(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109154
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】個別のインジェクターシールを有するマニホールドを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20170327BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20170327BHJP
【FI】
H01M8/02 E
H01M8/02 R
H01M8/10
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-509669(P2014-509669)
(86)(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公表番号】特表2014-517990(P2014-517990A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】EP2012058017
(87)【国際公開番号】WO2012152624
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】1153956
(32)【優先日】2011年5月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510163846
【氏名又は名称】コミシリア ア レネルジ アトミック エ オ エナジーズ オルタネティヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ポワロ−クルヴジエ、ジャン−フィリップ
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−201353(JP,A)
【文献】
特開平07−153479(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0209800(US,A1)
【文献】
特開2005−285744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の膜(M)と、
電解質の膜(M)を挟んで、その両側に、1つずつ、電解質の膜(M)との間に空隙を介して配置される合計2つのバイポーラプレート(BP、BP’)と、
電解質の膜(M)と2つのバイポーラプレート(BP、BP’)との間に、それぞれ配置され、電解質の膜(M)を2つのバイポーラプレート(BP、BP’)から、それぞれ分離し、かつ、電解質の膜(M)と2つのバイポーラプレート(BP、BP’)との間を、それぞれ気密にするジョイント(10a、10’a)と、
電解質の膜(M)の一方のバイポーラプレート(BP)との間に形成されるアノードと、
電解質の膜(M)の他方のバイポーラプレート(BP’)との間に形成されるカソードと
を備えるスタック型セルを含む燃料電池であって、
電解質の膜(M)と、2つのバイポーラプレート(BP、BP’)を貫通する第1の反応性ガスの供給マニホールドと、
電解質の膜(M)と、2つのバイポーラプレート(BP、BP’)を貫通する第2の反応性ガス供給マニホールドと
を備え、
電解質の膜(M)と、2つのバイポーラプレート(BP、BP’)が、
第1の反応性ガスの供給マニホールドに沿って整列して設けられる第1の反応性ガスの流通用の開口と、
第2の反応性ガスの供給マニホールドに沿って整列して設けられる第2の反応性ガスの流通用の開口を有し、
電解質の膜(M)の第1の反応性ガスの流通用の開口のうち、アノード側の間隙には、第1の反応性ガスの供給マニホールドと、その間隙との流体の流通を気密に隔てる密閉ジョイント(JA)が設けられ、
電解質の膜(M)の第1の反応性ガスの流通用の開口のうち、カソード側の間隙には、第1の反応性ガスの供給マニホールドと、その間隙との間で流体が流通しうる流路を備えたインジェクタージョイント(JB)が設けられ、
電解質の膜(M)の第2の反応性ガスの流通用の開口のうち、アノード側の間隙には、第2の反応性ガスの供給マニホールドと、その間隙との間で流体が流通しうる流路を備えたインジェクタージョイント(J’A)が設けられ、
電解質の膜(M)の第2の反応性ガスの流通用の開口のうち、カソード側の間隙には、第2の反応性ガスの供給マニホールドと、その間隙との流体の流通を気密に隔てる密閉ジョイント(J’B)が設けられ、
密閉ジョイント(JA、J’B)が、リング状の金属シート(TA)と、相補的な部品(TB)とを重ね合わせて構成され、
