特許第6109244号(P6109244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6109244EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラス製のブランク及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109244
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラス製のブランク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20170327BHJP
   C03B 8/04 20060101ALI20170327BHJP
   G03F 1/22 20120101ALI20170327BHJP
【FI】
   C03B20/00 G
   C03B20/00 E
   C03B8/04 C
   G03F1/22
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-127572(P2015-127572)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-11250(P2016-11250A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】14174699.0
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン オクス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン トーマス
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−013335(JP,A)
【文献】 特表2008−505827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03B 8/00− 8/04
C03C 3/06
G03F 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射皮膜が施された表面部分を有しかつ光学的使用領域CAを有する、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラス製のブランクであって、前記光学的使用領域CAにわたる熱膨張率CTEが、前記ブランクの厚さに関して平均した2次元のdCTE分布プロフィールを有し、前記dCTE分布プロフィールは、CTE最大値とCTE最小値との間の差として定義される、5ppb/K未満の最大不均一性dCTEmaxを有する、チタンをドープしたシリカガラス製のブランクにおいて、前記dCTEmaxは少なくとも0.5ppb/Kであり、かつ前記CAは前記領域の重心を有する非円形領域を形成し、前記dCTE分布プロフィールは回転対称ではなく、かつCAにわたって、前記領域の重心を通過して延び、かつ単位長さに対して標準化された直線状のプロフィール交線が、0.5×dCTEmax未満の帯域幅を有する曲線帯域を形成するdCTE曲線群を生じるように定義されていることを特徴とする、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラス製のブランク。
【請求項2】
前記帯域幅が0.3×dCTEmax未満であることを特徴とする、請求項1に記載のブランク。
【請求項3】
前記dCTE分布プロフィールが、0.5×dCTEmaxのdCTE値を有する閉じた等値線を有し、前記等値線の全長の少なくとも80%の部分長さが前記光学的使用領域CA内に延在していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブランク。
【請求項4】
前記等値線は、完全にCA内に延在していることを特徴とする、請求項3に記載のブランク。
【請求項5】
前記CAの非円形領域が非円形のアウトラインによって定義されていて、前記アウトラインに沿って前記dCTE分布プロフィールのdCTE最大値及びdCTE最小値が存在し、前記最大値と前記最小値との間の差PVCAは、0.5×dCTEmax以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブランク。
【請求項6】
前記差PVCAは、0.3×dCTEmax以下であることを特徴とする、請求項5に記載のブランク。
【請求項7】
前記dCTE分布プロフィールは、回転対称の分布プロフィールを少なくとも1つの空間方向に伸長することによって数学的に一義的に記載可能であり、この伸長率は少なくとも1.2であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のブランク。
【請求項8】
前記dCTE分布プロフィールは、前記回転対称の分布プロフィールの丸い形状複数の空間方向に伸長することにより数学的に一義的に記載可能であり、前記空間方向は、前記光学的使用領域CAと平行に広がる1つの共通の変形平面上に延在することを特徴とする、請求項に記載のブランク。
【請求項9】
前記dCTE分布プロフィールは、前記回転対称の分布プロフィールの円形形状を同一の変形平面上に延在しかつ120°の角度をなす3つの方向へ伸長することによって記載することができることを特徴とする、請求項7または8に記載のブランク。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のEUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラス製のブランクの製造方法において、前記方法は、次の工程:
(a) 回転対称のdCTE分布プロフィールを有する、Tiをドープしたシリカガラスのガラス円柱体を準備する工程、及び
(b) 前記ガラス円柱体を軟化し、かつ前記ガラス円柱体の縦軸方向に対して垂直方向に作用する力成分を有する成形力を作用させながら前記ガラス円柱体を成形し、それにより、前記回転対称のプロフィールを少なくとも1つの方向へ伸長させて、非円形横断面を有しかつ非回転対称のdCTE分布プロフィールを有する円柱形のブランクとなるように、前記ガラス円柱体を成形する工程
を有し、
方法工程(b)による成形が、前記ガラス円柱体を、前記ガラス円柱体の縦軸を垂直方向に向けて、非回転対称の内部幾何学形状を有する溶融型中に配置し、かつ前記型内で少なくとも1200℃の温度に加熱し、かつ軟化させて、前記ガラス円柱体を、前記溶融型中へ重力の作用下で、横方向へ流出させる成形工程を有し、
前記溶融型の内部幾何学形状が、前記ガラス円柱体の縦軸に対して垂直方向の横断面で見て、長軸と、前記長軸と比べてより短い軸を有する溶融型を使用する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
横断面が楕円形の内部幾何学形状又は横断面が長方形の内部幾何学形状を有する溶融型を使用することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
方法工程b)による成形は、1つの成形工程の後に得られたガラス体を、更に引き続く成形工程で変形する複数の成形工程を有することを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
方法工程(a)によるガラス円柱体の準備が、
aa) ケイ素及びチタンを有する出発物質の火炎加水分解により、SiO2及びTiO2の多孔性スート体を製造する工程
bb) 前記スート体を乾燥及び焼結して、Tiをドープしたシリカガラスの、伸びたガラス前製品を形成する工程、
cc) 前記ガラス前製品を、1500℃より高い温度に加熱し、軟化させかつガラス円柱体に成形する均質化プロセスで、前記ガラス前製品を均質化する工程
を有することを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射皮膜を提供する表面部分を備えかつ光学的使用領域CAを有する、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラス製のブランクであって、この領域CAにわたって熱膨張係数CTEは、このブランクの厚さに関して平均して、CTE最大値とCTE最小値との間の差として定義される5ppb/K未満の最大不均一性dCTEmaxを有する、二次元のdCTE分布プロフィールを有する、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用の、チタンをドープしたシリカガラス製のブランクに関する。
【0002】
更に、本発明は、EUVリソグラフィーで使用するための、ミラー支持体用の、高いケイ酸含有率を有するチタンをドープしたガラス(石英ガラス)からなるこの種のブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
EUVリソグラフィーの場合に、マイクロリソグラフィー投影装置を用いて、50nm未満の線幅を有する高集積構造が製造される。この場合、EUV(extreme ultraviolet light、つまり「軟X線」としても公知)領域といわれる10nm〜121nmの間のスペクトル領域からなる作業放射線が使用される。EUVリソグラフィーの場合の典型的な運転波長は、現在では13nmである。
【0004】
この投影装置は、高いケイ酸含有率を有しかつ二酸化チタンでドープされている合成ガラス(以後、「TiO2−SiO2ガラス」、「Tiをドープしたシリカガラス」ともいう)からなり、かつ反射層系が設けられているミラーエレメントを備えている。これらの材料は、極端に低い熱膨張係数(以後省略して「CTE」;coefficient of thermal expansion)により特徴付けられている。このCTEは、ガラスの熱履歴及びその他のいくつかのパラメータに依存するが、主に二酸化チタン濃度に依存するガラス特性である。典型的な二酸化チタン濃度は、6質量%〜9質量%である。
【0005】
Tiをドープしたシリカガラスのブランクは、ミラー支持体を得るために機械的に処理され、かつミラーエレメントの形成のために反射皮膜が施される。このミラーエレメントは、各ミラーエレメントについて規定されておりかつEUV投影システムで使用される場合に予定された照射プロフィールによって影響される、光学的使用領域CA(CAは、「有効口径」を表す)を有する。また、反射皮膜が施されていないミラーエレメントブランクでは、CAは、既にブランク表面への投影として定義され、つまりブランクの処理条件(機械的処理前又は後)とは無関係である。
