(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109621
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】シャープペンシル型リフィール
(51)【国際特許分類】
B43K 21/00 20060101AFI20170327BHJP
B43K 21/16 20060101ALI20170327BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
B43K21/00 D
B43K21/16 H
B43K24/18 100
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73531(P2013-73531)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-195979(P2014-195979A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】相沢 吉敏
【審査官】
宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−107882(JP,U)
【文献】
特開2010−131945(JP,A)
【文献】
特開平11−5390(JP,A)
【文献】
特開平6−106892(JP,A)
【文献】
実開平6−86983(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00 − 21/26
B43K 24/00 − 24/18
B43K 27/00 − 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック部とクラッチリングとの協働により挟持された芯を先金から繰り出すために、長手方向に延在する軸筒と芯タンクとの間で錘が軸線方向に往復運動して、後方からの前記錘の突き当て力により前記チャック部を前方に押し出す動作と、ノックにより前記チャック部を前方に押し出す動作とを行うように構成したシャープペンシル型リフィールにおいて、
前記軸筒の前端側に配置されたスプリング収容筒部と、
前記スプリング収容筒部の内壁面から突出した仕切壁と、
前端が前記スプリング収容筒部の内側に配置されたコネクタ筒部に支持され、後端が前記仕切壁に当接する第1のスプリングと、
前端が前記仕切壁に当接し、後端が前記チャック部を後方に向けて付勢する第2のスプリングと、
前記第1のスプリングの前記前端と前記クラッチリングとの間で延在する前記コネクタ筒部と、
前記コネクタ筒部の内側に配置されると共に、前端が前記チャック部の後端に固定されて後方に向けて延在して、後端が前記第2のスプリングの前記後端に係止されるジョイント筒部と、を備え、
前記ジョイント筒部の外壁面には、前記仕切壁の前方に配置されて前記仕切壁の前進によって係合する従動部が設けられていることを特徴とするシャープペンシル型リフィール。
【請求項2】
前記コネクタ筒部の外周面には、前記スプリング収容筒部に形成された移動規制孔内に挿入される突起部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のシャープペンシル型リフィール。
【請求項3】
前記スプリング収容筒部と前記第1及び第2のスプリングと前記チャック部と前記クラッチリングと前記コネクタ筒部と前記ジョイント筒部と前記先金とを備えた機構ユニットと、
前端が前記スプリング収容筒部に装着される前記軸筒と前記芯タンクと前記錘とを備えた作動ユニットと、により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシャープペンシル型リフィール。
【請求項4】
前記スプリング収容筒部の前端側には、前端が開放されて軸線方向に延在するスリットが形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載のシャープペンシル型リフィール。
【請求項5】
前記コネクタ筒部は、前記スプリング収容筒部に形成された移動規制孔内に挿入される突起部が形成されて前記移動規制孔から挿入可能なコネクタ駒を有することを特徴とする請求項2又は3記載のシャープペンシル型リフィール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具内に装填して利用されるシャープペンシル型リフィールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許第4766963号公報がある。この公報に記載されたシャープペンシル型リフィールは、ステンレスパイプで構成された軸筒を有し、この軸筒の後端部に圧入固着された頭冠の先端には中子が配置され、この中子の後端部に位置するように、押圧部材が摺動自在に配設されている。また、頭冠の内段部と押圧部材の外段部との間にコイルスプリングが配設されているので、中子の後端が頭冠の前端に当接する。