特許第6109495号(P6109495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109495
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】タービンおよびガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20170327BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   F02C7/00 E
   F02C7/00 D
   F01D25/24 D
   F01D25/24 R
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-134152(P2012-134152)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-256914(P2013-256914A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年6月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】森井 統
(72)【発明者】
【氏名】今栄 智裕
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−064286(JP,A)
【文献】 特開昭52−010846(JP,A)
【文献】 特開平10−047557(JP,A)
【文献】 特開平08−086204(JP,A)
【文献】 特開昭55−063083(JP,A)
【文献】 特開平10−277732(JP,A)
【文献】 特開平06−317102(JP,A)
【文献】 特開平11−270353(JP,A)
【文献】 特開2007−046880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 25/24、30
F02C 7/00
B23K 1/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン静翼の上流側にて当該タービン静翼のシュラウドに結合されて前記タービン静翼に主流ガスを供給するガスパス流路を形成するガスパスを有し、前記ガスパスの下流側端部を前記ガスパス流路の外側に拡げて前記シュラウドの外側面に重ねた部分がロウ付けされるタービンにおいて、
前記ガスパスの下流側端部であって、前記ガスパス流路内で前記シュラウドの上流側端部と対向する部分に、前記ガスパス流路の内面から繋がる鋭角な角部を形成し、かつ当該角部と前記シュラウドの上流側端部と間に隙間を形成しており、
前記ガスパスの下流側端部に、前記ガスパス流路内で前記角部から前記シュラウドの上流側端部の外側面に連なる部分に外側に向けて傾斜する傾斜内面を形成し、かつ前記ガスパス流路外で前記傾斜内面の傾斜に沿って傾斜する傾斜外面を形成するとともに、前記傾斜内面および前記傾斜外面の傾斜に沿って前記ガスパスの下流側端部を斜め外側に延在して形成し、当該ガスパスの下流側端部が重なる態様で前記シュラウドの上流側端部の外側に傾斜外面を形成することを特徴とするタービン。
【請求項2】
前記ガスパス流路外で前記ガスパスの下流側端部における前記角部から前記シュラウドの上流側端部に重なる部分に至る外側を覆う肉盛を設けることを特徴とする請求項に記載のタービン。
【請求項3】
圧縮機と、燃焼器と、タービンとを備えるガスタービンエンジンにおいて、
請求項1または請求項2に記載のタービンが適用されることを特徴とするガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンおよび当該タービンが適用されるガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、ガスタービンエンジンが示されている。このガスタービンエンジンは、圧縮機、燃焼器、およびタービンを含み構成されている。そして、エンジンに流入する空気の主流は、圧縮機にて圧縮され、燃焼器にて燃焼ガスとなり、タービンを回転駆動し大気に排出される。タービンは、燃焼器に繋がる前段に高圧タービンが設けられ、高圧タービンに繋がる後段に出力タービンが設けられている。高圧タービンは、高圧タービン静翼(ガスジェネレータタービンノズル)と高圧タービン動翼(ガスジェネレータタービン動翼)とを有している。また、出力タービンは、出力タービン静翼(出力タービンノズル)と出力タービン動翼とを有している。このタービンに関し、高圧タービンと出力タービンとを連通し、出力タービンにおける主流ガスの入口流路となるガスパスが設けられている。ガスパスは、上流側が高圧タービンの高圧タービン動翼に対向し、下流側が出力タービン静翼に対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−18270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなタービンに係り、高圧タービンと出力タービンとの間に長い距離を要する場合、ガスパスを形成する部材が長く、かつ1mm程の薄板であるため、出力タービン静翼側のように鋳造することが難しい。このため、ガスパスの部材を出力タービン静翼と別構造にし、相互をロウ付けにより結合する。ロウ付けは、図8に示すように、ガスパス6の下流側端部61A,62Aを、出力タービン静翼32aを支持するシュラウド32dの外側に重ねた重合部Rに施される。
【0005】
