(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
本実施形態のゴルフクラブヘッドは、重量体着脱機構を有する。この機構は、R&A(Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrews;全英ゴルフ協会)が定めるゴルフ規則を満たしている。即ち、この重量体着脱機構は、R&Aが定める、「付属規則II クラブのデザイン」の「1 クラブ」における「1b 調整性」で規定される要件を満たしている。この「1b 調整性」が規定する要件は、下記の(i)、(ii)及び(iii)である。
(i)容易に調整できるものでないこと。
(ii)調整可能部分はすべてしっかりと固定され、ラウンド中に緩むことの合理的な可能性がないこと。
(iii)調整後のすべての形状が規則に適合すること。
【0022】
図1は、第一実施形態のヘッド4を備えたゴルフクラブ2を示す。このゴルフクラブ2は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えている。ヘッド4は、シャフト6の一端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6の他端部に取り付けられている。ヘッド4は、クラウン7とソール9とを有する。ヘッド4は中空である。
【0023】
このヘッド4は、ウッド型ヘッドである。ウッド型ヘッドのリアルロフト角は、通常、8.0度以上34.0度以下である。ウッド型ヘッドのヘッド体積は、通常、120cc以上470cc以下である。
【0024】
このヘッド4は例示である。ウッド型ヘッドの他、ユーティリティ型ヘッド、ハイブリッド型ヘッド、アイアン型ヘッド及びパター型ヘッドが例示される。シャフト6は管状体である。シャフト6として、スチールシャフト及びいわゆるカーボンシャフトが例示される。
【0025】
図2は、ソール9側から見たヘッド4の斜視図である。ヘッド4は、ヘッド本体h1と、重量体着脱機構M1とを有する。ヘッド4は、2つの重量体着脱機構M1を有する。
図2は、重量体着脱機構M1の分解斜視図を含む。2つの重量体着脱機構M1のうちの1つが、分解斜視図で示されている。
【0026】
図2が示すように、重量体着脱機構M1は、ソケット10及び重量体12を備えている。更に重量体着脱機構M1は、底面形成部13を有している。ヘッド本体h1は、ソケット用凹部14を備えている。ソケット用凹部14は、外側に開口している。ソケット用凹部14の形状は、ソケット10の形状(外形)に対応している。ソケット用凹部14の数は、重量体着脱機構M1の数と同じである。ソケット用凹部14の数は、ソケット10の数と同じである。本実施形態では、2つのソケット用凹部14が設けられている。ソケット用凹部14の数は、1であってもよいし、2であってもよいし、3以上であってもよい。重量体着脱機構M1の数は、1であってもよいし、2であってもよいし、3以上であってもよい。
【0027】
底面形成部13は、重量体12がソケット用凹部14の底部に当たることを防止しうる。なお、底面形成部13は無くてもよい。
【0028】
図3は、ソケット10の斜視図である。
図4は、ソケット10の平面図である。
図5(a)及び
図5(b)は、ソケット10の側面図である。
図5(a)の視点は、
図5(b)の視点に対して、45°相違している。
図6は、
図4のA−A線に沿った断面図である。
図7は、
図5(a)のB−B線に沿った断面図である。
【0029】
ソケット10は、壁状部11と本体部15とを有している。本体部15は、孔16を有している。孔16は、本体部15を貫通している。壁状部11は、ソケット10の上端部を形成している。壁状部11は、ソケット10における最もソール面側の部分を構成している。壁状部11は、孔16の開口面f1から、上側(ソール面側)に向かって延在している。
【0030】
壁状部11は、欠落部ms1を有している。複数の欠落部ms1が設けられている。本実施形態では、3つの欠落部ms1が設けられている。欠落部ms1は、スリット状である。軸線Z(後述)の周囲の一定角度おきに、欠落部ms1が設けられている。本実施形態では、軸線Z(後述)の周囲の120°おきに、欠落部ms1が設けられている(
図4参照)。
【0031】
壁状部11の内面11aは円周面である。壁状部11の外面11bの断面形状は、多角形である。好ましくは、この多角形は、正多角形である。本実施形態では、この多角形は、正六角形である。この多角形では、上記欠落部ms1の部分が無い。
【0032】
ソケット10は、係合凸部kp1を有している。この係合凸部kp1は、壁状部11に設けられている。ソケット10は、複数の係合凸部kp1を有する。本実施形態では、6つの係合凸部kp1が設けられている(
図4参照)。上記多角形の各辺ごとに、係合凸部kp1が設けられている。
【0033】
ソケット10は、ソケット用凹部14の内部に固定されている。この固定は、例えば、接着剤により達成される。更に、係合凸部kp1が、ソケット10の固定に寄与している。係合凸部kp1の機能の詳細については後述される。
【0034】
重量体12は、ソケット10に着脱可能に取り付けられている。したがって、重量体12は、ヘッド4に対して着脱可能である。重量体12の交換により、ヘッド重心の位置が変更されうる。重量体12の交換により、ヘッド重量が変更されうる。
【0035】
孔16は、第1孔部18と第2孔部20と、段差面22とを有する。第1孔部18の奥側に、第2孔部20が位置する。第1孔部18の内面は、その全体が滑らかに連続している。軸線Zに対して垂直な断面において、第1孔部18の内面の断面形状S18は、重量体12の係合部32の断面形状S32(後述)に等しい。一方、第2孔部20の内面の断面形状S20は、
図7に示されている通り、複雑な凹凸を有している。この断面形状の詳細については、後述される。
【0036】
本実施形態において、第1孔部18の内面の断面形状は、略長方形である(
図4参照)。この略長方形は、長方形の4つの角に丸みが付与された形状である。
【0037】
なお、本願において、挿入方向とは、重量体12の挿入方向である。本実施形態では、この挿入方向は、軸線Z(後述)の方向に一致している。
【0038】
好ましくは、ソケット10の材質は、ポリマーである。このポリマーは、比較的硬い。このポリマーは、重量体12を着脱する際に弾性変形しうる。この着脱のしくみについては、後述される。
【0039】
図8は、重量体12の斜視図である。
図9(a)は、重量体12の平面図である。
図9(b)は、重量体12の底面図である。
図10(a)及び
図10(b)は、重量体12の側面図である。
図10(a)と
