(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の針状電極は、コロナ放電により帯電可能な前記非分極樹脂フィルムの帯電域が、隣接する針状電極による前記非分極樹脂フィルムの帯電域と少なくとも一部が重複するよう、配置間隔が設定されている請求項9に記載の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本明細書で用いられる用語を説明する。
本明細書中、「異方性」なる用語は、フィルムの面内異方性を意味することを意図して用いられる。すなわち、例えば、「異方性が無い」とは、フィルムの面内異方性が無いことを意味するものであって、フィルムの膜厚方向の異方性が無いことを意味するものではない。
本明細書中、「タッチ位置」の「検出」は、タッチ位置の決定を意味し、一方、「タッチ圧」の「検出」は、押圧の有無、速度、大きさ(強弱)、これらの変化、或いはこれらの組み合わせの決定を意味する。
本明細書中、用語「タッチ」は、触れること、触れられること、押すこと、押されること、及び接触すること、を包含する。
【0012】
1.分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム
本発明の「分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」は、表面電荷フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムであることができる。ここで、「表面電荷フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」とは、表面に電荷を付与されたフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム、すなわち、エレクトレットである。
また、本発明の「分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」は、好ましくは、圧電性フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムである。
また、本発明の「分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」は、好ましくは、強誘電性フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムである。ここで、「強誘電性」とは、外部に電場がなくても分極を維持できる性質を意味する。
【0013】
本発明において、「フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」は、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体から形成された樹脂フィルムである。
当該「フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」は、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体に加えて、樹脂フィルムに通常用いられる添加剤を含有してもよい。
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、本発明に関する性質が著しく損なわれない限りにおいて、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレン以外のモノマーに由来する繰り返し単位を含有してもよい。通常、このような繰り返し単位の含有率は、10モル%以下である。このようなモノマーの例としては、このようなモノマーは、フッ化ビニリデンモノマー、テトラフルオロエチレンモノマーと共重合可能なものである限り限定されないが、その例としては、
(1)フルオロモノマー(例、ビニルフルオリド(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、1−クロロ−1−フルオロ−エチレン(1,1−CFE)、1−クロロ−2−フルオロ−エチレン(1,2−CFE)、1−クロロ−2,2−ジフルオロエチレン(CDFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロビニルモノマー、1,1,2−トリフルオロブテン−4−ブロモ−1−ブテン、1,1,2−トリフルオロブテン−4−シラン−1−ブテン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロアクリラート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリラート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリラート);並びに
(2)炭化水素系モノマー(例、エチレン、プロピレン、無水マレイン酸、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、酢酸ビニル)
が挙げられる。
【0014】
本発明の「分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」の厚さは、通常1〜200μmであり、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜50μmである。
透明性の観点では、当該厚さは、より薄いことが好ましく、圧電性が重視される場合は、より厚いほうが好ましい。これらのことに基づき、本発明の「分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム」の厚さは、その用途等に応じて適宜設定できる。
【0015】
本発明の、分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムは、後記の欠陥測定方法で測定される点状欠陥の数が2,000個/m
2以下であり、好ましくは1,560個以下、より好ましくは1,500個/m
2以下、更に好ましくは560個以下、より更に好ましくは240個以下、特に好ましくは50個以下である。
これにより、本発明の、分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムは、光学フィルムとして使用される際の、ディスプレイ素子によって作り出された映像又は画像の質の劣化が極めて低減されている。
<欠陥測定方法>