しかし、図8に示すように、ガスパス6の下流側端部61A,62Aを斜めに拡げてロウ付けする場合、ガスパス6のガスパス流路63内において、ガスパス6の斜めに拡げた部分と、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部とで流路を拡径する凹部7が生じてしまう。そして、この凹部7内で、ガスパス6の斜めの部分に沿って流れた主流ガスGが、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部に衝突し、主流ガスGの流れを阻害する成分を生じるため、タービンの出力損失となる。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、ガスパスとタービン静翼との結合部分に起因する出力損失を低減して性能を向上することのできるタービンおよびガスタービンエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、第1の発明のタービンは、タービン静翼の上流側にて当該タービン静翼のシュラウドに結合されて前記タービン静翼に主流ガスを供給するガスパス流路を形成するガスパスを有し、前記ガスパスの下流側端部を前記ガスパス流路の外側に拡げて前記シュラウドの外側面に重ねた重合部がロウ付けされるタービンにおいて、前記ガスパスの下流側端部であって、前記ガスパス流路内で前記シュラウドの上流側端部と対向する部分に、前記ガスパス流路の内面から繋がる鋭角な角部を形成し、かつ当該角部と前記シュラウドの上流側端部と間に隙間を形成することを特徴とする。
【0008】
このタービンによれば、ガスパス流路の内面に沿って下流側に流れる主流ガスは、角部においてガスパス流路の内面から剥離され、タービン静翼におけるシュラウドの上流側端部に衝突することなく下流側に流れる。このため、主流ガスの流れを阻害する成分が低減する。この結果、ガスパスとタービン静翼との結合部分に起因する出力損失を低減してタービン性能を向上することができる。
【0009】
しかも、角部と、シュラウドの上流側端部との間に隙間が形成されているため、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差が軽減されることから、ガスパスにおける接合部分での歪みの集中を低減し、当該部分の応力の発生を低減することができる。
【0010】
また、第2の発明のタービンは、第1の発明において、前記ガスパスの下流側端部に、前記ガスパス流路内で前記角部から前記シュラウドの上流側端部の外側面に連なる部分に外側に向けて傾斜する傾斜内面を形成し、かつ前記ガスパス流路外で前記傾斜内面の傾斜に沿って傾斜する傾斜外面を形成することを特徴とする。
【0011】
このタービンによれば、傾斜内面および傾斜外面により剛性が向上し、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパスにおける接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することができる。
【0012】
また、第3の発明のタービンは、第1の発明において、前記ガスパスの下流側端部に、前記ガスパス流路内で前記角部から前記シュラウドの上流側端部の外側面に連なる部分に外側に向けて傾斜する傾斜内面を形成し、かつ前記ガスパス流路外で前記傾斜内面の傾斜に沿って傾斜する傾斜外面を形成するとともに、前記傾斜内面および前記傾斜外面の傾斜に沿って前記ガスパスの下流側端部を斜め外側に延在して形成し、当該ガスパスの下流側端部が重なる態様で前記シュラウドの上流側端部の外側に傾斜外面を形成することを特徴とする。
【0013】
このタービンによれば、傾斜内面および傾斜外面により剛性が向上し、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。しかも、傾斜内面および傾斜外面に沿ってガスパスの下流側端部が延在され、かつ傾斜外面がシュラウドの傾斜外面に重なりロウ付けされることにより、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパスにおける接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することができる。
【0014】
また、第4の発明のタービンは、第1の発明において、前記ガスパス流路外で前記ガスパスの下流側端部における前記角部から前記シュラウドの上流側端部に重なる重合部に至る外側を覆う肉盛を設けることを特徴とする。
【0015】
このタービンによれば、肉盛によりガスパスの下流側端部における角部からシュラウドの上流側端部に重なる重合部の剛性が向上される。このため、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパスにおける接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することができる。
【0016】
また、第5の発明のタービンは、第1の発明において、前記ガスパスの下流側端部に、前記ガスパス流路内で前記角部から前記シュラウドの上流側端部の外側面に連なる部分に外側に向けて傾斜する傾斜内面を形成し、さらに前記ガスパス流路外で前記ガスパスの下流側端部における前記角部から前記シュラウドの上流側端部に重なる重合部に至る外側を覆う肉盛を設けることを特徴とする。
【0017】
このタービンによれば、傾斜内面および肉盛によりガスパスの下流側端部における角部からシュラウドの上流側端部に重なる重合部の剛性が向上し、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパスにおける接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することができる。
【0018】
また、第6の発明のタービンは、第1の発明において、前記ガスパスの下流側端部に、前記ガスパス流路内で前記角部から前記シュラウドの上流側端部の外側面に連なる部分に外側に向けて傾斜する傾斜内面を形成するとともに、前記傾斜内面の傾斜に沿って前記ガスパスの下流側端部を斜め外側に延在して形成し、当該ガスパスの下流側端部が重なる態様で前記シュラウドの上流側端部の外側面を斜めに形成し、さらに前記ガスパス流路外で前記ガスパスの下流側端部における前記角部から前記シュラウドの上流側端部に重なる重合部に至る外側を覆う肉盛を設けることを特徴とする。
【0019】