図10(b)とでは、視点が90°相違する。
図11は、
図10(a)のC−C線に沿った断面図である。
図12は、
図11のD−D線に沿った断面図である。
【0040】
図8、
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、重量体12は、頭部28、首部30及び係合部32を有する。頭部28の上端面の中央に、非円形孔34が形成されている。本実施形態では、非円形孔34の形状は、四角形である。非円形孔34の内面には、凹部34aが設けられている(
図11参照)。頭部28の外周面に複数の切欠36が形成されている。首部30の外面は円周面である。首部30の形状は円柱である。
【0041】
重量体12は、露出部E1を有する。本実施形態では、頭部28が露出部E1である。露出部E1は、単独では、重量体12の抜け止めに貢献しない。換言すれば、露出部E1単独では、抜け止めは達成されない。ロック状態(係合ポジション)では、露出部E1と係合部32とで、開口面f1及び段差面22が挟み込まれる。この挟み込みにより、重量体12の挿入方向における移動が規制されている。この挟み込みの詳細については、後述される。
【0042】
露出部E1は、重量体12のうち最も外側(ソール面側)に位置する。ロック状態において、露出部E1は外部に露出している。
【0043】
係合部32の外面の断面形状S32は非円形である。
図9(b)及び
図12が示すように、本実施形態では、この断面形状S32は略長方形である。係合部32の断面形状S32は、第1孔部18の断面形状S18と相似の関係にある。係合部32の断面形状S32は、断面形状S18よりも(僅かに)小さい。係合部32は、第1孔部18を通過することが可能である。断面形状S32及び断面形状S18は、凹みを有さない。
【0044】
図11が示すように、係合部32の下端面には、凹部38が形成されている。この凹部38により形成される空間の体積によって、ソケット10との係合に係る部分の外形を変えることなく、重量体12の体積が調整されうる。よって、重量体12の質量が容易に調整されうる。
【0045】
図9(b)が示すように、係合部32は、角部32aを備えている。複数の角部32aが設けられている。本実施形態では、4つの角部32aが設けられている。角部32aは、上記挿入方向に対して垂直な方向(以下、軸垂直方向ともいう)に突出している。
【0046】
係合部32は、係合面33を有する(
図8、
図10(a)及び
図12参照)。係合部32と首部30との断面形状の差に起因して、係合面33が形成されている。係合面33は、頭部28の下面29に対向している。
【0047】
好ましくは、この重量体12の比重は、ソケット10の比重よりも大きい。耐久性及び比重の観点から、この重量体12の材質として、金属が好ましい。この金属として、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、タングステン合金、及び、タングステンニッケル合金(W−Ni合金)が例示される。チタン合金の一例は、6−4Ti(Ti−6Al−4V)である。ステンレス鋼の一例は、SUS304である。
【0048】
重量体12の製造方法として、鍛造、鋳造、焼結、NC加工等が挙げられる。アルミニウム合金、6−4チタン及びSUS304の場合、鋳造後NC加工されるのが好ましい。W−Ni合金の場合、焼結又は鋳造の後、NC加工されるのが好ましい。NCとは、「Numerical Control」の略である。
【0049】
図13は、非係合ポジションNPにおける重量体着脱機構M1の平面図である。
図14は、係合ポジションEPにおける重量体着脱機構M1の平面図である。
【0050】
ソケット10と重量体12との相対関係として、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとが採られうる。
【0051】
非係合ポジションNPでは、重量体12をソケット10から引き抜くことができる。非係合ポジションNPにおいて、重量体12は、アンロック状態にある。
【0052】
これに対して、係合ポジションEPでは、重量体12をソケット10から引き抜くことができない。係合ポジションEPでは、重量体12はソケット10に固定されている。係合ポジションEPにおいて、重量体12は、ロック状態にある。クラブ2の使用中において、ロック状態にある重量体12は、脱落しない。
【0053】
重量体12をソケット10に挿入した時点では、ソケット10と重量体12との相対関係は、非係合ポジションNPである。角度θの相対回転によって、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと移行する。角度θの逆相対回転によって、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへと戻る。非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと移行する相対回転の角度が、本願において、「+θ」とも表記される。係合ポジションEPから非係合ポジションNPへと移行する相対回転の角度が、本願において、「−θ」とも表記される。回転方向が互いに逆方向であることを示すために、「+」及び「−」の符号が付されている。
【0054】
この重量体着脱機構M1では、角度θの回転を与えるだけで、重量体12の着脱が可能である。重量体着脱機構M1は、着脱の容易性に優れる。
【0055】
本願では、重量体12が係合ポジションEPにある状態が、ロック状態とも称される。ロック状態において、露出部E1(頭部28)は、外部に露出している(
図2参照)。また、ロック状態において、壁状部11の端面11c(
図3参照)は、外部に露出している。ただしこの壁状部11は、ソケット用凹部14の外側に突出していない。
【0056】
本実施形態では、角度θが40°である。角度θは40°に限定されない。着脱の容易性を考慮すると、角度θは、20°以上が好ましく、30°以上がより好ましい。固定の確実性を考慮すると、角度θは、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましい。
【0057】
重量体12の回転には、専用の工具が用いられうる。
図15は、重量体12を回転させるための工具60の一例を示す斜視図である。この工具60は、柄62,軸64及び先端部66を備えている。柄62は、柄本体68と、把持部70とを有する。この把持部70は、把持部本体70aと、蓋体70bとを備えている。
【0058】
