特許第6109183号(P6109183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6109183-硬質金属組成物 図000002
  • 特許6109183-硬質金属組成物 図000003
  • 特許6109183-硬質金属組成物 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109183
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】硬質金属組成物
(51)【国際特許分類】
   C22C 29/08 20060101AFI20170327BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20170327BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20170327BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20170327BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   C22C29/08
   C22C33/02 103B
   B22F7/00 F
   B22F1/02 F
   B22F3/14 D
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-537629(P2014-537629)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公表番号】特表2015-501385(P2015-501385A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】EP2012071254
(87)【国際公開番号】WO2013060839
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】102011117042.5
(32)【優先日】2011年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507239651
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ゲアク
(72)【発明者】
【氏名】マークス ツムディック
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102010014267(DE,A1)
【文献】 特表2013−529136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 29/00〜29/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)溶融炭化タングステン(炭化タングステン(WC)と炭化二タングステン(W2C)との共晶混合物)の内核と炭化タングステンの外殻とを包含する硬質物質粒子並びに
b)Co、Ni、Feと、Co、Ni及びFeから選択される少なくとも1種の金属を包含する合金とから成る群から選択されるバインダー金属
を包含する組成物を焼結することを包含する構成部材の製造法であって、ここで、該焼結を、1250℃〜1400℃の温度範囲内で3〜15分間にわたって行う、製造法。
【請求項2】
前記硬質物質粒子が、該硬質物質粒子全体を基準として4〜6質量%の含有率の結合炭素を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記硬質物質粒子が、該硬質物質粒子全体を基準として4.3〜5.5質量%の含有率の結合炭素を有することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記硬質物質粒子の前記外殻の厚みが、平均粒径の0.05〜0.4倍であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記硬質物質粒子が、溶融炭化タングステン(炭化タングステン(WC)と炭化二タングステン(W2C)との共晶混合物)及び/又は溶融炭化タングステン(炭化タングステン(WC)と炭化二タングステン(W2C)との共晶混合物)と元素の周期律表の4B族、5B族及び6B族の群から選択される元素の少なくとも1種の更なる炭化物とを包含する合金より構成される内核、並びに炭化タングステンと元素の周期律表の4B族、5B族及び6B族の群から選択される元素の少なくとも1種の更なる炭化物とを包含する合金より構成される外殻を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記焼結を、1300〜1370℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記焼結を、3〜10分間にわたって行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