特許第6109349号(P6109349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6109349多軸エンジンにおいて再熱燃焼器を用いることによるタービンの容量制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109349
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】多軸エンジンにおいて再熱燃焼器を用いることによるタービンの容量制御
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/28 20060101AFI20170327BHJP
   F02C 3/073 20060101ALI20170327BHJP
   F02C 3/14 20060101ALI20170327BHJP
   F23R 3/34 20060101ALI20170327BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20170327BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170327BHJP
   F02C 9/16 20060101ALI20170327BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   F02C9/28 Z
   F02C3/073
   F02C3/14
   F23R3/34
   F02C9/00 A
   F02C7/00 A
   F02C9/16 Z
   F01D25/00 V
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-561602(P2015-561602)
(86)(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公表番号】特表2016-510851(P2016-510851A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(86)【国際出願番号】US2014020731
(87)【国際公開番号】WO2014189593
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】61/773,100
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/773,103
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515243969
【氏名又は名称】インダストリアル タービン カンパニー (ユーケイ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Industrial Turbine Company (UK) Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ ルベル
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−083081(JP,A)
【文献】 特開平03−100331(JP,A)
【文献】 特公昭42−023846(JP,B1)
【文献】 特公昭33−007755(JP,B1)
【文献】 特開2011−102548(JP,A)
【文献】 特開平03−175117(JP,A)
【文献】 特開2002−285860(JP,A)
【文献】 特開平05−179904(JP,A)
【文献】 特開2001−140657(JP,A)
【文献】 特開昭63−032129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/04、06、073、14
F02C 9/26−28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧圧縮機と、
高圧シャフトによって前記高圧圧縮機に接続された高圧タービンと、
前記高圧タービンより下流にある中圧タービンと、
中圧シャフトによって前記中圧タービンに接続された、前記高圧圧縮機より上流に配置された中圧圧縮機と、
前記中圧タービンより下流にある再熱燃焼器と、
前記再熱燃焼器より下流にある低圧タービンと、
低圧シャフトによって前記低圧タービンに接続された、前記高圧圧縮機より上流に配置された低圧圧縮機と
