(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109605
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】飲料ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B67D 1/08 20060101AFI20170327BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
B67D1/08 A
F25D11/00 102C
F25D11/00 102D
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-43191(P2013-43191)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-169124(P2014-169124A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】長澤 文雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢二
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−340460(JP,A)
【文献】
特開2012−131548(JP,A)
【文献】
実開昭57−028281(JP,U)
【文献】
特開2001−225898(JP,A)
【文献】
特開2005−299997(JP,A)
【文献】
発明協会公開技報公技番号2011−505016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00−1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を貯えて飲料を冷却する冷却水槽と、前記冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、前記冷却水槽内の冷却水を撹拌する撹拌装置を備え、
前記冷凍装置は冷媒ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮した冷媒ガスを冷却して液化する凝縮器と、前記冷却水槽内に配設されて前記凝縮器により液化させた液化冷媒を冷却水と熱交換することにより気化させて再び前記圧縮機に戻す蒸発管とを有し、
前記蒸発管の冷媒ガスの導出部には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと前記冷却水槽には冷却水の温度を検出する水温センサとの少なくとも一方を設けた飲料ディスペンサであって、
前記飲料ディスペンサの電源を投入したときに、前記冷媒温度センサの検出温度または前記水温センサの検出温度が所定温度より低いときには前記撹拌装置を作動させた後で前記冷凍装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記飲料ディスペンサの電源を投入したときに、前記冷媒温度センサの検出温度または前記水温センサの検出温度が前記所定温度以上であるときには前記冷凍装置を作動させた後で前記撹拌装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項3】
請求項2に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷凍装置を先に作動させた後で、前記冷媒温度センサの検出温度が前記所定温度より低下したときに前記撹拌装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項4】
請求項2に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷凍装置を先に作動させた後で、前記水温センサの検出温度が前記所定温度より低くなると前記撹拌装置を継続的に作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項5】
冷却水を貯えて飲料を冷却する冷却水槽と、前記冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、前記冷却水槽内の冷却水を撹拌する撹拌装置と、前記冷却水槽内に設けられて冷却水の温度を検出する水温センサとを備え、
