(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2枚の前記ベルトプライを備え、各ベルトプライの幅方向における前記スチールコードの占有率が50〜75%である、請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、実施形態の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、左右一対のビード部(1)及びサイドウォール部(2)と、左右のサイドウォール部(2)の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部(2)間に設けられたトレッド部(3)とを備えて構成されており、一対のビード部(1)間にまたがって延びるカーカス(4)が設けられている。
【0013】
カーカス(4)は、トレッド部(3)からサイドウォール部(2)をへて、ビード部(1)に埋設された環状のビードコア(5)にて両端部が係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなる。カーカスプライは、有機繊維コード等からなるカーカスコードをタイヤ周方向に対し実質上直角に配列してなる。
【0014】
トレッド部(3)におけるカーカス(4)の外周側(即ち、タイヤ径方向外側)には、カーカス(4)とトレッドゴム部(8)との間に、ベルト(7)が配されている。ベルト(7)は、カーカス(4)のクラウン部の外周に重ねて設けられており、1枚又は複数枚のベルトプライ、通常は少なくとも2枚のベルトプライで構成することができ、本実施形態では、カーカス(4)側の第1ベルトプライ(7A)と、トレッドゴム部(8)側の第2ベルトプライ(7B)との2枚のベルトプライで構成されている。ベルト(7)の外周側には、タイヤ周方向に対して0〜5度の角度で螺旋状に巻回する有機繊維コードからなるベルト補強層(9)が、ベルト(7)の幅方向全体を覆うように設けられている。
【0015】
ベルトプライ(7A)(7B)は、スチールコード(10)をタイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、15〜35度)で傾斜させかつタイヤ幅方向に所定の間隔にて配列させてなるものであり、
図2に示すようにコーティングゴム(11)で被覆されている。スチールコード(10)は、上記2枚のベルト層(7A)(7B)間で互いに交差するように配設されている。
【0016】
本実施形態では、スチールコード(10)として、
図3に示すように、金属フィラメント(以下、主フィラメントという。)(12)を、複数本撚り合わせることなく一列に引き揃えて配置した主フィラメント束(13)を、1本の真直の金属フィラメント(以下、ラッピングフィラメントという。)(14)でラッピングしてなるn+1構造(但し、n=3〜6)の扁平なコードが用いられている。
【0017】
主フィラメント(12)としては、直径(フィラメント径)dが0.15〜0.30mmであるものが用いられる。直径dが0.15mm未満であると、必要な強度を満たすために主フィラメント束(13)を形成する際の引き揃え本数を7本以上にする必要があり、主フィラメント束(13)を一列に並ぶ形状とすることが困難となる。逆に、直径dが0.30mmを超えると、フィラメントが金属疲労しやすく、タイヤ走行中にベルトの疲労性が悪化し、タイヤの耐久性が低下する。この直径dは、より好ましくは0.15〜0.25mmである。
【0018】
主フィラメント(12)としては、その引張強度TS(MPa)が下記式(I)を満たすものが用いられる。式(I)において、dは、主フィラメント(12)の直径をmm単位で示した数値である。
【0019】
−2000×d+4000≦TS(MPa)≦−2000×d+5400・・・(I)
式(I)において、−2000×dの項は、強度の径依存性を打ち消すための補正項であり、フィラメント径0.15〜0.30mmの範囲で、ほぼフィラメント径の影響を除けることが実験的に確かめられている。引張強度TSが−2000×d+4000(MPa)未満であると、必要なベルト強度を得るためにスチールコードの打ち込み本数が密になりすぎるため、コード間距離が狭くなりコードセパレーションを生じやすくなり、タイヤの耐久性が低下する。逆に、引張強度TSが−2000×d+5400(MPa)を超えると、延性が極端に悪くなり、脆化による早期破壊を誘発するため、タイヤの耐久性が低下する。
【0020】
