する、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記個々のグリッパ(10,10.1,11,11.1,12,12.1)を、該個々のグリッパ(10,10.1,11,11.1,12,12.1)が1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)の外輪郭に従って前記糸又は粗糸の始端部を保持するように、位置決めする、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
糸又は粗糸の複数の層を、1つの成形型に装着し、各層自体を最初に互いに並べて張設し、次いで立体賦形して固定し、その後で次の層を同様に、30°、45°、60°又は90°させた別の繊維方向で装着する、請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
結合材料(18)は、熱可塑性プラスチック又は接着剤から成る又は熱可塑性プラスチック又は接着剤を備えた糸又はフリースである、請求項6記載の装置。
【請求項16】
装置は、少なくとも1つの成形型(15,15′,15.1,16,16′)を有し、該成形型(15,15′,15.1,16,16′)は、前記糸引渡し箇所と、前記グリッパの少なくとも幾つかとの間に移動することができ、これによって前記糸又は粗糸は、前記成形型(15,15′,15.1,16,16′)を用いて立体賦形されるようになっている、請求項1又は2記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に繊維強化プラスチック部材を製造する際の予備成形体である、繊維プリフォームを製造する装置であって、該装置は、複数の糸又は粗糸を準備するための複数の繰出しステーションと、それぞれ1つ又は複数の糸又は粗糸の始端部を把持することができる複数のグリッパとを有し、該各グリッパは、最大ポジションと引取りポジションとの間の移動路において往復動可能であり、前記引取りポジションは糸引渡し箇所に設けられていて、前記最大ポジションよりも前記繰出しステーションの近傍に位置している、装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、特に前記装置を使用して、例えば繊維強化プラスチック部材を製造する際の予備成形体である、繊維プリフォームを製造する方法であって、下記の方法ステップ、すなわち:
糸又は粗糸の張設、
1つの成形型を用いた糸又は粗糸の立体賦形、
繊維プリフォームへの立体賦形された糸又は粗糸の固定、
という方法ステップを有する、方法に関する。
【0003】
繊維強化プラスチックは、特に剛性を生ぜしめるマトリックス材料と、このマトリックス材料に埋め込まれていて特に引張り強度を提供する繊維とから成っている。繊維強化プラスチックは、特に高負荷される部材であって、それにも拘わらず、なお可能な限り軽量であることが望まれている部材のために使用される。繊維は横方向においては強度を伝えることはないので、繊維は、その長手方向がそれぞれの負荷方向と可能な限り良好に合致するように、方向付けられねばならない。このことを達成するために、繊維はしばしば種々異なった方向に敷設されねばならない。繊維層が負荷に良好にかつ正確に適合していればいるほど、部材はより良好なものとなる。繊維強化プラスチックから成る部材のためには、多数の製造方法が存在する。大量の個数を製造するのに良好に使用可能な方法は、今日においてしかしながら、巻成又はプレートプレスもしくはストランドプレスによる、回転対称の部材又はプレート形状もしくはロッド形状の部材においてしか存在しない。
【0004】
これに対して複雑かつ高価な3D構造は、極めて高いコストをかけてしか製造することができない。それというのは、必要な繊維プリフォームの製造が困難で、時間がかかり、かつ高コストであるからである。高価な構造は、多くの場合無端繊維で製造される。多くの方法では、最初に繊維プリフォームが、所望の三次元の部材形状に相応して製造され、これらの繊維プリフォームは主に、しばしば複数の層で互いに上下に重ねて配置された繊維から成っており、これによって必要な繊維方向を得ることができる。次いで繊維プリフォームは、マトリックス材料を含浸又は塗布され、ときにはさらにプレスされ、そして最後に硬化される。繊維プリフォームの製造のため及び、部材の含浸及び/又は硬化のために、所望の部材形状に相応した成形型を使用することができ、この成形型上に又は成形型中に、繊維プリフォーム又は部材が載置され、かつ/又はプレスされる。