前記冷凍装置は冷媒ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮した冷媒ガスを冷却して液化する凝縮器と、前記冷却水槽内に配設されて前記凝縮器により液化させた液化冷媒を冷却水と熱交換することにより気化させて再び前記圧縮機に戻す蒸発管とを有し、 前記蒸発管の冷媒ガスの導出部には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサを設けた飲料ディスペンサであって、
前記飲料ディスペンサの電源を投入したときに、前記冷媒温度センサの検出温度が所定温度以上であるとともに、前記冷媒温度センサの検出温度が前記水温センサの検出温度以上であるときには、前記撹拌装置を作動させた後で前記冷凍装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項6】
請求項5に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒温度センサの検出温度が前記所定温度以上であるとともに、前記冷媒温度センサの検出温度が前記水温センサの検出温度より低いときには、前記冷凍装置を作動させた後で前記撹拌装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項7】
請求項5または6に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒温度センサの検出温度が前記所定温度より低く、前記冷媒温度センサの検出温度が前記水温センサの検出温度以上であるときには前記撹拌装置を作動させた後で前記冷凍装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項に記載の飲料ディスペンサにおいて、
前記冷媒温度センサの検出温度が前記所定温度より低く、前記冷媒温度センサの検出温度が前記水温センサの検出温度より低いときには前記撹拌装置と前記冷凍装置とを同時に作動させるように制御した、または前記撹拌装置を作動させた後で前記冷凍装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール等の飲料を冷却して供給する飲料ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には飲料ディスペンサが開示されている。この飲料ディスペンサは、冷却水を貯えた冷却水槽と、冷却水槽内に設けたコイル状の飲料冷却管と、冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、冷却水槽内の冷却水を撹拌する撹拌装置とを備えている。この飲料ディスペンサの冷凍装置は、圧縮機により圧縮した冷媒ガスを凝縮器により冷却して液化させ、液化した冷媒を冷却水槽内に配設した蒸発管を通過させるときに冷却水と熱交換させることにより気化させ、気化させた冷媒を再び圧縮機に戻し、循環する冷媒を用いて冷却水槽内の冷却水を冷却するものである。この飲料ディスペンサにおいては、冷凍装置と撹拌装置とを作動させることにより、冷却水槽内の水は撹拌装置により撹拌されながら蒸発管の周囲に所定の厚みの氷層になり、飲料冷却管を通過する飲料は撹拌装置により撹拌された冷却水により効率よく冷却されて注出コックから注出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−169568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような飲料ディスペンサを設置する前は、冷凍装置における冷媒の循環経路内の冷媒が室温とほぼ同じ温度となっているので、冷媒の循環経路内の圧力が高いときがある。飲料ディスペンサを設置後に、冷却水槽内に冷却水を注入して電源を投入すると、撹拌装置と冷凍装置とが作動する。飲料ディスペンサの電源を投入したときに、冷凍装置の冷媒の循環経路内の圧力が高いと、圧縮機に大きな負荷が加わり、圧縮機の起動不良となることがあった。本発明は、飲料ディスペンサの電源を投入したときに、圧縮機の起動不良を生じさせにくいようにしたことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、冷却水を貯えて飲料を冷却する冷却水槽と、冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、冷却水槽内の冷却水を撹拌する撹拌装置を備え、冷凍装置は冷媒ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機により圧縮した冷媒ガスを冷却して液化する凝縮器と、冷却水槽内に配設されて凝縮器により液化させた液化冷媒を冷却水と熱交換することにより冷却して再び圧縮機に戻す蒸発管とを有し、蒸発管の冷媒ガスの導出部には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと冷却水槽には冷却水の温度を検出す水温センサとの少なくとも一方を設けた飲料ディスペンサであって、飲料ディスペンサの電源を投入したときに、冷媒温度センサの検出温度または水温センサの検出温度が所定温度より低いときには撹拌装置を作動させた後で冷凍装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサを提供するものである。