把持部本体70aに、軸64の後端部が固定されている。軸64の先端部66の断面形状は、重量体12の非円形孔34の断面形状に対応している。本実施形態では、先端部66の断面形状は四角形である。先端部66に、ピン72が設けられている。先端部66の側面に、ピン72が突出している。図示されないが、先端部66には、弾性体(コイルばね)が内蔵されている。この弾性体の付勢力により、ピン72は、突出する向きに付勢されている。
【0059】
重量体12を着脱する際には、蓋体70bは、閉められている。把持部本体70aの内部には、重量体収容部(図示されず)が設けられている。好ましくは、この重量体収容部は、複数の重量体12を収容しうる。重量が異なる複数の重量体12が収容されているのが好ましい。蓋体70bを開けることで、重量体12を取り出すことができる。
【0060】
重量体12の装着では、工具60の先端部66が、重量体12の非円形孔34に差し込まれる。この差し込みにより、ピン72は、退行しつつ、非円形孔34を押圧する。この押圧力により、重量体12は、先端部66から脱落しにくい。ピン72は、非円形孔34の凹部34a(
図11参照)に入り込みうる。このピン72の入り込みにより、重量体12は、先端部66から脱落しにくい。工具60の軸64に保持された重量体12は、孔16に挿入される。
【0061】
重量体12の係合部32は、孔16の第1孔部18を通過して、第2孔部20に至る。この挿入の直後において、重量体12は、非係合ポジションNPにある。
【0062】
非係合ポジションNPにある重量体12に対して、角度+θ°の上記相対回転がなされる。具体的には、工具60を用いて、重量体12を、ソケット10に対して、角度+θ°回転させる。この回転により、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへの移行が達成される。
【0063】
重量体12を取り外すときは、角度θ°の逆回転がなされる。すなわち、角度−θ°の回転がなされる。この回転により、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへの移行が達成される。非係合ポジションNPにある重量体12は、容易に引き抜かれうる。上述の通り、ピン72は、非円形孔34の凹部34a(
図11参照)に入り込みうる。このピン72の入り込みにより、重量体12の引き抜きが容易とされている。
【0064】
係合ポジションEPでは、重量体12を孔16から引き抜くことはできない。係合ポジションEPにおいては、孔16の段差面22と重量体12の係合面33との係合により、重量体12の引き抜きが阻害される。係合ポジションEPでは、重量体12の非円形孔34から、工具60が容易に引き抜かれうる。
【0065】
図16は、係合部32及びソケット10を示す断面図である。
図16の左側に、非係合ポジションNPにおける断面図が示されている。
図16の右側に、係合ポジションEPにおける断面図が示されている。
図16には、上記角度θ°の回転の中心軸である軸線Zが点で示されている。係合部32の輪郭線の断面の図心は、この軸線Z上にある。上記相対回転における重量体12の回転は、この軸線Zを中心とした回転である。
【0066】
図7及び
図16が示すように、ソケット10の第2孔部20は、非係合対応面80と、係合対応面82と、抵抗面84とを有する。非係合対応面80は、非係合ポジションNPでの係合部32に対応した面である。係合対応面82は、係合ポジションEPでの係合部32に対応した面である。抵抗面84は、非係合対応面80と係合対応面82との間に位置する。
【0067】
非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの間の相互移行の途中において、抵抗面84は、係合部32(の角部32a)によって押圧される。この押圧により、係合部32と第2孔部20との間に摩擦力が生じる。この押圧により、抵抗面84は弾性変形する。第2孔部20の材質が比較的硬いポリマーとされることで、摩擦力が大きくされる。この摩擦力は、回転抵抗を生む。大きな摩擦力は、大きな回転抵抗を生む。この回転抵抗により、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの相互移行には、比較的強いトルクが必要となる。よって、この相互移行は、容易には起こらない。打球時の衝撃力によって、この相互移行は生じない。この相互移行には、工具60が必要とされる。工具60を用いずに、素手によって相互移行を達成することはできない。打撃時の強い衝撃によっても、係合ポジションEPにある重量体12は外れない。
【0068】
非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの相互移行において、重量体12を回転させるのに必要なトルクは、抵抗面84が弾性変形しているときに極大となる。重量体12を回転させるのに必要なトルクは、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの相互移行の途中において極大となる。よって、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへの移行は容易には起こらない。この極大のトルクは、係合ポジションEPにある重量体12の外れを防止するのに寄与している。
【0069】
図16が示すように、抵抗面84は、凸状部を有している。この凸状部は、滑らかな曲面によって形成されている。この凸状部の高さは小さい。この凸状部により、上記相互移行の途中で発生する回転抵抗が大きくされている。この凸状部は、係合ポジションEPにある重量体12の外れを防止するのに寄与している。
【0070】
このように、重量体着脱機構M1では、角度θの相対回転を行うだけで、重量体12の着脱が可能である。しかも、係合ポジションEPにおいては、重量体12が確実に固定されている。
【0071】
係合ポジションNPでは、係合部32は第2孔部20を変形させない。
図16の左図が示すように、非係合ポジションNPでは、係合部32と第2孔部20との間に、隙間が存在する。この隙間により、非係合ポジションNPにおいて、重量体12の挿入及び取り出しは容易である。一方、
図16の右図が示すように、係合ポジションEPでは、全ての角部32aが、隙間なく、第2孔部20に密着している。換言すれば、全ての角部32aにおいて、角部32aの少なくとも一部は密着部である。この密着部とは、係合ポジションEPにおいて第2孔部20に密着している部分である。このように、係合部32は複数の密着部を有している。これらの密着部に起因して、係合ポジションEPでは、第2孔部20が拡張されている。係合対応面82が角部32aによって押圧されており、この押圧により、第2孔部20が弾性変形している。弾性変形されているのは、係合対応面82である。この弾性変形により、第2孔部20が拡張されている。この弾性変形により、互いに対向する2つの係合対応面82の間の距離が拡張されている。この拡張が可能となるように、係合部32の寸法及び第2孔部20の寸法が決定されている。
