(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート上に、第1の定着基準温度を有する第1のトナーまたは前記第1の定着基準温度より低い第2の定着基準温度を有する第2のトナーを用いて、読み取った画像の画像形成処理を行い、前記シート上に形成された前記第1または前記第2のトナーによる画像を定着器の加熱によって定着し、前記第1のトナーによる画像形成時には、第1の定着基準温度により画像を定着し、前記第2のトナーによる画像形成時には、第2の定着基準温度により画像を定着する画像形成方法にあって、
前記画像形成処理の待機時の前記定着器の温度は、前記第1の定着基準温度と前記第2の定着基準温度の間とし、かつ、前記第2の定着基準温度に近い側の温度に制御した、画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、画像形成装置にかかる第1の実施形態を示す模式図である。
図2は、
図1の要部を拡大して示す模式図である。
【0011】
この実施形態は、画像形成装置としてデジタル複合機(MFP:Multi Function Peripheral)100を例に挙げている。MFP100は、消色性着色剤による画像形成処理と非消色性着色剤による画像形成処理を有する。消色性着色剤は、所定の温度に加熱すると化学反応により色が消える特性を有する。非消色性着色剤は、所定の温度に加熱しても色が消えない特性を有する。消色性着色剤によって現像された用紙などのシートは、加熱により消色性着色剤を消色することでリユースが可能となる。
【0012】
MFP100は、クライアント端末などのその他の装置が、図示しないネットワークを介して接続することにより構成する。クライアント端末としては、ネットワークを介して接続されるデスクトップ型、モバイル型、タブレット型のコンピュータが考えられる。また、スマートフォンなどの携帯型端末でもよく、MFP100と無線通信などにより接続されている構成であってもよい。
【0013】
MFP100は、画像読取部11と、印刷用シートを供給するシート供給部12と、画像形成部13と、排紙部15とを備えている。その他に図示はしないが、露光装置なども備えている。
【0014】
シート供給部12は、未使用シートSaが供給される未使用シート供給部12aと再利用シートSbが供給される再利用シート供給部12bで構成する。未使用シートSaは、全く新しいシートの他に、印刷済みであっても、裏面が未印刷状態で、非消色剤で印刷する場合には、ここでは未使用シートとして取り扱う。再利用シートSbは、消色着色剤で画像が形成されシートを、加熱により消色して再利用するシートである。また、シート供給部12には、図示しない手差しシート供給部も備えてもよい。
【0015】
トナーカートリッジ14は、図示しない現像器にトナーを供給する。トナーカートリッジ14は、第1のトナーと第2のトナーを有する。第1のトナーとしては、非消色性着色剤であるブラックトナーKを用いる。第2のトナーとしては消色性着色剤である消色トナーXを用いる。
【0016】
排紙部15は、印刷され排出されるシートを排出する。ここでは、未使用シートSaに非消色着色剤で印刷したシートと再利用シートSbに消色着色剤で印刷したシートとが共通の排紙部15に排紙するようにする。排紙部15は、未使用シートSaを印刷した排紙用と再利用シートを印刷した排紙用とを専用に設けてもよい。
【0017】
画像形成部13は、通常の電子写真方式によって画像形成を行う装置である。画像形成部13は、
図2にも示すように非消色性着色剤で画像形成が指定されたページや指定部分の画像を形成する。画像形成部13は、感光体ドラム13k、13xと、中間転写ベルト131と、定着器132などを備えている。なお、上記したように露光装置については図示していない。
【0018】
感光体ドラム13k、13xは、それぞれ画像形成する画像データを構成する、ブラックトナーK、消色トナーXのそれぞれの色データに対応する静電潜像を、それぞれの感光体ドラム13k,13xの感光体面上に形成する。図示しない現像ローラから供給されるブラックトナーKによって静電潜像が顕在化された現像剤像を形成する。
【0019】
感光体ドラム13kに形成されたブラックトナーKによる現像剤像は、中間転写ベルト131に一時的に転写する。また、感光体ドラム13xに形成された消色トナーXによる現像剤像は、中間転写ベルト131に一時的に転写する。感光体ドラム13k,13xには同時に対応のトナーが形成されることはない。ユーザーが、印刷時にシートに通常の印刷を行うか再利用の印刷を行うかを選択することで、対応のドラムに現像剤像を一時転写する。
【0020】
中間転写ベルト131は、転写された現像剤像を転写位置Tで、画像形成対象のシートSaまたはSbに転写する。