【0008】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、電源を投入したときに、冷媒温度センサの検出温度または水温センサの検出温度が所定温度より低いときには撹拌装置を作動させた後で冷凍装置を作動させるように制御したので、蒸発管内の冷媒が撹拌装置により撹拌された冷却水槽内の冷却水により冷やされてから圧縮機に送られることになり、冷凍装置の作動開始時に圧縮機に大きな負荷が加わりにくくなり、圧縮機の起動不良となりにくくなった。
【0009】
このような飲料ディスペンサにおいては、冷媒温度センサの検出温度または水温センサの検出温度が所定温度以上であるときのように、冷却水槽内の冷却水の温度が高いときに撹拌装置を先に作動させると、蒸発管から圧縮機に戻る冷媒の圧力が継続的に高い状態が続き、圧縮機に大きな負荷が加わることになる。そのために、この飲料ディスペンサにおいては、電源を投入したときに、冷媒温度センサの検出温度または水温センサの検出温度が所定温度以上であるときには、冷凍装置を作動させた後で撹拌装置を作動させるように制御した。このように制御したことで、撹拌装置の作動前は、冷凍装置は蒸発管の周囲の冷却水を冷却するだけであるので、蒸発管から圧縮機に戻る冷媒の温度が継続的に高い状態であるのを防ぐことができ、圧縮機に継続的に高い負荷が加わらないようになる。また、冷却水槽内の冷却水は先ず蒸発管の周囲が冷却され、蒸発管の周囲の冷却された部分が撹拌装置によって全体に撹拌されることで、冷却水槽内の冷却水の全体が徐々に冷却されるため、圧縮機に負荷が加わりにくくなった。
【0010】
また、冷媒温度センサは蒸発管の導出部の冷媒の温度を検出しているので、蒸発管の周囲の冷却水だけが冷却されたときでも、冷媒温度センサの検出温度が所定温度より低くくなることがある。この後で撹拌装置を継続的に作動させると、撹拌後の冷却水の温度が再び高くなり、圧縮機に大きな負荷が加わるおそれがある。そのために、冷凍装置を先に作動させるように制御したときに、冷媒温度センサの検出温度が所定温度より低いときだけ撹拌装置を作動させるように制御した。このようにしたときには、蒸発管の周囲を中心に低くなった冷却水槽内の冷却水の温度が撹拌装置により撹拌されて均一となり、撹拌後の冷却水の温度が引き続き所定温度以上であれば撹拌装置の作動を停止させ、冷凍装置だけを作動させるようにした。これにより、圧縮機に大きな負荷が継続的に加えられることなく、撹拌によって効率的に冷却水が冷却されるようになる。また、冷凍装置を先に作動させるように制御したときに、水温センサの検出温度が所定温度より低くなると撹拌装置を継続的に作動させるように制御した。このときには、冷却水の温度を直接検出しているので、撹拌装置を継続的に作動させても、圧縮機に大きな負荷が加えられることがない。
【0011】
また、上記課題を解決するための他の発明は、冷却水を貯えて飲料を冷却する冷却水槽と、冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置と、冷却水槽内の冷却水を撹拌する撹拌装置と、冷却水槽内に設けられて冷却水の温度を検出する水温センサとを備え、冷凍装置は冷媒ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機により圧縮した冷媒ガスを冷却して液化する凝縮器と、冷却水槽内に配設されて凝縮器により液化させた液化冷媒を冷却水と熱交換することにより冷却して再び圧縮機に戻す蒸発管とを有し、蒸発管の冷媒ガスの導出部には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサを設けた飲料ディスペンサであって、飲料ディスペンサの電源を投入したときに、冷媒温度センサの検出温度が所定温度以上であるとともに、冷媒温度センサの検出温度が水温センサの検出温度以上であるときには、撹拌装置を作動させてから冷凍装置を作動させるように制御したことを特徴とする飲料ディスペンサを提供するものである。