主フィラメント(12)の炭素含有量は、特に限定しないが、0.85〜1.20質量%であることが好ましい。一実施形態として、炭素含有量が0.85質量%以上0.95質量%未満(例えば、0.94質量%以下)のものを用いることができる。本実施形態では、後述する面内剛性と面外剛性の比を規定することにより、このような炭素含有量が0.95質量%未満のスチールフィラメントを主フィラメント(12)に用いた場合でも、操縦安定性能を向上することができ、そのため、フィラメントの生産性も良好に維持することができる。
【0021】
主フィラメント束(13)は、上述した同一径の複数本の主フィラメント(12)を、撚り合わせることなく横一列に引き揃えて配置することにより形成される。すなわち、主フィラメント(12)は、一つの平面に沿って1層をなすように並列される。そのため、得られるスチールコード(10)は扁平であり、
図2に示すように長径D1と短径D2を持つ。長径D1と短径D2の値は特に限定されないが、長径D1が1.00〜1.50mm、短径D2が0.30〜0.60mmであることが好ましい。
【0022】
主フィラメント束(13)を構成する主フィラメント(12)の本数は3〜6本である。この本数が3本未満であると、後述する面内剛性と面外剛性の比を10以上とすることが困難となり、優れた操縦安定性能の向上効果が得られない。逆に、この本数が6本を超えると、主フィラメント束(13)を一列に並ぶ形状とすることが困難となる。引き揃える主フィラメント(12)の本数は、より好ましくは4〜6本であり、更に好ましくは5〜6本である。
【0023】
該主フィラメント束(13)の周囲に巻き付けるラッピングフィラメント(14)としては、波付け等していない真直なスチールフィラメントが用いられる。ラッピングフィラメント(14)に用いられる鋼材としては、特に限定されるものではなく、例えば炭素含有量が0.60〜1.02質量%の炭素鋼線材を用いることができ、JIS G3502規定のピアノ線材からなる各種炭素鋼(例えば、SWRS72A、SWRS82Aなど)を用いることができる。
【0024】
ラッピングフィラメント(14)の直径(フィラメント径)d0は、主フィラメント(12)の直径dに対して同等以下のものが用いられ、特に限定されないが、0.05〜0.20mmであることが好ましい。より好ましくは、上記主フィラメント(12)の直径dよりも小径のものを用いることである。ラッピングフィラメント(14)の直径d0は、より好ましくは0.10〜0.15mmである。
【0025】
スチールコード(10)は、上記主フィラメント束(13)に対し、ラッピングフィラメント(14)を巻き付けることでラッピングしてなるものである。ラッピングフィラメント(14)の巻きピッチpは、フィラメント径d,d0や主フィラメント(12)の本数などによって異なるので特に限定されないが、2.0〜30.0mmであることが好ましく、より好ましくは3.0〜5.0mmである。
【0026】
図3に示すように、主フィラメント(12)は、波付けされていない真直な金属フィラメントであってもよい。あるいはまた、
図4に示された他の実施形態に係るスチールコード(10A)のように、波付け加工された金属フィラメントを、主フィラメント(12)として用いることもできる。
【0027】
波付け加工する場合、主フィラメント(12)は、スチールコードの長径方向(B)にのみ波付けされること、すなわち、長径方向(B)及び長手方向(L)に沿った平面内にて、二次元的に波付けされることが好ましい。この場合、複数本の金属フィラメントを長手方向(B)に同じ波高さh及び波長iで型付けしたものを用いてもよい。また、その場合、波付けの位相を複数本の金属フィラメントで一致させて引き揃えてもよく、あるいはまた、位相をずらして引き揃えてもよい。好ましくは、
図4に示すように位相を一致させて引き揃えることである。主フィラメント(12)の波高さhは、特に限定しないが、0.03〜0.11mmであってもよく、また0.05〜0.10mmであってもよい。主フィラメント(12)の波長(即ち、波付けピッチ)iは、特に限定しないが、2.0〜30.0mmであってもよく、また3.0〜5.0mmであってもよい。なお、主フィラメント(12)の波長iは、ラッピングフィラメント(14)の巻きピッチpと一致させて、波付けの凹所にラッピングフィラメントが巻き付くように構成してもよい。
【0028】
本実施形態において、スチールコード(10)は、面内剛性が3N/8本以上であり、面外剛性が0.2N/8本以上であり、かつ、面外剛性に対する面内剛性の比(面内剛性/面外剛性)が10以上であることを特徴とする。ここで、面内剛性とは、スチールコード(10)を長径方向(B)(