金属シート(TA)が、
平板のリング状の部材であって、密閉ジョイント(JA、)の部品の外周縁領域を構成する外側の折り目(R1A)と、
外側の折り目(R1A)と同一平面上に位置し、外側の折り目(R1A)の内側に、外側の折り目(R1A)との間に間隙を介して配置される、平板のリング状の内側の折り目(R2A)と、
外側の折り目(R1A)と、内側の折り目(R2A)との間であって、外側の折り目(R1A)と異なる平行な平面に配置される、平板のリング状の底(FA)と、
外側の折り目(R1A)の内周縁から、底(FA)の外周縁に向けて斜めに立ち上がる、円錐台の曲面状の外側のアーム(B1A)と、
内側の折り目(R2A)の外周縁から、底(FA)の内周縁に向けて斜めに立ち上がる、円錐台の曲面状の内側アーム(B2A)と
からなり、
相補的な部品(TB)が、底(FB)を有する、金属シート(TA)と同一の構成であり、
密閉ジョイント(JA、J’B)は、金属シート(TA)と、相補的な部品(TB)とを、底(FA、FB)が外方に膨出するよう向かい合わせにして接合して構成され、
密閉ジョイント(JA、J’B)は、その厚さが、電解質の膜(M)と、バイポーラプレート(BP、BP’)との距離に対応し、底(FA、FB)が、電解質の膜(M)およびバイポーラプレート(BP、BP’)に当接して気密を維持するよう設けられ、
インジェクタージョイント(J’A、JB)が、リング状の金属シートと、相補的な部品とを重ね合わせて構成され、
インジェクタージョイント(J’A、JB)を構成する金属シートが、密閉ジョイント(JA、J’B)の金属シート(TA)と同一の構成であり、
インジェクタージョイント(J’A、JB)を構成する相補的な部品が、前記金属シートの底を含む膨出部分の少なくとも一部に、リング状の相補的な部品の中心側と、外周側との間で、流体が流通しうる流路(PB)を含み、
インジェクタージョイント(J’A、JB)は、インジェクタージョイント(J’A、JB)用の金属シートと、インジェクタージョイント(J’A、JB)用の相補的な部品とを、その金属シートの底と、その相補的部品の流路(PB)によって隔てられる底が外方に膨出するよう接合して構成され、
インジェクタージョイント(J’A、JB)は、その厚さが、電解質の膜(M)と、バイポーラプレート(BP、BP’)との距離に対応し、その底が、電解質の膜(M)およびバイポーラプレート(BP、BP’)に当接するよう設けられる
ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
インジェクタージョイント(J’A、JB)の相補的な部品が、金属製のリング状シート製であり、
2枚の金属製のリング状シートは、互いに向かい合う平面部が接合される
ことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
密閉ジョイント(JA、J’B)の相補的な部品が、
密閉ジョイント(JA、J’B)を構成した際の、相補的な部品の外面形状を有するポリマー製であり、密閉ジョイント(JA、J’B)の金属シートに密着して密閉ジョイント(JA、J’B)を構成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
インジェクタージョイント(J’A、JB)の相補的な部品が、
インジェクタージョイント(J’A、JB)を構成した際の、相補的な部品の外面形状を有するポリマー製であり、インジェクタージョイント(J’A、JB)の金属シートに密着してインジェクタージョイント(J’A、JB)を構成する
ことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
バイポーラプレートの各開口に対して、前記アノード側のバイポーラプレートと膜との間にインジェクタージョイント、および前記カソード側の前記バイポーラプレートと別の膜との間に完全な密閉ジョイントを有する水素供給マニホールドを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
バイポーラプレートの各開口に対して、前記カソード側のバイポーラプレートと膜との間にインジェクタージョイント、および前記アノード側の前記バイポーラプレートと別の膜との間に完全な密閉ジョイントを有する酸素または空気の供給マニホールドを含むことを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
複数の電解質の膜(M)の間に、1つずつ、バイポーラプレート(BP+、BP−)が配置され、