を有するガスタービンエンジンであって、
前記高圧タービンと前記中圧タービンと前記低圧タービンとは互いに切り離されており、
前記高圧圧縮機と前記中圧圧縮機と前記低圧圧縮機とは互いに切り離されており、
前記中圧タービンと前記低圧タービンとがシャフト仕事配分を実現するように、前記低圧圧縮機は、前記中圧圧縮機への流れを含む出口を有し、
前記再熱燃焼器は、前記低圧圧縮機の複数のパラメータに基づいて前記低圧タービンの見かけ容量を制御するため、燃料を受け取って再熱出口温度を発生させるように構成されている
ことを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記ガスタービンエンジンは、前記複数のパラメータを検出するように構成された複数のセンサを更に有し、
前記複数のパラメータは、前記低圧圧縮機の入口流量と、入口温度と、入口圧力と、回転速度と、出口圧力とのうち少なくとも1つを含む、
請求項1記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記ガスタービンエンジンは、さらにコントローラを備えており、
前記コントローラは、
前記センサによって生成された、前記パラメータを表す複数の信号を受け取り、
前記パラメータの少なくとも一部に基づき、実圧力比と所要圧力比とを求め、
前記実圧力比と前記所要圧力比との比較に基づき、前記再熱燃焼器へ燃料流を供給するように燃料供給装置を駆動する
ように構成されている、
請求項2記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記ガスタービンエンジンはさらに主燃焼器を有し、
前記高圧タービンは、前記主燃焼器より下流かつ前記再熱燃焼器より上流に配置されており
前記高圧圧縮機は、前記主燃焼器より上流に配置されている
請求項1記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
ガスタービンエンジンの制御方法であって、前記ガスタービンエンジンは、高圧圧縮機と、
高圧シャフトによって前記高圧圧縮機に接続された高圧タービンと、
前記高圧タービンより下流にある中圧タービンと、
中圧シャフトによって前記中圧タービンに接続された、前記高圧圧縮機より上流に配置された中圧圧縮機と、
前記中圧タービンより下流にある再熱燃焼器と、
前記再熱燃焼器より下流にある低圧タービンと、
低圧シャフトによって前記低圧タービンに接続された、前記高圧圧縮機より上流に配置された低圧圧縮機と、
を有し
前記高圧タービンと前記中圧タービンと前記低圧タービンとは互いに切り離されており、
前記高圧圧縮機と前記中圧圧縮機と前記低圧圧縮機とは互いに切り離されており、
前記中圧タービンと前記低圧タービンとがシャフト仕事配分を実現するように、前記低圧圧縮機は、前記中圧圧縮機への流れを含む出口を有し、
前記制御方法は、
前記低圧圧縮機の複数のパラメータに基づいて前記低圧タービンの見かけ容量を制御するように、前記再熱燃焼器の燃料流を供給するステップと、
前記燃料流を受け取って再熱出口温度を発生させるステップと、
を有する、ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記燃料流は、前記低圧圧縮機の実圧力比と所要圧力比との比較に基づく、
請求項5記載の制御方法。
【請求項7】
前記実圧力比は、前記低圧圧縮機の入口圧力と出口圧力との比である、
請求項6記載の制御方法。
【請求項8】
前記制御方法はさらに、
前記低圧圧縮機の入口流量と、入口温度と、入口圧力と、出口圧力と、回転速度とを検出するステップを含む、
請求項5記載の制御方法。
【請求項9】
前記制御方法はさらに、
前記入口流量と、前記入口温度と、前記入口圧力とに基づいて、前記低圧圧縮機の補正流量を求めるステップを含む、
請求項8記載の制御方法。
【請求項10】
前記制御方法はさらに、
前記低圧圧縮機の補正流量と、前記入口温度と、前記低圧圧縮機の回転速度とのうち少なくとも1つに基づき、コンピュータ可読の不揮発性媒体に記憶された参照ルックアップテーブルから、前記低圧圧縮機の所要圧力比を求めるステップを含む、
請求項9記載の制御方法。
【請求項11】
前記制御方法はさらに、
前記低圧圧縮機の実圧力比が前記低圧圧縮機の所要圧力比より低い場合、前記再熱燃焼器への再熱燃焼器燃料流を増大させるステップを含む、
請求項5記載の制御方法。
【請求項12】
前記制御方法はさらに、
主燃焼器への主燃焼器燃料流を低減させるステップを含む、
請求項11記載の制御方法。
【請求項13】
前記制御方法はさらに、