このタービンによれば、傾斜内面および肉盛によりガスパスの下流側端部における角部からシュラウドの上流側端部に重なる重合部の剛性が向上し、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。しかも、傾斜内面に沿ってガスパスの下流側端部が延在され、かつ傾斜外面がシュラウドの傾斜外面に重なりロウ付けされることにより、ガスパスとシュラウドの上流側端部との接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、薄板であるガスパスにおける接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することができる。
【0020】
上述の目的を達成するために、本発明のガスタービンエンジンは、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを備えるガスタービンエンジンにおいて、第1〜第6のいずれか一つの発明に記載のタービンが適用されることを特徴とする。
【0021】
このガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガスパスとタービン静翼との結合部分に起因する出力損失を低減して性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係るガスタービンエンジンの概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態2に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態3に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。
図5図5は、本発明の実施形態4に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。
図6図6は、本発明の実施形態5に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。
図7図7は、本発明の実施形態6に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。
図8図8は、従来のタービンの要部を示す概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービンエンジンの概略構成図である。図1に例示するように、ガスタービンエンジン(ジェットエンジン)は、圧縮機1と、燃焼器2と、タービン3とを含み構成されている。
【0026】
圧縮機1は、ケーシング4に対して軸受(図示せず)により回転可能に支持されるロータ5に設けられている。圧縮機1は、インペラ11がケーシング4に収容されている。インペラ11は、ディスク11aと、このディスク11aの周囲に放射状に配置された複数枚のブレード11bとを含み構成されている。ディスク11aは、ロータ5に取り付けられており、これによりインペラ11は、ロータ5とともに回転する。ケーシング4は、作動流体(例えば、空気)を通過させる流路12を形成する。流路12は、ロータ5を中心として環状に形成され、インペラ11のディスク11aの小径側であるブレード11bの前縁側から、各ブレード11b間を通過しつつロータ5の半径方向外側に向かってディスク11aの大径側であるブレード11bの後縁側に至る。
【0027】
燃焼器2は、ケーシング4により形成され、主圧力室21と、燃焼器室22とを備えている。主圧力室21は、ロータ5を中心として環状に形成され、圧縮機1における流路12の下流側に接続されて、作動流体を燃焼器室22に導くものである。燃焼器室22は、ロータ5を中心として環状に形成され、主圧力室21に通じて設けられ、燃料ノズル23が設けられており、タービン3に通じて形成されている。
【0028】
タービン3は、高圧タービン31と出力タービン32とを有する。高圧タービン31は、高圧タービン静翼31aと、高圧タービン動翼31bとを有している。高圧タービン静翼31aは、燃焼器2における燃焼器室22の出口側に取り付けられている。高圧タービン動翼31bは、ロータ5に取り付けられた高圧タービンディスク31cの外周に複数配置されている。これにより、高圧タービン動翼31bは、ロータ5とともに回転する。一方、出力タービン32は、出力タービン静翼32aと、出力タービン動翼32bとを有している。出力タービン静翼32aは、高圧タービン31と出力タービン32とを繋ぐガスパス6の出口側に取り付けられている。出力タービン動翼32bは、ロータ5に取り付けられた出力タービンディスク32cの外周に複数配置されている。これにより、出力タービン動翼32bは、ロータ5とともに回転する。
【0029】
また、ガスパス6は、ロータ5を中心として筒状に形成された内筒61と、この内筒61の外側にてロータ5を中心として筒状に形成された外筒62との間で、作動流体を高圧タービン31から出力タービン32に導くガスパス流路63を形成する。
【0030】
このようなガスタービンエンジンは、圧縮機1において、ロータ5の廻りにインペラ11が回転することにより、作動流体の主流は、圧縮されつつ、主圧力室21に導かれ、燃焼器2内に入り、燃焼器2内に燃料ノズル23により供給された燃料と混合されて燃焼させられた後、高温の主流ガスGとなってタービン3へ導かれる。主流ガスGは、タービン3の高圧タービン31における高圧タービン静翼31aと高圧タービン動翼31bとを通過することでロータ5を回転駆動する。その後、主流ガスGは、ガスパス6を経てタービン3の出力タービン32における出力タービン静翼32aと出力タービン動翼32bとを通過することでエンジンとしての出力を発生する。
【0031】