【0006】
この光学ブランクの領域CAの光学的な仕様は設計要素であり、この設計要素は、この技術分野の場合に他の工業的設計要素、例えば設計された容量に積載した場合に船が水に触れる船の高さを特徴付ける満載喫水線(LWL)に匹敵する。前記設計要素は、それぞれの製品が特定の性能要件を満たしているかを特徴付けるために、これらの製品の設計及び製造を通して利用される。これは、システム性能を決定する重要なパラメータの許容範囲を指定するために使用するだけでなく、この仕様を達成する目的で製造に費やさなければならないリソース(例えば時間及びコスト)の量を指定するために用いられる。
【0007】
このようなEUVミラーエレメントの最大(理論的)反射率は、約70%であるので、この放射エネルギーの少なくとも30%はミラーコーティング及びミラー支持体の表面近傍領域で吸収され、熱に換えられる。全体の体積について見ると、従って、これは、典型的な運転条件下で50℃にもなりかつミラー支持体の変形を引き起こしかねない温度差を有する不均一な温度分布を生じさせる。
【0008】
この変形を小さく保つために、従って、ミラー支持体は、ほとんどの体積において、全体の作業温度範囲を通してゼロ付近のCTEを有することが望ましい。しかしながら、実際には、この条件を満たすことは困難である、というのも、所定のガラス組成にとって、ゼロ付近のCTEを有する温度範囲は狭いためである。
【0009】
CTEが正確にゼロに等しい温度は、つまりゼロクロッシングの温度又はTZCtemperature of zero crossing)ともいわれる。このガラス特性は、実質的にチタン濃度に依存する。この濃度は、典型的に、CTEが、20℃〜45℃の温度範囲でほぼゼロであるように調節される。
【0010】
ミラー支持体ブランク中の不均一な温度分布により引き起こされるイメージングエラーを低減するために、特許文献1では、ミラー支持体用のブランク中で、このブランクの厚さにわたり二酸化チタンの濃度を、運転の際に生じる温度分布に対して、ゼロクロッシング温度TZCのための条件をそれぞれの温度で満たし、つまり局所的に生じる温度についての熱膨張係数が実質的にゼロに等しくなるように、段階的に又は連続的に適合させることが予定されている。これは、火炎加水分解によるガラスの製造の間に、チタン又はケイ素を含む出発物質の濃度を、それぞれブランク中で予定される濃度プロフィールが生じるように変えることにより達成されるとしている。
【0011】
このミラー支持体ブランクの体積にわたって可変の、場所依存性の二酸化チタン濃度の再現可能な調節は複雑であり、かつ投影装置の多くのミラーの一つだけのために及び唯一の特定の照射配置のためだけに最適化できるにすぎないことは明らかである。
【0012】
冒頭に述べた形式のミラー支持体用の石英ガラスブランク及びその製造方法を開示する特許文献2では、他のアプローチをとっている。これにより公知の、合成により製造されたチタンをドープした石英ガラスのブランクは円柱形であり、これは、例えば300mmの直径及び40mmの厚さを有する。これは、反射皮膜が全体又は一部に施されたミラー支持体プレートを機械的処理することによって得る。
【0013】
熱膨張係数の局所的な均一性の変動(以後、「CTE不均一性」又は省略して「dCTE」ともいわれ、かつ、CTE分布プロフィールの絶対的最小値CTEminからの局所的逸脱の量(dCTE=CTE−CTEmin)として定義される)を所定の条件下で、低コストの製造方法の利点ためには甘受すべきであることが提案されている。この条件によると、このdCTEは、予定された限界値を超えず、かつこれは光学的使用領域CAにわたる測定において、少数の低周波の球状のゼルニケ多項式により十分に正確に記載することができる推移を示す。より詳細には、公知の石英ガラスブランクは次の特徴を有する:
a) このブランクは、TiO2 0.05%未満のTiO2分布の局所的変動により引き起こされる微細な不均一性を含む、
b) このブランクは、0.4ppb/(K・cm)以下の、使用可能範囲CAにわたる熱膨張係数の半径方向の変動を示す、
c) このブランクの、光学的使用範囲CAの熱膨張係数中の絶対的最大不均一性dCTEmax(このブランクの厚さに関する平均)は5ppb/K未満である、
d) この場合、CAにわたるdCTE推移は、実質的に次のゼルニケ項により記載することができる:
【数1】
式中:C0α <= 5ppb/K;r=円柱の軸からの半径方向の距離;
R=CAの半径;C3;C8=この項の適合パラメータ。
【0014】
「実質的にゼルニケ項によって記載できる」とは、前記項の減法の後に残る熱膨張の残留不均一性が0.5ppb/K(オリジナルの文書では「dCTE」は「Δα」として表されている)以下であることを意味する。
【0015】
特許文献3は、EUVリソグラフィー用のフォトマスク基板用のTiをドープしたガラスの製造を記載している。この基板は、このブランクが多角形の横断面を有するとしても、好ましくは最大値が中心にある半径方向屈折率分布プロフィールを示す。この多角形の横断面は、丸い棒から多角形の形状への「溶融ガラス材料の流出」法によって製造される。
【0016】
特許文献4は、溶融ガラス材料が長方形の形状に流出する工程を有する多工程成形プロセスによる脈理のない成形体の製造を記載する。この場合、長方形の横断面を有する中間生成物を得て、これを最終的にねじり加工して丸い横断面を有する棒を得る。
【0017】
特許文献5は、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のTiO2−SiO2ガラス製のブランクを記載する。920℃〜970℃の範囲内の仮想温度Tfの平均値で、このガラスは、この仮想温度Tfに対する温度ゼロクロッシングTzcの依存性が、微分商dTzc/dTfとして表して、0.3未満であることを示す。
【0018】
特許文献6は、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のTiをドープしたシリカガラス製のブランクの製造方法を開示していて、この場合、チタンをドープしたSiO2のスート体を、ケイ素及びチタン含有の出発物質の火炎加水分解により製造し、かつ、このスート体を、真空中で少なくとも1150℃の温度に加熱することにより乾燥させることで、150質量ppm未満の平均ヒドロキシル基含有率を調節し、この乾燥したスート体を焼結させてTiをドープしたシリカガラスのプリフォームを形成させ、かつこのTiをドープしたシリカガラスを条件プロセスによって水素で負荷して、少なくとも1×1016分子/cm3の平均水素含有率が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO 2011/078414 A2
【特許文献2】DE 10 2004 024 808 A1
【特許文献3】US 2010/0003609 A1
【特許文献4】DE 42 04 406 A1
【特許文献5】DE 10 2013 101 328 B3
【特許文献6】DE 10 2010 009 589 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これらの条件を満たすCTE不均一性は、CAにわたって実質的に回転対称の分布プロフィールを示す。使用の間に生じる照射プロフィール及びそれにより光学的使用領域CAが円形の対称性を示す場合、このように適されたミラー支持体ブランクは、不均一な加熱の場合であっても比較的高い絶対的CTE不均一性値を許容する。しかしながら、この公知のミラー支持体ブランクは、円形とは異なる形状を有する照射プロフィールで使用する場合には適していない。
【0021】
本発明の課題は、二酸化チタン濃度を個別に適合させる場所依存性の調節なしで、非円形の照射プロフィールで使用するために設計されかつ適している、EUVリソグラフィーで使用するためのミラー支持体用のチタンをドープしたシリカガラスのブランクを提供することである。
【0022】
更に、本発明の課題は、このようなミラー支持体ブランクの再現可能でかつ低コストの製造を可能にする方法を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記ミラー支持体ブランクに関して、上記課題は、冒頭に述べた形式のチタンをドープしたシリカガラスのブランクから出発し、本発明により、dCTEmaxが少なくとも0.5ppb/Kであり、かつCAがこの領域の1つの重心を有する非円形領域を形成し、前記dCTE分布プロフィールは、回転対称ではなくかつCAにわたって、前記領域の前記重心を通過して延びる、単位長さで標準化された直線状のプロフィール交線が0.5×dCTEmax未満の帯域幅を有する曲線帯域を形成するdCTE曲線群を生じるように定義されていることにより解決される。
【0024】
このミラーエレメント上に当たる放射線のエネルギー密度の他に、その空間分布も、このミラーエレメントの光学的露出を決定する。この放射の空間分布は、それぞれのミラーエレメントについて特定された光学的使用領域CAの幾何学形状に第一次近似で反射する。光学的使用領域CAにわたる内在的dCTE分布とは反対に、これ自体の分布はこのミラーエレメントの物理特性を示すものではないが、この分布はこのミラーエレメントに属する仕様の一部である。
【0025】
このCTEが所定の望ましい値から局所的に逸脱することにより、特に稼働中の加熱によって、自動的にミラーエレメントによるイメージングエラーが生じる。基本的に、このようなエラーは、光学的使用領域の範囲内のCTEの逸脱をできる限り完全に避けるか、又は光学的露出に関してその局所的分布を最適化することにより特定のCTE不均一性を受け入れることにより低減することができる。
【0026】
最初に挙げられた選択肢は、ミラーエレメントが、その特定の光学的露出及びCA幾何学形状とは無関係に、良好な品質及び高い有用性を示すことができるという利点を有する。しかしながら、この選択肢はTiをドープしたシリカガラスの製造及びその熱機械的後処理において多大な手間を必要とする。
【0027】
しかしながら、本発明は、まさにこの状況を回避することを試みる。従って、一定程度のCTE不均一性は、本発明のミラー支持体ブランクの場合には許容される。これは、それ自体、dCTEmax(つまり、CA内のCTE分布プロフィールの絶対的なCTE最大値と絶対的なCTE最小値との間の差)が少なくとも0.5ppb/Kであることに表される。