【0021】
定着器132は、加熱ローラ132a,132bから構成する。定着器132は、転写位置Tでシートに転写された現像剤像を、シートに対して熱定着させ、画像を形成する。このとき定着温度としては、例えば
図3に示すようになる。ブラックトナーKの定着基準温度を第1の温度とし、例えば160℃とする。消色トナーXの定着基準温度を第2の温度とし、例えば120℃とする。なお、定着器132には、定着温度を検出するための温度センサStを配置する。
【0022】
図4は、MFP100の制御系を示すブロック図である。
【0023】
MFP100は、制御部41と、メインメモリ42と、非消色性着色剤あるいは消色性着色剤によって画像形成処理を行う画像形成部13と、画像読取部11と、表示パネル44と、操作入力部45と、FAX部46などを備えている。
【0024】
制御部41は、操作入力部45などの操作に基づいて、画像読取部11における画像読取処理や画像形成部13における画像形成処理などのMFP100における様々な処理を実行する。そして、制御部41は、1ジョブ内または1ページ内で、非消色着色剤あるいは消色性着色剤によって画像形成するページまたは部分に画像を形成する。画像形成するページまたは部分が混在する場合は、シートに対して、画像形成部13によって、非消色性着色剤あるいは消色着色剤で画像形成する処理を制御する。制御部41は、メインメモリ42に記憶されているプログラムを実行することにより、これらの機能を実現して処理を実行する。
【0025】
制御部41としては、CPU(Central Processing Unit)や、CPUと同等の演算処理を実行可能なMPU(Micro Processing Unit)などを用いることができる。また、MFP100が備える機能の一部または全部を、プロセッサとしてのASIC(Application Specific Integrated Circuit)が実現してもよい。
【0026】
メインメモリ42は、画像形成処理や、上述したMFP100による各処理を実行するためのプログラムを記憶する。また、メインメモリ42は、画像形成処理において、RIP処理により生成された画像データを一時的に格納したり、各種アプリケーションのワークエリアとして使用したりする。さらに、メインメモリ42は、図示しないネットワークを介して取得される画像形成ジョブなどの信号や、操作入力部45からの操作入力信号などを一時的に記憶する機能を有する。
【0027】
また、メインメモリ42には、ブラックトナーKと消色トナーXのそれぞれの定着基準温度も記憶しておく。記憶される定着基準温度としては、例えばブラックトナーKは160℃、消色トナーXは120℃とする。
【0028】
メインメモリ42は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)、フラッシュメモリなどから構成することができる。
【0029】
メインメモリ42の他に、MFP100における様々な情報を記憶する補助的なメモリを有している。補助的なメモリとしては、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)やHDD以外の磁気ディスクなどを利用することもできる。
【0030】
画像読取部11は、コピー機やイメージスキャナなどに備えられる一般的な画像読取装置である。MFP100を用いて、原稿のコピーを行ったり、原稿をスキャンしたりする際に用いられる。
【0031】
表示パネル44は、MFP100の設定情報や動作状況などの様々な情報を表示する。表示パネル44は、例えば、電子ペーパ、LCD(Liquid crystal display)、EL(Electronic Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)などから構成することができる。また、表示パネル44をタッチパネルディスプレイで構成することにより、表示パネル44が操作入力部45の機能の一部または全部を実現することもできる。
【0032】
操作入力部45は、コピーやスキャンの条件を指定したり、FAX番号を入力したりする操作を行う。操作入力部45は、例えば、数字などの入力キー、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッド、ペンタブレット、専用ボタンなどから構成することができる。
【0033】
FAX部46は、MFP100においてネットワークを使い、ファクシミリの信号を送受信する機器である。
【0034】
図5は、MFPの定着温度の制御の一例について説明するためのフローチャートである。
図6は、各モード時における定着器132の定着温度の特性例について説明するための説明図である。
【0035】
