(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、運転を支援するためのシステムであって、運転者が自身の運転の態様を「手本となる最適化された」経済的な運転の態様に適合させた場合に得ることができる航続距離の増加を評価することを可能にするシステムを提案することにある。この目的のために実行される航続距離の計算は、運転者の実際の運転スタイルをできる限り適切に考慮に入れなければならない。
【0012】
この評価システムは、走行しようとする直近の道路の地勢についてのデータベースを使用する評価システムを必ずしも必要とすることなく、車両のセンサのみからもたらされるデータにもとづいて航続距離を計算できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、バッテリによる供給を受けて車両の駆動輪を推進させることができる少なくとも1つの電動モータを備えている自走車両の運転を支援するための方法が提案される。この方法において、基準運転スタイルに対応する車両の最適化された消費が、車両が現在走行している旅程と同じ旅程について、車両の実際のエネルギー消費および車両のセンサによって集められる値にもとづいて計算され、運転者に、運転者が基準運転スタイルを採用した場合に車両の車上の利用可能なエネルギーの蓄えにて走行することができる距離、または運転者が基準運転スタイルを採用した場合に達成できる単位走行距離当たりのエネルギーの節約が知らされる。
【0014】
この方法の実施の好ましい実施態様によれば、過剰消費または車両が余分に消費する平均のエネルギーが、或る時間期間または或る所定の旅程距離について計算され、次いで最適化された消費が、車両によって実際に消費されたエネルギーから前記過剰消費を引き算することによって計算される。過剰消費または平均の超過エネルギーは、基準運転モードと比べて余分に消費されるkm当たりのエネルギーの平均に相当する。最適化された消費も、好ましくは単位走行距離当たりの値である。当然ながら、最初に時々刻々の超過エネルギーを車両の時々刻々の消費エネルギーから引き算し、次いでこの差を積分またはフィルタ処理して平均の最適化された消費の値を得ることも、依然として本発明の枠組みに包含される。
【0015】
好都合には、時々刻々の超過の動力またはエネルギーが最初に割り出され、それにもとづいて前記平均の超過エネルギーが計算され、前記時々刻々の超過の動力またはエネルギーは、車両の時々刻々の速度、バッテリから取り出される出力またはモータによって車輪へと伝えられる動力、車両のブレーキを作動させるための信号、ならびに以前のパラメータにもとづいて計算される設定点運動エネルギーを含むパラメータにもとづいて計算される。時々刻々の動力という表現は、単位時間当たりの平均エネルギーを意味するものと理解され、時々刻々のエネルギーという表現は、単位距離当たりの平均エネルギーを意味するものと理解される。積分によって平均の超過のエネルギーを計算することを可能にする時々刻々の超過のエネルギーを、時々刻々の超過の動力を車両の速度で除算したものに等しいと考えることができる。
【0016】
優先的な方法においては、前記設定点運動エネルギーは、モータによって車輪へともたらされる動力を積分し、下限としてのゼロ値および上限としての車両の総運動エネルギーを前記積分について各々の瞬間における境界として課すことによって計算される。
【0017】
好ましい実施態様によれば、前記時々刻々の超過の動力が、特には車両の空調および/または暖房において消散させられる動力に応じた項を含む。
【0018】
好都合な実施態様によれば、前記時々刻々の超過の動力の計算は、車両によって最近に蓄積された運動エネルギーの値が運動エネルギーしきい値を超える場合に限って考慮される1つ以上の項を含む。これらの項は、速度低下の先読みに乏しい運転の態様の影響を表している。
【0019】
先の実施態様と組み合わせることができる別の実施態様によれば、前記時々刻々の超過の動力が、車両の速度が最適基準速度を超える場合に限って考慮される過剰な速度に関係した1つ以上の項を含む。
【0020】
車両の過剰な速度に関係した前記時々刻々の項は、例えば車両の速度における二次または三次の多項式の形態の摩擦の成分を含むことができる。
【0021】
前記摩擦の成分は、同時に、前記設定点運動エネルギーに関連した速度である設定点速度における二次または三次の多項式であってよい。
【0022】