前記低圧圧縮機の実圧力比が前記低圧圧縮機の所要圧力比より高い場合、前記再熱燃焼器への再熱燃焼器燃料流を減少させるステップを含む、
請求項5記載の制御方法。
【請求項14】
前記制御方法はさらに、
主燃焼器への主燃焼器燃料流を増加させるステップを含む、
請求項13記載の制御方法。
【請求項15】
前記制御方法はさらに、
前記低圧圧縮機の実圧力比が前記低圧圧縮機の所要圧力比に等しい場合、前記再熱燃焼器への再熱燃焼器燃料流を維持するステップを含む、
請求項5記載の制御方法。
【請求項16】
前記制御方法はさらに、
エンジン入口質量流量を調整するため、前記再熱燃焼器への再熱燃焼器燃料流を調整することにより、前記低圧タービンの見かけ容量を調整するステップを含む、
請求項5記載の制御方法。
【請求項17】
前記制御方法はさらに、
前記高圧タービンと前記高圧圧縮機とを回転させるステップと、
前記中圧タービンと前記中圧圧縮機とを回転させるステップと、
を含む、
請求項5記載の制御方法。
【請求項18】
前記制御方法はさらに、
前記低圧タービンと前記低圧圧縮機とを回転させるステップを含む、
ただし、前記高シャフトと前記中シャフトと前記低シャフトとは、互いに切り離されている、
請求項5記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本願は、米国仮出願第61/773,100号および同第61/773,103号(出願日:2013年3月5日)に係る優先権を主張するものであり、これらの開示内容はすべて、本願の開示内容に含まれることとする。
【0002】
本発明は、改善されたガスタービンエンジンを開示するものであり、具体的には、再熱燃焼器を備え当該再熱燃焼器内における燃料流をスケジューリングするガスタービンエンジンのコアパラメータを制御する方法および装置を開示するものである。前記コアパラメータは、ガスタービンカーカス内における任意の物理量を表すパラメータ、たとえば圧縮機圧力比、圧縮機流量、エンジン入口流量およびエンジン圧力比等を表すパラメータとすることができる。
【背景技術】
【0003】
多軸ガスタービンは、航空エンジン、発電プラントおよびパイプライン圧縮作業用途を含めた、数多くの用途に用いられる。多軸ガスタービンが、その設計出力の範囲を超えて動作すると、圧縮機は、意図された動作条件の範囲を超えて動作することとなり、圧縮機の動作点を合理的な値に復帰させるために操作ブリードバルブが用いられる。しかし、この操作ブリードバルブを用いると、サイクル効率が幾らか落ちてしまう。
【0004】
したがって、サイクル効率を低下させることなく、予め定められた合理的な値に圧縮機動作点を復帰させることができる多軸ガスタービンエンジンを実現することが望まれている。
【0005】
図面の簡単な説明
特許請求の範囲は、特定の実施例に限定されることはないが、その複数の実施例についての説明を読めば、本発明の種々の対象を最も良好に理解することができる。図面を参照すると、実施例の詳細が示されている。図面に実施例を示しているが、本図面は必ずしも実寸の比率通りであるとは限らず、実施例の特徴的な構成をより分かりやすく説明するため、特定の構成を誇張して示している場合がある。さらに、ここで開示している実施例は、以下の詳細な説明および図面にて記載および図示した具体的な形状や配置構成に絶対的に限定または減縮等するものではない。以下、図面を参照して、実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ガス発生機、出力タービン、および、当該ガス発生機と当該出力タービンとの間に組み付けられた再熱燃焼器を備えた、一例のガスタービンエンジンの分解組立斜視図である。
図2図1のガスタービンエンジンの概略図である。
図3】ガス発生機、出力タービン、低圧側転がり軸受ホルダモジュール、当該ガス発生機と当該出力タービンとの間に組み付けられた再熱燃焼器、および、当該出力タービンの低圧タービンに接続された低圧圧縮機を備えた、他の一例のガスタービンエンジンの分解組立斜視図である。
図4】再熱燃焼器をIPタービンと出力タービンとの間に配置し、かつ、出力タービンを負荷およびLP圧縮機の双方に接続した、図3のガスタービンエンジンのさらに他の一例の概略図である。
図5】HPタービンとIPタービンとの間に再熱燃焼器を配置した、さらに他の一例のガスタービンエンジンの概略図である。
図6図5のガスタービンエンジンの制御方法の一例を示す図である。
図7図6の制御方法を用いた、図5の再熱燃焼器の燃料のスケジューリングに関する中圧圧縮機の動力伝達ラインの一例を示す図である。
図8図6の制御方法を用いて図5の再熱燃焼器の燃料をスケジューリングすることにより実現された、エンジン熱効率の一例を示す図である。