外観検査機を使用し、LED光源(定電流駆動;連続点灯方式;光量50%(光量は1〜100%までほぼ直線的に調光可能であり、100%出力で60,000Lux))に対して45度の角度で欠陥を検出できるようにCCDカメラを設置し、その下を20m/分の速さで走査(スキャン)しながら、幅方向(走査の進行方向に対して直角の方向) 300mm、流れ方向(走査の進行方向) 150mmの長方形の範囲で、フィルムの欠陥を読み取る。
より詳細には、CCDカメラ(当該CCDカメラは、長さ596mmの帯状の実視野、0.040mm/scanの走査方向分解能、及び0.088mm/pixelの実視野幅方向分解能を有する。)、スリット、及び白色LED光源を備える外観検査機を使用し、前記スリットを通した前記白色LED光源の光の進行方向中に、前記CCDカメラを、当該光を受光できるように、前記実視野の長さ方向と前記スリットの方向とを一致させて配置し、前記スリットと前記CCDカメラの間を、検査されるフィルムをその縦方向に20m/分の速さで移動させながら、前記CCDカメラにより前記白色LED光源の光を前記検査されるフィルムを通して受光することによって、当該フィルムの幅方向(走査の進行方向に対して直角の方向) 300mm、及び流れ方向(走査の進行方向) 150mmの長方形の範囲の範囲を走査する。このとき、検査されるフィルムは、前記白色LED光源の光の進行方向が、当該フィルム平面に対する垂直方向から当該フィルムの縦方向に、45°傾くように、配置される。当該フィルムの縦方向は、前記流れ方向(走査の進行方向)に一致する。
欠陥として、先ず、明面積が1.5266mm
2以下で、かつ暗面積が1.416mm
2以下であり、かつ明面積と暗面積の合計(以下、これを「総面積」と称する。)が2.3987mm
2以下の部分を選定する。
明面積は、地合(すなわち、点状欠陥及びキズ等の欠陥が無い部分)よりも明るい部分(明部)の面積である。
暗面積は、地合よりも暗い部分(暗部)の面積である。
ここで、CCDカメラの映像レベルを波形で確認し、地合が明度5のグレーになるように調光制御を行い、これをゼロとする。
明部は、明度5から明度10(真っ白)の範囲を127分割して、閾値を65/127に設定した場合に、当該閾値を超える(すなわち、より明るい)部分である。
暗部は、明度5から明度0(真っ黒)の範囲を127分割して、閾値を100/127に設定した場合に、当該閾値を超える(すなわち、より暗い)部分である。
次に、これらの欠陥の中に含まれる、コロナ処理以外の原因の欠陥(例、擦り傷)を除去する為に、走査の進行方向に沿った2辺を有するように、欠陥の外接方形を設定し、外接幅が2.88mm以下であり、外接長さが0.43〜2.30mm以下であり、縦横比率が−39〜+27であり、外接方形における占有面積比率が4,000〜6,950であり、かつ面積比率が−3,100〜+5,200である欠陥のみを点状欠陥として、その個数を外観検査機により自動的に計数する。
外観検査機としては、MaxEye.Impact(商品名、ヒューテック社)、又は前記欠陥測定方法においてこれと同様の測定結果が得られる外観検査機を用いる。
ここで、「外接幅」、「外接長さ」、「縦横比率」、「占有面積比率」及び「面積比率」の意味は次の通りである。
「外接幅」は、欠陥の、走査(スキャン)の流れ方向に対する直角方向(横方向)のサイズ、すなわち欠陥の外接方形の幅として、定義される。
「外接長さ」は、欠陥の、走査(スキャン)の流れ方向(縦方向)のサイズ、すなわち欠陥の外接方形の長さとして、定義される。
「縦横比率」は、欠陥の外接長さと外接幅の比率であり、本発明においては、外接長さと外接幅のうち大きいほうの値を小さいほうの値で除し、かつ外接長さのほうが大きい場合は商に正(+)の符号を付し、一方、外接幅のほうが大きい場合は商に負(マイナス)の符号を付した値として、定義される。
「占有面積比率」は、欠陥の外接方形に対する総面積(明部と暗部の合計面積)の比率として、定義される。
「面積比率」は、欠陥判定部分における明面積と暗面積の比率であり、本発明においては、明面積から暗面積を減じた値を総面積で除した値として、定義される。従って、面積比率の値が正数の場合、欠陥は明欠陥であり、一方、負数の場合、欠陥は暗欠陥である。
【0016】
MaxEye.Impact(商品名、ヒューテック社)を用いた場合、具体的には、次のようにパラメータを設定して測定する。
<明るさ>
[LP]
最大値:127
最小値: 65
[DP]
最大値:127
最小値:100
<明面積>
[LA]
最大値:1.5266
<暗面積>
[DA]
最大値:1.4161
<総面積>
最大値:2.3987
<幅>
[W]
最大値:2.88
<長さ>
[L]
最大値:2.30
最小値:0.43
【0017】
そして、測定結果が以下の条件(1)〜(10)を全て満たす部分が、点状欠陥として計数される。
(1)65<LP
(2)100<DP
(3)LA≦1.5266
(4)DA≦1.4161
(5)A≦2.3987
(6)W<2.88
(7)0.43<L<2.30
(8)−39<R1<+27
(ここで、W>Lのとき、R1=W/L×(−1)、
W<Lのとき、R1=L/W)
(9)4,000≦R2≦6,950
(ここで、R2=A/(W×L)×10,000)
(10)−3,100≦R3≦5,200
(ここで、R3=(LA−DA)/A×10,000)
【0018】
本発明の分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムは、後記で説明する分極化樹脂フィルムの製造方法によって製造することができる。
【0019】
2.分極化樹脂フィルムの製造方法
本発明の分極化樹脂フィルム(特に、分極化強誘電体樹脂フィルム)の製造方法は、
グランド電極上に直接載置された非分極樹脂フィルムを、前記グランド電極との間に印加電圧を加えた第1電極を用いたコロナ処理によって帯電させて、前記非分極樹脂フィルムを前記グランド電極に、静電気によって貼り付ける工程A、及び
前記グランド電極に貼り付いた非分極樹脂フィルムを、前記グランド電極との間に印加電圧を加えた第2電極を用いたコロナ処理によって分極化させる工程B
を含む。
【0020】
2.1.工程A
工程Aでは、グランド電極上に直接載置された非分極樹脂フィルムを、前記グランド電極との間に印加電圧を加えた第1電極を用いたコロナ処理によって帯電させて、前記非分極樹脂フィルムを前記グランド電極に、静電気によって貼り付ける。
【0021】
非分極樹脂フィルムとしては、例えば、奇数鎖ナイロンフィルム及びポリフッ化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。