更に、押圧部材の後端部にはノック部材が着脱可能に装着されている。そして、ノック部材を指で押し、中子が芯タンクの後端を前方に押すことで、チャックを前方に押し出して、芯を繰り出すことができる。また、リフィールを振って重量体(錘)をコネクタの後端に突き当てることで、コネクタが前進してチャックを前方に移動させ、芯を繰り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4766963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のリフィールでノックにより芯を繰り出す場合、中子と芯タンクの後端との間に隙間(ノック遊び量)を設けることで、チャックの後退移動距離に余裕をもたせることができ、これによりチャックを最大限まで後退させることができ、その結果として、チャックで芯を挟持する力を最大限まで上げることができる。そして、製造誤差を考慮して、このようなノック遊び量を必要以上に大きくするような設計にすると、ノックする場合の遊び量が多くなり、これによって、コイルスプリングを大きく圧縮させなければならないので、ノック力量が大きくなり、しかもノック部材の作動量が大きくなるので、ノック時の使い勝手が悪くなるといった問題点がある。また、このような問題を引き起こさないように、遊び量を小さくすると、各部品の寸法精度を上げなくてはならず、その場合、芯タンクの長さ寸法の管理が重要になってくる。芯タンクは、一本のパイプの切断により所定長さにする場合や射出成形で所定長さにする場合の何れであっても、細長いパイプ形状をなしているので、切断刃の刃厚や熱による膨張/収縮の影響を受け易く、精密な寸法管理が難しい。このように、ノック遊び量は、芯タンクの長さ寸法精度に依存しているので、ノック遊び量にバラツキが発生し易くなると言った問題点が発生する。
【0005】
本発明は、ノック遊び量を設定するにあたって、芯タンクの長さ寸法精度に依存させないようにしたシャープペンシル型リフィールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チャック部とクラッチリングとの協働により挟持された芯を先金から繰り出すために、長手方向に延在する軸筒と芯タンクとの間で錘が軸線方向に往復運動して、後方からの錘の突き当て力によりチャック部を前方に押し出す動作と、ノックによりチャック部を前方に押し出す動作とを行うように構成したシャープペンシル型リフィールにおいて、
軸筒の前端側に配置されたスプリング収容筒部と、
スプリング収容筒部の内壁面から突出した仕切壁と、
前端がスプリング収容筒部の内側に配置されたコネクタ筒部に支持され、後端が仕切壁に当接する第1のスプリングと、
前端が仕切壁に当接し、後端がチャック部を後方に向けて付勢する第2のスプリングと、
第1のスプリングの前端とクラッチリングとの間で延在するコネクタ筒部と、
コネクタ筒部の内側に配置されると共に、前端がチャック部の後端に固定されて後方に向けて延在して、後端が第2のスプリングの後端に係止されるジョイント筒部と、を備え、
ジョイント筒部の外壁面には、仕切壁の前方に配置されて仕切壁の前進によって係合する従動部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
このシャープペンシル型リフィールにおいては、ノックによって軸筒を軸線方向に前進させると、スプリング収容筒部が前進して仕切壁によって第1のスプリングが圧縮され、それに伴って、仕切壁が従動部に当たることでジョイント筒部が前進させられ、そしてチャック部が前進する。一回のノック毎の復帰動作として、軸筒は第1のスプリングにより後退させられる。このとき、第1のスプリングの復帰力によりコネクタ筒部を介してクラッチリングを前方に付勢し、それと同時に、第2のスプリングの付勢力によりジョイント筒部を介してチャック部を後方に付勢する。すなわち、チャック部の後退とクラッチリングの前進との協働により、チャック部で芯を強く挟持させることができ、従って、筆圧で芯が引っ込むような事態を回避させている。また、ノック力が加わっていな状態で、スプリング収容筒部の仕切壁とジョイント筒部の外壁面に形成された従動部との距離が、ノック遊び量になっているので、芯タンクの長さの寸法精度に依存することなく、ノック遊び量を設計することができ、これによって精度の高いノック遊び量が得られる。また、このリフィールにあっては、リフィール自体を振って錘をジョイント筒部の後端に突き当てることで、ジョイント筒部が前進してチャックを前方に移動させ、芯を繰り出すこともできる。
【0008】
また、コネクタ筒部の外周面には、スプリング収容筒部に形成された移動規制孔内に挿入される突起部が設けられている。
このような構成を採用すると、ノック時やノック戻り時において、軸筒の移動を確実に規制させることができる。
【0009】
また、スプリング収容筒部と第1及び第2のスプリングとチャック部とクラッチリングとコネクタ筒部とジョイント筒部と先金とを備えた機構ユニットと、
