(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109595
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】産業用車両
(51)【国際特許分類】
B60K 13/04 20060101AFI20170327BHJP
B66F 9/075 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
B60K13/04 B
B66F9/075 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-33395(P2013-33395)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-162296(P2014-162296A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】ニチユ三菱フォークリフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊太
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−143452(JP,A)
【文献】
実開昭59−113216(JP,U)
【文献】
特開平09−175195(JP,A)
【文献】
実開昭63−006253(JP,U)
【文献】
特開2010−167941(JP,A)
【文献】
特開2004−034933(JP,A)
【文献】
特開平11−314896(JP,A)
【文献】
特開平10−157470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/00−13/06
B66F 9/00−11/04
B60K 1/00− 6/00,
6/08− 8/00
F01N 3/01− 3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に設けられた荷役装置と、
前記車両の後部に設けられたカウンターウェイトと、
前記車両の内部において前記カウンターウェイトの前方に形成されたエンジンルーム内に収納されたエンジンと、
前記エンジンルーム内に配置された前記エンジンの排気ガスを浄化するように構成された排気浄化装置と
を備え、
前記エンジンは、前記車両が有する車体フレームに取り付けられたブラケットによって両側面から吊り下げ支持され、
前記車体フレームには、前記エンジンに向って水平方向に突出するようにリブが設けられており、
前記ブラケットは、
前記リブに固定される水平面、及び、該水平面に連結された垂直面を備える支持部材と、
一端が前記垂直面に対して平行に固定されると共に他端が前記エンジンの表面に対して平行に固定される固定部材と
を備えることを特徴とする産業用車両。
【請求項2】
前記エンジンの排気管において前記排気浄化装置より下流側に設けられた消音装置を備え、
該消音装置は前記エンジンルーム内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用車両。
【請求項3】
前記排気浄化装置は、前記エンジンの冷却水を放熱するラジエータより前方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用車両。
【請求項4】
前記排気浄化装置はフロースルータイプのディーゼルパティキュレートフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の産業用車両。
【請求項5】
前記排気浄化装置は、前記エンジンが前記ブラケットによって吊り下げ支持されることで形成される前記エンジンの下方のスペースに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用車両。
【請求項6】
燃料タンクを備え、
該燃料タンクは、前記カウンターウェイトの上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源であるエンジンの排気ガスを浄化する排気浄化装置を備えたフォークリフトなどの産業用車両の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンから排出される排気ガスに含まれる大気汚染物質を浄化するために、排気管には排気浄化装置が設けられることがある。また、排気ガスを排出する際に発生する騒音低減のために、排気管には消音装置(マフラー)が設けられることがある。このような排気浄化装置や消音装置は、車両に適切なレイアウトで配置されている。
【0003】
荷役装置などの重量物を車両前部に搭載する産業用車両では、車両の前後バランスをとるために、車両後部にカウンターウェイトが設けられる。カウンターウェイトは重量確保のためにある程度のサイズを有する必要があり、上述した排気浄化装置や消音装置の配置レイアウトに対して大きな影響を及ぼすこととなる。この種の産業用車両における排気浄化装置や消音装置の配置レイアウトの例として、特許文献1及び特許文献2がある。
【0004】