図2における左右方向)に曲げる際の曲げ剛性であり、タイヤでは幅方向の剛性に相当する。また、面外剛性とは、スチールコード(10)を短径方向(A)(
図2における上下方向)に曲げる際の曲げ剛性であり、タイヤでは径方向の剛性に相当する。このような面内剛性及び面外剛性を持たせるためには、引き揃える主フィラメントの太さや本数などを適切に設定すればよく、例えば、主フィラメントの直径を大きくすることで、面内剛性及び面外剛性ともに高くすることができ、また、主フィラメントの引き揃え本数を多くすることで、面内剛性を高めて、面内剛性/面外剛性の比を大きくすることができる。
【0029】
スチールコード(10)の面内剛性が3N/8本を下回ると、操縦安定性能が低下する。操縦安定性能を維持しようとするとコードの打ち込み本数を増やす必要があり、コード間距離が狭くなることにより、コードセパレーションを生じやすくなるため、タイヤの耐久性が低下する。一方、スチールコード(10)の面外剛性が0.2N/8本を下回ると、タイヤ踏面の剛性が不足し、高速走行時の径成長が大きくなり、耐摩耗性能が悪化し、また、高速耐久性も低下する。また、面内剛性/面外剛性の比が10未満であると、耐久性を維持しつつ、操縦安定性能を向上することが困難となる。面内剛性は4N/8本以上であることが好ましく、より好ましくは5N/8本以上である。面内剛性の上限は特に限定されないが、通常は7N/8本以下である。面外剛性は0.25N/8本以上であることが好ましく、上限は特に限定されないが、通常は0.5N/8本以下である。面内剛性/面外剛性の比は、15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上である。この比の上限は特に限定されないが、通常は25以下である。
【0030】
図2に示すように、ベルトプライは、スチールコード(10)を、その長径方向(B)がベルト面(即ち、ベルト外周面)に平行になるように配置することで形成されている。すなわち、ベルトプライ内において、スチールコード(10)は、その短径方向(A)がベルトプライの厚み方向(K)と一致するようにして、所定間隔でコーティングゴム(11)内に埋設されている。そのため、スチールコード(10)は、その長径方向(B)がトレッド面に平行になるように配置される。このように構成することにより、スチールコード(10)をゴム被覆する際に加工しやすく、またベルトプライの厚みを薄くしてタイヤ重量の増加を抑えることができる。また、得られたベルトプライでは、タイヤ幅方向における曲げ剛性が高くなるので、操縦安定性能を向上することができる。
【0031】
本実施形態では、各ベルトプライ(7A)(7B)の幅方向におけるスチールコード(10)の占有率(即ち、ベルトプライ断面の幅寸法中においてスチールコードが占める長さの割合。「コード占有率」という。)が、50〜75%であることが好ましい。コード占有率を50〜75%とすることにより、耐久性を損なわずに、操縦安定性能や乗り心地を確保しやすくなる。コード占有率が50%未満であると、スチールコード間の距離が開き過ぎることから、ベルトとして必要な強度を十分に得ることが難しくなる。一方、75%を超えると、スチールコード間の距離が過度に狭くなることにより、コードセパレーションと呼ばれる、スチールコード間の分離・剥離が生じやすくなり、タイヤの耐久性が低下するおそれがある。ここで、コード占有率(%)とは、コードを所定の打ち込み密度で引き揃えて配列しゴム被覆された、いわゆるトッピング反において、次式で計算される値を使用する。コード占有率(%)=コードの長径(mm)×コード打ち込み本数(本/25.4mm)×100/25.4(mm)。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例2〜4は参考例である。
【0033】
下記表1に示す構造を持つスチールコードを作製した。従来例のスチールコードは、2本の金属フィラメントを引き揃えた芯部の周りに、同一径の1本の金属フィラメントを撚り合わせてなる2+1の複層撚り構造であり、それ以外のスチールコードは、全て、複数本の主フィラメントを撚り合わせることなく1列に引き揃えて配置した主フィラメント束を、1本の真直のラッピングフィラメント(直径d0=0.13mm)でラッピングしてなるn+1構造のスチールコードである。実施例及び比較例のスチールコードでは、主フィラメントに波付け加工を施しており、いずれも波高さh=0.06mm、波長i=4.5mmとした。また、ラッピングフィラメントの巻きピッチp=4.5mmとした。