前端がスプリング収容筒部に装着される軸筒と芯タンクと錘とを備えた作動ユニットと、により構成されている。
このような構成を採用すると、機構ユニットと作動ユニットとして製造時に別々に管理し易く、組立て作業にあっては、軸筒の前端をスプリング収容筒部の後方から装着するだけで良いので、組立て作業性を良好にすることができる。
【0010】
また、スプリング収容筒部の前端側には、前端が開放されて軸線方向に延在するスリットが形成されている。
このような構成を採用すると、スリットによってスプリング収容筒部の前端側の径を広げることができるので、スプリング収容筒部に形成された移動規制孔内にコネクタ筒部の突起部を容易に挿入させることができる。
【0011】
また、コネクタ筒部は、突起部が形成されて移動規制孔から挿入可能なコネクタ駒を有する。
このような構成を採用すると、スプリング収容筒部の径を無理に広げなくても、スプリング収容筒部に形成された移動規制孔内にコネクタ筒部の突起部を容易に配置させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノック遊び量を設定するにあたって、芯タンクの長さ寸法精度に依存させなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るシャープペンシル型リフィールを適用した複合筆記具の一実施形態を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明に係るシャープペンシル型リフィールの第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図4のVII−VII線に沿う断面図である。
【
図8】本発明に係るシャープペンシル型リフィールの第2の実施形態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシャープペンシル型リフィールの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、ペン先側を「前方側」として以下説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、複合筆記具1は、3色のボールペン筆記とシャープペン筆記とを可能にした複合タイプである。このノック式複合筆記具1は、3本のボールペン型のリフィール2と、1本のシャープペンシル型リフィール3と、各リフィール2,3を収容する樹脂製の軸本体4と、軸本体4の後端に配置されて、シャープペンシル型リフィール3をノックすることで芯出しを可能にする第1のノック部11と、各リフィール2,3を軸本体4の先端から選択的に出し入れ可能にする第2のノック部12と、開閉式クリップ8と、を備えている。
【0016】
また、軸本体4は、前軸4aと後軸4bとからなり、前軸4aの後側に設けられた雄ネジ部と後軸4bの前側に設けられた雌ネジ部との螺合によって、前軸4aと後軸4bは連結されている。このように、軸本体4を前軸4aと後軸4bとに二分割することで、前軸4aを外してリフィール2,3を容易に交換することができ、前軸4aと後軸4bの材質を異ならせることもできる。
【0017】
さらに、軸本体4の後部に形成されたガイド溝4dに沿って樹脂製の第2のノック部12が摺動し、各第2のノック部12の先端にリフィール2,3の後端がそれぞれ差し込まれている。軸本体4内には、第2のノック部12を復帰させるための螺旋バネ(不図示)が収容され、螺旋バネの一端は軸本体4で係止され、螺旋バネの他端は第2のノック部12の先端に係止されている。
【0018】
このような構成の複合筆記具1では、第2のノック部12の何れかを指で押し下げることによって、軸本体4の先端開口4cからリフィール2,3の先端を選択的に出し入れすることができる。そして、選択された第2のノック部12以外の第2のノック部12を指で軽く押し下げることにより、選択されたリフィール2,3の先端を軸本体4内に格納することができる。
【0019】
さらに、軸本体4の後軸4b内には、第2のノック部12及び螺旋バネが組み付けられた可動ユニット9が収容されている。この可動ユニット9は、軸線L方向に摺動すると共に、軸本体4の後端に設けられた第1のノック部11のノックに追従して前進と、軸本体4内の螺旋バネ(不図示)による後退とを行う。この第1のノック部11は、シャープペンシル型リフィール3の芯出しや芯21の先端をリフィール3内に格納する際に利用される。
【0020】
次に、シャープペンシル型リフィール3について詳細に説明する。
【0021】
図2〜
図5に示されるように、このリフィール3は、金属製の軸筒15内に収容された錘20が軸線L方向に往復運動して、後方からの錘20の突き当て力によりチャック部17を前方に押し出す動作と、第1のノック部11による軸筒15の前進に同期してチャック部17を前方に押し出す動作と、が行えるように構成されている。
【0022】