【0072】
このように、重量体着脱機構M1では、以下の構成A及び構成Bが達成されている。この構成Aにより、重量体12の固定が一層確実となる効果が奏される。また、構成Bにより、着脱作業が容易とされている。
[構成A]:係合ポジションEPにおいて、係合部32がソケット10を弾性変形させ、この弾性変形により、第2孔部20が拡張されている。
[構成B]:非係合ポジションNPにおいて、係合部32はソケット10を弾性変形させない。
【0073】
本実施形態では、この拡張された距離の最大値Dxは、0.04mmである。すなわち、係合部32の断面における対角線の長さがD1とされ、この対角線に対応する位置における2つの係合対応面82の対向距離がD2とされるとき、長さD1が距離D2よりも0.04mm大きい。長さD1は、
図9(b)において両矢印で示されている。長さD1は、係合部32の断面を横断する線分の最大長さである。距離D2は、
図7において両矢印で示されている。
【0074】
重量体12の固定の観点から、上記最大値Dxは、0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましい。繰り返しの変形によるソケット10の劣化を抑制する観点から、上記最大値Dxは、0.10mm以下が好ましく、0.08mm以下がより好ましい。
【0075】
図17は、
図13のE−E線に沿った断面図である。
図17は、非係合ポジションNPにおける断面図である。
図18は、
図14のF−F線に沿った断面図である。
図18は、係合ポジションEPにおける断面図である。
図19は、
図14のG−G線に沿った断面図である。
図18は、係合ポジションEPにおける断面図である。
図20は、
図14のH−H線に沿った断面図である。
図20は、係合ポジションEPにおける断面図である。
【0076】
図21は、係合ポジションEPと非係合ポジションNPとの相互移行を示す断面図である。
図21の左側は、
図17のJ−J線に沿った断面図であり、非係合ポジションNPでの断面図である。
図21の右側は、
図18のK−K線に沿った断面図であり、係合ポジションEPでの断面図である。
【0077】
前述の通り、ソケット10は、第1孔部18と第2孔部20とを有する。第1孔部18と第2孔部20とでは断面形状が相違し、この相違に起因して、前述の段差面22が生じている。
【0078】
図20が示すように、第1孔部18は、内側突出部18aを有する。内側突出部18aの上面は、開口面f1である。内側突出部18aの下面は、段差面22である。
【0079】
非係合ポジションNPにおいては、内側突出部18aは、重量体12に係合しない。一方、係合ポジションEPにおいては、内側突出部18aは、重量体12に係合する。すなわち、
図20が示すように、内側突出部18aは、下面29と係合面33とによって挟まれる。よって、重量体12の固定が確実とされている。
【0080】
図20において両矢印T18で示されるのは、内側突出部18aの軸方向厚みである。
図6が示すように、段差面22は傾斜している。この傾斜に起因して、軸方向厚みT18が変化している。重量体12を係合ポジションEPへと回転させるほど、この重量体12に係合する部分の軸方向厚みT18が大きくなる。係合ポジションEPでは、内側突出部18aは、その厚みT18が小さくなるように圧縮変形している。この圧縮変形の復元力により、内側突出部18aから下面29及び係合面33に押圧力が付与されている。このため、重量体12の固定がより一層確実とされている。
【0081】
このように、重量体着脱機構M1では、以下の構成C、構成D及び構成Fが達成されている。この構成Cにより、重量体12の固定が一層確実となる効果が奏される。また、構成D及び構成Eにより、着脱作業が容易とされている。
[構成C]:係合ポジションEPにおいて、重量体12は、ソケット10の内側突出部18aを挟み込み、且つ、この内側突出部18aを圧縮変形させている。
[構成D]:重量体12が非係合ポジションNPから係合ポジションEPに向かう過程において、上記係合ポジションEPに近づくほど、上記内側突出部18aの圧縮変形量が大きくなる。
[構成E]:非係合ポジションNPにおいて、上記内側突出部18aの上記圧縮変形は生じない。
【0082】
図21の左側(非係合ポジションNP)においてクロスハッチで示されている部分は、逆回転抑制部Rxである。この逆回転抑制部Rxを確定する円弧C1は、軸線Zを中心点とし、この中心点Zから点Pfまでの距離を半径R1とする円の一部である。点Pfは、係合部32の断面の輪郭線において、点Zから最も遠い点である。この逆回転抑制部Rxは、ロックを行う際における逆回転を阻止しうる。この逆回転抑制部Rxは、係合ポジションEPへ向かうための正しい回転(+θ°の回転)を促す。
【0083】
図21の右側(係合ポジションEP)においてクロスハッチで示されている部分は、過回転抑制部Ryである。この過回転抑制部Ryを確定する円弧C1は、上述の通りである。この過回転抑制部Ryは、ロックを行う際における過回転を阻止しうる。この過回転抑制部Ryは、係合ポジションEPに至った係合部32が、この係合ポジションEPを超えて更に過回転することを抑制し、係合ポジションEPの達成を促す。
【0084】
なお、本実施形態では、この過回転抑制部Ryは、上述した逆回転抑制部Rxと同じ部分である。ただし、過回転抑制部Ryは、係合部32により圧縮され、僅かに変形している。一方、逆回転抑制部Rxには、このような圧縮変形は生じない。
【0085】
図22は、ヘッド本体h1の斜視図である。上述の通り、ヘッド本体h1は、2つのソケット用凹部14を有している。
【0087】
ソケット用凹部14は、多角形内面14aを有している。更にソケット用凹部14は、円周内面14bと底面14cとを有している。ソケット用凹部14において、円周内面14bは、多角形内面14aの奥側に位置する。
【0088】
多角形内面14aの断面形状は多角形である。好ましくは、多角形内面14aの断面形状は、正多角形である。本実施形態では、多角形内面14aの断面形状は、正六角形である。多角形内面14aの断面形状は、壁状部11の外面11bの断面形状に対応している。
【0089】
多角形内面14aは、ソケット10の多角形外面11bと同じ形状である。多角形内面14aは、多角形外面11bに面接触している。このため、ソケット10の回り止めが達成されている。
【0090】