車両の過剰な速度に関係した前記項が、過速度制動成分をさらに含むことができ、この過速度制動成分は、とりわけモータによって車輪へと伝えられる動力またはバッテリによってもたらされる出力、設定点運動エネルギー、ならびに車両の速度に依存する抵抗の項がカウントされる項の差のモータの効率による積である。
【0023】
特に好都合な実施態様によれば、前記時々刻々の超過の動力は、車両が計算の瞬間に先立つ所定の時間スパンにおいて運動エネルギーしきい値よりも大きい量の運動エネルギーを蓄積した場合に限って考慮される車両の運転における先読みの欠如に関係した項を含む。
【0024】
前記先読みの欠如に関係した項の計算は、モータの効率、回生ブレーキの効率、バッテリから取り出される出力またはモータによって車輪へと伝えられる動力、設定点運動エネルギー、および車両の時々刻々の速度に依存する抵抗の項を含むことができる。
【0025】
運転者に、基準運転スタイルに対する運転者の時々刻々の過剰消費を知らせることができ、さらには/あるいは特定の距離または特定の移動時間についての運転者の平均の過剰消費を知らせることができる。消費または時々刻々の過剰消費そのものは、平均の過剰消費の計算について選択された距離または継続時間よりも短い距離または継続時間について平均された平均であってよい。
【0026】
平均の過剰消費の先の計算を、例えば一次のフィルタによって実行することができ、すなわち最後に見積もりされた消費または過剰消費の値と以前の工程における平均の消費または過剰消費の値との重心を計算することによって実行することができる。平均の操作を、最初に消費の総動力またはエネルギーの値ならびに過剰消費の動力またはエネルギーの値について別々に実行する代わりに、最適走行モードにおいて消費される動力またはエネルギーの値について直接、同じ手順によって実行しても、本発明の領域から外れるものではない。一次のフィルタの使用は、平均の計算に必要なメモリ空間を抑えることを可能にする。
【0027】
別の態様によれば、或る旅程における車両の実際のエネルギー消費にもとづき、同じ旅程における該車両について、基準運転スタイルに対応する最適化された消費を計算し、運転者に、運転者が基準運転スタイルを採用した場合に車両の車上の利用可能なエネルギーの蓄えにて走行することができる距離を知らせ、あるいは運転者が自身の運転を適合させることによって得ることができる消費の削減を知らせるように構成された運転支援装置が、自走車両に備えられる。
【0028】
好都合な実施形態によれば、単位走行距離当たりの平均の超過のエネルギーを、時々刻々の超過の動力を時々刻々の車両の速度で除算し、走行距離にわたって積分またはフィルタ処理することによって計算することができる。
【0029】
本発明を、添付の図面に示され、あくまでも本発明を限定するものではない例として解釈される実施形態についての詳細な説明を検討することで、よりよく理解できるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面に示されるように、運転支援装置1が、バッテリマネージャ3を備えるバッテリ2と、電動モータ4と、電子制御ユニット(ECU)5と、空調システム6と、暖房システム7と、外気温センサ8と、ブレーキペダルセンサ9と、時々刻々の超過の動力のコンピュータ10とを備えている。
【0032】
さらに装置は、車両の外気温を暖房システムによって消費される動力の最大値および空調システムによって消費される動力の最大値にそれぞれ関係付けるチャート11および12を備えている。
【0033】
さらに装置は、例えばダッシュボードの高さに配置され、例えばバッテリ2の段階における実際の消費動力、バッテリ2の段階において利用できる総エネルギー、バッテリ2に残るエネルギーW
availによって車両がさらに走行することができる残りの航続距離A、および運転者が基準運転モードに従った場合にバッテリ2において利用できるエネルギーW
availによって車両がさらに走行することができる距離を表す最適化航続距離Dなど、運転者に向けた多様な情報の表示を可能にする表示システム18を備える。
【0034】
基準運転モードを、特には、暖房7または空調6の使用をチャート11および12が推薦する動力の値までにとどめること、例えば毎時90km程度であってよい所定の最適巡航速度までで走行すること、および来たるべき障害物を先読みすること、すなわち制動がすぐに必要となる場合に車両を不釣り合いに加速させないこと、で構成することができる。
【0035】
