(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109311
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システムおよびオプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/10 20100101AFI20170327BHJP
H01L 33/16 20100101ALI20170327BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20170327BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20170327BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/16
H01L21/205
H01L33/32
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-524727(P2015-524727)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公表番号】特表2015-529018(P2015-529018A)
(43)【公表日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2013065638
(87)【国際公開番号】WO2014019917
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年3月30日
(31)【優先権主張番号】102012106998.0
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マティアス
(72)【発明者】
【氏名】カッツ シメオン
(72)【発明者】
【氏名】オフ ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ペルツルマイヤー コルビニアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲールケ カイ
(72)【発明者】
【氏名】アイダム ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ドイブラー ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】パッソウ トルステン
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/013698(WO,A1)
【文献】
特表2012−506624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−第1pドープ窒化物化合物半導体層(1)と、
−透明導電性酸化物層(3)と、
−ミラー層(4)と、
−前記第1pドープ窒化物化合物半導体層(1)と、前記透明導電性酸化物層(3)との間に配置される第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)と、
を含む、オプトエレクトロニクスコンポーネント(100)用の反射性コンタクト層システムであって、
前記ミラー層(4)は、前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)の反対方向を向く、前記透明導電性酸化物層(3)の界面に隣接し、
前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、前記透明導電性酸化物層(3)に面する界面(23)にN面ドメイン(22)を有し、
前記界面(23)における前記N面ドメイン(22)は、少なくとも95%の面積割合を有する、反射性コンタクト層システム。
【請求項2】
前記界面(23)における前記N面ドメイン(22)は、少なくとも98%の面積割合を有する、請求項1に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項3】
前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、前記界面(23)の全面に前記N面ドメイン(22)を有する、請求項1または2に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項4】
前記界面(23)は、7nm未満のRMS粗さを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項5】
前記界面(23)は、3nm未満のRMS粗さを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項6】
前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、2*1020cm−3より高いドーパント濃度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項7】
前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、5*1020cm−3より高いドーパント濃度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項8】