奇数鎖ナイロンフィルムの例としては、ナイロン11等が挙げられる。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の例としては、
延伸処理してβ型結晶構造(I型結晶構造)を採るポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム;及び
フッ化ビニリデンを50モル%以上(好ましくは70モル%以上)含有する、フッ化ビニリデンとフッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体樹脂フィルム等が挙げられる。
フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーは、例えば、三フッ化エチレン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレン、及びフッ化ビニル等からなる群より選択される1種以上である。
本発明に用いられる非分極樹脂フィルムとしては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましく、特に、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体が好ましい。
【0022】
工程Aで用いられる樹脂フィルムは、例えば、ポリマー溶液を用いたキャスティング法、熱プレス法、溶融押出法等の公知の方法で製造できる。工程Aに用いられる樹脂フィルムは、好ましくは、延伸されていないものである。また、好ましくは、本発明の製造方法においても、非分極樹脂フィルムは、延伸しない。これにより、本発明の製造方法によって、表面のキズが軽減され、かつ、実質的に異方性が無いフィルムを得ることができる。
【0023】
工程Aに用いられる「非分極樹脂フィルム」としては、製膜後、熱処理されたものであってもよい。
熱処理の方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムを2枚の金属板で挟み、当該金属板を加熱すること、樹脂フィルムのロールを恒温槽中で加熱すること、又はロール・ツー・ロール方式での樹脂フィルムの生産において、金属ロールを加熱し、樹脂フィルムを、当該加熱した金属ロールに接触させることにより行うことができる。前記グランド電極は、この金属板を兼ねることができる。
この熱処理により、結晶化度を向上させて、圧電性を向上させることができる。当該熱処理の温度は、例えば、樹脂フィルムを構成する重合体の融点−100℃〜樹脂フィルムを構成する重合体の融点+50℃である。ここで、樹脂フィルムを構成する重合体の融点以上の温度に加熱する場合は、加熱後、緩やかに冷却することが好ましく、樹脂フィルムを構成する重合体の融点未満の温度に加熱する場合は、加熱を維持することが好ましい。
また、この熱処理により、非分極樹脂フィルムの残留応力を下げ、加熱による収縮等の変形を減らすことができる。この場合の加熱温度は、融点未満である。
また、非分極樹脂フィルムの透明性を維持する観点からは、融点未満で熱処理することが好ましい。
熱処理の時間は非分極樹脂フィルムの量(体積、重量)にもよるが、通常、240時間以下である。短時間の加熱は、例えば、加熱したロールに接触させることで、実施できる。
熱処理後、所望により、工程Aの前に非分極樹脂フィルムを所定温度まで冷却する。当該温度は、好ましくは、0℃〜50℃であり、冷却速度は、好ましくは、15℃/分〜0.5℃/分である。
【0024】
工程Aで用いられる非分極樹脂フィルムの厚さは、得ようとする分極化樹脂フィルムの厚さと同様の厚さを選択すればよい。
【0025】
コロナ放電には、負コロナ及び正コロナのいずれを用いてもよいが、非分極樹脂フィルムの帯電しやすさの観点から負コロナを用いることが望ましい。
当該帯電によって、前記非分極樹脂フィルムを前記グランド電極に、静電気によって貼り付ける。
当該帯電によって、前記非分極樹脂フィルムを前記グランド電極に、その間の空気を押し出すように静電気によって貼り付けることが好ましい。
非分極樹脂フィルムと前記グランド電極との間の空気を押し出すことは、例えば、非分極樹脂フィルムの一端から、反対側の端へと連続的にコロナ処理することによって行うことができる。すなわち、これにより、非分極樹脂フィルムがその端から連続的に前記グランド電極に張り付つくので、空気が押し出される。
【0026】
従って、工程Aは、好ましくは、前記グランド電極上に直接載置された前記非分極樹脂フィルムを、前記第1電極に対して相対的に移動させながら実施される。当該移動の速度を工程Aの処理速度と称する場合がある。当該移動は、例えば、前記非分極樹脂フィルムのコロナ処理を受ける位置が変わるように、前記グランド電極及び/又は前記第1電極を移動させることによって実施できる。
【0027】
第1電極は、例えば、針状電極又は線状電極であることができるが、好ましくは針状電極である。
【0028】
第1電極が、針状電極である場合、前記第1電極は、当該移動方向に対して垂直方向に配置された複数の針状電極である。当該複数の針状電極は、当該移動方法において概ね垂直方向に配置されていればよく、また、一列又は複数の列に配置されることができる。
当該複数の針状電極は、非分極樹脂フィルムを隙間無く帯電できるように配置されていることが好ましい。すなわち、複数の針状電極が一定の距離内に配置されていることが好ましい。このような距離は、針状電極の形状、針状電極と非分極樹脂フィルムとの距離、及び針状電極に印可される電圧等によって異なるが、具体的には例えば、1.5cm未満、1.2cm未満等である。電圧が高い場合、当該距離を大きくできる。
【0029】
前記第1電極がこのような電極であることにより、非分極樹脂フィルムの一端から、反対側の端へと連続的なコロナ処理において、空気が押し出され易くなり、空気の残存を高度に抑制できる。このことは、非分極樹脂フィルムのグランド電極に貼り付いた部分の端の形状が一直線ではないことによる空気の押し出され易さ(空気の逃げやすさ)に基づくと推測されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
工程Aにおけるコロナ処理の条件としては、非分極樹脂フィルムの帯電に適した条件が設定される。