図7は特許文献1に係る産業用車両における消音装置の配置レイアウトを簡易的に示す模式図である。この車両では、エンジン1、該エンジン1の冷却水回路23を流れる冷却水を放熱するためのラジエータ2、該ラジエータ2の後方に設けたカウンターウェイト3、及び、排気騒音を低減するためのマフラー4が備えられている。送風ファン5はエンジン1の動作に伴って作動し、該送風ファン5からの送風はラジエータ2を通過後、カウンターウェイト3に設けられた窓状の通気口6を介して外部に放出される。マフラー4は、送風ファン5からの送風の妨げにならないように、カウンターウェイト3の下方側に整流板7によって隔離されて配置されている。
尚、
図7において破線14はエンジン1が収納されたエンジンルームを示しており、マフラー4は当該エンジンルーム14の外側に配置されている。
【0005】
図8Aは特許文献2に係る産業用車両における排気浄化装置の第1の配置レイアウトを簡易的に示す模式図であり、
図8Bは特許文献2に係る産業用車両における排気浄化装置の第2の配置レイアウトを簡易的に示す模式図である。尚、
図8A及びBでは
図7と同じ構成要素について共通の符号を付すことにより、重複する説明は適宜省略する。
この例では、エンジン1としてディーゼルエンジンが搭載されており、排気浄化装置として、排気ガス中に含まれる未燃焼微細物質(PM)を捕集して浄化を行うディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)8が設けられている。DPF8では、エンジン1からの高温の排気ガスを利用して、蓄積されたPMを燃焼する再生処理を行うことによって浄化性能が維持される。但し、エンジン1及びDPF8間の排気管20が長くなると、DPF8に導入される排気ガスの温度が低下してしまうため問題となる。
【0006】
図8Aの例では、DPF8をラジエータ2側方に配置することによってエンジン1及びDPF8間の排気管20を短縮することで、DPF8に導入される排気ガスの温度を確保し、浄化性能の向上を図っている。
また
図8Bの例では、DPFの浄化性能を維持するためには作業員による脱着作業を含むメンテナンスが必要なことに鑑みて、DPF8を車両のステップに配置している。これにより、エンジン1及びDPF8間の排気管20を短縮しつつ、作業員によるアクセス性を向上させている。
尚、
図8A及び
図8Bにおいても破線14はエンジン1が収納されたエンジンルームを示しており、DPF8は当該エンジンルーム14の外側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−139171号公報
【特許文献2】特開2010−215041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、マフラー4をカウンターウェイト3の下部に配置する必要があるため、カウンターウェイト3内にマフラー4の収納スペースを確保しなければならず、カウンターウェイト3のサイズ増大を招いてしまう。その結果、フォークリフト等の産業用車両にとって重要な後方視界や旋回半径の性能を悪化させてしまうおそれがある。また、マフラー4の設置スペースを確保した分だけカウンターウェイト3の重心が上方に移動するため、車両安定性が低下するおそれがある。また、ラジエータ2の風下側にマフラー4が配置されているため、ラジエータ2を通過した冷却風にとって障害となり、ラジエータ2の冷却性能を悪化してしまうおそれがある。
【0009】
尚、特許文献1ではDPF8のような排気浄化装置が設置されていないが、仮にDPF8をマフラー4と同様な思想に基づいてカウンターウェイト3の下部に設置した場合には上記問題点に加え、エンジン1及びDPF8間の距離が長くなるため、DPF8に導入される排気ガスの温度が低下し、浄化性能の低下が懸念される。
【0010】
特許文献2では、
図8Aに示すようにDPF8をラジエータ2の側方に配置することによって、特許文献1に比べてエンジン1及びDPF8間の距離を短縮している。しかしながら、依然としてエンジン1及びDPF8間には距離が十分に残っているため、更なる改善の余地がある。
また
図8Bでは、DPF8をステップ内に配置することによって、
図8Aに比べてエンジン1及びDPF8間の距離を更に短縮しているが、DPF8は動作時に非常に高温になるため、人手に触れやすいステップに配置することは好ましくない。またステップ内にDPF8の設置スペースを確保することは容易でなく、特に小型車両では困難な場合が多い。また、車体フレームの外側に排気浄化装置を設置すると、組立性を損なうおそれがある。
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、排気浄化装置を効率的な配置レイアウトで搭載でき、且つ、良好な浄化性能を達成可能な産業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る産業用車両は上記課題を解決するために、車両に搭載されたエンジンと、前記車両の前部に設けられた荷役装置と、前記車両の後部に設けられたカウンターウェイトと、前記エンジンの排気ガスを浄化する排気浄化装置とを備えた産業用車両において、前記排気浄化装置は、前記エンジンを収納するエンジンルーム内に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、排気浄化装置をエンジンルーム内に配置することにより、エンジン及び排気浄化装置間の距離を更に短縮できる。これにより、排気浄化装置に導入される排気ガスの温度低下を防止し、浄化性能を向上できる。またカウンターウェイトに排気浄化装置の配置スペースを設ける必要がなくなるので、カウンターウェイトのサイズ縮小を図ることができる。これにより、後方視界や旋回性能を改善できると共に、カウンターウェイトの重心を下げて車両安定性を向上できる。