前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、少なくとも10nmの厚さを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項9】
前記第1pドープ窒化物化合物半導体層(1)は、GaNを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項10】
前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、GaNを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項11】
前記透明導電性酸化物層(3)は、インジウムスズ酸化物または酸化亜鉛を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項12】
前記ミラー層(4)は、銀を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システム。
【請求項13】
少なくとも前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)は、分子線エピタキシによって作製される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システムの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の反射性コンタクト層システムを含む、オプトエレクトロニクスコンポーネント(100)であって、
−前記オプトエレクトロニクスコンポーネント(100)は、n型半導体領域(5)、活性層(6)、およびp型半導体領域(7)を有するエピタキシャル積層体(8)を含み、
−前記p型半導体領域(7)は、前記第1pドープ窒化物化合物半導体層(1)および前記第2pドープ窒化物化合物半導体層(2)を含み、
−前記n型半導体領域(5)は、放射出口面(14)に向き、
−前記p型半導体領域は、キャリア(11)に向く、オプトエレクトロニクスコンポーネント(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、独国特許出願第102012106998.0号の優先権を主張し、この開示内容は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、窒化物化合物半導体LEDにおけるp型コンタクト層の形成に特に適したオプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システム、およびコンタクト層システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体積層体の元の成長基板を剥離し、半導体積層体を元の成長基板とは反対側に位置するキャリアに結合させた、いわゆる薄膜発光ダイオードチップが知られている。この場合、発光ダイオードチップの放射出口面は、半導体積層体の、当該キャリアとは反対側の表面、すなわち元の成長基板側、に位置している。当該薄膜発光ダイオードチップにおいて、キャリア方向に発せられた放射を放射出口面方向に屈折させ、かつその結果として放射効率を向上させるために、半導体積層体の、キャリアに面する側にミラー層が備えられていることが有利である。
【0004】
薄膜発光ダイオードチップにおいて、ミラー層は、一般的に発光ダイオードチップのp型半導体領域に隣接しており、そこではミラー層は、p型半導体領域との電気的接続を形成する役目もある。可視スペクトル域に関し、銀が可視スペクトル域における高い反射性の点で際立って優れていることから、典型的には銀がミラー層の材料として選択される。
【0005】
銀層に接するp型コンタクト層において、例えば、約170〜250mVの電圧降下が生じることがわかっており、その場合の接触抵抗は、約5*10
−3Ωcm
2〜約7*10
−3Ωcm
2である。
【0006】
エピタキシャル成長の間、窒化物化合物半導体は、一般的にウルツ鉱型結晶構造(wurtzite crystal structure)を形成し、当該結晶構造の結晶学的c軸は、成長方向と平行に延びる。この場合、成長パラメータに応じて、結晶学的[0001]方向に対応する、いわゆるGa面方位(Ga-face orientation)のドメイン(domains)、または結晶学的[000−1]方向に対応するN面方位(N-face orientation)のドメインを生じ得る。それらのドメインは、有極性だけでなく半極性または無極性の窒化物化合物半導体を形成し得る。
【0007】
窒化物化合物半導体は、一般的に圧電特性を有し、すなわち、外部電界がなくとも電気分極を有する。この電界の向きは、Ga面方位と、N面方位とにおいて反対である。このため、Ga面方位およびN面方位を有するドメインは、電気特性が互いに異なる。
【0008】
