【課題を解決するための手段】
【0029】
この目的のために、複数のサンプルの連続している複数のブロックから構成されるデジタル信号を符号化する方法であり、かつ、オーバーラップ型の変換である符号化の方法であって、分析時に、重み付け窓を2つの連続しているM個のサンプルのブロックに適用するステップを有している方法を提案する。特に、上記の重み付け窓は、非対称であって、2つのブロックにわたって連続して延びている以下の4つの別個の部分を有している。
【0030】
第1の部分:複数のサンプルの第1の間隔にわたって増加
第2の部分:第2の間隔にわたって、値1で一定
第3の部分:第3の間隔にわたって減少
第4の部分:第4の間隔にわたって、値0で一定。
【0031】
後述するように、本発明によって得られる利点の1つとして、第2の間隔の間に窓が1で一定であることで、後で
図3から分かるように、遅延が少ないという利点を維持しつつ、音声表現の品質を向上させながら特許文献1に記載のような従来技術の窓の使用の複雑さを減少させることが可能になる。
【0032】
また、第1、第2および第3の間隔は、以下の複数の実施形態においてわかるように、上記の遅延を設定し、アルゴリズム的な遅延に丸めることができる第4の間隔(窓の最後の部分の0の数)の継続期間の関数として少なくとも計算されることが有利である。同様に、それぞれ増加および減少している立ち上がりと立ち下がりの両方の端は、特に第4の間隔の継続期間の関数として最適化することができる。第4の間隔(以降ではMzと表す)は、ブロックあたりのサンプルの数であるMの関数として、そしてもちろん所望の最大遅延の関数として自己表記される。
【0033】
複数の分析窓の連続は、上記の特許文献1に記載の特徴と同様な特徴を示す。特に、第1と第2の分析窓によってそれぞれ重み付けされている、同じ大きさの2M個のサンプルの2つのブロックにおいて、第2の窓の立ち上がりの端は、第1の窓を時間反転とした立ち下がりの端とは異なるようにすることができる。そのため、これらの端は、本質的に対称ではない。
【0034】
さらに、本発明の実装において、符号化時に、上記の特徴(立ち上がり、一定で1、立ち下がり、0で一定)を有している同一の複数の分析窓は、
図10に示しているように、M個のサンプルが重なっている2M個のサンプルの複数の連続しているブロックに連続して適用することができる。そのため、一般的に本発明の方法は、非対称であり、かつ、上記の4つの部分を有している複数の連続している窓を連続している複数の対のブロックへ適用するステップを有している。したがって、特許文献1のように、この場合でも、非対称の窓が適用されるときに、特定の遷移窓は設けられていない。
【0035】
特定の実施形態では、窓は、R
1で表される第1の間隔において、以下の型の関数w
1として変化する。
【0036】
【数5】
【0037】
ここで、C
1およびR
1は0より大きい定数である。
【0038】
例えば、最適化によって、15から30ms程度の遅延範囲では、C
1は3から5までの間にできることがわかる。特定の典型的な実施形態では、C
1=4.8425である。
【0039】
R
1で表される第1の間隔は、この典型的な実施形態では、
【0040】
【数6】
【0041】
で与えられる継続期間を有する。ここで、Mは、1ブロックの継続期間に相当する。また、表記
【0042】
【数7】
【0043】
は、x以下で、かつxに最も近い整数を表している。
【0044】
典型的な実施形態では、窓の第2の部分に関して、後者は、R
2で表される第3の間隔において、以下の型の関数w
3として変化することができる.