記バインダー金属が、Co、Ni、Feを包含する合金であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記焼結が液相焼結であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記焼結を、10-3barを下回るガス圧で行うことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記焼結を、10-4barを下回るガス圧で行うことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記焼結を、50K/分を上回る加熱速度で、所望の焼結温度に達するまで加熱することによって行うことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
冷却を焼結プロセス後に、焼結温度から500℃までの温度範囲内で、100K/分を下回る冷却速度により行うことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
冷却を焼結プロセス後に、焼結温度から500℃までの温度範囲内で、80K/分を下回る冷却速度により行うことを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、該組成物の全質量を基準として、硬質物質粒子60〜95質量%及びバインダー金属5〜40質量%を有することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記焼結を、前記組成物に20〜80MPaの力を押しながら行うことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質物質粒子及びバインダー金属を有する組成物を焼結することを包含する構成部材の製造法、並びに係る方法によって得られる構成部材に関する。そのうえまた、本発明は、該構成部材を、強い腐食条件及び/又は研磨条件下で、好ましくは道路建設におけるたがねとして、ドリルビットの部材として又は摩耗部材として、例えば表面保護のためのプレートとして用いる使用に関する。
【0002】
溶融炭化タングステン(WSC)は、その極端な耐摩耗性に基づき、強い腐食条件及び/又は研磨条件に曝されている構成部材、融着された摩耗保護層又は油やガスの探査のためのドリルビットのために有利には用いられる材料である。溶融炭化タングステンの非常に優れた耐摩耗性は、炭化タングステン(WC)と炭化二タングステン(W2C)とから成るラメラが交互に構成されている、その特別な微細構造に基づく。溶融炭化タングステンの加工は、通常、銅系はんだの溶浸又は自己流動性ニッケル含有合金による融着によって行われる。溶浸によるか又は融着による加工に基づき、金属系結合層の含有率は、通常20〜40質量%である。それと比較して、市販のWC−Co又はWC−Niの硬質金属のバインダー含有率(バインダー=Co又はNi)は3〜15%で明らかに低い。硬質金属とは、本質的に硬質物質、例えば炭化タングステンといった炭化物、並びに、例えばコバルト又はニッケルといった金属バインダーを包含する焼結された構成部材を意味し得る。WSCの摩耗特性は、WCのそれより明らかに優っているので、それゆえ、溶融炭化タングステンも、<20%のずっと低いバインダー含有率を有する硬質金属用に工業的に利用可能にすることが求められている。
【0003】
硬質金属中で溶融炭化タングステンを使うことができない理由は、本質的に、
a)溶融炭化タングステン粒子が、固体状態でCo中に拡散することによって、並びに焼結の間に生じ、かつ本質的にコバルト及び/又はニッケルから成る液相中に拡散することによって溶解され、
b)好ましい羽毛状構造(Federstruktur)が、焼結プロセスにおいて熱的/化学的に変形し、かつ
c)構成部材が、気孔不含に焼結されることができない
という点から説明することができる。
【0004】
DE19924683C2には、丸軸たがねの頭部における溶融炭化タングステンの使用が記載される。たがね頭部の製造は、DE19924683C2においては、溶浸によって行われ、焼結によっては行われない。ここで、本発明の課題は、同時に金属バインダーを使用しながら、完全な状態のままの羽毛状構造を有する溶融炭化タングステンを包含する気孔不含の硬質金属の製造法を提供することであった。意想外にも、溶融炭化タングステンを、それが化学的に安定しており、かつ焼結プロセスが特別な手法で行われる限りにおいて、硬質金属用材料として用いることができるとわかった。意想外にも、溶融炭化タングステンが、溶融炭化タングステン(WSC)の核と炭化タングステン(WC)の殻とから成るmacroline−WSCに変わることで、焼結された硬質金属を製造するのに十分な安定性が提供されるとわかった。WCの殻は、適切な焼結条件において、金属溶融体に対して十分な保護を提供する。
【0005】
本発明の対象は、第一の実施形態においては、