【0005】
繊維プリフォームが後続の加工のために十分な形状安定性を有するために、繊維プリフォームには、少量の接着剤又は結合剤が与えられ、そして繊維プリフォームは、三次元の立体賦形の後で、例えば乾燥によって又は加熱及び冷却によって、固定される。
【0006】
繊維プリフォームは多くの場合、予め製造されかつ予め結合された面状の半製品を、互いに積層及び固定するによって形成される。このような半製品は、例えばテープ又は織布、束又はフリースであり、これらの半製品では、多数の個々の糸又は粗糸が既に1つの面状形成物に織られ、縫い合わされ又は接着されている。糸というのは、いわゆる無端繊維を使用する場合、つまり繊維がボビン又は糸玉から繰り出される場合の表現である。撚られずに同時に1つのボビン又は糸玉から繰り出される多数の糸が、糸束又は粗糸と呼ばれる。この場合粗糸は、フィラメントとも呼ばれる数万のシングル糸から成っていてよい。
【0007】
必要な個別部材は、DE102008011658A1に基づいても公知であるように、多くの場合巻成体として提供される面状の半製品から、型紙の形式で裁断される。次いで必要な個別部材は、成形型の上に載置されて互いに結合又はプレスされる。接着又は縫合によってこのような半製品を製造するための例も、同様にDE102008011658A1に示されている。それにもかかわらず、しばしば、多くの手による作業が必要である。カセット内に予め蓄えられ、次いでコアに載置される半製品から、裁断によって一次元的な湾曲した単純なプリフォームを、機械式に製造する装置は、DE102008042574A1に基づいて公知である。複雑な形状は、なお機械式に製造することができない。
【0008】
複雑な部材用の繊維プリフォームを製造する別の可能性は、自動化された繊維載置法である。この場合細い糸束又は糸束から成るベルトが、1つの繊維載置ヘッドから成形型の上で往復案内され、かつこの際に互いに並べられてかつ互いに上下に成形型の上に載置され、プレスされて固定される。複雑な部材のためには、手間もしくはコストのかかる、ロボットによる繊維載置ヘッドの制御が必要である。2つ、3つ又はそれどころか4つの繊維載置ヘッドを平行に使用する場合でも、製造速度はなお比較的ゆっくりである。それというのは、これらのヘッドは、しばしば長い距離を進む必要があり、かつ細い繊維束によって順次作業が行われるからである。さらにヘッドは、クリールから多軸で運動させられる載置ヘッドへの、極めて長くかつ複雑化された糸ガイド(Garnnachfuehrung)を有する。粗糸のねじれを阻止するために、特殊なガイド爪を備えたホース内におけるこのような糸ガイドは、例えばUS2008/0202691A1に示されている。
【0009】
本発明の課題は、複雑化された高価値の構造を容易に自動化可能で、しかも形状及び繊維の方向付けに関してフレキシブルで、迅速かつ安価に製造することができる、繊維プリフォームを製造する装置及び方法を提供することである。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部記載の構成を有する装置によって解決される。別の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0011】
前記課題を解決するために本発明による装置では、各グリッパは固有の最大ポジションを有し、固有の糸引渡し箇所に対応配設されており、グリッパはそれぞれ個々に、ほぼ互いに平行な移動路において可動であ
り、装置は、少なくとも1つの成形型を有し、該成形型は、糸引渡し箇所と、グリッパの少なくとも幾つかとの間に移動することができ、特に、これによって糸又は粗糸は、成形型を用いて立体賦形されるようになっている。
【0012】
グリッパが本発明のように構成されていると、より簡単なもしくは単純な糸ガイドが生ぜしめられ、複数のグリッパを同時に作動させることができる。この2つのことによって、処理速度(Ablegerate)が大幅に高まる。これによって装置は、糸又は粗糸における2kg/分を越える処理速度又は3kg/分を越える処理速度に適したように構成されている。そして、速度を遅くする原因である、複雑化されたロボット制御される糸又は粗糸のガイドが不要である。これによってさらに、糸ガイド時における摩擦が著しく減じられる。良好な自動化の可能性が与えられていて、個々のグリッパに基づいて装置は、種々様々な部材の製造に対してフレキシブルに適合可能であり、かつ迅速な切換え制御が可能である。かつては通常であった面状の半製品を省略し、その代わりに糸又は粗糸から直接繊維プリフォームが立体賦形され、かつ製造されるので、材料コストが公知の方法に比べて大幅に低減する。さらに並列作業によって、短い製造時間を達成することができる。面状の半製品は、予備製造に基づいてかなり高価である。強く三次元的な部材の場合には、大面積の半製品を使用すると、さらに皺が発生するおそれがある。また小面積の半製品の場合には、個別部分の裁断及び結合のためのコストが高まる。