図9図5のガスタービンエンジンの再熱燃焼器を動作させて当該再熱燃焼器の燃料をスケジューリングする一例の方法のフローチャートである。
図10】HPタービンとIPタービンとの間に再熱燃焼器を配置した、さらに他の一例のガスタービンエンジンの概略図である。
【0007】
詳細な説明
以下の記載と図面とを参照すれば、実施例の詳細が分かる。図面には、一部の実施可能な態様を示しているが、本図面は必ずしも実寸の比率通りであるとは限らず、本発明をより分かりやすく説明するため、特定の構成を誇張もしくは除去し、または特定の構成の一部断面のみを示している場合がある。さらに、ここで記載している説明は、特許請求の範囲を、以下の詳細な説明および図面にて記載および図示した具体的な形状や配置構成に絶対的に限定または減縮等するものではない。
【0008】
一例のガスタービンエンジンは、第1の圧縮機と、第1のシャフトによって当該第1の圧縮機に接続された第1のタービンとを含むことができる。当該エンジンは、第1のタービンより下流に配置された再熱燃焼器と、当該再熱燃焼器より下流に配置された第2のタービンとを含むことができる。当該エンジンはさらに、第2のシャフトによって前記第2のタービンに接続された第2の圧縮機も含むことができ、当該第2の圧縮機は、第1の圧縮機より上流に配置されている。第1のタービンと第2のタービンとは相互に切り離すことができ、第1の圧縮機と第2の圧縮機とは相互に切り離すことができる。第2の圧縮機は、前記第1のタービンと前記第2のタービンとがシャフト仕事配分を実現するように、前記第1の圧縮機への流れを含む出口を有することができる。前記再熱燃焼器は、第2の圧縮機の複数のパラメータに基づいて第2のタービンの見かけ容量を制御するため、燃料を受け取って再熱出口温度を発生させるように構成することができる。よって、本例のエンジンでは、相互に直列配置された2つの圧縮機間において仕事配分を制御してコアエンジンパラメータを制御するため、当該2つのタービンは相互に切り離され、それぞれ別個の圧縮機を駆動することができる。前記コアエンジンパラメータは、圧縮機圧力比およびエンジン入口流量を含むことができる。
【0009】
図10を参照すると、一例のガスタービンエンジン1000は、高圧部シャフトアセンブリ1022(「HPシャフトアセンブリ」)と、中圧部シャフトアセンブリ1016(「IPシャフトアセンブリ」)とを含むことができる。IPシャフトアセンブリ1016は、IPタービン1002とIP圧縮機1018とを含むことができ、これらは中圧部シャフト1041(「IPシャフト」)によって相互に接続されている。さらに、HPシャフトアセンブリ1022は、HPタービン1024とHP圧縮機1026とを含むことができ、これらは高圧部シャフト1040(「HPシャフト」)によって相互に接続されている。エンジン1000はさらに、低圧部シャフト1042(「LPシャフト」)によって負荷1030に接続された低圧タービン1034(「LPタービン」)も含むことができる。負荷1030の例には、発電機、推進ファン、パイプライン圧縮機、ポンプまたはプロペラが含まれる。
【0010】
HPシャフト1040と、IPシャフト1041と、LPシャフト1042とは、相互に接続されていないが、相互に流体的に結合されている。具体的には、IP圧縮機の出口流はHP圧縮機の入口流になり、HPタービンの出口流はIPタービンの入口流となり、IPタービンの出口流はLPタービンの入口流となる。本実施形態では再熱燃焼器1004は、全圧縮仕事量の仕事配分の能動的制御を2つの圧縮機1018,1026間において行うために、HPタービン1024とIPタービン1002との間に配置されている。
【0011】
再熱燃焼器1004より下流に配置されたIPタービン1002(「下流タービン」)の見かけ容量Q(補正された流量)は、当該再熱燃焼器1004への燃料をスケジューリングすることによって制御することができる。所与のタービンについての、IPタービン1002の下流タービンの入口の実容量Q(補正された流量)は、以下の数式1によって表すことができ、タービンが固定しており、かつ排気ガス成分が実質的に変化しない場合、当該実容量Qはタービン動作域全体にわたって全く平坦となる。
【0012】
(数式1) Q=W√T/P
数式1の配置を変えたもの:
(数式2) W=Q√T
HPタービン1024の見かけ容量Q(補正した流量)または出口実容量(補正した流量)は、以下の数式3によって表すことができる。
【0013】
(数式3) Q=W√T