a)溶融炭化タングステンの内核と炭化タングステンの外殻とを包含する硬質物質粒子並びに
b)Co、Ni、Feと、Co、Ni及びFeから選択される少なくとも1種の金属を包含する合金とから成る群から選択されるバインダー金属
を包含する組成物を焼結することを包含する構成部材の製造法であって、ここで、焼結は、1250℃〜1400℃の温度範囲内で3〜15分間にわたって行う。焼結は、好ましくは10-2barを下回るガス圧で行う。
【0006】
被焼結組成物の本質的な構成成分は、溶融炭化タングステン(WSC)の内核と炭化タングステン(WC)の外殻とを包含する硬質物質である。本発明の有利な実施形態においては、硬質物質粒子は、溶融炭化タングステン及び/又は溶融炭化タングステンと元素の周期律表の4B族、5B族及び6B族の群から選択される元素の少なくとも1種の更なる炭化物とを包含する合金より構成される内核、並びに炭化タングステン及び/又は元素の周期律表の4B族、5B族及び6B族の群から選択される元素の少なくとも1種の更なる炭化物を包含する合金より構成される外殻を有する。硬質粒子の内核又は外殻が、溶融炭化タングステンと、元素の周期律表の4B族、5B族及び6B族の群から選択される元素の更なる炭化物、すなわち、元素Ti、Zr、Hf、V、Mo、Nb、Ta及びCrの少なくとも1種の炭化物との合金から成る場合、更なる炭化物の全含有率は、硬質物質を基準として10質量%までであってよい。
【0007】
本発明により使用される硬質物質粒子(以下では、"macroline WSC"と略記する)は、特に、溶融炭化タングステン粒子若しくは当該粒子と元素Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Moの少なくとも1種の炭化物との合金や炭化タングステンの殻との合金である。
【0008】
溶融炭化タングステン(WSC)は、WCとW2Cとの混合物であり、これは、殊にWCとW2Cとの共晶組織である。WSCは、WCと炭化二タングステン(W2C)との共晶混合物であり、ここで、炭素の平均質量割合は、一般に3.8〜4.2質量%の間にある。これは、W2C73〜80質量%及びWC20〜27質量%の相分布に相当する。WSCは、非常にきめ細かい粒子の結晶組織を有し、これは、羽毛状構造とも頻繁に記載され、かつ溶融炭化物の急冷によって得られる。粒子の殻は、炭化タングステンWCとも呼ばれる一炭化タングステンから成る。
【0009】
WCの殻を有する特に有利な溶融炭化タングステンが、Macroline 溶融炭化タングステンである(MWC、H.C.Starck GmbH社のAmperweld(R) 粉末系)。
【0010】
本発明により使用される硬質物質、すなわち、macroline WSCは、WSCを浸炭によって所望の深さまでWCに変えることによって得ることができ、かつ一般的に摩耗保護層及び耐摩耗性構成部材の製造のために用いることができる。
【0011】
本発明により使用されるmacroline WSCは、殊に、WC/WSC複合体の核中でのWSCの優れた靭性及び硬さが、それが通常の仕方で加工される場合にも、すなわち、液状マトリックス材料と接触させられる場合にも、引き続き保持されることを特徴とする。
【0012】
本発明により使用される硬質物質は、好ましくは、4〜6質量%、殊に有利には4.5〜5.5質量%の含有率の結合炭素を有する。遊離炭素の含有率は、0.1質量%を超えるべきではない。
【0013】
結合炭素の含有率が4質量%未満である場合、十分に緻密なWCの殻は形成されないことから、WSCと比較して耐化学性の上昇は観察されない。結合炭素の含有率が、純粋なWCに相当する6.13質量%の基準値に近づくと、WSCの核は、純粋なWCと比べて硬さの上昇がもはや達成されなくなるほど小さくなる。
【0014】
本発明により使用される硬質物質粉末の好ましい特性は、少ない割合のWC粒子を有する場合にも、すなわち、全ての粉末粒子が、WSCのコアとWCの殻とから構成されていない場合にも引き続き保持される。それゆえ、係る炭化タングステン粉末も同様に本発明によれば用いることが可能である。
【0015】
つまり、本発明によれば、炭化タングステン殻を有する、炭化タングステン粒子と溶融炭化タングステン粒子とから成る粉末混合物も用いることができる。
【0016】
しかしながら、好ましくは、粉末粒子の少なくとも70%、殊に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%が、WSCの核とWCの殻とを有する。
【0017】
平均粒径は、幅広い範囲内で変化してよく、かつ、殊に計画された使用に向けられる。
【0018】
ASTM B 214に準拠したロータップ式篩分析により測定された粒径は、一般的に3000μmまでであってよい。好ましくは、ASTM B 214に準拠したロータップ式篩分析により測定された、3μm〜1500μm、5μm〜1000μm、好ましくは5μm〜500μm、有利には10μm〜300μm又は10〜180μmの粒径画分を使用することができる。
【0019】