特許文献1には、オプトエレクトロニクスコンポーネント用のコンタクト層システムが記載されており、当該コンタクト層システムにおいては、窒化物化合物半導体から構成されるp型コンタクト層が接続層に隣接し、当該p型コンタクト層は、接続層との界面に、Ga面方位を有する第1のドメインおよびN面方位を有する第2のドメインを有する。特許文献1は、可能な限り低い接触抵抗を実現するためにはN面ドメインの面積割合が30〜60%であることが好ましいことを特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2010/045907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低い接触抵抗、およびオプトエレクトロニクスコンポーネントから発せられる放射に対する高い反射性の両方において際立って優れたオプトエレクトロニクス窒化物化合物半導体コンポーネントのp型コンタクト層を形成するための改良されたコンタクト層システムを特定するという目的に基づく。さらに、当該コンタクト層システムの有利な製造方法を特定することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、本発明の独立請求項に記載の、オプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システムおよび当該オプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システムの製造方法によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な構成および発展形態に関する。
【0012】
少なくとも一実施形態によれば、オプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システムは、第1pドープ窒化物化合物半導体層、透明導電性酸化物層、およびミラー層を含む。第2pドープ窒化物化合物半導体層は、有利なことに、第1pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間に配置され、透明導電性酸化物層に面する界面にN面ドメインを有し、当該界面のN面ドメインは、少なくとも95%の面積割合を有する。
【0013】
本明細書に記載の反射性コンタクト層システムでは、第1pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間に配置され、かつ非常に高い面積割合のN面ドメインを有する第2pドープ窒化物化合物半導体層によって、高い反射率、および低い接触抵抗の両方において際立って優れた電気的接続を実現可能であるという知見を利用している。
【0014】
接触抵抗の低さは、特に、N面ドメインがn型半導体材料の性質を有することに基づいている。この効果が生じるのは、結晶欠陥がN面ドメインにおいて生じ、また名目上p型にドープされた半導体材料のアクセプタに関して過補償が生じるためであると考えられる。N面ドメインがn型特性を有することによって、第2pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物から構成される隣接層との間の界面に局所的なトンネル接合が形成される。この効果によって、実質的に電圧降下なしに透明導電性酸化物層の電気的接続が実現される。
【0015】
ミラー層は、有利なことに、第2pドープ窒化物化合物半導体層の反対方向を向く、透明導電性酸化物層の界面に隣接し、また半導体材料から発せられてコンタクト層システムに突当たる放射に対する高い反射率をもたらす。コンタクト層システムでは、有利なことに、接触抵抗および電圧損失が、ミラー層がp型にドープされた窒化物化合物半導体材料に直接設けられている場合よりも低い。特に、接触抵抗は、わずか5*10
−5Ωcm
2以下であり得る。
【0016】
さらに、以上のように構成されたコンタクト層システムによって、高い反射率が実現される。この高い反射率の根拠は、特に、界面における比較的平滑なN面ドメインの面積割合が高いことにある。特に、第2pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間の界面における光散乱の結果として生じる光の損失は、結果的に低減される。したがって、半導体材料から発せられる光は、大きな散乱損失なしに、透明導電性酸化物層に進入でき、ミラー層との対向界面において、半導体層方向に反射される。
【0017】
透明導電性酸化物層は、有利なことに、第2pドープ窒化物化合物半導体層よりも低い屈折率を有する。その結果として、第2pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間の界面において、内部全反射が起こり、これは少なくとも、内部全反射角よりも大きい入射角で当該界面に突当たる、半導体材料から発せられる一部の光について起きる。散乱損失を避けるための特に平滑な界面によって、内部全反射は助長される。したがって、第2pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間の界面は、コンタクト層システムの反射率にも寄与する。コンタクト層システムの全反射率は、以上のように高められる。
【0018】
少なくとも95%という非常に高いN面ドメインの面積割合の場合、第2の窒化物化合物半導体層は、N面ドメインの面積割合が低い場合よりも平滑な界面を形成するということが見出された。
【0019】
好ましい一構成において、透明導電性酸化物層との界面における第2pドープ窒化物化合物半導体層のN面ドメインは、少なくとも98%の面積割合を有する。
【0020】
特に好ましい一構成において、第2pドープ窒化物化合物半導体層は、透明導電性酸化物層との界面全体にN面ドメインを有する。この場合、特に平滑な界面が得られるため高い反射性が得られる。