【0028】
従って、このミラーエレメントのための製造の手間は小さいが、dCTE分布プロフィールを光学的露出に、及びこの場合に特にCAのサイズ及び幾何学形状に適合させることが必要である。CA幾何学形状が円形の形状から逸脱する場合に、この適合は今までは全く経験的に行われていた。この光学的露出に基本的に適切な適合を行う系統的な方法は、この場合に知られていなかった。従って、CAに関する特定の要件及び境界条件の仕様に関して、経験的な対策なしで、適合するミラー支持体ブランクを提供することは困難であった。しかしながら、経験的方法は、簡単でかつ安価な工業的製造についてなされる要求を満たさない。
【0029】
本発明は、ここで、ミラー支持体ブランクに規定されたCAが円形の形状とは異なる幾何学形状を有する場合に、ミラー支持体ブランク用のdCTE分布プロフィールの形成のために一般的設計原理を提供する。
【0030】
一般的設計原理
この設計原理の1つの側面は、回転対称ではなく、伸びた楕円形であるdCTE分布プロフィールの幾何学形状的構成に関し、かつ他の側面は伸長された楕円形のdCTE分布プロフィールと、非円形のアウトラインを有する光学的露出領域CAとの間の協調に関する。
【0031】
この光学的露出領域CAの、円形の形状とは異なるアウトラインは、通常では凸型の閉じた曲線を形成する。この曲線により取り囲まれる領域の次の説明は、「楕円」の例に関するが、非楕円の幾何学形状、例えば角が丸められた長方形の形状又は豆形の形状又はドッグボーン形状(dog bone form)にも同様に適用可能である。この楕円は、長さ方向の拡がりが、それに直交する幅方向の最大の拡がりよりも大きく、かつ対称軸を有しないか、又は1つ又は2つの対称軸を有する。楕円形のCAの領域の重心は、公知の幾何学的考察により得られるか又は積分によって数学的に計算される。
【0032】
この一般的設計原理の1つの側面は、CAの楕円形の形状とdCTE分布プロフィールとの間の相互作用に関する。この相互作用は、CAにわたるdCTE分布プロフィールが、CAの領域の重心を通過して延びる、この分布プロフィールの全ての直線的な交線が類似する推移を有するように設計されていることで表される。CAの長さ方向の拡がりと幅方向の拡がりが(及び、それによりdCTE分布プロフィール長さ方向の拡がりと幅方向の拡がり及び対応するプロフィール交線も)異なるので、異なる交線の推移の類似性は、同じ長さに標準化する場合にだけ検出することができ、例えばこの領域の重心を通過する最も長いプロフィール交線の長さに標準化することにより検出することができる。この相応して標準化されたプロフィール交線は、以後「長さが標準化されたプロフィール交線」ともいう。
【0033】
この類似性は、それ自体、この条件下で、全ての所望の長さが標準化されたプロフィール交線が、0.5×dCTEmax未満、好ましくは0.3×dCTEmax未満の最大帯域幅を有する曲線帯域を形成するdCTE曲線群を生じることで表される。この「最大帯域幅」は、曲線帯域に沿った全ての標準化されたプロフィール位置でのdCTE値の最大値と最小値との最大の差として得られる。
【0034】
この曲線帯域の小さな最大帯域幅が、dCTE分布プロフィールを通過する長さが標準化された交線の尺度、つまり、回転対称のdCTE分布プロフィールの場合に典型的な横断線の角度とは無関係の交線の類似性の尺度である。しかしながら、回転対称の分布プロフィールは、ここで存在するCAの楕円形状には適合せず、かつこの技術的課題の解決のために適していない。
【0035】
本発明による非回転対称のdCTE分布プロフィールの場合の長さが標準化された交線の類似性の高い度合いは、この分布プロフィールがほぼ回転対称のdCTE分布プロフィールに起因するように、つまり回転対称のプロフィールが少なくとも1つの方向で伸長されることにより構成されるという事実による。この伸長方向は、ここでは最も簡単な場合でかつ好ましくは、回転対称の軸に対して垂直に延びるように設計される。この種の変形を、以後、「横方向の変形」ともいう。
【0036】
従って、この設計原理は、ほぼ円形の形状を有する回転対称のdCTE分布プロフィールから横方向の変形によって非円形の形状を有する幾何学的に類似のdCTE分布プロフィールを製造する場合の幾何学的な変換に基づく。横方向の変形によりこのdCTE分布プロフィールは、回転対称のdCTE分布に関して基本的に及び予測不能に変化するのではなく、数学的にほぼ再現可能でかつ定義されたように変化する。これは、非回転対称の分布プロフィールから回転対称の分布プロフィールへの逆方向での数学的な反転の場合にも当てはまる。
【0037】
横方向の変形の前後のdCTE分布プロフィールは、互いにある程度「類似」している。これらのプロフィールの「類似性」は、当初の回転対称の分布の基本的な特徴が、横方向の変形により得られた分布においても見ることができるという点にある。これらの特徴は、分布の相対的及び絶対的な極値の数及びその相互の相対位置を含む。
【0038】
例えば、DE 10 2004 024 808 A1に説明されかつ上記の式(1)に関して数学的に記載された回転対称のdCTE分布プロフィールは、円形のCAでの光学的露出に関して設計されている。幾何学的変換の上述の設計原理に基づいて横方向の変形により他の、非回転対称の分布プロフィールに変換されたこのプロフィールは、この変換プロセスなしの場合よりも、他の手段なしでも、伸びた楕円形のCAでの光学的露出にとってより適している。
【0039】
従って、このdCTE分布プロフィールは、非回転対称の、非円形の形状を有し、この形状は理想的には、回転対称の分布プロフィールの少なくとも1つの方向への伸長により一義的に数学的に記載することができる。この伸長率は、1より大であるか、又は1より小である。
【0040】
CAの領域の重心を通過する交線Smaxが、この領域の重心を通過する最短の交線Sminよりも少なくとも20%長い場合(Smax > 1.2×Smin)の光学的使用領域CAを、ここでは非円形と定義する。非円形のCAへの適合が、複数の交線の曲線帯域の狭い帯域幅のためにこのプロフィールの「類似性」に関する上述の条件を満たすような場合の分布プロフィールが、非回転対称のdCTE分布プロフィールと定義される。
【0041】
丸い形状内での横方向変形によるCTE不均一分布の幾何学的変換の設計原理は、むしろ複雑なアウトラインを有するCA領域への適合のためにも適している。このように製造された分布プロフィールは、丸い形状(又はその一部)の分布プロフィールの、複数の空間方向への同時の又は連続した伸長によって記載することができることが重要である。これらの空間方向は、好ましくは共通の変形平面上に延在し、この変形平面は、好ましくは光学的使用領域CAの平面に対して垂直に延在する。
【0042】
本発明による非回転対称のdCTE分布プロフィールの場合の長さが標準化された交線の類似性に関する要求は、楕円形の光学的露出領域CAの全体にわたって満たされなければならない。CAの端部ではしばしば困難が生じる。本発明によるブランクの2つの好ましい実施態様を次に記載し;これらは、上述の一般的設計原理を、特にCAの端部領域について、CAとdCTE分布プロフィールとの相互作用の側面のもとで改良している。
【0043】
第1の改良
本発明による非回転対称のdCTE分布プロフィールは、非回転対称の形状を有し、この形状内で、山頂を中心とした等高線と同じように、CA平面の表面法線を中心として閉じた等値線が延在し、かつこれがCTE不均一性の同じレベルを表すことにより特徴付けられる。
【0044】
この基本状態に基づいて、第1の好ましい実施態様の場合に、dCTE分布プロフィールが、0.5×dCTEmaxのdCTE値を有する閉じた等値線を有し、この等値線の全長の少なくとも80%の部分長さが、光学的使用領域CA内に延在することが規定されている。
【0045】
最大dCTE不均一性の半分のレベルのdCTE値を表すdCTE分布プロフィールの等値線は、その全長の少なくとも80%が、好ましくは全体が、このミラー支持体ブランクのCA内に延在する。dCTE分布プロフィールの複雑な推移(例えば波形を有するプロフィール)の場合、複数の閉じた等値線は、CAの領域の重心から異なる距離を有するレベルに延在していてもよい。この場合、通常では、CAアウトラインに最も近くに延在する等値線が、上述の条件、つまりその長さの80%以上がCAアウトライン上に又はCAアウトライン内に延在するという条件を満たす場合が有用である。理想的には、この等値線は、CA領域の重心から最も距離がある等値線でもある。0.5×dCTEmaxのレベルを有するどの等値線がCAにより近く延在しているかが一義的には確認できないか又はこのような等値線が存在しないような他の場合には、CAにdCTE分布プロフィールの適合品質を調節及び評価するためのこの基準は適用できない。
【0046】
これは、CAのアウトライン線のdCTE不均一性プロフィールの形状が、距離の等値線の大部分(それぞれの等値線の長さの少なくとも80%)がCA内に延在するように適合されることを意味する。理想的には、CAのアウトラインのdCTE不均一性プロフィールの形状は、全ての等値線がこのCAのアウトライン上に又はアウトライン内に延在するように正確に適合される。
【0047】
第2の改良
本発明によるブランクの第2の好ましい実施態様の場合に、このCAの非円形領域が非円形のアウトラインによって定義されていて、このアウトラインに沿ってdCTE分布プロフィールのdCTE最大値及びdCTE最小値が位置し、この最大値と最小値との間の差PVCAは、0.5×dCTEmax以下であることが予定されている。
【0048】
第1の改良された実施態様の場合には、非円形の楕円のCAアウトライン及び非回転対称のdCTE分布プロフィールの幾何学形状の実質的な位置合わせに集中するが、第2の改良では、dCTE分布プロフィールと光学的使用領域との間の相互作用の定量化に集中する。
【0049】
このdCTE分布プロフィールは、ここでは、CAアウトラインが分布プロフィールのできる限り少ない数の等値線と交差するように形成されている。その理由は、このCAアウトラインがより多くの等値線により交差されていると、dCTE分布のCA内のイメージング品質への光学的影響がより顕著になるためである。
【0050】