図5の温度制御で使用されるMFP100は、非消色着色剤としてブラックトナーKと消色着色剤として消色トナーXが搭載された、いわゆるモノクロの印刷機能に適用した例を示す。
【0036】
まず、電源がオンされると、制御部41は、MFP100に搭載のブラックトナーKと消色トナーXの定着基準温度を、メインメモリ42から取得する(ACT1)。
【0037】
制御部41は、取得した定着基準温度(=a)の一番低い方の温度を選択する(ACT2)。この場合の一番低い定着基準温度aは、
図3に示すように消色トナーXの120℃であり、120℃を選択する。
【0038】
制御部41は、ウォーミングアップの制御を行い、定着器132の到達目標温度に、aを設定する(ACT3)。
【0039】
制御部41は、定着器132の加熱ローラ132a,132bの加熱を開始し、MFP100のウォーミングアップを開始する(ACT4)。
【0040】
制御部41は、加熱ローラ132a,132bを制御し、温度センサStの温度検出情報に基づき、定着基準温度aに到達したかを判断する(ACT5)。
【0041】
ACT5において、定着基準温度aに達していない場合(No)は、ACT6に移行する。
【0042】
ACT6では、予め設定したタイムアウトを経過したかを判断する。タイムアウトを経過していない場合(No)は、ACT5に戻る。タイムアウトを経過した場合(Yes)は、ウォーミングアップ制御を終了してエラー状態とし(ACT7)、ウォーミングアップ制御を終了する。異常状態とは、例えば、定着器132が異常で定着基準温度aに達せず、ウォーミングアップの状態にならないなどである。異常状態は、表示パネル44を通じてユーザーに対し、メンテナンスが必要であるなどのメッセージを発信するようにする。
【0043】
ACT5において、定着基準温度aに到達した場合(Yes)は、ウォーミングアップ制御を終了し、
図6の示す待機時温度の状態で、MFP100を待機状態とする(ACT8)。待機時の設定温度は、
図3にも示すように消色トナーXの定着基準温度と同じにしてある。
【0044】
待機時温度がaの状態下で制御部41は、操作入力部45を操作による印刷がブラックトナーKか消色トナーXかを判断する(ACT9)。
【0045】
ACT9において、消色トナーXによる印刷と判断した場合の制御部41は、定着器132の温度を消色トナーXの定着基準温度(120℃)に設定する(ACT10)。ここでの定着器132の温度は、待機時の温度と同じ120℃であることを確認し、ACT11に移行する。
【0046】
ACT11において、消色トナーXによる印刷を行い、ACT12に移行する。
【0047】
ACT9において、ブラックトナーKによる印刷と判断した場合は、定着器132の温度を上げ、ブラックトナーKの定着基準温度(160℃)に設定し(ACT13)、ACT14に移行する。
【0048】
ACT14において、ブラックトナーKによる印刷を行い、ACT12に移行する。
【0049】
ACT12では、操作入力部45の操作による新たな印刷があるかを判断する。新たな印刷が選択された判断した場合(Yes)は、ACT9に戻って、ACT9以降の処理を実行する。新たな印刷がないと判断した場合(No)は、温度制御を終了する。
【0050】
ところで、ACT5、ACT8の処理における定着器132の温度制御は、
図6に示すA1領域である。ACT9、ACT13の処理における定着器132の温度制御は、
図6に示すA2領域である。ACT14における温度制御は、
図6に示すA3領域である。
【0051】
図6のA4に示す領域の温度制御は、ACT14でブラックトナーKによる印刷が行われた後に、ACT12で新たな印刷を選択(Yes)し、ACT9で消色トナーXの印刷を選択した場合である。この場合は、ブラックトナーKに対応した160℃から消色トナーXに対応した120℃に低下させる制御が必要となる。温度は、冷却ファンなどの冷却手段で強制的に下げることは可能であるが、
図6に示すように、温度を上げる時間t1に対し下げる時間t2は、t1<<t2の関係がある。そこで、ブラックトナーKで印刷した後に、消色トナーXによる印刷の要求があった場合は、表示パネル44から例えば「お待ちください」の表示を行う。
【0052】
図6に示すA2領域での温度を上昇させる時間は、短いt1とすることが可能となる。従って、ブラックトナーKによる印刷を選択した場合にかかる時間は、短いt1となり、ウォーミングアップにかかる時間の短縮化を図ることができる。ウォーミングアップ終了時は、印刷可能である旨の、「Ready」、「コピーできます」、「印刷可能」などのメッセージを早く表示することができる。
【0053】
