(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、在宅医療とは、何らかの疾患を有する患者が入院せずに自宅等において医師の医学的指導管理下で治療を受けることの総称とされている。在宅医療の一種である在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy)は、患者(主に慢性呼吸不全患者)の動脈血酸素飽和度又はこれに対応する酸素関連のパラメータの数値改善を図り、ひいては患者のQOL(Quality of Life)の向上を図るための治療法である。
【0003】
在宅酸素療法には通常、酸素供給装置が使用される。酸素供給装置の一種である酸素濃縮器は、フィルタ及び吸気タンクを通して取り込んだ室内空気をコンプレッサにより圧縮し、圧縮空気を加減圧の切り替えを繰り返しながらシーブベッドに通過させることにより圧縮空気から酸素ガスを生成し、鼻腔カニューラを介して酸素ガスを患者体内に供給する。
【0004】
患者は、酸素濃縮器を例えば自宅に設置し、在宅時、医師の処方に従って酸素濃縮器から酸素ガスを吸入する。一方、医師は、在宅酸素療法の経過観察をし、酸素流量値等の処方の見直しを適宜行う。経過観察の方法として、例えば特許文献1には、患者の動脈血酸素分圧又は動脈血酸素飽和度の測定値をその測定日時での酸素供給装置の酸素流量値と共に表示する装置を用いて、患者に対する酸素供給の効果を確認することが、記載されている。
【0005】
ところで、処方される酸素流量値(処方酸素流量)としては、安静時に吸入すべきとして指示される値のほか、労作時の値(通常、安静時の値よりも高い)や、就寝時の値(通常、安静時の値よりも低い)、等がある。
【0006】
ところが、これらの処方酸素流量が守られていても、患者の生活状況によっては患者の酸素吸入効率が低下し、結果として動脈血酸素飽和度(以下、単に「酸素飽和度」という)を良好に維持できず低酸素状態となる場合がある。また、例えば労作時に患者が酸素濃縮器からの酸素流量値を処方通りに設定することを忘れる等の理由により、患者が低酸素状態となる可能性もある。
【0007】
このような問題に対しては、例えば特許文献2、3に記載されているように、パルスオキシメータ等による酸素飽和度の測定結果に応じて酸素濃縮器からの酸素流量値を変更させることが、知られている。より具体的には、測定された酸素飽和度が例えば所定範囲よりも低くなったときに、その値が所定範囲に戻るように酸素濃縮器からの酸素流量値を一時的に増やす制御が行われる。なお、特許文献3には、酸素流量値の変更後、酸素飽和度の測定結果が正確に或いは所定期間にわたって得られない場合に、酸素流量値を自動的に元に戻すことが、記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
〔酸素濃縮器の構成〕
図1は本発明の一実施の形態に係る酸素供給装置としての酸素濃縮器のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
【0019】
図1に示す酸素濃縮器10は、制御部11、音声出力部12、表示部13、操作部14、通信部15、各種センサ16、酸素ガス生成部17及びタイマ18を有する。これら各ブロックは、バスラインを介して制御部11に電気的に接続されている。
【0020】
制御部11は、演算/制御装置として上記各ブロックの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)111を有する。
【0021】
また、制御部11は、メモリ112を有する。制御部11は、酸素濃縮器10において発生した全ての動作や事象をその発生日時と関連付けて器械動作ログとして取得し、取得した器械動作ログをメモリ112に格納する。制御部11は、発生日時等、時間に関する情報を、時計機能を有するタイマ18から取得することができる。
【0022】
音声出力部12は、制御部11からの制御信号に基づいて、アラームやガイダンス等の各種情報を音声で出力するスピーカである。表示部13は、制御部11からの制御信号に基づいて各種情報を表示するもので、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等である。
【0023】
