【実施例】
【0057】
粒子サイズ測定
粒子サイズは、とりわけ、公知の準弾性光散乱法により定量できる。この定量に使用できる1つの装置は、Brookhaven 90Plus Nanoparticle Size Analyzerである。この装置を用いると、光子相関分光法(またはPCS)により、平均径の測定値が得られる。加えて、粒子サイズ測定には、Malvern MasterSizer 2000を使用することもできる。あるいは、粒子サイズは、遠心分離または電子顕微鏡観察法など、他の公知の技術により測定してもよい。
【0058】
メソカプセルの合成
メソカプセルの合成に使用するアミノ酸のストック溶液の調製。
本明細書中で開示する例示的なメソカプセルの合成に用いる多様な反応作業の開始前に、
図1に掲載する比率で、グリシンおよびリシンのストック溶液を調製した。
【0059】
本明細書中で開示するポリ尿素メソカプセルのいくつかの調製に用いる一般的な方法。
代表的なポリ尿素メソカプセル製剤の合成に用いる典型的な方法を、
図2に掲載する原料および量を使用して以下に記載する。簡潔に言えば、フェンブコナゾール、酢酸ベンジル、ヘキサデカンおよびPAPI(商標)27ポリメリックMDI(The Dow Chemical Co.)を60mlの広口瓶に加え、均一になるまで混合した。界面活性剤、水およびグリシン溶液をこの広口瓶に加え、手持ちタイプのBioHomogenizerミキサー(BioSpec Products,Inc.)で約10秒間混合して、プレエマルジョンを生成させた。この広口瓶を氷浴中に置き、Branson 184V Ultrasonicatorを40%の出力で用いてプレエマルジョンを5分間超音波処理して、最終的なエマルジョンを生成させた。架橋剤を最終的なエマルジョンに加えてポリメリックMDIと反応させて最終製品を生成させたが、但し、試料4では、ポリメリックMDIを水と長時間反応させて最終製品を生成させた。各試料中のメソカプセルの体積平均粒径は、Brookhaven 90Plus Nanoparticle Size Analyzerを用いて測定した。
図2に掲載する多様なメソカプセル製剤は、こうした方法を用いて作製した。
図2に示すように、反応混合物の組成を変化させて、本明細書中で開示する多様な製剤を生成させた。
図4に載せた製剤を植物に対して試験して、その治癒的および防止的な植物疾患防除特性を決定した。
【0060】
フェンブコナゾールを含有するポリ尿素メソカプセル製剤を、本明細書に記載の原料(製剤全体に対する量(重量%)として)を使用して調製した。油相および水相を別々に調製した。油相中で、5.07重量%のフェンブコナゾール、14.33重量%のシクロヘキサノンおよび14.08重量%のAromatic200溶媒を合わせて、最初の溶液とした。この最初の溶液に、1.31重量%のIndopol(商標)H15(INEOS Oligomers)、6.54重量%のジイソシアン酸イソホロンおよび2.18重量%のPAPI(商標)27(The Dow Chemical Company)を加えた。水相中で、42.56重量%の水、0.10重量%のProxel(商標)GXL(Arch UK Biocides,Ltd.)および0.44重量%のラウリル硫酸ナトリウムを合わせた。Silverson L4RT High Shear Mixer/Emulsifierを6000rpmで2分間用いて混合しながら水相を油相と合わせてプレエマルジョンを作製し、これを氷/水浴中で冷却した。次に、Emulsiflex(登録商標)−C3(Avestin,Inc.、600〜1000バール)により氷/水冷却しながら、プレエマルジョンを高圧下でホモジナイズして、中規模の安定な水中油エマルジョンを作製した。撹拌しながら、0.87重量%の固体のラウリル硫酸ナトリウムを加えてから、1.31重量%のL−リシン(乾燥重量基準)を44.4重量%水溶液として加えてPAPI(商標)27と反応させ、2.20重量%のジエチレントリアミンをジエチレングリコール−水(0.76:0.24、重量%/重量%)中の25重量%溶液として1時間かけて加えて、ジイソシアン酸イソホロンと反応させた。この混合物を室温で4時間撹拌させると、ポリ尿素シェルの形成が完了した。この製剤は、体積平均粒径が313nmのフェンブコナゾールのメソカプセルを含有した。
