(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくともCCケモカインCCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESと結合する、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、以下の配列の組み合わせ:
・配列番号53、54、55、58、59および60の配列、
・配列番号23、24、25、28、29および30の配列、
・配列番号13、14、15、18、19および20の配列、
・配列番号63、64、65、68、69および70の配列、ならびに
・配列番号43、44、45、48、49および50の配列
からなる群から選択される配列を有する、重鎖のHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに軽鎖のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含んでなる、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
少なくとも3種の異なるCCケモカインに対して少なくとも20nMの結合親和性を有し、少なくとも1種のCCケモカインがCCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βまたはCCL5/RANTESである、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体。
CCL2/MCP−1、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCおよびCCL23/MPIF−1からなる群から選択される少なくとも3種の異なるCCケモカインと結合する、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCおよびCCL23/MPIF−1の少なくとも1つの決定基と結合し、該決定基が該CC−ケモカインのCC残基と該ケモカインの最後のC残基との間に位置する、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCおよびCCL23/MPIF−1の少なくとも1つの決定基と結合し、該決定基が該CCケモカインのNループ、30’sループまたは40’sループ中に位置する、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ハイブリドーマ細胞株3C12F(ATCCにPTA−11261として寄託されている)、7D1G(ATCCにPTA−11257として寄託されている)、7D12A(ATCCにPTA−11259として寄託されている)、18V4F(ATCCにPTA−11260として寄託されている)もしくは18P7E(ATCCにPTA−11258として寄託されている)によって産生される、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体もしくはキメラヒト−マウス抗体、またはその抗原結合フラグメントである、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL15/HCC−2およびCCL23/MPIF−1からなる群から選択される少なくとも5種のCCケモカインと結合し、かつCCL2/MCP−1と実質的に結合しない、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記CCケモカインの少なくとも1種のNループ、30’sループまたは40’sループ中の決定基と結合する、請求項12に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基と結合する、請求項12に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ATCCにPTA−11261として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生され、配列番号53、54、55、58、59および60の配列を有する、MAb 3C12FのCDRを含んでなる、請求項12に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
MAb 3C12Fを産生するハイブリドーマ細胞株(ATCCにPTA−11261として寄託されている)によって、もしくはその継代培養物によって産生される、請求項12に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体もしくはキメラヒト−マウス抗体、またはその抗原結合フラグメントである、請求項12に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1およびCCL18/PARCからなる群から選択される少なくとも4種のCCケモカインと結合し、かつCCL2/MCP−1と実質的に結合しない、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記CCケモカインの少なくとも1種のNループ、30’sループまたは40’sループ中の決定基と結合する、請求項18に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基と結合する、請求項18に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ATCCにPTA−11257として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生され、配列番号23、24、25、28、29および30の配列を有する、MAb 7D1GのCDRを含んでなる、請求項18に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
MAb 7D1Gを産生するハイブリドーマ細胞株(ATCCにPTA−11257として寄託されている)によって、もしくはその継代培養物によって産生される、請求項18に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体もしくはキメラヒト−マウス抗体、またはその抗原結合フラグメントである、請求項18に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTESおよびCCL23/MPIF−1からなる群から選択される少なくとも4種のCCケモカインと結合し、かつCCL2/MCP−1と実質的に結合しない、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記CCケモカインの少なくとも1種のNループ、30’sループまたは40’sループ中の決定基と結合する、請求項24に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基と結合する、請求項24に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ATCCにPTA−11259として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生され、配列番号13、14、15、18、19および20の配列を有する、MAB 7D12AのCDRを含んでなる、請求項24に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
MAb 7D12Aを産生するハイブリドーマ細胞株(ATCCにPTA−11259として寄託されている)によって、もしくはその継代培養物によって産生される、請求項24に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体もしくはキメラヒト−マウス抗体、またはその抗原結合フラグメントである、請求項24に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESからなる群から選択される3種のCCケモカインと結合し、かつCCL2/MCP−1と実質的に結合しない、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記CCケモカインの少なくとも1種のNループ、30’sループまたは40’sループ中の決定基と結合する、請求項30に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基と結合する、請求項30に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ATCCにPTA−11260として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生され、配列番号63、64、65、68、69および70の配列を有する、MAb 18V4FのCDRを含んでなる、請求項30に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
MAb 18V4Fを産生するハイブリドーマ細胞株(ATCCにPTA−11260として寄託されている)によって、もしくはその継代培養物によって産生される、請求項30に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体もしくはキメラヒト−マウス抗体、またはその抗原結合フラグメントである、請求項30に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESを含んでなる少なくとも3種のCCケモカインと結合し、かつCCL2/MCP−1と実質的に結合しない、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記CCケモカインの少なくとも1種のNループ、30’sループまたは40’sループ中の決定基と結合する、請求項36に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基と結合し;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基と結合する、請求項36に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ATCCにPTA−11258として寄託されているハイブリドーマ細胞株により産生され、配列番号43、44、45、48、49および50の配列を有する、MAb 18P7EのCDRを含んでなる、請求項36に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
MAb 18P7Eを産生するハイブリドーマ細胞株(ATCCにPTA−11258として寄託されている)によって、もしくはその継代培養物によって産生される、請求項36に記載の単離されたモノクローナル抗体または抗原結合フラグメント。
ヒト化抗体もしくはキメラヒト−マウス抗体、またはその抗原結合フラグメントである、請求項36に記載の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
前記単離されたモノクローナル抗体が少なくとも3種の異なるCCケモカインに対して少なくとも20nMの結合親和性を有し、少なくとも1種のCCケモカインがCCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βまたはCCL5/RANTESである、請求項42に記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一つの態様は、少なくとも2種、3種、4種、5種、6種または7種以上の異なるCCケモカインと結合することができる単離されたantikine抗体またはその抗原結合フラグメントである。antikine抗体の一例は、ケモカイン受容体CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9またはCCR10と相互作用する少なくとも1種のCCケモカインを含む2種以上のCCケモカインと結合することができるものである。別の実施態様では、antikineは、CCR1、CCR2およびCCR5と相互作用するCCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTESおよびCCL2/MCP−1の少なくとも2種または3種と結合する。antikine抗体またはantikine抗体の抗原結合フラグメントの他の例には、CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCおよびCCL23/MPIF−1からなる群から選択される少なくとも3種の異なるCCケモカインと結合するものが含まれる。
【0017】
結合は、antikine抗体と、CCケモカインの少なくとも1種の決定基との接触を介して起こる。例えば、結合は、antikine抗体と、CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCまたはCCL23/MPIF−1の決定基との間で起こり得、その決定基は該CC−ケモカインのCC残基と該CCケモカインの最後のC残基との間に位置する。CCケモカインにおける隣接CC(システイン−システイン)残基と最後のシステイン残基の位置は、当技術分野で周知であり、配列表に示されるCCケモカインの配列において容易に確認し得る。
【0018】
antikine抗体およびそれらの抗原結合フラグメントはまた、CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCおよびCCL23/MPIF−1を含むCCケモカインの少なくとも1種の決定基と結合することもでき、その決定基は該CCケモカインのNループ、30’sループまたは40’sループ中に位置する。
【0019】
また、antikine抗体は、数種のCCケモカインと結合するが他のものとは結合しない能力によっても特徴付けることができる。例えば、あるantikine抗体は、CCL3/MIP−1αおよびCCL4/MIP−1βと結合し得るが、CCL5/RANTES、CCL2/MCP−1、CCL8/MCP−2またはCCL7/MCP−3とは結合し得ない。図中に名前が記載されているケモカインおよび他の生物学的に活性な分子(MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MPIF−1、HCC−1、HCC−2、HCC−4、Parc、MCP−2、MCP−3、MCP−4、エオタキシン、MDC、ELC、I−309、IL−8、SDFまたはフラクタルキンを含む)の一部または総てと結合しないだけでなく、他のケモカインとも結合しない他のものもある。例えば、MCP−1、MCP−2またはMCP−3の少なくとも1つと結合しないantikineは、本明細書において例示される。
【0020】
また、antikineは、ある種の2種以上のCCケモカインと結合するが別の種の対応するCCケモカインとは結合しない能力によっても特徴付けることができる。例えば、あるantikineは、ヒトCCL3と結合し得るが、マウスCCL3とは実質的に結合し得ない。antikine抗体の結合特異性の具体例は
図8〜
図12に示されている。
【0021】
いくつかのantikine抗体およびそれらの抗原結合フラグメントはまた、CCケモカインと対応する受容体との相互作用も阻害することができる。そのような阻害には、受容体とのケモカインの結合によって活性化される走化性または他の効果を阻害するなどの機能的効果がある可能性がある。
【0022】
antikine抗体は、CCケモカインのCC受容体結合残基内の少なくとも1つの決定基と結合し得る。CCケモカイン受容体結合と関連していると考えられているまたは知られている、受容体が結合するCCケモカインのアミノ酸残基およびセグメントは、当技術分野で報告されている。
【0023】
一般的には、CCケモカインファミリーの受容体結合に関与していると考えられるのは、N末端、Nループ、30sループ、およびジスルフィドの隣の残基およびαヘリックス中である。ケモカインの様々な機能と関連する、ケモカインの特定の構造的特徴の記載は、次の2つの刊行物を引用することにより本明細書の一部とされる。Baysal, et al., Proteins 43(2):150-60 (2001)およびKuloglu, et al., Biochemistry, 40(42):12486-96 (2001)。CCケモカインの提案された機能ドメインについてはNCBI conserved Domain Database CDD 29111参照。
【0024】
本発明者らは、特異的antikineモノクローナル抗体3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fおよび18P7Eを作製し同定した。これらのantikineは、当技術分野で公知の競合阻害アッセイを使用して、antikineが認識したCCケモカインの1種以上とのこれらのantikineモノクローナル抗体の結合を競合的に遮断する他の抗体または物質を同定するために使用し得る。また、本発明には、競合阻害剤、例えば、antikine抗体の結合を阻害する抗体なども包含され、antikineモノクローナル抗体3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fおよび18P7Eを使用してそのような競合阻害剤を検出する方法もまた包含される。
【0025】
antikine抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラヒト−マウス抗体、マウスまたは他の脊椎動物、鳥類もしくは哺乳類の抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントであってよい。
【0026】
本発明のantikine抗体の1つのタイプは、モノクローナル抗体3C12Fと同一または同様の結合特異性を有し、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL15/HCC−2およびCCL23/MPIF−1からなる群から選択される少なくとも2種、3種、4種または5種のCCケモカインと結合することができる。これらは、
図8に示されている他のケモカイン(HCC−1、PARCまたはMCP 1、2もしくは3など)を含む他のケモカインとの結合を全く示さないかまたは実質的に示さない可能性がある。このタイプの抗体は、ケモカイン受容体との結合において重要である可能性があるドメインと結合することができ、そのようなドメインには、
CCケモカインのNループ、30sループもしくは40’sループ中の決定基;
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)もしくは残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)もしくは残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)もしくは残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号81の残基9〜13(CCISY)、残基15〜22(PRSIPCSL)、残基32〜33(EC)もしくは残基55〜65(KQVQVCMRMLK)内に位置する、CCL23/MPIF−1の少なくとも1つの抗原決定基;または
配列番号79の残基8〜12(CCTSY)、残基14〜21(SQSIPCSL)、残基31〜32(EC)もしくは残基54〜64(PGVQDCMKKLK)内に位置する、CCL15/HCC−2の少なくとも1つの抗原決定基
が含まれる。
【0027】
この抗体タイプは、配列番号3、4、5、8、9もしくは10、または配列番号53、54、55、58、59もしくは60からなる群から選択される、MAb 3C12Fの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、または結合するCCケモカインとのMAb 3C12Fの結合を競合的に阻害もしくは遮断し、またはvCCIとのRANTESの結合を遮断する抗体の少なくとも1つのCDRを含んでなってよい(
図2参照)。このタイプのantikine抗体は、MAb 3C12Fの1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDR、または配列番号3、4、5、8、9および/もしくは10、または配列番号53、54、55、58、59および/もしくは60の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入または置換されているCDRを含んでよい。よって、CDR配列は、ハイブリドーマ細胞株3C12Fによって、もしくはその継代培養物によって産生される抗体のものと同一であってよく;3C12Fのantikine抗体類似体のものと対応していてよく、または結合するCCケモカインの2種以上とのMAb 3C12Fの結合を競合的に遮断もしくは阻害するantikineモノクローナル抗体のものと対応していてよい。そのような抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラヒト−マウス抗体、マウス、鳥類もしくは他の脊椎動物の抗体;またはその抗原結合フラグメントの形であってよい。
【0028】
2番目の抗体タイプは、7D1Gと同様または同一の結合特異性を有し、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL23/MPIF−1およびCCL18/PARCからなる群から選択される少なくとも2種、3種、4種、5種または6種のCCケモカインと結合する。この抗体タイプは、
図10に示されている他のケモカイン(HCC−2、エオタキシンまたはMCP 1、2、3もしくは4など)などの他のケモカインとの結合を全く示さないかまたは実質的に示さない可能性がある。
【0029】
この2番目のタイプの抗体は、ケモカインまたはCCケモカインの構造決定基と結合することができ、
MAb 7D1Gによって結合されるCCケモカインの少なくとも1種のNループもしくは40’sループ中の決定基;
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)もしくは残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)もしくは残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)もしくは残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号81の残基9〜13(CCISY)、残基15〜22(PRSIPCSL)、残基32〜33(EC)もしくは残基55〜65(KQVQVCMRMLK)内に位置する、CCL23/MPIF−1の少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号78の残基8〜12(CCFTY)、残基14〜21(TYKIPRQR)、残基31〜32(QC)もしくは残基54〜64(KWVQDYIKDMK)、CCL14/HCC−1の少なくとも1つの抗原決定基;または
配列番号82の残基10〜14(CCLVY)、残基16〜23(SWQIPQKF)、残基33〜34(QC)もしくは残基56〜66(KWVQKYISDLK)、CCL18/PARCの少なくとも1つの抗原決定基
と結合することが含まれる。
【0030】
構造上、これらの抗体は、配列番号23、24、25、28、29もしくは30からなる群から選択される、MAb 7D1Gの1つ以上のCDR、または結合するCCケモカインとのMAb 7D1Gの結合を競合的に阻害もしくは遮断する抗体由来のCDRを含んでなってよい。このタイプのantikine抗体の1つの種類は、MAb 7D1Gの1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDR、または配列番号23、24、25、28、29および/もしくは30の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入または置換されているCDRを含むであろう。よって、CDR配列は、ハイブリドーマ細胞株7D1Gによって、もしくはその継代培養物によって産生される抗体のものと同一であってよく;7D1Gのantikine抗体類似体のものと対応していてよく、または結合するCCケモカインの2種以上とのMAb 7D1Gの結合を競合的に遮断するか、もしくは阻害するantikineモノクローナル抗体のものと対応していてよい。そのような抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラヒト−マウス抗体、マウス、鳥類もしくは他の脊椎動物の抗体;またはその抗原結合フラグメントの形であってよい。
【0031】
antikine抗体の3番目のタイプは、7D12Aと同様または同一の結合特異性を有し、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTESおよびCCL23/MPIF−1からなる群から選択される少なくとも2種、3種または4種のCCケモカインと結合する。これらは、
図9に示されている他のケモカイン(CCL2/MCP−1など)を含む他のケモカインとの結合を全く示さないかまたは実質的に示さない可能性がある。
【0032】
そのような抗体産物は、前記CCケモカインの少なくとも1種のNループまたは40’sループ中の決定基と結合することができ;配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)もしくは残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)もしくは残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)もしくは残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基;または
配列番号81の残基9〜13(CCISY)、残基15〜22(PRSIPCSL)、残基32〜33(EC)もしくは残基55〜65(KQVQVCMRMLK)、CCL23/MPIF−1の少なくとも1つの抗原決定基と結合し得る。
【0033】
構造上、これらの3番目のタイプの抗体は、配列番号13、14、15、18、19もしくは20からなる群から選択される、MAb 7D12Aの少なくとも1つのCDR、または結合するCCケモカインとのMAb 7D12Aの結合を競合的に阻害する抗体由来の少なくとも1つのCDRを含んでなってよい。このタイプのantikine抗体は、MAb 7D12Aの1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDR、または配列番号13、14、15、18、19および/もしくは20の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入または置換されているCDRを含んでよい。よって、CDR配列は、ハイブリドーマ細胞株7D12Aによってもしくはその継代培養物によって産生される抗体のものと同一であってよく;7D12Aのantikine抗体類似体のものと対応していてよく、または結合するCCケモカインの2種以上とのMAb 7D12Aの結合を競合的に遮断もしくは阻害するantikineモノクローナル抗体のものと対応していてよい。そのような抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラヒト−マウス抗体、マウス、鳥類もしくは他の脊椎動物の抗体;またはその抗原結合フラグメントの形であってよい。
【0034】
antikine抗体の4番目のタイプは、18V4Fと同様または同一の結合特異性を有し、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESからなる群から選択される少なくとも2種または3種のCCケモカインと結合する。これらは、
図11に示されている他のケモカイン(CCL2/MCP−1など)を含む他のケモカインとの結合を全く示さないかまたは実質的に示さない可能性がある。そのような抗体産物は、前記CCケモカインの少なくとも1種のNループまたは40’sループ中の決定基と結合し得;配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基と結合し得る。
【0035】
構造上、この4番目の抗体タイプは、配列番号33、34、35、38、39もしくは40、または配列番号63、64、65、68、69もしくは70からなる群から選択される、MAb 18V4Fの少なくとも1つのCDR、または結合するCCケモカインとのMAb 18V4Fの結合を競合的に阻害する抗体由来の少なくとも1つのCDRを含んでなってよい。このタイプのantikine抗体は、MAb 18V4Fの1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDR、または33、34、35、38、39および/または40;または配列番号63、64、65、68、69および/もしくは70の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入または他のアミノ酸残基で置換されているCDRを含んでよい。よって、CDR配列は、ハイブリドーマ細胞株18V4Fによって、もしくはその継代培養物によって産生される抗体のものと同一であってよく;18V4Fのantikine抗体類似体のものと対応していてよく、または結合するCCケモカインの2種以上とのMAb 18V4Fの結合を競合的に遮断もしくは阻害するantikineモノクローナル抗体のものと対応していてよい。そのような抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラヒト−マウス抗体、マウス、鳥類もしくは他の脊椎動物の抗体;またはその抗原結合フラグメントの形であってよい。