図25が示すように、ソケット用凹部14は、アンダーカット部14dを有している。アンダーカット部14dは、ソケット用凹部14の側面に設けられている。アンダーカット部14dは、多角形内面14aに設けられている。アンダーカット部14dは、軸垂直方向に延びる凹部である。アンダーカット部14dは、上段差面14eを有する。
【0091】
アンダーカット部14dは、切削によって形成されている。例えば、L字型又はT字型のカッターを回転させることにより、アンダーカット部14dが形成されている。なお、
図26が示すように、ソケット用凹部14の側面の厚みは略一定とされている。アンダーカット部14dが切削される前において、アンダーカット部14dが設けられる部分が厚くされている。この結果、アンダーカット部14dが設けられた最終状態においても、アンダーカット部14dの設置部位は、他の部分よりも薄くならない。
【0092】
図27は、変形例のソケット100及び底面形成部130の分解斜視図である。
図28は、ソケット100及び底面形成部130の側面図である。
図29は、ソケット100の平面図である。
図30は、底面形成部130の底面図である。
図31は、
図28のP−P線に沿った断面図である。
【0093】
底面形成部130は、前述した底面形成部13と同じである。
【0094】
ソケット100は、孔16を有している。孔16は、ソケット100を貫通している。この孔16の形状は、前述したソケット10の孔16と同じである。ソケット100の材質は、ソケット10の材質と同じである。
【0095】
このソケット100は、前述した壁状部11を有さない。上記ソケット10に代えて、このソケット100が用いられても良い。上述した重量体12は、このソケット100にも用いられ得る。このソケット100及び底面形成部130が用いられる場合、ソケット用凹部14は、多角形内面14aを有していないのが好ましい。
【0096】
[壁状部]
上記係合ポジションEPにおいて、壁状部11は、重量体12の露出部E1とヘッド本体h1との間の少なくとも一部に介在している。よって、重量体12とヘッド本体h1との衝突に起因する音鳴りが防止されている。
【0097】
上記係合ポジションEPにおいて、壁状部11は、重量体12に係合していない。上記係合ポジションEPにおいて、壁状部11は、露出部E1に係合していない。壁状部11は重量体12に接触している場合であっても、壁状部11に重量体12を係止する効果は無い。壁状部11は、重量体12の固定を担っていない。
【0098】
打球による衝撃に起因して、重量体12は振動しうる。この振動の振幅は、露出部E1(頭部28)において大きくなりやすい。なぜなら、露出部E1は、壁状部11とは係合しておらず、比較的動きやすい状態にあるからである。壁状部11は、この露出部E1(頭部28)の振動を効果的に吸収しうる。振動しやすい部分の振動が抑制されることで、衝撃吸収性が向上しうる。この衝撃吸収性は、打球フィーリングの向上に寄与しうる。壁状部11により、打球フィーリングが向上しうる。壁状部11は、重量体12の固定を担っていないため、変形しやすい。よって、壁状部11により、振動吸収性が効果的に向上しうる。
【0099】
上述の通り、壁状部11は、係合凸部kp1を有している(
図3参照)。この係合凸部kp1は、アンダーカット部14dに係合している。ソケット10とソケット用凹部14とは、接着剤により接着されている。仮に、この接着剤が無くても、係合凸部kp1とアンダーカット部14dとの係合により、ソケット10は脱落しにくい。
【0100】
本実施形態では、ソケット10の外面11bが、多角形外面である。本実施形態では、この多角形外面11bの断面形状は、正多角形である。この正多角形は、正六角形である。この多角形外面11bでは、当該多角形の各辺に対応する複数の平面b1、b2、b3、b4、b5及びb6が形成されている(
図4参照)。これら平面b1からb6のぞれぞれに、係合凸部kp1が設けられている。そして、これらの係合凸部kp1のそれぞれに係合するアンダーカット部14dが設けられている。このように、係合凸部kp1とアンダーカット部14dとの係合部が、ソケット10の周囲の複数箇所に設けられている。このため、ソケット10は脱落しにくい。
【0101】
本実施形態では、アンダーカット部14dは凹部とされているが、この形態に限定されない。アンダーカット部14dは、ソケット10の抜け方向に対してアンダーカットを形成しうる部分である。本実施形態では、ソケット10の抜け方向とは、軸線Zの方向である。
【0102】
係合凸部kp1をアンダーカット部14dに係合させる際には、壁状部11の弾性変形が生じる。この弾性変形が、弾性変形Xとも称される。この弾性変形Xは、壁状部11がソケット10の中央側に倒れるような変形である。換言すれば、この弾性変形Xは、壁状部11が軸線Z側に倒れるような変形である。この変形により、係合凸部kp1をアンダーカット部14dに係合させることが可能となる。なお、係合凸部kp1がアンダーカット部14dに係合した状態において、上記弾性変形Xは解消していてもよいし、上記弾性変形Xが残存していてもよい。本実施形態では、係合凸部kp1がアンダーカット部14dに係合した状態において、上記弾性変形Xは解消している。
【0103】
上記弾性変形Xがなされる際に、重量体12はソケット10に取り付けられていない。この場合、重量体12が上記弾性変形Xを阻害しない。
【0104】
上述した通り、ソケット10は欠落部ms1を有している。この欠落部ms1により、上記弾性変形Xが容易とされている。ソケット10の材質が比較的硬く、この材質が高い剛性を有する場合がある。この場合であっても、欠落部ms1の存在により、上記弾性変形Xが容易とされている。よって、ソケット用凹部14へのソケット10の取り付けが容易である。
【0105】
上記弾性変形Xの観点から、欠落部ms1の幅は、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましい。異物の侵入を抑制する観点及び外観性の観点から、欠落部ms1の幅は、1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましい。
【0106】
上記弾性変形Xの観点から、欠落部ms1の深さは、1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がより好ましい。欠落部ms1が過度に深い場合、欠落部ms1を高くする必要が生じる。この場合、ソケット用凹部14が深くなり、ソケット用凹部14が重くなりやすい。この観点から、欠落部ms1の深さは、4mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下がより好ましい。
【0107】