金属製の軸筒15内には金属製の芯タンク18が収容され、軸筒15の後端には尾栓19が固定され、尾栓19に形成した孔部19aから芯21を芯タンク18内に補充することができる。そして、軸筒15と芯タンク18との間には、円筒状の錘20が配置されている。この錘20は、軸線L方向に移動自在であり、比重の大きい真鍮などの金属で形成されている。
【0023】
芯タンク18の前端は、円筒状のジョイント筒部22の後端側に圧入されている。ジョイント筒部22の後端側には、軸線L方向に延在する割りスリット22aが形成され、ジョイント筒部22の途中には、前後で外径が縮径に変化する位置に段差状の従動部22bが形成されている。この従動部22bを境にして、ジョイント筒部22の前側の外周には第1のスプリング23が配置され、ジョイント筒部22の後側の外周には第2のスプリング24が配置されている。そして、ジョイント筒部22の径方向外方には、金属製のスプリング収容筒部26が配置され、ジョイント筒部22とスプリング収容筒部26との間に、第1及び第2のスプリング23,24が収容されることになる。
【0024】
第1のスプリング23の前端とクラッチリング27との間で延在するコネクタ筒部30の後端で第1のスプリング23の前端は支持され、第1のスプリング23の後端は、スプリング収容筒部26の内壁面から突出した環状の仕切壁26aに当接している。第2のスプリング24の前端は、仕切壁26aに当接し、第2のスプリング24の後端は、ジョイント筒部22の最後端に形成された爪部22cに係止させられると共に、軸線L方向に延在するチャック部17を後方に向けて付勢する。なお、軸筒15はスプリング収容筒部26に圧入され、軸筒15の前端は、スプリング収容筒部26の仕切壁26aに突き当てられている。
【0025】
ジョイント筒部22の後端側に形成された割りスリット22a(
図7参照)は、第2のスプリング24を後方からジョイント筒部22に組み付ける際に、爪部22cを第2のスプリング24が乗り越えるための縮径機能をもっている。そして、ジョイント筒部22に第2のスプリング24を組み付けた後、スリット22aの部分において、ジョイント筒部22は、第2のスプリング24により縮径される虞があるが、芯タンク18の前端をジョイント筒部22の後端側に圧入することで、この縮径を防止している。
【0026】
スプリング収容筒部26の内側に配置されて第1のスプリング23の前端に当接されるコネクタ筒部30の後側は、スプリング収容筒部26とジョイント筒部22との間に配置されている。コネクタ筒部30の前端は、先金31の後端にネジ結合部32を介して接合されている。コネクタ筒部30の後側の外周面には、スプリング収容筒部26で軸線L方向に延在するように形成された移動規制孔26S内に挿入される突起部30aが設けられている(
図6参照)。この移動規制孔26Sは、第1のノック部11のノック時やノック戻り時において、先金31に対する軸筒15の移動範囲を規制している。
【0027】
スプリング収容筒部26の前端側には、前端が開放されて軸線L方向に延在するスリット26bが形成されている。このような構成を採用すると、スリット26bによってスプリング収容筒部26の前端側の径を広げることができるので、スプリング収容筒部26に形成された移動規制孔26S内に前側からコネクタ筒部30の突起部30aを容易に挿入させることができる。なお、突起部30aには、スプリング収容筒部26内に入り易くするための傾斜ガイド面30bが形成されている。
【0028】
ジョイント筒部22の前端には、チャック部17の後端が嵌め込まれている。スプリング収容筒部26に設けられた仕切壁26aの前方には、ジョイント筒部22の段差状の従動部22bが配置され、従動部22bは、仕切壁26aの前進によって係合する。また、先金31の内周面には、クラッチリング27の前進を規制する段部31aが形成され、先金31内の前端側には、ゴム製のブレーカ33が収容されている。
【0029】
図1に示されるように、第1のノック部11のノックによって軸筒15を軸線L方向に前進させると、リフィール3の先金31が軸本体4の先端開口4cの周縁で係止させられ、それ以上の先金31の前進が阻止される。スプリング収容筒部26が前進して仕切壁26aによって第1のスプリング23が圧縮され、それに伴って、仕切壁26aが従動部22bに当たることでジョイント筒部22が前進させられ、そしてチャック部17が前進する。一回のノック毎の復帰動作として、軸筒15は第1のスプリング23により後退させられる。
【0030】
このとき、第1のスプリング23の復帰力によりスプリング収容筒部26が後方へ付勢されるとともに、第2のスプリング24の付勢力によりジョイント筒部22が後方へ付勢されるので、チャック部17が後方へ移動する。チャック部17の後方への移動に伴って、チャック部17の前端外周にクラッチリング27が嵌め込まれる。すなわち、チャック部17とクラッチリング27との協働により、チャック部17で芯21を強く挟持させることができ、従って、筆圧で芯21が引っ込むような事態を回避させている。
【0031】