【0036】
antikine抗体の5番目のタイプは、18P7Eと同様または同一の結合特異性を有し、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESからなる群から選択される少なくとも2種または3種のCCケモカインと結合する。これらは、
図12に示されている他のケモカイン(CCL2/MCP−1など)を含む他のケモカインとの結合を全く示さないかまたは実質的に示さない可能性がある。そのような抗体産物は、上述の3種のCCケモカインの少なくとも1種のNループまたは40’sループ中の決定基と結合し得る。
【0037】
そのような抗体産物は、前記CCケモカインの少なくとも1種のNループまたは40’sループ中の決定基と結合することができ;
配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE)内に位置する、CCL3/MIP−1αの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE)内に位置する、CCL4/MIP−1βの少なくとも1つの抗原決定基;
配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)内に位置する、CCL5/RANTESの少なくとも1つの抗原決定基
と結合し得る。
【0038】
構造上、この5番目の抗体タイプは、配列番号43、44、45、48、49または50からなる群から選択される、MAb 18P7Eの少なくとも1つのCDR、または結合するCCケモカインとのMAb 18P7Eの結合を競合的に阻害する抗体由来の少なくとも1つのCDRを含んでなってよい。このタイプのantikine抗体は、MAb 18P7Eの1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つのCDR、または配列番号(ID NOS:)43、44、45、48、49および/もしくは50の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入または他のアミノ酸で置換されているCDRを含んでよい。よって、CDR配列は、ハイブリドーマ細胞株18P7Eによって、もしくはその継代培養物によって産生される抗体のものと同一であってよく;18P7Eのantikine抗体類似体のものと対応していてよく、または結合するCCケモカインの2種、3種以上とのMAb 18P7Eの結合を競合的に遮断または阻害するantikineモノクローナル抗体のものと対応していてよい。そのような抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラヒト−マウス抗体、マウス、鳥類もしくは他の脊椎動物の抗体;またはその抗原結合フラグメントの形であってよい。
【0039】
3C12F、7D1G、7D12A、18V4F、18P7Eおよびそれらの類似体、または他のantikine抗体の軽鎖および重鎖の可変ドメイン配列(各CDRの配列を含む)は、抗体模倣体の薬物設計のためのコア構造として、CCケモカイン−受容体結合に干渉する競合阻害剤として、ケモカインまたはCCケモカイン抗体に対する抗イディオタイプ抗体を単離または同定するためのリガンドとして、またはCCケモカインに対する抗体に対する抗イディオタイプ抗体を誘導する免疫原として使用され得る。そのようなペプチドには、antikine抗体のCDRを含んでなる、修飾したまたは安定化させたペプチドまたは立体構造規制ペプチド(環状ペプチドまたはループペプチドなど)が含まれる。抗体のCDRを使用するペプチド設計方法は、当技術分野で公知であり、それらの方法は、Takahashi, et al., Chem. Eur. J. 6(17):3196-3203またはFeng, et al., Cell. Host. Microb. 98(2): 311-316を引用することにより本明細書の一部とされる。これらのCDRには、配列番号3〜5、8〜10、13〜15、18〜20、23〜25、28〜30、33〜35、38〜40、43〜45、48〜50、53〜55、58〜60、63〜65および68〜70のものならびに親和性成熟によって生成されるこれらのペプチド配列の類似体が含まれる。異なるCDRの組合せを、異なるCDRを含んでなる独立したペプチドの組合せとして、または単一のペプチド産物を構成する2つ以上のCDRペプチド配列のコンジュゲート、ハイブリッドまたは融合物として使用して、CCケモカインの結合もしくは活性を調整もしくは阻害し得るか、ケモカインのダイマー化もしくはマルチマー化を阻害し得るか、または有用な生理応答もしくは免疫学的応答を誘導し得る。
【0040】
本発明のantikine抗体は、以下にさらに詳細に記載されるように、antikine抗体またはその抗原結合フラグメントを担体、賦形剤またはバッファーとともに含んでなる組成物として処方し得る。
【0041】
antikine抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を作製するための方法は、特定のCCケモカインにより哺乳類(マウスなど)を連続して免疫すること、続いて、1種以上の異なるCCケモカインにより追加免疫すること、次いで、該哺乳類から、例えば、その脾細胞を骨髄腫または不死化B細胞株と融合することにより、ハイブリドーマ細胞株を作製すること、および2種以上のケモカインまたはCCケモカインと結合するantikine抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を単離することを含む。
【0042】
1種以上のCCケモカインによって媒介される疾患、障害または病態、とりわけ、antikine抗体によって認識される少なくとも2種または3種のCCケモカインによって媒介される疾患、障害または病態を治療するための方法は、それを必要とする被験体に、そのantikine抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む。その疾患、障害または病態は、炎症または自己免疫を特徴とするものであってよい。
【0043】
本発明の他の態様は、図面および以下の実施態様の詳細な説明から明らかとなる。
【0044】
「抗体」とは、所望の生物活性(特定の抗原、エピトープまたは抗原決定基に対する結合能など)を示す限り、単一モノクローナル抗体、ポリエピトープ特異性(polyepitopic specificity)を有する抗体組成物、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)
2、scFvおよびFv)を表すと広く解釈されるべきである。この用語には、無傷の抗体、全長抗体または非末端切断型抗体、ならびに抗体フラグメント、および抗体誘導体、抗体変異体および抗体類似体が含まれる。
【0045】
抗体は、以下に記載されるantikine抗体を含め、種々のアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびIgY)、ならびに様々なアイソタイプサブクラス(ヒトIgGサブクラス1、2、3および4またはIgAサブクラス1および2など)を有する場合がある。多価抗体は、多価抗原に対するそれらの親和性を特徴としているといえる。親和性は、同一エピトープの反復を含む抗原との結合を強め、ダイマー構造またはテトラマー構造と特徴付けられたケモカインもある。個々の抗体分子は、抗原結合部位が多くなるほど抗原に対するその抗体の親和性が高くなる。抗体は、様々な脊椎動物から取得または誘導することができ、それらには哺乳類および鳥類のものが含まれる。
【0046】
本明細書において「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、若干存在する可能性がある自然突然変異を除き、その集団を構成する個々の抗体が同一である)から得られた抗体を意味する。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物に対し、モノクローナル抗体は各々、抗原の単一決定基に対して向けられる。モノクローナル抗体は、それらの特異性に加え、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンが混入しないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈してはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler & Milstein, Nature, 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製してもよいし、または組換えDNA法によって作製してもよい(例えば、Cabilly, et al.、米国特許第4,816,567号参照)。
【0047】
「キメラ抗体」とは、2つの異なる起源のアミノ酸配列を含有する抗体、例えば、特定のエピトープまたは抗原と結合することが分かっているマウス抗体可変セグメントへとスプライシングされる保存されたヒト抗体セグメントを含むものを意味する。重鎖および軽鎖のアミノ酸配列各々の一部は、特定の種由来の抗体または特定のクラスに属する抗体における配列と同一であるかまたは相同であるが、それらの鎖の残りのセグメントは別の種由来の配列と相同であるかまたは同一である。一つの実施態様では、本発明は、軽鎖および重鎖両方の可変領域がある哺乳類種に由来する抗体の可変領域を模倣しており、定常部が別の種に由来する抗体の配列と相同であるキメラ抗体または抗原結合フラグメントを特徴とする。本発明の一つの実施態様では、キメラ抗体は、マウス抗体由来のCDRをヒト抗体のフレームワーク領域にグラフトすることにより作製される。よって、本発明のモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種由来の抗体または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたは相同であるが、その鎖の残りの部分が別の種由来の抗体または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたは相同である「キメラ」抗体、ならびにCCケモカインに対する結合能を保持する、そのような抗体のフラグメントが含まれる。キメラ抗体の特徴およびそれらを作製するための方法は、Cabilly, et al.、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0048】
「相補性決定領域(CDR)」は、免疫グロブリン分子の軽鎖または重鎖の可変領域の一部を形成する。抗体鎖のこれらの部分は、抗原の特定のエピトープに対する抗体の特異性を決定する領域の一部を形成し、そのエピトープと直接結合し得る抗体分子の部分を形成する。CDR3は、抗体を形成する種々のCDRの間で最大の可変性を示す。CDRは、抗体と、その抗体が認識するエピトープとの接触を媒介する。CDR配列を含んでなるかまたはCDR配列と類似している単離されたペプチドは、さらなる機能活性を示す可能性がある:Polonelli, et al., PLoS One 3:e2371 (2008)。
【0049】
「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体鎖(アクセプター免疫グロブリンまたは抗体と呼ばれる)に実質的に由来する可変領域フレームワーク残基および非ヒト抗体(例えば、マウス)に実質的に由来する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる少なくとも1つの鎖を含んでなる抗体を意味する。ヒト化抗体は、CDRグラフトに加え、典型的には、親和性を向上させおよび/または免疫原性を低下させるためにさらなる改変が行われる。「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である、完全ではないヒト抗体を包含する。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類など(ドナー抗体)に由来する超可変領域の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によって、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含んでなることがある。これらの修飾は、抗体性能をさらに精密化するために行われる。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に総てを含んでなる。その場合、超可変領域の総てまたは実質的に総てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FRの総てまたは実質的に総てがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、所望により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはアミノ酸残基の置換、欠失または付加(すなわち、突然変異)の導入によって改変されている、2種以上のCCケモカインと免疫特異的に結合するヒト免疫グロブリンのものも含んでなる。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体は誘導体である。そのようなヒト化抗体は、1つ以上の非ヒトCDRにアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含んでなる。ヒト化抗体誘導体は、非誘導体ヒト化抗体と比べて、実質的に同じ結合、より良好な結合またはより不良な結合を示す。特定の実施態様では、CDRの1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸残基が置換、欠失または付加されている(すなわち、突然変異を受けている)。ヒト化抗体を作製するための方法は、欧州特許第EP239,400号、同第EP592,106号および同第EP519,596号;国際公開第WO91/09967号および同第WO93/17105号;米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、同第5,565,332号、同第5,585,089号、同第5,766,886号および同第6,407,213号;ならびにPadlan, Molecular Immunology 28(4/5):489-498 (1991);Studnicka, et al., Protein Engineering 7(6):805-814 (1994);Roguska, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969-973 (1994);Tan, et al., , J. Immunol. 169:1119-25 (2002);Caldas, et al., Protein Eng. 13:353-60 (2000);Morea, et al., Methods 20:267-79 (2000);Baca, et al., J. Biol. Chem. 272:10678-84 (1997);Roguska, et al., Protein Eng. 9:895-904 (1996);Couto, et al., Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995);Couto, et al., Cancer Res. 55:1717-22 (1995);Sandhu, Gene 150:409-10 (1994);Pedersen, et al., J. Mol. Biol. 235:959-73 (1994);Jones, et al., Nature 321:522-525 (1986);Reichmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0050】
「変異体」または「類似体」抗体とは、本明細書において、親抗体配列における1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって「親」抗体のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なっている分子を意味する。一つの実施態様では、変異体は、親抗体の1以上の超可変領域において1以上のアミノ酸置換を含んでなる。例えば、変異体は、親抗体の1以上の超可変領域において少なくとも1つの、例えば、約1〜約10の、好ましくは約2〜約5の置換を含んでなってよい。通常、変異体は、親抗体重鎖または軽鎖の可変ドメイン配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に関する同一性または相同性は、本明細書においては、配列をアラインさせ必要に応じてギャップを導入し最大配列同一性パーセントを得た後の、親抗体の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。N末端、C末端もしくは内部の伸長、欠失または抗体配列への挿入が配列同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈してはならない。変異体は、受容体を結合する能力を保持し、好ましくは、親抗体のものより優れた特性を有する。例えば、変異体は、より強い結合親和性、向上した受容体活性化能力などを持ち得る。本明細書において開示される生物活性アッセイにより抗体の形式がその活性に影響を与えることが見い出されたため、そのような特性を解析するためには、例えば、Fab型の変異体をFab型の親抗体とまたは全長型の変異体を全長型の親抗体と比較すべきである。本明細書において特に興味深い変異体抗体は、親抗体と比べて、少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、最も好ましくは少なくとも約50倍の生物活性の増強を示すものである。
【0051】
本明細書における「親」抗体は、変異体の調製に使用されるアミノ酸配列によってコードされているものである。好ましくは、親抗体は、1つのヒトフレームワーク領域を有し、ヒト抗体定常領域を有する。例えば、親抗体は、ドナー(マウス)抗体のCDRが組み込まれたヒト抗体であってよい。
【0052】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され、分離されおよび/または回収されたものである。その自然環境の夾雑成分とは、抗体の診断的使用または治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が含まれ得る。いくつかの実施態様では、抗体は、(1)ローリー法により測定したときに95重量%を超える抗体、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することによりN末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーまたは、好ましくは銀染色を用いた還元条件または非還元条件下でのSDS−PAGEにより均質になるまで、精製される。抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のin situでの抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0053】
「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、抗体または抗体フラグメントが単離されまたは組換え生産された細胞の細胞成分から分離されているその抗体または抗体フラグメントの調製物を含む。よって、細胞物質を実質的に含まない抗体または抗体フラグメントは、異種タンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)が約30%、20%、10%または5%(乾燥重量)未満である抗体または抗体フラグメントの調製物を含む。抗体または抗体フラグメントが組換え生産される場合には、それが培養培地を実質的に含まないこともまた好ましく、すなわち、培養培地はタンパク質調製物の容量の約20%、10%または5%未満である。antikine抗体またはその抗体フラグメントが化学合成によって生産される場合には、好ましくは、それは化学的前駆体または他の化学物質を含まずに生産される、すなわち、それはそのタンパク質の合成に関与した化学的前駆体または他の化学物質から分離される。従って、そのような抗体または抗体フラグメント調製物は、対象となる抗体または抗体フラグメント以外の化学的前駆体または化合物が約30%、20%、10%、5%(乾燥重量)未満である。一つの実施態様では、本発明の抗体またはそれらのフラグメントは単離されまたは精製される。
【0054】
「antikine抗体」とは、2種以上のケモカインと結合する上記のような抗体を意味し、好ましくは、antikine抗体は3種以上のヒトCCケモカインと結合する。antikine抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってよく、好ましくは、単離または精製された単一特異性抗体またはモノクローナル抗体である。antikine抗体は、哺乳類抗体(マウス抗体またはヒト抗体など)、またはキメラ抗体またはヒト化抗体であってよい。少なくともヒト抗体は、ヒトから、またはトランスジェニック動物またはファージディスプレイプラットフォームから得てよい、Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20(4):450-9 (2008)参照。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る手法は、その文献を引用することにより本明細書の一部とされる。antikine抗体は、合成抗体、単一ドメイン抗体(ナノボディ(V
HH)またはラクダ化抗体など)、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv、イントラボディおよび抗イディオタイプ(抗Id)抗体(本発明のantikine抗体(3C12Fなど)に対する抗イディオタイプおよび抗−抗イディオタイプ抗体などを含む)、二重特異性抗体、およびCCケモカインの決定基またはエピトープと結合する上記のいずれかのフラグメントであってよい。様々な構造形態の改変抗体は、Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, et al. 編, Oxford University Press (1996)を引用することにより本明細書の一部とされる。「antikine抗体」とは、免疫グロブリン分子、および少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含有する、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメントを包含する。これらは、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびIgYを含む任意のアイソタイプのものであってよく、抗体を産生する脊椎動物(哺乳類および鳥類など)から誘導してよい。antikine抗体は動物(家畜または商業的に飼育された動物、または野生動物または人工飼育された動物など)への投与に適しているが、好ましくは、antikine抗体はヒト抗体またはヒト化抗体である。これらの動物には、伴侶動物、例えば、イヌおよびネコ;家畜、例えば、ウシ、ウマ、バッファロー、アジアスイギュウ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ラマなど;および家禽、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、ハヤブサなどが含まれる。例えば、特定のタイプの動物により発現されるCCケモカインに対する抗体を誘導することによりおよび/またはヒト化と類似の抗体工学プロセスにより、antikine抗体を生産し非ヒト使用に適合させる方法は、当業者ならば理解するであろう。
【0055】
antikine抗体またはそれらのフラグメントは、特異的なCCケモカインと結合し、他のケモカインまたはポリペプチドとは非特異的に結合しない。CCケモカインまたはCCケモカインのフラグメントと免疫特異的に結合するantikine抗体またはそれらのフラグメントは、他の抗原と交差反応する可能性がある。しかしながら、CCケモカインまたはそのフラグメントと免疫特異的に結合するantikine抗体またはフラグメントは、他の抗原と交差反応しないものを選択し得る。特異的CCケモカインと免疫特異的に結合するantikine抗体またはそれらのフラグメントは、例えば、イムノアッセイまたは当業者に公知である他の技術により特定することができる。
【0056】
「フラグメント」とは、CCケモカインまたはantikine免疫グロブリンなどの無傷のポリペプチド分子の一部を表す。「フラグメント」は、無傷の成熟CCケモカインの配列または抗体ポリペプチド鎖軽鎖または重鎖の配列などのアミノ酸配列の少なくとも5つ、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100、120、130、150、175、200または250の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含んでなるペプチドまたはポリペプチドを包含し得る。CCケモカインの場合、フラグメントは、成熟ケモカインの長さより短い分子の一部(成熟CCケモカインの少なくとも5つの連続したアミノ酸残基、少なくとも10の連続したアミノ酸残基、少なくとも15の連続したアミノ酸残基、少なくとも20の連続したアミノ酸残基、少なくとも25の連続したアミノ酸残基、少なくとも40の連続したアミノ酸残基、少なくとも50の連続したアミノ酸残基、または完全アミノ酸配列までのそれを含まない任意の中間値の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含んでなるCCケモカインフラグメントなど)であろう。antikine抗体の場合、フラグメントには、CCケモカインと特異的に結合し、かつ無傷のantikine抗体によって結合される少なくとも2種または3種のCCケモカインと結合する抗体のV
H部分および/またはV
L部分の少なくとも5つ、10、15、20、25、30、35、40、45または50の連続したアミノ酸残基、または全長までのそれを含まない連続したアミノ酸残基のアミノ酸を含んでなるペプチドまたはポリペプチドが含まれる。antikine抗体フラグメントは、単鎖フラグメント、例えば、軽鎖または重鎖または軽鎖または重鎖の一部であってよく、また、複数の鎖を有するフラグメント(FabフラグメントまたはF(ab’)
2フラグメントなど)も含む。
【0057】
「親和性成熟抗体」とは、可変領域における1以上の残基のタイプまたは位置を改変することによって増大された結合親和性および/または生物活性を有している抗体である。改変の一例は突然変異であり、その突然変異はCDRまたはフレームワーク領域のいずれかに存在し得る。親和性成熟抗体は、典型的には、単離された抗体または自然抗体またはそのフラグメントより2〜500倍増大した結合親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、受容体抗原に対してナノモルあるいはピコモルの親和性を有し得る。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手法によって作製される。Marks, J. D. et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)には、V
HおよびV
Lドメインシャッフリングによる親和性成熟について記載されている。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas, C. F. et al. Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813 (1994)、Schier, R. et al. Gene 169:147-155 (1995)、Yelton, D. E. et al. J. Immunol. 155;1994-2004 (1995)、Jackson, J. R. et al. J. Immunol. 154(7):3310-9 (1995)、およびHawkins, R. E. et al., J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0058】
「antikine抗体誘導体」とは、少なくとも2種、3種、4種以上のCCケモカインと特異的に結合するantikine抗体またはCCケモカイン結合抗体フラグメントのアミノ酸配列を含んでなり、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入によって改変されているポリペプチドを意味する。本明細書において「誘導体」とはまた、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより共有結合修飾されているantikine抗体またはantikine抗体のフラグメントも意味する。そのようなantikine抗体誘導体は、当業者に公知の技術を用いた化学修飾によって作製することができ、そのような技術には、限定されるものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが含まれる。antikine抗体誘導体は、2種以上のCCケモカインと特異的に結合する能力を保持する。