【0061】
以下の手順を利用して、328255−92−1、エポキシコナゾール、アトラジン、フルロキシピル−メプチル、スピノサドおよびインドキサカルブのメソカプセル懸濁液を作製した。油相および水相は、
図3に示す原料および量を使用して別々に調製した。活性成分を溶媒/溶媒混合物に溶解して77%の油相を作製してから、3%の超疎水物質および20%のイソシアネート(モノマー1)を加えた。水相中に、Proxel(商標)GXL(Arch UK Biocides,Ltd.、製剤全体の0.1%)およびラウリル硫酸ナトリウム(油相の3%)を加えた。水相を油相と合わせ、この混合物を2分間磁気撹拌してプレエマルジョンを作製し、次いでこれを、Vibra Cell(商標)(Sonics&Materials,Inc.)超音波処理器を750W、24〜25%の振幅にて氷/水浴中で用いて超音波処理して(4〜5分)、中規模の安定な水中油エマルジョンを作製した。撹拌時に、ポリアミン(モノマー2)を加えてイソシアネートと反応させて、ポリ尿素シェルを形成した。
図3に掲載する多様なメソカプセル製剤は、こうした方法を用いて作製した。
図4に載せた製剤を植物および昆虫に対して試験して、その有害生物防除特性を決定した。
【0062】
328255−92−1、エポキシコナゾールおよびインドキサカルブの水性の懸濁濃縮製剤を、標準的な界面活性剤、湿潤剤および製粉機を用いて従来法により調製して、
図4に示す試料7、9および13とした。これらの試料の体積平均径は、それぞれ約2.5μmであった。
【0063】
図4を参照すると、表には、コムギ葉枯病について試験した製剤のいくつかを掲載してある。
図4に掲載したフェンブコナゾールのポリ尿素メソカプセルを試験して、真菌のコムギ葉枯病菌(Septoria tritici)が引き起こすコムギ葉枯病に対する治癒効果および保護剤効果を測定した。測定は、別々の群のコムギ(栽培品種ユマ(Yuma))苗について行った。本明細書中で開示する多様な実施形態に従って作製したポリ尿素メソカプセルを、市販のフェンブコナゾール製剤Indar(商標)75WPと比較した。各フェンブコナゾール製剤を水で希釈し、1Ha当たり62.5g、20.8g、6.9g、2.3gおよび0.77gの活性成分の比率で試験した。各実験単位は、MetroMixを半分、粘土ローム土壌を半分含む生育媒体の5cm×5cmのポットの中で生長させた8〜10本のコムギ苗から構成された。各処置は3回繰り返し、処置は、化学物質を施用した後でランダム化した。
【0064】
治癒試験では、試験製剤および対照製剤を苗に施用する2日前に、双葉生長期(2-leaf stage of growth)の段階で苗に接種した。保護剤試験については、双葉生長期の間、試験製剤および対照製剤を苗に施用し、4日後、葉枯病を引き起こす真菌を接種した。処置は、Gen III Research Sprayer(DeVries Mfg.、Hollandale、MN)トラックスプレーヤー(tracksprayer)にSpraying Systems 8002E TeeJetスプレーノズルを装着し1Ha当たり100Lを送出するように調整したものを用いて施した。
【0065】
葉の病原体であるコムギ葉枯病菌(Septoria tritici)の接種菌液は、新しく突起し成熟した分生子核から分生子を採取することにより調製した。いくつかの試料を血球計数器で計数することにより分生子の水性懸濁液を作製し、次いでこの懸濁液を、1ml当たり約1,000,000分生子が含まれるように調節した。苗には、低圧の圧縮空気スプレーヤーを用いた細かい霧をコムギ80ポット当たりおよそ200mlの体積で施用することにより、接種した。接種後、苗を99〜100%相対湿度の暗く湿った部屋(dew room)(22℃)で24時間インキュベートしてから、99〜100%相対湿度の、照明を点けた湿った部屋(20℃)にさらに48時間移し、次いで、試験の残りの間は、20℃、14時間光周期の条件に設定した温室に置いた。希薄な液体肥料溶液の定期的な施用により、苗の生長を維持した。