【0012】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、電源を投入したときに、冷媒温度センサの検出温度が所定温度以上であるとともに、冷媒温度センサの検出温度が水温センサの検出温度以上であるときには、撹拌装置を作動させてから冷凍装置を作動させるように制御したので、蒸発管内の冷媒が撹拌装置により撹拌された冷却水槽内の冷却水により冷やされてから圧縮機に送られることになり、作動開始時に圧縮機に大きな負荷が加わりにくくなり、冷凍装置の作動開始時に圧縮機に大きな負荷が加わりにくくなり、圧縮機の起動不良となりにくくなった。
【0013】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、冷媒温度センサの検出温度が所定温度以上であるとともに、冷媒温度センサの検出温度が水温センサの検出温度より低いときには、冷凍装置を作動させた後で撹拌装置を作動させるように制御するのが好ましい。このように制御したことで、撹拌装置の作動前は、冷凍装置は蒸発管の周囲の冷却水を冷却するだけであるので、蒸発管から圧縮機に戻る冷媒の温度が継続的に高い状態であるのを防ぐことができ、圧縮機に継続的に高い負荷が加わらないようになる。また、冷却水槽内の冷却水は先ず蒸発管の周囲が冷却され、蒸発管の周囲の冷却された部分が撹拌装置によって全体に撹拌されることで、冷却水槽内の冷却水の全体が徐々に冷却されるため、圧縮機に負荷が加わりにくくなった。
【0014】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、冷媒温度センサの検出温度が所定温度より低く、冷媒温度センサの検出温度が水温センサの検出温度以上であるときには撹拌冷凍装置を作動させた後で冷凍装置を作動させるように制御するのが好ましい。このようにしたときには、蒸発管内の冷媒が撹拌装置により撹拌された冷却水槽内の冷却水により冷やされてから圧縮機に送られることになり、作動開始時に圧縮機に大きな負荷が加わりにくくなり、冷凍装置の作動開始時に圧縮機に大きな負荷が加わりにくくなり、圧縮機の起動不良となりにくくなった。
【0015】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、冷媒温度センサの検出温度が所定温度より低く、冷媒温度センサの検出温度が水温センサの検出温度より低いときには撹拌装置と冷凍装置とを同時に作動させるように制御する、または、撹拌装置を作動させた後で冷凍装置を作動させるように制御するのが好ましい。このようにしたときには、蒸発管から圧縮機に戻る冷媒の圧力が低いので、撹拌装置と冷凍装置とを同時に作動させても、または撹拌装置を作動させた後で冷凍装置を作動させても、圧縮機に大きな負荷が加わることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による飲料ディスペンサの一実施形態の縦方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明による飲料ディスペンサの一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明に係る飲料ディスペンサ10は、冷却水を貯えて飲料を冷却する冷却水槽12と、冷却水槽12内の冷却水を冷却する冷凍装置20と、冷却水槽12内の冷却水を撹拌する撹拌装置30を備えている。
【0018】
飲料ディスペンサ10は上面が開口したハウジング11を備え、ハウジング11内には前部に冷却水槽12と後部に蒸発管23を除いた冷凍装置20とが設けられている。ハウジング11の上面開口には蓋体13が着脱可能に設けられている。冷却水槽12内には飲料を冷却するコイル状に巻回された飲料冷却管14が立設しており、飲料冷却管14の導入端側には図示しないビア樽等の飲料供給源に接続され、飲料冷却管14の導出端側にはハウジング11の前壁に固定した注出コック15に接続されている。冷却水槽12内には冷却水の温度を検出する水温センサ16が設けられている。水温センサ16は冷却水槽12内にて後述する蒸発管23から少し離れた位置に取り付けられている。
【0019】