【0059】
「antikine抗体類似体」とは、公知のantikine抗体と実質的に同様のアミノ酸配列を含んでなり、公知のantikine抗体の、2種以上のCCケモカインと結合する能力を保持しているポリペプチドを意味する。類似体はまた、1つ、2つ、3つ、5つまたは10以上の非古典的アミノ酸を含んでもよい。antikine抗体ポリペプチドと同様のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、別のタンパク質との同一性を参照することによりまたはコードポリヌクレオチド配列を参照することにより説明することができ、以下として含む:
(i)公知のantikine抗体の少なくとも1つの軽鎖または重鎖、または少なくとも1つのCDRのアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)本明細書において記載されるantikine抗体またはantikine抗体フラグメントをコードするヌクレオチド配列と、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされる、少なくとも5つ、10、15、20、25、30、35、40、50、75、90、100、125または少なくとも150のアミノ酸残基を含んでなるポリペプチド。温度およびイオン強度の条件によりハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」が決定される。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、T
m55℃に相当し、例えば、5×SSC、0.1%SDS、0.25%ミルク、ホルムアミドなし;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDSが挙げられる。中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より高いT
m、例えば、40%ホルムアミド、5×または6×SSC使用に相当し、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、最も高いT
m、例えば、50%ホルムアミド、0.1×SSCに相当する;および
(iii)公知のantikine抗体またはantikine抗体フラグメントをコードするヌクレオチド配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド。本明細書において記載されるantikine抗体またはantikine抗体フラグメントと同様の構造を有するポリペプチドとは、公知のantikine抗体またはそのフラグメントと同様の二次構造、三次構造または四次構造を有するポリペプチドを意味する。ポリペプチドおよびタンパク質の構造は、当業者に公知の方法によって決定することができ、そのような方法には、限定されるものではないが、X線結晶学、核磁気共鳴および結晶電子顕微鏡検査が含まれる。
【0060】
「超可変領域」とは、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、重鎖および軽鎖の可変ドメインにおける「相補性決定領域」または「CDR」のアミノ酸残基;Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)および/または重鎖および軽鎖の可変ドメインにおける「超可変ループ」のアミノ酸残基;Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)を含んでなる。「フレームワーク領域」または「FR」の残基は、本明細書において定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。抗体の構造的特徴および抗体構造を決定または解析するための方法は、当業者に周知であり、Kabat, 同上, Chothia, et al., 同上;Deret, et al., Comput. Appl. Biosci. 11(4):435-9 (1995);Martin, Protein 25(1):130-3 (1996)およびAbhinandan, et al., Mol. Immunol. 45(14):3832-9 (2008);およびAbhinandan, et al., J. Mol. Biol. 369(3):852-62 (2007)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0061】
「CC−ケモカイン」とは、4つの保存されたシステイン残基を含有する走化性サイトカインのファミリー由来のポリペプチドを意味し、それらの保存システイン残基の最初の2つは、例えば、Van Coillie, et al., Cytokine & Growth Factor Rev. 10:61-86 (1999)によって記載されているように隣接している。CCケモカインはまた、β−ケモカインとしても知られている。これらの隣接システイン−システイン(cys−cysまたはC−C)残基に基づいて、β−ケモカインは「CC」ケモカインとして知られており、ここで、「CC」は隣接システイン残基を示す。CCケモカインの例は、CCR1およびCCR5との結合するものであり、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESが含まれる。CCケモカインは哺乳類および鳥類に存在する。ヒト型またはマウス型の特定のケモカインに用いられる用語、例えば、ヒトCCL3/MIP−1αは、別の種における対応する分子、例えば、「マウスMIP−1α」または「ウシMIP−1α」を同定するために用いられ得るが、言及されている種における類似している、構造的に同様の分子を意味すると理解されるべきである。哺乳類種および鳥類種の間で類似しているケモカインは、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%、またはこの範囲内の任意の中間値の配列同一性を有し、同じまたは同様の機能的免疫学的活性を示し得る。
【0062】
脊椎動物CCケモカイン(哺乳類および鳥類のものを含む)の配列は、NCBIデータベースを、特に、そのデータベースにおいて最終更新された受託番号(最終アクセス2010年8月9日)によって特定される配列に関連して、引用することにより、またFernandez & Lolis, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 42:469 (2002)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0063】
ヒトケモカインCCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CCL5/RANTES、CCL14/HCC−1、CCL15/HCC−2、CCL18/PARCおよびCCL23/MPIF−1などのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの配列の具体的な受託番号を表4に示している。各々は、とりわけ、表4に記載されるカタログ、供給業者またはNCBI受託番号を引用することにより本明細書の一部とされる。これらのケモカインは、表4に記載される供給業者から市販されている。
【0064】
本明細書において「CCケモカイン決定基」とは、抗体の抗原結合残基に接触するCCケモカインの部分を意味する。この用語は、CCケモカイン上のantikine抗体によって認識される通常の線状エピトープだけでなく非線状エピトープを含む立体構造エピトープとの両方を包含する。antikine抗体によって結合されるかまたはその抗原結合アミノ酸残基と直接接触するCCケモカインの1以上の部分がその決定基である。CCケモカインの抗原決定基の除去、置換、破壊または変性により、CCケモカインに対するantikine抗体の結合能は低下または消滅し得る。抗体結合エピトープを決定するための方法は、Ladner, Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 24:1-30 (2007)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって示されているように当技術分野で周知である。CCケモカイン決定基には、ケモカイン受容体(例えば、CCR1またはCCR5)との結合に関与するセグメントまたはドメイン(そのNループ、β−1鎖、β−2鎖およびβ−3鎖、30’sループ、40’sループおよび50’sループならびにそのC末端のヘリックスセグメントなど)が含まれ、これらの決定基は、Fernandez & Lolis, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 42:469 (2002)、Viola, et al., Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 48:171およびPakianathan, et al., Biochem. 36(32):9642 (1997)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0065】
CCケモカイン決定基はまた、病原体由来のタンパク質の結合によっても定義され(ワクシニアウイルスのvCCIによって結合されるCCケモカイン決定基など)、これらの決定基は、Zhang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 103(38):13985-13990 (2006)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0066】
「結合する」とは、2つの異なる物質間での化学的または物理的な接触または相互作用を意味する。これには、antikine抗体と対応する決定基(CCケモカイン分子上のエピトープなど)との間の会合が含まれる。そのような接触または相互作用は、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水結合または他の公知のタイプの分子間結合の1以上によるものであってよい。結合は、2分子間での(例えば、リガンドとその対応する受容体との間での)直接接触、または介在部分を通じての間接接触(リンカーまたは二価もしくは多価部分を介した共有結合または非共有結合など)を含み得る。
【0067】
「結合親和性」は、抗体と抗原の結合と解離の速度定数間の比率である親和性定数Kaによって表される。IgG抗体に対する典型的な親和性は10
−5〜10
−9モル/Lである。抗体親和性は、当技術分野で公知の多くの種々の技術によって測定され、そのような技術には、平衡透析、表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))および結合平衡除外法(KinExA(登録商標))が含まれる。結合抗原および遊離抗原と抗体親和性の関係は、スキャッチャード方程式、r/c=Kn−Kr(式中、r=[結合抗原]の[総抗体量]に対する比率、c=[遊離抗原]、K=親和性、n=1抗体分子当たりの結合部位数(結合価)によって表される。総ての抗体が抗原に対して同じ親和性を有する(例えば、モノクローナル抗体)ならば、rに対してr/cをプロットすると傾き−K、nにほぼ等しいr切片の直線が得られる。抗体が異種である(例えば、ポリクローナル)ならば、rに対してr/cをプロットすると曲線が得られ;結合部位の半分が結合している(r=1)場合には曲線の傾きによって平均親和性を決定することができる。
【0068】
「CCケモカインと特異的に結合する」という表現は、抗体または抗体フラグメントの特定のCCケモカインまたはCCケモカインセットとのバックグラウンドを上回る相互作用を表すものであって、他のケモカインとの相互作用を表すものではない。CCケモカインとしては、限定されるものではないが、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESが含まれ、CCケモカインセグメントまたはドメインの例としては、そのケモカイン受容体結合残基、そのNループ、β−1鎖、β−2鎖およびβ−3鎖、30’sループ、40’sループおよび50’sループならびにそのC末端のヘリックスセグメントが挙げられる。CCケモカインまたはそのドメインまたはセグメントの1つと特異的に結合する抗体は、例えば、当技術分野で公知のイムノアッセイ、表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))または他のアッセイにより測定されたときに他の抗原とより低い親和性で結合し得る。例えば、同じ条件下同じ濃度で比較したときに別の抗体または対照抗体と比べて特定のCCケモカインと結合する能力が4倍以上のantikine抗体は、CCケモカインと特異的に結合すると考えられよう。しかしながら、結合の量または親和性の有意差を立証する他の比較結合基準を用いてよく、これらの基準には、antikine抗体について2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍または1000倍多い結合量、または2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、100倍または少なくとも1,000倍高い結合親和性が含まれるであろう。
【0069】
2種、3種、4種、5種以上のCCケモカインと特異的に結合する抗体またはフラグメントは、他の非ケモカイン抗原または非CCケモカインと交差反応する必要はない。CCケモカインまたはそれらのフラグメントと特異的に結合するantikine抗体またはフラグメントは、イムノアッセイ、BIAcoreまたは他の当業者に公知の技術により同定することができる。抗体またはそのフラグメントは、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素免疫測定法(ELISA)などの実験技術を用いて測定されたときに、任意の交差反応性抗原に対するよりも高い親和性を有するCCケモカイン抗原またはそのフラグメントと特異的に結合する。抗体特異性に関する考察については、例えば、Paul, ed., Fundamental Immunology, Second Edition, Raven Press, New York (1989)、332〜336頁参照。
【0070】
「阻害濃度」とは、対照と比べてCCケモカイン活性を、例えば、5%、10%、20%、30%、50%、80%、90%、95%、99%または最大100%低下させる抗体(antikine抗体またはそのCCケモカイン結合フラグメントなど)の濃度を意味する。CCケモカイン活性は、in vivoまたはin vitroで測定することができ、それにはCCケモカイン活性(走化性など)のアッセイが含まれる。そのようなアッセイは、カルシウムフラックスまたはインテグリン活性化を含む。antikine抗体またはそのCC−ケモカイン結合フラグメント、ならびに対照抗体(CCケモカインと結合しないものまたは単一種のケモカインと結合するものなど)の調整作用は、in vivo動物モデルでも測定することができ、それには免疫現象(炎症および自己免疫など)のCCケモカインによる活性化を測定するものが含まれる。ケモカイン活性の阻害とは、阻害剤の存在下でケモカインの少なくとも1つの活性を、その阻害剤の不在下でのその活性と比べて、相対的に低下させることを意味する。阻害は、例えば、ケモカイン上の活性部位との抗体結合による、またはケモカインの効果的な除去、固体化または不活性をもたらす結合による、ケモカイン活性の拮抗作用または中和を含み得る。「走化性阻害」とは、抗体またはその抗原結合フラグメントの不在下で観察される走化活性と比べての、抗体またはその抗原結合フラグメントの存在下での細胞走化活性の相対量の低下を意味する。特定の細胞種(種々の白血球細胞種を含む)の走化性阻害を測定する周知の方法が利用可能であり、それらの方法は、Chemokine Protocols, Meth. in Mol. Biol. 138 (2000), Humana Press, Eds. AEI Proudfoot, TNC Wells, and CA Powerを引用することにより本明細書の一部とされる。
【0071】
「単離された」または「精製された」産物または成分は、産物または成分が得られる細胞源または組織源由来の細胞物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。単離または精製された成分、分子または他の物質(ペプチド、ポリペプチド、抗体、ケモカイン、ポリ核酸または細胞を含む)は、その通常の環境または自然環境または固有の環境から取り出された、またはそのような環境から切り離して合成されたものである。単離または精製された産物または成分はまた、望まれていない生物的夾雑物質を含む、または、合成の場合には、その合成と関連している基質または副産物による、関連混合物または成分から物理的にまたは化学的に取り出してよくまたは分離してもよい。精製は、他の成分の1%、5%、10%、50%、75%、90%、95%または100%の除去を含む任意の程度に達してよい。単離は、抗体の場合には、血液または血清からの取り出し、またはモノクローナル抗体では、腹水または組織培養液からの取り出しとなり得る。
【0072】
「核酸」および「ヌクレオチド配列」とは、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNA分子およびRNA分子の組合せまたはハイブリッドDNA/RNA分子、およびDNA分子またはRNA分子の類似体を含む。本発明の核酸配列は、antikine抗体類似体または変異体の一部をコードし得る。そのような類似体は、例えば、ヌクレオチド類似体を用いて作製することができ、そのようなヌクレオチド類似体には、限定されるものではないが、イノシンまたはトリチル化塩基が含まれる。そのような類似体はまた、分子に有益な特性(例えば、ヌクレアーゼ耐性または細胞膜を通過する能力の向上など)を与える修飾骨格を含んでなるDNA分子またはRNA分子も含んでなることができる。核酸またはヌクレオチド配列は、一本鎖、二本鎖であってよく、一本鎖部分と二本鎖部分の両方を含んでよく、三本鎖部分を含んでよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。「単離された」核酸分子は、その核酸分子の自然源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。「単離された」核酸分子(cDNA分子など)は、組換え技術によって作製される場合には他の細胞物質または培養培地を実質的に含まず、または化学合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。一つの実施態様では、本発明の抗体またはそれらのフラグメントをコードする核酸分子は、単離または精製される。
【0073】
本明細書において「宿主細胞」とは、核酸分子でトランスフェクトされた特定の対象細胞だけでなくそのような細胞の後代または潜在的後代も意味する。そのような細胞のその後代は、継代または核酸分子の宿主細胞ゲノムへの組込みにおいて起こり得る突然変異または環境の影響により、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞と同一でないことがある。宿主細胞は、antikine抗体またはその成分の1つ、例えば、軽鎖または重鎖またはそのフラグメントを組換えにより発現させるために使用してよい。
【0074】
2つの核酸配列またはアミノ酸配列の「同一性パーセント」を決定するために、最適な比較を目的としてそれらの配列をまずアラインさせる(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列中にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中のある位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合には、それらの分子はその位置において同一である。2配列間の同一性パーセントは、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一重複位置の数/位置の総数×100%)。一つの実施態様では、それらの2つの配列は同じ長さである。2配列間の同一性パーセントの決定は、数学アルゴリズムを使用しても行うことができる。2配列の比較に利用される数学アルゴリズムの好ましい、限定されない例は、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873-5877 (1993)に記載されているように修飾されたKarlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2264-2268 (1990)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403 (1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。本発明の核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得るためには、BLASTヌクレオチド検索を、例えば、スコア=100、ワード長=12に設定されたNBLASTヌクレオチドプログラムパラメーターで行うことができる。本発明のタンパク質分子と相同のアミノ酸配列得るためには、BLASTタンパク質検索を、例えば、スコア=50、ワード長=3に設定されたXBLASTプログラムパラメーターで行うことができる。比較を目的としてギャップを含むアライメントを得るためには、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997)に記載のとおりGapped BLASTを利用することができる。あるいは、分子間の距離関係を検出する反復検索を行うために、PSI−BLASTを使用することもできる(同上)。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastプログラムを利用する場合には、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の好ましい、限定されない例は、Myers and Miller, CABIOS 4:11-17 (1988)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合には、PAM120ウエイト残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を使用することができる。2配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容してまたはギャップを許容せずに、上記のものと同様の技術を用いて決定することができる。同一性パーセントを計算する際には、典型的には、完全な一致のみを計数する。
【0075】
「保存的変化」とは、実質的に、配座的にまたは抗原的に中立である改変であって、親ペプチドまたは親ポリペプチドまたは天然ペプチドまたは天然ポリペプチドに対して、ペプチドまたはポリペプチドの変異体の三次構造に微小変化をもたらし、または変異体または類似のペプチドまたはポリペプチドの抗原決定基に微小変化をもたらす改変を意味する。ケモカインに関連しては、例えば、親ケモカインの少なくとも1つの機能(走化性の誘導、サイトカインネットワークへの参加あるいは酵素またはサイトカイン産生の誘導、または親ケモカインまたは天然ケモカインの受容体との結合のような機能を含む)を示す能力によって決定される場合、保存的変化は、得られるケモカイン変異体または類似体の特異性および/または親和性に実質的に影響を及ぼさないアミノ酸置換を含む。保存的変化は、抗体、抗体フラグメント(CDRセグメントを含む)の変異体または類似体に適用される場合、対応する非修飾抗体産物と同じエピトープまたは抗原と結合することが可能な抗体産物を生み出すアミノ酸置換を意味する。Berzofsky, Science 229:932-940 (1985)およびBowie, et al., Science 247:1306-1310 (1990)によって記載されているように、分子の配座的中立性および抗原的中立性を維持するアミノ酸置換の予測は当技術分野の技術の範囲内である。配座的および抗原的中立性を維持する可能性が最も高い置換に関する指針には、以下が含まれる、(a)疎水性アミノ酸の置換は、疎水性残基がタンパク質の内部に位置する可能性が高いことから、抗原性に影響を及ぼす可能性が低い、(b)生理化学的に同様のアミノ酸の置換は、置換アミノ酸が天然アミノ酸を構造的に模倣していることから、コンホメーションに影響を及ぼす可能性が低い、および(c)進化的に保存された配列の改変は、そのような保存によりそれらのアミノ酸配列に機能的重要性があることが示唆されるため、コンホメーションに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0076】
「組成物」または「医薬組成物または治療組成物」とは、CCケモカインによって媒介される病態、障害もしくは疾患、またはその少なくとも1つの症状の重篤度を直接もしくは間接的に軽減するか、またはCCケモカインによって媒介される病態、障害もしくは疾患、またはその少なくとも1つの症状を治療する、担体、賦形剤、またはantikine抗体またはそのCC−ケモカイン結合フラグメントまたはその他のフラグメントを含有する溶液の組合せを意味する。「薬学上許容される担体」とは、本発明の分子と適合し、医薬投与に適した、希釈液、溶媒、分散剤、エマルション、脂質二重層、リポソーム、被覆剤、防腐剤(抗菌薬または抗真菌薬を含む)、等張剤、pH緩衝液および吸収調整剤などのようなあらゆる担体および賦形剤を含む。そのような担体、崩壊剤、賦形剤および薬学上活性な物質の投与に用いる薬剤の使用は、当技術分野で周知であり、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3
rd edition, Am. Pharm. Assoc. (2000)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)参照。本発明の医薬組成物は、意図された投与経路(非経口投与、経口投与または局所投与など)との適合性を得るために一般的に処方される。
【0077】
本発明の治療組成物は、薬学上許容される担体中に本発明の少なくとも1種の抗体または抗体フラグメントを含む。「薬学上許容される担体」とは、慣例的に混合される少なくとも1種の成分であり、有効成分、生物学的製剤または薬物の投与に用いられる。担体は、当技術分野で使用されている任意の医薬品賦形剤および任意の形態の投与用ビヒクルを含んでよい。そのような組成物は、例えば、注射剤、水性懸濁液または溶液、非水性懸濁液または溶液、スプレー剤、固体および液体の経口処方物、蝋膏、ゲル、軟膏、皮内パッチ、クリーム、ローション、錠剤、カプセル剤、持続放出性処方物などであってよい。さらなる賦形剤としては、例えば、着色剤、風味マスキング剤、溶解助剤、懸濁剤、圧縮用薬剤、腸溶コーティング、持続放出助剤などが挙げられ得る。好適な投与形は当業者によって、U.S. FDA CDER Data Standards Manual C-DRG-00201, Version 08によって記載されているもの;またはFDAウェブサイトhttp://www.fda.gov/ForIndustry/DataStandards/StructuredProductLabeling/ucm162038.htm(最終アクセス2010年8月9日)に挙げられているものなどの形状から選択することができ、それら双方は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0078】
経口投与される組成物は、固体の担体または賦形剤を含めることができまたは液体またはゲルの調製物として処方してよく、食用または不活性の担体を含めてよく、カプセル剤に封入し、錠剤に圧縮しまたはトローチ剤として処方してよい。経口投与される組成物は、胃内での分解を防ぎ分子の取込みを最適にするために、時限放出性形態またはカプセル形態に調製してよい。
【0079】
注射用組成物は、当技術分野で周知の方法により処方してよく、注射用組成物には治療分子の滅菌溶液または分散液が包含され得る。そのようなものは、本発明の分子と適合する水、生理食塩水または他の緩衝液などの滅菌希釈液を通常含むであろう。注射用組成物は、単位投与量にまたは単位用量容器(バイアル、アンプルまたはシリンジなど)に調製し得る。
【0080】
慣例の緩衝液および等張剤を使用してよく、pHは、周知の薬剤(HClまたはNaOHなど)または緩衝液を使用して調整してよい。抗微生物薬または静菌薬、キレート化剤(EDTAまたはEGTAなど)および酸化防止剤および防腐剤を含めてよい。
【0081】
