(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
窓部を有する筺体内に受光素子を収納する装置としては、例えば特許文献1に開示のある炎感知器がある。
特許文献1に記載の炎感知器は、「筐体を構成する窓材と、該窓材に対応して前記筐体内に設置される炎検出用受光素子と、前記筐体の外側に配置されて前記窓材の表面に対して発光する汚損検出用発光素子と、該汚損検出用発光素子の発光に基づく前記窓材の表面での反射光を受光する汚損検出用受光素子と、を備えていることを特徴とする」ものである(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
特許文献1には、窓材と受光素子に関して、以下のように記載されている。
「窓材3は、サファイアを材質として、監視区域Vからの余分な波長の光を遮断するとともに、検出の対象となる波長の光を透過するフィルタとなるように、その内面側にはカットフィルタとしてのフィルタ層が積層されている。具体的には、CO2共鳴帯域の波長の赤外線のみが炎検出用受光素子4に入力されるように構成されている。
炎検出用受光素子4は、ここでは赤外線式の受光素子として焦電素子が用いられる。この炎検出用受光素子4の監視区域Vは、筐体1に設けられる窓材3を透過可能な範囲として決定され、ここでは、その範囲を制限する押さえ部材2の開口の大きさによって監視区域Vが所定の角度に設定されている。」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の記載から理解されるように、炎感知器においては、窓材を介して入射される光が受光素子の監視領域となるように、受光素子の設置位置を調整して受光素子の光軸が所定の位置・方向を向くように設置する必要がある。
しかしながら、光学部内の受光素子は、製造時のばらつきによって、光軸と窓部の中心軸とが必ずしも一致しておらず、所望の監視範囲と実際の監視範囲とがずれてしまう。
そのため、炎感知器を設置する段階で、受光素子の光軸が窓部の中心軸に一致するように調整する必要がある。
【0006】
受光素子の光軸調整においては、光軸の傾きと、窓部に対する平行方向の位置の両方を調整する必要があるが、このような傾きと平行方向の位置調整を簡易にできる光軸調整機構は知られておらず、その開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、窓部に対する光軸の傾動角度と平行方向の位置とを簡易に調整することができる光軸調整機構を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光軸調整機構は、窓部を有する筺体内に設けられて前記筺体外部の光を受光する受光素子の光軸調整機構であって、
前記受光素子を内蔵する光学部と、該光学部が設置される光学台と、該光学台の前記窓部に対する相対位置を調整可能に支持する光学台支持機構とを備え、
該光学台支持機構は、前記光学台を前記窓部に対して相対移動可能に支持する支持部材と、該支持部材に係合して前記光学台の前記窓部に対する相対位置を調整する位置調整部材とを有することを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記支持部材は線部材からなり、一端側が前記光学台に取り付けられ、他端側が前記筺体の底部側に取り付けられる複数の下部支持線部材と、一端側が前記光学台に取り付けられ、他端側が前記位置調整部材に移動可能に係合してなる複数の上部支持線部材とを備え、
前記位置調整部材は回転可能な棒状の部材からなり、該位置調整部材が回転することで、前記上部支持線部材と前記位置調整部材との係合部が前記位置調整部材の軸方向に移動して、
これによって前記光学台が前記窓部に対して傾動可能かつ平行方向移動可能になっていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記受光素子の受光部が、窓部の中心軸上に配置されるように前記光学台が取り付けられてなり、
前記支持部材は、一端側が前記光学台にピン結合され、他端側が前記筺体側にピン結合される一対の下部支持リンク部材と、一端側が前記光学台にピン結合され、他端側が前記位置調整部材の軸方向に移動可能でかつ回動可能に結合される一対の上部支持リンク部材とを備えてなり、
前記位置調整部材は回転可能な棒状の部材からなり、該位置調整部材が回転することにより、前記上部支持リンク部材と前記位置調整部材との結合部が前記位置調整部材の軸方向に移動して、
これによって前記光学台が前記受光素子の受光部を中心に揺動可能になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、光軸調整機構によって光学台の窓部に対する傾動角度及び平行方向の位置を調整することにより、光軸の傾動角度と平行方向の位置を簡易に調整でき、視野を適正にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本発明の一実施の形態に係る光軸調整機構1は、
図1および