冷凍装置20は冷却水槽12内の冷却水を冷却するものである。冷凍装置20は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機21と、圧縮機21により圧縮した冷媒ガスを冷却して液化する凝縮器22と、凝縮器22から送出された液化冷媒を膨張させるキャピラリーチューブ(図示省略)と、冷却水槽12内に配設されて液化させた液化冷媒を冷却水と熱交換することにより冷却して再び圧縮機21に戻す蒸発管23とを備えている。凝縮器22は冷媒が通過する熱交換器22aと熱交換器22aを通過する冷媒を冷却する冷却ファン22bとからなる。蒸発管23はコイル状の飲料冷却管14の外側にて冷却水槽12の内周面にコイル状に配設されている。蒸発管23の圧縮機21に対する冷媒の導出部には冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ24が設けられている。なお、この冷媒温度センサ24は冷却水槽12の外側に設けられている。また、冷却水槽12内には蒸発管23の周囲に氷厚センサ25が設けられている。氷厚センサ25は互いに離間した2つの電極の通電及び非通電に基づいて蒸発管23の周囲に所定の厚さの氷層が形成されたか否かを検出するものである。すなわち、氷厚センサ25の周囲に氷層が形成されると2つの電極が非通電状態となり、氷厚センサ25の周囲に氷層が形成されていないと2つの電極が冷却水により通電状態となる。
【0020】
冷却水槽12には撹拌装置30が設けられている。撹拌装置30は冷却水槽12内の冷却水の温度を均一となるように撹拌するとともに、撹拌によって流動する冷却水により飲料冷却管14を通過する飲料を効率よく冷却するものである。また、撹拌装置30は流動する冷却水により蒸発管23の周囲に形成される氷層の厚さを均一にする機能を有している。撹拌装置30は、冷却水槽12の左右両側壁の上縁に架設して固定した支持板31と、この支持板31の上面に固定した撹拌モータ32と、撹拌モータ32から支持板31を貫通して冷却水槽12内に延びて撹拌モータ32により回転するシャフト33と、シャフト33の先端に固定した撹拌羽根34とからなる。
【0021】
飲料ディスペンサ10は制御装置40を備えており、
図2に示すように、この制御装置40は水温センサ16と、冷凍装置20(特に圧縮機21と冷却ファン22b)と、冷媒温度センサ24と、氷厚センサ25と、撹拌装置30(特に撹拌モータ32)と、電源スイッチ41とに接続されている。制御装置40はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。制御装置40は、電源スイッチ41により電源を投入したときに、冷凍装置20と撹拌装置30との作動を制御する以下の制御プログラムをROMに備えている。なお、以下の説明においては、冷凍装置20の作動は圧縮機21及び冷却ファン22bを作動させることであり、撹拌装置30の作動は撹拌モータ32を作動させることである。
【0022】
次に、上述した飲料ディスペンサ10の設置及び設置後の作動について説明する。飲料ディスペンサ10を適宜な設置場所に設置し、蓋体13を開けて冷却水槽12内に所定量の冷却水(例えば水道水)を入れる。このとき、冷凍装置20の冷媒の循環経路内の冷媒の温度は室温と略同じとなっている。飲料ディスペンサ10を設置する時期及び環境によっては、冷凍装置20の冷媒の循環経路内の冷媒の温度が高いことがあり、これにより、冷媒の圧力が高くなっている場合がある。この状態で冷凍装置20を作動させると、圧縮機21に大きな負荷が加わり、圧縮機21の起動不良を生じさせるおそれがある。そのために、この飲料ディスペンサ10は電源スイッチ41により電源を投入したときに以下の制御プログラムを実行する。
【0023】
(制御プログラム1)
図3に示したように、電源スイッチ41により電源が投入されると、制御装置40はステップ101にて先ず撹拌装置30を作動させる。次に、制御装置40はステップ102にて所定時間(例えば2,3分であり、所定時間は2,3分に限られるものでない。以後の所定時間も同様である)経過後に冷凍装置20を作動させる。蒸発管23内の冷媒は撹拌装置30により撹拌された冷却水槽12内の冷却水により冷やされ、蒸発管23内の冷媒の圧力は低下する。これにより、冷凍装置20を作動させても、蒸発管23から圧縮機21に流入する冷媒の圧力が高くならず、圧縮機21に大きな負荷が加わりにくくなり、圧縮機21の起動不良となりにくくなった。
【0024】
ステップ102の処理を実行した後は制御装置40は氷厚センサ25の検出に基づいて冷凍装置20の作動を制御し、蒸発管23の周囲に形成される氷層が所定の厚みとなるように制御する(公知であるので図示は省略する)。
【0025】
(制御プログラム2)
この制御プログラムは、電源スイッチ41により電源を投入したときに、水温センサ16の検出温度(Tw)に基づいて、冷凍装置20と撹拌装置30との作動を制御したものである。