よって、Qは下流タービンの幾何学的態様にのみ依存するわけではない。というのも、これは固定された領域と、無視できない程度の熱が再熱燃焼器1004により追加される部品との間に配置されており、この無視できない程度の熱により温度上昇が生じるからである。
【0014】
ここで、燃焼器内において冷却空気の取り出しまたは戻りが生じることを前提とし、燃料流によって更に質量流量が追加されることを考慮する。
【0015】
(数式4)W=W−Wfuel−Wcooling air
数式4を数式3に代入すると、数式5を以下のように定義することができる。
【0016】
(数式5) Q=[W−Wfuel−Wcooling air]√T
(数式6) Q=(W√T/P)−(Wfuel√T/P)−(Wcooling air√T/P
数式2を数式6に代入すると、以下の数式が得られる:
(数式7) Q=((Q√T)√T)−(Wfuel√T/P)−(Wcooling air√T/P
(数式8) Q=(Q(P/P)(√T/√T))−(Wfuel√T/P)−(Wcooling air√T/P
(数式9) Q=[(Q√(T/T))−(Wfuel√T)−(Wcooling air√T)]/P
比T/Tは前記温度上昇に比例するので、再熱燃焼器内における燃料流量、ひいては数式9は、以下のように簡素化することができる:
(数式10) Q=[(Q function(Wfuel))−(Wfuel√T)−(Wcooling air√T)]/P
よって、数式10を検討すると、下流タービンの実際のハードウェア構成によって決定される、下流タービンの固定の実容量Q(補正された流量)については、その結果として見かけ容量Q(補正された流量)に生じる変動は、たとえば燃焼器の圧力降下等、他の量が変化したときに少なくとも燃料流量を制御することによって、求めることができ、また、冷却空気の割合は無視できる程度になることが分かる。したがって、見かけ容量Qは、燃料流のスケジューリングによって制御することができ、このように見かけ容量Qを制御できることによって、コアエンジンパラメータを制御することができる。よって、本願にて以下開示する手法で燃料流を適切にスケジューリングすることにより、圧縮機圧力比またはエンジン入口流量等の選択したコアエンジンパラメータを制御することができる。
【0017】
ガスタービンエンジンのコアパラメータを制御する一例の方法は、上流タービンから見て再熱燃焼器より下流に配置されたタービンの見かけ容量を制御するため、当該再熱燃焼器へ燃料流を供給することを含むことができる。よって、再熱燃焼器1004への燃料のアクティブスケジューリング(図6および図9)を使用することによって、上流タービン1024と下流IPタービン1002との圧力比を能動的に変化させることができ、この圧力比を能動的に変化できることにより、下流IPタービン1002により駆動される圧縮機1018が使用できる出力のアクティブ制御が可能になり、ひいては、下流IPタービン1002の動作点のアクティブ制御が可能になる。
【0018】
図7および図10を参照すると、主燃焼器1005と再熱燃焼器1004との間で燃料配分の適切なスケジューリングを行うことにより、IP圧縮機1018の圧力比をアクティブ制御することができる。この構成は、高流量部分701におけるピーク効率を保証する流量において、または、部分出力702における圧縮機の適切なサージマージンを保証する流量において、最適な圧力比になるように圧縮機を制御するのに有利であり、このことによって、ブリード流の機外操作や、幾何学的態様が可変のタービンを用いる必要性を少なくするか、または無くすことができる。図8を参照すると、その結果として、圧縮機効率が上昇することと、比較的低い出力において圧縮機流出機外ブリード流量が少なくなることとによって、部分負荷効率を改善することができる。これは通常、サージマージンを遵守するのに必要とされるものである。たとえば航空エンジンでは、上記構成によって、圧縮機出口機外ブリード型バルブの進入口を閉弁状態に維持することができ、これにより、燃料消費量と騒音とを低減することができる。
【0019】
図6および図9に、制御方法の具体的な実施形態についての更なる詳細を示す。ステップ902において、ガスタービンエンジンは、IP圧縮機入口質量流量W24と、IP圧縮機1018の入口温度T24と、入口圧力P24と、出口圧力P25と、回転速度NIとを測定または導出するために構成された複数のセンサ540(図6)を含むことができる。
【0020】
ステップ904において、制御ロジック541(図6)が、IP圧縮機1018のIP圧縮機補正流量Q24および実圧力比 IPC_PR_ACTUAL と、当該IP圧縮機の空気力学的速度NIRT24とを求める。制御ロジックは、これらの各値を求めるために以下の数式を使用することができる:
24=(W24√T24/P24
IPC_PR_ACTUAL =(P25/P24
NIRT24=(NI24/√T24
ステップ906において、前記ロジックは所要圧力比 IPC_PR_DEMAND を求める。このステップは、コントローラ542が、コンピュータ可読の不揮発性媒体に記憶された参照ルックアップテーブル544にアクセスして、Q24およびNIRT24の計算された値に基づいて前記所要圧力比を特定することによって実施することができる。
【0021】
ステップ908において、コントローラ542はIP圧縮機実圧力比と前記IP圧縮機所要圧力比とを比較する。前記IP圧縮機実圧力比がIP圧縮機所要圧力比より低い場合、本方法はステップ910へ移行する。前記IP圧縮機実圧力比がIP圧縮機所要圧力比に等しい場合、本方法はステップ912へ移行する。前記IP圧縮機実圧力比がIP圧縮機所要圧力比より高い場合、本方法はステップ914へ移行する。
【0022】
ステップ910において、再熱燃焼器1004より下流に配置されたIPタービン1002の見かけ容量(補正された流量)を低減するため、コントローラ542は、増加した燃料流を当該再熱燃焼器1004へ供給する。IPタービン(下流タービン)の見かけ容量を低減することにより、HPタービン1024(上流タービン)における仕事量は下降し、IPタービンにおける仕事量は増加し、これにより、これら2つのタービン間における仕事配分が変化する。この仕事配分の変化により、HPタービンから動力を受ける圧縮機が使用可能な出力が減少し、IPタービンから動力を受けるIP圧縮機が使用可能な出力が増大する。このことにより、IPタービンから動力を受けるHP圧縮機とIP圧縮機との圧力比が増大する。
【0023】
ステップ912において、再熱燃焼器1004より下流に配置されたIPタービンの見かけ容量を維持するため、コントローラ542は、当該再熱燃焼器1004への燃料流を一定に維持する。下流IPタービンの見かけ容量を維持することにより、上流のタービンと当該下流タービンとの仕事配分が一定に維持され、このことにより、HP圧縮機とIP圧縮機との間で分配される出力の比を維持することができる。このことにより、全圧縮出力が不変である場合、下流IPタービンから動力を受けるIP圧縮機の圧力比を一定にすることができる。
【0024】
ステップ914において、再熱燃焼器1004より下流に配置されたIPタービンの見かけ容量を増加するため、コントローラ542は、低減した燃料流を当該再熱燃焼器1004へ供給する。下流IPタービンの見かけ容量が増加することにより、上流のHPタービンにおける仕事量は増大し、下流のIPタービンにおける仕事量は減少し、このことにより、これら2つのタービン間における仕事配分が変化する。この仕事配分の変化により、下流IPタービンから動力を受ける圧縮機が使用可能な出力が減少し、上流HPタービンから動力を受けるHP圧縮機が使用可能な出力が増大する。このことにより、下流IPタービンから動力を受けるIP圧縮機とIP圧縮機との圧力比が減少する。
【0025】
図5を具体的に参酌すると、同図の一例のエンジン500の大部分は図10のエンジン1000と同様であり、同様の各構成要素には500番台の符号を付している。しかし、エンジン500はさらに、IP圧縮機518より上流に配置された追加のLP圧縮機も有しており、これに対してエンジン1000は、同様の追加のLP圧縮機を有していない。エンジン500は、HPタービン524と、IPタービン514と、LPタービン534とを備えた3軸エンジンであり、これらの各タービンはそれぞれ別々の圧縮機を駆動する。具体的には、HPシャフトアセンブリ522は、シャフト528によって互いに接続されたHPタービン524とHP圧縮機526とを含むことができる。また、IPシャフトアセンブリ516は、シャフト520によって互いに接続されたIPタービン514とIP圧縮機518とを含むことができる。さらに、LPシャフトアセンブリ538は、シャフト536によって互いに接続されたLPタービン534とLP圧縮機532とを含むことができる。また、LPシャフトアセンブリ538を負荷530に接続することもできる。この負荷530は、発電機、推進ファン539、パイプライン圧縮機、ポンプ、プロペラまたは他の適切な負荷とすることができる。
【0026】