【0066】
コムギの苗は、接種の約21日後、疾患について評価付けした。疾患症状を示す葉の比率(%)を目測することにより、疾患率(%)を評価した。まず接種してから2日後に化学物質で処置した苗は、治癒効果を示した。まず処置してから4日後に接種した苗は、保護剤効果を示す。治癒試験において未処置の苗について測定した疾患レベルは約82%であった。保護剤試験において未処置の苗について測定した疾患レベルは約95%であった。
【0067】
図5および6を参照すると、多様な試験の結果は次のとおりである。治癒試験(
図5)においては、フェンブコナゾールのメソカプセル製剤は全て、フェンブコナゾールの標準的な水和剤製剤と比較した場合、全般的に低い疾患レベルを示す結果となった。同様に、保護剤試験(
図6)においては、フェンブコナゾールのメソカプセル製剤は、試験した1つまたは複数の比率で、標準的な水和剤製剤と比較した場合、低い疾患レベルを示す結果となった。
【0068】
図4を参照すると、表には、コムギの茶色サビ病(brown rust)について試験した製剤のいくつかを掲載してある。
図4に掲載した328255−92−1およびエポキシコナゾールのポリ尿素メソカプセル製剤を試験して、真菌のコムギ赤サビ病菌(Puccinia recondita f. sp. tritici)が引き起こす茶色サビ病として公知のコムギ疾患に対する保護剤効果を測定した。測定は、コムギ(栽培品種ユマ)苗について行った。本明細書中で開示する多様な実施形態に従って作製したポリ尿素メソカプセルを、従来の水ベースの微粒子製剤と比較した。各製剤を水で希釈し、1Ha当たり活性成分62.5g、20.8g、6.9g、2.3gおよび0.77gの比率で試験した。各実験単位は、MetroMixを半分、粘土ローム土壌を半分含む生育媒体の5cm×5cmのポットの中で生長させた8〜10本のコムギ苗から構成された。各処置は4回繰り返し、処置は、化学物質を施用した後でランダム化した。
【0069】
双葉生長期の間、試験製剤および対照製剤を苗に施用し、4日後、茶色サビ病の真菌を接種した。処置は、Gen III Research Sprayer(DeVries Mfg.、Hollandale、MN)トラックスプレーヤーにSpraying Systems 8002E TeeJetスプレーノズルを装着し1Ha当たり100Lを送出するように調整したものを用いて施した。
【0070】
葉の病原体であるコムギ赤サビ病菌(Puccinia recondita f.sp. tritici)の接種菌液は、新しく突起し成熟したいぼ状の隆起から夏胞子を採取することにより調製した。夏胞子の最終的な水性懸濁液は、以下の手順を用いて作製した。0.1gの夏胞子を3滴のTween20に加えてから、ペーストとして混合した。このペーストに、100mlの蒸留水を加えた。この懸濁液からは、1ml当たりおよそ1,000,000の夏胞子が得られた。苗には、低圧の圧縮空気スプレーヤーを用いた細かい霧をコムギ80ポット当たりおよそ300mlの体積で施用することにより、接種した。接種後、苗を99〜100%相対湿度の暗く湿った部屋(22℃)で24時間インキュベートしてから、試験の残りの間は、24℃、14時間光周期の条件に設定した温室に移した。希薄な液体肥料溶液の定期的な施用により、苗の生長を維持した。
【0071】
コムギの苗は、接種のおよそ7〜8日後、疾患について評価付けした。初生葉上の疾患率(%)を目測することにより、疾患率(%)を評価した。結果を比率全体で平均した。試験は2回実施し、個々の試験の結果を合わせた。
【0072】