この影響の尺度は、CAアウトラインに沿ってdCTE値中のレベルの差の絶対値の合計によって生じる。合計によって得られる全体のレベルの差が大きければそれだけ、dCTE分布プロフィールのCA内の光学的イメージへの影響が強くなる。しかしながら、この全体のレベルの差は、CAアウトラインの円周の長さに依存することができる。従って、CAアウトラインに沿って生じるdCTE極値(最大値及び最小値)による差として得られる差PVCAが、本発明の場合に、dCTE分布プロフィールの等値線によるCAアウトラインの交差による相互作用の度合いの尺度として使用される。PVCAは、全体としてCAにわたる最大dCTE不均一性の半分以下であり、好ましくは0.3×dCTEmax以下である。
【0051】
この分布プロフィールを、回転対称の分布プロフィールを少なくとも1つの空間方向へ伸長し、この場合の伸長率が少なくとも1.2であることによって一義的に数学的に記載できる場合に好ましいことが判明した。
【0052】
この伸長率は、ここでは、伸長の前後の長さの比の値を意味する。この1からの逸脱が大きくなればそれだけ、本発明によるブランクの使用の際の分布プロフィールの利点は顕著となる。
【0053】
この関係で、分布プロフィールを、丸い形を複数の空間方向へ伸長し、これらの空間方向が一つの共通の変形平面上に延在し、この共通の変形平面は光学的使用領域CAに対して平行に延在することによって、一義的に数学的に記載できる場合に好ましいことも判明した。
【0054】
本発明によるブランクの好ましい実施態様の場合に、dCTE分布プロフィールは、円形の形状を同一の変形表面上に延在しかつ120°の角度をなす3つの方向へ伸長することにより記載することができる。
【0055】
回転軸対称の分布の中心から出発して、3方向への同時の伸長によってdCTE分布プロフィールが得られ、これらは例えば三方クローバーリーフ、ワンケルエンジンピストン又はピックの断面形状を有する。
【0056】
この製造方法について、上述の技術的課題は、本発明によって、次の工程を有する方法により解決される:
a) 回転対称のdCTE分布プロフィールを有する、Tiをドープしたシリカガラスのガラス円柱体を準備する工程、及び
b) 前記ガラス円柱体を軟化し、かつこのガラス円柱体の縦軸方向に対して垂直方向に作用する力成分を有する成形力を作用させながら前記ガラス円柱体を形成して、それにより、この回転対称のプロフィールを少なくとも1つの方向へ伸長させて、非円形断面を有しかつ非回転対称のdCTE分布プロフィールを有する円柱形のブランクが得られるように、前記ガラス円柱体を成形する工程。
【0057】
本発明による方法の出発点は、理想的に円柱軸を中心に正確に回転対称に伸びるdCTE分布プロフィールを有するガラス円柱体である。実際に、例えばDE 10 2004 024 808 A1に説明されかつ上記式(1)による数学的に記載される要求を満たす二次元のdCTE分布プロフィールが適切である。このようなプロフィールは、ここでは、このプロフィールが完全に回転対称の幾何学形状を示さなくても、回転対称と定義される。
【0058】
円形の形状とは異なるCAを有する光学的露出と共に使用するためのこのようなガラス円柱体の適合のために、このガラス円柱体は成形プロセスに供され、かつこのプロセスにおいて、上述の「幾何学的変換」によりガラス円柱体の縦軸に対して横方向に変形、例えば伸長される。この成形プロセスの結果として、非円形断面を有する、Tiをドープしたシリカガラスの円柱状ブランクが得られる。単純な伸長操作が、予め設定された回転対称のプロフィールを、CTE不均一性の非回転対称の分布プロフィールへ変換するために既に十分であり、他のあらゆる適合化手段なしでも、前記成形プロセスなしの場合よりも、伸びた楕円形のCAを有する光学的露出のためにより適している。
【0059】
このガラス円柱体を方法工程(b)により成形する間に、前記円柱体は、このガラス円柱体の縦軸に対して垂直に伸びる方向で1回又は繰り返し伸長される。繰り返し成形する場合には、この変形措置は、同時に又は連続して行うことができる。後者に挙げた場合には、成形工程の後に得られたこのガラス体は、更に引き続く成形工程で変形される。
【0060】
この場合、ガラス円柱体の縦軸は、製造されるべきミラー支持体ブランクの光軸又は主機能方向に一致する。従って、ガラス円柱体中の回転対称のdCTE分布プロフィールは、成形されたブランク中に同じ幾何学的形状で反映されることが保証される。理想的には、成形力は、ガラス円柱体の縦軸方向に対して垂直方向にだけ作用し;しかしながら、実際には、他の方向成分を有する成形力を避けることはできない。得られたブランクの品質及び有用性のための重要な要因は、回転対称のdCTE分布プロフィールとの「類似性」が維持されることである。当初の回転対称の分布の重要な特徴が、成形により得られた分布中にも見られる場合にこの目的は達成される。この意味範囲で重要な特徴とは、当初の分布の相対的及び絶対的な極値の数及びその相互の相対位置である。
【0061】
それにより設定されるdCTE分布プロフィールは、以前のガラス円柱体の縦軸を中心として非回転対称であり、かつ本発明によるブランクに関して上述により詳細に説明されているように、次の特徴、
(1) 長さが標準化されかつこのCA領域の重心を通過する全ての直線状のプロフィール交線が、0.5×dCTEmax未満、好ましくは0.3×dCTEmax未満の最大帯域幅を有する曲線帯域を形成するdCTE曲線群を生じる、
(2) 及び、好ましくは、縦軸を中心として閉じた、0.5×dCTEmaxのCTE不均一性のレベルを有する等値線は、完全にCA内に延在するか又はその長さの少なくとも80%がCA内に延在する、
(3) 及び/又は、好ましくは、CAのアウトラインに沿った、最大値と最小値との間の差PVCAが、0.5×dCTEmax以下である、
を示す。
【0062】
こうして得られた、TiO2−SiO2ガラスからなる成形体は、更なる熱処理、例えば、アニーリング及び/又は、更なる機械加工、例えば研削及び研磨の後にミラー支持体ブランクとして直接使用することができるか、又は、ブランクを得るために更なる加工のための前製品として提供することができる。
【0063】
この成形プロセスは、ガラス円柱体を火炎で加熱し、軟化させ、このプロセス中で円柱体の外面に成形力を作用させることにより変形させることで行うことができる。特に、CTE分布プロフィールの再現性及び定義された調節に関して、しかしながら、方法工程(b)による成形が、前記ガラス円柱体を、前記ガラス円柱体の縦軸を垂直方向に向けて、非回転対称の内部幾何学形状を有する溶融型中に配置し、かつ前記型内で少なくとも1200℃の温度に加熱し、かつ軟化させて、前記ガラス円柱体を、前記溶融型中へ重力の作用下で、好ましくは圧縮力により支援して、横方向へ流出させる成形工程を有する手順が好ましい。
【0064】
前記成形工程の結果として、このガラス円柱体の幾何学形状は、定義されたようにCAの幾何学形状に適合され、これは次のことを意味する:このガラス円柱体は、特定のCAの幾何学形状に適合された非回転対称の横断面(円柱軸に対して垂直の平面で)を有するが、通常では、最終的なミラー支持体の幾何学形状に適合された横断面を有する。
【0065】
長円−楕円形の横断面を有するdCTE分布プロフィールの作製のためには、このガラス円柱体の縦軸に対して垂直方向の横断面で見て、長軸と、この長軸と比べてより短い軸を有する内部幾何学形状を有する溶融型を使用することで十分である。
【0066】
好ましい手法では、長円−楕円形の横断面を有するdCTE分布プロフィールは、例えば、横断面が楕円である内部幾何学形状を有するか又は長方形の内部幾何学形状を有する溶融型を使用することにより達成される。
【0067】
円柱状のガラス体を得る手順は、Tiをドープしたシリカガラスの製造を考慮する。いわゆるVAD法(気相軸付け法;vapor axial deposition)を、ここで特に言及しなければならない;この方法の場合、SiO2粒子を回転する基材の前面側に堆積させ、かつ直接ガラス化して円柱形ガラス体にする。次の:
aa) ケイ素及びチタンを有する出発物質の火炎加水分解により、SiO2及びTiO2の多孔性スート体を製造する工程、
bb) 前記スート体を乾燥及び焼結して、Tiをドープしたシリカガラスの、引き延ばされたガラス前製品を形成する工程、
cc) 前記ガラス前製品を、1500℃より高い温度に加熱し、軟化させかつガラス円柱体に成形する均質化プロセスで、前記ガラス前製品を均質化する工程
を有する方法工程(a)によるガラスシリンダを準備する変法は、特に有用であることが判明した。
【0068】
Tiをドープしたシリカガラスは、ここでは、いわゆる「スート法」に従って合成される。多孔質のスート体が中間生成物として得られ、このスート体は化学組成をドーピング又は乾燥によって変更することができる。
【0069】
TiO2−SiO2ガラスの予定されたヒドロキシル基含有率を調節するための乾燥は、ハロゲンを用いた反応性化学処理によって又は真空下でのスート体の熱処理によって行われる。
【0070】
このTiO2−SiO2ガラスは、ガラス化及び引き続き均質化により、ルチル微結晶が溶融することができる程度の高い温度に加熱される。このガラスは、TiO2濃度のより均質な分布を生じさせるために、例えばねじり加工により同時に変形される。このために、このTiO2−SiO2ガラスは、1500℃より高い温度に加熱しかつ軟化させこのプロセスで成形する均質化プロセスに供される。この均質化プロセスの完了後に、TiO2−SiO2ガラスは、回転対称のdCTE分布プロフィールを有するガラス円柱体の形で存在する。
【0071】
好ましい実施態様の記載
本発明を、ここで実施態様及び図面を参考にして詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】グレー値スケール(ppb/K)と共に擬似カラー表示(グレー値)で示した、丸い横断面を有するSiO2−TiO2ブランクのdCTE分布プロフィール。
図2】中心点を通過する交線における、図1のdCTE分布プロフィールを示すグラフ。
図3】五角形の形状を有するプロットされた仮想CAを備えかつ6つの分布プロフィール交線S1〜S6を備えた、図1のdCTE分布プロフィール。
図4】五角形の形状を有するプロットされたCAを備えかつ等値線及び分布プロフィール交線S1〜S7を備えた、横方向の変形により作製された本発明によるdCTE分布プロフィール。
図5】標準化された交線S1〜S6に沿った、図3のプロフィールのdCTE推移を示すグラフ。
図6】標準化された交線S1〜S7に沿った、図4のdCTE推移を示すグラフ。