図4に示したように、電源スイッチ41により電源が投入されると、制御装置40はステップ201にて水温センサ16の検出温度(Tw)が所定温度として30℃より低いか否かを判定する。水温センサ16の検出温度(Tw)が30℃より低ければ、冷却水により蒸発管23内の冷媒を十分に冷却できる温度である。このときには、制御装置40はステップ201にて「YES」と判定してステップ202に進め、撹拌装置30を先に作動させる。制御装置40はステップ203にて所定時間経過後に冷凍装置20を作動させる。蒸発管23内の冷媒は撹拌装置30により撹拌された冷却水槽12内の冷却水により冷却され、その結果、蒸発管23内の冷媒の圧力は低下する。これにより、冷凍装置20を作動させても、蒸発管23から圧縮機21に流入する冷媒の圧力が高くならず、圧縮機21に大きな負荷が加わらないようになり、圧縮機21の起動不良が生じにくくなった。
【0026】
これに対し、冷却水槽12内の冷却水が30℃以上であるときには、撹拌装置30を先に作動させても蒸発管23内の冷媒を冷却水により十分に冷却できない。そのために、水温センサ16の検出温度(Tw)が30℃以上であれば、制御装置40はステップ201にて「NO」と判定してステップ204に進め、冷凍装置20を先に作動させる。冷却水槽12内の冷却水は蒸発管23の周囲から徐々に冷却される。このとき、冷却水槽12内の冷却水は撹拌装置30により撹拌されないので、蒸発管23内の冷媒の温度は冷却されていない部分の冷却水により高くなりにくい。冷却水槽12内の冷却水は冷凍装置20の作動により徐々に冷却される。
【0027】
次に、制御装置40は、ステップ205にて水温センサ16の検出温度(Tw)が30℃より低くなったか否かの判定を実行する。水温センサ16の検出温度(Tw)が30℃より低くなければ、制御装置40はステップ204に戻す。制御装置40はステップ204,205の処理を繰り返し実行し、水温センサ16の検出温度(Tw)が30℃より低くなれば、ステップ205にて「YES」と判定してステップ206に進め、撹拌装置30を作動させる。
【0028】
このように制御したことで、撹拌装置30の作動前は、冷凍装置20は蒸発管23の周囲の冷却水を冷却するだけであるので、蒸発管23から圧縮機21に戻る冷媒の温度が継続的に高い状態であるのを防ぐことができ、圧縮機21に継続的に高い負荷が加わらないようになる。また、冷却水槽12内の冷却水は先ず蒸発管23の周囲が冷却され、蒸発管23の周囲の冷却された部分が撹拌装置30によって全体に撹拌されることで、冷却水槽12内の冷却水の全体が徐々に冷却されるため、圧縮機21に負荷が加わりにくくなった。
【0029】
ステップ203またはステップ206の処理を実行した後は制御装置40は氷厚センサ25の検出に基づいて冷凍装置20の作動を制御し、蒸発管23の周囲に形成される氷層が所定の厚みとなるように制御する(公知であるので図示は省略する)。
【0030】
(制御プログラム3)
この制御プログラムは、電源スイッチ41により電源を投入したときに、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)に基づいて、冷凍装置20と撹拌装置30との作動を制御したものである。なお、冷媒温度センサ24は冷却水槽12内に配設された蒸発管23の冷媒の温度を検出することで、間接的に冷却水槽12内の冷却水の温度を検出したものである。
図5に示したように、電源スイッチ41により電源が投入されると、制御装置40はステップ301にて冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が所定温度として30℃より低いか否かを判定する。冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が所定温度として30℃より低ければ、冷却水により蒸発管23内の冷媒を十分に冷却可能であるので、このときには制御装置40はステップ301にて「YES」と判定してステップ302に進め、撹拌装置30を先に作動させる。次に、制御装置40はステップ303にて所定時間経過後に冷凍装置20を作動させる。蒸発管23内の冷媒は撹拌装置30により撹拌された冷却水槽12内の冷却水により冷却され、その結果、蒸発管23内の冷媒の圧力は低下する。これにより、冷凍装置20を作動させても、蒸発管23から圧縮機21に流入する冷媒の圧力が高くならず、圧縮機21に大きな負荷が加わらないようになり、圧縮機21の起動不良が生じにくくなった。
【0031】
これに対し、電源スイッチ41により電源を投入したときに、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃以上であれば、撹拌装置30を先に作動させても蒸発管23内の冷媒を冷却水により十分冷却できないおそれがある。そのために、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃以上であれば、制御装置40はステップ301にて「NO」と判定してステップ304に進め、冷凍装置20を先に作動させる。冷却水槽12内の冷却水は蒸発管23の周囲から徐々に冷却される。このとき、冷却水槽12内の冷却水は撹拌装置30により撹拌されることがないので、蒸発管23内の冷媒の温度は冷却されていない部分の冷却水により高くなりにくい。冷却水槽12内の冷却水は冷凍装置20の作動により徐々に冷却される。