図7を参照すると、茶色サビ病を用いた2つの保護剤試験の結果を合わせたものから、328255−92−1およびエポキシコナゾールのメソカプセル製剤は、標準的なスプレー可能な濃縮製剤と比較した場合、全般的に低い疾患レベルを示す結果となったことが示唆される。
【0073】
図4を参照すると、表には、除草剤の活性成分アトラジンおよびフルロキシピル−メプチルについて試験した製剤が掲載してある。本明細書中で開示する多様な実施形態に従って作製したポリ尿素メソ製剤を、従来の水ベースの微粒子製剤と比較した。
図4に掲載したアトラジンおよびフルロキシピル−メプチルのポリ尿素メソカプセルを試験して、本明細書に記載の方法を利用して、多様な双子葉植物および単子葉植物の雑草種に対する発生後の除草効果を測定した。
【0074】
ピートベースの鉢植え用土壌Metro−mix360を、この試験のための土壌媒体として使用した。Metro−mixは、特別に加工されたココナッツコイア髄35〜45%、園芸用のバーミキュライト10〜20%、加工された樹皮灰15〜25%、上質のカナダ産水苔由来ピートモスおよび独自の栄養分および他の原料20〜30%からなる生育媒体である。各種のいくつかの種子を10cm角のポットに植え、1日2回、葉上潅水した。エビスグサ(Casia obtusifolia)(CASOB)、イチビ(Abutilon theophrasti)(ABUTH)、アメリカキンゴジカ(Sida spinosa)(SIDSP)、アキノエノコログサ(Setaria faberi)(SETFA)、ジギタリア・サティバ(Digitaria sativa)(DIGSA)、ホウキギ(Kochia scoparia)(KCHSC)、ハコベ(Stellaria media)(STEME)、ソバカズラ(Polygonum convolvulus)(POLCO)、シロザ(Chenopodium album)(CHEAL)およびブタクサ(Ambrosia artemisiifolia)(AMBEL)を、26〜28℃の一定温度、50〜60%相対湿度の温室で繁殖させた。自然光を、平均照度が500uE m−2 s−1光合成有効放射(PAR)の1000ワットのハロゲン化金属の頭上ランプで補った。光周期は16時間であった。植物材料には、処置に先立ち葉上潅水し、処置後は地下潅水した。
【0075】
アトラジンのメソカプセル製剤を、標準的な水分散性顆粒の市販製剤、AAtrex Nine−0(商標)(Syngenta)と比較した。2つのアトラジン製剤を脱イオン水で希釈し、1Ha当たり活性成分2240g、1120g、460gおよび280gの比率で施用した。フルロキシピル−メプチルのメソカプセル製剤を、標準的な市販のフルロキシピル−メプチル製剤Casino(商標)25WP(Dow AgroSciences、LLC)と比較した。2つのフルロキシピル−メプチル製剤を脱イオン水で希釈し、1Ha当たり活性成分200g、100g、50g、25gおよび12.5gの比率で施用した。処置は、Allen Machine Works製のトラックスプレーヤーで施した。このスプレーヤーは、8002Eスプレーノズル、スプレー圧力262kPa圧力、および1Ha当たり187Lを送出するスピード1.5mphを利用した。ノズルの高さは、植物の樹冠上46cmであった。多様な雑草種の生長期は、葉2〜4枚の幅があった。処置は3回繰り返した。植物は、処置後、温室に戻し、実験の継続期間にわたり地下潅水した。植物材料には、Hoagland’s肥料溶液を週2回施肥した。制御率(%)の視覚的評価を、未処置の対照植物と比較して0〜100%のスケールで行った(この場合、0は制御なしに等しく、100は完全な制御に等しい)。
【0076】
図8を参照すると、発生後の除草剤試験の結果から、アトラジンのメソカプセル製剤は、標準的な水分散性の顆粒製剤と比較した場合、全般的に高い防除レベルを示す結果となったことが示唆される。
【0077】
図9を参照すると、発生後の除草剤試験の結果から、フルロキシピル−メプチルのメソカプセル製剤は、標準的な水和剤製剤と比較した場合、全般的に高い防除レベルを示す結果となったことが示唆される。