図7】それぞれ、図3の分布プロフィールにおけるCAアウトラインに沿ったdCTE推移及び図4の分布プロフィールにおけるCAアウトラインに沿ったdCTE推移を示す2つの曲線を有するグラフ。
図8】楕円形状を有するプロットされた仮想CAを備えかつ分布プロフィール交線を備えた、図3のdCTE分布プロフィール。
図9】楕円形状を有するプロットされたCAを備えかつ等値線及び分布プロフィール交線を備えた、横方向の変形により作製された本発明によるdCTE分布プロフィール。
図10】標準化された交線に沿った、図8のプロフィールのdCTE推移を示すグラフ。
図11】標準化された交線に沿った、図9のdCTE推移を示すグラフ。
図12】それぞれ、図8の分布プロフィールにおけるCAアウトラインに沿ったdCTE推移及び図9の分布プロフィールにおけるCAアウトラインに沿ったdCTE推移を示す2つの曲線を有するグラフ。
図13】長方形の形状を有するプロットされた仮想CAを備えかつ3つの分布プロフィール交線S1、S2、S3を備えた、第2のdCTE分布プロフィール。
図14】長方形の形状を有するプロットされたCAを備え、等値線及び3つの分布ププロフィール交線S1、S2、S3を備えた、丸い初期プレートの横方向の変形により作製された本発明によるdCTE分布プロフィール。
図15】標準化された交線S1、S2、S3に沿った、図13のプロフィールのdCTE推移を示す3つの曲線を有するグラフ。
図16】標準化された交線S1、S2、S3に沿った、図14のdCTE推移を示す3つの曲線を有するグラフ。
図17】楕円形状を有するプロットされた仮想CAを備えかつ分布プロフィール交線S1〜S6を備えた、第3の回転対称のdCTE分布プロフィール。
図18】楕円形状を有するプロットされたCAを備えかつ等値線及び分布プロフィール交線を備えた、横向方向の変形により作製された本発明によるdCTE分布プロフィール。
図19】標準化された交線に沿った、図17のプロフィールのdCTE推移を示すグラフ。
図20】標準化された交線に沿った、図18のdCTE推移を示すグラフ。
図21】製造のために使用する溶融型中に埋め込まれた、三角形の形状のミラー支持体ブランクの特別な実施態様の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0073】
ミラー支持体ブランク用の円柱形の前製品の第1の製造方法
TiO2 約8質量%でドープされたスート体を、SiO2−TiO2粒子を形成するための出発物質として、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)及びチタンイソプロポキシド[Ti(OiPR)4]の火炎加水分解によるOVD法によって製造する。
【0074】
このスート体を、黒鉛加熱素子を備えた加熱炉中で真空中で1150℃の温度で脱水する。この脱水処理は、2時間後に完了する。
【0075】
このように乾燥したスート体を、引き続き、焼結炉中で、減圧(10-2mbar)下で、約1500℃の温度でガラス化して、TiO2−SiO2ガラスからなる透明なブランクにした。このガラスの平均OH含有率は、約170質量ppmである。
【0076】
このガラスを、次いでサーモメカニカル均質化(ねじり加工)により均質化し、かつTiO2−SiO2ガラスの円柱を形成する。このために、棒状の出発体を、酸水素バーナーを備えたガラス旋盤に挟み付け、層の完全な除去のためにEP 673 888 A1に記載されたように、成形プロセスに基づき均質化する。このプロセスにおいて、この出発体を、酸水素バーナーを用いて局所的に2000℃より高く加熱し、それにより軟化させる。このプロセスの場合にこの酸水素バーナーには、酸素1mol当たり水素1.8molが供給され、それにより酸化作用を有する酸水素炎が形成される。
【0077】
この出発体を、2つのホルダの相互の相対運動により、この出発体の縦軸を中心としてねじり加工し、この軟化したガラス材料をねじり加工体の形成下で、出発体の全長にわたり半径方向で完全に混合する。それにより直径約90mm及び長さ約960mmの細長いねじり加工体が得られる。
【0078】
直径200mm及び厚さ195mmの、TiO2−SiO2ガラスの丸い出発プレートを、このねじり加工体から作製する。図1は、この出発プレート1の厚さに関して測定したdCTE分布プロフィールの擬似カラー表示(グレーの陰影)を、このプレートの上面側の平面図で示す。図1の右側に示したグレースケールによると、相対的なdCTE値はゼロ〜5ppb/Kである。このグレースケールは、図3、4、8、9、13、14、18及び19の擬似カラー表示(グレーの陰影)についても基本として使われる。
【0079】
この分布プロフィールは、このプレートの中心軸2を中心として実質的に回転対称であり、このdCTE値は外側から中心に向かって低下する。相対的なゼロ値(このプロフィールの最小のCTE値)は、中心軸2に位置している。
【0080】
このことは図2のグラフにも示されていて、このグラフ中で、出発プレート1のdCTE分布プロフィールは、中心軸2を通る断面で示されている。このdCTE値は、ここではmmで示す位置P(直径)に対してppb/Kでプロットされている。従って、dCTEは、均一に中心に向かって約5ppb/Kからゼロの値まで低下する。縁部での最大不均一値と中心の最小不均一値(ゼロ)との間の差としての全体の不均一性dCTEmaxは、従って5ppb/Kである。
【0081】
CTE値の最大の差は、5ppb/Kで比較的小さい。この差は、TiO2濃度の変化及び仮想温度の変動が第一の要因である。この比較的低いdCTEレベルでは、その製造プロセスでの、例えば堆積工程又は均質化工程での僅かな変動が、基本的に異なるdCTE分布プロフィールになることがある。特に、図1と比べた水平方向に鏡面処理した分布プロフィールは、しばしば、中心軸の領域でCTE最大値を、エッジでdCTEのゼロの値を示す。
【0082】
しかしながら、それぞれの出発プレートのdCTE分布プロフィールが実質的に回転対称であることが、本発明にとって重要である。これは、この実施態様の場合に、均質化プロセスによって保証される。
【0083】
このような丸い出発プレートは、次に実施例を用いて説明されているように、異なる成形体の製造のための出発点である。
【0084】
実施例1 前製品からミラー支持体ブランクの製造
直径200mm及び厚さ195mmのTiO2−SiO2ガラスの出発プレート1を炉中での横方向の成形により、図4に図示されているように、5つの角を有する五角形プレート4に成形する。このために、この出発プレート1を、五角形の内部横断面を有する黒鉛製の溶融型(後に三角形の横断面を有するプレートへの成形について更に詳しく説明されているのと同様に)の中央に入れる。この溶融型を排気し、1350℃に加熱し、引き続き9℃/minの勾配で1700℃に加熱し、その後で2℃/minの勾配で1780℃の温度に加熱する。この温度で石英ガラス材料は軟化し、この軟化した石英ガラスは、自重によって及び促進のために更にその上に置かれた黒鉛プレートの重量によって変形し、横方向へ流動し、それにより、溶融型の底部を完全に満たす。
【0085】
こうして得られた五角形プレート4(図4)は、酸化チタン8質量%を有しかつ約170質量ppmの平均ヒドロキシル基含有率を有する、高いケイ酸含有率の均質化されたガラスからなる。図4は、この五角形プレート4のプレート厚さに関して測定したdCTE分布プロフィールの擬似カラー表示(図1のグレースケールのグレー陰影として)を、この上面側の平面図で示す。このdCTE分布プロフィールは、もはや出発プレート1のように回転対称ではないが、実質的に、中心軸41に関して鏡面対称を示す多角形である。五角形プレートの全体の横断面に基づいて、5ppb/K及び0ppb/KのdCTE極値は、出発プレート1と同様である。
【0086】
これに対して、図3は、出発プレート1から流出によって製造することができる丸いプレート3の仮想dCTE分布プロフィールを示す。これは、本発明の主題ではなく、単に比較の目的で用いられる。出発プレート1は、この場合、円形の横断面を有する溶融型中での流出によって成形される。この出発プレートは、この場合、溶融型の中央に縦軸を垂直方向に向けて取り付けられる。軟化した石英ガラスは横方向に流出し、この場合、溶融型の底部を完全に満たす。このように成形したこの丸いプレート3は、直径280mm及び厚さ100mmを有する。
【0087】
丸いプレート3への仮想の変形の際に、出発プレート1の粘性の石英ガラス材料は、溶融型の周囲の縁部の方向に向かって流動し、この材料は理論的には全ての位置で同時に到達する。丸いプレート3のdCTE分布プロフィールは、従って、中心2を通過する全ての交線で、図2に示したプロフィールと同じである。
【0088】
これに対して、軟化した石英ガラス材料は、出発プレート1の五角形プレート4への変形の際に、少なくとも1つの方向で比較的早くに障害物に当たり、かつ前記障害物で溜まり、他方で、この材料は他の方向には更に自由に流出する。従って、この方向でdCTE分布プロフィールは、他の方向と比べてより強く延ばされる。従って、五角形プレート4のdCTE分布プロフィールは、この比較的短い鏡軸41に沿ったプレートの中心軸Mを通過する交線において、図2に示したプロフィールとほぼ同じであるが、これに対して垂直方向に延びる軸42に沿ったプレートの中心軸Mを通過する比較的長い交線では、より強く延ばされる。
【0089】
これとは無関係に、当初の出発プレート1、丸いプレート3、及び五角形プレート4のdCTE分布プロフィールとの間には、dCTE分布プロフィールの重要な特徴は、五角形の形状で、つまり分布の相対的及び絶対的な極値の数及び他方に対するその相対的な位置は、出発プレート1及び丸いプレート3の場合と同じであるという意味で「類似性」がある。この点で、図4のdCTE分布プロフィールは、既に、本発明によるミラー支持体ブランクのための設計原理の基礎となる上述の基本条件の部分を満たしている。これは、回転対称ではないが、「幾何学形状の変換」の方法によってかつ簡単な伸長する変形を考慮して、出発プレート1の丸い形状の当初の回転対称の分布へ数学的に一義的に変換することができる。
【0090】
更に、当初の、回転対称の分布プロフィールと比較して、図4のdCTE分布プロフィールは、非円形の光学的使用領域CAと協同して、このミラーのイメージング品質を比較的僅かな損傷との相互作用を示す。これについて、次に更に詳細に説明する:
(a) 交線の帯域幅