【0032】
次に、制御装置40は、ステップ305にて冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃より低くなったか否かの判定を実行する。冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃より低くなっていれば、制御装置40はステップ305にて「YES」と判定してステップ306に進め、撹拌装置30を作動させる。冷却水槽12内の冷却水は撹拌装置30により撹拌されることで蒸発管23の周囲で局部的に冷却された状態から全体として均一な温度となる。制御装置40はステップ308にて電源スイッチが投入されてから所定時間経過したかを判定し、所定時間経過していなければステップ304に戻す。
【0033】
ステップ306の処理による撹拌装置30の作動により、冷却水槽12内の蒸発管23の周囲の冷却水の温度が上昇する。冷却水槽12内の冷却水が充分に冷却できてないときには、蒸発管23から圧縮機21に戻る冷媒の温度が再び上昇する。このときには、制御装置40はステップ305にて「NO」と判定してステップ307に進め、撹拌装置30の作動を停止させる。ステップ304〜308の処理を繰り返し実行することで、冷却水槽12内の冷却水は蒸発管23の周囲を中心に徐々に冷却される。また、冷却水槽12内の冷却水を徐々に冷却することで、圧縮機21に大きな負荷が継続的に加えられないようにできる。電源を投入してから所定時間経過したときには冷却水槽12内の冷却水は充分に冷却された状態であるので、電源を投入してから所定時間経過したときには制御装置40はステップ308にて「YES」と判定する。
【0034】
このように制御したことで、撹拌装置30の作動前は、冷凍装置20は蒸発管23の周囲の冷却水を冷却するだけであるので、蒸発管23から圧縮機21に戻る冷媒の温度が継続的に高い状態であるのを防ぐことができ、圧縮機21に継続的に高い負荷が加わらないようになる。また、冷却水槽12内の冷却水は先ず蒸発管23の周囲が冷却され、蒸発管23の周囲の冷却された部分が撹拌装置30によって全体に撹拌されることで、冷却水槽12内の冷却水の全体が徐々に冷却されるため、圧縮機21に負荷が加わりにくくなった。
【0035】
ステップ303の処理後またはステップ308による「YES」の判定をした後は、制御装置40は氷厚センサ25の検出に基づいて冷凍装置20の作動を制御し、蒸発管23の周囲に形成される氷層が所定の厚みとなるように制御する(公知であるので図示は省略する)。
【0036】
(制御プログラム4)
この制御プログラムは、電源スイッチ41により電源を投入したときに、水温センサ16と冷媒温度センサ24との検出温度に基づいて、冷凍装置20と撹拌装置30との作動を制御したものである。
図6に示したように、電源スイッチ41により電源が投入されると、制御装置40はステップ401にて冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が所定温度として30℃以上であるか否かを判定する。冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃以上であればステップ401にて「YES」と判定してステップ402に進める。次に、制御装置40は、ステップ402にて冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が水温センサ16の検出温度(Tw)以上であるか否かを判定する。冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が水温センサ16の検出温度(Tw)以上であるときには、制御装置40はステップ402にて「YES」と判定し、ステップ403にて撹拌装置30を先に作動させ、ステップ404にて所定時間経過後に冷凍装置20を作動させる。蒸発管23内の冷媒は撹拌装置30により撹拌された冷却水槽12内の冷却水により冷却され、その結果、蒸発管23内の冷媒の圧力は低下する。これにより、冷凍装置20を作動させても、蒸発管23から圧縮機21に流入する冷媒の圧力が高くならず、圧縮機21に大きな負荷が加わらないようになり、圧縮機21の起動不良が生じにくくなった。