図2に示す通り、窓部3aを有する筐体3内に収容されている。筐体3は、底部3bと、底部3bから所定の間隔を空けて設けられている前壁3cと、周壁3dを有している。なお、筐体3の周壁3dは、
図1においては省略しており、
図2においては二点鎖線で示している。
【0014】
光軸調整機構1は、受光素子5(
図2参照)を内蔵する光学部7と、光学部7が設置される光学台9と、光学台9の位置を調整可能に支持する光学台支持機構11とを備えている。
以下、光軸調整機構1の各部を詳細に説明する。
【0015】
<光学部>
光学部7は、受光素子5や受光素子5に集光するレンズ7a等を有しており、受光素子5が外部からの光を受光したときに受光信号を発生させるものである。
受光素子5は、その受光面に臨む角度に応じた受光感度の分布を持つもので、その分布は、一般的には受光面に垂直な方向(光軸13、
図2参照)において受光感度が最も高く、光軸13からの角度が大きくなるにつれてその受光感度が小さくなる傾向を有している。そして所望する受光感度が得られる範囲が受光素子5の視野15として定義される。
図1および
図2では便宜的に視野15を、逆三角形で図示している。
【0016】
<光学台>
光学台9は、光学部7を支持する台であって、光学台9の窓部3aに対する相対位置を調整することで、光軸13の窓部3aに対する相対位置が調整(光軸調整)される。なお、光学台9の窓部3aに対する相対位置は、窓部3aに対する傾動角度(以下、単に「傾動角度」という)および窓部3aに対する平行方向の位置(以下、単に「平行方向の位置」という)によって規定される。
図1および
図2は光軸調整後の状態であり、光学台9の傾動角度及び平行方向の位置が調整され、この状態において視野15は窓部3aの縁で遮られておらず、監視範囲が適正な状態になっている。
【0017】
<光学台支持機構>
光学台支持機構11は、光学台9を窓部3aに対して傾動可能かつ平行方向移動可能に支持する複数の下部支持線部材21および上部支持線部材23と、上部支持線部材23に係合して光学台9の傾動角度及び平行方向の位置を調整する3つの位置調整部材(第1位置調整部材25〜第3位置調整部材29)とを有している。
【0018】
≪下部支持線部材および上部支持線部材≫
下部支持線部材21および上部支持線部材23は、屈曲可能かつ光学台9を支持可能な程度の剛性を有する線部材からなり、例えば金属製の線材からなる。
下部支持線部材21は、一端側が光学台9に取り付けられ、他端側が筐体3の底部3bに取り付けられている。
上部支持線部材23は、一端側が光学台9に取り付けられ、他端側が位置調整部材(第1位置調整部材25〜第3位置調整部材29)に係合している。
【0019】
≪第1位置調整部材〜第3位置調整部材≫
第1位置調整部材25〜第3位置調整部材29は棒状のねじ部材からなり、前壁3cに、底部3b側に向けて挿入され、かつ回転可能に設置されている。
第1位置調整部材25〜第3位置調整部材29の先端部には、上部支持線部材23の一端がねじ溝に沿って係合しており、第1位置調整部材25〜第3位置調整部材29の回転に伴って、係合部23aが軸方向に移動するようになっている。
【0020】
そのため、例えば第1位置調整部材25を、一方向に回転させて第1位置調整部材25に係合している上部支持線部材23の係合部23aを第1位置調整部材25の基端側に移動させれば、これに伴って光学台9の片側が上部支持線部材23によって引っ張られる。これによって、光学台9の該片側が窓部3aに対して近づく方向に傾動するとともに、第1位置調整部材25側に平行方向移動する。
また、第1位置調整部材25を逆回転させれば光学台9は、光学台9の該片側が窓部3aから離れる方向に傾動するとともに、第1位置調整部材25側から遠ざかる方向に平行方向移動する。
【0021】
上記の説明では、第1位置調整部材25を回転させた場合について説明したが、第2位置調整部材27、第3位置調整部材29についても同様の作用があり、これら3つの位置調整部材を適宜回転することで、光学台9の窓部3aに対する相対位置を調整することができる。
【0022】
以上のように構成された光軸調整機構1を用いて光軸13を調整する方法について、
図3および
図4に示した調整前の状態から、調整後の
図1および
図2に示す状態にする場合を例に挙げて説明する。
なお、筐体3の周壁3dは、
図3においては
図1と同様に省略しており、
図4においては
図2と同様に二点鎖線で示している。また、
図3および
図4においても便宜的に視野15を図示している。
【0023】
調整前の状態は、
図3および
図4に示すように、光軸13が窓部3aの中心軸17に対して傾いており、視野15がその一部を窓部3aの縁によって遮られている。この状態から、各位置調整部材を適宜回転させて上部支持線部材23の係合部23aを上下動させる。
図4に示す例では、第2位置調整部材27を回転させて、係合部23aを第2位置調整部材27の先端側に移動させることで、光学台9を、その片側を筐体3の底部3b側に傾動させるとともに、第2位置調整部材27側から遠ざける方向に平行方向移動させている。
【0024】