さらに、装置1は、コンバータ13と、積分フィルタ14と、減算器15と、インバータ16と、乗算器17とを備えている。
【0036】
コンピュータ10が、各々の瞬間において、車両がバッテリから引き出す時々刻々の出力であって、車両が基準運転モードに従って同じ旅程を実行しているときにバッテリから引き出すと考えられる出力と比べた超過の出力を計算する。
【0037】
したがって、コンピュータ10が、車両の種々のセンサから多様な情報(その一部は、随意により電子制御ユニット5によって処理される)を受信する。すなわち、コンピュータ10は、暖房システム7が消費する時々刻々の動力を、接続21を介して受信し、空調システム6が消費する時々刻々の動力を、接続22を介して受信し、ブレーキセンサ9からもたらされ、ブレーキペダルが操作されているかどうかを示す信号「br」を、接続24を介して受信する。コンピュータ10は、接続23を介して外気温の値T
extを受信する。この温度T
extの助けにより、暖房および空調のそれぞれにおいて消費される動力について推奨される最大値P
heat_maxおよびP
cond_maxを、接続25および26を介してチャート11および12から取り出すことができる。電子制御ユニット5は、モータ4の回転速度Nの算出を可能にする情報の項目を、モータ4の回転子の位置センサから接続27を介して受信する。また、バッテリの端子間電圧とバッテリに流入する電流との積U.I.に対応するバッテリの時々刻々の出力の値を、接続28を介してバッテリマネージャ3から受信する。
【0038】
これらの値にもとづき、さらに随意により変速機の減速比にもとづいて、電子制御ユニット5は、車両の時々刻々の速度V、モータによって車輪を動作させるために伝えられる動力または電気機械4へと戻されて電気エネルギーへと変換される車輪における動力に相当する動力P
weels、運動エネルギーのうちの運転者によって車両へと意図的に伝えられる部分を表す設定点運動エネルギーEk
setp、以前の運動エネルギーから推定される設定点速度V
setp、および非先読みの過速度運動エネルギーEk
oversを計算する。
【0039】
ECU5が、これらすべての値をコンピュータ10へと送り、コンピュータ10が、超過の動力P
excessを計算する。この動力の値は、コンバータ13へと送られる。コンバータ13は、時々刻々の超過の動力P
excessを、単位走行距離当たりのエネルギー消費の値へと変換する。次いで、この単位距離当たりの値は、積分器14のうちの1つによってフィルタ処理または積分され、単位走行距離当たりの平均の超過の消費C
excessがもたらされる。
【0040】
また、コンバータ13は、バッテリ2によって実際に消費されたエネルギー(すなわち、U×I)も接続29を介して受信し、この時々刻々のエネルギーを単位走行距離当たりの消費エネルギーへと変換し、もう1つの積分器14へと送る。この積分器14は、車両によって実際に消費された単位走行距離当たりのエネルギー、すなわちC
realをもたらす。
【0041】
実際の消費C
realは、減算器15の正の入力へと送られ、超過の消費C
excessは、減算器15の負の入力へと送られ、減算器15の結果が、インバータ16へと送られ、次いで乗算器17へと送られる。また、乗算器17は、その入力のうちの1つにおいて、バッテリ2において依然として利用できるエネルギーW
availを、接続30を介して受信する。
【0042】
乗算器17の出力において、運転者が自身の運転の態様を基準運転モードに適合させた場合に可能となる車両の走行距離を表す値Dが得られる。この結果が、表示システム18によって表示される。
【0043】
車両の超過の消費動力P
excessを計算するために、コンピュータ10は、車両の特定の動作パラメータがどの値の範囲に位置するかを確認する。すなわち、チャート11により、コンピュータ10は、空調によって消費される動力が、測定された外気温の値T
extについてチャート11に写像された値P
cond_maxよりも大きいかどうかを確認する。
【0044】
動力が、推奨される動力P
cond_maxよりも大きい場合、コンピュータ10は、空調超過=P
cond−P
cond_maxの項を値P
excessに加える。
【0045】
空調によって消費される動力が、写像されたしきい値よりも小さい場合、コンピュータ10は、超過の動力の項P
excessに空調に関するいかなる項も加えない。
【0046】
コンピュータ10は、チャート12の助けにより、暖房システム7によって消費される動力P