後記工程Bでもコロナ処理が行われるが、工程Aでは、工程Bに比べて弱い条件でコロナ処理が行われる。具体的には、例えば、帯電について工程Aのコロナ処理(帯電処理)と工程Bのコロナ処理(分極処理)を比べると、処理後のフィルムの表面電位は工程A(帯電処理)<工程B(分極処理)である。例えば、電極から対象物(フィルム)の距離が同じ場合には、印加電圧は工程A(帯電処理)<工程B(分極処理)となる。また、電極から対象物(フィルム)への印加電圧が同じ場合、電極から対象物(フィルム)の距離は工程A(帯電処理)>工程B(分極処理)となる。
【0031】
この条件が緩やか過ぎると、帯電が不十分になり、非分極樹脂フィルムと前記グランド電極との間の空気が残存して、最終的に得られる分極化樹脂フィルムに点状欠陥が生じる場合がある。一方、この条件が厳しすぎると、非分極樹脂フィルムにコロナ処理による欠陥が生じ、その結果、最終的に得られる分極化樹脂フィルムに点状欠陥が残る場合がある。
【0032】
このようなコロナ処理の条件の要素としては、例えば、グランド電極との間に第1電極に印加される電圧、第1電極と非分極樹脂フィルムとの間の距離、及び工程Aの処理速度が挙げられる。
これらの要素のうち、ある要素において厳しい条件を選択した場合、総合的に適当なコロナ処理の条件にするため、他の要素において緩やかな条件を選択し得る。
【0033】
前記グランド電極との間に第1電極に印加される電圧が強いほど、工程Aにおけるコロナ処理の条件は厳しくなる。当該電圧は、具体的には、例えば、−5〜−15kVである。
【0034】
第1電極と非分極樹脂フィルムの間の距離は、第1電極とグランド電極との間の距離と実質的に同じであり、これらの距離が短いほど、工程Aにおけるコロナ処理の条件は厳しくなる。当該距離は、具体的には、例えば、1mm〜50mm、5〜15mmである。
【0035】
工程Aの処理速度が遅いほど、工程Aにおけるコロナ処理の条件は厳しくなる。工程Aの処理速度としては、具体的には、例えば、10〜500cm/分が選択される。当該速度は、第1電極の形状等によって異なる。例えば、第1電極が線状電極である場合、その数が多いほど当該速度を高くできる。
【0036】
2.2.工程B
工程Bでは、前記グランド電極に貼り付いた非分極樹脂フィルムを、前記グランド電極との間に印加電圧を加えた第2電極を用いたコロナ処理によって分極化させる。
【0037】
コロナ放電には、負コロナ及び正コロナのいずれを用いてもよいが、非分極樹脂フィルムの分極しやすさの観点から負コロナを用いることが望ましい。
【0038】
工程Bは、前記工程Aによって前記グランド電極に非分極樹脂フィルムが貼り付いている間に実施される。
【0039】
工程Bは、好ましくは、前記グランド電極上に直接載置された前記非分極樹脂フィルムを、前記第2電極に対して相対的に移動させながら実施される。当該移動の速度を工程Bの処理速度と称する場合がある。当該移動は、例えば、前記非分極樹脂フィルムのコロナ処理を受ける位置が変わるように、前記グランド電極及び/又は前記第2電極を移動させることによって実施できる。
前記工程Aにおいて、非分極樹脂フィルムの一端から、反対側の端へと連続的なコロナ処理が実施される場合、前記工程Aのコロナ処理が、反対側の端へ達する前に、工程Bのコロナ処理を前記一端から開始することができる。
【0040】
第2電極は、例えば、針状電極又は線状電極であることができる。
【0041】
第2電極が、線状電極である場合、当該線状電極は、前記非分極樹脂フィルムの移動方向に対して垂直方向に配置される。第2電極の数は、1個であってもよく複数個(例、2個)であってもよい。比較的低い電圧で非分極樹脂フィルムの分極を完全に行う観点からは、当該線状電極の数は、複数個であることが好ましく、具体的には、例えば2個が好ましい。
比較的低い電圧で非分極樹脂フィルムの分極を行うことにより、高い電圧に起因するフィルムの点状欠陥の発生を軽減できる。
第2電極が、針状電極である場合、前記第2電極は、当該移動方向に対して垂直方向に配置された複数の針状電極である。当該複数の針状電極は、当該移動方法において概ね垂直方向に配置されていればよく、また、一列又は複数の列に(言い換えると、1次元または2次元に)配置されることができる。
当該複数の針状電極は、非分極樹脂フィルムを隙間無く分極できるように配置されていることが好ましい。すなわち、複数の針状電極が一定の距離内に配置されていることが好ましい。このような距離は、針状電極の形状、針状電極と非分極樹脂フィルムとの距離、及び針状電極に印可される電圧等によって異なるが、具体的には例えば、1.5cm未満、1.2cm未満である。電圧が高い場合、当該距離を大きくできる。
【0042】
工程Bにおけるコロナ処理の条件としては、非分極樹脂フィルムの分極に適した条件が設定される。
工程Aについての記載から理解されるように、工程Bでは、工程Aに比べて強い条件でコロナ処理が行われる。
この条件が緩やか過ぎると、分極が不十分になる。一方、この条件が厳しすぎると、非分極樹脂フィルムにコロナ処理による点状欠陥が生じる。
【0043】
このような条件の要素としては、例えば、グランド電極との間に第2電極に印加される電圧、第2電極と非分極樹脂フィルムの間の距離、及び工程Bの処理速度が挙げられる。
これらの要素のうち、ある要素において厳しい条件を選択した場合、総合的に適当なコロナ処理の条件にするため、他の要素において緩やかな条件を選択し得る。
【0044】
前記グランド電極との間に第2電極に印加される電圧が強いほど、工程Bにおけるコロナ処理の条件は厳しくなる。当該電圧は、第2電極と非分極樹脂フィルムの間の距離等によって異なるが、具体的には、例えば、−15〜−25kVである。
【0045】
第2電極と非分極樹脂フィルムの間の距離は、第2電極とグランド電極との間の距離と実質的に同じであり、これらの距離が短いほど、工程Bにおけるコロナ処理の条件は厳しくなる。当該距離は、例えば、1〜50mm、好ましくは10〜25mmである。
【0046】
工程Bの処理速度が遅いほど、工程Bにおけるコロナ処理の条件は厳しくなる。工程Bの処理速度は、例えば、10〜500cm/分である。当該速度は、第2電極の形状等によって異なる。例えば、第2電極が線状電極である場合、その数が多いほど当該速度を高くできる。
【0047】
工程Bにおけるコロナ処理時の非分極樹脂フィルムの温度は、好ましくは、20℃〜120℃より好ましくは20℃〜85℃である。分極中に加熱しながら放電することにより、チャージされた電荷、圧電性の耐熱性を向上させることができる。
【0048】
本発明の分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムは、光学フィルムとして使用される際の、ディスプレイ素子によって作り出された映像又は画像の質の劣化の程度が極めて低く、光学フィルムとして好適に使用される。