尚、本願明細書では、エンジンルームはエンジンを収納するためのスペースを意味し、例えば車両に設けられた車体フレームによって側方からエンジンを囲んでいる空間を意味し、好ましくは、更にエンジンを上方からエンジンカバーによって覆われて形成された空間である。
【0014】
本発明の一態様では、前記排気浄化装置はフロースルータイプのディーゼルパティキュレートフィルタであるとよい。
この態様によれば、排気浄化装置としてディーゼルパティキュレートフィルタを用いる場合に、フロースルータイプを採用する。従来から普及されているウォールフロータイプは捕集率が高いものの煤が堆積するためにメンテナンス頻度が高くなる。一方、フロースルータイプは煤が堆積しない構造を有しているためメンテナンス頻度が低く、作業者がアクセスしにくいエンジンルーム内に配置しても弊害が少なくて済む。
【0015】
また他の態様では、前記エンジンの排気管において前記排気浄化装置より下流側に設けられた消音装置を備え、該消音装置は前記エンジンルーム内に配置されている。
この態様によれば、消音装置をエンジンルーム内に配置することで、カウンターウェイトに消音装置を配置するためにスペースを設ける必要がなくなる。これにより、更なるカウンターウェイトのサイズ縮小を図ることができる。
【0016】
また他の態様では、前記排気浄化装置は、前記エンジンの冷却水を放熱するラジエータより前方に配置されている。
この態様によれば、排気浄化装置をラジエータより前方に配置することによって、排気浄化装置がラジエータを通過した送風の妨げとなることがなく、ラジエータの冷却性能を向上することができる。
【0017】
また他の態様では、前記エンジンは、前記車両が有する車体フレームに取り付けられたブラケットによって両側面から吊り下げ支持されている。
この態様によれば、車体フレームに対してエンジンを両側面からブラケットで吊り下げ支持することによって、エンジン下方に排気浄化装置等を設置するためのスペースを確保することができ、エンジンルーム内での効率的なレイアウトを実現することができる。
【0018】
この場合、前記車体フレームには、前記エンジンに向って水平方向に突出するようにリブが形成されており、前記ブラケットは、前記リブに固定される水平面、及び、該水平面に連結された垂直面を備える支持部材と、一端が前記垂直面に対して平行に固定されると共に他端が前記エンジンの表面に対して水平に固定される固定部材とを備えるとよい。
このような支持部材及び固定部材を備えるブラケットを用いてエンジンを吊り下げ支持することによって、振動するエンジンを車体フレーム対して強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、排気浄化装置をエンジンルーム内に配置することにより、エンジン及び排気浄化装置間の距離を更に短縮できる。これにより、排気浄化装置に導入される排気ガスの温度低下を防止し、浄化性能を向上できる。またカウンターウェイトに排気浄化装置の配置スペースを設ける必要がなくなるので、カウンターウェイトのサイズ縮小を図ることができる。これにより、後方視界や旋回性能を改善できると共に、カウンターウェイトの重心を下げて車両安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施例に係る産業用車両の全体構成を側面から示す模式図である。
【
図2】本実施例に係る産業用車両のエンジン周辺の構造を下方から示す斜視図である。
【
図3】
図2から車体フレーム及びブラケットを抽出して示す斜視図である。
【
図4】エンジンルーム内に収納されたエンジン周辺の構造を示す斜視図である。
【
図5】エンジンの周辺構造を冷却水回路と共に示す摸式図である。
【
図6】変形例に係る産業用車両のエンジン周辺の構造を下方から示す斜視図である。
【
図7】特許文献1に係る産業用車両における消音装置の配置レイアウトを簡易的に示す模式図である。
【
図8A】特許文献2に係る産業用車両における排気浄化装置の第1の配置レイアウトを簡易的に示す模式図である。
【
図8B】特許文献2に係る産業用車両における排気浄化装置の第2の配置レイアウトを簡易的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
図1は本実施例に係る産業用車両の全体構成を側面から示す模式図である。
産業用車両は運転席10の前方に荷役を昇降可能な荷役装置11を有するフォークリフト車両である。車両には動力源としてディーゼルエンジン(以下、適宜「エンジン」と称する)1が搭載されており、その動力を用いて車両走行や荷役装置11の駆動を行っている。
【0023】