操作部14は、酸素濃縮器10からの酸素ガスの流量(酸素流量)等の設定をユーザ(患者等)が行うための入力装置(例えば操作ボタン)である。操作部14において、例えば酸素流量の設定(より具体的には酸素流量値の入力)が行われると、設定された酸素流量値を指示する操作信号が制御部11に入力される。
【0024】
通信部15は、TCP/IP等の通信プロトコルに従って処理を行い、外部機器、特にパルスオキシメータ20との間で情報の送受信を行う。通信部15は、酸素濃縮器10に内蔵された通信モジュールであってもよいし、インターフェースを介して酸素濃縮器10に接続された外付けの通信モジュールであってもよい。
【0025】
各種センサ16は、酸素濃縮器10の使用環境や使用状況等を検出するセンサで、例えば酸素濃縮器10が供給する酸素ガスの濃度を検出する酸素センサ、酸素ガスの圧力を検出する圧力センサ、筐体内の温度を検出する温度センサ等である。
【0026】
酸素ガス生成部17は、酸素濃縮器10の主要な機能として、高濃度酸素を含有する酸素ガスを原料空気から生成し、生成した酸素ガスを患者に供給する。酸素濃縮器10がPSA(Pressure Swing Adsorption)式である場合、酸素ガス生成部17は、
図2に概略的に示すように、空気取入部171、空気圧縮部172、PSA部173、製品タンク174及び酸素供給部175を有する。
【0027】
酸素ガス生成部17における酸素ガスの生成及び供給の過程は以下の通りである。
【0028】
空気取入部171から導入された原料空気は、空気圧縮部172(コンプレッサ)で圧縮されて圧縮空気となり、この圧縮空気がPSA部173に送出される。PSA部173は、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填された2本のシーブベッド(吸着塔)173A、173Bを有する。シーブベッド173A、173Bに圧縮空気が送り込まれて加圧状態になると、窒素及び水分が吸着されてほぼ酸素だけが通過し、酸素ガスが生成される。一方、窒素を吸着したシーブベッド173A、173Bが減圧状態(例えば大気圧)に戻されると、吸着していた窒素が脱離して放出され、シーブベッド173A、173Bの吸着能力が再生される。つまり、PSA部173において、2本のシーブベッド173A、173Bで交互に加圧減圧を繰り返すことにより、高濃度酸素を含有する酸素ガスを連続生成することができる。
【0029】
そして、PSA部173で生成された高濃度酸素は、一旦製品タンク174に貯留された後、酸素供給部175から放出され、酸素濃縮器10に接続された鼻腔カニューラを介して患者体内に供給される。
【0030】
上記過程において、例えば空気圧縮部172の駆動モータの回転数やPSA部173の流路切替バルブ(図示略)の開閉状態等は、各種センサ16からの入力信号に基づいて制御部11により制御される。
【0031】
また、酸素供給部175から放出される酸素ガスの流量は流量制限部175Aにより制限される。流量制限部175Aは例えば、制御部11により開度を調節されるように構成されたバルブである。ここで、制御部11は、操作部14で設定される酸素流量値に基づいて、及び通信部15を介してパルスオキシメータ20から得られる情報つまり酸素飽和度の測定結果に基づいて、流量制限部175Aの開度ひいては酸素流量を制御する。すなわち、本実施の形態では、酸素濃縮器10から患者に供給される酸素ガスの流量を、ユーザの入力操作によって可変設定することができるだけでなく、外部からの情報に応じて変更することもできる。酸素流量変更の動作例については後述する。
【0032】
なお、酸素ガス生成部17の上記構成は、PSA方式を採用した一例であり、他の方式(例えば酸素富化膜式)を採用すれば異なる構成になることはいうまでもない。また、酸素ガス生成部17の構成の細部は従来周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0033】
また、本実施の形態では、酸素供給装置が酸素濃縮器である場合を例にとって説明しているが、酸素流量を変更可能な構成を備えたタイプであれば、酸素濃縮器に限らず液体酸素装置及び酸素ボンベ等、如何なるタイプであっても採用可能である。
【0034】
また、本実施の形態において酸素濃縮器10と通信可能なパルスオキシメータ20は、酸素飽和度の測定に用いられる生体情報測定装置の一種であるが、その測定のための構成は従来周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。なお、後述するように酸素飽和度の測定結果は酸素流量変更の制御のためにパルスオキシメータ20から酸素濃縮器10に送信されるが、これらの間で通信状態を確立するための構成及び方法については例えば特許文献1記載の技術を適用可能である。よって、この点についてもここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