糸又は粗糸は、成形型を介して緊張もしくは張設され、かつこれにより成形型の形状を写し取る。好ましくは、別の成形型が設けられていて、該別の成形型は、第1の成形型に適合するように形成されていて、この第1の成形型と1つにまとめることができ、この際に糸又は粗糸は、両成形型の間においてさらに正確に所望の三次元構造に成形される。一方又は両方の成形型の運動方向は、好ましくは、グリッパの移動路に対してほぼ垂直方向である。一方又は両方の成形型は、プレス装置及び/又は加熱装置を備えていてよく、このように構成されていると、例えば結合材料を活性化させて、個々の糸又は粗糸を互いに結合させて繊維プリフォームを形成することができる。同様に成形型は、交換可能な又は簡単に分離可能な部分として、例えばリフティングテーブル又は降下装置のような運動装置に固定されていてよい。もちろん、複数部分から成る成形型が設けられていてもよい。
【0013】
複数の繰出しステーションは、例えばいわゆるボビンクリールとして構成されていてよい。この場合糸又は粗糸は、スプール又は糸玉(ボビン)から引き出すことができる。各糸引渡し箇所は、1つ又は複数の繰出しステーションから糸又は粗糸を得る。ボビン又は糸引渡し箇所又はその間に、糸張力を調整又は調節する装置及び/又は糸張力を測定する装置が設けられていてよい。
【0014】
糸引渡し箇所に又は糸引渡し箇所の前に、拡開装置が設けられていてよく、この拡開装置は、複数の糸が一緒に走行することを阻止し、面状のカバーのために役立つ。
【0015】
さらに好適な態様では、グリッパは、その移動路において種々異なった個々の中間ポジションをとることができ、かつ該中間ポジションにおいて糸又は粗糸の各始端部をしっかりと保持することができる。これによってグリッパは種々様々な成形型に対応することができる。そして各グリッパによって、成形型の相応な箇所のために必要な長さの糸だけが張設される。
【0016】
装置はまた、グリッパがそれぞれ、引取りポジションから最大ポジションへのほぼ直線的な移動路において可動であるように、構成されていてよく、このように構成されていると、グリッパ運動のための装置的な切換えがさらに簡単になる。
【0017】
別の有利な態様では、装置は、少なくとも1つの成形型を有し、該成形型は、糸引渡し箇所と、グリッパの少なくとも幾つかとの間に移動することができ、特に、これによって糸又は粗糸は、成形型を用いて立体賦形されるようになっている。このように構成されていると、糸又は粗糸は、成形型を介して緊張もしくは張設され、かつこれにより成形型の形状を写し取る。好ましくは、別の成形型が設けられていて、該別の成形型は、第1の成形型に適合するように形成されていて、この第1の成形型と1つにまとめることができ、この際に糸又は粗糸は、両成形型の間においてさらに正確に所望の三次元構造に成形される。一方又は両方の成形型の運動方向は、好ましくは、グリッパの移動路に対してほぼ垂直方向である。一方又は両方の成形型は、プレス装置及び/又は加熱装置を備えていてよく、このように構成されていると、例えば結合材料を活性化させて、個々の糸又は粗糸を互いに結合させて繊維プリフォームを形成することができる。同様に成形型は、交換可能な又は簡単に切離し可能な部分として、例えばリフティングテーブル又は降下装置のような移動装置に固定されていてよい。もちろん、複数部分から成る成形型が設けられていてもよい。
【0018】
好適な態様では、個々のグリッパは、1つの成形型の外輪郭に従って該グリッパの移動路において位置決めすることができる。すなわちグリッパは、繊維プリフォームが縁部を有する位置の可能な限り近傍にグリッパが位置するように、糸又は粗糸の始端部をしっかと保持し、この場合前記縁部において糸は成形後に成形型のところで切断される。つまりグリッパは、該グリッパが成形のためのポジションに移動させられた場合には、各糸又は粗糸が成形型から出たところで位置決めされ、また複数部分から成る成形型が存在する場合には、これらの成形型がまとめられた場合に、各糸又は粗糸が成形型から出たところで位置決めされる。これによって複雑な構造でも、高価な繊維材料における切り屑の発生が極めて僅かになり、このことは、特に大量生産時に重要である。