欠落部ms1の設置数は、2箇所以上6箇所以下が好ましい。複数の欠落部ms1が設けられる場合、これらは等間隔で配置されるのが好ましい。
【0108】
上記実施形態では、多角形外面11bの平面形状は六角形である。多角形外面11bの平面形状をn角形とするとき、nは4以上8以下が好ましい。nが大きいほうが、壁状部11が薄くなりやすく、ソケット10の軽量化に有利である。この観点から、より好ましくは、nは6である。このn角形の各辺に、少なくとも1つの係合凸部kp1が設けられるのが好ましい。より好ましくは、係合凸部kp1の数はnである。
【0109】
上記弾性変形Xの観点から、壁状部11の高さは、1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がより好ましい。ソケット用凹部14が過度に深くなるのを防止する観点から、壁状部11の高さは、4mm以下が好ましく、3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下がより好ましい。壁状部11の高さは、上記軸線Zの方向に沿って測定される。
【0110】
上記弾性変形Xを容易とする観点から、係合凸部kp1の高さが最大となる位置は、壁状部11の高さ中央位置よりも上側であるのが好ましい。例えば、壁状部11の高さが4.0mmである場合、壁状部11の高さ中央位置は、壁状部11の根本からの高さが2.0mmの位置である。この場合、係合凸部kp1の高さが最大となる位置は、この2.0mmの位置よりも上側であるのが好ましい。上記実施形態では、係合凸部kp1の高さは、後述の上記直線Lpの方向に沿って測定される。
【0111】
図19において両矢印W1で示されているのは、係合凸部kp1とアンダーカット部14dとの係合幅である。この係合幅は、ソケット10の抜け方向に対して垂直な方向に沿って測定される。本実施形態において、この垂直な方向とは、軸線Zと交差し且つこの軸線Zに対して垂直な直線Lp(
図16参照)の方向である。
図3が示すように、本実施形態では、係合凸部kp1の外面が曲面である。上記係合幅は、一定ではない。この点を考慮し、一つの係合凸部kp1において、上記係合幅の最大値が、係合幅W1とされる。また本実施形態のように、係合凸部kp1が複数存在する場合、係合幅W1も複数となりうる。この場合、これら複数の値の平均値が、係合幅W1として採用される。
【0112】
図20において両矢印W2で示されるのは、壁状部11と重量体12との隙間距離である。この隙間距離W2の測定方法は、上記係合幅W1の測定方法と同じである。この隙間距離W2は、上記直線Lpの方向に沿って測定される。この隙間距離が一定でない場合、上記隙間距離W2として、平均値が採用される。この隙間距離W2は、上記係合ポジションEPにおいて計測される。
【0113】
本実施形態では、隙間距離W2が係合幅W1よりも小さい。よって、上記弾性変形Xが、重量体12の存在によって阻害される。上記係合ポジションEPでは、重量体12がソケット10に固定されている。この係合ポジションEPでは、W2<W1に起因して、上記弾性変形Xが起こらない。このため、重量体12が装着されたソケット10は、ソケット用凹部14から脱落しにくい。なお、ソケット10がソケット用凹部14に取り付けられる際には、重量体12はソケット10から外されている。よって重量体12は上記弾性変形Xを阻害せず、ソケット10の取り付けは容易である。
【0114】
本実施形態では、壁状部11の外面11bは、ソケット用凹部14の多角形内面14aに当接している。本実施形態では、上記隙間距離W2がゼロである。本実施形態では、上記係合ポジションEPにおいて、上記弾性変形Xが阻止されている。よって、ソケット10の脱落が効果的に抑制されている。
【0115】
ソケット10の脱落を抑制する観点から、上記係合幅W1は、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上がより好ましい。ソケット用凹部14へのソケット10の取り付けを容易とする観点から、上記係合幅W1は、1.0mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.6mm以下がより好ましい。
【0116】
図16が示すように、係合部32の断面形状は、略長方形である。この「略」とは、角部の変形を許容する趣旨である。この角部の変形例として、本実施形態のような角部の丸みの他、面取された角部が挙げられる。
【0117】
係合部32の断面形状は、上記軸線Zを回転軸としたN回対称である。このNは、1以上3以下の整数である。本実施形態の略長方形では、Nは2である。すなわち、この略長方形は、2回対称である。
【0118】
N回対称とは、その回転軸回りに(360/N)度回転させたときに、回転前の形状と一致することを意味する。ただしNは自然数である。換言すれば、Nは1以上の整数である。好ましくは、Nは、1以上3以下の整数である。なお、一般的な回転対称性の定義では、Nは2以上の整数とされているが、本願では、Nは1をも含むものとする。一般的な定義では、Nが1である場合、回転対称性を有さないとされている。係合部32の断面形状では、Nが1であってもよい。
【0119】
前述した実用新案登録第3142270号公報では、係合部の断面形状が略正方形である。この実用新案登録第3142270号公報では、上記Nは4である。実用新案登録第3142270号公報の
図5から
図7に示されるように、係合部の断面形状が略正方形である場合、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが小さくなりやすい(
図21参照)。よって、上述した逆回転及び過回転が生じやすい。Nが3以下とされることで、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが大きくされやすい。よって、上述した逆回転及び過回転が効果的に抑制される。
【0120】
実用新案登録第3142270号公報の
図6及び
図7が示すように、Nが4である場合、45度の逆回転により、逆回転抑制部Rxを乗り越えて、係合ポジションEPが実現しうる。よって、逆回転によっても、係合ポジションEPが比較的容易に実現してしまう。このため、逆回転により逆回転抑制部Rxが損傷する機会が増加しうる。換言すれば、誤使用の機会が増加しうる。Nが3以下である場合、逆回転抑制部Rxを乗り越えて係合ポジションEPに至るには、大きな角度の逆回転が必要となる。よって、逆回転抑制部Rxが損傷する機会は生じにくい。Nが小さいほど、この逆回転抑制効果が高まる。
【0121】