heatについて同様の方法で進む。すなわち、チャート11および12の助けにより、車室の熱的快適性の調節に関する超過の動力の項P
comf_excessを計算する。P
comf_excessを車両の速度によって除算することによって、熱的快適性のための手段の過度の使用に関係する単位走行距離当たりの消費超過を得ることができる。熱関係の消費超過のエネルギーΔE
overcomfに寄与する項を、下記の表1に要約する。
【0048】
当然ながら、表の右下の最後の枠によって表される特定の事例は、空調および暖房の同時使用に相当すると考えられるため、通常は決して生じない。
【0049】
さらに、コンピュータ10は、基準運転モードと比べて余分に消費されるエネルギーE
excessの見積もりにおいて先の項ΔE
overcomfに加えられる超過のエネルギーの項ΔE
paceを計算する。ΔE
paceは車両のペースに依存し、すなわち車両の時々刻々の速度および最近の速度の履歴に依存する。
【0050】
この項ΔE
paceの目的は、平均において高すぎると考えられる速度の影響ならびに先読みの欠如の影響を強調することにあり、先読みの欠如は、速度の変化の振れ幅がそれらの変化の時間的な広がりに対して過度に大きくなることによって明らかになる。
【0051】
したがって、コンピュータ10が、時々刻々の速度を1つ以上のしきい値速度(例えば、第1のしきい値速度V
1および第2のしきい値速度V
eco)と比較する。
【0052】
並行して、コンピュータ10は、次元に関して運動エネルギーと同等であり、現在の瞬間に先行する時間期間において蓄積された運動エネルギーの量を反映する値Ek
oversによって得られる値も確認する。
【0053】
すなわち、しきい値(図示の実施形態においてはゼロに等しいしきい値)よりも大きい運動エネルギーの値Ek
oversは、運転者が車両に過度に大きい加速度を求めたことを示している。したがって、車両は、運転者による再度の減速の瞬間において未だ衰えていない「最近の」運動エネルギーを有する。
【0054】
表2が、基準運転モードと比べて余分に消費される1km当たりのエネルギーΔE
paceに寄与する項の考慮について、考えられる方法を要約している。車両の速度領域Vに応じ、値Ek
oversによって表される車両の運動エネルギーの履歴に応じて、エネルギーΔE
paceは、バッテリから車輪へと無関係な往復移動を実行したエネルギーに相当する項E
RT、ブレーキにおいて消散させられるエネルギーの項E
brake、および適度な速度(V
eco以下の速度)での走行と比べて余分に消散させられる空気力学的な摩擦エネルギーを表す項E
aeroを含む。
【0056】
先読みの欠如を表す運動エネルギーEk
oversが、選択されたしきい値以下である場合、これは表2の第2行に相当する。
* 車両の時々刻々の速度が第1の速度V
1よりも低い場合、ペースに関する超過の項は考慮されない。V
1は、ハンドル操作および駐車の操縦に必要な最小限の速度に相当し、例えば毎時10kmの速度である。
* 車両の速度Vが第1のしきい値速度V
1よりも大きい場合、コンピュータ10は、摩擦制動によって消散させられるエネルギーに相当する第1の超過の消散の項E
brakeを考慮する。このエネルギーE
brakeは、例えばあまり急がない走行またはモータブレーキによる制動によって回避することができる。
* さらに、車両の時々刻々の速度がしきい値速度V
ecoよりも大きい場合、コンピュータ10は、さらに前進における摩擦による消散に関する超過の項を考慮する。この超過の項は、車両の車輪の軸受の摩擦を表わす項E
bearならびに空気を貫く前進に対する車両の抵抗に関係する空気力学的損失の項E
aeroを含むことができる。大きさの程度の理由で、説明される実施形態においては、摩擦によって消散させられる超過の動力に関する項は、空気力学的な損失に関係する動力に実質的に等しく、軸受の摩擦の寄与は無視できると考えられる。車両の車輪の軸受の摩擦を表わす項E
bearを考慮しても、本発明の枠組みから外れるものではないと考えられる。
【0057】
過速度運動エネルギーEk
oversが選択されたしきい値(ここでは、0)よりも大きい場合、これは表2の第3行に相当する。
* コンピュータ10は、バッテリから引き出され、車輪へと送られ、次いで一部分だけが回生ブレーキによって回収されるエネルギーの往復移動によるエネルギーの損失に関する値E
RTを、超過のエネルギーの項に加える。
* また、コンピュータ10は、おそらくは制動によって消散させられるエネルギーを考慮する寄与E