反応性ガス供給マニホールドが、N個(Nは、>1の整数である)の水素供給マニホールドであり、
インジェクタージョイント(J’A)が、
いずれかの水素供給マニホールドに沿った電解質の膜(M)の開口のアノード側に配置され、
密閉ジョイント(J’B)が、
上記のインジェクタージョイント(J’A)が配置された電解質の膜(M)の開口のカソード側と、
上記の水素供給マニホールドに沿った複数の電解質の膜(M)の開口のうち、上記のインジェクタージョイント(J’A)が配置されていない他の電解質の膜(M)の少なくとも1つの、アノード側およびカソード側の両側と
に配置され、
複数の電解質の膜(M)のうち、その開口の両側に密閉ジョイント(J’B)が配置された開口を貫通する水素供給マニホールドとは異なる、他の水素供給マニホールドに沿った開口のアノード側に、インジェクタージョイント(J’A)が、さらに、そのインジェクタージョイント(J’A)の電解質の膜(M)を挟んだ反対側に、密閉ジョイント(J’B)が、配置され、
複数の電解質の膜(M)のアノード側の間隙に対し、異なる水素供給マニホールドから水素ガスを選択的に供給しうることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項8】
排気マニホールドの開口が、バイポーラプレートの各側で、それぞれ、ノッチを備えるインジェクタージョイント、およびノッチを備えない密閉ジョイントを含む、ことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関し、特に水素燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、反応により消費されるとともに徐々に導入される反応生成物間で電気化学的な反応が中で起こる基本セルのスタックである。燃料は、水素燃料電池の場合水素であるがアノードと接触させられ、酸化体は、水素燃料電池に対しては酸素または空気であるがカソードと接触させられる。反応の成分のすべてではないがいくらかに対して透過性がある、電解質、恐らくは固体の膜によってアノードとカソードは分離される。反応は2つの半反応(酸化と還元)へ細分され、それは、一方ではアノード/電解質の界面において起こり、他方ではカソード/電解質の界面において起こる。実際上、この固体電解質は、水素イオンH
+に対して透過性があるが、分子の二水素のH
2または電子には透過性がない膜である。アノードでの還元反応は、H
+イオンを生成する水素の酸化であり、H
+イオンは膜を通過し、電子はアノードにより収集される。カソードではこれらのイオンは酸素の還元に関与し、電子を要求し、水を生成し、熱も発せられる。
【0003】
セルのスタックは反応の場所にすぎず、したがって、反応物質をそこへ供給しなければならず、かつ、生成物と非反応性化学種は、生成した熱とちょうど同様に排出しなければならない。最後に、セルは互いに直列に電気的に接続され、1個のセルのアノードは隣接セルのカソードに接続される。セルのスタックの末端においては、一つの側で電子を排出するためにアノードは負端子に接続され、かつ、もう一つの側でカソードは正端子に接続される。外部回路はこれらの端子に接続される。電気化学的な反応が進行するにつれて、電池からこのように電力を供給される外部回路を経由して、アノードからカソードまで電子が流れる。
【0004】
スタック型セルを含む従来の燃料電池は、バイポーラプレートと呼ばれるものの重ね合わせを含み、そのバイポーラプレートの間に、電解質の膜およびその膜の各側に電極を同時に含むアセンブリが配置されている。バイポーラプレートは、特定の構成を有するシーリングジョイントと任意選択的に組み合わせられ、電流を集めて、かつ反応性ガス(水素および空気、または水素および酸素)を膜に分配する役目をし、その膜の適切な側に、すなわち、アノード側に水素、カソード側に空気または酸素を分配する。それらは、アノードに面する分配チャネルと、カソードに面する他の分配チャネルを含む。それらの周囲上で、プレートは、反応性ガスを送達する役目をする開口、および、反応の生成物を排出する役目をする開口で貫通されている。反応性ガスを送達するための開口は、互いに密接な接触をするプレートの重ね合わせによって、反応性ガスを供給するためのマニホールドを形成する。排出開口は、同一の方法で、反応の生成物を排出するためのマニホールドを形成する。シーリングジョイントは、流体がこれらのマニホールドに閉じ込められ続けるように提供されるが、バイポーラプレート、および/または、シーリングジョイントの設計は、マニホールド内に、セルに流体を配達することが求められる位置において、所望の側で反対側に横断することなく流体がセルに入り込むように流路が形成されるようなものにされる。これらの流路は、プレートに形成された分配チャネル経由で反応性ガスをセルへ向け、分配チャネルはガスを電解質の膜の上にできるだけ一様に分配する。