【0019】
所望の部材構造の良好な可撓性を可能にするために、かつフレキシブルな適合を可能にするために、本発明の好適な態様では、グリッパは、10〜500mm、好ましくは20〜200mmのクランプ幅を有する。特に、個々のグリッパは種々異なった幅を有することもできる。さらに別の好適な態様では、少なくとも5つのグリッパ、好ましくは少なくとも10のグリッパ、特に好ましくは少なくとも20のグリッパが設けられている。そして、すべてのグリッパは一緒に、少なくとも1m、好ましくは少なくとも2m、特に好ましくは少なくとも3mの総クランプ幅を有する。このように構成されていると、大きな繊維プリフォームを製造することができる。
【0020】
さらに別の態様では、グリッパは、糸引渡し箇所において糸又は粗糸と一緒に、結合材料をも、特に、少なくとも部分的に熱可塑性プラスチック又は接着剤から成る糸又はフリースをも、把持することができる。結合材料は、繊維材料の他に結合材料をも含むハイブリッド糸によって、又は糸又は粗糸の被覆又は噴霧によっても形成することができる。結合材料は、成形型を用いた糸又は粗糸の立体賦形後にも、例えば噴霧によってもたらすことができる。
【0021】
好適な態様では、糸又は粗糸を1つの成形型とグリッパとの間において切り離すことができる切断装置、及び/又は、糸又は粗糸を1つの成形型と糸引渡し箇所との間において切り離すことができる切断装置が設けられている。
【0022】
さらに別の態様では、固定装置が設けられており、該固定装置は、糸又は粗糸を1つの成形型内において又は1つの成形型の周りで形状安定的に、特に圧力上昇及び/又は温度上昇によって、結合するのに適している。設けられている結合材料は、このような固定装置によって活性化されて、固まる。加熱装置は好ましくは、成形型のうちの1つに結合された、又は該成形型に組み込まれた加熱装置及び/又はプレス装置である。追加的にまた、糸引渡し箇所の近傍において、糸又は粗糸の引出し中に既に、ある程度の予備活性化が、特に加熱によって行われるようになっていてよい。
【0023】
別の好適な態様では、1つの成形型は、装置内において回転することができ、この場合糸又は粗糸から成る立体賦形された第1の層、好ましくはまた固定された第1の層に、糸又は粗糸から成る別の層を装着することができ、しかもこの場合好ましくは約30°、45°、60°又は90°回転させられた別の繊維方向で、装着することができる。
【0024】
特に大量生産のための特に好適な態様では、1つの成形型を、糸又は粗糸から成る立体賦形された第1の層、好ましくはまた固定された第1の層と共に、請求項1から12までのいずれか1項記載の別の装置に引き渡すことができ、該別の装置には、糸又は粗糸から成る別の層を装着することができ、しかもこの場合好ましくは約30°、45°、60°又は90°回転させられた別の繊維方向で、装着することができる。2つ又はそれ以上の本発明による装置を相前後して配列することによって、1つの成形型に種々異なった繊維層を装着するための製造ラインを形成することができる。そのために、成形型は、それぞれの装置における運動方向から簡単に切離し可能であると、特に好適である。1つの装置から次の装置への引渡し方向は、好ましくはグリッパの移動路に対してほぼ垂直である。好ましくは、成形型は、引き渡された装置において又は後続の装置において又はその間において回転させられ、これによって、別の層のための所望の繊維方向が、投影図で見て、後続の装置のグリッパの移動路とほぼ一致するようになっている。
【0025】
前記課題は、請求項14記載の特徴を備えた方法によって、特に請求項1から13までのいずれか1項記載の装置に関連した方法によって解決される。方法に対する別の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0026】
本発明による方法は、複数の別個のグリッパが、それぞれ個々のグリッパに対応配設された複数の糸引渡し箇所において、個々の又は複数の糸又は粗糸を把持し、次いでグリッパを、互いにほぼ平行な移動路において移動させ、これによって糸又は粗糸を互いに並べて張設することを特徴とする。
【0027】
