特許第6109400号(P6109400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6109400
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】耐火物及び焼却炉
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/20 20060101AFI20170327BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20170327BHJP
   F23H 1/02 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   F23C10/20
   F23G5/30 B
   F23H1/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-234519(P2016-234519)
(22)【出願日】2016年12月1日
【審査請求日】2016年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515322758
【氏名又は名称】鳥居 建十
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 建十
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327742(JP,A)
【文献】 特開平9−42636(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/161947(WO,A1)
【文献】 特開昭61−205720(JP,A)
【文献】 実開平4−41927(JP,U)
【文献】 特開平7−145921(JP,A)
【文献】 特開2001−74227(JP,A)
【文献】 特開2015−183988(JP,A)
【文献】 特公昭47−47229(JP,B1)
【文献】 米国特許第4748916(US,A)
【文献】 米国特許第6082021(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/20
F23G 5/30
F23H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉の炉床において当該炉床より燃焼空気を噴出するように配置された耐火物であって、
前記炉床は、複数の階段部により構成されており、
前記焼却炉は、前記炉床に堆積する流動媒体を前記燃焼空気の噴出により前記炉床の下流へ移動させながら、前記流動媒体上の被焼却物を燃焼させるようになっており、
前記耐火物は、
耐火材により形成され、
前記燃焼空気を噴出する噴出口を有する第1送風管と、前記第1送風管に接続されて前記第1送風管に前記燃焼空気を供給する第2送風管と、を有し、
前記第1送風管と前記第2送風管とが連通して前記耐火材の内部を貫通するように配置されており、
前記第1送風管の前記噴出口は、前記耐火物の第1壁面に設けられ、
前記第2送風管は、第1端部と、第1端部とは反対側の第2端部と、を有し、
前記第2送風管は前記第1送風管と接続され、前記第1端部は前記第1送風管の内部に突出し、前記第2端部は、前記噴出口が設けられた前記第1壁面とは異なる前記耐火物の第2壁面から突出し、
前記耐火材の内部において、前記第1送風管及び前記第2送風管と前記耐火材との間には、所定の隙間が設けられている耐火物。
【請求項2】
請求項1に記載の前記耐火物が設置された前記階段部と、
前記炉床の下流に配置され、前記燃焼空気により移動させられた前記流動媒体及び被焼却物の焼却残渣を砂抜管に向けて導く漏斗状の傾斜面と、
前記炉床と前記砂抜管との間に前記砂抜管を覆うように間隔を空けて配置され、複数の空気噴出口が形成された複数の散気管と、
前記複数の散気管同士を結合するために間隔を空けて配置された複数の固定部材と、を有し、
前記複数の階段部により構成された炉床より噴出される燃焼空気により、前記炉床に堆積する前記流動媒体を前記炉床の下流へ移動させながら、前記流動媒体上の被焼却物を燃焼させて、前記焼却残渣を前記砂抜管へと移動させる焼却炉であって、