【0005】
同じことは反応生成物に当てはまり、プレートとジョイントは、反応生成物が集められ、アノード側、および/または、カソード側で排出マニホールドに排出されることを可能にするために設計されている。
【0006】
したがって従来のセルに水素を供給するための供給マニホールドは、水素がアノード側のセルにおいて広がることができるが、カソード側で絶対に広がらないように設計されたプレートとジョイントのスタックから成る。それを逆にしたものが空気または酸素を供給する供給マニホールドに対して当てはまる。
【0007】
スタックの末端においては、プレートに形成されたこれらの開口は、各反応生成物のためのそれぞれの供給ダクト、および反応の生成物のための排出ダクトにそれぞれ接続される。
【0008】
セルのスタックは、すべてのバイポーラプレートおよび膜を通って通過するロッドによりきつく締め付けられる。加えられた圧力は、互いにセルを密閉し、セルのアノード側とカソード側との間にシールを生成する。
【0009】
流体を分配するチャネル、およびプレートの重ね合わせにおいて供給および排気のマニホールドを形成する開口の両方を画定するためにバイポーラプレートを複雑なやり方で切り取る構造が、従来技術において提案されてきた。プレート間に加えられた圧力は、プレートが互いに対してしっかりと締め付けられる場合、マニホールドとセルとの間の連通が防止されなければならない位置(例えば、水素供給マニホールドとセルのカソード側との間で連通はあってはならず、かつ、空気供給マニホールドおよびアノード側との間で連通連通はあってはならない。)に所望のシールを生成する。連通が可能でなければならない位置においてバイポーラプレートにノッチが提供される。
【0010】
仏国特許第2 887 689号明細書はそのようなバイポーラプレートを記述し、これらは型押しされた金属、またはグラファイト充填のポリマーなどの別の材料から作成されてもよい。しかし、この場合プレートが単一のシートの形態をとることは可能ではない。
【0011】
外周シールを提供する適切に切り取られたプレートが、シールが維持されなければならないところはどこでもシールを維持するが、反応性ガスが通過する必要のある位置において反応性ガスがマニホールドからセルの中へ通過することを可能にする構造も提案されてきた。ジョイントは、電解質の膜の側ではその膜を支持するために平面であり、それはバイポーラプレート側ではより精巧な形状を有する。マニホールドから膜の活性面へ走る分配チャネルは、シール内に作製されてもよい。
【0012】
米国特許第5 482 792号明細書はそのような構造を記述する。その際、外周シールとバイポーラプレートとの間で締め付けられた発泡板を介して一様なガス分布が得られ得る。スタックの部品は作製するのが複雑であり、それらのコストは高く、また、それらは厚さが厚く、それによって電池の小型性に悪影響を及ぼす。最後に、それは柔軟すぎてもならないし(チャネルの作製を可能にするためには)、堅すぎてもならない(密封機能のためには)ので、複雑なシールを形成するプレートは作製するのが困難である。
【0013】
上記の2つの実例で、セルのアノード側およびカソード側に、異なるバイポーラ、およびジョイントのプレートが必要であり、それによって製造原価が増加する。
【0014】
米国特許第5 532 073号明細書はインジェクションワッシャーを記述するが、インジェクションワッシャーの構成は、電解質の膜に対して、その膜を損傷することなくインジェクションワッシャーを当てることはできないであろうというようなものである。
【0015】
米国特許出願公開第2010/0209800号明細書は、プレートに溶接された平らなジョイントを記述するが、このジョイントは、電解質の膜に対して、その膜を損傷することなく当てることはできない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、スタック型セルを含む燃料電池が提供され、電池はバイポーラプレートと呼ばれるプレートの重ね合わせを含み、プレートの間に、電解質の膜、および電極の両方を膜の各側に含むアセンブリが配置され、プレートは、それらの周囲に、反応性ガスを送達する役目をする開口と、反応生成物を排出する役目をする開口とを提供され、隣接プレートの開口は、セルのスタックをちょうど通って通過する、供給または排気のマニホールドを形成するために整列している。