ところで、上述したようなタービン3に係り、高圧タービン31と出力タービン32との間に長い距離を要する場合、ガスパス6を形成する内筒61および外筒62が長く、かつ1mm程の薄板であるため、出力タービン静翼32a側のように鋳造することが難しい。このため、ガスパス6の内筒61および外筒62を出力タービン静翼32aと別構造にし、相互をロウ付けにより結合する。ロウ付けは、ガスパス6の下流側端部61A,62Aを、出力タービン静翼32aを支持するシュラウド32d(図2など参照)の外側面に重ねた重合部R(図2など参照)に施される。しかし、図8に示すように、出力タービン静翼32aを支持するシュラウド32dの外側に重なるように、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aを斜めに拡げてロウ付けする場合、ガスパス6のガスパス流路63内において、内筒61および外筒62の斜めに拡げた部分と、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部32daとでガスパス流路63を拡径する凹部7が生じてしまう。そして、この凹部7内で、ガスパス流路63の内面63aから内筒61および外筒62の斜めの部分に沿って流れた主流ガスGが、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部32daに衝突し、主流ガスGの流れを阻害する成分を生じるため、タービン3の出力損失となる。
【0032】
そこで、以下に説明する実施形態では、この課題を解決し、ガスパス6と出力タービン静翼(タービン静翼)32aとの結合部分に起因する出力損失を低減して性能を向上する。
【0033】
[実施形態1]
図2は、本実施形態に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。本実施形態のタービン3は、図2に示すように、出力タービン静翼(タービン静翼)32aの上流側にて出力タービン静翼32aのシュラウド32dに結合されて出力タービン静翼32aに主流ガスGを供給するガスパス流路63を形成するガスパス6を有し、このガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aを、ガスパス流路63の外側に拡げてシュラウド32dの外側面に重ねた重合部Rがロウ付けされるものである。
【0034】
このタービン3は、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aであって、ガスパス流路63内で、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部32daと対向する部分に、ガスパス流路63の内面63aから繋がる鋭角(角度90°以下)の角部61Aa,62Aaが形成されている。角部61Aa,62Aaは、ガスパス流路63の内面63aからガスパス流路63の外側に向かって凹んで形成され、シュラウド32dの上流側端部32daとの間に隙間8を介して設けられている。なお、隙間8を介した、ガスパス流路63の内面63aと、シュラウド32dの内面32dbとは、主流ガスGの流れ方向でガスパス流路63の内側に相互が突出しないように形成されている。
【0035】
このように構成されるタービン3によれば、ガスパス流路63の内面63aに沿って下流側に流れる主流ガスGは、角部61Aa,62Aaにおいてガスパス流路63の内面63aから剥離され、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部32daに衝突することなく下流側に流れる。このため、主流ガスGの流れを阻害する成分が低減する。この結果、ガスパス6と出力タービン静翼32aとの結合部分に起因する出力損失を低減してタービン性能を向上することが可能になる。
【0036】
しかも、角部61Aa,62Aaと、シュラウド32dの上流側端部32daとの間に隙間8が形成されているため、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差が軽減されることから、ガスパス6の内筒61および外筒62における接合部分での歪みの集中を低減し、当該部分の応力の発生を低減することが可能になる。また、隙間8は、ガスパス6やシュラウド32dの加工誤差などがあっても相互の取り合わせを行うために用いることができる。
【0037】
また、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aは、出力タービン静翼32aにおけるシュラウド32dの上流側端部32daに重なってロウ付けされるが、内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aおよびロウ付け部分が出力タービン静翼32aの外側に掛からないように離れて構成されている。
【0038】
このため、シュラウド32dの熱応答を良好にすることができ、出力タービン静翼32aをシュラウド32dとの熱伸び差が起因となる熱応力を低減することが可能となる。
【0039】
また、上述したタービン3が適用されるガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することが可能になる。
【0040】
[実施形態2]
図3は、本実施形態に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。以下に説明する実施形態2において、上述した実施形態1と同等部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態のタービン3は、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aにおいて、ガスパス流路63内で、角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daの外側面に連なる部分に、外側に向けて傾斜する傾斜内面61Ab,62Abが形成されている。さらに、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aにおいて、ガスパス流路63外で、傾斜内面61Ab,62Abの傾斜に沿って傾斜する傾斜外面61Ac,62Acが形成されている。
【0042】