隣り合う2つの前記散気管と隣り合う2つの前記固定部材とで構成される閉空間内部の最長距離が前記砂抜管の直径よりも小さい焼却炉。
【請求項3】
前記複数の散気管が、前記傾斜面の上方において前記砂抜管を中心とした放射状に配置され、又は前記傾斜面の上方において前記砂抜管を覆うように格子状に配置されている、請求項2に記載の焼却炉。
【請求項4】
前記散気管は、
前記傾斜面から上方に向けて立ち上がっており、かつ、
第1散気管と、前記第1散気管よりも短い第2散気管と、を有し、
前記第1散気管及び前記第2散気管の前記立ち上がり位置は、前記傾斜面の前記砂抜管から同じ高さの位置であり、
前記第1散気管の前記砂抜管側の端部は、前記砂抜管の外周部よりも内側に位置している、請求項2又は請求項3に記載の焼却炉。
【請求項5】
前記第1散気管及び前記第2散気管は、前記砂抜管からの高さが同じになるように設置されている、請求項4に記載の焼却炉。
【請求項6】
前記傾斜面は、複数の階段部により構成され、
前記耐火物は、前記階段部に設置されている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の焼却炉。
【請求項7】
前記炉床の前記複数の階段部のうちの特定の階段部における前記噴出口の位置とその次段の階段部における前記噴出口の位置とが、前記燃焼空気の噴出方向に直交する方向である幅方向に沿って重ならないように前記複数の耐火物が配置されている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火物及び焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を燃焼する焼却炉には、ストーカ炉や流動床炉を含み、数種類がある。ストーカ炉は、下部から燃焼用空気(以下、燃焼空気という)を送りこみ、廃棄物を燃えやすくするため、金属の棒を格子状に組み合わせた火格子を動かして、廃棄物を乾燥・燃焼・後燃焼させて焼却させる燃焼炉である。一方、流動床炉は、加熱した燃焼空気を下部から上方向へ吹き上げるなどして、炉内で高温に熱した砂を流動させ、流動化させた高温の砂の中で、破砕した廃棄物を燃焼させる焼却炉である。例えば、特許文献1では、ストーカ炉と流動床炉を用いたごみ焼却炉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−190509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した焼却炉では、次のような課題がある。例えば、ストーカ炉は、火格子が前後に移動することで廃棄物である被焼却物を下流方向に移動させるとともに、火格子の下部方向から燃焼空気を送り込み、被焼却物を燃焼させている。そのため、火格子の経年劣化等により、火格子と火格子との隙間が大きくなり、燃焼物がその隙間から落下し、火格子を駆動させる油圧装置に引火し、火災が発生することがある。また、燃焼灰以外の焼却残渣が発生するため、最終処分にかかる費用が大きい。
【0005】
一方、流動床炉は、高温の循環砂の上に被焼却物を載せ、燃焼空気の供給を利用して砂を移動させることにより、被焼却物を乾燥し、燃焼させる。その結果、焼却残渣としては、例えば鉄、アルミ等の金属が残る。流動床炉では、燃焼空気が送風管より供給されるが、焼却残渣として残った鉄、アルミ等が冷えて固まり、送風管の噴出口を塞いでしまうことがある。また、誤って大型の廃棄物が破砕されずに炉内に投入された結果、流動床炉の炉床の最下流に設けられた、流動砂や焼却残渣が流れ込む砂抜管を塞いでしまうようなことがある。このような場合には、焼却炉の稼働を停止し、砂抜管を塞いでいる廃棄物を取り除く作業を行うため、焼却炉の運用効率を下げることになる。
【0006】
また、燃焼空気を供給する送風管は、焼却炉を建設する際に炉床部に作り付けられ、劣化の度合いや焼却残渣による送風管の詰まり具合に応じて、個々の送風管を取り換え可能な構成とはなっていない。そのため、送風管を交換するためには焼却炉の運用を停止して、送風管を作り変える工事が必要となっていた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、焼却炉の運用停止を最小限として運用効率を向上させることができる耐火物及びその耐火物を有する焼却炉を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の趣旨を有する。