車両では重量物である荷役装置11が車両前方に設けられている(荷役装置11に貨物を積載した場合には荷役装置11は更に重くなる)ことを考慮して、運転席10の後方にカウンターウェイト3を搭載することで、車両の前後バランスをとり、産業用車両にとって重要な旋回性能や車両安定性を確保している。
尚、カウンターウェイト3の上方には、燃料タンク12が配置されている。
【0024】
図2は本実施例に係る産業用車両のエンジン周辺の構造を下方から示す斜視図である。
エンジン1は車体フレーム13で囲まれたエンジンルーム14内に収納されている。ここで,エンジンルーム14は車両内部においてエンジン1を収納するために設けられた空間を広く意味しており、好ましくは車体フレーム13によってエンジン1の側方の少なくとも一部を囲むように規定されているとよく、更に好ましくは、エンジン1の上方の少なくとも一部をエンジンカバー(不図示)によって覆われて形成されているとよい。
【0025】
図2では車体フレーム13はそれぞれ符号13a及び13bで示すように、エンジン1の両側面に沿って延在するように設けられている。エンジン1は車体フレーム13a及び13bにそれぞれ設けられたエンジンマウントブラケット(以下、適宜「ブラケット」と称する)15によって両側面を吊り下げ支持されている。一般的な据え置き型のエンジンの場合、エンジン1の下方には余裕空間が存在しないが、本実施例では、エンジン1を吊り下げ支持することによって下方にスペースを設けやすく、後述する排気浄化装置(DPF8)などをエンジンルーム14内に設置可能に構成されている。
【0026】
図3は
図2から車体フレーム13及びブラケット15を抽出して示す斜視図である。尚、
図3ではブラケット15の配置がわかりやすいように、車体フレーム13bを省略している。
ブラケット15は車体フレーム13a及び13bに設けられており、それぞれ支持部材16及び固定部材17から構成されている。
車体フレーム13の表面には、エンジン1に向って水平方向に突出するようにリブ22が設けられている。リブ22には支持部材16の水平面16aが複数のボルトで固定されている。水平面16aには垂直面16bが略直交するように連結されており、支持部材16は略L字形状を有している。
【0027】
固定部材17は、一端が垂直面16bに対して平行に固定されると共に他端がエンジン1の表面に対して平行に固定される。より具体的に説明すると、固定部材17はエンジン1の表面に対向するように設けられた固定面17aを有しており、エンジン1に対して複数のボルトで固定されている。固定面17aには車体フレーム13側に向かって突出するように連結面17bが形成されている。連結面17bは支持部材16の垂直面16bにボルト固定されており、本実施例では特に、垂直面16bの両側からボルト固定可能に構成されている。このような構造を有するブラケット15を用いることにより、振動するエンジン1を車体フレーム13に対して強固に固定することができる。
【0028】
図4はエンジンルーム14内に収納されたエンジン周辺の構造を示す斜視図である。
エンジン1は排気タービン18aとこれに同軸駆動されるコンプレッサ18bを有する排気ターボ過給機18を備えている。給気管19から取り込まれた空気は、コンプレッサ18bにて圧縮昇温された後、インタークーラ(不図示)で冷却されて燃焼室に供給される。
燃焼室では圧縮着火燃焼が行われ、燃焼によって発生した排ガスは排気管20に設けられた排気タービン18aを駆動して前記コンプレッサ18bの動力源となった後、排気浄化装置であるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)8に供給される。
【0029】
DPF8は、エンジンルーム14に収納されており、特にエンジン1の下方に形成されたスペース(すなわち、ブラケット15でエンジン1を吊り下げ支持することによって形成されたスペース)に設置されている。排気管20は、このようにエンジン2の下方に設置されたDPF8に向かって取り回されている。排気管20のうちDPF8の上流側の一部には延在方向に伸縮可能なベローズ配管21が挿入されており、エンジン1の振動が下流側に伝達することを防止している。
【0030】
尚、ベローズ配管21は排気管20のうち直線形状を有している箇所(例えば
図4で示すように上下方向に直線上に延びている箇所)に挿入されることが好ましい。ベローズ配管21はエンジン1の振動を吸収するため高い耐久性を有することが求められるが、直線形状を有している箇所に挿入することによって、ベローズ配管21の径に伝達される振動が全周にわたって均一化され、良好な耐久性が得られる。
尚、ベローズ配管21に代えて或いは併せて、柔軟性を有するフレキシブル配管を用いてもよい。
【0031】
このようにDPF8をエンジンルーム14内に配置することにより、エンジン1及びDPF8間における排気管20を短縮することができ、DPF8に導入される排気温度の低下を抑制でき、浄化性能を向上できる。
【0032】
ところで、従来から普及が進んでいるウォールフロータイプのDPFは、ハニカム構造を有するセラミックフィルタを排気ガスが通過することでPMを捕集するが、捕集率が高い半面、装置のメンテナンス頻度が高くなる特徴がある。そのため、ウォールフロータイプのDPFはメンテナンス作業時に作業者がアクセスしやすい位置に配置する必要があり、本願発明のようにエンジンルーム14内に配置することができない。