方法の好適な態様では、複数のグリッパを、1つの張設過程において同時にかつ互いに無関係に独立させて移動させるようにした。このようにすると、糸又は粗糸は迅速に互いに平行に張設され、しかも各グリッパを互いに無関係に独立させて作動させることができる。
【0028】
好適な態様では、少なくとも1つの成形型を、グリッパと糸引渡し箇所との間に移動させ、これにより糸又は粗糸を1つの成形型を用いて立体賦形する。移動は、単数又は複数の成形型によって行うことができ、かつ/又はクリール及び使用されるすべてのグリッパを1つの成形型に対して移動させることができる。
【0029】
形状を可能な限り良好に写し取ることができ、しかも高価な繊維材料の切り屑がほとんど発生しないようにするために、別の有利な態様では、個々のグリッパを、該個々のグリッパが1つの成形型の外輪郭に従って糸又は粗糸の始端部をしっかりと保持するように、位置決めする。
【0030】
本発明による方法の好適な態様では、すべてのグリッパは、1つの層の製造時に1回だけ引取りポジションから所望の中間ポジションに移動させられ、そこで、層が固定されかつ糸又は粗糸が切断されるまで、留められる。面倒もしくは手間のかかる往復動は不要である。
【0031】
有利な態様では、糸又は粗糸を、該糸又は粗糸が成形型において立体賦形されている間に、特に高められた圧力又は高められた温度によって固定する。設けられている結合材料は、これによって活性化され、糸又は粗糸を互いに結合し、その結果繊維プリフォームはさらなる処理のために十分な安定性を得る。また既に糸又は粗糸の繰出し中に、結合材料を糸引渡し箇所において又は糸引渡し箇所の近傍において、特に加熱によって予備活性することも可能である。
【0032】
所望の形状に相応して適正に構成されかつ一緒に運転される複数の成形型によって、複雑な三次元構造の場合でも、より正確な形状付与を達成することができる。
【0033】
特に、極めて強く三次元的な構造を有する部材では、糸又は粗糸の張力を、立体賦形中に調節又は調整することが望ましい。このようにすると、糸の裂断を回避することができる。
【0034】
立体賦形後でかつ固定後又は固定中に、糸又は粗糸は成形型とグリッパとの間、及び/又は成形型と糸引渡し箇所との間において切断される。このようにすると、グリッパには、繊維材料の切り屑が極めて僅かしか残らない。そして成形型と糸引渡し箇所との間における繊維材料は、巻戻しによって再び巻き上げて、さらに使用することができる。
【0035】
特に、高価な部材のために好適な態様では、糸又は粗糸の複数の層を、1つの成形型に装着し、各層自体を最初に互いに並べて張設し、次いで立体賦形して固定し、その後で次の層を同様に、特に例えば約30°、45°、60°又は90°させた別の繊維方向で装着する。
【0036】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1a〜
図7bには本発明による装置の好適な実施形態が、種々異なった方法ステップにおいて示されており、
図8a〜
図8cには本発明による別の好適な実施形態が、種々異なった方法ステップにおいて示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1a】グリッパによる糸又は粗糸の取出し中における状態を示す側面図である。
【
図1b】グリッパによる糸又は粗糸の取出し中における状態を示す平面図である。
【
図2a】糸又は粗糸の張設後における状態を示す側面図である。
【
図2b】糸又は粗糸の張設後における状態を示す平面図である。
【
図3a】第1の層の第1の立体賦形ステップ後における状態を示す側面図である。
【
図3b】第1の層の第1の立体賦形ステップ後における状態を示す平面図である。
【
図4a】第1の層の第2の立体賦形ステップ後における状態を示す側面図である。
【
図4b】第1の層の第2の立体賦形ステップ後における状態を示す平面図である。
【
図5a】糸又は粗糸の切断後における状態を示す側面図である。
【
図5b】糸又は粗糸の切断後における状態を示す平面図である。
【
図6a】成形型の回転後でかつグリッパによる第2の層のための糸又は粗糸の取出し中における状態を示す側面図である。
【
図6b】成形型の回転後でかつグリッパによる第2の層のための糸又は粗糸の取出し中における状態を示す平面図である。
【
図7a】第2の層の第2の立体賦形ステップ後における状態を示す側面図である。
【
図7b】第2の層の第2の立体賦形ステップ後における状態を示す平面図である。
【