【0021】
第2pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間の界面のRMS(二乗平均平方根)粗さは、有利には7nm未満である。RMS粗さは、好ましくは5nm未満であり、特に好ましくは3nm未満である。
【0022】
第2pドープ窒化物化合物半導体層と、透明導電性酸化物層との間の界面におけるN面ドメインの面積割合は、特に、ドーパント濃度の高さおよび第2pドープ窒化物化合物半導体層の成長条件によって設定し得る。N面ドメインの形成は、高いドーパント濃度によって促進される。第2pドープ窒化物化合物半導体層のドーパント濃度は、2*10
20cm
−3より高いことが有利であり、好ましくは3*10
20cm
−3より高く、また特に好ましくは5*10
20cm
−3より高い。
【0023】
さらに、第2pドープ窒化物化合物半導体層の層厚さは、界面におけるドメイン構造に影響を及ぼす。N面ドメインの面積割合を高めるために、第2pドープ窒化物化合物半導体層は、少なくとも10nm、好ましくは少なくとも20nm、また特に好ましくは少なくとも40nmの層厚さを有することが有利である。例として、第2pドープ窒化物化合物半導体層は、10〜50nm(両端値を含む)の間の厚さとすることができる。
【0024】
特に、分子線エピタキシによって、第1pドープ窒化物化合物半導体層上にエピタキシャル成長させることによって、高い面積割合の非常に平滑なN面ドメインを有する、第2pドープ窒化物化合物半導体層が製造され得ることが分かった。特に、そのように第2pドープ窒化物化合物半導体層を成長させた結果、有機金属気相成長法(MVOPE)によって第2pドープ窒化物化合物半導体層を成長させた場合よりもいっそう低い接触抵抗を得ることができることが確認された。
【0025】
第2pドープ窒化物化合物半導体層は、GaNを含む。有利なことに、第1pドープ窒化物化合物半導体層もまた、GaNを含む。特に、第1および第2pドープ窒化物化合物半導体層の両層は、GaN層とすることができる。第1および/または第2pドープ窒化物化合物半導体層のp型ドーパントとしては、好ましくは、マグネシウムが用いられる。
【0026】
第2pドープ窒化物化合物半導体層は、有利なことに、透明導電性酸化物に隣接する。透明導電性酸化物(略して「TCOs」)は、透明な導電性の材料であり、一般的には例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム、またはインジウムスズ酸化物(ITO)などの金属酸化物である。TCOの群には、金属と酸素の二元化合物(例えば、ZnO、SnO
2、In
2O
3)とともに、金属と酸素の三元化合物(例えば、Zn
2SnO
4、CdSnO
3、ZnSnO
3、MgIn
2O
4、GaInO
3、Zn
2In
2O
5、In
4Sn
3O
12)、あるいは異なる透明導電性酸化物の混合物も含まれる。
【0027】
有利な一構成によれば、透明導電性酸化物層は、インジウムスズ酸化物(ITO)または酸化亜鉛(ZnO)を含む。このような透明導電性酸化物は、高い透明性および高い導電性の点で際立って優れている。透明導電性酸化物層は、ドーパントを含むことができ、例えば、アルミニウムをドープした酸化亜鉛層とすることができる。
【0028】
ミラー層は、有利なことに、第2pドープ窒化物化合物半導体層とは反対側の、透明導電性酸化物の界面において透明導電性酸化物層と隣接する。ミラー層は、好ましくは、金属または金属合金を含む。可視スペクトル域において高い反射性をもたらすために、ミラー層は、好ましくは、銀を含むか、または銀からなる。
【0029】
反射性コンタクト層システムの製造方法において、少なくとも第2pドープ窒化物化合物半導体層は、分子線エピタキシによって形成される。特に、分子線エピタキシにより形成する場合、非常に平滑な界面を有するN面ドメインの形成が可能になることが分かった。具体的には、分子線エピタキシによって形成された、第2pドープ窒化物化合物半導体層によって、格別に低い接触抵抗を実現し得ることが確認された。
【0030】
さらに、反射性コンタクト層システムを含むオプトエレクトロニクスコンポーネントが特定され、当該オプトエレクトロニクスコンポーネントは、n型半導体領域、活性層、およびp型半導体領域を有するエピタキシャル積層体(epitaxial layer sequence)を含む。オプトエレクトロニクスコンポーネントのp型半導体領域は、第1pドープ窒化物化合物半導体層および第2pドープ窒化物化合物半導体層を含む。オプトエレクトロニクスコンポーネントに関し、n型半導体領域は、放射出口面に対向し、また、p型半導体領域は、キャリアに対向する。
【0031】
上記製造方法のさらなる有利な形態および上記オプトエレクトロニクスコンポーネントのさらなる有利な構成は、反射性コンタクト層システムの記載から明らかであり、逆の場合も同様である。
【0032】
以下では、
図1および
図2と共に例示的な実施形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】例示的な一実施形態による反射性コンタクト層システムの断面の概略図である。
【
図2】例示的な一実施形態による反射性コンタクト層システムを含むオプトエレクトロニクスコンポーネントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面において、同一の構成要素、または機能が同じである構成要素には、同一の参照符号を付してある。図示した構成要素と、構成要素の互いの大きさの関係は、必ずしも正しい縮尺ではないことを理解されたい。