また、上記の操作に加えて第1位置調整部材25を回転させて係合部23aを第1位置調整部材25の基端側に移動させることで、光学台9を、その片側を窓部3a側に引き上げて傾動させるとともに、第1位置調整部材25側に平行方向移動させている。
このように、各位置調整部材を適宜回転させることで、光軸13を窓部3aの中心軸17に合わせることができる(
図1および
図2参照)。
【0025】
以上のように、本実施の形態においては、光軸調整機構1によって光学台9の傾動角度及び平行方向の位置を調整することにより、光軸13の傾動角度と平行方向の位置を調整して、視野15と窓部3aとの位置関係を簡易に適正な状態にすることができる。
【0026】
[実施の形態2]
上記の実施の形態1では、支持部材が線部材からなるものを例に挙げて説明したが、本実施の形態では、支持部材がリンク部材からなり、光学台支持機構をリンク機構によって構成したもの(光学台支持機構43)について説明する。
以下、
図5および
図6に基づいて本実施の形態を説明する。なお、
図5および
図6において、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付している。
【0027】
光学台支持機構43は、光学台9を支持する一対の下部支持リンク部材45および一対の上部支持リンク部材47と、棒状のねじ部材からなる第1位置調整部材51および第2位置調整部材53とを有している。
【0028】
下部支持リンク部材45は、一端側が光学台9にピン結合され、他端側が筐体3(底部3b)側にピン結合されている。
上部支持リンク部材47は、一端側が光学台9にピン結合され、他端側が位置調整部材(第1位置調整部材51、第2位置調整部材53)の軸方向に移動可能でかつ回動可能に結合されている(結合部59)。
【0029】
第1位置調整部材51および第2位置調整部材53はねじ部材からなり、基端側が筐体3内に設けられた支持板55に、先端側が筐体3の底部3bにそれぞれ回転可能に支持されている。第1位置調整部材51および第2位置調整部材53の先端側は筐体3の底部3bから突き出しており、この部分を操作することで第1位置調整部材51および第2位置調整部材53を回転させることができるようになっている。
【0030】
光学台支持機構43は、上述した下部支持リンク部材45、上部支持リンク部材47、第1位置調整部材51、第2位置調整部材53、そして光学台9によってリンク機構が構成されている。
位置調整部材(第1位置調整部材51、第2位置調整部材53)を回転させることにより、結合部59が軸方向に移動する。例えば、第1位置調整部材51に結合している上部支持リンク部材47の結合部59を前壁3c側に移動し、第2位置調整部材53に結合している上部支持リンク部材47の結合部59を底部3b側に移動させると、光学台9は、
図5に示すように傾動する。逆に、第1位置調整部材51に係合している上部支持リンク部材47の結合部59を底部3b側に移動し、第2位置調整部材53に係合している上部支持リンク部材47の結合部59を前壁3c側に移動させると、光学台9は、
図5と反対の方向に傾動する。
【0031】
つまり、第1位置調整部材51及び第2位置調整部材53を回転調整することで、光学台9の傾斜の向きを変えることができ、光学台9は揺動する。そして、このリンク機構においては、揺動の中心が、窓部3aの中心軸17と受光素子5の受光部5aの交点になるように、各構成部材(下部支持リンク部材45等)の長さが設定されている。
このように設定することで、受光素子5の平行方向の位置を変えることなく、光学台9の傾動角度を変えることで、視野15を調整できる。
【0032】
次に、上記のような構成の光学台支持機構43を備える光軸調整機構41の光軸調整方法について以下に説明する。
図6は光軸調整前の状態であり、光軸13が窓部3aの中心軸17に対して傾いており、視野15がその一部を窓部3aの縁によって遮られている。この状態から、各位置調整部材を適宜回転させて上部支持リンク部材47の結合部59を上下動させる。
【0033】
図6に示す例では、第1位置調整部材51および第2位置調整部材53を回転させて、第1位置調整部材51に結合している結合部59を前壁3c側に、第2位置調整部材53に結合している結合部59を底部3b側に移動させることで、光学台9を受光素子5の受光部5aを中心に揺動させている。より詳細には、光学台9を、その片側が筐体3の底部3b側に近づくように傾動させるとともに、第2位置調整部材53側から遠ざける方向に平行方向移動させている。このとき、受光素子5の平行方向の位置が変わることがなく、常に窓部3aの中心軸17上にある。
したがって、本実施の形態では、視野15の調整を行うのに、第1位置調整部材51、第2位置調整部材53の回転調整によって、受光素子5の平行方向の位置を変えることなく光軸13の傾動角度調整ができるので、調整が容易で、作業性に優れている。
本実施の形態1及び2では、各位置調整部を独立して操作して光学台9を傾動角度調整しているが、例えば各位置調整部を連結し、連動させることによって調整できるようにしても良い。