図8a】第1の層の装着後における状態を示す平面図である。
【
図8b】別の層の装着後における状態を示す平面図である。
【
図8c】さらに別の層の装着後における状態を示す平面図である。
【0038】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0039】
装置及び方法の特に好適な実施形態では、装置は下記の方法ステップのために適している、もしくは装置によって下記の方法ステップは相前後して又は部分的に互いに平行に実施される:
・糸又は粗糸及び場合によっては結合材料の準備
・必要な糸又は粗糸、及び場合によっては結合材料の把持
・グリッパの相応な位置決めによる、必要な糸又は粗糸の張設
・第1の成形型による第1の立体賦形
・第2の成形型による第2の立体賦形
・糸又は粗糸から成る層の固定
・成形型の両側における糸又は粗糸の切断
・送出された必要でない糸又は粗糸の巻き戻し
・成形型の開放
・装着された層を備えた1つの成形型の回転及び/又は移動
繊維プリフォームが完成するまでの、同じ装置における又は単数又は複数の別の本発明による装置における、別の層の装着のための工程の繰り返し。
【0040】
糸又は粗糸用の繊維材料としては、例えば炭素(カーボン)、ガラス又はアラミドから成る繊維、又は別の繊維を使用することができる。繊維強化プラスチック用のマトリックス材料としては、例えば熱可塑性又は熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂、他のプラスチック(ポリマ)又は他の樹脂が、使用の対象になる。結合材料としては、熱可塑性プラスチック又は接着剤を使用することができる。結合材料は、既にハイブリッド糸又はハイブリッド粗糸として存在することができ、すなわち個々の繊維又は糸は、結合材料から成っており、又は結合材料は、糸又は粗糸と一緒にグリッパによって張設されるか、又は立体賦形された糸又は粗糸に塗布又は噴霧される。
【0041】
図1a及び
図1bには、装置の基本的な構造が示されている。糸又は粗糸の準備は、多数の繰出しステーションによって行われ、これらの繰出しステーションにおいては、繊維材料が、スプール又は糸玉(いわゆるボビン)の形で準備され、複数の列1,2において互いに並んで、相前後して、又は互いに上下に配置されている。ボビンはまた、
図1aに示すように、上側列及び下側列を形成してもよい。糸又は粗糸の始端部20は、使用される繰出しステーション3,4のためのそれぞれ使用される領域においてだけ略示されている。他のすべての始端部も、相応な糸引渡し箇所14に挿通され、その結果始端部を、所属のグリッパによって引取りポジション9において把持することができる。これは例えば一緒にボビンクリール(Spulengatter)とも呼ばれる。
【0042】
他方の側においてグリッパ5は、その最大ポジション8において示されており、これらの最大ポジション8は、この場合出発ポジションにも相当する。1つのグリッパのクランプ幅はbで示され、すべてのグリッパの総クランプ幅はBで示されている。図面には等しい幅のグリッパだけが示されているが、もちろん、異なった幅を有するグリッパも可能である。グリッパはまた、必ずしも、その最大ポジションと引取りポジションとを同一線上に有する必要はない。さらにリフティングテーブル17上における第1の成形型15が示され、かつ、フードとして形成されている第2の成形型16が、出発ポジションにおいて、つまりグリッパの移動路(Pfad)の外側に示されている。第2の成形型は、平面図では示されていない。また、第2の成形型のための相応な移動装置又は降下装置も特別には示されていない。さらに、結合材料タンク19が設けられており、この結合材料タンク19は、例えば繰出しステーションの列の間に配置されていてよい。
【0043】
グリッパ6は、引取りポジションにあり、装置における該グリッパの配置に相当する糸又は粗糸を、グリッパ6が糸又は粗糸の始端部を把持することによって、引き取る。グリッパは、例えばロッド又はピストンであるガイド装置7によって移動可能である。これらのグリッパは個々に、しかしながら単に直線的にかつ平行な移動路において互いに並んで、引取りポジションと最大ポジションとの間において運動することができる。これによって単純な自動化及び迅速かつ平行な運動が可能である。図示のように、複数の繰出しステーションを1つのグループにまとめること、及び1つのグリッパに対応配設させることが可能である。1つのグリッパは複数の糸又は粗糸を一緒に把持することができる。いずれにせよ、グリッパの数と少なくとも同じ数の繰出しステーションが設けられていることが望ましい。