brakeを、超過の動力の項E
excessに加える。
* 車両の時々刻々の速度がさらにしきい値速度V
ecoよりも大きい場合、コンピュータ10は、前進における摩擦による消散に関する超過の項E
aeroも考慮する。
【0058】
車両が消費する超過のエネルギーの値を得るために、快適さの調節に関する車両の現在の設定および車両の前進のペースに対応する表1の項および表2の項が加えられる。
【0059】
表2に示した種々の寄与の項の計算の方法を、以下で説明する。
【0060】
バッテリマネージャ3によって伝えられるエネルギーの値U×Iにもとづき、電子制御ユニット5は、以下の方法で車輪における動力P
wheelsを計算する。
P
wheels=UI/Rdt
mot UI≧0の場合
P
wheels=UI/Rdt
gen UI<0の場合 (式1)
ここで、
「モータ動作の」効率Rdt
motは、1よりも大きい値であり、不変であると考えることができ、あるいはモータ4の回転速度の関数として写像されてもよく、
「発電機動作の」効率Rdt
genは、1以下の値であり、不変であると見なすことができ、あるいはモータ4の回転速度の関数として写像されてもよい。
【0061】
したがって、モータの効率および発電機の効率は、制御ユニット5によって保存された2つの値または2つのチャートである。動力P
wheelsが、車両の駆動輪の段階において受け取られる機械的な動力を各々の瞬間において確定することを可能にする。この動力は、特には、運転者がアクセルペダルの段階において実行する調節によって引き起こされる運動エネルギーに相当する設定点運動エネルギーEk
setpを計算するために使用される。この設定点運動エネルギーは、例えば車両が傾斜のある道路を走行しているときに重力に関係した速度変化の影響を考慮する必要を回避する。
【0062】
この設定点運動エネルギーEk
setpを、反復的な方法で、瞬間t+δtにおいて、先の瞬間tに対応する運動エネルギーにもとづいて、以下の方法
(式2)
で計算することが選択され、
さらに各々の瞬間において
を課し、
Ek
setp(t)=1/2・MV
setp2(t)と置くことによって、設定点速度V
setpが定められる。
【0063】
Mは車両の質量であり、Vは車両の時々刻々の速度である。
【0064】
第一近似として、車両の質量として、例えば2名乗車など、軽負荷時の車両の平均質量を選択することができる。
【0065】
車輪における動力P
wheelsも、いわゆる「非先読み過速度」運動エネルギーEk
oversを計算するために使用される。例えば、Ek
oversを、例えば車両の運転者がダッシュボードのカウンタを再初期化した瞬間においてEk
overs=0を初期値としてとることによって、以下の方法
(式3)
で定めることが可能である。
【0066】
δtは、車輪の先の測定とP
wheelsの現在の測定とを隔てる計算時間の間隔である。
【0067】
τは、例えば4〜8秒の間に位置する定数であってよい値に等しく選択される減衰時定数である。
【0068】
車輪へともたらされる動力Ek
setp(t)が、τ程度の継続時間にわたってゼロである場合、Ek
oversの残値はきわめて小さくなる。
【0069】
したがって、期間τにわたって蓄積された運動エネルギーを忘れる効果が存在する。
【0070】
他方で、運動エネルギーEk
oversは、Ek
setp(t)が増加する限りにおいて増加を続ける。
【0071】
ここで、車輪における動力は、それが正である場合に限り、すなわち電気機械4が推進モータとして働く場合に限り、考慮される。
【0072】
ブレーキにおいて消散させられるエネルギーE
brakeを計算するために、コンピュータ10は、センサ8がブレーキの作動を知らせているかどうかを最初に確認する。ブレーキが作動していない場合、制動動力の考慮は行われず、ブレーキが作動している場合、制動動力P
brakeが、以下の力学の式
br=真である場合 (式4)
にもとづいて見積もられ、ここで
P
fricは、ブレーキの力以外の摩擦力の動力であり、
P
gravは、重力の動力であり、
P
wheelsは、車輪へともたらされる動力である。
【0073】
摩擦力Pfricの消費動力の推定における不正確さを軽減し、車両が走行中の道路の傾斜についての情報を必要とする重力に関する動力P
gravの計算の困難さを軽減するために、総運動エネルギー変化の項
が、式4において設定点運動エネルギー変化
によって置き換えられ、ここでEk