【0009】
[趣旨1]
焼却炉の炉床において当該炉床より燃焼空気を噴出するように配置された耐火物であって、
前記炉床は、複数の階段部により構成されており、
前記焼却炉は、前記炉床に堆積する流動媒体を前記燃焼空気の噴出により前記炉床の下流へ移動させながら、前記流動媒体上の被焼却物を燃焼させるようになっており、
前記耐火物は、
耐火材により形成され、
前記燃焼空気を噴出する噴出口を有する第1送風管と、前記第1送風管に接続されて前記第1送風管に前記燃焼空気を供給する第2送風管と、を有し、
前記第1送風管と前記第2送風管とが連通して前記耐火材の内部を貫通するように配置されており、
前記第1送風管の前記噴出口は、前記耐火物の第1壁面に設けられ、
前記第2送風管は、第1端部と、第1端部とは反対側の第2端部と、を有し、
前記第2送風管は前記第1送風管と接続され、前記第1端部は前記第1送風管の内部に突出し、前記第2端部は、前記噴出口が設けられた前記第1壁面とは異なる前記耐火物の第2壁面から突出し、
前記耐火材の内部において、前記第1送風管及び前記第2送風管と前記耐火材との間には、所定の隙間が設けられている。
【0010】
[趣旨2]
上記の耐火物が設置された前記階段部と、
前記炉床の下流に配置され、前記燃焼空気により移動させられた前記流動媒体及び被焼却物の焼却残渣を砂抜管に向けて導く漏斗状の傾斜面と、
前記炉床と前記砂抜管との間に前記砂抜管を覆うように間隔を空けて配置され、複数の空気噴出口が形成された複数の散気管と、
前記複数の散気管同士を結合するために間隔を空けて配置された複数の固定部材と、を有し、
前記複数の階段部により構成された炉床より噴出される燃焼空気により、前記炉床に堆積する前記流動媒体を前記炉床の下流へ移動させながら、前記流動媒体上の被焼却物を燃焼させて、前記焼却残渣を前記砂抜管へと移動させる焼却炉であって、
隣り合う2つの前記散気管と隣り合う2つの前記固定部材とで構成される閉空間内部の最長距離が前記砂抜管の直径よりも小さい。
【0011】
[趣旨3]
前記複数の散気管が、前記傾斜面の上方において前記砂抜管を中心とした放射状に配置され、又は前記傾斜面の上方において前記砂抜管を覆うように格子状に配置されている。
【0012】
[趣旨4]
前記散気管は、
前記傾斜面から上方に向けて立ち上がっており、かつ、
第1散気管と、前記第1散気管よりも短い第2散気管と、を有し、
前記第1散気管及び前記第2散気管の前記立ち上がり位置は、前記傾斜面の前記砂抜管から同じ高さの位置であり、
前記第1散気管の前記砂抜管側の端部は、前記砂抜管の外周部よりも内側に位置している。
【0013】
[趣旨5]
前記第1散気管及び前記第2散気管は、前記砂抜管からの高さが同じになるように設置されている。
【0014】
[趣旨6]
前記傾斜面は、複数の階段部により構成され、
前記耐火物は、前記階段部に設置されている。
【0015】
[趣旨7]
前記炉床の前記複数の階段部のうちの特定の階段部における前記噴出口の位置とその次段の階段部における前記噴出口の位置とが、前記燃焼空気の噴出方向に直交する方向である幅方向に沿って重ならないように前記複数の耐火物が配置されている。
【発明の効果】
【0016】
焼却炉の運用停止を最小限として運用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の焼却炉の全体構成を示す断面図である。
図2】実施形態の循環砂押出装置の構成を示す断面図である。
図3】実施形態の焼却炉の炉床部の平面図である。
図4】実施形態の送風管の構成を説明する断面図である。
図5】実施形態の散気パイプの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[焼却炉の説明]
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の焼却炉Sの全体構成を示す断面図である。図1を参照して、焼却炉Sの構成及び焼却炉Sを構成する各装置の動作について説明する。なお、図1中の白抜き矢印は燃焼空気の流れを示す。
【0019】