【0037】
これに対し、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が水温センサ16の検出温度(Tw)より低いときには、制御装置40はステップ402にて「NO」と判定し、ステップ405にて冷凍装置20を先に作動させ、ステップ406にて所定時間経過後に撹拌装置30を作動させる。このように制御したことで、撹拌装置30の作動前は、冷凍装置20は蒸発管23の周囲の冷却水を冷却するだけであるので、蒸発管23から圧縮機21に戻る冷媒の温度が継続的に高い状態であるのを防ぐことができ、圧縮機21に継続的に高い負荷が加わらないようになる。また、冷却水槽12内の冷却水は先ず蒸発管23の周囲が冷却され、蒸発管23の周囲の冷却された部分が撹拌装置30によって全体に撹拌されることで、冷却水槽12内の冷却水の全体が徐々に冷却されるため、圧縮機21に負荷が加わりにくくなった。なお、ステップ405、406の処理に代えて、制御プログラム2のステップ204〜206、または、制御プログラム3のステップ304〜308の処理を実行してもよい。
【0038】
電源スイッチ41により電源を投入したときに、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃より低ければ、制御装置40はステップ401にて「NO」と判定してステップ407に進める。次に、制御装置40は、ステップ407にて冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が水温センサ16の検出温度(Tw)以上であるか否かを判定する。冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が水温センサ16の検出温度(Tw)以上であるときには、制御装置40はステップ407にて「YES」と判定し、ステップ408にて撹拌装置30を先に作動させ、ステップ409にて所定時間経過後に冷凍装置20を作動させる。蒸発管23内の冷媒は撹拌装置30により撹拌された冷却水槽12内の冷却水により冷却され、その結果、蒸発管23内の冷媒の圧力は低下する。これにより、冷凍装置20を作動させても、蒸発管23から圧縮機21に流入する冷媒の圧力が高くならず、圧縮機21に大きな負荷が加わらないようになり、圧縮機21の起動不良が生じにくくなった。
【0039】
これに対し、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が30℃より低く、冷媒温度センサ24の検出温度(Tr)が水温センサ16の検出温度(Tw)より低いときには、制御装置40はステップ407にて「NO」と判定し、ステップ410にて冷凍装置20と撹拌装置30とを同時に作動させる。このときには、蒸発管23内の冷媒の温度は低いので、従来と同様に冷凍装置20と撹拌装置30とを同時に作動させても、圧縮機21に大きな負荷が加わらない。なお、ステップ410の冷凍装置20と撹拌装置30とを同時に作動させる処理に代えて、撹拌装置30を作動させてから所定時間経過後に冷凍装置20を作動させてもよい。
【0040】
上記のステップ403、406,409または410の処理を実行した後は、制御装置40は氷厚センサ25の検出に基づいて冷凍装置20の作動を制御し、蒸発管23の周囲に形成される氷層が所定の厚みとなるように制御する(公知であるので図示は省略する)。
【0041】
上記の各制御プログラムを実行することで、冷凍装置20の作動開始時に圧縮機21に大きな負荷が加わりにくくなり、圧縮機21の起動不良となりにくくなった。また、圧縮機21に大きな負荷が加わりにくくなるので、高性能であることで高価な圧縮機を用いなくてもよくなり、コストの上昇を防ぐことができる。
【0042】
上記の実施形態においては、制御プログラム1〜4の何れか1つを実行するものであればよい。また、制御プログラム2を実行するときには、水温センサ16を備えていれば冷媒温度センサ24を備えてなくてもよい。同様に、制御プログラム3を実行するときには、冷媒温度センサ24を備えていれば水温センサ16を備えてなくてもよい。
【0043】
上記の実施形態においては、各制御プログラムにて水温センサ16または冷媒温度センサ24の各検出温度が所定温度として30℃より低いか否かを判定しているが、所定温度としての30℃は一例にすぎず、30℃より例えば5℃高いまたは低い範囲であっても同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10…飲料ディスペンサ、12…冷却水槽、20…冷凍装置、30…撹拌装置、40…制御装置、41…電源スイッチ。