また、本発明の製造方法で製造された分極化樹脂フィルムは、実質的に異方性が無く、かつ表面の傷が少ないので、圧電性を有する光学フィルムとして好適に使用される。
一般に、光学用途で使用されるフィルムは全ヘイズ(HAZE)値(total haze)が低い方が好ましく、具体的には、全ヘイズ値が好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。
本発明の分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム及び本発明の製造方法で製造された分極化樹脂フィルムの全ヘイズ値はこのような値であることができる。
【0049】
次に、
図1を参照して、本発明の製造方法の一態様をより詳細に説明する。
【0050】
本発明の製造方法に用いられる製造装置の概要を
図1に示す。
本実施形態の製造装置1は、移送されるグランド電極2の上方に設けられた第1電極3と、グランド電極2の上方であり、かつ、グランド電極2の移動方向に沿って第1電極3の下流側に設けられた第2電極4とを備えている。
グランド電極2はアースされている一方で、第1電極3及び第2電極4にはそれぞれ第1高圧電源5及び第2高圧電源6が接続されている。第1電極3及び第2電極4とグランド電極2との間に、それぞれ第1高圧電源5及び第2高圧電源6から電圧が印加されることにより、第1電極3及び第2電極4からグランド電極2に向けてコロナ放電が発生する。
グランド電極2は、本実施形態では、平坦な上面を有しており、その上面に非分極樹脂フィルム7が直接載置されている。グランド電極2が、
図1中に示す矢印X方向に移送されることで、非分極樹脂フィルム7も同方向に移送され、第1電極3及び第2電極4と順に対向配置されるように構成されている。
第1電極3は、本実施形態では、グランド電極2の移動方向Xに対して垂直方向Yに所定間隔をあけて配置された複数の針状電極30から構成されている。各針状電極30は、効果的にコロナ放電を生じさせるために、先端が尖った針状のものである。各針状電極30は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、タングステン、タンタルなどにより形成されており、その表面は、金メッキ等の処理が施されていてもよい。その先端がグランド電極2と対向している。各針状電極30は、非分極樹脂フィルム7の前記垂直方向Yの幅を十分にカバーする程度設けられている。なお、複数の針状電極30は、
図1では、グランド電極2の移動方向Xに一列だけ設けられているが、複数列設けるようにしてもよい。また、複数の針状電極30は、グランド電極2の移動方向Xに概ね垂直方向に配置されていればよい。
第2電極4は、本実施形態では、グランド電極2の移動方向Xに対して垂直方向Yに延びる線状電極40から構成されている。線状電極40は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、タングステン、タンタルなどにより形成されており、その表面は、金メッキ等の処理が施されていてもよい。線状電極40は、非分極樹脂フィルム7の前記垂直方向Yの幅を十分にカバーできる程度、グランド電極2上を並行に延びている。なお、線状電極40は、
図1では、グランド電極2の移動方向Xに2本設けられているが、1本または3本以上設けるようにしてもよい。また、線状電極40は、グランド電極2の移動方向Xに概ね垂直方向に延びていればよい。
上記構成の製造装置1では、グランド電極2を移動方向Xへ移送させながら、まず、第1電極3とグランド電極2との間に電圧が印加されることで、グランド電極2上の非分極樹脂フィルム7が、第1電極3から発生するコロナ放電によって、その一端部(移動方向X側の端部)から他端部(移動方向Xの反対側の端部)に向かって順次帯電する。この帯電により、非分極樹脂フィルム7は、静電気によってその一端部から他端部まで連続的にグランド電極2に貼り付く。この際、グランド電極2と非分極樹脂フィルム7との間に介在する空気は、移動方向Xの反対方向へ押し出されていき、非分極樹脂フィルム7の他端部から排出されるので、グランド電極2上の非分極樹脂フィルム7が気泡やシワが入ることなく綺麗に貼り付く。次いで、非分極樹脂フィルム7が貼り付いた状態で、グランド電極2が移動方向Xへさらに移送され、第2電極4とグランド電極2との間に電圧が印加されることで、第2電極4から発生するコロナ放電によって、非分極樹脂フィルム7が、その一端部から他端部まで連続的に分極される。
ここで、上記した第1電極3による非分極樹脂フィルム7のグランド電極2への貼付処理(工程A)において、第1電極3とグランド電極2との間に印加される電圧としては、例えば−5〜−15kV程度が選択される。また、第1電極3と非分極樹脂フィルム7との間の距離は、第1電極3とグランド電極2との間の距離と実質的に同じであり、当該距離としては、例えば、1mm〜50mm程度が選択され、好ましくは5〜15mmが選択される。また、グランド電極2の移送速度としては、例えば、10〜500cm/分が選択される。
さらに、第1電極3を構成する複数の針状電極30は、
図2に示すように、コロナ放電により帯電可能な非分極樹脂フィルムの帯電域9が、隣接する針状電極30による非分極樹脂フィルムの帯電域9と少なくとも一部が重複するよう、配置間隔dが設定されている。これにより、非分極樹脂フィルム7が複数の針状電極30により隙間無く帯電される。また、このとき、非分極樹脂フィルム7のグランド電極2に貼り付いた部分の端部10の形状が直線状とはならず、波線状となることで、グランド電極2と非分極樹脂フィルム7との間の空気が押し出され易くなり、空気の残存を高度に抑制できる。
一方、上記した第2電極4による非分極樹脂フィルム7の分極処理(工程B)において、第2電極4とグランド電極2との間に印加される電圧としては、例えば−15〜−25kV程度が選択される。また、第2電極4と非分極樹脂フィルム7との間の距離は、第2電極4とグランド電極2との間の距離と実質的に同じであり、当該距離としては、例えば、1mm〜50mm程度が選択され、好ましくは10〜25mmが選択される。また、グランド電極2の移送速度としては、例えば、10〜500cm/分が選択される。