そして、ノック遊び量Sを設けることで、チャック部17の後退移動距離に余裕をもたせることができ、これによりチャック部17を最大限まで後退させることができ、その結果、チャック部17で芯21を挟持する力を最大限まで上げることができる。しかしながら、このようなノック遊び量Sを必要以上に大きくするような設計にすると、ノックする場合の遊び量Sが多くなり、これによって、第1のスプリング23を大きく圧縮させなければならないので、ノック力量が大きくなり、しかも第1のノック部11の作動量が大きくなるので、ノック時の使い勝手が悪くなるといった問題点がある。
【0032】
そこで、筆記具1では、第1のノック部11によるノック力が加わっていない状態で、スプリング収容筒部26の仕切壁26aとジョイント筒部22の外壁面に形成された従動部22bとの距離Sが、ノック遊び量になっているので、芯タンク18の長さの寸法精度に依存することなく、ノック遊び量Sを設計することができ、これによって精度の高いノック遊び量Sが得られる。さらには、筆記具1の部品製造において適切なノック遊び量Sを制御するためには、軸線L方向の寸法管理が必要となる。ここで、筆記具1においてノック遊び量Sの制御のための軸線L方向の寸法管理が必要な部品は、チャック部17,クラッチリング27,コネクタ筒部30,ジョイント筒部22,スプリング収容筒部26の5部品となる。一方、従来技術(特許第4766963号公報)においては、軸筒7後端面から中子10の大径部と小径部の接続端部までが本実施例で言うところのノック遊び量Sとなるので、軸方向の寸法管理が必要な部品は、チャック1,締めリング3,内軸4,コレクター2,芯タンク7,中子10,頭冠9,軸筒13及び押圧部材11の9部品となる。ゆえに、従来においては過大にノック遊び量Sの寸法を確保しておく必要がある。本願発明によれば、寸法管理が必要な部品点数を大幅に削減することができ、生産効率を向上させることができる。さらに、適切なノック遊び量Sにより、ノック時に芯が出てくるまでの遊び量を適切にすることができるので、従来技術のように、ノック時に芯が出てくるまでの遊びが過大に感じることがない。また、筆記具1を振って錘20をジョイント筒部22の後端に突き当てることで、ジョイント筒部22が前進してチャック部17を前方に移動させ、芯21を繰り出すこともできる。
【0033】
リフィール3は、スプリング収容筒部26と第1及び第2のスプリング23,24とチャック部17とクラッチリング27とコネクタ筒部30とジョイント筒部22と先金31とを備えた機構ユニットAと、前端がスプリング収容筒部26に装着される軸筒15と芯タンク18と錘20とを備えた作動ユニットBと、により構成されている。このような構成を採用すると、機構ユニットAと作動ユニットBとして製造時に別々に管理し易く、組立て作業にあっては、軸筒15の前端をスプリング収容筒部26の後方から装着するだけで良いので、組立て作業性を良好にすることができる。
【0034】
[第2の実施形態]
第1の実施形態と同一又は同等な構成部分については、同一符号を付し、重複する説明を省略する。そして、第1の実施形態と異なっているスプリング収容筒部26Aとコネクタ筒部30Aと芯タンク18Aとの構成説明に留める。
【0035】
図8〜
図11に示されるように、シャープペンシル型リフィール3Aにおいて、金属製のスプリング収容筒部26Aの前端側には、軸線L方向に延在する移動規制孔26Sが形成されている。これに対して、コネクタ筒部30Aは、移動規制孔26Sから挿入可能なコネクタ駒35を有している。このコネクタ駒35は、軸線L方向に延在すると共に、移動規制孔26Sの外形より僅かに小さい外形を有する細長い駒本体35aと、駒本体35aから突出すると共に、移動規制孔26Sを形成する壁面に係合する突起部35bと、を有している。そして、コネクタ駒35は、コネクタ筒部30Aに形成された駒収容部30cに上から嵌め込まれている(
図11参照)。
【0036】
コネクタ駒35の採用により、スプリング収容筒部26Aの径を無理に広げなくても、スプリング収容筒部26Aに形成された移動規制孔26Sから駒収容部30c内にコネクタ駒35を挿入させるだけで、コネクタ筒部30Aの突起部35bを移動規制孔26S内に容易に配置させることができる。
【0037】
また、芯タンク18Aの前端は、ジョイント筒部22の後端側に圧入しなくてもよい。この場合、ジョイント筒部22の後端側の縮径を防止するための補強管36を、割りスリット22aに対応した位置でジョイント筒部22の後端側に圧入する。
【符号の説明】
【0038】
1…複合筆記具 3,3A…シャープペンシル型リフィール 4…軸本体 9…可動ユニット 11…第1のノック部 12…第2のノック部 15…軸筒 17…チャック部 18,18A…芯タンク 20…錘 21…芯 22…ジョイント筒部 22b…従動部 22c…爪部 23…第1のスプリング 24…第2のスプリング 26,26A…スプリング収容筒部 26S…移動規制孔 26a…仕切壁 26b…スリット 27…クラッチリング 30,30A…コネクタ筒部 30a,35b…突起部 31…先金 33…ブレーカ 35…コネクタ駒 A…機構ユニット B…作動ユニット L…軸線 S…ノック遊び量