本発明の治療組成物は、任意の許容される投与経路によって投与してよい(局所的に、粘膜上に、経口によるまたは経腸的にまたは非経口的に投与することを含む)。これらの経路には、限定されるものではないが、局所的、経粘膜的、経口による(口内、舌下を含む)、粘膜による(結膜、鼻腔、洞、尿道、膣、腸、直腸)、経腸的、経皮、皮内、皮下(s.c.)、筋肉内、腹腔内、静脈内(i.v.)、心臓内、関節または骨内による、器官(脳、脊髄、眼、耳、肝臓、脾臓、腎臓、胆嚢、膀胱)内による、骨、軟骨または関節の組織内による、(例えば、鼻腔内、気管内、肺内または気管支内(intrabroncial))吸入による、経口的、スブッカル(subuccal)経路が含まれる。経路は、当業者によって、U.S. FDA, CDER, Data Standards Manual “Routes of Administration”, CDRG-00301, Version 004に挙げられているものから;またはhttp://www.fda.gov/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/DrugRegistrationandListing/ucm084039.htm(最終アクセス2010年8月9日)で入手可能な表2から選択することができ、それらは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0082】
「治療上有効な量」とは、CCケモカインによって媒介される病態、障害もしくは疾患の重篤度を軽減するか、またはCCケモカインによって媒介される病態、障害もしくは疾患を治療するのに、その病態、障害もしくは疾患の別の治療法の治療効力を高めるのに、または再発もしくはその病態、障害もしくは疾患、またはその症状の少なくとも1つの重症化を予防するのに十分な治療薬の量を意味する。治療上有効な量は、疾患の発生を遅らせるか、または最小限に抑えるのに十分な治療薬の量を意味し得る。また、治療上有効な量は、疾患の治療または管理において治療的有用性を提供する治療薬の量も意味し得る。さらに、治療上有効な量は、本発明の治療薬に関連して、疾患の治療または管理において治療的有用性を提供する、例えば、疾患を治療または管理するのに足りる治療抗体の治療効力を高めるのに十分な、単独でまたは他の治療法と組み合わせての治療薬の量を意味する。本発明の抗体の量に関連して用いられるその用語は、治療法を総合的に改善し、望ましくない効果を軽減もしくは回避し、または別の治療薬の治療効力を相加的に高めるか、もしくは別の治療薬と相乗作用を示す量を包含し得る。
【0083】
本明細書において用いられる「被験体」または「患者」とは、CCケモカインを発現する脊椎動物を意味し、そのような脊椎動物には、鳥類および哺乳類(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌまたはネコ)、好ましくはヒトが含まれる。被験体または患者は、antikine抗体が認識するCCケモカインのCCケモカイン活性を調整するantikine抗体の有効量による治療を必要とする存在である。
【0084】
「炎症性の病態、障害または疾患」とは、限定されるものではないが、浮腫、発熱、白血球の走化性または遊走、血管の増殖、結合組織の増殖、発赤、局所発熱、滲出、およびRobbins, The Pathological Basis of Disease, 6
th edition, Cotran, et al. (eds.), W.B. Saunders, Co. (1999)、とりわけ、第3章、第7章および第15章に記載されている他の徴候を含む、明白なまたは定量化可能な生理現象を意味する。CC−ケモカインに対するantikine抗体に関連して、この用語は、CC−ケモカイン(MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1など)もしくは他のケモカインと関連している、またはそれらのケモカインによって直接もしくは間接的に媒介される現象を意味する。
【0085】
「免疫親和性樹脂」とは、少なくとも1種の免疫学的リガンドまたは受容体が結合される固体基質を意味する。例えば、antikine抗体は、その抗原結合部位以外の領域を介して樹脂に結合され得ることにより、その抗体は、CCケモカイン上の抗原決定基に結合可能である。同様に、CCケモカインは、樹脂に機能的に結合させることができることから、CCケモカインはantikine抗体と結合可能である。免疫学的リガンドまたは受容体の固定化に有用な多くの樹脂は、当技術分野で公知であり、免疫親和性樹脂を形成するために慣用される。そのような樹脂は、免疫学的アッセイでまたは精製手法で、特定のリガンドまたは受容体によって結合される成分の解析において有用である。本発明の免疫親和性樹脂を形成するために、そのような任意の樹脂を使用してよい。
【0086】
本発明者らは、CCケモカインに対する複数種の抗体の投与に関連した先行技術の問題を解決するための手段を追求した。驚くべきことに、本発明者らは、2以上のタイプのCCケモカインと結合することができる抗体、すなわち、antikine抗体を発見した。これらのantikine抗体は、複数種のケモカインの機能の遮断に単一種の抗体しか必要としないことから、炎症性疾患に対しての単一種のケモカインまたは単一種のケモカイン受容体の阻害に改善をもたらす。本発明のantikine抗体はまた、異なる薬物動態特性を有する2種以上の抗体を投与することの欠点(各抗体に対して不便な別々の投与計画を使用することなど)も回避する。Antikineは、特異的ケモカイン抗原との結合において効果が低くFc受容体とより結合しやすい複合体を形成し、それゆえ細胞に取り込まれリソソームで分解されるという二重特異性抗体の不都合も回避する。
【0087】
本明細書において示されているように、本発明者らは、複数種のケモカインによって媒介されるヒトの炎症性の病態、障害および疾患ならびに免疫学的な病態、障害および疾患の治療を単純化することができるいくつかのantikine抗体を提供している。これらのantikine抗体は、親和性成熟および抗体ヒト化などのプロセスにより、一層効果的かつ安全なantikine抗体を作製するための構造的および機能的プロトタイプとして役立つであろう
【0088】
antikine抗体は、2種以上のCCケモカインと結合しそれらの活性を阻害する。CCケモカイン(MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよびMCP−1を含む)を対象にすることにより、本発明者らは、同じまたは異なるケモカイン受容体(CCR1、CCR2、CCR3およびCCR5を含む)を活性化する、ケモカインの調整に有用な抗体を同定した。例えば、MIP−1α、MIP−1βおよびRANTESは各々、ケモカイン受容体CCR5と結合するため、これらの3種のCCケモカインを認識するantikine抗体により、単一種のCCケモカインに対するものに比べてCCR5活性をより包括的に調整することができる。CCR5活性化は、未成熟骨髄樹状細胞、単球、Th1、T
reg、NKおよび形質細胞様樹状細胞を対象とする。同様に、MIP−1α、RANTES、MPIF−1およびHCC−1は各々、CCR1と結合し、そのCCR1活性化は単球、記憶T細胞およびNK細胞を対象とする。これらのCCR1結合するケモカインの2種以上と結合するantikine抗体は、受容体活性化をより包括的に調整する。さらに、MIP−1αおよびRANTESの両方に結合し阻害することができる抗体は、CCR1およびCCR5両方の主要なリガンドの2つを効果的に遮断するであろう。よって、本発明者らは、炎症性疾患に関係している単球およびT細胞を含む白血球において発現される異なるケモカイン受容体の主要なリガンドを阻害するantikine抗体を同定した。これらのケモカイン組合せのいずれかの阻害剤は、単一種の受容体における複数種のケモカインの機能または複数種の受容体におけるケモカイン活性の遮断に単一種の抗体しか必要としないことから、炎症性疾患に対しての単一種のケモカインの阻害(または単一種のケモカイン受容体との結合を遮断する抗体)に改善をもたらす。
【0089】
antikine抗体は、結合するケモカインに応じて異なる特異性および機能活性を有する。本発明は、様々なCC−ケモカインと、有利には、RANTES、MIP−1α、MIP−1βおよび/またはMCP−1の少なくとも2種と特異的に結合するantikine抗体を提供する。本発明はさらに、RANTESおよびMIP−1α;RANTESおよびMIP−1β;RANTESおよびMCP−1;MIP−1αおよびMIP−1β;MIP−1αおよびMCP−1;またはMIP−1βおよびMCP−1の両方と特異的に結合する抗体を提供する。同様に、本発明は、RANTES、MIP−1α、MIP−1βおよび/またはMCP−1の3種または4種とだけでなく他の密接に関連するCC−ケモカインとも結合するantikine抗体を提供する。
【0090】
ケモカインとの抗体または抗原結合抗体フラグメントの結合は、抗体の抗原結合部位(ABS)とケモカインの抗原決定基またはエピトープとのアミノ酸残基間の接触によって起こる。エピトープが、複数の抗原決定基、すなわち、直線的に連続したアミノ酸配列の一部ではない単一アミノ酸またはアミノ酸側基を含んでなる直鎖ペプチド配列または立体構造エピトープであり得ることは周知である。例えば、α−ヘリックスの一面に存在する残基は抗体のABSに接触し得るが、反対面の残基は接触しない。
【0091】
本発明の抗体および抗原結合抗体フラグメントは、シグナルペプチドを含まない成熟CCケモカインのN末端またはC末端の半分と結合し得る。例えば、成熟型のヒトRANTESにはシグナルペプチド残基1〜23が存在しない。よって、そのN末端部分は残基1〜35に及び、そのC末端は36〜68に及ぶであろう(配列番号73)。
【0092】
本発明の抗体および抗原結合抗体フラグメントは、CCケモカインとその受容体との結合に関連しているCCケモカイン残基と結合することによりCCケモカイン結合を遮断し得る。CCケモカインの提案された機能ドメインについてはNCBI Conserved Domain Database CDD 29111[uid];http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez(最終アクセス2010年8月9日)参照。CCケモカインの各々について以下に予測結合部位残基を示す:
CCL3/MIP−1α 配列番号71の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(SRQIPQNF)、残基34〜35(QC)または残基57〜67(EWVQKYVSDLE);
CCL4/MIP−1β 配列番号72の残基11〜15(CCFSY)、残基17〜24(ARKLPHNF)、残基34〜35(LC)または残基57〜67(SWVQEYVYDLE);
CCL5/RANTES 配列番号73の残基10〜14(CCFAY)、残基16〜23(ARPLPRAH)、残基33〜34(KC)または残基56〜66(KWVREYINSLE)。
CCL14/HCC−1 配列番号78の残基8〜12(CCFTY)、残基14〜21(TYKIPRQR)、残基31〜32(QC)または残基54〜64(KWVQDYIKDMK)。
CCL15/HCC−2 配列番号79の残基8〜12(CCTSY)、残基14〜21(SQSIPCSL)、残基31〜32(EC)または残基54〜64(PGVQDCMKKLK)。
CCL23/MPIF−1 配列番号81の残基9〜13(CCISY)、残基15〜22(PRSIPCSL)、残基32〜33(EC)または残基55〜65(KQVQVCMRMLK)。
CCL18/PARC 配列番号82の残基10〜14(CCLVY)、残基16〜23(SWQIPQKF)、残基33〜34(QC)または残基56〜66(KWVQKYISDLK)。
【0093】
そのような抗体または抗原結合フラグメントは、MCP−1、MIP−1α、MIP−1βおよびRANTESの少なくとも2種のセグメントだけでなく、該ケモカインとその受容体との結合に関与する他の関連CC−ケモカインとも結合し得る。Antikine(3C12Fなど)は、ケモカインが結合するウイルスタンパク質(vCCIなど)と同じ決定基と結合し得るか、またはそのようなウイルスタンパク質とケモカインとの結合を阻害し得る。
【0094】
CC−ケモカインRANTES、MIP−1αおよび/またはMIP−1βに結合するモノクローナル抗体3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fおよび18P7Eは、本発明者らによって作製され、特性評価された。これらの抗体は、複数種のCCケモカインの活性を同時に調整することができるヒト化抗体の開発のためおよびCCケモカインによって媒介される炎症性疾患の治療のために必要な情報(超可変領域ならびに軽鎖および重鎖CDRの構造情報を含む)を提供する。
【0095】
上の3種のMAbの超可変配列およびCDR配列は、3C12Fについては配列番号2〜5および7〜10によって示され;ヒト化3C12Fについては配列番号52〜55および57〜60によって示され;7D12Aについては配列番号12〜15および17〜20によって示され;7D1Gについては配列番号22〜25および27〜30によって示され;18V4Fについては配列番号32〜35および37〜40によって示され;ヒト化18V4Fについては配列番号62〜65および67〜70によって示され;18P7Eについては配列番号42〜45および47〜50によって示される。
【0096】
特有のantikine抗体3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fおよび18P7Eを特徴とするantikine抗体の5つの特定のタイプを開示する。加えて、ヒト化型の3C12Fおよび18V4Fも開示する。
【0097】
1番目の抗体タイプは、ハイブリドーマ細胞株3C12Fまたはその継代培養物によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を特徴とする。このモノクローナル抗体(MAb)タイプの典型的な抗体は3C12Fである。よって、このタイプには、MAb 3C12F、ならびにその類似体および誘導体(親和性成熟のプロセスによってまたはヒト化によって作製される抗体を含む)が含まれる。3C12Fタイプの抗体は、配列番号2または52によって示される重鎖可変領域または3C12F重鎖のCDR1(配列番号3または53)、CDR2(配列番号4または54)およびCDR3(配列番号5または55)の少なくとも1つを含む重鎖を含み得る。そのような抗体は、配列番号7もしくは57を含んでなるか、または配列番号8もしくは58のCDR1、配列番号9もしくは59のとおりのCDR2、および配列番号10もしくは60によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域を含むことができる。配列番号2〜5および7〜10は、非ヒト化3C12Fを表し、一方、配列番号52〜55および57〜60はヒト化3C12Fを表す。ヒト化3C12Fは、配列番号52によって示される重鎖可変領域または3C12F重鎖のCDR1(配列番号53)、CDR2(配列番号54)およびCDR3(配列番号55)の少なくとも1つを含む重鎖を含む。そのような抗体は、配列番号57を含んでなるかまたは配列番号58のCDR1、配列番号59のとおりのCDR2、および配列番号60によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0098】
2番目の抗体タイプは、ハイブリドーマ細胞株7D12Aまたはその継代培養物によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を特徴とする。このモノクローナル抗体(MAb)タイプの典型的な抗体は7D12Aである。よって、このタイプには、MAb 7D12A、ならびにその類似体および誘導体(親和性成熟のプロセスによってまたはヒト化によって作製される抗体を含む)が含まれる。7D12A抗体タイプの抗体は、配列番号12によって示される重鎖可変領域または7D12A重鎖のCDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)およびCDR3(配列番号15)の少なくとも1つを含む重鎖を含み得る。また、そのような抗体は、配列番号17を含んでなるかまたは配列番号18のCDR1、配列番号19のとおりのCDR2、および配列番号20によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域も含み得る。
【0099】
3番目の抗体タイプは、ハイブリドーマ細胞株7D1Gまたはその継代培養物によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を特徴とする。このモノクローナル抗体(MAb)タイプの典型的な抗体は7D1Gである。このタイプには、MAb 7D1G、ならびにその類似体および誘導体(親和性成熟のプロセスによってまたはヒト化によって作製される抗体を含む)が含まれる。7D1Gタイプの抗体は、配列番号22によって示される重鎖可変領域または7D1G重鎖のCDR1(配列番号23)、CDR2(配列番号24)およびCDR3(配列番号25)の少なくとも1つを含む重鎖を含み得る。また、そのような抗体は、配列番号27を含んでなるかまたは配列番号28のCDR1、配列番号29のとおりのCDR2、および配列番号30によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域も含み得る。
【0100】
4番目の抗体タイプは、ハイブリドーマ細胞株18V4Fまたはその継代培養物によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を特徴とする。このモノクローナル抗体(MAb)タイプの典型的な抗体は18V4Fである。このタイプには、MAb 18V4F、ならびにその類似体および誘導体(親和性成熟のプロセスによってまたはヒト化によって作製される抗体を含む)が含まれる。18V4Fタイプの抗体は、配列番号32または62によって示される重鎖可変領域または18V4F重鎖のCDR1(配列番号33または63)、CDR2(配列番号34または64)およびCDR3(配列番号35または65)の少なくとも1つを含む重鎖を含み得る。また、そのような抗体は、配列番号37または67を含んでなるかまたは配列番号38または68のCDR1、配列番号39または69のとおりのCDR2、および配列番号40または70によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域も含み得る。配列番号32〜35および37〜40は、非ヒト化18V4Fを表し、一方、配列番号62〜65および67〜70は、ヒト化18V4Fを表す。ヒト化18V4Fは、配列番号62によって示される重鎖可変領域または18V4F重鎖のCDR1(配列番号63)、CDR2(配列番号64)およびCDR3(配列番号65)の少なくとも1つを含む重鎖を含む。そのような抗体は、配列番号67を含んでなるかまたは配列番号68のCDR1、配列番号69のとおりのCDR2、および配列番号70によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0101】
5番目の抗体タイプは、ハイブリドーマ細胞株18P7Eまたはその継代培養物によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を特徴とする。このモノクローナル抗体(MAb)タイプの典型的な抗体は18P7Eである。このタイプには、MAb 18P7E、ならびにその類似体および誘導体(親和性成熟のプロセスによってまたはヒト化によって作製される抗体を含む)が含まれる。18P7Eタイプの抗体は、配列番号42によって示される重鎖可変領域または18P7E重鎖のCDR1(配列番号43)、CDR2(配列番号44)およびCDR3(配列番号45)の少なくとも1つを含む重鎖を含み得る。また、そのような抗体は、配列番号47を含んでなるかまたは配列番号48のCDR1、配列番号49のとおりのCDR2、および配列番号50によって示されるCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖可変領域も含み得る。
【0102】
上記の、特定のタイプのantikine抗体に加えて、本発明は、3種、4種、5種以上のCC−ケモカインと結合するantikine抗体、例えば、MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよび/または他の関連CC−ケモカインと結合するantikine抗体(MAb 3C12Fおよび上記の他のものなど)を包含する。有利には、antikine抗体は、特定のCCRと結合する総てのCCケモカインに対して作製し得るか、または特定の病態、障害または疾患に関与するCCケモカインを対象とし得る。
【0103】
antikine抗体は、CCケモカインと結合するのに十分な結合親和性を有するであろう。例示的な結合親和性としては、結合するCCケモカインに対して1,000nM、900nM、800nM、400nM、200nM、150nM、100nM、75nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、1nM、0.1nM以下が挙げられる。しかしながら、図に示されるように、antikine抗体は、異なるCCケモカインに対しては異なる結合親和性を有し得る。
【0104】
適当な結合親和性を有する抗体の選択は、当業者の技術の範囲内である。多くの治療目的には、低親和性を有する抗体と比べて高親和性を有する抗体がより望ましい。例えば、受動的に投与された高親和性抗体は、低親和性抗体と比べてin vivoで抗原をより効率的に除去することが証明されている;抗体の親和性が高くなるほど生じる循環免疫複合体のレベルは低くなり糸球体機能の機能障害は少なくなった;
Steward, Antibodies: Their Structure and Function, Taylor and Francis (1984)、表4.5参照。抗体親和性決定方法ならびに低親和性抗体および高親和性抗体の特徴および機能は、その文献を引用することにより本明細書の一部とされる。一方で、抗体の中和力がその親和性に依存するだけでなく、その濃度、結合価および分子構造、ならびに投与される部位にも依存することを踏まえて、一部の用途ではより高い濃度のより低い親和性抗体が望ましいこともある。
【0105】
antikine抗体を産生させるために使用される免疫原には、単離されたCC−ケモカイン、天然CC−ケモカイン、組換えにより発現されたCC−ケモカインまたは化学合成されたCC−ケモカインの、所望によりアジュバントを含む、調製物が含まれ得る。免疫学的応答を増強するために使用される様々なアジュバントとしては、限定されるものではないが、フロイントアジュバント(完全および不完全)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、多価陰イオン、ペプチド、油性乳剤、ジニトロフェノールなど)、BCG(Bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)などのヒトアジュバント、または同様の免疫刺激薬が挙げられる。
【0106】
MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよびMCP−1タンパク質およびそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列は公知であり、例えば、利用可能な公開配列データベース(GenBankなど)においてまたは表4の受託番号を参照することにより見つけられ得る。特に断りのない限り、これらの配列の関連型は、この出願の出願日直前にこれらのデータベースに登録されているものであろう。加えて、様々なCC−ケモカイン(MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよびMCP−1を含む)の配列は公開されており、例えば、Furutani, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 159:249-255 (1989)(MCP−1)、Obaru, et al., J. Biochem. 99:885-894 (1986)(MIP−1α)、Lipes, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:9704-9708 (1988)(MIP−1β)、Schall, et al., J. Immunol. 141:1018-1025 (1988)(RANTES)において見つけられ得る。それらの文献各々の開示内容は、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。これらのケモカインの一部または総てに対立遺伝子変異体が存在することは周知である。配列番号71〜74は、免疫およびMIP−1α、MIP−1β、RANTESおよびMCP−1に対するantikine抗体のスクリーニングに使用されるヒト配列を示している。
【0107】
ポリクローナル抗体の生産では、CCケモカインの天然タンパク質、またはその合成変異体、またはCCケモカイン誘導体または2種以上のCCケモカインの組合せの注射により、様々な好適な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類)を免疫し得る。例えば、MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよびMCP−1の混合物を免疫原として使用して、これらのCCケモカインに対する免疫応答を誘導してよい。
【0108】
必要に応じて、CCケモカインに対して向けられるポリクローナル抗体分子を、哺乳類から(例えば、血液から)単離し、さらに、周知の技術(免疫グロブリン画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーおよび2種以上のCCケモカインと結合するantikine抗体を選択するための免疫アフィニティー精製など)により精製することができる。
【0109】
多くの用途では、antikine抗体をモノクローナル抗体として作製することが好ましい。連続細胞株培養による抗体分子の生産を提供する任意の技術を利用してよい。そのような技術としては、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975)参照);トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al., Immunol. Today 4:72 (1983)参照)およびヒトモノクローナル抗体を生産するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., In: Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985)参照)が挙げられる。本発明の実施にはヒトモノクローナル抗体を利用してよく、ヒトモノクローナル抗体は、Cote, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030 (1983)によって記載されているようにヒトハイブリドーマを使用して、またはエプスタインバーウイルスでヒトB細胞をin vitroで形質転換することによって(Cole, et al. In: Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985)参照)作製し得る。このパラグラフで引用された文献は総て、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0110】
モノクローナル抗体を生産するためのこれらの従来法の範囲を超えて、本発明者らは、驚くべきことに、抗原原罪の問題(ホスキンス効果)を考慮した連続免疫法により2種以上のCCケモカインを認識するantikine抗体を生産することを発見した。一連の免疫は、得られる抗体の特異性に影響を及ぼすことが見い出された。これらの方法により特定のCCケモカインと結合する抗体が生成されることが分かり、そのいくつかはCCケモカイン(RANTES/CCL5)とのワクシニアウイルスvCCIタンパク質の結合を遮断した。
【0111】
異なるケモカインによる脊椎動物、好ましくは、マウスの連続免疫は、例えば、適当なアジュバント中の第1のケモカインにより動物を免疫し、数週間後に第2のケモカインにより追加免疫し、最後に第3のケモカインにより再度追加免疫することにより行われる。しかしながら、antikine抗体は、例えば、異なる組合せで2種、3種、4種以上の異なるケモカインを使用する、複数回の免疫と追加免疫を必要とする方法によって生産され得る。タンパク質を用いたケモカイン免疫およびDNAを用いたケモカイン免疫の両方を行ってよい。DNA免疫は、当技術分野で周知であり、Antibodies: A Laboratory Manual (Eds. E. Harlow & D. Lane, 1988)を引用することにより本明細書の一部とされる。ケモカインのポリヌクレオチド配列は当技術分野で周知であり、そのような配列もまた、Yoshie, et al., Adv. Immunol. 78: 57-110 (2001)を引用することにより本明細書の一部とされる。免疫は、ケモカインのアジュバントまたはコンジュゲートおよび担体タンパク質(Antibodies: A Laboratory Manual, Eds. E. Harlow & D. Lane (1988)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されているものなど)を使用して行ってよい。好ましくは、各マウスに約500μg/kg体重または約10μgのケモカインを投与し、好ましいアジュバントは、初回免疫にはフロイントの完全アジュバントであり、以降の追加免疫には不完全フロイントアジュバントである。免疫原として用いる例示的なCCケモカインとしては、CCL2/MCP−1、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1βおよびCCL5/RANTESの少なくとも2種が挙げられる。
