特許第6109623号(P6109623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハイレックスコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000002
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000003
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000004
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000005
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000006
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000007
  • 特許6109623-ウインドレギュレータ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109623
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20170327BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20170327BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   E05F11/48 C
   E05F15/689
   B60J1/17 B
   B60J1/17 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-76878(P2013-76878)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-201905(P2014-201905A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】有井 秀明
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−255866(JP,A)
【文献】 実開平4−119586(JP,U)
【文献】 特開2004−257008(JP,A)
【文献】 特開2004−263429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
E05F 15/00 − 15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスを保持するキャリアプレートと、
前記キャリアプレートを案内するガイドレールと、
前記ガイドレールに設けられる駆動装置と、
前記ガイドレールの端部に設けられた方向転換部材と、
一端が前記キャリアプレートに取り付けられ、他端が前記方向転換部材を介して前記駆動装置に取り付けられ、駆動装置の駆動力をキャリアプレートへ伝達するインナーケーブルと、
前記方向転換部材と前記駆動装置との間に配索された前記インナーケーブルの外周を覆うアウターケーシングとを有するウインドレギュレータであって、
前記ガイドレールは、
前記アウターケーシングの一方の端部を保持する第一保持部と、
前記アウターケーシングの他方の端部を保持する第二保持部とを有し、
前記第一保持部は、前記方向転換部材近傍に設けられ、
前記第二保持部は、前記方向転換部材から前記駆動装置へ向かって配索されたインナーケーブルが挿通される前記駆動装置の挿通部と前記第二保持部とを繋ぐ直線軸の方向が、前記第一保持部と前記挿通部とを繋ぐ直線軸の方向と同一又は近似した方向となる位置に設けられ、
前記アウターケーシングは、前記ガイドレールの長手方向に沿って直線状に配索され、
前記アウターケーシングの一方の端部及び他方の端部がそれぞれ前記第一保持部及び前記第二保持部を押圧するようにされてなることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記インナーケーブルを巻き取るドラムを有し、
前記第二保持部は、前記ドラムから延出した前記第二保持部に至る範囲における前記インナーケーブルが前記インナーケーブルの軸方向において作動時に略一致するように前記ガイドレールに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記ガイドレールの下端に設けられる
ことを特徴とする請求項1または2記載のウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓ガラスを昇降させるウインドレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の窓ガラスを昇降させる装置として、ウインドレギュレータが知られている。このようなウインドレギュレータとしては、車両の窓ガラスを保持するキャリアプレートと、キャリアプレートを移動自在にガイドするガイドレールと、ガイドレールの端部に設けられた方向転換部材と、方向転換部材に掛け渡されかつキャリアプレートに連結されたケーブルと、ケーブルをガイドレール軸線方向に移動させる駆動装置とを有するものがある。
【0003】
このようなケーブルを用いたウインドレギュレータにおいては、部品点数が少なく車体への取り付けが容易であるという理由から、ガイドレールの下端にドラム及び駆動部が設けられた下端ドライブ型のウインドレギュレータが採用されている。
【0004】