図1の補足として、五角形の形状及び丸められた角部を有する光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)が図3にはプロットされている。CA内には、中心2を通過して延びる複数の交線S1〜S6がプロットされている。この中心2は、同時にCAの領域の重心である。
【0091】
以後、dCTE値を言及する場合には、この値はCA内の領域に関する。従って、このdCTE値は、CA内の絶対的な最小値CTEminからのCTE分布プロフィールの局所的逸脱の量として計算される(dCTE=CTE−CTEmin)。
【0092】
図5のグラフは、上記交線S1〜S6に沿ったdCTE分布プロフィールを示す(CA内;この評価のために重要な最も顕著な交線だけに符号が付されている)。このグラフの縦軸には、相対的dCTE値がプロットされていて(ppb/K)、横軸には、位置の値Pがそれぞれの交線長さに標準化され(相対単位)、この値は従って0〜1の範囲内に入る。CA内の最大不均一性dCTEmaxは、ここでは約3.4ppb/Kである。CA内の最小値dCTEminは、定義に従ってゼロである。明確に異なるdCTE値は、縁部位置0及び1の領域において、一方でK(S3)とK(S5)との交線プロフィールの間で、他方でK(S1)とK(S6)との交線プロフィールの間で見られる。最大値(ブロック矢印51で表した)におけるこの差は約2.8ppb/Kである。この最大値51は、曲線K(S1)〜K(S6)により形成される曲線群の最大帯域幅であり;これは、dCTEmax(3.4ppb/K)の約82%である。
【0093】
五角形の形状及び丸められた角部を有する光学的使用領域CAの同じアウトラインL(CA)が、図4の分布プロフィールにおいても図式的にプロットされている。このCAの領域の重心は点Mにある。図6のグラフは、図4のdCTE分布プロフィールの場合の、いくつかの重要な交線S1〜S6(CA内で)に沿ったdCTE分布プロフィールを示す。この場合でも、対応するdCTE値は、(ppb/Kで)このグラフの縦軸にプロットされ、それぞれの交線長さに標準化された位置の値は横軸にプロットされている。全ての交線プロフィールK(S1)〜K(S6)が、相対的に類似しかつ小さな曲線帯域を形成することは明らかである。CA内の最大不均一性dCTEmaxは、ここでは約1.6ppb/Kである。これらのdCTE値の最大差(ブロック矢印61で表した)は、約0.75ppb/Kである。従って、これらの曲線K(S1)〜K(S6)により形成される曲線群の帯域幅最大値(最大値61)は、ここではdCTEmaxの約47%である。更に、同じ出発材料を使用して、CA領域内でのdCTEmaxを、3.4ppb/K(図3及び5参照)から1.6ppb/K(図4及び6参照)に低減することが可能であり、これは、EUVリソグラフィー用のミラーとして適用する場合にイメージング品質の改善を伴う。
【0094】
(b) CAアウトラインL(CA)についての著しい差
図7のグラフは、図3と4とのブランクにおける、それぞれ時計回りに廻って位置P0(位置P0は、図3及び4で示されている)で始まりかつそこで終わる、CAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE分布プロフィールの推移の比較を示す。y軸には、dCTE値がppb/Kで、アウトラインL(CA)のそれぞれの長さについて標準化された位置P(相対単位で)(アウトラインL(CA)の長さはこの場合では同じ)に対してプロットされている。
【0095】
曲線U1は、図3のブランクにおけるCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE分布プロフィールの推移を表す。これは、このCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE極値(最大値(3.4ppb/K)と最小値(0.7ppb/K)の間の2.7ppb/Kの差PVCAをもたらす。従って、PVCAは、0.79×dCTEmaxである。曲線U2は、図4のブランクにおけるCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE分布プロフィールの推移を表す。これは、このCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE極値(最大値(1.6ppb/K)と最小値(1.2ppb/K)の間の0.4ppb/Kの差PVCAをもたらす。従って、PVCAは、0.25×dCTEmaxである。
【0096】
図3のdCTE分布プロフィールとの比較において、ミラー支持体ブランク4は、非円形CAを有する光学的露出においてより良好なイメージング挙動を示す。これは、dCTE分布プロフィールがCAの形状に良好に適合され、かつこのCAアウトラインL(CA)は、この分布プロフィールのできる限り少ない数の等値線と交差するように設計されているという事実に帰することができる。
【0097】
(c) レベル0.5×dCTEmaxを有する等値線の推移
0.5×dCTEmaxのdCTE値についての等値線H1は、図4中に図式的に示されている。全体の等値線長さを有する等値線H1が光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)内で延びていることが認識できる。これは、図4のミラー支持体ブランク4中のdCTE不均一性プロフィールの形状が、このCAアウトラインL(CA)がこの分布プロフィールのできる限り少ない数の等値線と交差するようにこのアウトラインL(CA)に適合していることを意味する。
【0098】
このようにブランク4は、五角形の形状のその特別な光学的使用領域CAとの組合せで、本発明による一般的設計原理の全ての条件、すなわちこのブランクのdCTE分布プロフィールの要求及びdCTE分布プロフィールと非円形アウトラインL(CA)を有する光学的露出領域CAとの間の相互作用を満たす。
【0099】
実施例2
本発明の他の実施例の場合に、直径200mm及び厚さ195mmのTiO2−SiO2ガラスの出発プレート1を炉中での横方向の成形により、図9に図示されているように、楕円形の横断面を有するプレート9に成形する。このために、この出発プレート1を、楕円形の内部横断面を有する黒鉛製の溶融型の中心に置く。その他は、この横方向の変形を軟化及び溶融型中での流出によって、既に実施例1で説明したように行う。図1の出発プレートと比較して、楕円の長半軸91対短軸92の比の値は1.45である。
【0100】
こうして得られた楕円形プレート9は、酸化チタン8質量%を有しかつ約170質量ppmの平均ヒドロキシル基含有率を有する、高いケイ酸含有率の均質化されたガラスからなる。
【0101】
図9の擬似カラー表示(図1のグレースケールを有するグレー陰影として)は、この楕円の主軸91及び92に関してほぼ鏡像対称を示す。ブランク9の全ての領域中のdCTE極値(5ppb/K)及び(0ppb/K)は、出発プレート1の場合と同様である。出発プレート1及び楕円形の横断面を有するプレート9のdCTE分布プロフィールの間には、dCTE分布プロフィールの重要な特徴が、楕円形の形状で、つまりこの分布の相対的及び絶対的な極値の数及び他方に対するその相対的な相互の位置は同じであるという意味で「類似性」がある。この点で、図9のdCTE分布プロフィールは、既に、本発明によるミラー支持体ブランクのための設計原理の基礎となる上述の基本条件の部分を満たしている。これは、回転対称ではないが、「幾何学形状の変換」の方法によってかつ簡単な伸長の変形を考慮して、当初の回転対称の分布へ数学的に一義的に変換することができる。
【0102】
更に、回転対称の分布プロフィールと比較して、図9のdCTE分布プロフィールは、非円形の光学的使用領域CAと協同して、このミラーのイメージング品質を比較的僅かな損傷との相互作用を示す。これについて、次に更に詳細に説明する:
(a) 交線の帯域幅
比較のために、図8は、丸いプレート3を再び示す(図3で説明したのと同様)。光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)が、この中に図式的にプロットされていて、このアウトラインは「楕円形」ということができる。CA内には、中心2を通過して延びる複数の交線S1〜S5がプロットされている。この中心2は、同時にCAの領域の重心を形成する。
【0103】
図10のグラフは、上記交線S1〜S5に沿ったdCTE分布プロフィールを示す(CA内;この曲線群の幅の確定のために重要な最も顕著な線だけに符号が付されている)。このグラフの縦軸には、相対的dCTE値がプロットされていて(ppb/K)、横軸には、位置の値Pがそれぞれの交線長さに標準化され(相対単位)、この値は従って0〜1の範囲内に入る。明確に異なるdCTE値は、縁部位置0及び1の領域において、交線プロフィールK(S1)とK(S5)との間で見られる。帯域幅最大値(ブロック矢印101で表した)において、最小値と最大値との差は約3.1ppb/Kである。この最大値101は、曲線K(S1)〜K(S5)により形成される曲線群の帯域幅最大値であり;これは、dCTEmaxの約79%である。
【0104】
楕円形の形状を有する光学的使用領域CAの同じアウトラインL(CA)が、図9の分布プロフィールにおいても図式的にプロットされている。このCAの領域の重心は点Mである。図11のグラフは、図9のdCTE分布プロフィールの場合の交線S1〜S5(CA内で)に沿ったdCTE分布プロフィールを示す。この場合でも、対応するdCTE値は、(ppb/Kで)このグラフの縦軸にプロットされ、それぞれの交線長さに標準化された位置の値P(相対単位)は横軸にプロットされている。全ての交線プロフィールK(S1)〜K(S5)が、相対的に類似しかつ小さな曲線帯域を形成することは明らかである。これらのdCTE値の最大差(ブロック矢印111で表した)は、約0.6ppb/Kである。CA内の最大不均一性dCTEmaxは、ここでは約1.55ppb/Kである。従って、これらの曲線K(S1)〜K(S5)により形成される曲線群の帯域幅最大値(最大値111)は、ここではdCTEmaxの約39%である。
【0105】
(b) CAアウトラインL(CA)についての著しい差