【0112】
連続免疫の一つの実施態様では、マウスをまず、MIP−1αにより免疫し、続いてRANTESおよび/またはMCP−1により追加免疫するか、またはCCケモカインRANTES、MIP−1α、MIP−1βおよび/またはMCP−1を任意の他の順序により免疫する。マウス血清を、ELISAによりRANTES、MIP−1α、MIP−1βおよびMCP−1との反応性について検証する。次に、適当な血清応答を示すマウスの脾臓を用いて、ハイブリドーマ産生を進める。
【0113】
ハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体は、ELISAによりCCケモカインを認識する能力について、またin vitroでの走化性アッセイまたはvCCI/ケモカイン結合アッセイのいずれかにより活性の遮断について検証することができる。この戦略を使用して、複数種のCCケモカインに結合しそれらを阻害するいくつかの特異的なモノクローナル抗体が同定された。これらの抗体を「antikine」と称した。ハイブリドーマにより産生された抗体はまた、他の機能アッセイでも試験し得る。複数種のCCケモカインと反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を、次にクローニングし、抗体生産および精製のために増加させる。抗体結合特異性を決定するためのスクリーニングアッセイは、周知であり、当技術分野で慣行されている。そのようなアッセイの包括的な考察については、Harlow, et al. (Eds.), Antibodies: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, N.Y., Chapter 6 (1988)を参照。最初の同定後、antikine抗体に、例えば、親和性成熟のプロセスによってまたはそのCDRもしくはフレームワーク配列の操作によって親和性の増大を行ってよく;またはantikine抗体をヒト化してよい。ヒト治療法に使用するためには、好ましくは、antikine抗体は、完全ヒト抗体またはヒト化抗体であり、2、3、4種以上のCCケモカインを認識するものであろう。
【0114】
一つの実施態様では、所望の特異性を有する抗体のスクリーニング方法としては、限定されるものではないが、酵素免疫測定法(ELISA)および当技術分野で公知の他の免疫を媒介する技術が挙げられる。特定の実施態様では、CC−ケモカインの特定のドメインに対して特異的な抗体の選択は、そのようなドメインを有するCC−ケモカインフラグメントと結合するハイブリドーマを生成することにより容易になる。CC−ケモカイン内の1以上のドメイン、例えば、CC−ケモカインファミリータンパク質、またはそれらの誘導体、フラグメント、類似体または相同体の保存されたドメインに対して特異的な抗体もまた本明細書において提供される。
【0115】
本発明のantikine抗体およびそれらのフラグメントは、競合的結合イムノアッセイおよび非競合的結合イムノアッセイにより、CC−ケモカイン、特に、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1および/または他のケモカインとの特異的結合についてアッセイし得る。イムノアッセイのための周知の手法は、Stites and Terr (Eds.) Basic and Clinical Immunology, 7th ed., (1991);Maggio (Ed.) Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, Fla. (1980);Tijan, Practice and Theory of Enzyme Immunoassays, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam (1985);Harlow and Lane (Eds.) Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988);Chan (Ed.), Immunoassay: A Practice Guide, Academic Press, Orlando, Fla. (1987);Price and Newman (Eds.) Principles and Practice of Immunoassays, Stockton Press, N.Y. (1991);およびNgo (Ed.) (1988) Non-isotopic Immunoassays, Plenum Press, N.Y. (1988)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0116】
抗体結合を測定するためのイムノアッセイは、競合的アッセイであってよくまたは非競合的アッセイであってよい。一般的には、抗体に関連して、競合的アッセイは、2抗体間でのリガンド結合の競合を伴う。例えば、標識MCP−1を使用して、一方の抗体がもう一方の抗体と、標識MCP−1との結合について競合することができるかどうかを評価してよい。そのアッセイは、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)のような標準的なアッセイに基づいてよい。
【0117】
あるいは、本発明の抗体およびフラグメントは、基質との結合についての非競合的アッセイにより試験してもよい。例えば、リガンド(例えば、MCP−1)がELISAプレート上に固定化されている標準的なELISAを使用してよい。試験抗体をリガンドとともにインキュベートし、結合させる。そのプレートを洗浄し、その後は、試験抗体がリガンドに結合されている場合にはその試験抗体に酵素コンジュゲート二次抗体(例えば、マウス抗ヒトFc抗体)が結合する。洗浄後、その酵素の基質を添加し、その酵素と反応させる。一般的には、色の変化によってリガンドと反応する抗体の存在が示される。試験抗体によって認識されるケモカインを識別するために、種々のCC−ケモカインについてELISAを繰り返してよい。
【0118】
イムノアッセイでは、標識されたアッセイ成分を使用する場合が多い。その標識は、様々な形式であってよく、当技術分野で周知の方法によりアッセイの所望の成分と直接または間接的に結合され得るものである。アッセイ成分に対する一般的な標識としては、放射性同位元素(
3H、
125I、
35S、
14Cおよび
32Pを含む)、蛍光団、化学発光剤および酵素が挙げられる。特定の標識の選択は、要求感度、化合物との結合の容易さ、安定性要件および利用可能な器具類次第であり、当業者ならば容易に判断できる。
【0119】
本発明の抗体がCC−ケモカイン活性、特に、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1および/または他のケモカインを阻害するかどうかを評価するためのアッセイは、走化性、細胞内カルシウムの増加などについての公知のアッセイを使用して容易に行うことができる。例えば、限定されるものではないが、ケモカイン走化性アッセイを96ウェルプラスチックチャンバーで行ってよい。ウェルはフィルターによって2つのコンパートメントに分けられる。そのフィルターは、化学勾配に応じて1つのコンパートメントから次のコンパートメントへの細胞の通過が可能なものである。試験細胞をチャンバーの1つのコンパートメント、培養培地に入れ、例えば、CC−ケモカインをもう1つのコンパートメントの培養培地に入れる。フィルターを通り抜ける細胞を計数する。他のウェルでは、CC−ケモカインを試験抗体と混合して、その抗体が細胞遊走を妨げることが可能かどうかを判定する。
【0120】
上のスクリーニング手法により同定されたantikineモノクローナル抗体のさらなる抗体操作のために、実施例7に報告されるように、それらの抗体のDNA配列を決定した。
【0121】
本発明のantikine抗体の親和性は、当技術分野で公知の方法(Raipal, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 102:8466-8471 (2005);Lippow, et al,, Nat. Biotechnol. 25:1171-1176 (2007);Wu, et al., J. Mol. Biol. 368: 652-665 (2007);Yang, et al., J. Mol. Biol. 254: 392-403 (1995);およびHuse, et al., J. Immunol. 149:3903-3913 (1992)(これらの文献各々は、抗体の親和性の成熟または増大のための方法の教示として引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されているものなど)を使用してさらに向上させてよい。本発明のantikine抗体は、200nM未満、100nMの親和性を有することができ(例えば、最初に単離されたマウス抗体3C12Fは、MIP−1αに対して49nMの親和性を有する)、親和性成熟手順の間に40nM未満、30nM、20nM、10nM、5nM、1nM、0.5nMまたは0.1nMであるように増大させることができる。モノクローナル抗体の親和性成熟に有用な手法は、当技術分野で周知であり、Antibody Engineering (Humana Press, 2004) and Phage Display, T. Clackson and H. B. Lowman, editors (Oxford University Press, 2004)を引用することにより本明細書の一部とされる。そのような手法は、キメラ型の上記antikine抗体を用いて始めることができ、そのようなキメラ型抗体は親和性成熟と別にまたは同時にヒト化することができる。その抗体の可変領域は、線状ファージの表面においてFabフラグメントとして発現され得る。突然変異誘発戦略を使用し6つのCDR内の各残基を変更して、ファージにおいて発現されるFabフラグメントのコンビナトリアルライブラリーを作製し得る。これらを、ケモカイン抗原との結合についてスクリーニングすることができ、親和性の向上について解析することができる。続いて、さらに大きな親和性向上を得るために、好ましいアミノ酸置換を組み合わせることができる。同時に、可変ドメインのフレームワーク領域内の突然変異を解析して、向上した特性を有する配列を見つけることができる。
【0122】
上に記載されるように、「変異体」または「類似体」抗体は、親抗体配列における1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換によって親抗体のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なっている。一つの実施態様では、変異体は、親抗体の1以上の超可変領域において1以上のアミノ酸置換を含んでなる。
【0123】
抗体類似体は、3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fまたは18P7Eの重鎖または軽鎖配列のCDR、超可変またはフレームワーク領域における1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ以上のアミノ酸残基を置換することによって操作し得る。同様に、そのような抗体のアイソタイプは、当技術分野で公知のアイソタイプスイッチ技術によってまたは遺伝子工学手法(CDRグラフティング、キメラ抗体形成またはヒト化など)によって変更し得る。
【0124】
類似体は、3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fまたは18P7Eタイプのモノクローナル抗体の親和性成熟プロセスによって作製し得る。類似体は、一般的に、より高い結合親和性またはより広いケモカイン結合プロフィールについて選択され、それらのプロフィールは同時に獲得し得る。例えば、ELISAまたは他の周知のアッセイによって、親抗体が結合する同じケモカインと結合するかどうかを判定することにより類似体を容易に同定し得る。類似体には、重鎖および軽鎖が、3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fまたは18P7Eの対応する重鎖および軽鎖の配列と約90%、95%、99%または100%配列同一性を共有する変異体が含まれる。3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fまたは18P7Eハイブリドーマ細胞株またはそれらの継代培養物によって産生される抗体の親和性成熟変異体を、1,000nM、800nM、400nM、200nM、100nM、75nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、1nMまたは0.1nM以下の結合親和性を有するように選択することができる。一部の類似体または変異体は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、10または最大20のアミノ酸配列修飾(欠失、挿入または置換など)を有し、類似体は、3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fまたは18P7E抗体の1以上の超可変領域またはCDRに約2つ〜10のアミノ酸置換を有し得る。
【0125】
類似体は、3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fまたは18P7E重鎖および/または軽鎖可変領域の次のCDR組合せ:CDR1およびCDR2;CDR1およびCDR3;CDR2およびCDR3;ならびにCDR1、CDR2およびCDR3の少なくとも1つを含んでなり、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1の2種以上に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに相当し得る。
【0126】
動物抗原結合可変ドメインがヒト定常ドメインと結合されているキメラ抗体は、当技術分野で周知であり、それらを作製するための方法は、Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号;Morrison, S. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984);Boulianne, G. L. et al., Nature 312:643-646 (1984);およびNeuberger, M. S. et al., Nature 314:268-270 (1985)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0127】
ヒト定常ドメインのアイソタイプは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性への関与に合わせてキメラ抗体を作製するように選択され得る(例えば、Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987);Riechmann, L. et al., Nature 332:323-327 (1988);Love et al., Methods in Enzymology 178:515-527 (1989);Bindon, et al., J. Exp. Med. 168:127-142 (1988)(これらの文献は引用することにより本明細書の一部とされる)参照。キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の組換えDNA技術によって、例えば、PCT国際出願第PCT/US86/02269号;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT国際公開第WO86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Better et al., Science 240:1041-1043 (1988)に記載されている方法を使用して作製することができる。
【0128】
本発明のantikine抗体は、公知の手法(Carter, 米国特許第6,719,971号、Almagro, et al., Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008);Pini, et al., Comb. Chem. High Throughput Screen. 5:503-510 (2002);およびWu, et al., J. Mol. Biol. 294:151-162 (1999)(これらの文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって開示されているものを含む)によってヒト化し得る。ヒト化では、ドナー動物(マウス)抗体の抗体特異性を有するが、ヒトにおいて免疫原性の低下を示しより優れたエフェクター機能を有する免疫グロブリン分子が生み出される。このプロセスは、既知antikine CDR配列を、ヒト抗体の軽鎖および重鎖可変領域フレームワーク配列内へ組み込むことを必要とする。一般的には、ヒト化抗体は、ヒト可変ドメインフレームワーク内にマウスCDRを代入することによって作製される。ヒト可変ドメインフレームワークが、マウスCDRの起源となるマウス可変フレームワークと同じまたは同様のコンホメーションをとるならば、ヒト可変ドメインフレームワークは、結果としてマウスCDRの正確な空間的配向を保持する可能性が最も高くなる。これは、CDRを得たマウス可変フレームワークドメインと高度な配列同一性を示すフレームワーク配列を有するヒト抗体由来のヒト可変ドメインを得ることにより達成される。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は、同じまたは異なるヒト抗体配列から得ることができる。そのようなヒト抗体配列は天然に存在するヒト抗体の配列であってよくまたはいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列であってよい。Kettleborough, et al., Protein Engineering 4:773-783 (1991);Kolbinger, et al., Protein Engineering 6:971-980 (1993)およびCarter, et al.、WO92/22653参照。
【0129】
マウスドナー免疫グロブリンおよび適当なヒトアクセプター免疫グロブリンの相補性決定領域が同定されれば、次の段階は、得られるヒト化抗体の特性を最適にするために、あるとすれば、これらの成分のどの残基を置換すべきかを決定することである。一般的には、マウス残基の導入はヒト体内で抗体がヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発する危険性を増大することから、ヒトアミノ酸残基とマウスのものとの置換は最小限に抑えるべきである。
【0130】
CDRコンホメーションおよび/または抗原との結合に対して考えられるそれらの影響に基づいて、置換に向けてヒト可変領域フレームワークの残基のある特定のアミノ酸が選択される。マウスCDR領域とヒト可変フレームワーク領域との不自然な並置により不自然な立体構造規制が生じ得る。その立体構造規制は、ある特定のアミノ酸残基の置換によって補正されない限り結合親和性の喪失を導く。
【0131】
置換に向けたアミノ酸残基の選択は、1つにはコンピュータモデリングによって判断される。一般的には、免疫グロブリン鎖またはそれらのドメインの解明済みの構造から出発して分子モデルが作製される。モデリングしようとする鎖は、解明済みの三次元構造の鎖またはドメインとアミノ酸配列類似性について比較され、分子モデルの構築のための出発点として最大の配列類似性を示す鎖またはドメインが選択される。モデリングに向けて少なくとも50%配列同一性を共有する鎖またはドメインが選択され、好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%以上の配列同一性を共有するものがモデリングに向けて選択される。モデリング中の免疫グロブリン鎖またはドメイン内のその時点でのアミノ酸と、出発構造内のアミノ酸との間の差を許容するように、解明済みの出発構造は修正される。修正された構造は、その後、複合免疫グロブリンへとアセンブルされる。最後に、そのモデルは、エネルギー最小化によって、そして総ての原子が互いに適当な距離内にあることおよび結合距離および結合角が化学的に許容される範囲内にあることを確認することによって洗練される。
【0132】
置換に向けたアミノ酸残基の選択はまた、1つには、特定の位置にあるアミノ酸の特徴の調査によって、または特定のアミノ酸の置換または突然変異誘発の効果の経験的観察によっても判断され得る。例えば、マウス可変領域フレームワークの残基と選択されたヒト可変領域フレームワークの残基との間であるアミノ酸が異なっている場合、そのアミノ酸が、抗原に直接非共有結合し、CDR領域に隣接し、CDR領域と別の方法で相互作用し(例えば、コンピュータモデリングによって測定した場合にはCDR領域から約3〜6Å内に存在する)、またはVL−VH界面に関与することが合理的に予想されるときには、そのヒトフレームワークのアミノ酸は、通常マウス抗体由来の等価のフレームワークのアミノ酸によって置換されるべきである。
【0133】
「抗原に直接非共有結合する」残基には、確立された化学力によって、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによって抗原のアミノ酸と直接相互作用する確率が優れている、フレームワーク領域内の位置にあるアミノ酸が含まれる。
【0134】
「CDR領域に隣接する」残基には、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列のCDRの1以上に直接隣接する位置にある、例えば、Kabat--Wu & Kabat, J. Exp. Med. 132:211-250 (1970)によって定義されているCDR--またはChothia--Chothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって定義されているCDRに直接隣接する位置にある、アミノ酸残基が含まれる。これらのアミノ酸は、特に、CDR内のアミノ酸と相互作用し、アクセプターから選択される場合には、ドナーCDRを歪ませ、親和性を低下させる可能性が高い。さらに、隣接するアミノ酸は抗原と直接相互作用する可能性があり(Amit, et al., Science 233:747-753 (1986)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる))、ドナーからのこれらのアミノ酸の選択では、元の抗体における親和性を提供する総ての抗原接触を維持することが望ましいことがある。
【0135】
「CDR領域と別の方法で相互作用する」残基には、CDR領域に影響を及ぼすのに十分な空間的配向にあることが二次構造解析により決定されているものが含まれる。「CDR領域と別の方法で相互作用する」残基は、ドナー免疫グロブリンの三次元モデル(例えば、コンピュータで作成されたモデル)を解析することによって同定され得る。典型的には元のドナー抗体の三次元モデルは、CDR外のある特定のアミノ酸がCDRに近く、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによってCDR内のアミノ酸と相互作用する確率が優れていることを示す。それらのアミノ酸位置では、アクセプター免疫グロブリンのアミノ酸よりもむしろドナー免疫グロブリンのアミノ酸が選択され得る。この基準によるアミノ酸は、一般的に、CDR内の何らかの原子から約3Å内に側鎖原子を有し、確立された化学力(上に挙げたものなど)によってCDR原子と相互作用することができる原子を含むはずである。
【0136】
CDR内のアミノ酸と相互作用することが可能なアミノ酸は、さらに別の方法によっても同定され得る。各フレームワークアミノ酸の溶媒接触可能表面積は、2通りに、すなわち:(1)無傷の抗体で、および(2)そのCDRが除去された抗体からなる仮想分子で、算出される。約10Å
2以上のこれらの数値間の有意差により、溶媒に対するフレームワークアミノ酸の接触がCDRによって少なくとも部分的に遮断され、それゆえ、そのアミノ酸がCDRと接触していることが示される。アミノ酸の溶媒接触可能表面積は、当技術分野で公知のアルゴリズム、例えば、Connolly, J. Appl. Cryst. 16:548 (1983)およびLee & Richards, J. Mol. Biol. 55:379 (1971)(これらの文献双方は引用することにより本明細書の一部とされる)を使用して、抗体の三次元モデルに基づいて算出し得る。フレームワークアミノ酸はまた、別のフレームワークアミノ酸のコンホメーションに影響を及ぼしそのアミノ酸が次にCDRと接触することによって、CDRと間接的に相互作用する場合もある。
【0137】
「VL−VH界面に関与する」残基または「パッキング残基」には、例えば、Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4592-66 (1985)またはChothia & Lesk, 前掲によって定義されているように、VLとVHとの間の界面にある残基が含まれる。一般的には、普通でないパッキング残基がヒトフレームワーク内のものと異なっている場合にはそれらはヒト化抗体において保持されるべきである。
【0138】
一般的には、上の基準を満たすアミノ酸の1つ以上が置換される。いくつかの実施態様では、上の基準を満たすアミノ酸の総てまたは大部分が置換される。特定のアミノ酸が上の基準を満たしているかどうかについて若干のあいまいさが存在する場合があり、一方でその特定の置換を有し、もう一方でその特定の置換を有していない代替の変異体免疫グロブリンが生成される。そのように生成された代替の変異体免疫グロブリンは、本明細書において記載されるアッセイのいずれかによって所望の活性について検証することができ、好ましい免疫グロブリンを選択することができる。
【0139】
通常、ヒト化抗体におけるCDR領域は、ドナー抗体の対応するCDR領域と実質的に同一であり、より通常には同一である。通常は望ましくないが、得られるヒト化免疫グロブリンの結合親和性に認め得るほどに影響を及ぼすことなくCDR残基の1以上の保存的アミノ酸置換を行うことが可能な場合もある。保存的置換には、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyrなどの組合せが意図される。
【0140】
さらなる置換候補は、その位置にあるヒト免疫グロブリンとしては普通でないまたは「稀」であるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の等価位置のアミノ酸またはより典型的なヒト免疫グロブリンの等価位置のアミノ酸で置換されていてよい。例えば、アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域内のアミノ酸がその位置としては稀であり、ドナー免疫グロブリンの対応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン配列内のその位置として一般的である場合;またはアクセプター免疫グロブリンのアミノ酸がその位置としては稀であり、ドナー免疫グロブリンの対応するアミノ酸もまた他のヒト配列と比べて稀である場合には、置換が望ましいことがある。これらの基準は、ヒトフレームワーク内の典型的でないアミノ酸によって抗体構造が破壊されないことを確実にする助けとなる。さらに、普通でないヒトアクセプターアミノ酸を、たまたまヒト抗体に典型的なドナー抗体由来アミノ酸で置換することにより、ヒト化抗体の免疫原性を低下させ得る。
【0141】
本明細書において用いられる「稀」とは、代表的な配列サンプルで約20%未満、通常には約10%未満の配列においてその位置に存在するアミノ酸を示し、本明細書において用いられる「一般的」とは、代表的なサンプルで約25%より多い、通常には約50%より多い配列において存在するアミノ酸を示す。例えば、総てのヒト軽鎖および重鎖可変領域配列は、それぞれ、相互にとりわけ相同でありかつある特定の重大な位置に同じアミノ酸を有する配列の「サブグループ」に分けられる(Wu & Kabat, 前掲)。ヒトアクセプター配列内のあるアミノ酸がヒト配列の間で「稀」であるかまたは「一般的」であるを決定する際には、多くの場合、アクセプター配列と同じサブグループのヒト配列だけを検討することが好ましいであろう。さらなる置換候補は、Chothia & Lesk, 前掲によって提案されている代替定義によればCDR領域の一部として同定されるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。
【0142】
他の置換候補は、稀なまたは普通でないドナーフレームワーク残基に対応するアクセプターフレームワーク残基である。稀なまたは普通でないドナーフレームワーク残基は、その位置においてマウス抗体として(本明細書において定義されるとおりの)稀なまたは普通でないものである。マウス抗体については、Kabatによってサブグループを決定することができ、コンセンサスと異なる残基位置を同定することができる。これらのドナー特異的な差異は、活性を高めるマウス配列内の体細胞突然変異を示している可能性がある。結合に影響を及ぼすと予測される普通でない残基は保持されるが、結合にとって重要でないと予測される残基は置換することができる。
【0143】