供給マニホールドの開口は、互いから分離され、かつバイポーラプレートと離れている、個別のリングジョイントで取り囲まれており、ある特定のジョイントは、開口とセルとの間に密閉ジョイントを形成し、かつ、別のジョイントは、反応性ガスがセルに送達されるか、またはセルから排出されるためのインジェクターを形成する。リングジョイントは、少なくとも1つの非平面の金属シートおよび相補的な部品から形成され、金属シートは、開口の平面に垂直な平面においてU字型の断面を有し、このUのアームはフレアーを付けられ、かつ、底と平行に折り曲げられた端部を有し、底は、開口のまわりのバイポーラプレートに対して、または電解質の膜に対して当接する。ジョイントの厚さはバイポーラプレートと膜との間の距離に対応する。流体が通過することを可能にするために、インジェクターを形成するジョイントはジョイントの厚さにおいて局所的な流路を提供され、また、密閉を維持するために、密閉ジョイントを形成するジョイントはそのような流路がない。相補的な部品は、金属またはポリマーから作られてもよく、かつ、流路はこの相補的な部品の中に形成される。
【0017】
局所的な流路は、金属シートの場合には型押しによって、モールディング(プラスチックの場合の)によって、または切断によってさえ好適には形成され得る。
【0018】
表現「リング状」は、閉じられているが必ずしも円形でない形状を意味すると理解される。それは楕円形状であり得て、または、正方形もしくは矩形の形状でさえもあり得る。開口が円形の場合、それは円形の形状が好適であろう。
【0019】
一定の柔軟性を有し、応力が分散されることを可能にする一方、スタックの組立ての間に加えられる圧力によく耐えるために、シートはU字型の(または平底のV字形の)断面が設計されている。ジョイントは、電解質の膜に対して直接当てられてもよい。
【0020】
フレアー付きアームを備えたこのU字形を有する2つのシートが向かい合わせで溶接されるとき、それは、アームの端部にある折り曲げられた平面の部分を介して行われる。金属シートのUの平底はバイポーラの部分に対して当てられる。別のシートのUの平底は電解質の膜に対して当てられる。
【0021】
インジェクタージョイントの流体流路は、横方向アーム、および任意選択的にUの平底の場所に形成されるが、それらの上部の折り曲げられた平面の部分においては形成されず、それはこれらの部分が開口の全体周囲上に完全な環状の連続性を維持するためである。
【0022】
相補的な部品がポリマーから作られる場合、それは、金属シートのUの底を充填し、それらの平面の部分はUの開口を越えて突出する。この平面の部分はバイポーラプレート、または膜に対して対になる。実際上、相補的な部品は金属シートの外形形状に似ている外形形状を有するが、よりかさばっており、それはその外側表面と金属シートの内部の表面との間の内部空間の全体を充填するからである。
【0023】
相補的な部品がポリマーから作られる場合、好適にはインジェクタージョイントの流体流路はこの部品における局所的な開口であり、これらの開口は、大体においてその部品のモールディングの間に、その部品の突起部すなわち金属シートのUを越える突起部において形成される。
【0024】
供給(または排気)マニホールドがセルを通って、したがって連続的に、アノード領域を通って、次いで膜を通って、次いでカソード領域を通って通過する位置において、マニホールドが、問題の領域と通じなければならないかどうかに依存して、流路付きのジョイント(インジェクタージョイント)、または流路なしのジョイント(密閉ジョイント)が用いられる。したがって、水素供給マニホールドに対して、アノード側でバイポーラプレートと膜との間にインジェクタージョイントが配置され、また、密閉ジョイントが、カソード側で別のバイポーラプレートと膜との間に配置される。
【0025】
本発明の、他の特徴と利点は、添付図面を参照する以下の詳細な記載を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】2枚の接合したシートからできている円環形のジョイントの第1のシートを示す。
【
図3】第1のシートの拡大図を示すが、断面のU字形のフレアー付きのアーム、およびシートの折り曲げられた端部が見られる。
【
図4】2枚の溶接されたシートから形成された密閉ジョイントの図を示す。
【
図5】2枚の溶接されたシートから形成されたインジェクタージョイントの図を示す。
【
図6】金属シートおよびポリマーから作られた相補的な部品から形成された気密性ジョイントの分解図を示す。
【
図7】金属シートおよびポリマーから作られた相補的な部品から形成されたインジェクタージョイントの分解図を示す。
【