本実施形態の焼却炉Sは、燃焼用の砂2を耐火物で作られた炉床の上流から下流に流動させ、砂2の上に堆積された焼却ごみ14(被焼却物)を乾燥、燃焼、後燃焼させた後、炉床の最下流に設けられた砂抜管4に砂2と焼却ごみ14が燃焼された後の焼却残渣を流し込む方式の焼却炉である。本実施形態の焼却炉Sでは、循環砂押出装置1から、焼却ごみ14を燃焼するための流動媒体である砂2を焼却炉の階段状の炉床部3に供給する。そして、循環砂押出装置1から供給された砂2を、炉床部3の上流側から下流方向へ移動させるため、送風機5から高温で高圧の燃焼空気がヘッダー管7へ送出される。ヘッダー管7に送出された燃焼空気は、分岐管8、送風管9を介して、耐火物で形成された炉床部3の階段部の立ち上がり面(隣接する階段の角部)に設けられた噴出口44(図4参照)から噴出される。そして、噴出された燃焼空気の風圧により、砂2は炉床部3の下流方向(図1中、黒矢印方向)へ移動する。なお、分岐管8には、風圧調整用のバルブが設けられており、燃焼空気の噴出時の風圧を調整することができる。このように、砂2は、各階段部に設けられた噴出口44から供給される燃焼空気により、中央に焼却残渣の取出し口である砂抜管4が設けられた最下流の傾斜面15へと移動する。最下流の傾斜面15では、送風機6から燃焼空気が風箱10に送出され、砂抜管4の周囲に設けられた散気パイプ11より均等に燃焼空気が噴出され、散気パイプ11周辺の傾斜面15内の砂2を下から上方向に流動させる。そして、砂抜管4に移動した砂2は、焼却残渣と分別された後、不図示のコンベア装置により、循環砂押出装置1へと搬送され、焼却ごみ14を燃焼させるため、再度、焼却炉Sの炉床部3に供給される。
【0020】
一方、焼却炉Sで焼却される焼却ごみは、まず、ホッパー16に投入され、2軸破砕機17により細かく砕かれた後、シュート部21に落下し、堆積される。シュート部21に堆積された焼却ごみ12は、図中、矢印x方向に動作する焼却ごみ押込用のプッシャー13により、シュート部21の下部に堆積したものから順に焼却炉S内へと押込まれ、砂2の上へ移動する。砂2の上(流動媒体上)に移動した焼却ごみ14は、送風管9を介して炉床部3へ供給される高温の燃焼空気により高温となった砂2により乾燥される。そして、砂2の上に堆積した焼却ごみ14は、噴出口44から押込まれる燃焼空気の風圧で移動する砂2とともに、炉床部3の下流へと移動する。初期燃焼部22では、乾燥された焼却ごみ14は、高温の砂2とともに炉床部3の下流方向への移動に伴い、炉床部3に堆積した砂2で熱せられ、上部から燃焼空気が当たることにより、乾燥、中間燃焼と同時に、炭化する。そして、更に最下流の傾斜面15が設置されている最終燃焼部23へ移動した焼却ごみ14は、送風機18から送出された高温・高圧の燃焼空気により完全燃焼される。その結果、未燃ガス及び燃焼ガスは焼却炉Sの上部の二次燃焼部24へ上昇し、焼却ごみ14のうちの不燃物等の焼却残渣は砂2とともに、下部の砂抜管4へ移動する。
【0021】
未燃ガスと燃焼ガスは、焼却炉Sの上部に設けられた二次燃焼部24へと移動し、送風機20からの燃焼空気により二次燃焼され、未燃ガス部分が完全燃焼される。これにより、焼却炉Sから排出される排ガス25中のダイオキシン濃度を抑制することができる。二次燃焼により生じた排ガス25は、例えば発電用ボイラーなどのため、有効利用することが可能である。
【0022】
また、焼却炉Sの炉床部3の上を下流方向へ移動した高温の砂2は、最下流の傾斜面15では、更に高温となり、焼却ごみ14に混入して溶融状態となったアルミ缶や鉄缶等の不燃物である焼却残渣を一緒に砂抜管4へと移動させる。砂抜管4に移動した砂2及び焼却残渣は、砂抜管4の下方に落下し、不図示の振動ふるいで分別される。砂2は再利用するために循環砂押出装置1へと搬送され、アルミ缶、鉄缶等の焼却残渣は別途回収されて有価物としてリサイクルされる。
【0023】
[循環砂押出装置]
図2は、図1に示した循環砂押出装置1を拡大した断面図である。循環砂押出装置1は、2つのローラ50、51を有して構成され、流動床の壁面部52へ焼却ごみ14を燃焼させるための砂2を供給する装置である。砂2は、上述したように砂抜管4から回収され、再度、焼却炉Sに供給するために循環砂押出装置1に戻された砂である。ローラ50は、砂2を壁面部52に供給する際に、壁面部52の幅方向(噴出口44(図4参照)からの燃焼空気の噴出方向に直交する方向であって、図2における紙面奥行方向。)に砂2を搬送するために設けられている。ローラ50は、回転軸にスクリュー状の羽根を有し、回転軸の回転によって羽根が回転し、砂2をローラ50の回転軸の一方の端部から他方の端部の方向、又はローラ50の回転軸の両端部から中央に向かう方向に、砂2を搬送する。ローラ51は、回転軸の周りに砂を溜めるための4枚の仕切り板を有する。そして、ローラ51は、ローラ50により壁面部52の幅方向に搬送された砂2を、図中矢印方向に回転する仕切り板で掬い上げて、一定量を壁面部52に供給する(図中、白抜き矢印方向)。