【0044】
図2a,
図2bには、張設された糸又は粗糸21が示されており、これらの糸又は粗糸21をグリッパ10はその中間ポジションへの移動によって引き出している。この過程は、アクティブに駆動される繰出し動作によって促進することができる。中間ポジションは、成形型の外輪郭に近くに、もしくは、成形型がその立体賦形ポジションにもたらされた場合における、外輪郭の後における位置の近くにある。糸又は粗糸21と一緒に、例えば結合糸又は結合フリースである結合材料18もまた、グリッパによって一緒に張設することができる。図示のように繰出しステーションの上側列と下側列とが設けられていてよいので、結合材料は、糸又は粗糸の上側の群と下側の群との間において張設される。引出し時に結合材料は糸引渡し箇所14の領域において、特に加熱装置によって、予め活性化することができるので、糸又は粗糸は立体賦形の開始時と同時に既に幾分互いに固定される。さらに糸引渡し箇所14の領域には、拡開装置が設けられており、この拡開装置は、単列又は複数列の爪(Zinke)を備えた一種のコームとして形成することができる。このようにして、糸又は粗糸が面を覆うように互いに並んで位置し、かつ後の立体賦形時にも側方に滑り出さないことが、保証される。拡開装置は糸道に沿って又はグリッパ移動路に沿って移動可能であってよい。さらに、糸張力測定装置13のための可能性も図示されている。
【0045】
立体賦形というのは、成形型を用いて糸又は粗糸を変形すること、もしくは所定の形にすることである。立体賦形は単数又は複数の段階において行うことができ、この場合単数又は複数の成形型が同時に又は相前後して、張設された糸又は粗糸から成る層へと移動することができる。立体賦形中に、糸張力を調整すると、特に一定に保つと有利である。すなわち糸又は粗糸は、立体賦形のために成形型の相応な箇所においてどの程度必要であるかに応じて、送出される。このことを達成するために、ブレーキ及びクラッチ装置を設けることができる。各繰出しステーションに又は繰出しステーションの各グループに、相応な制御装置が対応配設されていると、好適である。このように構成されていると、糸又は粗糸が過剰な負荷(張力)を受けること又は極めてルーズに配設されることが、阻止される。糸張力は、糸引渡し箇所の領域及び/又は繰出しステーションと糸引渡し箇所との間における適宜な測定装置によっても、測定することができる。糸張力の値は好ましくは1〜50N/m
2である。
【0046】
図3a及び
図3bには、第1の立体賦形後における状態が示されている。リフティングテーブル17によって第1の成形型15′は立体賦形ポジションに移動させられている。これによって糸又は粗糸22は変位させられ、成形型15′によって立体賦形される。グリッパ10は、成形型15′の外輪郭の近傍において糸の始端部を固定する。このステップの後で、択一的に又は追加的に結合材料を、糸又は粗糸に塗布又は噴霧することができる。
【0047】
次のステップにおいて糸又は粗糸は、立体賦形ポジションに移動させられた第2の成形型16′を用いて、さらに立体賦形もしくは変形される(
図4a及び
図4b)。間に糸又は粗糸の層を挟み込んでいる両方の成形型の共働によって、正確な形状付与が可能である。両方の成形型が押し合わされ、一方の成形型、好ましくは第2の成形型が、又は両方の成形型が加熱されていてよく、その結果結合材料は活性化され、糸又は粗糸は形状安定的に固定されて1つの層を形成する。固定と同時に又は固定の後で、糸又は粗糸は成形型の両側において、つまりグリッパと成形型との間及び糸引渡し箇所と成形型との間において、切断される。1実施形態では、切断装置は第1又は第2の成形型に結合されている。この場合切断が少なくとも、糸引渡し箇所の側において成形型の近傍において行われると、好適である。これによって高価な繊維材料における切り屑の発生が僅かになり、繊維プリフォームの僅かな後処理しか必要でなくなる。
【0048】
切断された糸又は粗糸23は、巻戻し装置を介して再び引き戻されて巻き上げられるか又は、相応な糸ガイドを介して中間貯蔵される。この巻戻し動作は、再び糸又は粗糸の始端部が糸引渡し箇所14の領域に位置し、かつ該始端部をグリッパによって引き取ることができるように行われ、しかもこの際に、過度に多くの切り屑が発生することはない。始端部を検出するためには、センサを使用することができる。
【0049】