過回転の場合も同様である。実用新案登録第3142270号公報の実施形態では、45度の過回転により、過回転抑制部Ryを乗り越えてしまうことがある。この場合、係合ポジションEPへの移行を意図しているにも関わらず、係合ポジションEPを通過して非係合ポジションNPに至ってしまう。このように、過回転による係合ポジションEPの通過が比較的容易に実現してしまう。このため、過回転抑制部Ryが損傷する機会が増加しうる。Nが3以下である場合、過回転抑制部Ryを乗り越えて非係合ポジションNPに至るには、大きな角度の過回転が必要となる。よって、過回転抑制部Ryが損傷する機会は生じにくい。Nが小さいほど、この過回転抑制効果が高まる。
【0122】
このように、Nが3以下とされることで、逆回転及び過回転に要する回転角度が増加し、加えて、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが大きくされうる。よって、逆回転及び過回転が効果的に減少しうる。このため、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが損傷しにくい。結果として、繰り返しの使用によっても、ソケット10が劣化しにくい。
【0123】
より好ましくは、上記Nが2とされる。この場合、Nが1である場合と比較して、係合部32の断面形状が比較的単純とされる。よって、係合部32及びソケット10の設計が容易となる。また、Nが1である場合と比較して、第1孔部18に係合部32を挿入するのが容易とされうる。Nが2である場合の例として、本実施形態のような略長方形の他、略平行四辺形が挙げられる。
【0124】
本願では、係合部32の最長回転半径がR1とされる。また、係合部32の最短回転半径がR2とされる。半径R1は、前述の通りである。すなわち、
図21が示すように、この半径R1は、回転中心Zから、上記点Pfまでの距離である。半径R2は、回転中心Zから点Pcまでの距離である。この点Pcは、係合部32の断面の輪郭線において、点Zから最も近い点である(
図21参照)。
【0125】
逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryを大きくする観点から、R1/R2は、1.30以上が好ましく、1.33以上がより好ましく、1.36以上がより好ましい。ソケット用凹部14及びソケット10を小型化する観点から、R1/R2は、1.70以下が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.50以下がより好ましい。なお、上記実施形態では、R1/R2は1.39である。
【0126】
図21の非係合ポジションNPの断面図においてクロスハッチングで示されているのは、逆回転抑制部Rxの断面積Xである。上記逆回転を抑制する観点から、この断面積Xは、1.5mm
2以上が好ましく、2.0mm
2以上がより好ましく、2.5mm
2以上がより好ましい。ソケット用凹部14及びソケット10の小型化の観点から、この断面積Xは、5.0mm
2以下が好ましく、4.5mm
2以下がより好ましく、4.0mm
2以下がより好ましい。この断面積Xは、1つの逆回転抑制部Rxの断面積である。
【0127】
図21の係合ポジションEPの断面図においてクロスハッチングで示されているのは、過回転抑制部Ryの断面積Yである。上記過回転を抑制する観点から、この断面積Yは、1.5mm
2以上が好ましく、2.0mm
2以上がより好ましく、2.5mm
2以上がより好ましい。ソケット用凹部14及びソケット10の小型化の観点から、この断面積Yは、5.0mm
2以下が好ましく、4.5mm
2以下がより好ましく、4.0mm
2以下がより好ましい。この断面積Yは、1つの過回転抑制部Ryの断面積である。
【0128】
図21において両矢印R3で示されているのは、逆回転抑制部Rxの最大高さである。この高さR3は、半径方向に沿って測定される。半径方向とは、上述した直線Lpの方向である。上記逆回転を抑制する観点から、R3/R1は、0.19以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.21以上がより好ましい。ソケット用凹部14及びソケット10の小型化及び軽量化の観点から、R3/R1は、0.24以下が好ましく、0.23以下がより好ましく、0.22以下がより好ましい。
【0129】
図21において両矢印R4で示されているのは、過回転抑制部Ryの最大高さである。この高さR4は、半径方向に沿って測定される。半径方向とは、上述した直線Lpの方向である。上記過回転を抑制する観点から、R4/R1は、0.19以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.21以上がより好ましい。ソケット用凹部14及びソケット10の小型化及び軽量化の観点から、R4/R1は、0.24以下が好ましく、0.23以下がより好ましく、0.22以下がより好ましい。
【0130】
40℃の環境下において、着脱時に必要な最大トルク(N・m)がT40とされる。25℃の環境下において、着脱時に必要な最大トルク(N・m)がT25とされる。5℃の環境下において、着脱時に必要な最大トルク(N・m)がT5とされる。気温に関わらず円滑な着脱を可能とする観点から、比(T40/T5)は、0.30以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.40以上が更に好ましく、0.41以上が更に好ましい。
【0131】
気温に関わらず円滑な着脱を可能とする観点から、比(T25/T5)は、0.57以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.61以上が更に好ましい。前述の通り、比(T40/T5)と同様、比(T25/T5)は1以下となると考えられる。
【0132】
低温における円滑な着脱を可能とする観点から、T5は、6.3(N・m)以下が好ましく、6.0(N・m)以下がより好ましく、5.5(N・m)以下が更に好ましく、5.0(N・m)以下が更に好ましい。
【0133】
高温における固定を確実とする観点から、T40は、1.0(N・m)以上が好ましく、1.5(N・m)以上がより好ましく、1.8(N・m)以上がより好ましい。
【0134】
[ソケットの硬度Hs]
重量体12の固定を確実とし、打撃時の音鳴りを抑制する観点から、ソケット10の硬度Hsは、D40以上が好ましく、D42以上がより好ましく、D45以上が更に好ましい。重量体12による摩耗を抑制する観点から、硬度Hsは、D80以下が好ましく、D78以下がより好ましく、D76以下がより好ましい。
【0135】