【0078】
図4を参照すると、表には、殺虫剤の活性成分インドキサカルブについて試験した製剤が掲載してある。
図4に掲載したインドキサカルブのポリ尿素メソカプセル製剤(試料12)を試験して、コナガの二齢幼虫(Plutella xylostella)およびオスの成虫のチャバネゴキブリ(Blatella germanica)の致死およびリーフディスクまたはベイトの消費量それぞれに対する効果を測定した。本明細書中で開示する多様な実施形態に従って作製したインドキサカルブのポリ尿素メソ製剤を、水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤(試料13)と比較した。
【0079】
各インドキサカルブ製剤を、試験用に水で希釈した。コナガの致死および処置したリーフディスクの消費量について試験した比率は、0.15ppm、0.62ppm、2.5ppm、10ppm、20ppm、40ppm、80ppmおよび160ppmであった。チャバネゴキブリの致死および処置した水ベースのベイトについて試験した比率は、試験の種類(すなわち、注射、局所施用、または、水ベースのベイトの摂取)に応じ、0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%および1%であった。
【0080】
コナガの試験については、キャベツ苗を温室で生育し、1苗当たり2枚の葉を切り取った。製剤は、脱イオン水に0.025%Silwet L−77界面活性剤を加えたものを用いて希釈した。試験した比率は、0.15ppm、0.62ppm、2.5ppm、10ppm、20ppm、40ppm、80ppmおよび160ppmであった。キャベツ苗には、1ヘクタール当たりおよそ200リットルのスプレー体積を送出するトラックスプレーヤーを用いてスプレーした。処置したキャベツ苗を乾燥させた後、スプレーした各苗からリーフディスクを採取し、1枚のリーフディスクを、32ウェルのバイオアッセイトレイの各ウェル(ウェルの底に寒天の薄層が入っている)中に置いた。3匹のコナガの二齢幼虫を、各リーフディスクの中央に置き、トレイをプラスチックの蓋で覆った。致死率およびリーフディスク消費率(%)のデータを、1〜4日の多様な時間間隔で回収した。
【0081】
図10および11を参照すると、コナガ試験の結果は次のとおりである。2.5ppmおよび10ppmの比率では、ポリ尿素メソカプセル製剤に有利な差が認められた。
【0082】
2.5ppmの比率では、ポリ尿素メソカプセル製剤処置により、処置後3日および4日時点で、それぞれ、水ベースの懸濁濃縮製剤処置と比較して28〜46パーセント、処置したリーフディスクの消費量が減少した。10ppmの比率では、ポリ尿素メソ製剤処置により、処置後3日および4日時点で、それぞれ、水ベースの懸濁濃縮製剤処置と比較して18〜37%、処置したリーフディスクの消費量が減少した。処置したリーフディスクの消費量がこのように減少したことから、インドキサカルブのポリ尿素メソカプセル製剤は、処置したキャベツ苗を、コナガの幼虫による採食から、水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤より良好に保護できたことが示される。
【0083】
10ppmの比率では、処置後4日時点で、ポリ尿素メソカプセル製剤処置により、コナガの幼虫の致死数は、水ベースの懸濁濃縮製剤処置と比較して19%増加した。致死数がこのように増加したことから、インドキサカルブのポリ尿素メソ製剤は、10ppmの比率で、水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤より、毒性活性を強化できたことが示される。
【0084】