さらなる置換候補は、アクセプターフレームワーク領域内に存在する非生殖細胞系残基である。例えば、アクセプター抗体鎖(すなわち、ドナー抗体鎖と有意な配列同一性を共有するヒト抗体鎖)を生殖細胞系抗体鎖(同じく、ドナー鎖と有意な配列同一性を共有する)とアラインさせたときに、アクセプター鎖フレームワークと生殖細胞系鎖フレームワークとの間で一致していない残基を、生殖細胞系配列由来の対応する残基で置換することができる。
【0144】
上述した具体的なアミノ酸置換の他、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域は、それらが得られたヒト抗体のフレームワーク領域と通常は実質的に同一であり、より通常には同一である。当然、フレームワーク領域内のアミノ酸の多くは、抗体の特異性または親和性に対して直接的な寄与をほとんどなさないまたは全くなさない。よって、フレームワーク残基の多くの個々の保存的置換は、得られるヒト化免疫グロブリンの特異性または親和性の認め得るほどの変化を伴わず、許容され得る。よって、一つの実施態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列またはそのような配列のコンセンサスと少なくとも85%配列同一性を共有する。別の実施態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列またはそのような配列のコンセンサスと少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは96%、97%、98%または99%配列同一性を共有する。しかしながら、一般的には、そのような置換は望ましくない。
【0145】
いくつかの実施態様では、ヒト化抗体は、好ましくは、それらが構築されたマウス抗体のものと同等以上の、抗原に対する特異的結合親和性を示す。通常、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性の上限は、ドナー免疫グロブリンのものの3倍、4倍または5倍以内である。多くの場合、結合親和性の下限もまたドナー免疫グロブリンのものの3倍、4倍または5倍以内である。また、結合親和性は、置換が存在しないヒト化抗体(例えば、ドナーCDRおよびアクセプターフレームワーク領域を有するが、フレームワーク領域置換が存在しない抗体)のものと比較することができる。そのような場合には、抗体(置換が存在する)の結合は、非置換抗体のものよりも、好ましくは少なくとも2倍〜3倍大きく、または3倍〜4倍大きい。比較を行うために、例えば、BIAcore(登録商標)(すなわち、非標識試薬を使用する表面プラズモン共鳴)または競合的結合アッセイによって様々な抗体の活性を測定してよい。
【0146】
最初に同定されたケモカインに対する抗体の親和性を高めおよび/または炎症性疾患にも関与し得る他のCC−ケモカインまでケモカイン選択性を広げるために、標準的な親和性成熟技術(Wu, et al., J. Mol. Biol. 350: 126-144 (2005)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されているものなど)を使用し、本明細書において開示されるモノクローナル抗体の配列に基づいて、改変抗体を設計してよい。
【0147】
キメラ抗体産物、ヒト化抗体産物または改変抗体産物に対して特定の、クラスまたはアイソタイプまたはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)を選択して、選択したクラスまたはサブクラスに関して周知の特定の機能にその抗体を向けまたは適合させてよい。例えば、ヒトIgG2を選択して、抗体産物の胎盤の通過を最小限に抑えまたは被験体の免疫系の他の成分とのFc受容体相互作用を最小限に抑えることができ、サブクラスIgG4を選択して、補体を活性化する抗体産物の能力を最小限に抑えることができる。IgAアイソタイプを選択して、分泌抗体を生産することができ、ペンタマーIgM抗体産物を選択して、モノマー抗体と比べて抗体の結合を増大させることができる。抗体分子の様々なクラスおよびサブクラスの機能は、Kuby, Immunology, WH Freeman (1997)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0148】
「単鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、antikine抗体のV
HドメインおよびV
Lドメインを含んでなり、ここで、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。一般的には、Fvポリペプチドは、V
HドメインとV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含んでなり、そのリンカーによって、sFvは、抗原結合のために所望の構造を形成することが可能になる;Pl?ckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)参照。CCケモカインに対して特異的な単鎖抗体は、公知の方法(米国特許第4,946,778号(この米国特許は引用することにより本明細書の一部とされる)に開示されているものなど)によって作製し得る。
【0149】
「ダイアボディー」とは、2つの抗原結合部位を有する小抗体フラグメントを意味し、そのフラグメントは同じポリペプチド鎖(V
HおよびV
L)において軽鎖可変ドメイン(V
L)に連結された重鎖可変ドメイン(V
H)を含んでなる。短すぎて同じ鎖上で2つのドメイン間での対合ができないリンカーを使用することにより、それらのドメインを強制的に別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作出する。本発明のantikine抗体は、ダイアボディーとして処方することができ、そのようなダイアボディーは、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)を引用することにより本明細書の一部とされる手法によって作製することができる。
【0150】
「線状抗体」とは、Zapata et al. Protein Eng. 8(10): 1057-1062 (1995)において記載されている抗体を意味する。簡潔には、これらの抗体は、1対の抗原結合領域を形成するタンデムFdセグメントの対(V
H−C
H1−V
H−C
H1)を含んでなる。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。本発明のantikine抗体は、Zapata, et al.によって記載されている手法によって作製することができ、それらは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0151】
CCケモカインまたはそれらの誘導体、フラグメント、類似体または相同体に対して所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ効果的な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリーを他の従来法(Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989)によって開示されておりその文献を引用することにより本明細書の一部とされるものなど)によって構築してよい。
【0152】
下に例示される抗体の特異的な部分(それらのCDR配列およびCDRの一部を含む配列など)を使用して、抗イディオタイプ抗体を作製し得る。これらの抗体は、antikine抗体可変セグメントの1種以上のイディオタイプを認識するものであり、antikine抗体を同定しまたは精製しまたはその活性を調整するために使用することができる。そのような抗イディオタイプ抗体は、当技術分野で公知の手法によって(抗体可変ペプチド配列を免疫原性担体と結合し反復免疫することによるなど)作製することができる。そのような方法もまた、Cavenaugh, et al., Pharm. Res. 21:1480-1488 (2004)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0153】
抗イディオタイプ抗体は、別の抗体の決定基を認識する抗体(標的抗体)である。一般的には、抗イディオタイプ抗体は、標的抗体の抗原結合部位の決定基を認識する。典型的には、標的抗体はモノクローナル抗体である。抗イディオタイプ抗体は、一般的に、標的モノクローナル抗体の供給源と同じ種および遺伝子型の動物(特に、マウス)を標的モノクローナル抗体により免疫することによって調製される。免疫動物は、標的モノクローナル抗体のイディオタイプ決定基に対して免疫応答を示し、標的モノクローナル抗体のイディオタイプ決定基に対する抗体を産生する。免疫動物の抗体産生細胞(脾細胞など)を使用して、抗イディオタイプモノクローナル抗体を生成し得る。さらに、抗抗イディオタイプ抗体を生産するために、抗イディオタイプ抗体を使用して、動物を免疫し得る。これらの免疫動物を使用し、標準的な技術を用いて抗抗イディオタイプモノクローナル抗体を生成し得る。抗抗イディオタイプ抗体は、抗イディオタイプ抗体を調製するのに使用した元の標的モノクローナル抗体と同じエピトープと結合し得る。抗抗イディオタイプ抗体は、元の標的モノクローナル抗体と同じ抗原特異性を有する他のモノクローナル抗体である。
【0154】
標的抗体との抗イディオタイプ抗体の結合が標的抗体の関連抗原によって阻害されるならば、そして抗イディオタイプ抗体が標的抗体と同じ特異性を有する抗体応答を誘導するならば、抗イディオタイプ抗体は標的抗体の抗原を模倣している。そのような抗イディオタイプ抗体は、「内部イメージ抗イディオタイプ」であり、それが元の抗原であったかのように抗体応答の誘導が可能である、Bona and Kohler, Anti-idiotypic Antibodies and Internal Image in Monoclonal and Anti-idiotypic Antibodies: Probes for Receptor Structure and Function, Venter J. C., Frasser, C. M., Lindstrom, J. (Eds.), Alan R. Liss, N.Y., pp 141-149 (1984)参照。内部イメージ抗イディオタイプ抗体を組み込んだワクチンは、ウイルス、細菌および寄生生物に対する防御応答を誘導することが明らかになっている;Kennedy, et al. Science 232:220-223 (1986);McNamara, et al., Science 226:1325-1326 (1985)。内部イメージ抗イディオタイプ抗体はまた、腫瘍関連抗原に対する免疫性を誘導することもが明らかになっている;Raychauhuri, et al., J. Immunol. 137:1743-1749 (1986);Raychauhuri et al., J. Immunol. 139:3902-3910 (1987);Bhattacharya-Chatterjee et al., J. Immunol. 139:1354-1360 (1987);Bhattacharya-Chatterjee, et al., J. Immunol. 141:1398-1403 (1988)。このパラグラフで引用された文献の教示は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0155】
CCケモカインに対する抗イディオタイプ抗体は、例えば、CC−ケモカインまたはCC−ケモカインの少なくとも1つの抗原エピトープを含むそれらの免疫原性部分を含んでなる組成物の免疫原量により動物(マウスなど)を免疫することによって調製してよい。その組成物はまた、好適なアジュバントと、免疫原性を与えるのに必要な任意の担体も含んでよい。上記のように、免疫動物の細胞からCC−ケモカインを認識するモノクローナル抗体を調製してよい。次いで、CCケモカインの共通のエピトープを認識するモノクローナル抗体を選択し使用して、免疫原量の抗CC−ケモカインモノクローナル抗体を含んでなる組成物を調製する。典型的には、精製されたCC−ケモカインモノクローナルの25〜200μg用量は、好適なアジュバントにおいて十分であろう。14〜30日の投与間隔で2〜6回動物を免疫してよい。典型的には、任意の好適な投与経路(腹腔内、皮下、静脈内またはこれらの組合せなど)によって動物を免疫する。免疫期間中に標準的なイムノアッセイ方法を使用して抗イディオタイプ抗体産生をモニタリングし得る。抗体産生細胞を採取する3日前に、標的モノクローナル抗体と反応する好適な抗体力価を有する動物を、免疫原として使用されるモノクローナル抗体により再び免疫してよい。他の抗体産生細胞を選択してよいが、好ましくは、脾細胞を使用する。上記のように、抗体産生細胞を採取し骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを作製し、好適な抗イディオタイプ抗体を産生する細胞を選択する。抗抗イディオタイプ抗体は、免疫原として抗イディオタイプモノクローナル抗体を使用することにより再度免疫とハイブリドーマ作製を行うことによって産生される。
【0156】
上記のように、antikine抗体の可変セグメント(CDRセグメントまたは可変セグメントのペプチドフラグメント(3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12以上の連続したアミノ酸残基を有するフラグメントを含む)など)(とりわけ、ケモカインに対する結合活性を有するものを含む)は、自己免疫疾患の治療的処置に加えて複数の用途(ペプチド系医薬品、ワクチン、抗イディオタイプ抗体製造または免疫原などを含む)に使用し得る。本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドに対して、哺乳類において免疫応答を誘導する方法に関し、その方法は、免疫応答を誘導するのに十分なある量のポリペプチド調製物を哺乳類に投与することによる方法である。その量は、動物種、動物の大きさなどによって決まるが、当業者ならば決定することができる。
【0157】
本発明はまた、親和性成熟のプロセスを通じてキメラantikine抗体またはヒト化antikine抗体から誘導された抗体または抗体フラグメントを含む。CDR内にアミノ酸置換が確認され得るが、そのようなアミノ酸置換は、CC−ケモカインに対する抗体の親和性を大きく向上させるものであり、それゆえ、そこに含められている。親和性成熟方法は、例えば、Wu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6037-6042 (1998)において記載され、Clackson and Loman, Phage Display, Oxford University Press (2004)によって記載されている。それらの文献も各々、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0158】
抗CCケモカインantikine抗体は、(例えば、適当な生理学的サンプル内のCC−ケモカインレベルの測定に用いる、診断方法に用いる、タンパク質のイメージングに用いるなど)CC−ケモカインの局在性および/または定量化に関する当技術分野で公知の方法に使用し得る。ある特定の実施態様では、CC−ケモカインに対する抗体、または抗体由来の結合ドメインを含む、それらの誘導体、フラグメント、類似体または相同体を、薬理学上活性な化合物、薬物または治療化合物として利用する。
【0159】
抗CC−ケモカインantikine抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して、標準的な技術(アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降など)によりCC−ケモカインを単離することができる。抗CC−ケモカイン抗体により、細胞からの天然CC−ケモカインの精製および宿主細胞において発現される組換え生産されたCC−ケモカインの精製を容易にすることができる。さらに、抗CC−ケモカインpan−抗体を使用して(例えば、細胞溶解物または細胞上清中の)CC−ケモカインを検出し、CC−ケモカインの発現の存在量およびパターンを評価することができる。抗CC−ケモカインantikine抗体を診断に使用して臨床試験方法の一部として組織中のタンパク質レベルをモニタリングし、例えば、ある特定の治療計画の効力を判定することができる。抗体を検出可能な物質と結合すること(すなわち、物理的に連結すること)により検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;好適な放射性物質の例としては、
125I、
131I、
35Sおよび
3Hが挙げられる。
【0160】
加えて、本発明の抗体を、抗体とコンジュゲートし得る毒素(放射性同位元素、タンパク毒素および化学的毒素など)とコンジュゲートしてよい。そのような毒素としては、限定されるものではないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111、ホウ素−10、アクチニド、リシン、アドリアマイシン、カリケアマイシン、5−フルオロウラシル、オーリスタチンおよびマイタンシノイドが挙げられる。
【0161】
キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体ならびにそれらの抗原結合フラグメントは、典型的には、組換え発現によって生成される。場合によって定常領域と連結されている、ヒト化軽鎖および重鎖可変領域をコードする核酸を発現ベクターに挿入する。軽鎖および重鎖を同じまたは異なる発現ベクターにクローニングすることができる。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクターの制御配列と機能的に連結される。発現制御配列としては、限定されるものではないが、プロモーター(例えば、本来関連するプロモーターまたは異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメントおよび転写終結配列が挙げられる。好ましくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることが可能なベクターの真核細胞プロモーター系である。一度そのベクターが適当な宿主に組み込まれたら、ヌクレオチド配列の高レベル発現、ならびに交差反応抗体の回収および精製に好適な条件下にその宿主を維持する。
【0162】
これらの発現ベクターは、典型的には、宿主生物においてエピソームとしてまたは宿主染色体DNAの不可欠な部分として複製可能である。一般的には、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするために選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、例えば、Itakura, et al.、米国特許第4,704,362号(この米国特許は引用することにより本明細書の一部とされる)参照。大腸菌(E. coli)は、本発明のポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)のクローニングに特に有用な1つの原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主としては、バチルス属(枯草菌(Bacillus subtilus)など)および他の腸内細菌科(サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)など)、ならびに様々なシュードモナス属(Pseudomonas)種が挙げられる。これらの原核生物宿主において、宿主細胞と適合する発現制御配列(例えば、複製起点)を典型的に含む発現ベクターも作製することができる。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系またはファージλ由来のプロモーター系など、いくつもの様々な周知のプロモーターが存在する。それらのプロモーターは、典型的には、場合によってオペレーター配列とともに発現を制御し、転写および翻訳の開始および終結のためにリボソーム結合部位配列などを有する。
【0163】
他の微生物(酵母など)もまた発現に有用である。サッカロミセス属(Saccharomyces)が好ましい酵母宿主であり、好適なベクターは、必要に応じて、発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製起点、終結配列などを有する。典型的なプロモーターとしては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の糖分解酵素が挙げられる。誘導性酵母プロモーターとしては、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロムC、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素のプロモーターが挙げられる。
【0164】
微生物に加えて、哺乳類組織細胞培養物を用いて、本発明のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンをコードするポリヌクレオチドまたはそれらのフラグメント)を発現させ作製してもよい。Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)参照。真核生物細胞は、異種タンパク質(例えば、無傷の免疫グロブリン)を分泌可能な複数の好適な宿主細胞株が当技術分野で開発されたため、実際に好ましく、それらにはCHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株または形質転換B細胞またはハイブリドーマが含まれる。好ましくは、それらの細胞は非ヒトである。これらの細胞に関する発現ベクターには、発現制御配列(複製起点、プロモーター、およびエンハンサーなど)、Queen et al., Immunol. Rev. 89:49-68 (1986)、および必要なプロセッシング情報部位(リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列など)が含まれ得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。Co, et al., J. Immunol. 148:1149-1154 (1982)参照。上の文献の各々は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0165】
あるいは、例えば、Deboer, et al.、米国特許第5,741,957号、Rosen、米国特許第5,304,489号およびMeade, et al.、米国特許第5,849,992号(これらの米国特許の各々は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されているように、トランスジェニック動物のゲノムへ導入し続いてそのトランスジェニック動物の乳汁において発現させるために、抗体コード配列を導入遺伝子に組み込むことができる。好適な導入遺伝子としては、乳腺特異的遺伝子(カゼインまたはβラクトグロブリンなど)のプロモーターおよびエンハンサーと機能的に連結している軽鎖および/または重鎖のコード配列が挙げられる。
【0166】
対象となるポリヌクレオチド配列(例えば、重鎖および軽鎖コード配列またはそれらのフラグメントおよび発現制御配列)を含有するベクターは、細胞宿主のタイプに応じた周知の方法によって宿主細胞に移入することができる。例えば、原核細胞では塩化カルシウムトランスフェクションを一般的に利用し、一方、他の細胞宿主ではリン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、バイオリステック法またはウイルストランスフェクションを使用してよい。哺乳類細胞の形質転換に使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションの使用が含まれる(一般的には、Sambrook, et al.、前掲参照)。トランスジェニック動物の作製では、導入遺伝子を、受精卵母細胞に微量注入することができ、または胚幹細胞のゲノムに組み込むことができ、そのような細胞の核が除核卵母細胞に移入される。これらの方法の総ては、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2nd ed. (1989)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0167】
重鎖および軽鎖を別々の発現ベクターにクローニングする場合には、それらのベクターを共トランスフェクトして、無傷の免疫グロブリンの発現および構成を得る。一度発現されると、全抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態は、当技術分野の標準的な手法(硫安沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動および他の同様の手法(Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって開示されているものを含む)の使用によることを含む)によって精製し得る。製薬用途では、少なくとも90〜95%あるいは98〜99%の等級または純度および/または均質性(homegeneity)を有する実質的に純粋な免疫グロブリンを使用することが望ましい。
【0168】
ケモカイン結合に関与する個々の軽鎖および/または重鎖CDRを含んでなる、antikine抗体のフラグメント、または末端切断型(Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント、およびF
vフラグメント、ならびに単一抗体鎖など)を使用して、1種以上のCCケモカインに結合させ中和し得る。
【0169】
所望の効果を提供するために、antikine抗体を化学的に修飾しまたは誘導体化し得る。
【0170】
抗体コンジュゲートまたはコンジュゲート抗体は、異種タンパク質とのペプチド結合を介して結合されるantikine抗体またはそのフラグメントを使用して作製し得る。そのような実施態様では、抗体の抗原結合部分が、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1および/または他の関連CC−ケモカインに結合する。antikine抗体はまた、エフェクター部分としての酵素、毒素またはサイトカインともコンジュゲートし得る。antikine抗体はまた、付属部分(化学的タグまたは放射線学的タグ、毒素、生物学的に活性な部分またはターゲッティング部分、またはそれらの生物学的半減期または生物学的アベイラビリティーを増加する他の物質(例えば、ポリエチレングリコールまたはアルブミンとのコンジュゲーションによる)など)も含み得またはそのような付属部分とさらにコンジュゲートし得るか、または共有結合により連結し得る。本発明のantikine抗体は、Carter and Senter, Cancer J. 14: 154-169 (2008)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって開示されているものなどの付属部分を含み得またはそのような付属部分とコンジュゲートし得る。本発明の抗体および抗体産物は、Antibodies: A Laboratory Manual; Eds. E. Harlow & D. Lane, (1988)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されているものなどの固体基質または免疫親和性樹脂に固定化することができる。
【0171】
本発明の抗体および抗体フラグメントのペグ化は、例えば、次の参照文献:Focus on Growth Factors 3:4-10 (1992);EP0154316;およびEP0401384(これらの各々は引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる)に記載されているように、当技術分野で公知のペグ化反応のいずれかによって行い得る。好ましくは、ペグ化は、反応性ポリエチレングリコール(PEG)分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行われる。本発明の抗体および抗体フラグメントのペグ化に好ましい水溶性ポリマーはPEGである。本明細書において「ポリエチレングリコール」とは、他のタンパク質を誘導体化するために使用されてきたPEGのあらゆる型(モノ(C1−C10)アルコキシポリエチレングリコールまたはアリールオキシポリエチレングリコールなど)を包含するものとする。
【0172】
本発明のペグ化抗体および抗体フラグメントを調製するための方法は、一般的に、(a)その抗体または抗体フラグメントが1以上のPEG基に付着する条件下で、その抗体または抗体フラグメントをPEG(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と反応させる工程、および(b)その反応生成物を得る工程を含む。公知のパラメーターおよび所望の結果に基づいて、最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは、当業者には明らかであろう。
【0173】
ペグ化抗体および抗体フラグメントは、一般的に、本明細書において記載される抗体および抗体フラグメントの投与により軽減されまたは調整され得る病態を治療するために使用し得る。一般的には、ペグ化抗体および抗体フラグメントは、非ペグ化抗体および抗体フラグメントと比べて、半減期が増加している。ペグ化抗体および抗体フラグメントは、単独で、他の医薬組成物と併用して、または組み合わせて使用し得る。