HPシャフトアセンブリと、IPシャフトアセンブリと、LPシャフトアセンブリとは、機械的には接続されていないが、LP圧縮機の出口流がIP圧縮機の入口流となり、IP圧縮機の出口流がHP圧縮機の入口流となるように、前記3つのシャフトアセンブリは互いに流体的に結合されている。また、主燃焼器の下流側では、HPタービン出口流はIPタービン入口流となることができ、IPタービン出口流はLPタービン入口流となる。
【0027】
再熱燃焼器504は、HPタービン524とIPタービン514との間に配置することができ、また、図10のエンジン1000と同様、IP圧縮機518を圧縮機効率およびサージマージンの最適動作域に維持できるようにIP圧縮機圧力比を制御するため、燃料をスケジューリングすることができ、このことにより、サージ制御機外ブリード流を最小限にすることができる。この最適動作域の例を図7および図8に示している。この最適動作域によって、最大出力未満における稼働性の利点とパフォーマンスの改善とを実現することができる。このプロセスは、ガスタービンの過渡状態および定常状態の双方の制御に及ぶものとすることができる。
【0028】
図4を参照すると、他の一例のガスタービンエンジン300は、図5のガスタービンエンジン500と同様とすることができ、当該ガスタービンエンジン300の同様の各構成要素には、300番台の符号を付している。しかし、ガスタービンエンジン300の再熱燃焼器304は、IPタービン302とLPタービン334との間に介挿されている。再熱燃焼器304は、LPタービン334の見かけ容量を制御するために燃料を受け取って再熱出口温度を発生させるように構成されている。このようにして、再熱燃焼器304と3軸エンジンとを併用することができ、当該3軸エンジンは、IPタービン314とLPタービン334との間に配置した当該再熱燃焼器304を包含することができる。本実施例では、HPタービン324と、IPタービン314と、LPタービン334とは、それぞれ別々の圧縮機を駆動することができる。具体的には、IPシャフトアセンブリ316は、シャフト320によって互いに接続されたIPタービン314とIP圧縮機318とを含むことができる。また、HPシャフトアセンブリ322は、シャフト328によって互いに接続されたHPタービン324とHP圧縮機326とを含むことができる。さらに、LPシャフトアセンブリ338は、シャフト336によって互いに接続されたLPタービン334とLP圧縮機332とを含むことができる。また、LPシャフトアセンブリ338を負荷330に接続することもできる。この負荷330は、発電機、推進ファン339、パイプライン圧縮機、ポンプ、プロペラまたは他の適切な負荷とすることができる。
【0029】
HPシャフトアセンブリと、IPシャフトアセンブリと、LPシャフトアセンブリとを互いに接続しないこと、または、これら3つのシャフトアセンブリが機構を駆動しないことが可能であり、これら3つのシャフトアセンブリは互いに流体的に結合されている。具体的には、主燃焼器の上流側において、LP圧縮機の出口流がIP圧縮機の入口流となることができ、かつ、IP圧縮機の出口流がHP圧縮機の入口流となることができる。また、主燃焼器の下流側では、HPタービン出口流はIPタービン入口流となることができ、IPタービン出口流はLPタービン入口流となる。
【0030】
コアエンジン308に対するLPタービン334の見かけ容量を制御するために、再熱燃焼器304の燃料スケジューリングを用いることができる。出力が上昇したときにコアエンジン308に対するLPタービン334の見かけ容量を変化させることにより、IP圧縮機の入口質量流量を所望の値に制御することができる。回転速度が負荷によって固定されたLP圧縮機332を含む工業用エンジンの場合、この燃料スケジューリングにより、LP圧縮機の出口質量流量を固定することによってLP圧縮機の動力伝達ラインを制御することができる。ターボファンエンジンの場合、上述のスケジューリングにより、ファン339とコアエンジン308との空気バイパス比を変化させることができる。
【0031】
上述の構成に代わる択一的な実施形態では、図1および2に示したように、一例のガスタービンエンジン100はガス発生機108を含むことができる。このガス発生機108は、シャフト120によって互いに接続されたIPタービン114とIP圧縮機118とを有するIPシャフトアセンブリ116を包含することができる。このガス発生機108はさらに、シャフト128によって互いに接続されたHPタービン124とHP圧縮機126とを有するHPシャフトアセンブリ122を包含することができる。HPシャフトアセンブリおよびIPシャフトアセンブリ116,122は、構造的に互いに切り離しつつ、上流のシャフトアセンブリによって駆動される流体が下流のシャフトアセンブリを駆動できるように、両シャフトアセンブリを互いに流体的に結合または作用結合することができる。LPタービン112は負荷130に結合されている。この負荷130は、発電機、推進ファン、パイプライン圧縮機、ポンプ、プロペラ、他の適切な負荷またはこれらの任意の組合せとすることができる。