図5a及び
図5bにおいては糸又は粗糸は、既に巻き戻されているか又は糸引渡し箇所において切断されており、従って再び始端部は糸引渡し箇所に位置している。グリッパにおいても、繊維材料の切り屑24は極めて僅かしか存在しない。それというのは、グリッパはそれぞれ成形型の外輪郭の近傍にかつ該外輪郭に沿って位置決めされ、かつ使用されたもしくは必要な量の糸だけを張設したからである。成形型15,16は再びその出発ポジションにもたらされる。第1の成形型には、第1の成形された層25が残っている。
【0050】
図6a及び
図6bには、第1及び第2の成形型15,16が、回転させられた位置で示されている。この場合成形型15,16は90°回転させられている。しかしながら他の回転角、例えば約30°、45°、60°の回転角も可能であり、又は旋回も可能である。回転角は好ましくは10〜170°である。このことは、糸又は粗糸の別の層をどのようにかつどのような繊維配向で装着したいかによって決定される。必要なグリッパ6′は、使用される糸又は粗糸の始端部20を把持するために、引取りポジションにある。
【0051】
次いで、別の層の糸又は粗糸が、グリッパの中間ポジションに到るまで張設され、かつ立体賦形され、この場合第1及び第2の成形型15′,16′は立体賦形ポジションに移動させられる。
【0052】
図7a及び
図7bには、装置が、糸又は粗糸が切断された後の状態で示されている。使用されたグリッパ11は、中間ポジションに位置している。方形ではない成形型の場合又は他の回転角の場合、グリッパ11は、異なった中間ポジションに位置していてもよい。糸又は粗糸及び場合によっては結合材料から成る別の層は、同様に加熱及び/又はプレスによって、形状安定的に固定され、かつ第1の層に結合されることができる。そして両方の層は一緒に繊維プリフォーム28を形成する。
【0053】
図8aには、例えばエンジンフード用の繊維プリフォームを製造する場合に使用することができる別の実施形態が示されている。使用されるグリッパ10.1は中間ポジションに位置し、使用されないグリッパ5.1は最大ポジション8.1に位置している。第1の成形型15.1において、糸又は粗糸の第1の層25.1が立体賦形されかつ固定されている。第2の成形型は図示されていない。糸又は粗糸の貯蔵は、繰出しステーション1.1,2.1において行われる。さらに結合材料タンク19.1及び糸引渡し箇所14.1が設けられている。
【0054】
単数又は複数の別の層の形成は、同一の装置において行うことも、又は、第1の成形型が第1の層と一緒に引き渡される単数又は複数の別の本発明による装置において行うこともできる。
図8bでは別の層26.1が、回転させられた成形型に立体賦形されている。図面を見易くするために、一対の糸又は粗糸しか示されていない。使用されたグリッパ11.1は、成形型の外輪郭に沿って位置し、可能な限り正確に成形型に追従する。さらなる正確な適合のために、細いグリッパ又は種々異なった幅のグリッパを使用することができる。
【0055】
図8cには、さらに別の層が装着された状態が示されている。使用されたグリッパ12.1は、再び外輪郭に沿って位置している。固定後に、これらの層は一緒になって繊維プリフォーム28.1を形成する。
【符号の説明】
【0056】
1,1.1,2,2.1 繰出しステーションの列
3,3′,4,4′ 使用中の繰出しステーション
5,5.1 グリッパの列
6,6′ 引取りポジションにおけるグリッパ
7,7.1,7′,7.1′ グリッパ用のガイド装置
8,8.1 最大ポジションの位置
9,9.1 引取りポジションの位置
10,10.1,11,11.1,12,12.1 中間ポジションにおけるグリッパ
13,13′ 糸張力用の測定装置
14,14.1 糸引渡し箇所(場合によっては拡開装置及び/又は結合剤予備活性のための装置をも備える)
15 出発ポジションにおける第1の成形型
15′,15.1 立体賦形ポジションにおける第1の成形型
16 出発ポジションにおける第2の成形型
16′ 立体賦形ポジションにおける第2の成形型
17 リフティングテーブル
18 結合材料
19,19.1 結合材料タンク
20,20′糸又は粗糸の始端部
21 張設された糸又は粗糸
22 立体賦形された糸又は粗糸
23,23′ 切断された糸又は粗糸
24 切り屑
25 糸又は粗糸の第1の層
26.1,27.1 糸又は粗糸の別の層
28,28.1 繊維プリフォーム
b 1つのグリッパのクランプ幅
B すべてのグリップの総クランプ幅