図8】多重マニホールドインジェクションへの本発明の適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、水素および空気の燃料電池におけるセルのスタックを図式的に断面図で示す。
【0028】
セルは、2つのバイポーラプレートBPとBP’との間の中央の電解質の膜Mからおのおのできている。アノードは各膜の左側に、およびカソードは右側に配置される。プレートは2つの隣接セルに共通である。プレートは簡潔さのため凹凸のないブロックとして表わされ(活性域にガスを送達する分配チャネルは示されていない)、また、空気および水素の供給マニホールド(原則としてはプレートの周辺)を含むプレート部分だけが示されている。排出マニホールドは示していない。それらは空気供給マニホールドと同一の形態をとってもよい。冷却マニホールドは、任意選択的にあってもよいが、同じく示していない。
【0029】
密閉ジョイント、特に、完全に気密性の周辺のジョイント10aおよび10’aが、バイポーラプレートのおのおのから膜を分離する。
【0030】
バイポーラプレートに穴をあけられ、整列した開口は、供給マニホールドを形成し、そのマニホールドは、スタックの端部において、それぞれ水素および空気の供給ダクトに接続される。
【0031】
2つの連続のバイポーラプレート内に形成された所与の供給マニホールドの2つの連続の開口の間に下記が挿入される。
−完全に第1の開口を取り囲み、かつ、第1のプレートと膜との間で締め付けられる(膜のアノード側で)、第1のリングジョイントJ
A、および
−完全に第2の開口を取り囲み、かつ、第2のプレートと膜との間で締め付けられる(膜のカソード側で)第2のリングジョイントJ
B。
【0032】
ジョイントは膜を支持し、スタック内で適所にそれを保持する。
【0033】
ジョイントJ
Aは完全に気密性ジョイントであり、それは反応性ガスが供給マニホールドからセルのアノード側に通過することを防止する(ここでマニホールドは空気供給マニホールドである)。
【0034】
ジョイントJ
Bはインジェクタージョイントである。それは、ジョイントJ
Aのように膜を支持するが、完全には気密性ではない。それは、流体が空気供給マニホールドからセルのカソード側までそれを通って通過することができる流路を含む。これらの流路は、ジョイントの周囲においてスリットによって象徴的に表わされており、このスリットは、ジョイントの内部と外部とに連通をもたらす。インジェクタージョイントの物理的な構成の詳細は、下に与えられる。
【0035】
ジョイントJ
AとJ
Bの役割は、水素供給マニホールド用にはもちろん逆転されるであろう。すなわち、第1のジョイントJ’
Aは、その際アノード側への流路を提供されるインジェクタージョイントであり、また、第2のジョイントJ’
Bは、カソード側に関して完全な気密性ジョイントである。
【0036】
スタックの組立ての間に、様々な部品は、スタックをまさに通って通過し、かつ、適切な締め付け手段(ねじとナット)を含むロッド(図示せず)によって互いに対して圧迫される。締め付けは、適所に膜を正確に維持するために、きつくなければならないが、膜を損傷しないためにきつすぎないことが必要である。締め付けの力は、供給マニホールドに沿って整列したすべてのジョイントの上に分散される。
【0037】
少なくとも1つの金属シートと相補的な部品が、ジョイントを作製するために好適には用いられ、相補的な部品は、第1のものに溶接された別の金属シート、または、粘着的に金属シートに接合され、所望形状を有するようにモールディングによって形作られたポリマーから作る部品であり得る。インジェクタージョイントの流体流路は切断または型押しにより相補的なシート内に形成されてもよく、または、型押し、機械加工、またはモールディングにより相補的な部品内に形成されてもよい。
【0038】
金属シートは、ポリマー層により好適にはコーティングされ、一方では、ジョイントの厚さにおける製造公差を補償すること、および、他方では、バイポーラプレートから電気的にインジェクターを分離することを可能にする。
【0039】
第1の金属シートTAの好適な形状は
図2に示される。それは、流体用流路を含まない。半径平面でのその断面は、
図3でより容易に分かるが、それは拡大図である。断面は、フレアー付きのアームを備えたU字形を有するが、この形状は、平底のV字形の形状と呼ぶこともできるであろう。Uの底は、F
Aと表示され、またUのアームは、B1
AとB2
Aで表示されている。アームの端部は、Uの平面基部と平行に折り曲げられている。これらの折り目は、R1
AとR2
Aと表示されている。
【0040】
図4は、フレアー付きのUのアームの折り曲げられた両端R1
A、R1