【0034】
得られたスチールコードをベルトコードとして用いて、表1に示すベルト構成に従い、
図1に示す断面形状を持つタイヤサイズ:195/65R15のラジアルタイヤを、常法に従い加硫成形した。各タイヤについて、ベルト以外の構成は、全て共通の構成とした。ベルトプライ(7A)/(7B)におけるスチールコードの角度は、タイヤ周方向に対して+25°/−25°とした。各タイヤは、ベルト強力がほぼ同一となるように、スチールコードのエンド数を設定した。ベルトプライは、スチールコードをその長径方向がベルト面に平行になるように、表1記載の打ち込み本数にて配置した上で、カレンダー装置を用いて、表1記載のトッピングゲージにて、トッピング反とすることにより作製し、その質量を測定して、タイヤ一本当たりのベルト質量を算出した。該ベルト質量は、従来例を100とする指数で、表1中に示した。
【0035】
なお、カーカスプライは、ポリエステルコード1670dtex/2、打ち込み数22本/25.0mmで1プライとした。また、ベルト補強層は、ナイロン66コード1400dtex/1、打ち込み本数24本/25.0mmとした。
【0036】
得られた各タイヤについて、タイヤ質量を測定するとともに、タイヤ高速耐久性、ベルト耐久性、実車操縦安定性能、轍路面走行性能を評価した。タイヤ質量は、従来例を100とする指数で、表1中に示した。
【0037】
各測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0038】
・フィラメントの炭素含有量:JIS G1211に準拠した赤外線吸収法(附属書3:全炭素定量法−高周波誘導加熱炉燃焼)により測定した値である。より詳細には、LECO製「CS−400」なる装置を用い、鋼を高周波加熱により溶解し、赤外線吸収法で定量分析を行うことにより求めた。
【0039】
・フィラメント径、コード径:JIS G3510に準拠し、所定の厚み計により金属フィラメント及びスチールコードの直径を計測した。コード径については、長径側の外径(長径D1)と短径側の外径(短径D2)を計測した。
【0040】
・フィラメント引張強度、コード引張強力:JIS G3510に準拠し、フィラメントとスチールコードの強伸度特性を引張試験機(島津製作所(株)製オートグラフ)を用いて測定した。
【0041】
・コード形状:ラッピングフィラメントでラッピングした際に、引き揃えた主フィラメントが一列に並んでいるものを○(良好)とし、崩れているものを×(不良)とした。
【0042】
・面内剛性、面外剛性、面内剛性/面外剛性:
図5に示す断面形状の面外剛性測定用サンプルと
図6に示す断面形状の面内剛性測定用サンプルを作製した。
【0043】
面外剛性測定用サンプルは、スチールコードを、
図5に示すように、その長径方向がトッピング反の表面に平行になるように打ち込み本数=15本/25.4mmで配置し、その上下の被覆ゴム厚みを0.50mmとして、反幅300mmにてトッピング反を作製した。得られたトッピング反を160℃×20分で加硫し、スチールコードが8本含まれるように切断して面外剛性測定用サンプルを得た。
【0044】
面内剛性測定用サンプルは、未加硫の上記トッピング反を長径方向同士が平行になるように8枚重ね合わせてから、160℃×20分で加硫し、
図6に示すように切り出すことで、スチールコードが8本含まれる面内剛性測定用サンプルを得た。
【0045】
面内剛性及び面外剛性の測定は、
図7に示すように、一対の支えロール(22)(22)上にサンプル(20)をおき、上方から押込み治具(24)を用いて押込み量30mmでサンプル(20)を10回押し込み、10回目の押込み時における5mm押し込んだときの荷重を測定し、この荷重をそれぞれ面内剛性及び面外剛性とした。これらはともに、スチールコード8本当たりの曲げ剛性である。支えロール(22)は、回転時の負荷(回転抵抗)がほぼない回転自在のロールであり、ロール径は20mm、ロール間距離(軸間距離)は100mmとした。サンプル(20)は、スチールコードの長手方向Nが支えロール(22)の軸方向に垂直になるように配置し、かつ、
図5,6に示した各サンプルの上方から押込み治具で押し込まれるように配置した。押込み治具(24)は、直径15mmのロールであり、押込み速度は300mm/分とした。
【0046】