硬度Hsは、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたショアD型硬度計によって測定される。測定サンプルの形状は、一辺の長さが3mmの立方体とされる。測定は、23℃の温度下でなされる。可能であれば、測定サンプルは、ソケット10から切り出される。切り出しが困難である場合、ソケット10の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなる測定サンプルが用いられる。
【0136】
ゴルフクラブ2によってボールが打撃されると、ゴルフクラブ2を介して、ゴルファーの手に打撃振動が伝えられる。この打撃振動の振動エネルギーは、ソケット10に収容された重量体12の運動エネルギーに変換される。このソケット10及び重量体12は、シャフト6の振動エネルギーを重量体12の運動エネルギーに変換することで、打撃振動を緩和しうる。更に、壁状部11により、重量体12の露出部E1の振動が吸収されるため、振動吸収性が効果的に向上している。
【0137】
[ポリマー]
硬度の観点から、ソケットの材質としては、ポリマーが好ましい。このポリマーとして、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーが例示される。熱硬化性ポリマーとして、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド及び熱硬化性エラストマーが例示される。熱可塑性ポリマーとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド及び熱可塑性エラストマーが例示される。
【0138】
熱可塑性エラストマーとして、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリスチレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが例示される。
【0139】
耐久性の観点からは、ウレタン系ポリマー及びポリアミドが好ましく、ウレタン系ポリマーがより好ましい。ウレタン系ポリマーとして、ポリウレタン及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが例示される。ウレタン系ポリマーは、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。成形性の観点からは、熱可塑性のウレタン系ポリマーが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0140】
成形性の観点からは、熱可塑性ポリマーが好ましい。硬度及び耐久性の観点から、この熱可塑性ポリマーの中では、ポリアミド及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0141】
ポリアミドとして、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン66が例示される。
【0142】
好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。即ち、好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)として、ポリエステル系TPUと、ポリエーテル系TPUとが挙げられる。ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。
【0143】
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。
【0144】
芳香族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。
【0145】
市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)として、BASFジャパン社の商品名「エラストラン」が例示される。
【0146】
ポリエステル系TPUの具体例として、「エラストランC70A」、「エラストランC80A」、「エラストランC85A」、「エラストランC90A」、「エラストランC95A」、「エラストランC64D」等が挙げられる。
【0147】
ポリエーテル系TPUの具体例として、「エラストラン1164D」、「エラストラン1198A」、「エラストラン1180A」、「エラストラン1188A」、「エラストラン1190A」、「エラストラン1195A」、「エラストラン1174D」、「エラストラン1154D」、「エラストランET385」等が挙げられる。
【0148】
なお、上記各ポリマーをマトリックスとする繊維強化樹脂が用いられても良い。
【実施例】
【0149】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0150】
上述したヘッド2と同じ構造のヘッドを作製した。
【0151】
[ヘッド本体の作製]
チタン合金(Ti−6Al−4V)の圧延材をプレスすることにより、フェース部材を得た。チタン合金(Ti−6Al−4V)を用いた鋳造により、ボディを得た。このボディは、ソケット用凹部を有していた。得られたフェース部材とボディとを溶接することで、ヘッド本体を得た。L字型のカッターを用いた切削により、ソケット用凹部の側面に、アンダーカット部を形成した。
【0152】
[ソケットの作製]
ソケットは、射出成形により得た。ソケットの材質として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられた。具体的には、「エラストラン1164D」と「エラストラン1198A」とを重量比で1:1で混合したものが用いられた。上記断面積Xは、3.27mm
2であった。上記断面積Yは、3.27mm
2であった。
【0153】
[重量体の作製]
重量体の材質として、タングステンニッケル合金(W−Ni合金)が用いられた。このW−Ni合金を粉末焼結により成形して、重量体を得た。
【0154】
[ソケット用凹部へのソケットの取り付け]
接着剤を用いて、ソケット用凹部にソケットを接着した。この接着には、住友スリーエム社製の商品名「DP460」が用いられた。この接着と共に、ソケットの係合凸部をアンダーカット部に係合させた。この係合では、ソケットの壁状部を弾性変形させながら、アンダーカット部に係合凸部を嵌め込んだ。このようにして、実施例のヘッドを得た。
【0155】
このヘッドでは、壁状部の弾性変形を利用して、ソケットが容易にソケット用凹部に装着された。このソケットに、重量体を挿入し且つ+θ°回転させた。この回転には、上述の工具が用いられた。この結果、重量体が、容易にソケットに固定された。重量体を挿入した状態(非係合ポジションNP)からの逆回転は困難であった。また、係合ポジションからの過回転も困難であった。