【0024】
[炉床部の構成]
図3は、図1の焼却炉Sの上方向から炉床部3及び傾斜面15を見たときの平面図である。図3の左側が、図1の循環砂押出装置1が設けられた側に対応する。図3の左側(循環砂押出装置1側)から右側(砂抜管4側)に向かう炉床部3は、循環砂押出装置1から砂抜管4が設けられた傾斜面15の方向に階段状に傾斜している。炉床部3に設けられた階段部30は、耐火物により形成されている。同様に、砂抜管4が設けられた最下流の円形上の傾斜面15も、耐火物により形成されている。なお、耐火物は、耐火材であるキャスタブルにより作られている。また、各階段部30の各段の立ち上がり面には、送風管9を介して送られた燃焼空気が噴出する噴出口44が炉床部3の下流方向に向くように配置されている。図3では、特定の階段部30に配置された噴出口44の位置と隣り合う次段の階段部30に配置された噴出口44の位置とがずれていることを説明するため、本来平面図においては視認できない各階段部30の立ち上がり面が模式的に表れるように表示している。
【0025】
(階段部)
炉床部3の各階段部30の立ち上がり面に配置された、送風管9の噴出口44を有する耐火物31は、同一形状、同一サイズの耐火物であり、図3中、上下方向に並べられている。また、隣り合う階段部30に配置された耐火物31は、それぞれ送風管9の噴出口44が炉床部3の幅方向で同じ位置にならないよう、ずらして配置されている。砂2は、送風管9の噴出口44から噴出される燃焼空気により、炉床部3の下流方向に流される。更に、隣り合う階段部30ごとに噴出口44がずれていることにより、炉床部3上の砂2全体が幅方向の位置に関係なく、満遍なく、燃焼空気により移動する。また、焼却ごみ14が炉床部3上の砂2によって上流側から下流側に向かって移動する中で、焼却ごみ14に対する乾燥、燃焼、後燃焼が行われる。
【0026】
(最下流の傾斜面)
砂抜管4が中央に設けられた円形状の傾斜面15には、放射状に配置された複数の散気パイプ(散気管)が設置されている。散気パイプには、長いパイプ長の散気パイプ(例えば散気パイプ33)と、短いパイプ長の散気パイプ(例えば散気パイプ34)とがあり、これらが一定の角度で交互に配置されている。長い散気パイプ(例えば散気パイプ33)の先端部は、砂抜管4の外周部36よりも内側に延びており、短い散気パイプ(例えば散気パイプ34)の先端部は、砂抜管4の外周部36までは延びていない。また、各散気パイプは、同心円状に配置された散気管固定リング(固定部材)35により相互に固定されている。このように、散気パイプ同士(散気管同士)を散気管固定リング35により結合して固定することにより網目(閉空間、以下、メッシュともいう。)が形成され、砂抜管4内部に大型の焼却残渣が落下することを防ぐことができる。
【0027】
また、円形状の傾斜面15は、中央の砂抜管4に向かって傾斜した漏斗状の傾斜面となっており、耐火物で構成されている。本実施形態では、傾斜面15には、階段部30のような燃焼空気を供給する噴出口44は設けていない。
【0028】
[耐火物の構成]
次に、図4を用いて、炉床部3に配置された耐火物40の構成について説明する。図4は、耐火物40(図3で説明した耐火物31に対応)の内部構成(送風管の形状等)を示した断面図である。図4(a)〜(c)は、それぞれ耐火物40を異なる断面で切断したときの断面を示した図であり、図4(d)は、耐火物40を炉床部3の階段部30に設置した状態の断面を示した図である。また、図中の白抜き矢印は、分岐管8(図1)からの燃焼空気の流れを示している。
【0029】
図4(b)は、耐火物40の中央部を砂抜管4(図3)方向に切断したときの断面を示している。また、図4(a)は、図4(b)に示すB断面(矢印)で図4(b)の耐火物40を切断したときの断面を砂抜管4(図3)方向から見たときの断面を示している。同様に、図4(c)は、図4(b)に示すA断面(矢印)で図4(b)の耐火物40を切断したときの断面を砂抜管4(図3)方向から見たときの断面を示している。