なお、グランド電極2は、温度制御装置8に接続されており、グランド電極2の温度を制御することで、電圧印加時の非分極樹脂フィルム7の温度を調整することができる。図示しない温度計等で電圧印加時の非分極樹脂フィルム7の温度を計測し、工程Aにおける貼付処理時の非分極樹脂フィルム7の温度を、20℃〜120℃、より好ましくは20℃〜85℃となるように制御するのが好ましい。また、工程Bにおける分極処理時の非分極樹脂フィルム7の温度を、20℃〜120℃、より好ましくは20℃〜85℃となるように制御するのが好ましい。分極中に加熱しながら放電することにより、チャージされた電荷、圧電性の耐熱性を向上させることができる。
【0051】
なお、前記で説明した本発明の態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要件を備え、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が可能であり、このような変形物及び改良物もまた、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、第1電極3を線状電極により構成することもできるし、第2電極4を針状電極により構成することもできる。
また、グランド電極2は、上面が平坦な状態で移送されている必要はなく、
図3に示すように、ロール11に沿わせて移送させるようにしてもよい。
【0052】
本発明の分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム、本発明の製造方法で製造された分極化樹脂フィルム、及び本発明の製造装置を用いて製造された分極化樹脂フィルム(以下、これらを本発明の樹脂フィルムと称する場合がある)は、好ましくは、圧電性を有し、圧電パネル(例、タッチパネル(好ましくは、タッチ圧を検出できるタッチパネル))に好適に用いられる。
本発明の樹脂フィルムは、抵抗膜方式、及び静電容量方式等の、あらゆる方式のタッチパネルに使用できる。
本発明の樹脂フィルムは、タッチパネルに使用されるとき、必ずしも、タッチ位置及びタッチ圧の両方の検出のために使用される必要は無く、本発明の圧電フィルムは、タッチ位置又はタッチ圧のいずれかの検出にも使用されてもよい。
【0053】
本発明の樹脂フィルムを有する、圧電パネル(例、タッチパネル(好ましくは、タッチ圧を検出できるタッチパネル))は、
(1)本発明の樹脂フィルム(好ましくは、本発明の分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム)、及び
(2)透明電極
を有する。
当該透明電極の例としては、ITO(酸化インジウム・スズ)電極、及び酸化スズ電極等が挙げられる。
本発明の樹脂フィルムを有する圧電パネル(例、タッチパネル(好ましくは、タッチ圧を検出できるタッチパネル))は、好ましくは、
第1の電極と、
本発明の樹脂フィルムと、
第2の電極と、
をこの順で有する。
第1の電極は本発明の樹脂フィルムの一方の主面上に直接又は間接的に配置され、及び
第2の電極は本発明の樹脂フィルムの他方の主面上に直接又は間接的に配置される。
第1の電極、及び第2の電極は、前記透明電極であることができる。
【0054】
本発明の樹脂フィルムを有する「タッチ圧を検出できるタッチパネル」を指等で押圧すると、本発明の樹脂フィルムのひずみの時間的変化に応じた電気信号を得ることができるので、当該「タッチ圧を検出できるタッチパネル」を用いれば、押圧の有無、速度、大きさ(強弱)、これらの変化、或いは又はこれらの組み合わせを決定できる。ここで、押圧の大きさ(すなわち、静圧)は、前記電気信号の積分値を用いて決定できる。
【0055】
このような圧電パネルにおいて、本発明の樹脂フィルムは、1又は2枚以上(好ましくは2枚)を用いることができる。
本発明の樹脂フィルムを2枚以上(好ましくは2枚)用いる場合、当該2枚以上の本発明の樹脂フィルムは、粘着シートによって互いに貼り合わせられていてもよい。当該粘着シートは、本発明の樹脂フィルムを互いに貼り合わせられるものであれば特に限定されず、1又は2以上の層からなることができる。すなわち、当該粘着シートが1層からなる場合、当該粘着シートは粘着剤層からなり、及び当該粘着シートが2以上の層からなる場合、その両外層が粘着剤層である。当該粘着シートが3以上の層からなる場合、当該粘着シートは内層として基材層を有していてもよい。
前記粘着剤層は、好ましくは、例えば、粘着剤としてアクリル系粘着剤を含有する層であることができる。
前記基材層は、透明なフィルムであればよく好ましくは、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリアミドイミドであることができる。
【0056】
例えば、本発明の樹脂フィルムを有する圧電パネル(例、タッチパネル(好ましくは、タッチ圧を検出できるタッチパネル))は、好ましくは、
第1の電極と、
第1の本発明の樹脂フィルムと、
粘着シートと、
第2の本発明の樹脂フィルムと、
第2の電極と、
をこの順で有する。
第1の電極は第1の本発明の樹脂フィルムの外面上に配置され、及び
第2の電極は第2の本発明の樹脂フィルムの外面上に配置されている。
本発明の樹脂フィルムは焦電性を有し得るが、当該圧電パネルにおいて、第1の本発明の樹脂フィルム、及び第2の本発明の樹脂フィルムを、温度上昇によって同じ極性の電荷(例えば、正電荷と正電荷)が生じる面がそれぞれ外側になるように配置し、及び当該2つの面の間の電位差を第1の電極と第2の電極とで電気信号として得る場合、焦電性による電気信号が低減されて、圧電性による電気信号を選択的に得ることが可能である。
【0057】
このようなタッチパネルは、タッチ入力装置、及びタッチセンサー装置に用いることができる。当該タッチパネルを有する入力装置(すなわち、本発明の圧電フィルムを有する入力装置)は、タッチ位置、タッチ圧、又はその両方に基づく入力(例、筆圧等の押圧の大きさ(強弱)に基づく入力)が可能である。当該タッチパネルを有する入力装置は、位置検出部及び圧力検出部を有することが出来る。
【0058】
本発明のタッチパネル(好ましくは、分極化フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムを有するタッチパネル)は、電子機器に用いることができる。当該電子機器の例として、スマートフォン、タブレットPC、デジタイザ、タッチパッド、及びカーナビゲーションシステム等が挙げられる。当該電子機器は、タッチ位置、タッチ圧、又はその両方に基づく操作(例、ペイントソフトにおいて、筆圧に応じてスクリーンに表示される線の太さを変える等の操作)が可能である。