このように構成されるタービン3によれば、実施形態1のタービン3と同様に、角部61Aa,62Aaや隙間8や出力タービン静翼32aに対する下流側端部61A,62Aの配置による効果を奏する。これに加え、本実施形態のタービン3は、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acが形成されている。このため、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acにより剛性が向上し、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパス6の内筒61および外筒62における接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することが可能になる。
【0043】
また、上述したタービン3が適用されるガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することが可能になる。
【0044】
[実施形態3]
図4は、本実施形態に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。以下に説明する実施形態3において、上述した実施形態1と同等部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態のタービン3は、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aにおいて、ガスパス流路63内で、角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daの外側面に連なる部分に、外側に向けて傾斜する傾斜内面61Ab,62Abが形成されている。さらに、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aにおいて、ガスパス流路63外で、傾斜内面61Ab,62Abの傾斜に沿って傾斜する傾斜外面61Ac,62Acが形成されている。
【0046】
さらに、本実施形態のタービン3は、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acの傾斜に沿ってガスパス6の下流側端部61A,62Aが斜め外側に延在して形成されている。さらに、このように形成されたガスパス6の下流側端部61A,62Aが重なるようにシュラウド32dの上流側端部32daの外側に傾斜外面32dcが形成されている。
【0047】
このように構成されるタービン3によれば、実施形態1のタービン3と同様に、角部61Aa,62Aaや隙間8や出力タービン静翼32aに対する下流側端部61A,62Aの配置による効果を奏する。これに加え、本実施形態のタービン3は、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acが形成され、この傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acの傾斜に沿ってガスパス6の下流側端部61A,62Aが斜め外側に延在して形成され、シュラウド32dの上流側端部32daの外側にガスパス6の下流側端部61A,62Aが重なる傾斜外面32dcが形成されている。このため、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acにより剛性が向上し、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。しかも、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acに沿ってガスパス6の下流側端部61A,62Aが延在され、かつ傾斜外面61Ac,62Acがシュラウド32dの傾斜外面32dcに重なりロウ付けされることにより、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパス6の内筒61および外筒62における接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することが可能になる。
【0048】
また、上述したタービン3が適用されるガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することが可能になる。
【0049】
[実施形態4]
図5は、本実施形態に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。以下に説明する実施形態4において、上述した実施形態1と同等部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態のタービン3は、実施形態1のタービン3において、ガスパス流路63外で、ガスパス6の下流側端部61A,62Aにおける角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daに重なる部分に至る外側を覆う肉盛61Ad,62Adが設けられている。
【0051】
このように構成されるタービン3によれば、実施形態1のタービン3と同様に、角部61Aa,62Aaや隙間8や出力タービン静翼32aに対する下流側端部61A,62Aの配置による効果を奏する。これに加え、本実施形態のタービン3は、肉盛61Ad,62Adによりガスパス6の下流側端部61A,62Aにおける角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daに重なる部分の剛性が向上される。このため、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパス6の内筒61および外筒62における接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することが可能になる。
【0052】
また、上述したタービン3が適用されるガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することが可能になる。
