【実施例】
【0036】
(実施例1)
基材10(SS400、ビッカース硬さ120HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ジルコン粉末(ZrSiO
4、粒径63μm未満)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作製した積層体1について、50mm×50mmで高さが16(全高)mm(高さ方向の6mmが皮膜11)の直方体の試験片を切り出し、基材10と皮膜11との界面の密着強度をせん断試験装置(積層体1の基材10部分を上下方向から把持した状態で、皮膜11に上方から下方に荷重をかけてせん断力を測定する)にて測定した。結果を表1に示す。また、
図4に、実施例1で作製した積層体1の断面のSEM画像を示す。
図6(a)は500倍、
図6(b)は1500倍の倍率でのSEM画像である。
【0037】
(比較例1)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例1と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SS400、ビッカース硬さ120HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。また、
図7に比較例1で作製した積層体1の断面のSEM画像を示す。
図7(a)は500倍、
図7(b)は1500倍の倍率でのSEM画像である。
【0038】
(比較例2)
基材10(SS400、ビッカース硬さ120HV)に、吸引式大気ブラスト装置により、ガス圧力:0.4MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
(比較例3)
フライス加工をした基材10(SS400、硬ビッカースさ120HV)に、実施例1と同様にして、コールドスプレー装置20により、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例4〜6)
基材10(SS400、ビッカース硬さ120HV)に、ブラスト工程を行わずに、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)とジルコン粉末(ZrSiO
4、粒径63μm未満)との混合粉末(比較例4、Cu:ZrSiO
4=7:3(体積)、比較例5、Cu:ZrSiO
4=5:5(体積)、比較例6、Cu:ZrSiO
4=2:8(体積))を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例7)
基材10(SS400、ビッカース硬さ120HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:200℃、作動ガス圧力:0.5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2)
基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ジルコン粉末(ZriSO
4、粒径63μm未満)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
ブラスト材をアルミナ粉末(Al
2O
3、粒径73.5〜87.5μm)に変更した以外は実施例2と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例4)
ブラスト材をソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)に変更した以外は実施例2と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例8)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例2と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例5)
基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:250℃、作動ガス圧力:3MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:250℃、作動ガス圧力:3MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、アルミニウム粉末(D50=30μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。なお、実施例5の密着強度測定の際、皮膜11は基材10との界面で剥離されず、皮膜11が破壊された。
また、
図8に、実施例5で作製した積層体1の断面のSEM画像を示す。
図8(a)は200倍、
図8(b)は500倍の倍率でのSEM画像である。
【0047】
(比較例9)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例5と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)にアルミニウム粉末(D50=30μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。また、
図9に比較例9で作製した積層体1の断面のSEM画像を示す。
図9(a)は500倍、
図9(b)は1500倍の倍率でのSEM画像である。
【0048】
(比較例10)
基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:200℃、作動ガス圧力:0.5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、アルミニウム粉末(D50=30μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:250℃、作動ガス圧力:3MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、アルミニウム粉末(D50=30μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例6)
基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、チタン粉末(D50=25μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例11)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例6と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SUS304、硬さ150HV)にチタン粉末(D50=25μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様のせん断試験装置にて、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例7)
基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、SUS316L粉末(45μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例12)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例7と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(SUS304、ビッカース硬さ150HV)にSUS316L粉末(-45μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例8)
基材10(チタン、ビッカース硬さ120HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例13)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例8と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(チタン、ビッカース硬さ120HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例9)
基材10(インコネル600、ビッカース硬さ130〜300HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(粒径53〜63μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例14)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例9と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(インコネル600、ビッカース硬さ130〜300HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例10)
基材10(銅:C1020、ビッカース硬さ75HV)に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/sで1パス、ソーダ石灰ガラス粉末(D50=40μm)を吹き付け、基材10表面をブラストした。ブラストした基材10表面に、コールドスプレー装置20により、作動ガス:窒素、作動ガス温度:650℃、作動ガス圧力:5MPa、ワーキングディスタンス(WD):25mm、トラバース速度:200mm/s、銅粉末(D50=40μm)を吹き付け皮膜11を形成し、積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例15)
ブラスト工程を行わない以外は、実施例10と同様にして、コールドスプレー装置20により、基材10(銅:C1020、ビッカース硬さ75HV)に銅粉末(D50=40μm)を吹き付け、皮膜11を形成し積層体1を作製した。作成した積層体1について、実施例1と同様にして、基材10と皮膜11との密着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、ジルコン、アルミナ、またはソーダ石灰ガラスを用い、コールドスプレー装置20により基材10の表面をブラストし、皮膜11を形成した実施例1〜9は、ブラスト処理を行わずに皮膜11を形成した比較例1、8、9、11〜14に比べて、密着強度が向上した。ブラスト処理を行わずに皮膜11を形成した比較例1、8、9、11〜14は、皮膜11は基材10上に堆積されるものの、せん断試験装置で荷重を加えることなく皮膜11は剥離する。また、
図6〜9に示すように、ブラスト処理を行った実施例1および実施例5は、ブラスト処理しない比較例1および比較例9に比べて、基材10の表面に凹凸が形成され、皮膜11が凹凸内に入り込んでいることがわかる。このアンカリングにより、基材10と皮膜11との間の密着強度が向上する。