【0032】
再熱燃焼器104の燃料スケジュールが、コアエンジンに対するLPタービン112の見かけ容量を制御することができる。動作条件が変化したときに、ガス発生機108に対するLPタービン112の見かけ容量を変化させることにより、機械的に切り離されたコアにおける見かけ容量が変化するという作用を利用して、エンジン入口質量流量を目標値に調整することができる。入口流を制御するために制御ロジックを用いることができる。コンバインドサイクル装置において適用する場合には、ボイラ内を通過するエンジン排気流を制御ロジックが制御することができる。しかし、他の1つの実施形態では、制御ロジックは1つのパラメータを制御する代わりに、複合コアパラメータのセットについてエンジンパフォーマンスを制御することも可能である。
【0033】
上記方法および装置は、一部の構成要素やステップを除くように変更することができ、または、他の構成要素やステップを追加して変更することも可能であり、これらの変更はすべて、本発明の思想の範囲内であるとみなされるものであることは明らかである。特定の実施形態を参照して本発明を詳細に説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の思想を逸脱することなく、これらの特定の実施形態に施すことが可能な改良や変更は、種々存在することが明らかである。本願明細書および図面は、本発明の思想を限定するものではなく、単なる一例の考え方であると解すべきものである。
【0034】
本願にて記載したプロセス、システム、方法等に関しては、このプロセス等の各ステップが特定の順序で実施されるように説明したが、当該プロセスは、ここで記載した各ステップを、本願にて記載した順序とは異なる順序で実施して実用可することも可能であると解すべきである。さらに、特定のステップは同時に実施できること、他のステップを追加できること、または、本願にて記載した特定のステップを省略できることは明らかである。換言すると、本願におけるプロセスの説明は、特定の実施形態を例示するためのものであり、特許請求の範囲を限定するものであるとは、決して解釈してはならない。
【0035】
よって、上記説明は例示のためのものであり、限定目的ではないと解すべきである。上記説明を読めば、本願にて開示した実施例とは異なる多くの実施形態や用途が明らかである。本発明の範囲は、上記説明によって特定すべきものではなく、添付の特許請求の範囲と、当該特許請求の範囲に含まれる等価的態様の全範囲とによって定めるべきものである。本願にて取り上げた技術では将来の開発も生じること、および、本願にて開示したシステムおよび方法はこの将来の実施形態に含まれることを想定および意図している。総じて、本願は改良および変更可能であると解すべきである。
【0036】
特許請求の範囲において使用されている用語はすべて、異なる意味を有すると明示的に特記しない限り、合理的な最も広い解釈と、本願にて記載した技術の通常の知識を有する者に知られている通常の意味とを与えられることを意図したものである。特に、請求項において、異なる意味に限定するとの言及が無い限りは、「1つの」、「その」、「前記」(“a”、“the”、“said”)等の単数形の冠詞を用いているときには、指し示している要素が1つまたは複数であることを意味していると解釈すべきである。
【0037】
本発明の要約は、読み手が技術的内容の性質を素早く特定できるようにするためのものであり、特許請求の範囲の保護範囲または意味を解釈または限定するのに用いるものではないという趣旨で提出したものである。また、上記の発明の詳細な説明では、本発明を簡略化するために、複数の構成をまとめて種々の実施形態としていることが明らかである。本発明の方法は、特許請求の範囲に記載の実施態様が、各請求項にて明示的に記載した複数の構成を要件とすることを意図したものとして解釈すべきものではない。むしろ、以下の特許請求の範囲から明らかであるように、本発明の対象に含まれる構成要件は、開示した1つの実施形態のすべての構成より少ない。よって、以下の特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に包含されるものであり、かつ、各請求項は独立して、別個の対象を保護請求したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10