平均粒径の調節は、例えば、macroline WSCを製造するための出発材料として特定の平均粒径を有するWSC粉末の選択によって行うことができる。しかし、例えば、すでに製造されたmacroline WSCから特定の細粒分を混合するか又は、例えば篩分け若しくは分級によって分離することも可能である。
【0020】
本発明により使用される硬質物質粉末においては、WSC核は、一炭化タングステンの緻密な殻で取り囲まれている。エッチング材料上で光学顕微鏡によって測定された殻の厚みは、好ましくは、ASTM B 214に準拠したロータップ式篩分析により測定された平均粒径の0.05〜0.4倍、殊に有利には0.05〜0.15倍である。
【0021】
Macroline WSCは、際立った硬さを有する。好ましくは、ビッカース硬さは、>2000HV0.1、殊に有利には>2500HV0.1である。
【0022】
粒子の形態の調節は、例えば、適したWSC粉末の使用によって行うことができる。
【0023】
それに従って、本発明により使用される硬質物質粉末は、種々の形態、例えば角がとがって粉砕されたか若しくは球状の形態を有する。球状の形態は、基本的に耐摩耗性に関する利点を提供するが、しかし、不規則な形態を有する粉末より製造が煩雑である。異なる形態の粉末の混合物も用いることができる。
【0024】
本発明により使用される硬質物質粉末は、本発明による炭化タングステン(macroline WSC)の製造法によって得られることができ、ここで、溶融炭化タングステン粉末は、炭素源の存在下で1300℃〜2000℃、好ましくは1400℃〜1700℃の温度に加熱される。
【0025】
方法は、不活性ガスの存在下、反応ガスの存在下又は真空中で実施してよい。好ましくは、水素の存在下で作業される。
【0026】
反応ガスとして適しているのは、気体の炭素源、例えば一酸化炭素、CO/CO2混合物、炭化水素又は炭化水素混合物、例えば天然ガスである。
【0027】
炭素源として、気体及び固体の炭素源が考慮に入れられる。固体の炭素源として、例えばカーボンブラック又はグラファイトを用いてよい。当然の事ながら、様々な気体及び/又は固体の炭素源の混合物を用いることも可能である。
【0028】
炭素源の存在下でのWSCの温度処理によって、表面上でWSCからWCへの変換が起こる。つまり、WSCの周りに緻密なWC層が形成される。
【0029】
ここで、温度、反応時間及び添加された炭素源の量は、WCの殻が所望の厚さで形成されるように選択される。ここで、留意されるべきことは、粒子の内部にWSCが引き続き保持されることである。遵守されるべき条件は、本質的に、用いられたWSC粉末の粒径及び粒形によって決められ、かつ簡単な一連の実験を手がかりにして決められることができる。炭素含有率があまりに高く調節されると、これは反応に必要とされる時間及び温度を増大させ、かつ羽毛状組織の割合、すなわち、WSCの割合を不要に減らす。好ましいと判明したのは、炭素源を、反応混合物中の全炭素含有率、すなわち、WSCの炭素含有率と炭素源との合計が4〜6質量%、好ましくは4.3〜5.5質量%となる量で加えることである。
【0030】
大きく異なる粒径の粉末粒子とのWSCの反応においては、より微細な粒分が、その粒径に関して、粗い粒子より強く浸炭させられる可能性がある。これは、なかでも<45μmの高い微細成分を有する粉末に当てはまり、かつ微細成分の事前の分離及び様々な粉末画分の別個の反応によって妨げることができる。反応時間は、たいてい1〜10時間であり、好ましくは1.5〜7時間である。
【0031】
本発明による構成部材の製造のために、例えば、所望の粒径に篩分けされている、粉砕された若しくは球状のWSCを出発材料として用いてよい。この材料は、引き続き炭素源、例えばカーボンブラックと、所望の量で強力に混ぜられ、熱処理にかけられ、ここで、エッジが浸炭させられる。熱処理のために、通常用いられるトンネル炉、又は、それに匹敵する、例えば1550℃〜1900℃の間の温度範囲内で水素雰囲気若しくは保護ガス下で運転され得るユニットが適している。WSCとカーボンブラックとの混合物は、例えばグラファイトボートに入れられる。反応においては、炭素が、WSC中に存在するW2Cと反応し、かつ、これは、すでに存在しているWCとはもはや区別されないWCに変わる。これによって生じるWCの縁は、炭素の自然な拡散バリアを形成することから、所望の浸炭深さが、パラメータの時間及び温度により制御されることができる。
【0032】
構成部材を製造するための本発明による方法に従った被焼結組成物の更なる本質的な構成成分は、バインダー金属である。これらのバインダー金属は、コバルト、ニッケル及び鉄、並びにコバルト、ニッケル及び鉄から選択された少なくとも1種の金属を包含する合金から成る群から選択されている。
【0033】
特に有利なバインダー金属合金は、コバルト及び好ましくは25質量%までのニッケル含有率を有するコバルト−ニッケル合金を包含する。
【0034】
硬質物質粒子及びバインダー金属を包含する組成物の焼結は、1250℃〜1400℃の温度範囲内で3〜15分間にわたって行われる。ここで、焼結は、好ましくは低下させられたガス圧で行われ、これは、殊に10-2barを下回る。特に有利な実施形態においては、焼結は1300℃〜1370℃の温度で行われる。