一方、本実施例ではフロースルータイプのDPFを使用している。フロースルータイプのDPFは上記ウォールフロータイプとは異なり煤が堆積しない構造を有している。そのため、ウォールフロータイプのDPFに比べて格段にメンテナンス頻度が低く、作業者がアクセスしにくいエンジンルーム14内に配置しても弊害が少なくて済む。
【0033】
尚、本実施例では排気浄化装置としてDPF8を設けた場合を説明したが、DPF8の上流側に、排気ガス中に含まれる酸素を利用して、排気中の炭化水素(HC)を主とした未燃焼物質を酸化して水(H
20)と二酸化炭素(CO
2)に分解する酸化触媒(DOC)を設けてもよい。この場合、DPF8の再生処理時には、DOCの上流側に設けられたポスト噴射装置によって排気管20中に燃料(HC)を噴射し、DOCで当該排気中に含まれる燃料を酸化させて排気を昇温し、高温になった排気をDPF8に送り込むことによって、蓄積したPMを燃焼処理する。
【0034】
図5はエンジン2の周辺構造を冷却水回路23と共に示す摸式図である。
エンジン1で昇温された冷却水は、冷却水回路23上に設けられたラジエータ2にて外気と熱交換することにより冷却される。ラジエータ2には、エンジン1の駆動に伴って回転する送風ファン5によって外気が送り込まれ、冷却水との熱交換が促進される。ラジエータ2を通過した送風は、後方に配置されたカウンターウェイト3の通気口6(
図7を参照)を介して車外に放出される。
【0035】
図7に示すように、従来、DPF8などの排気浄化装置をカウンターウェイト3の通気口6近傍に配置していたため、送風の妨げとなり、ラジエータ2の冷却能力低下の一因となっていた。本実施例では、このように送風の妨げとなりうるDPF8を、ラジエータ2より前方に存在するエンジンルーム14内に配置することにより、ラジエータ2の冷却性能の向上を図ることができる。
【0036】
またカウンターウェイト3にDPF8の配置スペースを設ける必要がなくなるので、カウンターウェイト3のサイズ縮小を図り、後方視界や旋回性能を向上できると共に、カウンターウェイト3の重心を下げて良好な車両安定性が得られる。特にカウンターウェイト3の高さを低く、且つ、長さを短く設定することで、後方視界を改善することができる。またカウンターウェイト3の外形を小さく設定することで旋回半径を小さくすることができ、小回り性に優れた産業用車両を実現できる。
また、このようにカウンターウェイト3のコンパクト化が可能となるので、カウンターウェイト3上に設置される燃料タンク12へのアクセスが容易になり、給油などのメンテナンス作業負担を軽減することができる。
【0037】
(第1変形例)
図6は変形例に係る産業用車両のエンジン周辺の構造を下方から示す斜視図である。
本変形例では、排気管20のうちDPF8の下流側に騒音抑制のための消音装置であるマフラー4が設けられている。
図7に示すように、従来、マフラー4はカウンターウェイト3の下部に形成されたスペースに配置されていたため、ラジエータ2からの送風の妨げとなり、冷却能力低下の一因となっていた。
一方、本変形例では
図6に示すように、マフラー4もDPF8と同様にエンジンルーム14内に配置されている。これにより、ラジエータ2からの送風の妨げとなることを回避し、冷却性能を向上できる。また、カウンターウェイト3の下部にマフラー4の設置スペースを形成する必要がなくなるので、カウンターウェイト3のコンパクト化及び低重心化を図り、旋回性能や車両安定性を向上できる。
【0038】
尚、本変形例ではDPF8に加えてマフラー4をエンジンルーム14内に配置した例を示したが、同様の思考に基づいて、その他の構成要素をエンジンルーム14内に配置することでレイアウトの効率化を行ってもよい。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、DPF8をエンジンルーム14内に配置することにより、エンジン1及びDPF8間の距離を短縮できる。これにより、DPF8に導入される排気ガスの温度低下を防止し、浄化性能を向上できる。またカウンターウェイト3にDPF8の配置スペースを設ける必要がなくなるので、カウンターウェイト3のサイズ縮小を図ることができる。これにより、後方視界や旋回性能を改善できると共に、カウンターウェイト3の重心を下げて車両安定性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、動力源であるエンジンの排気ガスを浄化する排気浄化装置を備えたフォークリフトなどの産業用車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 エンジン
2 ラジエータ
3 カウンターウェイト
4 消音装置(マフラー)
5 送風ファン
6 通気口
8 排気浄化装置(DPF)
9 排気管
10 運転席
11 荷役装置
12 燃料タンク
13 車体フレーム
14 エンジンルーム
15 エンジンマウントブラケット
16 支持部材
17 固定部材
18 排気ターボ過給器
19 給気菅
20 排気管
21 ベローズ配管
22 リブ