setpは上述のように定められる設定点運動エネルギーであり、すなわち
(式4の2)
である。
【0074】
したがって、これは、例えば正の制動動力の推定を得る必要性を回避し、車両がそのようにする必要性を回避する。式4および4の2は、平坦な道路において等価である。式4の2によって得られる推定は、起伏のある道路においても矛盾しない。この計算の態様は、車両が上り坂にある場合に制動力をわずかに過剰に推定する結果となりうるが、この特定の場合においては、ブレーキの使用が稀である。
【0075】
変形実施形態によれば、この推定の態様を、制動によって消散させられる動力の、ブレーキへの軸受力の関数としての直接的な評価によって置き換えることができる。この評価の態様は、特には車両が制動力の測定手段を有する油圧ブレーキシステムを備えている場合に可能である。その場合、圧力センサの見積もりにもとづいて、制動トルクの見積もりへと立ち戻り、このトルクに車輪の角速度を乗算することによって制動動力を得ることが可能である。
【0076】
ブレーキの摩擦力以外の摩擦力の動力P
fricを見積もるために、これらの摩擦力の主要な成分が、
空気力学的な制動力の動力、および
車両の車輪の軸受の摩擦力の動力
を含み、
すなわち
(式5)
であると考えられる。
【0077】
軸受において消散させられる動力P
bearを、第一近似として、
(式6)
の形態にて表すことができ、ここで
bは、いわゆるHoernerの式からもたらされる定数であり、
(式7)
に等しく、Mは、車両の質量であり、αおよびβは、定数であり、Π
tiresは、車両のタイヤの膨張圧力である。
【0078】
空気力学的な摩擦力によって消散させられる動力P
aeroを、第一近似として、
(式8)
に等しくなると考えることができ、ここでaは、
(式9)
の式で空気の密度ρおよび車両の空気力学的係数SCxに依存する定数である。
【0079】
したがって、以下の式
にて制動動力を見積もることが可能である。
【0080】
制動動力P
brakeによって引き起こされる過剰な消費は、バッテリの段階における過剰な消費の値に等しく、
である。
【0081】
制動において「浪費」される単位走行距離当たりのエネルギーは、br=真である場合に
に等しく、
ここでVは、車両の速度であり、論理変数「br」は、消散的なブレーキが作動していることを示している。
【0082】
バッテリから車輪へともたらされ、その後に再びバッテリへと戻るエネルギーの往復移動による損失の動力P
RTは、
(式11)
に等しい。
【0083】
実際、車輪へと提供される単位動力は、車輪へともたらされるために動力Rdt
motを「犠牲」にし、Rdt
genに等しい一部分だけが後に回収される。
【0084】
したがって、対応する単位走行距離当たりのエネルギーは、P
wheels>0である場合に、
に等しく、ここでVは、車両の速度である。
【0085】
変形実施形態によれば、往復移動によって失われるエネルギーを、車輪へともたらされる総動力P
wheelsにもとづくのではなく、「妥当な」速度(例えば、V
eco)から現在の速度V>V
ecoへと移行するためにもたらされる動力の増分ΔP
wheelsにもとづいて計算することができる。
【0086】
空気力学的な摩擦力E
aeroの理由によって余分に消費されるエネルギーに関しては、
運転者がアクセルペダルを踏み込むことによって引き起こされる速度に関係した損失、および
おそらくは運転者によって引き起こされた速度ではなく、例えば傾斜路を下る車両の段階において採用される速度に関係した損失
を、異なる方法で考慮することが望まれる。
【0087】
さらに、車両の「基準」走行の枠組みにおいても消散させられると考えられるエネルギーを、考慮しないことが望まれる。この推論は、消散させられる空気力学的な動力を対応する車両の速度で乗算することによって得られる消散させられる空気力学的なエネルギーにもとづく。即ち、
(式13)
【0088】
E
aero_totは、空気力学的に消散させられる車両の単位走行距離当たりの総エネルギーであり、
(V≧V
ecoの場合)
(V<V
ecoの場合)
であり、
ここでΔE
aero_totは、速度V
ecoに等しい速度における基準運転モードと比べて余分に消散させられる空気力学的な摩擦エネルギーであり、
(V
setp≧V
ecoの場合)
(V
setp<V
ecoの場合)
であり、
ここでΔE
aero_setpは、速度V