【0035】
図1に示したオプトエレクトロニクスコンポーネント用の反射性コンタクト層システムの例示的な実施形態は、第1pドープ窒化物化合物半導体層1と、当該第1pドープ窒化物化合物半導体層1に隣接する第2pドープ窒化物化合物半導体層2とを含む。p型にドープされた窒化物化合物半導体層1および2は、いずれもIn
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)から構成される窒化物化合物半導体材料を含む。第1pドープ窒化物化合物半導体層1および第2pドープ窒化物化合物半導体層はいずれも、好ましくは、GaN層である。p型にドープされた窒化物化合物半導体層1および2は、特に、p型ドーパントとして、マグネシウムを含むことができる。
【0036】
さらに、反射性コンタクト層システムは、第2pドープ窒化物化合物半導体層2に隣接する透明導電性酸化物層3を有する。透明導電性酸化物層3は、好ましくは、インジウムスズ酸化物または酸化亜鉛を含むが、代替として、他の透明導電性酸化物も適している。
【0037】
ミラー層4は、p型にドープされた窒化物化合物半導体層1および2の反対方向を向く、透明導電性酸化物層3の一方の面に配置される。ミラー層4は、好ましくは、金属または金属合金から構成される。ミラー層4は、好ましくは、銀を含むか、または銀からなる。
【0038】
第2pドープ窒化物化合物半導体層2は、有利なことに、N面ドメイン22を有する。N面ドメイン22と共に、第2pドープ窒化物化合物半導体層2は、少なくとも小部分のGa面ドメイン21を有することもできる。
【0039】
透明導電性酸化物層3との界面23において、第2pドープ窒化物化合物半導体層2におけるN面ドメイン22の面積割合は、少なくとも95%であることが有利であり、好ましくは少なくとも98%、また特に好ましくは少なくとも99%である。特に、第2pドープ窒化物化合物半導体層2は、透明導電性酸化物層3との界面23全体にN面ドメイン22を有することができる。
【0040】
第2pドープ窒化物化合物半導体層2の界面23におけるN面ドメイン22の面積割合が高い場合、コンタクト層積層体の反射性を減ずることなく、透明導電性酸化物層3との、接触抵抗の低い電気的接続が形成されるという利点がある。反射性が低下し得るのは、特に、N面ドメイン22の面積割合が低い場合である。Ga面ドメイン21の面積割合が高い場合、例えば、Ga面ドメイン21とN面ドメイン22との面積割合がほぼ等しい場合、界面23の粗さが生じ得るからである。導入において引用した特許文献1には、特に、N面ドメインとGa面ドメインとの割合がほぼ等しい場合にも、格別に小さい接触抵抗を実現可能であることが記載されているが、このことは、反射性コンタクト層システムの場合の界面の粗さが増すことによる反射性の低下につながり得る。有利なことに、少なくとも95%という非常に高いN面ドメイン22の面積割合によって、低い接触抵抗および高い反射性の両方において際立って優れたコンタクト層システムを実現できることが見出された。
【0041】
第2pドープ窒化物化合物半導体層2は、高い面積割合のN面ドメイン22を有するため、連続する透明導電性酸化物層3との、非常に平滑な界面23を有する。第2pドープ窒化物化合物半導体層2と、透明導電性酸化物層3との間の界面23のRMS粗さは、7nm未満、好ましくは5nm未満、また特に好ましくは3nmであることが有利である。
【0042】
第2pドープ窒化物化合物半導体層2におけるN面ドメイン22の形成は、好ましくは、高いドーパント濃度によって促進される。第2pドープ窒化物化合物半導体層2のドーパント濃度は、少なくとも2*10
20cm
−3、好ましくは3*10
20cm
−3、また特に好ましくは5*10
20cm
−3であることが有利である。
【0043】
界面23のN面ドメイン22の面積割合は、第2pドープ窒化物化合物半導体層2の層厚さの影響も受ける。第2pドープ窒化物化合物半導体層2の層厚さは、少なくとも10nm、好ましくは少なくとも20nm、また特に好ましくは少なくとも40nmであることが有利である。第2pドープ窒化物化合物半導体層2の層厚さは、例えば10〜50nmの間である。
【0044】
さらに、本製造工程の条件、特に、第2pドープ窒化物化合物半導体層2を成長させるために用いる塗布方法は、第2pドープ窒化物化合物半導体層2におけるN面ドメイン22の面積割合に影響する。反射性コンタクト層システムを製造するための、有利な一方法において、少なくとも第2pドープ窒化物化合物半導体層2は、分子線エピタキシによって形成される。
【0045】
図2は、例示的な一実施形態の反射性コンタクト層積層体を有するオプトエレクトロニクスコンポーネント100の断面を、例として模式的に示す。
【0046】
オプトエレクトロニクスコンポーネント100は、窒化物化合物半導体をベースとするエピタキシャル積層体8を有する。ここで、「窒化物化合物半導体をベースとする」とは、エピタキシャル積層体8または少なくともその中の一層がIII族窒化物化合物半導体材料、好ましくはIn
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)を含むことを意味する。この場合、この材料は、必ずしも上記化学式に従った数学的に正確な組成を有する必要はない。むしろ、この材料は、1または複数のドーパントと、材料In