この実施形態は、複数のトナーを扱う場合に、各トナーの特性から定着基準温度に差がある場合は、ウォーミングアップ時に目指すべき定着温度を低い方を選択するようにした。これにより定着基準温度が低い方のトナーを取り扱う場合の余計なウォーミングアップ時間を短縮化することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
図7は、画像形成装置にかかる第2の実施形態を説明するための図である。この実施形態は、待機時の温度を各トナーがもつ定着基準温度よりも、低い温度に設定したものである。
【0055】
すなわち、待機時の定着器132の温度を、
図7に示すように、最低のトナー温度である消色トナーXよりも低い温度とした。この場合は、消色トナーXで印刷を行うときに待機時の温度から消色トナーXの定着基準温度までに時間t0を要する。しかし、待機時温度の設定にもよるが、時間t0は短く、待機時温度を低くした分の省エネの効果を図ることができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図8は、画像形成装置にかかる第3の実施形態を説明するための
図2に相当する模式図である。
図9は、トナーの定着基準温度と待機時設定温度について説明するための図である。
【0057】
この実施形態は、
図8に示すように消色着色剤としての消色トナーXに加え、カラー印刷に対応するために非消色着色剤としての各種トナーを備えたMFP100に対応したものである。非消色のトナーとしては、例えばブラックトナーK、シアントナーC、マゼンタトナーM、イエロートナーYとする。
【0058】
図9に示すように、それぞれの定着基準温度は、消色トナーXを120℃、ブラックトナーKを160℃、シアントナーCを160℃、マゼンタトナーMを160℃、イエロートナーYを160℃とする。
【0059】
待機時の定着器132の温度を、最低の定着基準温度である消色トナーXの120℃に設定する。
【0060】
この実施形態においても、
図6に示すA2領域の領域での温度を上昇させる時間は、短いt1とすることが可能となる。従って、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエロートナーYの各トナーによりカラーの印刷を選択した場合にかかる時間は、t1となり、ウォーミングアップにかかる時間の短縮化を図ることができる。
【0061】
この実施形態は、定着基準温度の異なる消色トナーXとさらに非消色用でカラー用の4種類のトナーK,C,M,Yの場合でも、電源オンから印刷可能な待機時になるまでの待ち時間を少なくでき、かつ待機時の消費電力も少なくすることができる。
【0062】
(第4の実施形態)
画像形成装置にかかる第4の実施形態について説明する。第2の実施形態では、待機時温度を最低の定着基準温度よりもやや低い値に設定した。この実施形態は、逆に待機時温度を最低の定着基準温度を有する消色トナーXよりもやや温度を上げたものである。
【0063】
図7に示すように、温度が上昇する時間t1に比べて温度が低下する時間t2はt1≪t2の関係にあるが、これはブラックトナーKと消色トナーXに40℃の開きがあるためである。
【0064】
待機時の温度を、例えば125℃±数度程度に最低のトナー温度よりも高くした場合は、消色トナーXで印刷する場合に120℃まで下がるまでの時間は短いものとなる。待機時温度からブラックトナーKで印刷の要求があった場合は、ブラックトナーKの定着基準温度に達するまでの時間を短縮できる。
【0065】
この実施形態では、待機時の温度を、定着基準温度の異なる複数のトナーのうち、最低の定着基準温度を有するトナーよりやや高めに設定した。定着基準温度が低い側のトナーの印刷を選択された場合は、印刷可能温度に達するまでに多少の時間を要するものの、定着基準温度が高い側のトナーの印刷可能時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0066】
上記の各実施形態に限定されるものではない。例えば、消色着色剤の定着基準温度は120℃とし、非消色着色剤の基準温度は、ブラックおよびカラー用のもの160℃の例を挙げたこれに限らない。消色着色剤や非消色着色剤の定着基準温度は、使われる材料により異なる。また、消色着色剤および非消色着色剤は、定着基準温度が異なればインクジェット方式の印刷に対応のインクタイプのものであってもよく、インクタイプのものであっても、トナーの表現で言い換える。さらに、非消色着色剤と消色着色剤による定着温度の制御例を挙げたが、非消色着色剤であっても定着基準温度が異なるものを使用する場合にも適用が可能である。
【0067】
また、各トナーの温度特性は、画像形成装置の本体が設定値として記憶している情報を使ってもよいし、トナーカートリッジ付属の情報、例えばICチップなどの記憶装置から情報を得てもよい。
【0068】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。