【0174】
本発明の他の実施態様では、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、当技術分野で認められている技術を使用してアルブミンとコンジュゲートされる。
【0175】
本発明の別の実施態様では、抗体またはそれらのフラグメントは、潜在的グリコシル化部位を減少させまたはなくすように修飾される。そのような修飾抗体は、「グリコシル化」抗体と呼ばれることが多い。抗体またはその抗原結合フラグメントの結合親和性を向上させるために、抗体のグリコシル化部位を、例えば、突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発)により改変することができる。「グリコシル化部位」とは、真核細胞によって糖残基の付着位置として認識されるアミノ酸残基を意味する。炭水化物(オリゴ糖など)が付着しているアミノ酸は、典型的には、アスパラギン(N結合)残基、セリン(O結合)残基およびトレオニン(O結合)残基である。抗体または抗原結合フラグメント内の潜在的グリコシル化部位を同定するために、抗体の配列を、例えば、入手可能な公開されているデータベース(the Center for Biological Sequence Analysisにより提供されているウェブサイト(N結合型グリコシル化部位の予測についてはhttp://www.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc/およびO結合型グリコシル化部位の予測についてはhttp://www.cbs.dtu.dk/services/NetOGlyc/を参照のこと)など)を使用することにより調査する。抗体のグリコシル化部位のさらなる改変方法は、米国特許第6,350,861号および同第5,714,350号(これらの米国特許は引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0176】
本発明のさらに別の実施態様では、抗体またはそのフラグメントを、非修飾抗体と比べて少なくとも1つの定常領域によって媒介される生物学的エフェクター機能を低下させるように抗体の定常領域を修飾することによって改変することができる。本発明の抗体がFc受容体との結合の減少を示すようにそれを修飾するために、その抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを、Fc受容体(FcR)相互作用に必要な特定の領域において突然変異させることができる、例えば、Canfield, S. M. and S. L. Morrison, J. Exp. Med. 173:1483-1491 (1991);およびLund, J. et al., J. Immunol. 147:2657-266 (1991)(これらの文献総ては引用することにより本明細書の一部とされる)参照。抗体のFcR結合能の低下によって、FcR相互作用による他のエフェクター機能(オプソニン作用および食作用および抗原依存性細胞毒性など)もまた低下し得る。抗体エフェクター機能を増強または低下させるため、また血清の持続性を減少または延長させるための定常領域誘導体は、Carter, P. J., Nat. Rev. Immunol. 6:343-357 (2006)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されている。
【0177】
本発明のantikine抗体は、医薬組成物(上に記載されているものなど)中に、または貯蔵するため、保存するため、もしくは処置を必要とする被験体に抗体を投与するために使用される組成物に組み込み得る。
【0178】
上の治療用途または診断用途で使用するキットは、もう1種のantikine抗体、陽性または陰性対照抗体、antikine抗体によって結合される CCケモカイン、antikine抗体によって結合されない対照ケモカイン、ならびに他の薬理学的成分または診断成分およびそのキットの使用に関する使用説明書を含んでよい。
【0179】
本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、(CC−ケモカインの活性を調整することによる)治療目的に、CC−ケモカインを検出しまたは定量する診断目的に、そしてCC−ケモカインの精製に有用である。従って、本明細書において記載される目的のいずれかに向けられた本発明の抗体を含んでなるキットもまた、本発明の範囲内である。
【0180】
CCケモカイン、特に、MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよび/またはMCP−1は、炎症を伴う病状の一因となることが明らかになってきた。MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよび/またはMCP−1は総て、白血球、とりわけ、単球およびTリンパ球に対して強力な走化活性を有することが明らかになってきた。これらの病状には、Johnson et al., Trends Immunol. 26:268-274 (2005)(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されているものが含まれる。
【0181】
MIP−1α、MIP−1β、RANTESおよび/またはMCP−1は、単球およびTリンパ球に対して強力な走化活性を有する分子である。それらの機能が重複しており、ヒト疾患においてこれらのケモカイン4種総ての発現が増加しているとすれば、2種、3種または4種のCCケモカイン分子の遮断は、単一種のCCケモカイン単独をただ阻害することよりも強い有益な効果を有すると期待される。よって、本発明の抗体および抗体フラグメントは、これらのケモカインの活性を調整しこれらのケモカインと関連している障害の病理に影響を及ぼすのに有用である。そのようなものとして、これらの抗体およびフラグメントは、CC−ケモカイン分子の発現と関連している炎症性の病態および病状の治療用の治療組成物に有用である。これらの実施態様では、患者は、例えば、前記疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状を示すことにより、治療すべき疾患の1つを有すると見なされる。本発明の少なくとも1種の抗体またはその抗原結合フラグメントまたは本発明の少なくとも1種の抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでなる組成物は、前記疾患または障害の少なくとも1つの症状を軽減するのに十分な量で、またはMIP−1α、MIP−1β、RANTESおよび/またはMCP−1の少なくとも1つの活性を低下させるのに十分な量で投与される。
【0182】
予防および治療可能な障害。本明細書において「CCケモカイン活性が有害である障害」および「CC−ケモカイン関連障害」とは、障害に罹患している被験体において、CC−ケモカイン(MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MCP−1および他のCC−ケモカインを含む)の存在が、その障害の病理生理学またはその障害に寄与する因子のいずれかに関与しているかまたは関与している疑いがあることが明らかになってきた疾患および他の障害を含むよう意図とされている。よって、CC−ケモカイン活性が有害である障害は、CC−ケモカイン活性の阻害により、その障害の症状および/または進行が予防されまたは軽減されると期待される障害である。そのような障害は、例えば、その障害に罹患している被験体の体液中のCC−ケモカインの濃度の増加、例えば、(例えば、抗RANTES抗体を使用して検出することができる)被験体の血清、血漿、滑液、尿などのRANTES濃度の増加によって明示され得る。CC−ケモカイン活性が有害である障害には多くの例がある。特定の障害の予防または治療における本発明の抗体および抗体部分の使用については下にさらに論じる。
【0183】
関節リウマチ(RA)は、関節の滑膜表層への白血球(Tリンパ球およびBリンパ球、マクロファージおよび好中球を含む)の流入を特徴としている;Koch, Arthritis Rheum. 52: 710-721 (2005)による総説を参照。MIP−1αは、RA患者の滑液中で高レベルで見い出されており、増加したレベルは疾患の重篤度と相互に関連する。同様に、齧歯類マウスRAモデルでも関節炎の関節で高レベルのマウスMIP−1αが見い出されている。中和抗体によりコラーゲン誘発関節炎モデルでの関節炎スコアはおよそ50%低下する;Kasama, et al., J. Clin. Invest. 95: 2868-2876 (1995)。
【0184】
齧歯類のアジュバント誘発関節炎モデルではRANTESのレベルもまた関節で増加している。RANTESに対する抗体により、このモデルにおいて症状が軽減した;Barnes et al., J. Clin. Invest. 101: 2910-2919 (1998)。
【0185】
MCP−1はまた、RA患者の滑膜細胞および浸潤白血球によって産生されることも明らかになってきた。MCP−1に対する中和抗体により齧歯類関節炎モデルでの臨床スコアも低下した;Ogata, et al., J. Pathol. 182: 106-114 (1997)。
【0186】
多発性硬化症(MS)は、神経の周りのミエリン鞘の崩壊と神経組織への白血球の流入を特徴としている。MS患者の脳病変で高レベルのケモカイン(MIP−1α、RANTESおよびMCP−1を含む)が見い出されている;Sorensen, et al., J. Clin. Invest. 103: 807-815 (1999)。
【0187】
実験的自己免疫性脳炎(EAE)は、ヒトMSを厳密に模倣した疾患モデルである。中和抗体とともに示されているように、MIP−1αおよびMCP−1は病徴の誘導にも再発の発生にも関係していた;Kennedy, et al., J. Neuroimmunol. 92: 98-108 (1998)。
【0188】
繊維症には、間質性繊維性組織の増加を特徴とするいかなる病態も含まれる。CC−ケモカインは繊維形成病態と関連していることが分かっている。例えば、全身性硬化症を有する患者ではMCP−1、MIP−1αおよびMIP−1βのレベルは総て上昇しており、高レベルのCC−ケモカインはこれらの患者における肺繊維症の発症と関連していた;Hasegawa et al., Clin. Exp. Immunol. 117: 159-165 (1999)。
【0189】
アテローム性動脈硬化症は、マクロファージの高浸潤による血管の脂質沈着を特徴としている。マウスアテローム性動脈硬化症モデルではMCP−1ノックアウトマウスはマクロファージおよび脂質沈着の著しい減少を示す;Gu, et al., Mol. Cell 2: 275-281 (1998)。
【0190】
喘息患者は、肺において白血球の著しい浸潤がありCC−ケモカインレベルが増加しており、それにより気道過敏性に至る。齧歯類喘息モデルでは、MIP−1α、MCP−1またはRANTESに対する中和抗体により、この疾患に典型的な炎症および/または気道過敏性が軽減した;Lukacs, et al., J. Immunol. 158: 4398-4404 (1997)。
【0191】
上の文献において記載されている動物モデルを使用して、関連の病態、障害または疾患の治療におけるantikine抗体の効力を評価することができ、これらのモデルおよびそれらの使用の方法は上の文献を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0192】
上で強調した疾患の他にも、多くの他の病態、障害および疾患が1種以上のケモカインの活性と関連していた、これらには、限定されるものではないが、発癌性疾患、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、卒中、臓器移植、COPD、糸球体腎炎、ループス腎炎、強皮症、硬変、アルツハイマー病、CHF−虚血、冠動脈再狭窄、糖尿病性腎症/神経障害/網膜症、変形性関節症、歯周炎、酵母およびウイルスの感染、ならびに妊娠時調節異常が含まれる。CCケモカインがこれらの病理の一因となる場合、これらの症状の重篤度を軽減するためにantikine抗体を投与し得る。
【0193】
そのような方法は、一般的には、通常は薬学上許容される担体中の、ある量のantikine抗体を、それを必要とする被験体(動物またはヒトなど)に投与することを含む。antikine抗体またはその末端切断型またはフラグメントの量は、被験体において1種以上のケモカインの活性を阻害するように選択される。同様の方法を、被験体から取り出された生物学的材料(例えば、血液、骨髄、有機組織)においてまたはin vitroで維持された生物学的材料においてex vivoで行い得る。
【0194】
antikine抗体を使用して、走化性を遮断し得る。そのような方法は、antikine抗体が結合するCCケモカインを含有する培地またはこれらのCCケモカインを産生する細胞を含有する培地と、antikine抗体を混合することまたは接触させることを含む。
【0195】
診断アッセイで本発明のantikine抗体を有益に使用することができる。そのようなアッセイは、CCケモカインに対する既知の特異性を有するantikine抗体を、antikine抗体が結合する少なくとも1種のケモカインを含有すると推測される生体サンプルと接触させ、結合の量を、例えば、複合体形成の測定により、決定することを含む。antikine抗体は、遊離形態または基質に結合された形態で使用し得る。本発明はさらに、サンプル中のCC−ケモカインを検出するためのin vitroイムノアッセイを提供する。
【0196】
本発明の抗体および抗体フラグメントを使用し、様々な周知の免疫学的アッセイを使用してサンプル中のCC−ケモカインを検出し得る。前記抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降(immunoprecipitaton)、免疫アフィニティークロマトグラフィー、組織切片の免疫染色、組織サンプルでの電子顕微鏡による免疫金検出などに使用し得る。これらのアッセイおよび他のアッセイについてのプロトコールは、当技術分野で周知であり、十分当業者の理解の範囲内である。
【0197】
本発明の抗体および抗体フラグメントを使用するイムノアッセイを使用して、サンプル中のCC−ケモカインの存在および相対量を検出し得る。サンプルには、限定されるものではないが、ホモジナイズされた組織または細胞、光学顕微鏡および電子顕微鏡用の組織学的組織切片、組織または細胞のタンパク質抽出物、csf、関節液、血液、血漿、血清、粘膜分泌物、精液、膣液、涙、唾液、汗、尿、糞便などが含まれ得る。正常サンプルと比べて増加した量のCC−ケモカインの存在が、例えば、病態の存在を表すことがあり、本発明の療法による治療の必要が示され得る。場合によっては、正常サンプルと比べて減少した量のCC−ケモカインが存在することがあり、適当なCC−ケモカインまたはCC−ケモカインを模倣している内部イメージ抗体による治療を使用して、免疫機能を刺激し得る。
【0198】
いくつかの実施態様では、イムノアッセイを使用して、CC−ケモカインの精製の手助けをし得る。例えば、本発明の抗体または抗体フラグメントが基質上に固定化されている免疫親和性樹脂を使用し得る。CC−ケモカインを含有するサンプルが免疫親和性樹脂に添加され、それらの抗体はその樹脂と結合するが、一方、そのサンプルの他の成分は溶液中に残る。その樹脂を洗浄し、CC−ケモカインは、その後樹脂から溶出され、実質的に精製され単離される。好ましくは、イムノアッセイに使用される抗体は、本明細書において定義されるように、高い結合親和性を有するものであろう。
【実施例】
【0199】
次の実施例により本発明をさらに例示するが、それらの実施例は限定するものと解釈してはならない。本出願を通じて引用される総ての参照文献、特許および公開特許出願の内容、ならびに図面および配列表は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0200】
実施例1-antikine抗体を産生するハイブリドーマの作製
MIP−1α、RANTESおよびMCP−1(PeproTech)が初めに組み込まれているセットから任意の順序で3種のCC−ケモカインによりマウスを連続して免疫した。MAb 3C12Fを産生したハイブリドーマ融合物3については、MIP−1αによりマウスを初回免疫し、続いて、RANTES、次いで、MCP−1、その後、再びMCP−1により追加免疫を行った。MAb 7D12Aおよび7D1Gを産生したハイブリドーマ融合物7については、MIP−1αによりマウスを初回免疫し、続いて、MCP−1、次いで、RANTES、その後、MIP−1αおよびRANTESの組合せにより追加免疫を行った。MAb 18V4Fおよび18P7Eを産生したハイブリドーマ融合物18については、MIP−1βによりマウスを初回免疫し、続いて、MIP−1α、次いで、RANTESにより追加免疫を行い、その後、RANTESによりもう1度追加免疫を行った。
【0201】
各免疫につき、標準的な免疫プロトコールに従って10μgタンパク質を使用した、Current Protocols in Immunology, Eds. JE Coligan, et al. (2006), section 2.1参照。初回免疫は完全フロイントアジュバントにより行い、続いて、2種の異なるケモカインの3週間の間隔での追加免疫を不完全フロイントアジュバントにより行った。
【0202】
最終追加免疫の10日後、血清を採取し、Current Protocols in Immunology, 2006, Eds. JE Coligan et al., section 2.4(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されているように、ELISAによりCC−ケモカインMIP−1α、RANTES、MCP−1およびMIP−1βとの反応性について試験した。MIP−1αについては、ケモカインにより96ウェルELISAプレートを(1μg/mLに)コーティングし、1:50〜1:6400の希釈範囲の血清とともにインキュベートした。RANTES、MCP−1およびMIP−1βについては、ビオチン化ケモカイン(0.5μg/mL)をストレプトアビジンコーティングプレート(Pierce)に添加し、その後、希釈血清とともにインキュベートした。ケモカインコーティングに結合している抗体を、HRPコンジュゲート抗マウスFc二次抗体を使用して検出した。
【0203】
ELISAアッセイに用いるケモカインのビオチン化は、スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce)を使用して行った。PBS中のケモカインをおよそ2倍モル過剰のスルホ−NHS−LC−ビオチンと混合し、室温で30分間インキュベートした。Slide−a−lyzer mini Dialysis units with 3,500MW cutoff(Pierce)を使用したPBS中で一晩の透析により遊離ビオチン試薬を除去した。
【0204】
MIP−1α、RANTESおよびMCP−1を使用した初回免疫セットの血清でのELISAの結果では、MIP−1βを直接の免疫原として使用していなかったにもかかわらずMIP−1βに対する一部の応答を含む様々な応答(表1を参照のこと)を示した。数匹のマウスが3種さらには4種のケモカインに対して応答を示した。これらが、複数種のケモカインと反応する単一種の抗体を探すためのハイブリドーマ融合物の候補であった。下の表1に示されているように、免疫したマウスは複数種のCCケモカインと反応するポリクローナル血清を産生した。
【0205】
【表1】
【0206】
ハイブリドーマ融合物を得るために、少なくとも3種の対象ケモカインと著しい血清反応性を示すマウスを選択した;Antibodies: A Laboratory Manual, Eds. E. Harlow & D. Lane (1988), chapter 6参照。
【0207】
ハイブリドーマを作出するため、NS1細胞との融合のための脾臓採取の4日前および3日前に、選択したマウスをPBS中のケモカイン(各20μg)混合物により追加免疫した。脾臓から、2枚のスライドのフロスト面の間に挟んで押しつぶし、細胞を10mL RPMI中に収集することによって、単一の細胞懸濁液を作製した。細胞を70μmナイロン濾過器に通し、10mLの追加RPMIで洗い流し、300×gで5分間ペレット化した。細胞を洗浄し、あと2回遠心分離し、その後、計数した。脾細胞をNS1細胞(ATCC)と5:1 脾臓:NS1の比率で合わせ、次いで、ペレット化した。ペレット化した細胞に1mLの50%PEGをかき混ぜながら1分かけて滴加し、その後、混合物をさらに1分間かき混ぜた。さらに1mLのRPMIをかき混ぜながら1分かけて添加し、次いで、さらに3mLのRPMIをかき混ぜながら1分かけて添加し、次いで、さらに16mLのRPMIをかき混ぜながら2分かけて添加した。細胞を300×gで10分間ペレット化し、800mLのハイブリドーマ選択培地に再懸濁した。細胞を2時間休ませ、次いで、200μL/ウェルで40の96ウェルプレート上に塗布した。プレートを37℃のインキュベーターに入れ、それから8〜10日にわたって2〜3日おきに、培地容量の半分を除去し交換することにより供給した。あるいは、CloneDetect(Genetix)および4μg/mLのAlexa488タグ付きMIP−1αを含有するメチルセルロース系半固形培地CloneMatrix(Genetix)に融合細胞を懸濁し、シングルウェル10cmプレート(Genetix)に入れた。
【0208】
実施例2-antikine抗体の同定
実施例1で得られたハイブリドーマ上清中の抗体を(上に記載した血清試験と同様の)ELISAによりMIP−1α、RANTES、MCP−1およびMIP−1βを認識するそれらの能力について試験した。最初のハイブリドーマ上清のELISA結果を下の表2に示している。2種以上のケモカインと、バックグラウンドに対して少なくとも4倍の反応性を示した融合物ウェルの細胞をさらなる試験のために24ウェルプレートに増加させた。少なくとも3種のケモカインと反応したウェルの細胞を制限希釈によりまたは少なくとも2倍の連続希釈によりクローニングした。クローンプレート上清を再びELISAにより試験して、複数種のケモカインに対して反応性を有する抗体を産生した各クローンを同定した。陽性のウェルは、目視検査によりクローン性であると確認された。
【0209】
また、半固形培地でコロニーとして増殖させたハイブリドーマを16日後にClonePixFL(Genetix)を使用して増殖および蛍光ケモカイン結合について解析し、最良のコロニーを96ウェルプレートに選び入れた。ハイブリドーマクローンの抗体含有上清を4日後、血清解析について上に記載したように、ELISAによりMIP−1α(直接コーティングとビオチン化の両方を行う)、RANTESおよびMIP−1βとの反応性について解析した。クローン18V4Fおよび18P7Eは3種のCC−ケモカイン総てと著しい反応性を示した。これらを連続希釈により再びクローニングしてクローン性を確認し、ELISAにより再び試験してマルチケモカイン反応性(multi-chemokine reactivity)を示すantikine抗体の産生を確認した。
【0210】
【表2】
【0211】
実施例3:antikine抗体のケモカイン結合特異性の特性評価
単離されたantikine抗体のケモカイン結合特異性についてのさらに詳細な解析を、MSD(メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery))アッセイを使用して行った。これは、抗体スクリーニング中に行われるELISAアッセイとよく似ているが、SULFO−TAG試薬の電気化学発光検出を利用する。この場合、ケモカインの選択対象によりMSD 96ウェルマルチアレイプレート(MA2400)を1μg/mLでコーティングする。antikine抗体を3μg/mL(精製された抗体3C12F、7D12A、7D1G、18V4F)でまたは非定量ハイブリドーマ抗体含有上清(18P7E)として添加し、SULFO−TAG抗マウス抗体(1μg/mLで使用)により検出する。MSD sector imager 2400でプレートを読み取る。図面中点線で示されるバックグラウンドレベルは、非反応性タンパク質であるウシ血清アルブミン(BSA)との結合に基づくものである。
【0212】
実施例4:antikine抗体の機能活性の調査
実施例2で得られた、増加させた融合物ウェルの上清を、対象ケモカインによって媒介される走化性を遮断する能力について試験した。これは、in vitroで、CCR2形質転換体(MCP−1に対する受容体)またはCCR5形質転換体(MIP−1α、RANTESおよびMIP−1βに対する受容体)を使用して96ウェルトランスウェルプレート(Millipore)で試験した。各トランスウェルチャンバーの下部ウェルで、75μLのケモカイン溶液(2%FBS含有RPMI中10ng/mL)を75μLのハイブリドーマ上清と混合した。各チャンバーの上部ウェルで、4x10
5細胞を75μLの2%FBS含有RPMIに添加した。細胞遊走を37℃で2時間起こし、その後、下部チャンバー中の細胞数を、FACScaliburを使用した細胞計数により定量した。次いで、少なくとも2種のケモカインの阻害を示したハイブリドーマウェルの細胞をまた連続希釈によりクローニングした。精製された抗体を様々な濃度で走化性の阻害について同様に試験した。
【0213】
走化性アッセイにおいて使用するケモカイン受容体形質転換体は、Ba/F3細胞(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures - DSMZから入手した)を使用して作製した。Origeneから購入したcDNAクローンからPCRによりヒトCCR2およびCCR5のオープンリーディングフレームを増幅させた(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Eds. Sambrook et al.を参照のこと)。PCRプライマーは、公開されている配列から設計した。5’プライマーは、開始Metコドンを重複させ、XhoIクローニング部位を含めた。3’プライマーは、終止コドンを重複させ、XbaIクローニング部位を含めた。増幅フラグメントをXhoIおよびXbaIで消化し、発現プラスミドpNEF38(Running Deer & Allison, Biotechnol Prog 20, 880-889, 2004)の等価部位へ挿入した。Ba/F3細胞をエレクトロポレーション(Amaxa)により発現プラスミドでトランスフェクトし、G418で選択した。機能的受容体を発現する細胞を、同種のケモカインリガンドに対する走化性を通じて選択し、移動細胞を制限希釈によりクローニングして、安定した細胞クローンを得た。
【0214】
実施例5-antikine抗体の同定および特性評価
複数種のCCケモカインを認識した5種の独特のモノクローナル抗体を同定し、3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fおよび18P7Eとした。それらの抗体のアイソタイプをIsoStrips(Roche)を使用して決定した。3C12F重鎖は、マウスサブグループIgG1のメンバーであると決定され、一方、3C12F軽鎖は、マウスκグループのメンバーであると決定された。7D1G重鎖は、マウスサブグループIgG1のメンバーであると決定され、一方、7D1G軽鎖は、マウスκグループのメンバーであると決定された。7D12A重鎖は、マウスサブグループIgG1のメンバーであると決定され、一方、7D12A軽鎖は、マウスκグループのメンバーであると決定された。18V4F重鎖は、マウスサブグループIgG2aのメンバーであると決定され、一方、18V4F軽鎖は、マウスλのメンバーであると決定された。18P7E重鎖は、IgG1であると決定され、その軽鎖はまたマウスλであると判明した。
【0215】
図1において精製された抗体を使用して示されるように、また、ELISAにより最初にアッセイしたように(表2aを参照のこと)、MAb 3C12Fは、MIP−1α、RANTESおよびMIP−1βを認識し、RANTESとのウイルスvCCI分子の結合を遮断した(
図2)。走化性アッセイでは、3C12FはMIP−1αおよびRANTESの機能を阻害し、5ng/mLのケモカインを使用して走化性を誘導した場合にはIC
50値は3〜5μg/mLであった(
図3)。BIAcore(登録商標)によれば、MIP−1αに対する3C12Fの親和性は49nMである。
【0216】
抗体7D1Gおよび7D12Aは両方とも、ハイブリドーマ上清をELISAによりアッセイした場合には、MIP−1αおよびMIP−1βを認識した(表2a)。これらの同じ抗体はまた、
図4および
図5によって示されているように、走化性アッセイにおいて両方のケモカインの機能も遮断した。
【0217】
抗体18V4Fおよび18P7Eは両方とも、ハイブリドーマ上清をELISAによりアッセイした場合には、MIP−1α、MIP−1βおよびRANTESを認識した(表2b)。同じ抗体はまた、
図6および
図7によって示されているように、走化性アッセイにおいてケモカインMIP−1α、RANTESおよびMIP−1βの機能も(少なくとも部分的に)遮断した。
【0218】
数々のケモカインとの精製されたantikine抗体(または18P7Eの場合には、クローン性ハイブリドーマの抗体上清)の反応性を解析するためにMSDプラットフォームを使用して、antikine抗体3C12Fが、MIP−1α、RANTES、MIP−1β、MPIF−1およびHCC−2をバックグラウンドに対して少なくとも4倍結合することが判明した(