【0030】
耐火物40は、送風管41(第1送風管)、送風管42(第2送風管)、耐火材45を有しており、送風管41及び送風管42は耐火材45の内部を貫通するように配置されている。図4(a)〜(c)に示すように、送風管41、送風管42は、それぞれ円筒形状のパイプである。送風管41の一端は、炉床部3の下流方向に燃焼空気を噴出する噴出口44であり、他端は、耐火材45との間に隙間を設けて塞がれた状態となっている。また、送風管42は、溶接により送風管41と接続されている。送風管42の先端部は送風管41の内側に突き出しており、送風管41の底面より高くなっている。これは、送風管41内部に入り込んだ砂2(図1)や焼却ごみ中の金属が送風管42に入り込むことを防ぐためである。また、送風管42の後端部(送風管9側)は、送風管9と接続するために、ねじ切りされている。なお、送風管41、42は例えば鉄を材料とする鋼材で作られており、耐火物40は耐火材であるキャスタブルで作られている。
【0031】
図4(d)に示すように、送風管41の噴出口44は耐火物40の炉床部3の下流側の壁面(第1壁面)に設けられている。また、送風管42の送風管41と接続された端部(第1端部)と反対側(送風管9側)の端部(第2端部)は、噴出口44が設けられた壁面とは異なる耐火物40の壁面(第2壁面)から突き出した状態となっている。送風管41及び送風管42のその他の部分は耐火材45の内部を貫通する形態となっている。送風機5からヘッダー管7、分岐管8を介して炉床部3に供給される燃焼空気が通過する際に、送風管41、42は高温の燃焼空気に触れることにより膨張する。同様に、耐火物40の耐火材45も炉床部3の階段部30に堆積し、燃焼空気により高温となった砂2からの熱により膨張する。送風管41、42の熱膨張率は、耐火材45に比べて大きいため、耐火材45と送風管41、42との間に空間を設けていない場合には、送風管41、42の膨張により耐火材45にひび割れ等が生じることがある。そのため、送風管41、42が膨張しても、送風管41、42と対向する耐火物40内部の耐火材45の壁面に接触することのないように、所定の隙間(空間)が設けられている。
【0032】
図4(d)に示すように、階段部30には、予め送風管9を通すためのパイプ43が作り付けされており、パイプ43の内径は、送風管9の外径よりも大きい。耐火物40の壁面から突出した送風管42の端部に送風管9の一端を接続して、パイプ43に挿入することにより、3つの送風管41、42、9が連通された耐火物40が階段部30に設置される。そして、送風管9の他端を分岐管8(図1)に接続することにより、送風機5から押し出された燃焼空気が、ヘッダー管7(図1)、分岐管8、送風管9、送風管42、送風管41を介して、噴出口44から炉床部3に供給される。そして、炉床部3に供給された燃焼空気が、炉床部3に堆積された砂2(図1)を下流方向に流動させる。以上説明したように、送風管41、42が耐火材45の内部を貫通するように配置された耐火物40は、1つのユニットとなっている。そして、耐火物40を必要な数だけ炉床の階段部30の立ち上がり面に配置することにより、効率よく送風管の設置工事を行うことができる。更に、経年劣化等により耐火物40を交換する場合には、劣化の進んだ耐火物40を個別に交換することが可能となる。
【0033】
[散気パイプの構成]
図5は、焼却炉Sの最下流に設置された傾斜面15を図1の焼却炉Sの上方向から見たときの模式図である。図5(a)は、砂抜管4を中心とする円形状の傾斜面15を拡大した図であり、図5(b)は、散気管である散気パイプ67を固定する散気管固定リング(以下、固定リングという)64を説明する図である。
【0034】