当該電子機器は、タッチ入力装置、又はタッチセンサー装置を備えることができ、或いはタッチ入力装置、又はタッチセンサー装置からなることもできる。当該タッチ入力装置、及び当該タッチセンサー装置は、それぞれ本発明のタッチパネルを備える。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
後記の実施例及び比較例においては、次の電極を使用した。
<使用電極>
(1)20mm幅(10mm厚、500mm長)の真鍮棒の中心線上に10mm間隔で電極用針(針状電極)(R=0.06mm;森田製針所製)を1列に並べた針状電極棒
(2)(1)と同様に、15mm間隔で電極用針(R=0.06mm;森田製針所製)を1列に並べた針状電極棒
(3)直径0.1mmの金鍍金したタングステン製の線状電極(500mm長)
【0061】
後記の実施例及び比較例においては、次の方法で、全光線透過率、全ヘイズ値、電気機械結合係数、フィルムの点状欠陥を測定した。
【0062】
<全光線透過率>
ヘイズガードII(製品名、東洋精機製作所)を使用し、ASTM D1003に記載の方法に基づいて測定した。
【0063】
<全ヘイズ値>
ヘイズガードII(製品名、東洋精機製作所)を使用し、ASTM D1003に記載の方法に基づいて測定した。
<電気機械結合係数>
透明圧電フィルムの両側にAl蒸着電極を形成し、透明圧電フィルムの所定箇所について、13mmの円板を切り出し、インピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製4194A)を用いて測定し、H. Ohigashiら、「The application of ferroelectric polymer, Ultrasonic transducers in the megahertz range」に記載の方法により、電気機械結合係数を算出した。
【0064】
<点状欠陥>
次の方法で点状欠陥を検出し、その数を数えた。
<欠陥測定方法>
外観検査機を使用し、LED光源(定電流駆動;連続点灯方式;光量50%(光量は1〜100%までほぼ直線的に調光可能であり、100%出力で60,000Lux))に対して45度の角度で欠陥を検出できるようにCCDカメラを設置し、その下を20m/分の速さで走査(スキャン)しながら、幅方向(走査の進行方向に対して直角の方向) 300mm、流れ方向(走査の進行方向) 150mmの長方形の範囲で、フィルムの欠陥を読み取る。
当該方法を、
図4を参照して、より詳細に説明する。当該方法は、より詳細には、CCDカメラ51(当該CCDカメラ51は、長さ596mmの帯状の実視野、0.040mm/scanの走査方向分解能、及び0.088mm/pixelの実視野幅方向分解能を有する。)、スリット52、及び白色LED光源53を備える外観検査機を使用し、前記スリット52を通した前記白色LED光源53の光の進行方向(
図4中の白抜き矢印の方向)中に、前記CCDカメラ51を、当該光を受光できるように、前記実視野の長さ方向と前記スリット52の方向とを一致させて配置し、前記スリット52と前記CCDカメラ51の間を、検査されるフィルム54をその縦方向に20m/分の速さで移動させながら、前記CCDカメラ51により前記白色LED光源53の光を前記検査されるフィルム54を通して受光することによって、当該フィルム54の幅方向(走査の進行方向に対して直角の方向) 300mm、及び流れ方向(走査の進行方向(
図4中の細い黒矢印の方向)) 150mmの長方形の範囲の範囲を走査する。このとき、検査されるフィルム54は、前記白色LED光源53の光の進行方向が、当該フィルム54平面に対する垂直方向から当該フィルム54の縦方向に、45°傾くように(すなわち、
図4中のθ1が45°になるように)、配置される。当該フィルム54の縦方向は、前記流れ方向(走査の進行方向)に一致する。
欠陥として、先ず、明面積が1.5266mm
2以下で、かつ暗面積が1.416mm
2以下であり、かつ明面積と暗面積の合計(以下、これを「総面積」と称する。)が2.3987mm
2以下の部分を選定する。
明面積は、地合(すなわち、点状欠陥及びキズ等の欠陥が無い部分)よりも明るい部分(明部)の面積である。
暗面積は、地合よりも暗い部分(暗部)の面積である。
ここで、CCDカメラの映像レベルを波形で確認し、地合が明度5のグレーになるように調光制御を行い、これをゼロとする。
明部は、明度5から明度10(真っ白)の範囲を127分割して、閾値を65/127に設定した場合に、当該閾値を超える(すなわち、より明るい)部分である。
暗部は、明度5から明度0(真っ黒)の範囲を127分割して、閾値を100/127に設定した場合に、当該閾値を超える(すなわち、より暗い)部分である。
次に、これらの欠陥の中に含まれる、コロナ処理以外の原因の欠陥(例、擦り傷)を除去する為に、走査の進行方向に沿った2辺を有するように、欠陥の外接方形を設定し、外接幅が2.88mm以下であり、外接長さが0.43〜2.30mm以下であり、縦横比率が−39〜+27であり、外接方形における占有面積比率が4,000〜6,950であり、かつ面積比率が−3,100〜+5,200である欠陥のみを点状欠陥として、その個数を外観検査機により自動的に計数する。
外観検査機としては、MaxEye.Impact(商品名、ヒューテック社)、又は前記欠陥測定方法においてこれと同様の測定結果が得られる外観検査機を用いる。
ここで、「外接幅」、「外接長さ」、「縦横比率」、「占有面積比率」及び「面積比率」の意味は次の通りである。
「外接幅」は、欠陥の、走査(スキャン)の流れ方向に対する直角方向(横方向)のサイズ、すなわち欠陥の外接方形の幅として、定義される。
「外接長さ」は、欠陥の、走査(スキャン)の流れ方向(縦方向)のサイズ、すなわち欠陥の外接方形の長さとして、定義される。
「縦横比率」は、欠陥の外接長さと外接幅の比率であり、本発明においては、外接長さと外接幅のうち大きいほうの値を小さいほうの値で除し、かつ外接長さのほうが大きい場合は商に正(+)の符号を付し、一方、外接幅のほうが大きい場合は商に負(マイナス)の符号を付した値として、定義される。
「占有面積比率」は、欠陥の外接方形に対する総面積(明部と暗部の合計面積)の比率として、定義される。
「面積比率」は、欠陥判定部分における明面積と暗面積の比率であり、本発明においては、明面積から暗面積を減じた値を総面積で除した値として、定義される。従って、面積比率の値が正数の場合、欠陥は明欠陥であり、一方、負数の場合、欠陥は暗欠陥である。
【0065】
MaxEye.Impact(商品名、ヒューテック社)の使用において、具体的には、次のようにパラメータを設定して測定した。
<明るさ>
[LP]
最大値:127
最小値: 65
[DP]