図8)。同様に、antikine抗体7D12Aは、MIP−1α、RANTES、MIP−1βおよびMPIF−1を結合し(
図9)、antikine抗体7D1Gは、MIP−1α、RANTES、MIP−1β、HCC−1、MPIF−1およびPARCを結合した(
図10)。antikine抗体18V4Fおよび18P7Eは両方とも、MIP−1α、RANTESおよびMIP−1βを結合した(
図11および
図12)。
【0219】
下の表3に、これらの5種のantikineモノクローナル抗体の結合特異性を要約する。
【0220】
【表3】
【0221】
実施例6:antikine抗体によって結合されるCCケモカインに共通している構造の解析
モノクローナル抗体7D1G、7D12A、3C12F、18V4Fおよび18P7Eによって結合される CC−ケモカインのアミノ酸配列をアラインさせた。
図13に示されているように、本発明のantikineモノクローナル抗体が結合する、相同のまたは高度構造的類似性を有するいくつかの領域が確認された。CCケモカインのこれらの共通のまたは保存されたセグメントの同定により抗体結合が特徴づけられ、それは新規antikine抗体の生産またはスクリーニングのためのコア構造として機能する。
【0222】
図13a〜dは、各antikine抗体3C12F(
図13a)、7D12A(
図13b)、7D1G(
図13c)、18V4F(
図13d)および18P7E(
図13d)によって結合されるCCケモカインのアラインメントを示している。特定のantikine抗体によって結合されるCCケモカインにより共有されている同一のアミノ酸残基に影を付けている。表5によって同様のアミノ酸残基を示しており、例えば、アミノ酸残基アラニン(A)は、グリシン、セリンまたはトレオニンと同様である。
【0223】
共有されている同一または同様の残基は、Fernandez, 同上の
図1および
図2ならびにCzaplewski et al., J. Biol. Chem. 274:16077-84 (1999)(これらの文献双方は引用することにより本明細書の一部とされる)に基づいて、溶媒に露出していない、部分的に溶媒に露出しているまたは完全に溶媒に露出しているとさらに特徴付けられた。
【0224】
さらなる解析では、アラインさせた同一の残基または同一+同様の残基の共有の溶媒露出残基と、CCケモカイン受容体結合と関連しているCCケモカイン残基とが関連付けられた。ケモカイン受容体結合部位に関する構造情報および他の構造情報、化学情報または機能情報は、本明細書において記載されるケモカインまたは他の生体分子のエントリー、NCBI Conserved Domain Database CDD 29111[uid]、および下に示されるウェブアドレス(各々、最終アクセス2010年8月9日)を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0225】
MIP−1α/CCL3(配列番号71)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=NP_002974.1において記載されている。
【0226】
MIP−1β/CCL4(配列番号72)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=AAH70310.1において記載されている。
【0227】
RANTES/CCL5(配列番号73)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=P13501.3において記載されている。
【0228】
MPIF−1/CCL23(配列番号81)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=P55773.2において記載されている。
【0229】
HCC−1/CCL14(配列番号78)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=NP_004157.1において記載されている。
【0230】
HCC−2/CCL15(配列番号79)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=Q16663.2において記載されている。
【0231】
PARC/CCL18(配列番号82)についての推定受容体結合部位残基および他の構造的特徴は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi?INPUT_TYPE=live&SEQUENCE=P55774.1において記載されている。
【0232】
MAb 3C12Fは、
図13aの相対位置11、12、15、21、28、31、35、36、38、40、42、44、51、52、54、59および66にある同一アミノ酸残基C、C、Y、P、Y、T、C、S、P、V、F、T、C、A、P、VおよびLを共有するCCケモカインを認識する。これらの残基のうち、残基11、12、15、21、28、31、35、36、38、54および66は、Fernandez, 同上の
図1および
図2ならびにCzaplewski, 同上に基づき、部分的にまたは完全に溶媒に露出している。
【0233】
加えて、MAb 3C12Fによって認識されるCCケモカインは、
図13aの位置9、14、20、25、29、33、39、41、45、46、48および63にある化学的に同様のアミノ酸残基を共有している。これらの残基のうち、14、20、29、33、39、45、46および48にあるものは、溶媒に対して部分的にまたは完全に露出している(
図13aとFernandez, et al.の
図1および
図2を比較のこと)。
【0234】
この構造解析に基づき、同一および同様の残基11、12、14、15、20、21、28、29、31、33、35、36、38、39、45、46、48、54および66は、この抗体とそれが認識するCCケモカインとの間の結合についての決定基として利用可能な、MAb 3C12Fによって結合されるCCケモカイン分子の共有部分となる。
【0235】
これらの共有溶媒露出残基のうち、残基14、15、20、21および66は、NCBI Conserved Domain Database CDD 29111によりケモカイン受容体接触残基として特徴付けられた。CCケモカイン受容体の接触残基とのantikine抗体の結合の遮断は、CCケモカインがその受容体と結合する能力に影響を及ぼしまたは調整するであろう。
【0236】
MAb 3C12Fによって結合されるCCケモカインの共有溶媒接触可能残基は、CCケモカイン構造とさらに関連付けられ、CCケモカインの最初のCC残基とβ1鎖との間のNループに、さらにβ1鎖とβ2鎖との間のCCケモカイン30’sループにも見られる。
【0237】
MAb 7D12Aは、
図13bの相対位置11、12、15、18、21、28、31、35、36、38、40、42、44、51、52、54、59および66にあるアミノ酸残基C、C、Y、R、P、Y、T、C、S、P、V、F、T、C、A、P、VおよびLを有するCCケモカインを認識する。これらの残基のうち、残基11、12、15、18、21、28、31、35、36、38、54および66は、Fernandez, 同上の
図1および
図2ならびにCzaplewski, 同上に基づき、部分的にまたは完全に溶媒に露出している。
【0238】
加えて、MAb 7D12Aによって認識されるCCケモカインは、
図13bの位置9、14、20、25、29、33、39、41、45、46、48および63にある同様のアミノ酸残基を共有している。これらの残基のうち、14、20、29、33、39、45、46および48にあるものは、溶媒に対して部分的にまたは完全に露出している(
図13bとFernandez, et al.の
図1および
図2を比較のこと)。
【0239】
この構造解析に基づき、同一および同様の残基14、15、18、20、21、28、29、31、33、35、36、38、39、45、46、48、54および66は、この抗体とそれが認識するCCケモカインとの間の結合についての決定基として利用可能な、MAb 7D12Aによって結合されるCCケモカイン分子の共有部分となる。
【0240】
これらの残基のうち、残基14、15、18、20、21および66は、NCBI Conserved Domain Database CDD 29111によりケモカイン受容体接触残基として特徴付けられた。これらの残基を含む競合的抗体結合は、CCケモカインがその受容体と結合する能力に影響を及ぼすであろう。MAb 7D12Aによって認識されるCCケモカインでは、いくつかの共有溶媒接触可能残基が、CCケモカインの最初のCC残基とβ1鎖との間のNループに、β1鎖とβ2鎖との間のCCケモカイン30’sループに、さらにβ2鎖とβ3鎖との間の40’sループにも見られる。
【0241】
MAb 7D1Gは、
図13cの相対位置11、12、15、21、28、31、35、38、44、51、54および59にある同一アミノ酸残基C、C、Y、P、Y、T、C、P、T、C、PおよびVを有するCCケモカインを認識する。これらの残基のうち、残基11、12、15、21、28、31、35、38および54は、Fernandez, 同上の
図1および
図2ならびにCzaplewski, 同上に基づき、部分的にまたは完全に溶媒に露出している。
【0242】
加えて、MAb 7D1Gによって認識されるCCケモカインは、
図13cの位置20、25、39〜41、45、46、63および66にある同様のアミノ酸残基を共有している。これらの残基のうち、20、39、45、46および66にあるものは、溶媒に対して部分的にまたは完全に露出している(
図13cとFernandez, et al.の
図1および
図2を比較のこと)。
【0243】
この構造解析に基づき、同一および同様の残基11、12、15、20、21、28、31、35、38、39、45、46、54および66は、この抗体とそれが認識するCCケモカインとの間の結合についての決定基として利用可能な、MAb 7D1Gによって結合されるCCケモカイン分子の共有部分となる。
【0244】
これらの共有残基のうち、残基15、20、21、24および66は、NCBI Conserved Domain Database CDD 29111によりケモカイン受容体接触残基として特徴付けられた。これらの残基を含む競合的抗体結合は、CCケモカインがその受容体と結合する能力に影響を及ぼすであろう。MAb 7D1Gによって認識されるCCケモカインでは、いくつかの共有溶媒接触可能残基が、CCケモカインの最初のCC残基とβ1鎖との間のNループに、さらにβ2鎖とβ3鎖との間の40’sループにも見られる。
【0245】
MAb 18V4FおよびMAb 18P7Eは、
図13dの相対位置11、12、15、18、21、28、31、35、36、38、40、42、44、51、52、54、59および66にあるアミノ酸残基C、C、Y、R、P、Y、T、C、S、P、V、F、T、C、A、P、VおよびLを有するCCケモカインを認識する。これらの残基のうち、残基11、12、15、18、21、28、31、35、36、38、54および66は、Fernandez, 同上の
図1および
図2ならびにCzaplewski, 同上に基づき、部分的にまたは完全に溶媒に露出している。
【0246】
加えて、MAb 18V4Fおよび18P7Eによって認識されるCCケモカインは、
図13dの位置9、14、20、25、29、33、39、41、45、46、48および63にある同様のアミノ酸残基を共有している。これらの残基のうち、14、20、29、33、39、45、46および48にあるものは、溶媒に対して部分的にまたは完全に露出している(
図13dとFernandez, et al.の
図1および
図2を比較のこと)。
【0247】
この構造解析に基づき、同一および同様の残基14、15、18、20、21、28、29、31、33、35、36、38、39、45、46、48、54および66は、これらの抗体とそれらが認識するCCケモカインとの間の結合についての決定基として利用可能な、MAb 18V4Fおよび18P7Eによって結合されるCCケモカイン分子の共有部分となる。
【0248】
これらの残基のうち、残基14、15、18、20、21および66は、NCBI Conserved Domain Database CDD 29111によりケモカイン受容体接触残基として特徴付けられた。これらの残基を含む競合的抗体結合は、CCケモカインがその受容体と結合する能力に影響を及ぼすであろう。MAb 18V4Fおよび18P7Eによって認識されるCCケモカインでは、いくつかの共有溶媒接触可能残基が、CCケモカインの最初のCC残基とβ1鎖との間のNループに、β1鎖とβ2鎖との間のCCケモカイン30’sループに、さらにβ2鎖とβ3鎖との間の40’sループにも見られる。
【0249】
実施例7:antikine抗体のポリヌクレオチド配列
antikine抗体の可変ドメインの配列を、これらの領域を定常領域にプライマーを用いてPCR増幅した後に決定した。RNAを、RNeasy(Qiagen)を使用して10
7ハイブリドーマ細胞から抽出し、次いで、InvitrogenのスーパースクリプトIII逆転写キットを使用して逆転写した。軽鎖または重鎖のいずれかについて、プライマーセットを用いてPCRによりCDR領域を増幅した(Jones & Bendig, Biotechnology 9, 88-89, 1991)。InvitrogenのZero Blunt TOPO PCRクローニングキットを使用して、得られたフラグメントをpCRIIプラスミドに挿入し、M13プライマーおよびM13revプライマーを用いて配列決定した。モノクローナル抗体3C12F、7D1G、7D12A、18V4Fおよび18P7Eの、軽鎖セグメントおよび重鎖セグメント(CDRなど)をコードするポリヌクレオチド配列を下に記載する。3C12F重鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号1として示され、3C12F重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号2として示される。3C12F軽鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号6として示され、3C12Fの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号7として示される。さらに、抗体3C12FのCDRは、配列番号3〜5(重鎖可変領域)および配列番号8〜10(軽鎖可変領域)として記載される。
【0250】
7D12A重鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号11として示され、7D12A重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号12として示される。7D12A軽鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号16として示され、7D12Aの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17として示される。さらに、抗体7D12AのCDRは、配列番号13〜15(重鎖可変領域)および配列番号18〜20(軽鎖可変領域)として記載される。
【0251】
7D1G重鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号21として示され、7D1G重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号22として示される。7D1G軽鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号26として示され、7D1Gの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号27として示される。さらに、抗体7D1GのCDRは、配列番号23〜25(重鎖可変領域)および配列番号28〜30(軽鎖可変領域)として記載される。
【0252】
18V4F重鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号31として示され、18V4F重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号32として示される。18V4F軽鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号36として示され、18V4Fの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号37として示される。さらに、抗体18V4Fの、Chothia and Leskによって定義されているとおりのCDRは、配列番号33〜35(重鎖可変領域)および配列番号38〜40(軽鎖可変領域)として記載される。
【0253】
18P7E重鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号41として示され、18P7E重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号42として示される。18P7E軽鎖可変領域のDNAコード配列は配列番号46として示され、18P7Eの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号47として示される。さらに、抗体18P7Eの、Chothia and Leskによって定義されているとおりのCDRは、配列番号43〜45(重鎖可変領域)および配列番号48〜50(軽鎖可変領域)として記載される。
【0254】
実施例8:モノクローナル抗体3C12Fのヒト化
抗体ヒト化法は、ヒト免疫原性が低下した分子を生産するように設計される。抗体ヒト化の方法は当業者には周知であり、そのような方法には、Almagro and Frannson, Frontiers Bioscience 13:1619-1633 (2008) によって記載されているものが含まれる。CDRグラフティング方法 (Jones et al., Nature 321:522-525, 1986;Riechmann, et al., Nature 332:323-327, 1988)を使用して、3C12FのCDR配列を、同様のヒト生殖細胞系遺伝子由来の重鎖IgG可変領域フレームワーク配列および軽鎖IgG可変領域フレームワーク配列に組み込んだ。この場合、齧歯類CDR配列は、齧歯類重鎖可変配列および軽鎖可変配列それぞれと最大の同一性を有する選択されたヒト生殖細胞系遺伝子由来の重鎖IgG可変領域フレームワーク配列および軽鎖IgG可変領域フレームワーク配列に組み込まれた。好適な方法については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann, et al., Nature 332:323-327 (1988)(これらの文献は引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる)参照。
【0255】
3C12Fのヒト化では、マウス3C12F配列と最大の類似性を共有する重鎖および軽鎖可変部のヒト生殖細胞系配列をヒトフレームワーク配列として使用した。選択された生殖細胞系配列はまた、マウス抗体と高い配列類似性を共有することに加え、再構成抗体配列の採取サンプル中に豊富に含まれていることも分かった。Kabatによって定義されているような相補性決定領域(CDR)に存在するマウス残基をヒトフレームワーク配列にグラフティングし、結合に不可欠な残基であり得ることが明らかに示される場合にはそのような追加の残基をマウスアミノ酸に戻した。ヒト化3C12F MAbの重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号51および56により示される。対応するアミノ酸配列およびCDRは、配列番号52〜55および57〜60によって確認される。
【0256】
実施例9:モノクローナル抗体18V4Fのヒト化
18V4Fのヒト化では、3C12Fのヒト化で使用したものとは異なる戦略を使用した。マウス18V4F抗体のCDRを最も近いヒト生殖細胞系配列にグラフティングする代わりに、それらのCDRを、最も多く存在する重鎖ファミリーVHIII可変部と最も多く存在するλ軽鎖ファミリーVLλIII可変部から作製されたコンセンサス配列にグラフティングした。次に、Chothia and Leskによって構造上結合に関連すると定義されているCDR内残基だけを、最初に、コンセンサスフレームワークにグラフティングした。結合の保持に重要であり得ることが明らかに示される場合にはそのような、Kabatによってより広く定義された追加のCDR位置、ならびにフレームワーク残基をマウスアミノ酸に戻した。ヒト化18V4F MAbの重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号61および66により示される。対応するアミノ酸配列およびCDRは、配列番号62〜65および67〜70によって確認される。
【0257】
実施例10:ヒト化MAb 3C12FおよびMAb 18V4Fの親和性成熟
本発明のantikineモノクローナル抗体の結合親和性は、必要に応じて、例えば、Wu et al. (1998), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6037-6042(この文献は引用することにより本明細書の一部とされる)によって記載されている親和性成熟により、さらに増大し得る。
【0258】
様々なケモカイン(例えば、RANTES/CCL5、MIP−1α/CCL3およびMIP−1β/CCL4)とのヒト化MAb 3C12Fおよびヒト化MAb 18V4Fの結合特性を向上させるため、また、より強力な薬剤を生み出すために、部位特異的突然変異誘発戦略をファージディスプレイとともに使用した。ヒト化3C12Fまたはヒト化18V4FのFabフラグメントを、まず、M13遺伝子IIIタンパク質との重鎖融合物(ヒト化3C12Fまたはヒト化18V4F軽鎖それぞれを共発現する)として線状ファージM13の表面に提示させた。次に、ヒト化MAb 3C12Fまたはヒト化18V4Fの6つ総てのCDRの各位置を、Sidhu and Weiss (Phage Display, A Practical Approach, Clackson, T. and Lowman, H. B., ed., Oxford University Press, 2004, Chapter 4)のプロトコールを使用して、同時に4〜6つの連続したCDR残基の系統的な突然変異を行った。場合によっては、定義されたCDRの周囲のアミノ酸が抗原結合に関与する場合にはそのようなアミノ酸も突然変異させた。各抗体につき合計15のライブラリーを作製した。
【0259】
結合選択用の各ライブラリーのために、変異株ヒト化3C12Fまたはヒト化18V4FのFabフラグメントを提示させるファージを準備した。Nielsen and Marks (Clackson and Lowman, 同上, Chapter 14)の親和性成熟プロトコールを使用して、ヒト化3C12Fまたはヒト化18V4Fのより高い親和性の変異体についてのファージ選択を最大6回行った。簡潔には、結合選択はビオチン化ケモカインを使用して行われ、ストレプトアビジンコーティング磁性ビーズを使用して捕捉し、ヒト化3C12F Fabまたはヒト化18V4F Fabのより高性能の変異体を同定する。より高い親和性の変異体を、まず、当技術分野で周知の方法(Clackson and Lowmanおよび本書において引用される参照文献を参照のこと)を使用して同定し、次いで、より大きな親和性の向上が得られるように組み合わせる。
【0260】
抗体のそれらの標的に対する親和性もまた、当技術分野で公知の他の様々な方法を使用して高めることができる。親和性は、直接突然変異、ファージディスプレイまたは抗体分子をコードする核酸内でのチェーンシャッフリング(chain shuffling)により高めることができる。単一または複数の残基をランダム化して、他の点では同一の抗原抗体部位の集団において、20総てのアミノ酸またはこれらのサブセットがCDR内のまたはCDRに隣接する特定の位置において見られるようにすることができる。この目的に有用な方法は、Yang et al., J. Mol. Biol. 254, 392-403(1995);Hawkins et al., J. Mol. Biol. 226, 889-896 (1992);またはLow et al., J. Mol. Biol. 250, 359-368 (1996)を引用することにより本明細書の一部とされる。Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783 (1992)には、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について記載されている;CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas et al., Proc. Nat. Acad. Sci., USA 91:3809-3813 (1994);Schier et al., Gene, 169:147-155, 1995、Yelton et al., J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson et al., J. Immunol. 154(7):3310-3319 (1995);およびHawkins et al., J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に記載されており、それらの文献各々も引用することにより本明細書の一部とされる。
【0261】
親和性成熟は、ランダム突然変異誘発を使用して行われることもある。特定の位置で行われるアミノ酸置換は、ランダムであってよく、または単純な規則を用いて行ってもよい。例えば、総ての残基をアラニンへと突然変異させることができ、これはアラニンスキャニングと呼ばれる、例えば、WO9523813参照。配列に基づく親和性成熟方法もまた抗体の結合親和性を高めるために使用し得る、U.S.2003/022240A1およびU.S.2002/177170A1(これらの文献双方は引用することにより本明細書の一部とされる)参照。他の方法としては、一部または総てのCDRを含む一部または総ての位置内でのオリゴヌクレオチドに基づくアミノ酸突然変異誘発に続いて、Wu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 95, 6037-6042 (1998)によって記載されているように、より高い親和性についてのスクリーニングを実施すること、またはRajpal, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 102:8466-8471 (1996)によって記載されているように、ファージディスプレイを使用したより高い親和性についての選択を実施することが挙げられる。親和性成熟抗体の選択は、抗体またはそのフラグメントを、Siegal, Methods Mol. Biol., 504:351-83 (2009)に記載されているように、酵母細胞の表面にまたはHo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103:9637-9642 (2006)に記載されているように、哺乳類細胞の表面に、提示させることによっても行うことができる。親和性成熟のプロセスに使用し得る、上の文献に記載されている方法は各々、この実施例において引用された文献を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0262】
CCケモカインおよび牛痘ウイルス配列の同定
本明細書において開示されるケモカインおよび他の産物の識別は、表4の受託番号を引用することにより本明細書の一部とされる。
【0263】
【表4】
【0264】
【表5】
【0265】
ハイブリドーマ寄託
ハイブリドーマ細胞株3C12F、7D12A、7D1G、18V4Fおよび18P7Eは、2010年8月12日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Blvd., Manassas, Virginia 20110-2209, USA)に次の受託番号として寄託された:
【0266】
【表6】
【0267】
改変および他の実施態様
記載されているantikine抗体および組成物、それらの生産および使用の方法についての改変および変形、ならびに本発明の概念は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を特定の実施態様に関連して記載してきたが、特許請求される本発明がそのような特定の実施態様に限定されるものではないことは理解されるべきである。
【0268】
引用による組み込み
本開示によって引用されまたは本開示において言及される、各文献、特許、特許出願または特許公開は、とりわけ、本書の参照文献の引用に関連する特定の対象に関して、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。しかしながら、そのような参照文献が背景技術となり引用された文献の精度および適切性に異議を申し立てる権利が留保されるということを認めるものではない。用語の定義に矛盾が生じる場合には、本明細書において示したとおりの用語の定義とする。