図5(a)において、53〜59は散気パイプを示し、実線の同心円で示す60〜62は、散気パイプ53〜59を固定するための固定リングを示している。また、破線の円は、砂抜管4の外周部36を示している。なお、図5(a)に示す散気パイプ53〜59は、傾斜面15に設置される散気パイプの一部を説明のために示している。散気パイプ53〜59は、傾斜面15の上に砂抜管4を中心にして放射状に配置されている。そして、傾斜面15には、その長さにより2種類の散気パイプが設置されている。長い散気パイプ(第1散気管)53、55、57、59は、砂抜管4側(砂抜管側)の先端部が砂抜管4の外周部36の内側まで伸びている。一方、短い散気パイプ(第2散気管)54、56、58は、砂抜管4側(砂抜管側)の先端部が砂抜管4の外周部36の外側にあり、砂抜管4の外周部36に届いていない長さである。長い散気パイプ53、55、57、59の砂抜管4の内側へ突き出した長さを大きくすることにより、散気パイプのパイプ長さが短い場合に比べて、より小さな焼却残渣が砂抜管4へ落下することを防ぐことができる。なお、図3では、長い散気パイプと短い散気パイプを交互に8本ずつ、計16本配置しているが、この配置は一例であり、本発明は、図3に示す散気パイプの数及びその配置に限定されるものではない。
【0035】
図5(a)の各散気パイプ53〜59の砂抜管4から遠い側の端部に示す破線の円は、風箱10(図1)に接続された散気パイプ53〜59の傾斜面15からの立ち上がり位置を示している。各散気パイプ53〜59の立ち上がり位置は、傾斜面15の同じ同心円上に設けられている。また、散気パイプ57は、散気パイプ内部を示す図であり、燃焼空気を噴出する空気噴出口68(図中、丸印で表示)の位置と、燃焼空気の流れる方向(白抜き矢印)を示している。散気パイプ57と同様に、各散気パイプには、一定の間隔を置いて散気パイプの両側の互いに対向する位置に空気噴出口68(不図示)が設けられている。そして、散気パイプ57に示すように、各散気パイプでは、風箱10から送られた高温・高圧の燃焼空気が散気パイプ中を図中、白抜き矢印方向に流れ、空気噴出口68から傾斜面15に送出される。
【0036】
図5(b)は、散気パイプ67と固定リング64の接続を説明する図である。散気パイプ67と固定リング64とを接続するために、散気パイプ67には予め取合いプレート65が溶接により取り付けられている。そして、散気パイプ67は、取合いプレート65と固定リング64を取付けボルト66で結合することにより、固定リング64は散気パイプ67に固定される。また、各散気パイプ53〜59は、散気パイプの長さに関係なく、砂抜管4からの高さが同じ高さになるように設置されている。これにより、傾斜面15の上方向からの砂2や焼却残渣の重量により、各散気パイプ53〜59が傾斜面15の方向に変形することを防ぐことができる。
【0037】
また、図5(b)に示すように、散気パイプ67の空気噴出口68は、散気パイプ67のパイプの下半分側(傾斜面15側)に設けられ、斜め下方向に燃焼空気を噴出する。例えば空気噴出口68が散気パイプ67の上半分側、又は中央に設けられていた場合には、燃焼空気の噴出方向は上方向又は水平方向となり、散気パイプ67より上部に堆積された砂2の流動しか生じさせることができない。一方、本実施形態のように、斜め下方向に向けて燃焼空気を噴出することにより、散気パイプ67よりも下側に堆積された砂2と上側に堆積された砂2とを対流させて、攪拌することが可能となる。これにより、傾斜面15内の砂2の温度を均一に保つことができるとともに、焼却ごみ14の焼却度合をより進めることができる。
【0038】
図5(a)に示すように、固定リング60、61、62を散気パイプ53〜59に固定することにより、焼却残渣が砂抜管4に落下することを防止する閉空間であるメッシュ(網目)が形成される。これにより、焼却ごみの中の大型の不燃物が焼却残渣となって砂抜管4に落下し、砂抜管4を塞いでしまう状況を回避することができる。例えば図2図5(a)では、散気パイプと固定リングで形成された閉空間内部での最長距離(例えば対角線方向の長さ)が、砂抜管4の直径C(図5(a))よりも小さくなるように、散気パイプ及び固定リングが配置されている。また、長い散気パイプ53、55、57、59の砂抜管4内側に突き出した長さを更に大きくすることにより、より小さな焼却残渣が砂抜管4に落下することを防止することができる。その一方、散気パイプと固定リングで形成されたメッシュ部分に引っかかった焼却残渣により、砂2が砂抜管4へ落下することも妨げられることになる。そのため、最も内側に設ける固定リング62の位置は、落下を防ぎたい焼却残渣のサイズを考慮して決定すればよい。そして、閉空間(例えば四角形のメッシュ部分)の最大幅となる対角線方向の長さは、砂抜管4への落下を防止したい焼却残渣の最大サイズよりも小さくなるように、固定リングの設置位置とその数、散気パイプの本数を決定すればよい。
【0039】