図12のグラフは、図8と9とのブランクにおける、それぞれ時計回りに廻って位置P0で始まりかつそこで終わる、CAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE分布プロフィールの推移の比較を示す。y軸には、dCTE値(ppb/K)が、アウトラインL(CA)のそれぞれの長さが標準化された位置P(アウトラインL(CA)の長さはこの場合では同じ)に対してプロットされている。
【0106】
曲線U1は、図8のブランクにおけるCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE分布プロフィールの推移を表す。これは、このCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE極値(最大値(4ppb/K)と最小値(0.8ppb/K)の間の3.2ppb/Kの差PVCAをもたらす。従って、PVCAは、0.80×dCTEmaxである。
【0107】
曲線U2は、図9のブランクにおけるCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE分布プロフィールの推移を表す。これは、このCAアウトラインL(CA)に沿ったdCTE極値(最大値(1.5ppb/K)と最小値(1ppb/K)の間の0.5ppb/Kの差PVCAをもたらす。従って、PVCAは、0.33×dCTEmaxである。
【0108】
(c) レベル0.5×dCTEmaxを有する等値線の推移
0.5×dCTEmaxのdCTE値についての等値線H1は、図9中に図式的にプロットされている。ほぼ全体の等値線長さ(この長さの80%を越える)を有する等値線H1が光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)内で延びていることが認識できる。これは、図9のミラー支持体ブランク9中のdCTE不均一性プロフィールの形状が、このCAアウトラインL(CA)がこの分布プロフィールのできる限り少ない数の等値線と交差するようにこのアウトラインL(CA)に適合していることを意味する。
【0109】
このようにブランク9は、その特別な光学的使用領域CAとの組合せで、本発明による一般的設計原理の全ての条件を満たし、すなわちこのブランクのdCTE分布プロフィールの要求及びdCTE分布プロフィールと非円形アウトラインL(CA)を有する光学的露出領域CAとの間の相互作用を満たす。
【0110】
ミラー支持体ブランク用の円柱形の前製品の第2の製造方法
TiO2 約8質量%でドープされたスート体を、SiO2−TiO2粒子を形成するための出発物質として、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)及びチタンイソプロポキシド[Ti(OiPR)4]の火炎加水分解によるOVD法によって製造する。上述の第1の製造と比べて、スート体の表面温度を、全体の堆積プロセスの間に僅かに高く維持する。この僅かな差異が、TiO2濃度の異なる分布を引き起こす。
【0111】
実施例3
直径200mm及び厚さ195mmのTiO2−SiO2ガラスの出発プレートを、炉中での横方向の成形により、横方向の寸法400mm×250mm及び厚さ60mmの長方形プレートに変形する。このために、この出発プレートを、短辺b=250mm及び長辺a=400mmの長方形の内部横断面を有する黒鉛製の溶融型の中心に置く。その他は、この横方向の変形を軟化及び溶融型中での流出によって、既に実施例1で説明したように行う。
【0112】
こうして得られた長方形プレート14は、酸化チタン8質量%を有しかつ約170質量ppmの平均ヒドロキシル基含有率を有する、高いケイ酸含有率の均質化されたガラスからなる。
【0113】
図14の擬似カラー表示(図1のグレースケールを有するグレー陰影として)は、プレート辺a及びbを有する長方形プレート14の厚さに関して測定したdCTE分布プロフィールを、上面側の平面図で示す。dCTE分布プロフィールは、もはや、図13において比較のために図示されたような同じ出発プレートからなる丸いプレート13のような回転対称ではないが、鏡軸として長方形プレート14の2つの主軸a及びbを有する近似の2軸の対称を有する。このプロフィールの場合、dCTE値は、外側から内側に向かって中心軸Mまで増大する。全体のブランクにわたって見て、この相対的極値dCTEmaxは5ppb/Kである。
【0114】
発プレートの長方形プレート14への変形は、丸いプレート13(図13で示すように;そのdCTE分布プロフィールは出発プレートの分布プロフィールに一致する)への変形とは、プレートの長辺aの方向(出発プレートに対して伸長率=2)で、プレートの短辺bの方向(伸長率=1.25)よりも大きく伸びているという点で異なっている。従って、このdCTE分布プロフィールは、プレートの長辺「a」に沿ったプレートの中心軸Mを通過する交線の場合に、図13丸いプレートのプロフィールと比較して延びていて、プレートの短辺「b」の方向では、これは図13で示すプロフィールにほぼ同じである。
【0115】
当初の出発プレート及び長方形プレート14のdCTE分布プロフィールの間には、dCTE分布プロフィールの重要な特徴が、長方形の形状で、つまりこの分布の相対的及び絶対的な極値の数及びその相互の相対的な位置が、出発プレートの場合と同じであるという意味で「類似性」が存在する。この点で、図14のdCTE分布プロフィールは、既に、本発明によるミラー支持体ブランクのための設計原理の基礎となる上述の基本条件の部分を満たしている。これは、回転対称ではないが、「幾何学形状の変換」の方法によってかつ簡単な伸長する変形を考慮して、出発プレートの丸い形状の当初の回転対称の分布へ数学的に一義的に変換することができる。
【0116】
更に、回転対称の分布プロフィールと比較して、図14のdCTE分布プロフィールは、非円形の光学的使用領域CAと協同して、このミラーのイメージング品質を比較的僅かな損傷との相互作用を示す。これについて、次に更に詳細に説明する:
(a) 交線の帯域幅
図13には、長方形の形状を有しかつ丸められた角部を有する光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)が図式的にプロットされている。CA内には、中心2を通過して延びる3本の交線S1、S2及びS3がプロットされている。S1は、この長方形の形状の短軸に沿って延び、S2は長軸に沿って延び、S3は対角線に沿って延びる。
【0117】
図15のグラフは、前記交線S1〜S3(CA内の)に沿ったdCTE分布プロフィールを示す。このグラフの縦軸には、相対的dCTE値がプロットされていて(ppb/K)、横軸には、位置の値Pがそれぞれの交線長さに標準化され(相対単位)、この値は従って0〜1の範囲内に入る。これは、長方形の長軸S2に沿った交線プロフィールK(S2)及び対角線S3に沿った交線プロフィールK(S3)が、それぞれ、類似しかつ一方が他方とほぼ一致するが、しかしこの2つは長方形の短軸S1の交線プロフィールK(S1)とは明らかに異なることが解る。それぞれの中央領域で、全ての交線のdCTE値は、共通の最大値dCTEmax=4.5ppb/K(CA内の最大値(5ppb/Kと最小値(0.5ppb/K)の間の差として算出)を示す。しかしながら、縁部位置0及び1では、最大値(ブロック矢印151で示す)で約3.3ppb/Kの大きな差が生じる。この最大値151は、曲線K(S1)、K(S2)及びK(S3)により形成される曲線群の帯域幅最大値を示し;これは、dCTEmaxの約73%である。
【0118】
長方形の形状及び丸められた角部を有する光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)が、図14の分布プロフィールにおいても図式的にプロットされている。このCAの領域の重心は中心軸Mにある。図16のグラフは、この領域の重心(中心M)を通過する、図14のdCTE分布プロフィールの場合の交線S1〜S3(CA内で)に沿ったdCTE分布プロフィールを示す。
【0119】
この場合でも、対応するdCTE値は、このグラフの縦軸に(ppb/Kで)プロットされ、それぞれの交線長さに標準化された位置の値Pは横軸に(相対単位で)プロットされている。これは、交線プロフィールK(S2)及びK(S3)が類似しているが、図15のグラフの場合ほど明らかでないが、長方形の短軸S1に沿った交線プロフィールK(S1)とは異なることが明らかである。これらの交線のCA領域内の通常の最大値dCTEmaxもまた中央領域にあるが、これは2ppb/K(CA内の最大値(5ppb/K)と最小値(3ppb/K)との間の差として算出)にすぎず;(ブロック矢印161で示した)位置での曲線群のdCTE値の最大差は、約0.7ppb/Kにすぎない。従って、これらの曲線K(S1)、K(S2)及びK(S3)により形成される曲線群の帯域幅最大値は、ここではdCTEmaxの約35%である。dCTE中の僅かな変化及びこの交線S1〜S3のより一様なプロフィールによって、この分布プロフィールは、図13図15と比較して、CAへのより良好な適合及びより良好なイメージング特性を特徴とする。
【0120】
(b) レベル0.5×dCTEmaxを有する等値線の推移
等値線H1、H2、H3は、図14中に図式的にプロットされていて;これらは、同じ水準のdCTE値を示す。この場合、
・ 等値線H3は、−1.2×dCTEmaxのdCTE値を表し、
・ 等値線H2は、0.8×dCTEmaxのdCTE値を表し、かつ
・ 等値線H1は、0.5×dCTEmaxのdCTE値を表す。
【0121】
全体の等値線長さを有する等値線H1が光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)内で延びていることが明らかである。等値線H2は、その全体の等値線長さの約15%がCAの外側にあり、等値線H3は、全てがCAの外側にあるが、これは、光学的露出領域CAには属していない。
【0122】
これは、図14のミラー支持体ブランクの場合のdCTE不均一性プロフィールの形状が、このCAアウトラインL(CA)がこの分布プロフィールのできる限り少ない数の等値線と交差するようにこのアウトラインL(CA)に適合していることを意味する。
【0123】
このようにブランク14は、その特別な光学的使用領域CAとの組合せで、本発明による一般的設計原理の全ての条件を満たし、すなわちこのブランクのdCTE分布プロフィールの要求及びdCTE分布プロフィールと非円形アウトラインL(CA)を有する光学的露出領域CAとの間の相互作用を満たす。
【0124】
ミラー支持体ブランク用の円柱形の前製品の第3の製造方法