BおよびR2
A、R2
Bを介して向かい合わせで溶接された、2つの同一の金属シートTAとTBから構成されている完全な密閉ジョイントを示す。シートTAのU字型の区画の底F
Aの全体環状表面は、スタックの組立ての間に、バイポーラプレートに対して当てられ、また、シートTBの底F
Bの全体環状表面は、膜に対して当てられる。
【0041】
図5は、2つの異なる金属シートTAおよびTBから構成されたインジェクタージョイントを示し、第1のシートTAは、
図3の中のシートTAと同一で、第2のシートは、それが環の内部と外部との間の流路を備えていることにおいて異なる。シートTBのUの底F
Bは、連続的ではなく環に沿って不連続である。流路P
Bは、不連続の底区域間で形成される。それらは、型押し(シートBが金属シートである場合)により、またはモールディング(シートBがポリマーから作られる場合)により好適に形成される。さらに、それらは切断によって形成されてもよい。送達されるか、または排出される流体は、これらの流路を通じて、ジョイントの内部と外部との間で通過し得る。ここでも、第1のシートTAは、バイポーラプレートに対して当てられる。第2のシートTBは、不連続の底面F
Bを介して膜に対して当てられる。流路P
Bは、Uのアームの全体高さにわたり、但し折り目部の厚さを除外して、好適に形成され、折り目部の厚さはジョイントの全体周囲上にわたって連続的なままである。
【0042】
図6は、気密性ジョイントJ
Aの金属シートTA、および、相補的な部品がポリマーから作られる場合の相補的な部品TBの分解図を示す。ポリマーから作られる部品は、金属シートTAに粘着的に接合されることが意図されており;接合の後のその外側の形状はシートTBの形状と同じであるが、その部品は中実状であり、シートTAのUの内部を充填し;この中実状の形状はそれに十分な剛性を与える。
【0043】
ポリマーから作られる相補的な部品の半径断面は、その際、平底で背中合わせの2重Uで、そのフレアー付きのアームの端部が平面基部と平行に折り曲げられた形状を好適には有し、Uのアームによって囲まれた空間はポリマーで充填されている。金属シートのUの内部に相補的な部品を一意的に接合することは可能であるので、相補的な部品のUの折り曲げられた端部は任意選択である。
【0044】
図7は、インジェクタージョイント用の、
図6に類似した図を示す。ポリマーの中実状の物体における局所的な中断の形態をとる流路P
Bは、金属シートのUを越えて突出するポリマー物体の部品の場所に収容される。流路がポリマーから作られる部品内に収容されることは、金属シート内よりはむしろ好適である。
【0045】
図8は、大体において
図1と同じであるが、燃料電池が1つではなく2つの水素供給マニホールドを含み、マニホールドのおのおのがスタックの2つのうちの1つのセルに供給する、特に有利な応用を示す。これは第1のマニホールドに対応する整列した開口の一連が検討される場合、1つの開口は、アノード側のバイポーラプレートと膜との間のインジェクタージョイント、および、カソード側のバイポーラプレートと別の膜との間の密閉ジョイントを含み、しかし、次の開口は、この開口の位置においてマニホールドによりいかなる供給をも防止するために、開口のまわりにインジェクタージョイントではなく2つの密閉ジョイントを含むことを意味する。状況は別のマニホールドでは逆転される。このやり方で、2つのうちの1つのセルが1つのマニホールドによって供給され、次のものは別のマニホールドによって供給される。マニホールドは別個の外部ダクトC
IN−AおよびC
IN−Bによって供給される。
【0046】
この原理はN(N>2)個の水素供給マニホールドに一般化されてもよく、スタックにおいてN個のうちの1個のセルに水素を供給し、以下の通りである。開口は、一連のN個の連続の開口に分割され、その中の1つの開口がアノード側のバイポーラプレートと膜との間のインジェクタージョイント、およびカソード側のバイポーラプレートと別の膜との間の密閉ジョイントを含むが、一連の(N−1)個の別の開口がバイポーラプレートの各側に密閉ジョイントを含む。
【0047】
水素または酸素もしくは空気の供給マニホールドに関して今述べたすべてのことは、排気マニホールドにも適用可能である。製造原価は低減されるが、その理由は、インジェクタージョイントはすべて密閉ジョイントに非常に似ており、また、それらは両方とも同一の第1のシートを用いており、第2のシートだけは異なっているが、インジェクタージョイントおよび密閉ジョイントにおいて同一の全体的な寸法(直径と厚さ)を有するからである。供給マニホールドのジョイントおよび排気マニホールドのジョイントを同じにすることは可能である。