また、酸素飽和度は一般に、SpO
2と称される生体パラメータである。SpO
2は、ヒト動脈血ガス分析の動脈血酸素分圧(PaO
2)に由来する生体パラメータであり、したがってSpO
2の値はPaO
2の値と対応関係を有している。そのため、本実施の形態において酸素流量変更の制御に利用する生体パラメータをSpO
2からPaO
2に置き換えることは容易である。よって、本実施の形態では便宜上、「酸素飽和度」の概念は、SpO
2のみならず、SpO
2から容易に置換可能な別の生体パラメータ(例えばPaO
2)をも含む、より広義の概念であるものとする。
【0036】
次いで、本実施の形態における酸素流量変更の動作例について、幾つか例を挙げて説明する。
【0037】
〔酸素流量変更の動作例1〕
図3は、酸素流量変更の第1の動作例を示すフロー図である。
【0038】
まず、ステップS100では、制御部11は、流量制限部175Aの開度を調節することにより酸素流量を初期値、例えば安静時の処方酸素流量A[L/分](A>0)に設定する制御を行う。酸素濃縮器10の使用開始時の場合、この制御は、ユーザが操作部14での酸素流量値の入力操作に基づく操作信号に従って行われる。一方、酸素濃縮器10の使用中の場合、この制御は、後述する酸素濃縮器の測定結果に基づいて行われる。処方酸素流量A[L/分]への設定が完了した後は、酸素濃縮器10から患者に対して酸素ガスの供給が処方酸素流量A[L/分]で連続的に行われる。
【0039】
酸素ガス供給を受けている間、患者は、パルスオキシメータ20を用いて自ら酸素飽和度の測定(自己測定)を行う。なお、ここでは、酸素ガス供給開始後に確実に自己測定が行われるように予め医師から患者に対する指導がなされているものとする。好ましい自己測定タイミングとしては、(1)息苦しさを感じた時、(2)食事中、(3)トイレ後、(4)入浴中、(5)入浴後の着替え後、等が挙げられる。
【0040】
自己測定後、パルスオキシメータ20と酸素濃縮器10との間で通信状態が確立されると、制御部11は、通信部15を介して酸素飽和度の測定結果として例えばSpO
2の値を取得する(ステップS110)。
【0041】
そして、制御部11は、SpO
2の値を所定の第1基準値S
1[%]と比較する(S120)。ここで、第1基準値S
1は、SpO
2の値が正常か異常かを判別するための閾値である。在宅酸素療法による治療を受ける患者の場合、例えばSpO
2の値は90[%]以上であれば正常と判断して良いが、正常な数値範囲は個々の患者で異なるため、第1基準値S
1については、医師が指定し、そしてユーザがこの指定に従って操作部14にて設定操作を行うことが、好ましい。
【0042】
SpO
2の値が第1基準値S
1以上と判定された場合は(S120:NO)、正常状態が維持されていること又は正常状態に戻ったことが確認されたことを意味する。よって、この場合、処理フローはステップS100に戻る。したがって、酸素流量が初期値に設定されていた場合はその設定状態が維持され、酸素流量の設定が初期値から変更されていた場合は初期設定に戻される。
【0043】
一方、SpO
2の値が第1基準値S
1未満と判定された場合は(S120:YES)、患者の低酸素状態が確認されたことを意味する。よって、この場合、処理フローはステップS130に進み、制御部11は酸素流量を初期値よりも増加させてA+k
1[L/分](k
1>0)に設定する(ステップS130)。また、制御部11は、酸素流量を増加させたとき、酸素流量を変更した又は増加させたことを音声として又は表示として出力させ、その事実を患者に対して通知する。なお、増加量k
1の値は例えば0.5[L/分]等であるが、この値も、医師が指定し、そしてユーザがこの指定に従って設定し得るパラメータであることが、好ましい。
【0044】
そして、制御部11は、タイマ18を利用して酸素流量増加後の時間経過を計測しつつ次の酸素飽和度の測定結果を待つ、待機状態に入る。そして、次の測定結果が得られた場合は(S140:YES)、処理フローはステップS120に戻り、次の測定結果が得られない場合は(S140:NO)、処理フローはステップS150に進む。