3種類の試験(注射、局所および摂取のバイオアッセイ)をチャバネゴキブリについて行った。注射試験については、1処置当たり10匹のオスの成虫のチャバネゴキブリに1μlの各処置剤を注射した。処置溶液は、インドキサカルブ製剤をMilli−Q精製水で希釈してインドキサカルブ濃度を0.001%、0.01%、0.1%および1%にすることにより作製した。注射されたゴキブリは、食物および水の入った100×25mmのペトリ皿の中で維持し、26℃、60%相対湿度の実験室の制御環境チャンバーの中に置いた。注射されたゴキブリを7日間毎日チェックし、死んだ数を記録した。食物および水は、必要に応じて補給した。
【0085】
図12を参照すると、チャバネゴキブリ注射試験の結果は、致死率(%)については次のとおりであり、ポリ尿素メソ製剤に有利な差が認められた。試験した製剤間の差は、0.01%の比率の場合に認められた。
【0086】
0.01%濃度のインドキサカルブでは、処置後2〜7日時点で、ポリ尿素メソカプセル製剤処置により、チャバネゴキブリの致死数が、水ベースの懸濁濃縮製剤処置と比較して20〜30%増加した。致死率がこのように増加したことから、ポリ尿素メソカプセル製剤中のインドキサカルブは、0.01%比率で、インドキサカルブ懸濁濃縮製剤と比較して、より大きな有効性を有したことが示される。
【0087】
本製剤の水ベースの希釈物をチャバネゴキブリに直接施用した場合の本製剤の致死発現を、局所的なバイオアッセイにおいて試験した。局所的な試験については、1処置当たり10匹の成虫のオスのチャバネゴキブリに、注射器により前胸背板に局所施用する1μlの各処置を行った。処置の前および後に、ゴキブリにCO
2で麻酔をかけた。製剤は、インドキサカルブ濃度が0.001%、0.01%、0.1%および1%となるMilli−Q精製水希釈物の形態で試験した。処置したゴキブリは、実験室の制御環境チャンバー内に、食物および水の入った60×15mmのペトリ皿の中で維持した(1皿当たり1匹)。処置されたゴキブリを7日間毎日チェックし、死んだ数を記録した。食物および水は、必要に応じて補給した。
【0088】
図13を参照すると、チャバネゴキブリの局所試験の結果は、致死率(%)については次のとおりであり、ポリ尿素メソ製剤に有利な差が認められた。試験した製剤間の差は、0.1%比率のみの場合に認められた。
【0089】
0.1%比率では、処置後1〜7日時点で、ポリ尿素メソカプセル製剤処置により、チャバネゴキブリの致死数は、水ベースの懸濁濃縮製剤処置と比較して20〜40%増加した。致死数がこのように増加したことから、インドキサカルブのポリ尿素メソカプセル製剤は、0.1%比率で、水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤より、毒性活性を強化できたことが示される。加えて、本ポリ尿素メソカプセル製剤で処置すると、水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤処置と比較して死ぬスピードも増加した。
【0090】
この摂取バイオアッセイを用いて、水ベースの希釈物をチャバネゴキブリが摂取した場合の本製剤の致死発現を試験した。この摂取試験については、5回の反復試験(rep)当たり10匹の成虫のオスのチャバネゴキブリを、小さなボール紙製の隠れ場所と食物としてひとかけらのイヌ用餌Purina(商標)との入った100×25mmのペトリ皿の中に置いた。水ベースの処置したベイトに曝露させる前は、ゴキブリには水を3日間与えなかった。水ベースの処置したベイトへの曝露は、1〜3日目に30分間、選択の余地のない曝露であり、1日目には200μlのベイトを与え、2日目および3日目には150μlのベイトを与えた。1日目に与えた水ベイトを除去し、2日目および3日目には新しい水ベイトに交換した。水ベイトへの3日間の曝露後、ゴキブリには次の11日間、未処置の水および食物を与えた。製剤を脱イオン水に希釈して、インドキサカルブ濃度を0.0001%、0.001%、0.01%および0.1%とした。処置したゴキブリを15日間毎日チェックし、死んだ数を記録した。消費した水ベイトの量を、この曝露を行った3日間記録した。
【0091】