【0053】
[実施形態5]
図6は、本実施形態に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。以下に説明する実施形態5において、上述した実施形態1と同等部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態のタービン3は、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aにおいて、ガスパス流路63内で、角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daの外側面に連なる部分に、外側に向けて傾斜する傾斜内面61Ab,62Abが形成されている。さらに、ガスパス流路63外で、ガスパス6の下流側端部61A,62Aにおける角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daに重なる部分に至る外側を覆う肉盛61Ad,62Adが設けられている。
【0055】
このように構成されるタービン3によれば、実施形態1のタービン3と同様に、角部61Aa,62Aaや隙間8や出力タービン静翼32aに対する下流側端部61A,62Aの配置による効果を奏する。これに加え、本実施形態のタービン3は、傾斜内面61Ab,62Abが形成されているとともに、肉盛61Ad,62Adが設けられている。このため、傾斜内面61Ab,62Abおよび肉盛61Ad,62Adによりガスパス6の下流側端部61A,62Aにおける角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daに重なる部分の剛性が向上し、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパス6の内筒61および外筒62における接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することが可能になる。
【0056】
また、上述したタービン3が適用されるガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することが可能になる。
【0057】
[実施形態6]
図7は、本実施形態に係るタービンの要部を示す概略拡大図である。以下に説明する実施形態6において、上述した実施形態1と同等部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
本実施形態のタービン3は、ガスパス6における内筒61および外筒62の下流側端部61A,62Aにおいて、ガスパス流路63内で、角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daの外側面に連なる部分に、外側に向けて傾斜する傾斜内面61Ab,62Abが形成されている。
【0059】
さらに、本実施形態のタービン3は、傾斜内面61Ab,62Abおよび傾斜外面61Ac,62Acの傾斜に沿ってガスパス6の下流側端部61A,62Aが斜め外側に延在して形成されている。さらに、このように形成されたガスパス6の下流側端部61A,62Aが重なるようにシュラウド32dの上流側端部32daの外側に傾斜外面32dcが形成されている。
【0060】
また、本実施形態のタービン3は、ガスパス流路63外で、ガスパス6の下流側端部61A,62Aにおける角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daに重なる部分に至る外側を覆う肉盛61Ad,62Adが設けられている。
【0061】
このように構成されるタービン3によれば、実施形態1のタービン3と同様に、角部61Aa,62Aaや隙間8や出力タービン静翼32aに対する下流側端部61A,62Aの配置による効果を奏する。これに加え、本実施形態のタービン3は、傾斜内面61Ab,62Abが形成され、この傾斜内面61Ab,62Abの傾斜に沿ってガスパス6の下流側端部61A,62Aが斜め外側に延在して形成され、シュラウド32dの上流側端部32daの外側にガスパス6の下流側端部61A,62Aが重なる傾斜外面32dcが形成されているとともに、肉盛61Ad,62Adが設けられている。このため、傾斜内面61Ab,62Abおよび肉盛61Ad,62Adによりガスパス6の下流側端部61A,62Aにおける角部61Aa,62Aaからシュラウド32dの上流側端部32daに重なる部分の剛性が向上し、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。しかも、傾斜内面61Ab,62Abに沿ってガスパス6の下流側端部61A,62Aが延在され、かつ傾斜外面61Ac,62Acがシュラウド32dの傾斜外面32dcに重なりロウ付けされることにより、ガスパス6の内筒61および外筒62とシュラウド32dの上流側端部32daとの接合部分の剛性差がさらに軽減される。この結果、ガスパス6の内筒61および外筒62における接合部分での歪みの集中をより低減し、当該部分の応力の発生をより低減することが可能になる。
【0062】
また、上述したタービン3が適用されるガスタービンエンジンによれば、タービン性能の向上によりエンジン性能を向上することが可能になる。
【符号の説明】
【0063】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
31 高圧タービン
32 出力タービン
32a 出力タービン静翼
32d シュラウド
32da 上流側端部
32db 内面
32dc 傾斜外面
6 ガスパス
61 内筒
61A,62A 下流側端部
61Aa,62Aa 角部
61Ac,62Ac 傾斜外面
61Ab,62Ab 傾斜内面
61Ad,62Ad 肉盛
62 外筒
63 ガスパス流路
63a 内面
8 隙間
G 主流ガス
R 重合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8