なお、トッピング反を作製する際の被覆用ゴム組成物の配合は、天然ゴム(RSS#3)100質量部に対し、カーボンブラックHAF(東海カーボン(株)製「シースト300」)60質量部、老化防止剤(フレキシス社製「サントフレックス6PPD」)2.0質量部、ステアリン酸コバルト2.0質量部、フェノール系樹脂(田岡化学(株)製「スミカノール620」)2.0質量部、ヘキサメトキシメチルメラミン4.0質量部、亜鉛華3号8.0質量部、不溶性硫黄6.0質量部、及び加硫促進剤DZ1.0質量部とした。
【0047】
・タイヤ高速耐久性:FMVSS109(UTQG)に準拠し、表面が平滑な鋼製で、直径1700mmのドラム試験機を用いて行った。タイヤ内圧は220kPaで、荷重はJATMA規定の最大荷重の88%とした。80km/hで60分慣らし走行した後、放冷し、再度空気圧を調整した後、本走行を実施した。本走行は120km/hから開始し、30分毎に8km/hずつ段階的に速度を上昇させ、故障が発生するまで走行させるという条件で行った。故障が発生するまでの走行距離を、従来例のタイヤを100として指数表示した。数字大きいほど高速耐久性能が良好である。
【0048】
・ベルト耐久性:タイヤを規定のリムに装着し、内圧110kPaで、JATMA規定の最大荷重時の62%撓み量まで、ドラムにタイヤを押し付けて負荷をかけた。試験速度は420rpmとし、異常発生もしくは720時間走行まで試験を行った。試験終了後にタイヤを解体し、ベルト端部におけるエッジセパレーションの長さを計測するとともに、コード折れの有無を確認した。エッジセパレーションの判定は、無:0mm、微小:1〜2mm、小:3〜5mm、中:6〜9mm、大:10mm以上とした。
【0049】
・実車操縦安定性能:内圧200kPaで標準リムに組み込んだ試験タイヤを排気量2500ccの試験車両に装着し、訓練された3名のテストドライバーが、テストコースを走行し、官能評価した。採点は10段階評価で、従来例のタイヤを6点とした相対比較にて行い、3人の平均点を従来例のタイヤを100とした指数で表示した。数字大きいほど操縦安定性能が良好である。
【0050】
・轍路面走行性能:実車操縦安定性能と同様の条件にて、試験車両の前輪に試験タイヤを装着し、一般道の轍を模した試験路(轍の高さは20mm)にてタイヤの乗り越し性能を官能評価した。轍をスムーズに乗り越せるものを○、やや乗り越しにくいものを△、非常に乗り越しにくいものを×とした。
【0051】
【表1】
【0052】
結果は表1に示す通り、従来の複層撚り構造のスチールコードを用いた従来例に対し、実施例1〜5では、タイヤの軽量化が達成され、また、耐久性が同等以上であり、かつ操縦安定性能が顕著に向上していた。
【0053】
これに対し、比較例1では、主フィラメントの引張強度が規定外の3350MPaと小さいため、ベルト強度を従来例と同等とするためにはコード打ち込み本数を多くする必要があり、コード占有率が80%を超えている。そのため、タイヤ高速耐久性が従来例に比べて劣り、ベルト耐久性も低下した。比較例2では、主フィラメントの引張強度が規定外の5100MPaと大きいため、コード折れが多発し、ベルト耐久性が低下するとともに、タイヤ高速耐久性も低下した。比較例3では、主フィラメント径が規定外の0.14mmと小さいため、コード引張強力が小さく、ベルト強度を従来例と同等とするにはコード占有率が100%を超えてしまう。そのため、コード占有率が100%以下になるように打ち込み本数を設定したが、ベルトエッジセパレーションが大きかった。ベルトの強度不足も影響していると考えられる。比較例4では、従来例と比べて軽量化効果はあるが、主フィラメント径が規定外の0.31mmと大きいため、耐疲労性が低下することによるコード破断により、ベルト耐久性が低下した。また轍路面走行性能にも劣っていた。比較例5では、従来例と比べて軽量化効果があり、またタイヤ高速耐久性、ベルト耐久性も同等であったが、スチールコードの面内剛性が規定外の2.95N/8本であり不十分であったため、実車操縦安定性能が劣っていた。比較例6では、スチールコードの面外剛性が規定外の0.19N/8本と小さいため、走行中のタイヤ踏面の変形が大きく、高速耐久性、操縦安定性が低下した。比較例7では、主フィラメントの引き揃え本数が規定外の2本であるため、面内剛性/面外剛性が10を下回り、操縦安定性が向上しなかった。比較例8では、主フィラメントの引き揃え本数が規定外の7本であるため、主フィラメント束が一列に並ぶ形状を取れずタイヤの耐久性、操縦安定性能が低下し、轍路面走行性能にも劣っていた。また、スチールコードの形状が不安定であったため、ベルトプライのカレンダー時における薄肉化もあまりできず、軽量化効果も小さかった。