致死率(%)について試験した製剤間には、本ポリ尿素メソ製剤が水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤処置より能力が優れているという差はなかった。しかし、0.1%比率では、ベイト消費データに差が認められた。
図14を参照すると、チャバネゴキブリの摂取試験の結果は、0.1%比率での消費量(mg)については次のとおりである。
【0092】
0.1%比率では、処置後1日時点では、本ポリ尿素メソカプセル製剤ベイト処置により、チャバネゴキブリによるベイト消費量は、水ベースの懸濁濃縮製剤ベイト処置と比較して86mg減少した。ポリ尿素メソカプセル製剤中のインドキサカルブの0.1%濃度でのインドキサカルブベイトの消費量がこのように減少したことから、1日目時点で、水ベースのインドキサカルブ懸濁濃縮製剤と比較して早く、採食の減少/停止が生じたことが示される。
【0093】
図面および前述の説明において本新規技術を詳細に例証し記載してきたが、同図面および説明の性質は例証的なものであって限定的なものでないことは考慮されたく、好ましい実施形態のみを示し説明してあること、また、本新規技術の範囲内に入る変化形および改変形は全て保護対象となることを望むものであることは理解される。尚、具体例、理論的な主張、説明および例証を用いて本新規技術を例証したが、これらの例証および付随する考察は、本技術を制限するものとは決して解釈されるべきではない。本出願において参照した全ての特許、特許出願および参考文献、科学論文、刊行物などは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は以下を提供する。
[1]
農業用活性成分を送出するための組成物であって、
ポリマーシェルを有するメソカプセルと、
水溶性に乏しい農業用活性成分とを含み、前記活性成分が、前記ポリマーシェル内に少なくとも部分的に含まれ、前記メソカプセルの体積平均粒径が約30nm〜約500nmである組成物。
[2]
前記ポリマーシェルが、ポリ尿素、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、アミノプラスト、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリサッカハリド、タンパク質、シリコーン、脂質、変性セルロース、ゴム、ポリアクリレート、ポリリン酸、ポリスチレンおよびポリエステルのうち少なくとも1つを含む、前記[1]に記載の組成物。
[3]
前記ポリマーシェルがポリ尿素を含む、前記[2]に記載の組成物。
[4]
前記ポリ尿素が、少なくとも1つのポリイソシアネートと少なくとも1つのポリアミンとの反応生成物である、前記[3]に記載の組成物。
[5]
前記メソカプセルの体積平均径が約50nm〜約300nmの範囲である、前記[1]に記載の組成物。
[6]
前記シェルが親水性官能基を含み、前記親水性官能基の少なくともいくつかが水と接触している、前記[1]に記載の組成物。
[7]
前記シェルの表面上の前記親水性官能基がカルボキシレートである、前記[6]に記載の組成物。
[8]
前記活性成分の水溶解度が約1,000ppm以下である、前記[1]に記載の組成物。
[9]
昆虫、ダニ、植物疾患または雑草を防除する方法であって、
前記[1]に記載の組成物を含む製剤を提供するステップ、ならびに
農業に有効な量の前記製剤を、植物、植物の葉、花、茎、果実、植物に隣接する区域、土壌、種子、発芽種子、根、液体および固体の生育媒体、水耕法の生育溶液、処置表面、ならびに有害生物自体の体内または体表のうち少なくとも1つに施用するステップと
を含む方法。
[10]
昆虫、植物疾患または雑草を防除する方法であって、
前記[1]に記載の組成物を含む製剤を提供するステップ、ならびに
農業に有効な量の前記製剤を、1つまたは複数の従来の農業用活性成分製剤または栄養分との混合物の形態で、植物、植物の葉、花、茎、果実、植物に隣接する区域、土壌、種子、発芽種子、根、液体および固体の生育媒体、水耕法の生育溶液、処置表面、ならびに有害生物自体の体内または体表のうち少なくとも1つに施用するステップ