ecoにおける基準運転モードと比べ、アクセルペダルへの運転者の操作によって直接引き起こされた余分な単位距離当たりのエネルギーである。
【0089】
電気機械4のモータ動作モードおよび発電機動作モードにおける効率を考慮すると、空気力学的な損失は、下記を含むと考えられる。
過度の速度を維持するために余分にもたらされたエネルギーに対応する運転者の運転の態様の理由によって意図的な様相で失われたエネルギー分。したがって、モータの効率が、バッテリの段階において消散させられる該当のエネルギーを見積もるためにこのエネルギー分へと適用される。
空気力学的な摩擦の理由によって失われる「意図的でない」エネルギー分。これは、意図的に余分にもたらされるエネルギーではないが、このエネルギーが摩擦によって消散させられていない場合、回生ブレーキモードにおいて回収されている可能性があり、したがって発電機の効率が適用される。
【0090】
したがって、空気力学的な摩擦の理由によって消散させられる余分なエネルギーE
aeroは、以下の式で表される。
【0091】
計算ユニット10は、ひとたび考慮すべき表1および2の各項を決定すると、それらを合計することによって単位走行距離当たりの超過の消費エネルギーを表す値E
excess=ΔE
overcomf+ΔE
paceを得る。
【0092】
変形実施形態によれば、種々の過剰消費の項の計算を、最初に動力の形態で実行することができ、結果として超過の動力の時々刻々の値がもたらされ、その後にこれを単位距離当たりの超過のエネルギーへと変換することができる。この実施形態が、図面に示されている。
【0093】
その後に、時々刻々の過剰消費エネルギーがフィルタ処理され、短期、中期、または長期の平均の過剰消費C
excessが得られる。並行して、バッテリから実際に取り出されたエネルギーU×Iがフィルタ処理され、短期、中期、または長期の平均の消費C
realが得られる。
【0094】
随意により、運転者に、例えば百キロメートルの尺度における平均の過剰消費および、例えば十キロメートルの尺度における最近の過剰消費の両方に関するアドバイスをもたらすために、いくつかの種類のフィルタ処理を実行することが可能である。後者の尺度は、運転者が自身の運転スタイルの起こりうる最近の修正の効果に気付くことを可能にする。
【0095】
フィルタ処理を、移動平均によって実行することができ、あるいは必要なメモリ空間を抑えるために、一次のフィルタによって実行することができる。一次のフィルタは、見積もりされた最後の過剰消費の値と先の計算工程において見積もりされた平均の過剰消費の値との間の重心を計算することからなる。
【0096】
フィルタ処理を、
に等しい「最適化」された消費E
ecoの値に直接適用することができる。
【0097】
ΔE
paceおよびΔE
overcomfは、上述の表記法において、負になるように定められている。フィルタ処理が最適化された消費エネルギーへと直接適用される場合、一次のフィルタによるフィルタ処理を、例えば
(式15)
という形式の式に従って適用することができ、ここで
E
eco_avg(t+δt)は、時点t+δtにおけるフィルタ処理された値であり、
E
eco_avg(t)は、先の計算の時点tにおけるフィルタ処理された値であり、
Vは、車両の速度であり、
δtは、2つの計算工程間の時間間隔であり、
ΔLは、フィルタ処理の間隔であり、例えば短期のフィルタ処理においては10km程度であってよく、長期のフィルタ処理においては百km程度であってよい。
【0098】
変形実施形態によれば、一方では車両の現在の運転モードに対応する航続距離Aを表示し、他方では基準運転モードに対応する「最適化」された航続距離Dを表示するなど、比較されるべき2つの値を表示システム18に表示することを選択することができる。
【0099】
また、車両の1キロメートル当たりの時々刻々の消費と、運転者が自身の運転スタイルを修正することによって得ることができる「最適化」された時々刻々または平均の消費とを、並行して表示することも可能である。また、実際の消費を、運転者がゼロへと向けるように努力すべき超過の消費と並べて表示することを選択することもできる。
【0100】
表示を、例えばキロワットアワー/キロメートルという単位にて絶対値として実行でき、あるいは、例えば現在の消費のうちの運転者が自身の運転スタイルを修正することによって節約できる割合を表示することによって、相対値として実行することができる。また、表示は、熱的な快適性、先読みの欠如、または過速度など、過剰消費の原因を区別することもできる。
【0101】