また、本実施例では、図3に示すように、焼却炉Sの上方向から見たときの傾斜面15の形状は円形状を有しているが、円形状は一例であり、例えば方形状であってもよい。本実施例では散気パイプ53〜59は、傾斜面15の形状に合わせて、砂抜管4を中心に放射状に配置されていたが、傾斜面15が方形状の場合には、例えば傾斜面15を囲む壁面に平行に配置するようにしてもよい。また、傾斜面15の形状が円形状の場合には、散気パイプを接続する固定リングは円形状であったが、傾斜面15の形状が方形状の場合には、固定リングの形状は、円形状でなく、直線形状となる(以下、直線形状の固定リングを固定用部材という)。そして、固定用部材は散気パイプに交差、あるいは直交するように配置して、各散気パイプと結合することで、散気パイプと固定用部材により格子状の構成のメッシュを設けて、大型の焼却残渣の砂抜管への落下を防ぐようにしてもよい。なお、砂抜管の上部を覆うメッシュ部分には、落下を防ぎたい焼却残渣のサイズを考慮した開口を設けてもよい。また、本実施例では、各散気パイプは、傾斜面15から立ち上がるように構成されているが、例えば傾斜面15から水平方向に散気パイプが延びるように設置する構成でもよい。
【0040】
また、本実施例では、傾斜面15には、燃焼空気を噴出する噴出口44は設けられていない。例えば、傾斜面15を階段状の傾斜面にして、各階段部の各段の立ち上がり面には炉床部3と同様に耐火物40を設置し、風箱10の燃焼空気を送風管9、送風管42、送風管41を介して、噴出口44より傾斜面15に供給する構成としてもよい。これにより、砂抜管4に近い位置からも燃焼空気が供給されることになり、散気パイプだけの場合に比べて、傾斜面15内での砂2の流動が更に効率よく効果的に行われ、焼却ごみの完全焼却を推進することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、焼却炉の運用停止を最小限として運用効率を向上させることができる。耐火材の内部を貫通させた送風管を有する耐火物を用いて炉床部を作ることにより、経年劣化等により炉床部の耐火物の交換を効率よく行うことができる。また、炉床部の最下流に設置した砂抜管の周囲に散気パイプを設置することで、砂抜管に大型の焼却残渣や金属等が落下することを防ぐことができる。これにより、焼却炉の運用停止を低減させ、焼却炉の運用効率の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0042】
x:プッシャー13の動作方向
1:循環砂押出装置
2:砂
3:炉床部
4:砂抜管
5、6:送風機
7:ヘッダー管
8:分岐管
9:送風管
10:風箱
11:散気パイプ
12:焼却ごみ
13:プッシャー
14:焼却ごみ
15:傾斜面
16:ホッパー
17:2軸破砕機
18、20:送風機
21:シュート部
22:初期燃焼部
23:最終燃焼部
24:二次燃焼部
25:排ガス
30:階段部
31:耐火物
33、34:散気パイプ
35:散気管固定リング
36:(砂抜管4の)外周部
40:耐火物
41、42:送風管
43:送風管用パイプ
44:噴出口
45:耐火材
50:スクリューローラ
51:砂供給ローラ
52:壁面部
53〜59:散気パイプ
60〜62、64:散気管固定リング
65:取合いプレート
66:取付けボルト
67:散気パイプ
68:空気噴出口
【要約】
【課題】焼却炉の運用停止を最小限として運用効率を向上させること。
【解決手段】焼却炉Sの炉床において当該炉床より燃焼空気を噴出するように配置された耐火物40であって、耐火物40は、耐火材45により形成され、燃焼空気を噴出する噴出口44を有する送風管41と、送風管41に接続されて送風管41に燃焼空気を供給する送風管42と、を有し、送風管41と送風管42とが連通して耐火材45の内部を貫通するように配置されており、送風管41の噴出口44は、耐火物40の第1壁面に設けられ、送風管42は、第1端部と、第1端部とは反対側の第2端部と、を有し、送風管42は送風管41と接続され、第1端部は送風管41の内部に突出し、第2端部は、噴出口44が設けられた第1壁面とは異なる耐火物40の第2壁面から突出し、耐火材45の内部において、送風管41及び送風管42と耐火材45との間には、所定の隙間が設けられている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5