を含む方法。
[11]
メソカプセルを合成する方法であって、
少なくとも1つの農業用活性成分と、反応させてシェルを形成することが可能な1つまたは複数のポリマー前駆体とを含む油相を提供するステップ、
水と少なくとも1つの架橋剤とを含む水相を供給するステップ、
界面活性剤を、前記水相および前記油相のうち少なくとも一方に加えるステップ、
体積平均径が約500nm以下のメソサイズ液滴を有するエマルジョンを形成するのに十分なせん断条件下で前記油相と前記水相とを混合するステップ、ならびに
前記ポリマー前駆体を前記架橋剤と反応させて前記メソカプセルを形成するステップ
を含む方法。
[12]
前記ポリマー前駆体が、ポリイソシアネート、シロキサンおよび他のケイ素含有前駆体を含む、前記[11]に記載の方法。
[13]
前記架橋剤が、水、アミノ酸、レゾルシノール、メラミン、ホルムアルデヒド、尿素、グアニジン、グアニジン化合物、ジアミン、ポリアミン、ポリアミジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記[11]に記載の方法。
[14]
前記ポリマー前駆体が少なくとも1つのポリイソシアネートを含む、前記[11]に記載の方法。
[15]
前記少なくとも1つのポリイソシアネートが、PAPI(商標)27とジイソシアン酸イソホロンとの混合物である、前記[14]に記載の方法。
[16]
前記界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムである、前記[11]に記載の方法。
[17]
前記エマルジョンを形成するのに十分なせん断が、超音波処理または高圧ホモジナイゼーションのいずれかにより達成される、前記[11]に記載の方法。
[18]
前記架橋剤が、水、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびL−リシンからなる群から選択される、前記[13]に記載の方法。
[19]
前記油相が、前記農業用活性成分を実質的に溶解する溶媒を約1重量%〜約90重量%の範囲でさらに含む、前記[11]に記載の方法。
[20]
前記溶媒が、酢酸ベンジル、シクロヘキサノン、芳香族溶媒、アセトフェノン、種子油、種子油のエステル、パラフィン油およびそれらの混合物である、前記[19]に記載の方法。
[21]
前記油相が、約0.5重量%〜約10重量%の間の超疎水物質をさらに含む、前記[11]に記載の方法。
[22]
前記超疎水物質がヘキサデカンまたはIndopol(商標)H15である、前記[21]に記載の方法。
[23]
前記農業用活性成分が、殺真菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、毒性緩和剤および植物の生理または構造の改変剤からなる群から選択される、前記[11]に記載の方法。
[24]
前記メソカプセルの前記油相が、約1〜約90重量パーセントのAIを含む、前記[11]に記載の方法。
[25]
界面活性剤を含まないメソカプセルを合成する方法であって、
少なくとも1つの農業用活性成分と少なくとも1つのポリイソシアネートとを含む油相を提供するステップ、
一級もしくは二級アミンまたは一級もしくは二級アミノ基のいずれかである少なくとも1つの官能部分と、加えて少なくとも1つの親水性官能基とを有する少なくとも1つの成分を含む水相を供給するステップ、
前記油相と前記水相とを混合してエマルジョンを形成するステップ、および
ポリイソシアネートを架橋剤と反応させて前記メソカプセルを形成するステップ
を含む方法。
[26]
前記親水性官能基がカルボキシレートである、前記[25]に記載の方法。
[27]
一級または二級アミンがアミノ酸である、前記[25]に記載の方法。
[28]
前記アミノ酸が、リシンおよびグリシンからなる群から選択される、前記[27]に記載の方法。