【0045】
【数8】
【0046】
ここで、C
1およびR
1は0より大きい定数である。
【0047】
実施された複数の最適化試験によれば、乗数C
2は0.85から1.05までの間にあることが好ましく、特定の典型的な実施形態では、C
2=0.9659である。
【0048】
R
2と表される第3の間隔は、この典型的な実施形態では、
【0049】
【数9】
【0050】
で与えられる継続期間を有する。ここでMは、1ブロックの継続期間に相当する。また、表記
【0051】
【数10】
【0052】
は、x以下で、かつxに最も近い整数を表している。
【0053】
この典型的な実施形態において、M
zと表される第4の間隔は、
【0054】
【数11】
【0055】
で与えられる継続期間を有するように最初に選択される。ここで、表記
【0056】
【数12】
【0057】
は、x以上で、かつxに最も近い整数を表しており、Mはブロックの継続期間に相当している。
【0058】
当然ながら、他の遅延に適用することが可能であり、このため、第4の間隔Mzとは異なる期間を実現することができる。以下で詳細に説明する複数の典型的な実施形態において与えられる表1は、さまざまな遅延の値についての、つまり、さまざまな第4の継続期間Mzについての、パラメータC
1とC
2および間隔R
1とR
2の値を示している。
【0059】
したがって、本方法は、窓の形態の最適化の予備ステップを有することが有利であって、この最適化は、上記の最適なパラメータC
1およびC
2とR
1およびR
2との少なくとも一方に到達するための少なくとも1つのコスト関数予測に基づいている。
【0060】
全体として、最適化が行われれば、特に良質な音声表現のためには、窓内の「1」の総数が0の数の約2倍になるようにすることが有利である。
【0061】
したがって、他の特定の典型的な実施形態においては、R
1で表される第1の間隔は、例えば、
【0062】
【数13】
【0063】
で与えられる継続期間を有することとなる。ここでMは、1ブロックの継続期間に相当し、M
zは第4の間隔の継続期間に相当している。
【0064】
この例では、第3の間隔R
2は、
【0065】
【数14】
【0066】
で与えられる継続期間となる。ここでMは、1ブロックの継続期間に相当し、M
zは第4の間隔の継続期間に相当している。
【0067】
以下で詳細に説明する典型的な複数の実施形態において与えられる表2は、間隔R
1とR
2がこのように設定されているときのさまざまな遅延の値について、つまり、さまざまな第4の継続期間Mzについて、パラメータC
1とC
2の複数の値を示している。
【0068】
したがって、本発明は、特許文献1に示されているタイプの0の選択された数を有する完全再構成を有する非対称窓の原理に基づいて、効果的な実装を保証しながら良好な音声表現を可能にする、最適化されている分析窓と合成窓の使用を提案する。
図3は、26msの遅延についての本発明の窓(参照番号INV)、特許文献の窓(参照番号AA)、および従来のサイン窓(SIN)の間の音声品質についての性能の比較を示している。参照番号のない他の点は、他の従来技術の技術に関連している。本発明は、特許文献1に記載の実装によって達成される遅延の改善と同等な遅延の改善をもたらしながら従来の窓(SIN)を使用して達成される音声品質と同様の音声品質を維持することを可能にしていることがわかる。そして、以下の記述において知覚品質が保持されており、評価基準として、変換の再構成の誤差は知覚については既定の知覚閾値について依然として無視できる。
【0069】
本発明は、上記の方法を実行することによって符号化されたデジタル信号を復号化する方法も目標としており、オーバーラップ型の変換のある復号化であって、合成時に、重み付け窓を複数の符号化されているサンプルの2つの連続しているブロックに適用するステップを有している。具体的には、後で分かるように、例えば、完全再構成特性を保証するために、合成時に、重み付け窓は、符号化時に使用された分析窓の時間反転と同じである。
【0070】
本発明は、符号化装置または復号化装置のメモリに記録されることを意図したコンピュータプログラムであって、装置のプロセッサによって実行されるときに上記の符号化方法または上記の復号化方法を実現するための複数の特定の命令を有しているコンピュータプログラムも目的にしている。特に、コンピュータプログラムは、符号化に特化している第1の部分と復号化に特化している第2の部分とを有しているコンピュータプログラムとすることができる。後述する
図7は、このようなプログラムの一般的なアルゴリズムの流れ図の例であって、
図8は、特定の実施形態において、本発明の符号化/復号化方法が使用する分析と合成の窓の事前構成用の複数の命令をこのプログラムが特に有している場合に、このプログラムのアルゴリズムが特に有している複数の予備ステップを示している。
【0071】
図9に模式的に示しているように、本発明は、本発明の符号化方法を実現するために、分析重み付け窓のデータを保存するための手段MEMと、そのデータを計算するための計手段μPとの少なくとも一方を有している信号符号化装置CODも目標にしている。同様に、
図9に模式的に示しているように、本発明は、本発明の復号化方法を実現するために、合成重み付け窓のデータを保存するための手段MEM’と、そのデータを計算するための計算用手段μPと少なくとも一方を有している信号復号化装置DECODも目標にしている。特に、符号化と復号化の両方について、(MEMとMEM’の少なくとも一方に保存されている)事前に初期化されている分析の窓と合成の窓の複数の値の少なくとも一方から開始することと、これらの値を実行中に(計算手段μPの実装によって)最適化することが可能である。
【0072】
本発明の他の利点と特徴とは、非限定的な実施形態の例として以下に示している詳細な説明と添付の図面とを読むことで明らかになろう。