xAl
yGa
1−x−yNの特徴的な物理的特性を実質的に変化させることのない追加の構成成分とを含むことができる。しかしながら、結晶格子の本質的な構成成分(In、Al、Ga、N)の一部分をわずかな量のさらなる物質によって置換することができるとしても、簡潔にするために、上記化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(In、Al、Ga、N)のみを含む。
【0047】
エピタキシャル積層体8は、n型半導体領域5、活性層6、およびp型半導体領域7を有する。n型半導体領域5、活性層6、およびp型半導体領域7は、いずれも複数の層を含むことができるが、当該複数の層の詳細は、簡略化のため図示していない。また、n型半導体領域5、活性層6、またはp型半導体領域7は、一層または複数層のアンドープ層を有することができる。p型半導体領域7は、特に、コンタクト層システムの、第1pドープ窒化物化合物半導体層1と、第2pドープ窒化物化合物半導体層2とを有する。
【0048】
活性層6は、特に、放射放出活性層または放射受信活性層とすることができる。活性層6は、例えば、pn接合、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造、または多重量子井戸構造として、具現化することができる。この場合、量子井戸構造という表現は、閉じ込めの結果として電荷キャリアにおいてエネルギ状態の量子化が起こる任意の構造を包含する。特に、量子井戸構造という表現は、量子化の次元について何らかの指定を行うものではない。したがって、量子井戸構造には、特に、量子井戸、量子細線、および量子ドットと、これらの構造の任意の組合せとが含まれる。
【0049】
活性層6は、特に、InGaNから構成される、一層または複数層を含むことができる。
【0050】
オプトエレクトロニクスコンポーネント100は、いわゆる薄膜発光ダイオードチップであり、オプトエレクトロニクスコンポーネント100においては、エピタキシャル積層体8の成長に用いられた成長基板は、エピタキシャル積層体8から剥離されている。エピタキシャル積層体8は、元の成長基板とは反対側のキャリア11に結合されている。したがって、オプトエレクトロニクスコンポーネント100は、例えばサファイア基板などの、エピタキシャル積層体8の成長基板を有しない。エピタキシャル積層体8は、例えば、はんだ層などの接続層10によって、オプトエレクトロニクスコンポーネント100の裏側のキャリア11に接続される。キャリア11は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、セラミック、金属、または金属合金を含むことができる。
【0051】
オプトエレクトロニクスコンポーネント100の場合、n型半導体領域5は、放射出口面14に対向し、p型半導体領域7は、キャリア11に対向する。
【0052】
反射性コンタクト層システムに関し、p型半導体領域7との電気的接続は、オプトエレクトロニクスコンポーネント100の裏側(キャリア11と対向する)からなされる。反射性コンタクト層システムは、第1pドープ窒化物化合物半導体層1、第2pドープ窒化物化合物半導体層2、透明導電性酸化物層3、およびミラー層4を有する。反射性コンタクト層システムの有利な構成(1、2、3、4)と、それらによってもたらされる利点とは、
図1との関連において述べた例示的な実施形態に対応するため、説明は繰り返さない。
【0053】
反射性コンタクト層システムに備えられたミラー層4によって、活性層6によってキャリア11方向に発せられる放射15は、有利なことに、放射出口面14方向に反射される。このように、オプトエレクトロニクスコンポーネント100の裏側に向かって発せられる放射のキャリア11への吸収は防止され、こうしてオプトエレクトロニクスコンポーネント100の能率は向上する。
【0054】
例えば、ミラー層4に近いほうから、チタン、プラチナ、および金から構成される部分層を有する積層体9などとされる、一層または複数層の機能層9が、ミラー層4と、はんだ層10との間に配置されることが好ましい。この場合、プラチナから構成される部分層は、有利なことに、後続層の構成成分がミラー層4へと拡散することを防ぎ、かつ逆方向の拡散についても同様に機能する、拡散バリアとして機能する。金から構成される部分層は、高い導電性を確保するための電流拡散層として機能し、また、後続のチタン層は、さらなる後続層のための接着増強層として機能する。
【0055】
外部電気接続を形成するために、例えば、キャリア11の裏側に第1接続金属層12が設けられ、かつ放射出口面14の部分領域上に第2接続金属層13が設けられる。
【0056】
第1pドープ窒化物化合物半導体層1、第2pドープ窒化物化合物半導体層2、透明導電性酸化物層3、およびミラー層4によって形成される反射性コンタクト層システムは、活性域6によって発せられる放射15に対する高い反射率において、また同様に、非常に低い接触抵抗において、際立って優れている。接触抵抗は、特に、5*10
−5Ωcm
2以下とすることができる。
【0057】
本発明は、例示的な実施形態に基づく記載によっては限定されない。本発明は、請求項または例示的な実施の形態に明示的に特定されていないとしても、任意の新規な特徴または特徴の任意の組合せ、特に請求項に特定された特徴の任意の組合せを含む。