最大値:127
最小値:100
<明面積>
[LA]
最大値:1.5266
<暗面積>
[DA]
最大値:1.4161
<総面積>
最大値:2.3987
<幅>
[W]
最大値:2.88
<長さ>
[L]
最大値:2.30
最小値:0.43
【0066】
そして、測定結果が以下の条件(1)〜(10)を全て満たす部分が、点状欠陥として計数される。
(1)65<LP
(2)100<DP
(3)LA≦1.5266
(4)DA≦1.4161
(5)A≦2.3987
(6)W<2.88
(7)0.43<L<2.30
(8)−39<R1<+27
(ここで、W>Lのとき、R1=W/L×(−1)、
W<Lのとき、R1=L/W)
(9)4,000≦R2≦6,950
(ここで、R2=A/(W×L)×10,000)
(10)−3,100≦R3≦5,200
(ここで、R3=(LA−DA)/A×10,000)
【0067】
外観検査機MaxEye.Impact(ヒューテック社)を用いて、分極後フィルムの所定範囲内の点状欠陥の個数を数えた。
具体的には、LED光源に対して45度の角度で欠陥を検出できるようにCCDカメラを設置し、その下を20m/分の速さで走査しながら、幅方向(走査の進行方向に対して直角の方向) 300mm、流れ方向(走査の進行方向) 150mmの長方形の範囲で、フィルムの欠陥を読み取った。
欠陥は先ず、点状欠陥を目視で確認した場合のフィルム表面の反射光の揺らぎに相当する明面積が1.5mm
2以下で、かつ暗面積が1.4mm
2以下のものを選定した。
次に、これらの欠陥の中に含まれる、コロナ処理以外の原因の欠陥を除去する為に、走査の進行方向に沿った2辺を有するように、欠陥の外接方形を設定し、外接幅が2.88mm以下であり、外接長さが2.3mm以下であり、縦横比率が−39〜+27であり、外接方形における占有面積比率が4,000〜6,950であり、かつ面積比率が−3,100〜+5,200である欠陥のみを点状欠陥として、その個数を数えた。
製造例1(樹脂フィルムの製造)
次の製造法により、厚さ40μmの、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム(モル比 80:20)を製造した。
フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(モル比 80:20)のジメチルアセトアミド(DMAc)溶液、またはメチルエチルケトン(MEK)溶液をPET(ポリエチレンテレフタレート)基材上に流延し、180℃で溶媒を気化させて、厚さ40μmのフィルムを成形した。
フィルムはPET基材から剥離後、適当な大きさに裁断して用いた。
【0068】
実施例1
図1にその概要を示したように、水平方向に稼動させることができるSUS製の、上面が平坦なグランド電極(300mm×210mm)上に、320mm×230mmに切り出した厚さ40μmのフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルム(以下、単にフィルムと称する場合がある。)を設置した。第1電極として、前記(1)の針状電極を、針状電極の並びがグランド電極の稼働方向に対して垂直になり、かつ、フィルムから針状電極の先端が10mm上空に離れた位置になるように設置した。さらに、前記(1)の針状電極棒の針状電極から100mm離れた位置と針状電極から150mm離れた位置に、第2電極として、直径0.1mmの金鍍金したタングステン製の線状電極(500mm長)を、フィルムが20mm上空に離れた位置になる様に設置した。
なお、フィルムを設置したグランド電極は、針状電極線状電極を水平(
図1中の両矢印の方向)に移動することができるように設置した。
フィルムが完全に針状電極(第1電極)の外側になる様に移動させ、針状電極(第1電極)には−10kVの電圧を、線状電極(第2電極)には−15kVの電圧を印加した後、針状電極(第1電極)の先端と、それに続く線状電極(第2電極)から発生するコロナ放電の下を96cm/分の速さでフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体樹脂フィルムを通過させた。
電圧印可後、アースを取ったアルミ平板でフィルム表面に充電された電荷を取り除いた後、SUS平板からフィルムを剥がして、その表面の状態を観察した。
フィルムは針状電極の先から同心円状に広がるコロナ放電によりSUS平板に貼り付けられた。針状電極から遠ざかるほど貼り付けは、より不十分になったが、針状電極下(第1電極)通過後のフィルムとSUS平板に取り残された空気がほとんど観察されず、得られた分極フィルムは、透明(transparent)であり、かつ欠陥が極めて少なかった。全光線透過率、全ヘイズ値、電気機械結合係数、150×300mm角あたりの点状欠陥数の評価データを表1に示す。
【0069】
実施例2
針状電極として、前記(2)の針間距離が15mmの電極を用いた他は、実施例1と同じ方法でコロナ処理を行った。その結果、各針状電極針状電極間に、取り残された空気が観察され、得られた分極化フィルムは透明(transparent)であったが、凸状欠陥が実施例1よりも多く見られた。全光線透過率、全ヘイズ値、電気機械結合係数、150×300mm角あたりの点状欠陥数の評価データを表1に示す。
【0070】
実施例3
針状電極の代わりに前記(3)の線状電極を用いた以外は、実施例1と同じ方法でコロナ処理を行った。針状電極の場合と異なり、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フッ素樹脂フィルムとグランド電極との間に取り残された空気が多く観察され、得られた分極化フィルムは透明(transparent)であったが、凸状欠陥が実施例2よりも多く見られた。全光線透過率、全ヘイズ値、電気機械結合係数、150×300mm角あたりの点状欠陥数の評価データを表1に示す。
【0071】
比較例1
第1電極を用いることなく、分極するための第2電極としての線状電極のみを用いて実施例1と同じ方法でコロナ処理を行った。フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体フッ素樹脂フィルムとグランド電極との間に取り残された空気が多く観察され、得られた分極化フィルムは透明(transparent)であったが、凸状欠陥の数が多く見られ、また、凸状欠陥が、実施例1、2及び3と比べてさらに多かった。全光線透過率、全ヘイズ値、電気機械結合係数、150×300mm角あたりの点状欠陥数の評価データを表1に示す。
【0072】
【表1】