【0035】
好ましいと明らかになったのは、焼結期間を可能な限り短く保つことである。有利な実施形態においては、焼結は、焼結温度で3〜10分間にわたって行われる。
【0036】
焼結は、本発明によれば、有利には液相焼結として行われる。
【0037】
特に良好な結果は、焼結が10-3barを下回る、さらに有利には10-4barを下回るガス圧で行われる場合に得ることができる。本発明による方法の特別な実施形態においては、所望の焼結温度までの組成物の加熱速度は、50K/分を上回る、好ましくは80K/分を上回る、殊に90〜120K/分の間の加熱速度で行われる。硬質物質粒子の際立った羽毛状構造を得るために、殊に好ましいと明らかになったのは、冷却を焼結プロセス後に、殊に焼結温度から500℃までの温度範囲内で、100K/分を下回る、好ましくは80K/分を下回る、殊に30K/分〜70K/分の範囲内の冷却速度により実施することである。
【0038】
殊に本質的な気孔不含の構成部材を得ることに関して、好ましいと明らかになったのは、組成物の焼結を、圧力を使って実施することである。これに関して、被焼結組成物に20〜80MPa、好ましくは30〜50MPaの力を押すことが特に適している。組成物に付加的な力を押しながら行う焼結は、減少した数の気孔を有し、殊に本質的に気孔不含である構成部材を提供する。
【0039】
被焼結組成物は、有利な実施形態においては、60〜95質量%、殊に70〜90質量%の硬質物質粒子を有し、ここで、質量値は、組成物の全質量を基準にしている。
【0040】
更なる有利な実施形態においては、組成物は、5〜40質量%、殊に10〜30質量%のバインダー金属を有し、ここで、質量値は、組成物の全質量を基準にしている。
【0041】
本発明の更なる対象は、本発明による方法に従って得られる構成部材である。
【0042】
有利な実施形態においては、構成部材は、溶融炭化タングステン粒子の内部に羽毛状構造を有する。
【0043】
殊に、本発明による構成部材は、溶融炭化タングステン粒子の内部に、炭化タングステンと炭化二タングステン(W2C)とから成るラメラが交互に構成される微細構造を有していることがわかった。
【0044】
本発明による構成部材は、意想外にも良好な摩耗特性を示す。
【0045】
それゆえ、本発明の更なる対象は、本発明による構成部材を、強い腐食条件及び/又は研磨条件下で、好ましくは道路建設におけるたがねとして、ドリルビットの部材として又は摩耗部材として、例えば表面保護のためのプレートとして用いる使用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】WCとW2Cとから成る微細なラメラ構造を有するWSC粒子を特徴としている、溶融炭化タングステン(WSC)を有する硬質金属の組織を示す図
図2図1に示される硬質金属と比較して非常に粗い硬質金属を示す図
図3】摩耗試験(ASTM B611−85(2005))の結果を示す図
【0047】

例1(図3で"Co1"と表示)
溶融炭化タングステン(WSC)[粒径:150μm]76質量%及び炭化タングステン(WC)[粒径:6μm]17質量%を、コバルト15質量と一緒に1370℃で3分間焼結する。
【0048】
焼結は、真空中(<10-3mbar)かつ45MPaの押圧にて行う。
【0049】
例2(図3で"Co2"と表示)
WSC[粒径:300μm]72質量%、WC[粒径:6μm]18質量%及びコバルト10質量%を、1320℃で3分間、真空中(<10-3mbar)かつ45MPaの押圧にて焼結する。
【0050】
例3(図3で"Co3"と表示)
WSC[粒径:150μm]68質量%、WC[粒径:6μm]17質量%及びコバルト15質量%を、1330℃で3分間、真空中(<10-3mbar)かつ45MPaの押圧にて焼結する。
【0051】
比較例(図2を参照されたい):
溶融炭化タングステン92質量%を、コバルト8質量%と一緒に1420℃で45分間、真空中で焼結する。
【0052】
構造
溶融炭化タングステン(WSC)を有する硬質金属の組織は、WCとW2Cとから成る微細なラメラ構造を有するWSC粒子によって特徴付けられる(図1を参照されたい)。図2は、それと比較して非常に粗い従来の硬質金属を示す。
【0053】
WSCの摩耗特性は、ラメラの微細な構造に大いに依存しているので(粗くなった組織は、摩耗特性の明らかな悪化を示す)、WSC含有硬質金属の高密度化は、微細な羽毛状構造を得るために短時間焼結法により行う。さらに、溶浸法から焼結法に変えることによってバインダー含有率を5%〜40%の間で制御して調節することができる。
【0054】
摩耗特性
図3には、摩耗試験(ASTM B611−85(2005))の結果を示している。目立っているのは、特に少ない体積損失である。これは、ドリリング及びマイニングの領域で通常用いられる非常に粗い標準的な硬質金属の場合、300mm3を超える(ASTM B611−85に準拠)。
図1
図2
図3