【0045】
制御部11は、酸素流量増加後、つまり待機状態に入ってから、所定の第1期間(m
1[分])が経過するまでは(S150:NO)、何もせずに待機し続ける。m
1[分]が経過したとき(S150:YES)、制御部11は、自己測定を再び行うこと(再測定)を促す制御を行う(ステップS160)。より具体的には、制御部11は、再測定を患者に対して要求する音声ガイダンスの出力を音声出力部12によって行う。音声ガイダンスの出力により、再測定の要求をより確実に患者へ伝達することができる。なお、再測定を促す制御として、この要求を示すメッセージ等の表示出力を表示部13で行っても良い。また、再測定を促す音声出力及び表示出力は、一定間隔で繰り返し実行しても良い。また、m
1の値は例えば3[分]等であるが、この値も、医師が指定し、そしてユーザがこの指定に従って設定し得るパラメータであることが、好ましい。
【0046】
ステップS160で再測定を促す制御を行った後、制御部11は、引き続き次の測定結果を待つ。そして、酸素流量増加後、所定の第2期間(m
2[分])が経過するまでに次の測定結果が得られた場合は(S170:YES)、処理フローはステップS120に戻り、そして、ステップS120での判定結果に応じた酸素流量制御(S100又はS130)が行われる。
【0047】
酸素流量増加後、次の測定結果が得られずに(S170:NO)、m
2[分]が経過したときは(S180:YES)、処理フローはステップS100に戻る。すなわち、ステップS100において酸素流量は低減されて元の処方酸素流量A[L/分]に戻される。なお、ステップS100において酸素流量を低減させたときは、酸素流量を変更した又は低減させたことを音声として又は表示として出力させ、その事実を患者に対して通知することが好ましい。また、酸素流量が元の処方酸素流量A[L/分]に戻された後にも、ステップS150、S160の処理が実行されるような制御を行っても良い。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、酸素濃縮器10において、患者の酸素飽和度の測定結果に応じて酸素流量値を制御する制御部11が、酸素飽和度の測定結果に基づいて酸素流量値を変更した後、酸素飽和度の再測定を促す制御を行う。より具体的には、再測定の要求を音声出力又は表示出力により患者に伝達する。よって、酸素流量が増やされた後、自己測定の必要性を患者に気付かせることができ、自己測定を行わせることができる。自己測定が行われれば制御部11はその測定結果を取得可能となるため、酸素飽和度の測定結果に応じた酸素流量制御を単発に終わらせず連続化させることができ、結果として、患者の酸素飽和度変動に対する酸素流量変更の追従性を向上させることができる。
【0049】
また、上記の動作は全て、制御部11により器械動作ログとして取得されるので、医師等は、酸素飽和度の変動履歴に加えて酸素流量の変更履歴も詳細に確認することができる。
【0050】
なお、制御部11はタイマ18を利用して、上記のような酸素飽和度の測定結果に応じた酸素流量制御を日中の時間帯のみ実行することが、安全上好ましい。
【0051】
〔酸素流量変更の動作例2〕
図4は、酸素流量変更の第2の動作例を示すフロー図である。本例は第1の動作例を一部変更したものであるため、ここでは第1の動作例との相違点を中心に説明する。
【0052】
本例では、SpO
2の値が第1基準値S
1未満と判定された場合に(S120:YES)、制御部11はSpO
2の値を所定の第2基準値S
2(0<S
2<S
1)と比較する(ステップS122)。ここで、第2基準値S
2[%]は、低酸素状態が重篤であるか否かを判別するための閾値である。第1基準値S
1[%]が例えば90[%]であれば第2基準値S
2[%]は例えば86[%]等として良いが、この値についても、医師が指定し、そしてユーザがこの指定に従って操作部14にて設定操作を行うことが、好ましい。
【0053】
SpO
2の値が第2基準値S
2以上と判定された場合は(S122:NO)、処理フローはステップS130に進み、制御部11は酸素流量を初期値よりも増加させてA+k
1[L/分](k
1>0)に設定する(ステップS130)。一方、SpO
2の値が第2基準値S
2未満と判定された場合(S122:YES)、低酸素状態が重篤であるため、処理フローはステップS130ではなくステップS132に進む。ステップS132では、制御部11は酸素流量を初期値よりも増加させてA+k