このように、本発明は、運転者が自身の運転スタイルの有効性を判断し、運転スタイルの修正が、表示される指標に及ぼす影響を試すことを可能にする。
【0102】
装置は、走行予定の道路の地勢に関する外部のデータベースがあらかじめ組み込まれているかどうか、あるいは無線リンクを介して利用可能であるかどうかにかかわらず、そのようなデータベースを使用することなく、車両の車上のセンサによって集められる情報だけを必要とする。
【0103】
コンピュータ10は、車両において他の監視の目的で通例利用可能な情報である限られた量の情報しか必要としない。使用される計算アルゴリズムは、きわめて単純かつメモリ資源をあまり必要としない。車両の可能な航続距離の見積もり、ならびに時々刻々の過剰消費または平均の過剰消費の見積もりにおいて得られる精度は、運転者が自身の運転スタイルを相応の方法で適合できるようにするために充分である。
【0104】
本発明の主題は、上述の例示的な実施形態に限られず、多数の変形形態をとることができる。例えば、平均の超過エネルギーを得るために使用されるフィルタ処理は、一次フィルタであってよく、特定の継続時間または特定の移動距離についての移動平均であってよく、あるいはさらに別の種類のフィルタであってよい。消散性の摩擦による損失または空気力学的な損失の見積もりに用いられる式において、変形形態が可能である。時々刻々の動力を単位距離当たりの過剰消費へと変換するための種々の過剰消費成分の変換を、計算の種々の段階において行うことができる。
【0105】
したがって、空気力学的な摩擦によって余分に消散させられるエネルギーを考慮する場合、計算は、分析がキロメートル当たりのエネルギーまたは時々刻々の動力のいずれに関して行われるかに応じて、車両速度において二次または三次の多項式を示すことができる。
【0106】
短期または長期の平均の過剰消費を得るためのフィルタ処理は、実施形態に応じて、時間または移動距離に関して行うことができる。
【0107】
すべての余分な過剰消費の項を時々刻々の動力の式で検討し、最後においてのみ、消費されるエネルギーおよび余分に消費されるエネルギーのキロメートル当たりの値を再計算することが可能である。
【0108】
また、空気力学的な摩擦力の余分なエネルギーの計算について上述したように、過剰な消費を計算の第1の段階からキロメートル当たりのエネルギーの形態で考慮することも可能である。
【0109】
計算の結果は、2つの手順に従ってわずかに異なるかもしれないが、全体としては依然として有効である。したがって、動力に関する推論が最初に行われる場合、基準運転モードにおいて理論的に消費される動力P
ecoは、実際に消費される動力U.Iと2つの過剰消費の動力ΔP
paceおよびΔP
overcomfの合計との間の差に等しくなる。
【0110】
キロメートル当たりの消費エネルギーE
ecoを、経済モードにおける車両の走行速度を考慮する必要があるため、この車両の経済モードにおける走行速度および先の動力P
ecoの助けにより、式
に従って推論することができる。
【0111】
キロメートル当たりの消費エネルギーの関数として上流での推論を実行することが望まれる場合、エネルギーEecoは、車両が実際に消費するキロメートル当たりのエネルギー、すなわち
に等しくなり、このエネルギーからペースおよび熱的な過剰快適に関する過剰消費の項が引き算される。したがって、
という式の表現が得られる。したがって、U.I.の項が、この同じ項がV
ecoによって正規化される先の計算モードにおいて使用されたそれから異なる速度Vによって正規化される。
【0112】
したがって、採用されるモデル化の種類に応じて、車両のペースに関係する種々の過剰消費の項の計算に使用される式は、実施形態ごとに異なってよく、例えば比
を介してお互いから推論されてよい。
【0113】
コンピュータ10は、とりわけバッテリによって実際の消費される動力U.I、車両の速度および速度の履歴、消散性のブレーキが作動しているかどうかを知ることを可能にする情報の項目、ならびに電気機械4がモータとして動作しているか、あるいは発電機として動作しているかを知ることを可能にする情報の項目など、限られた量のデータにもとづいて、車両のペースに関係する過剰消費または車両のペースの変化に関係する過剰消費を依然として見積もることができる。
【0114】
したがって、この運転の最適化を支援するための装置は、実行が単純かつ安価であり、運転者が運転者に与えられる情報を使用する場合に、車両の航続距離の改善を可能にすることができる。