TiO2 約8質量%でドープされたスート体を、SiO2−TiO2粒子を形成するための出発物質として、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)及びチタンイソプロポキシド[Ti(OiPR)4]の火炎加水分解によるOVD法によって製造する。
【0125】
上述の製造に対して、スート体の表面温度を、ここで全体の堆積プロセスの間に僅かに変化させる。この僅かな差が、TiO2濃度の異なる分布を引き起こす。
【0126】
実施例4
直径200mm及び厚さ195mmのTiO2−SiO2ガラスの出発プレートを炉中での横方向の成形により、図18に図示されているように、楕円形のプレート18に成形する。このために、この出発プレートを、実施例1で既に説明したのと同様に、楕円形の内部横断面を有する黒鉛製の溶融型の中心に置く。この横方向の変形を軟化及び溶融型中での流出によって、実施例1で説明したように行う。図17に図示された同じ出発プレートの丸いプレート17と比較して、楕円形の長軸181の方向での伸び率は約1.5であり;短軸182の方向での伸び率は実際に1と等しい。
【0127】
こうして得られた楕円形プレート9は、その結果、酸化チタン8質量%を有しかつ約170質量ppmの平均ヒドロキシル基含有率を有する、高いケイ酸含有率の均質化されたガラスからなる。
【0128】
図18の擬似カラー表示(図1のグレースケールを有するグレー陰影として)は、この楕円の主軸181及び182に対してほぼ鏡像対称を示す。dCTE極値(5ppb/K)及び(0ppb/K)は、当初の出発プレートの場合及び上述の実施例1〜3と同様である。当初の出発プレート及び楕円形の形状を有するプレート18のdCTE分布プロフィールの間には、dCTE分布プロフィールの重要な特徴が、楕円形の形状で、つまりこの分布の相対的及び絶対的な極値の数及びその相互の相対的な位置が同じであるという意味で「類似性」が存在する。この点で、図18のdCTE分布プロフィールは、既に、本発明によるミラー支持体ブランクのための設計原理の基礎となる上述の基本条件の部分を満たしている。これは、回転対称ではないが、「幾何学形状の変換」の方法によってかつ簡単な伸長する変形を考慮して、丸い出発プレートの当初の回転対称の分布へ数学的に一義的に変換することができる。
【0129】
更に、回転対称の分布プロフィール(図17丸いプレート17によっても明らかにされた)と比較して、図18のdCTE分布プロフィールは、非円形の光学的使用領域CAと協同して、このミラーのイメージング品質を比較的僅かな損傷との相互作用を示す。これについて、次に更に詳細に説明する:
(a) 交線の帯域幅
図17において、光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)が、この中に図式的にプロットされていて、このアウトラインは「楕円形」ということができる。CA内に、中心2を通過して延びる複数の交線がプロットされていて、この特別に特徴付けられる交線は、符号S1〜S4により示されている。この中心2はCAの領域の重心を同時に形成する。
【0130】
図19のグラフは、代表的に選択された前記線S1〜S4(CA内の)に沿ったdCTE分布プロフィールを示す。このグラフの縦軸には、相対的dCTE値がプロットされていて(ppb/K)、横軸には、位置の値Pがそれぞれの交線長さに標準化され(相対単位)、この値は従って0〜1の範囲内に入る。CA内の最大不均一性dCTEmaxは、ここでは3.8ppb/Kである。明確に異なるdCTE値は、縁部位置0及び1の領域において、交線プロフィールK(S1)とK(S3)/K(S4)との間で見られる。最大値(ブロック矢印191で表した)におけるこの差は約2.8ppb/Kである。この最大値191は、曲線K(S1)〜K(S4)により形成される曲線群の帯域幅最大値であり;これは、dCTEmaxの約74%である。
【0131】
楕円形の形状を有する光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)が、図18の分布プロフィールにおいても図式的にプロットされている。このCAの領域の重心は点Mである。図20のグラフは、図18のdCTE分布プロフィールの場合の交線S1〜S4(CA内で)に沿ったdCTE分布プロフィールを示す。この場合でも、対応するdCTE値は(ppb/Kで)このグラフの縦軸にプロットされ、それぞれの交線長さに標準化された位置の値Pは(相対単位で)横軸にプロットされている。交線プロフィールK(S1)〜K(S4)の全てが、相対的に類似しかつ小さな曲線帯域を形成することは明らかである。これらのdCTE値の最大差(ブロック矢印201で表した)は、約1.3ppb/Kであり;dCTEmaxは3.8ppb/Kである。これらの曲線K(S1)〜K(S4)により形成される曲線群の帯域幅最大値(最大値201)は、ここではdCTEmaxの約34%である。
【0132】
図19及び図20の曲線群の帯域幅の差は、この場合、上記実施例1〜3の場合のように著しくはない。dCTE最大値(約3.8ppb/K)及び最小値(0)との間の振幅も、ほぼ同じである。しかしながら、CA内の、図20のdCTE分布プロフィールの場合のプロフィール交線K(S1)〜K(S4)は、図19のプロフィールよりもより高い類似性を示す。プロフィール交線のこのより高い類似性は、本発明のミラー支持体ブランクの加熱の際のより均一な歪みを生じ、従って、それにより引き起こされたイメージングエラーのより容易な補正が成し遂げられる。
【0133】
(b) レベル0.5×dCTEmaxを有する等値線の推移
図18のdCTE分布プロフィールは、レベル0.5×dCTEmaxで2つの等値線を有し;それらは他の内側に延在する等値線H2、及びその内側の等値線を完全に取り囲む外側の等値線である。このようなプロフィールの場合、CAのアウトラインに最も近くに延在する等値線が、非回転対称CAへの適合の品質にとって重要である。図18のプロフィールの場合、これは内側の等値線H2である。レベル0.5×dCTEmaxを有する等値線がCAの付近に延在するか明確には確認できないか又はこのような等値線が存在しないような他の場合には、CAへのdCTE分布プロフィールの適合品質の調節及び評価するためにこの基準は適用できない。
【0134】
図18の分布プロフィールの場合には、この全体の等値線長さを有する内側の等値線H1が、光学的使用領域CAのアウトラインL(CA)内で延在していることが認められる。これは、図18のミラー支持体ブランク18中のdCTE不均一性プロフィールの形状が、このCAアウトラインL(CA)がこの分布プロフィールのできる限り少ない数の等値線と交差するようにこのアウトラインL(CA)に適合していることを意味する。
【0135】
このようにブランク18は、その特別な光学的使用領域CAとの組合せで、本発明による一般的設計原理の全ての条件を満たし、すなわちこのブランクのdCTE分布プロフィールの要求及びdCTE分布プロフィールと非円形アウトラインL(CA)を有する光学的使用領域CAとの間の相互作用を満たす。
【0136】
ミラー支持体の製造のために、ミラー支持体ブランクの上面側を、研削及び研磨を含む機械処理にかける。図4に示されているように、例えば五角形の部分領域が、表面品質について及び石英ガラスの均質性に関して特に高い要求を有する高い露出表面領域CAとしてとして特徴付けられている凸型に湾曲する表面領域が例えば作製される。このミラー支持体の湾曲する表面にはミラー層が施され、得られたミラーエレメントは、EUVリソグラフィー用の投影系中で使用される。
【0137】
全ての実施例において、本発明によるミラー支持体ブランクは、丸いプレートの横方向の変形(伸長)により製造した。三角形の形状を有するミラー支持体ブランク210用のこの製造法は、図21によってより詳細に説明されている。このブランク210中に生じたdCTE分布プロフィール100は三つ折り対称を有し、この三角形の角部は、製造プロセスに従って広がっていて後に除去される。
【0138】
ブランク201の製造のために、三角形の内部幾何学形状を有するが三角形の頂部に膨らみ212を有する黒鉛型211を使用する。丸いプレート(点線の円213によってアウトラインが示された)をこの黒鉛型中に、この丸いプレート213及び黒鉛型211の中心軸214が同軸になるように置く。これとは別にミラー支持体ブランクの製造のために適している非同軸配置の場合に、dCTE分布プロフィールの所望な三つ折り対称からの逸脱が生じる。
【0139】
黒鉛型211の内部幾何学形状は、(図4の例に関して上記で説明されたように)丸いプレート213の加熱、軟化及び流出によって充填される。黒鉛型211の膨らみ212のために、ミラー支持体ブランク210の角部の流動プロセスが生じ、この流動プロセスは、生じるdCTE分布プロフィールのこの角部を、輪郭線219により示された形状よりもより鋭い形状にする。この光学的使用領域の平面図において、輪郭線219は、ワンケルエンジンピストン又はピックの形状のアウトラインを示す。この輪郭線219は、まさにdCTE分布プロフィールの形状を象徴化している(例えば、CA内にあるdCTE等値線値により定義されているように)。このdCTE分布プロフィールは前記輪郭線219の外側にも続く。
【0140】
CAの特別な場合のための一般的な考察
光学的使用領域CAが主に、異なる長さ(a>b)を有しかつ互いに直交する2つの軸a,bにより定義されている本発明のミラー支持体ブランクの特別な場合は、図9及び14によって説明されている。このような特別な場合には、CTE不均一性の推移dCTEa又はdCTEbは、それぞれ、前記2つの軸の方向に向かって、冒頭の記載したDE 10 2004 024 808 A1に従って次の式(2)及び(3)によって一般に記載することができる:
【数2】
CAに関して実際に存在するCTE不均一分布からdCTEaを減算した後に、0.5ppb/K以下の最小残留不均一性が残る。式(2)及び(3)中のパラメータは次の意味を有する:
a=長軸、b=短半軸及び
x=軸aに沿った距離、
y=軸bに沿った距離、
0、C1、C2、C3=球形ゼルニケ項の適合パラメータ。
【0141】
しかしながら、非回転対称の分布プロフィールのこの一般的な記載は、それぞれ、光学的に使用される丸くないCAの質量の中心を通過するプロフィール交線の類似性に関して、上述の付加的な要件に置き換えることはできない。
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