2[L/分](0<k
1<k
2)に設定する。また、制御部11は、酸素流量を増加させたとき、酸素流量を変更した又は増加させたことを音声として又は表示として出力させ、その事実を患者に対して通知する。なお、増加量k
2の値は例えばk
1+0.5[L/分]等であるが、この値についても、医師が指定し、そしてユーザがこの指定に従って設定し得るパラメータであることが、好ましい。
【0054】
このように、本例では、酸素飽和度の測定結果に応じてより細かい酸素流量制御を行うことができる。
【0055】
〔酸素流量変更の第3の動作例〕
図5は、酸素流量変更の第3の動作例を示すフロー図である。本例は第1の動作例を一部変更したものであるため、ここでは第1の動作例との相違点を中心に説明する。
【0056】
本例では、SpO
2の値が第1基準値S
1未満と判定された場合に(S120:YES)、処理フローはステップS134に進み、制御部11は酸素流量を初期値よりも増加させてA+k
1×n[L/分](nは自然数)に設定する(ステップS134)。また、制御部11は、酸素流量を増加させたとき、酸素流量を変更した又は増加させたことを音声として又は表示として出力させ、その事実を患者に対して通知する。ここで、倍数nは、SpO
2の値が第1基準値S
1未満と判定された連続回数を示す変数である。つまり、S120での判定結果が2回連続で「第1基準値S
1未満」であれば、その直後のステップS134でk
1の値に掛けるnの値は2となり、その次の測定結果に対するステップS120での判定結果が再度「第1基準値S
1未満」であれば、その直後のステップS134でk
1の値に掛けるnの値は3となる。
【0057】
すなわち、本例では、酸素飽和度が所定値未満である度に段階的に酸素流量値を増加させる制御が行われる。したがって、低酸素状態が持続する限り、患者体内に送り込む酸素ガスを徐々に増やすことができるため、低酸素状態の長期化回避を図ることができる。
【0058】
なお、倍数nについては上限値が設けられていることが好ましい。例えば、A+k
1×n[L/分]の値が、空気圧縮部172の最大出力やシーブベッド173A、173Bの吸脱着能力等に基づく酸素濃縮器10の酸素ガス供給能力を超えないように、倍数nの上限値が設定される。或いは、A+k
1×n[L/分]の値が、労作時の処方酸素流量を超えないように、倍数nの上限値が設定される。
【0059】
また、SpO
2の値が第1基準値S
1未満と判定され続け、その回数がnの上限値に到達したときには、制御部11は音声出力又は表示出力等の外部出力によって、患者に対して、病院に行くように、或いは安静にするように、要求することが好ましい。
【0060】
〔酸素流量変更の第4の動作例〕
図6は、酸素流量変更の第4の動作例を示すフロー図である。本例は第1の動作例を一部変更したものであるため、ここでは第1の動作例との相違点を中心に説明する。
【0061】
本例では、ステップS120でSpO
2の値が第1基準値S
1以上と判定され(S120:NO)、正常状態が維持されているか、或いは正常状態に回復したことが分かる。そこで、制御部11は、ステップS124において、制御部11は、以前に酸素流量の変更があったか否かを判断する。以前に酸素流量の変更がなかった場合は(S124:NO)、動作開始から正常状態が維持されていることが分かる。よって、処理フローはステップS100に戻り、酸素流量は初期値のまま維持される。一方、以前に酸素流量の変更があった場合は(S124:YES)、患者の状態が低酸素状態から正常状態に回復(正常回復)したことが分かる。そこで、制御部11は、ステップS126において、正常回復後、所定の第3期間(m
3[分])が経過したか否かを判断する。正常回復からm
3[分]が経過していないときは(S126:NO)、正常回復の信頼性が必ずしも高くないため、処理フローはステップS140に進み、制御部11は、次の測定結果を待つこととなる。正常回復からm
3[分]が経過しているときは(S126:YES)、正常回復の信頼性が高いため、処理フローはステップS100に戻り、酸素流量が初期値の設定状態に戻される。なお、m
3の値は例えば3[分]等であるが、この値も、医師が指定し、そしてユーザがこの指定に従って設定し得るパラメータであることが、好ましい。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。