下端ドライブ型のウインドレギュレータとして特許文献1に開示されたウインドレギュレータがある。特許文献1のウインドレギュレータは、ガイドレールの上端にプーリが設けられ、下端にケーブル駆動装置が設けられており、プーリとケーブル駆動装置との間にインナーケーブルをループ状に配索し、ガイドレールによって昇降自在にガイドされるキャリアプレートが上昇用インナーケーブルに連結されると共に、下降側伸び取り機構を介して下降用インナーケーブルに連結され、ガイドレールの途中に設けたブラケットとプーリとの間にアウターケーシングを湾曲状態で配索し、アウターケーシングの下端を上向きに付勢する上昇側伸び取り機構をブラケットに設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−196204号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の引用文献1のウインドレギュレータは、アウターケーシングを湾曲させ、アウターケーシングの下端を伸び取り機構により付勢することでインナーケーブルの伸びを取るようにされているため、車両ドアの窓ガラス開口部付近にインナーケーブルが挿通されたアウターケーシングが配置されることとなる。
【0007】
そのため、フック等の工具を車両ドアの窓ガラス開口部から挿入し、アウターチューブに引っ掛けて、そのままドアの窓ガラス開口部まで上方へ引き上げることにより、アウターチューブと共にインナーケーブルが切断されやすい状態となる虞れがある。
【0008】
そこで本発明は、インナーケーブルが切断されやすい状態となることを抑制した防盗性を有するウインドレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のウインドレギュレータは、車両の窓ガラスを保持するキャリアプレートと、前記キャリアプレートを案内するガイドレールと、前記ガイドレールに設けられる駆動装置と、前記ガイドレールの端部に設けられた方向転換部材と、一端が前記キャリアプレートに取り付けられ、他端が前記方向転換部材を介して前記駆動装置に取り付けられ、駆動装置の駆動力をキャリアプレートへ伝達するインナーケーブルと、前記方向転換部材と前記駆動装置との間に配索された前記インナーケーブルの外周を覆うアウターケーシングとを有するウインドレギュレータであって、前記ガイドレールは、前記アウターケーシングの一方の端部を保持する第一保持部と、前記アウターケーシングの他方の端部を保持する第二保持部とを有し、前記第一保持部は、前記方向転換部材近傍に設けられ、前記第二保持部は、前記方向転換部材から前記駆動装置へ向かって配索されたインナーケーブルが挿通される前記駆動装置の挿通部と前記第二保持部とを繋ぐ直線軸の方向が、前記第一保持部と前記挿通部とを繋ぐ直線軸の方向と同一又は近似した方向となる位置に設けられ、前記アウターケーシングは、前記ガイドレールの長手方向に沿って直線状に配索され、前記アウターケーシングの一方の端部及び他方の端部がそれぞれ前記第一保持部及び前記第二保持部を押圧するようにされてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明のウインドレギュレータによると、方向転換部材と駆動装置との間に配索されたインナーケーブルの外周をアウターケーシングが覆っているので、刃物などを用いてインナーケーブルが容易に切断されることを防ぐことができる。そして、アウターケーシングは、その一端が方向転換部材近傍に設けられる第一保持部に保持されるとともに、他端が、第二保持部に保持されている。すなわち、アウターケーシングは第一の保持部及び第二の保持部により両端がそれぞれ保持されているので、キャリアプレートなどの他の部材と干渉しない位置に配索することができ、アウターケーシングの振動やアウターケーシングが他の部材と衝突することにより異音が発生することを防止できる。さらに、アウターケーシングの両端は第1の保持部及び第2の保持部を押圧しつつ、ガイドレールに沿って直線状に配索されているため、アウターケーシングは第一の保持部及び第二の保持部に確実に保持されることになり、フックのような工具を車両ドアの窓ガラス開口部から挿入し、アウターチューブに引っ掛けられたとしても、窓ガラス開口部へ向けて引っ張られることを抑制できるので、インナーケーブルが窓ガラス開口部から引き出されて切断されることを防ぎ、防盗性に優れたウインドレギュレータとすることができる。
【0011】
(2)本発明のウインドレギュレータによると、駆動装置は、インナーケーブルを巻き取るドラムを有しており、第二保持部は、ドラムと第二保持部との間のインナーケーブルの軸方向と、第一保持部及び第二保持部の間のインナーケーブルの軸方向とが、作動時に略一致するようにガイドレールに取り付けられているので、インナーケーブルの第二保持部に挿入される位置における屈曲を極力小さくすることができる。したがって、インナーケーブルが軸方向に摺動する際に、ドラムの巻取り及び繰り出しによって生じるインナーケーブルの揺動により、インナーケーブルが第二保持部に擦って損傷することを抑制することができる。
【0012】
(3)本発明のウインドレギュレータによると、駆動装置がガイドレールの下端に設けられることにより、限られた車両のドアの内部のスペースにウインドレギュレータを収まりよく収納することができ、この場合に露出範囲が長くなるインナーケーブルをアウターケーシングにより簡単に保護することができる。また、本発明のウインドレギュレータは、第一保持部から第二保持部までのインナーケーブルをアウターケーシングで覆う構成であるので、駆動装置と第二保持部との間はインナーケーブルが露出しているが、駆動装置をガイドレールの下端に設けることにより、駆動装置と第二保持部との間のインナーケーブルが露出している部分は、車両ドアの窓ガラス開口部から離れた下端付近に配置されることになる。したがって、窓ガラス開口部から切断用工具が挿入されたとしてもインナーケーブルの露出している部分に届きにくく、インナーケーブルが容易に切断されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウインドレギュレータの全体構成を示す正面図。
図2】車両の窓ガラスを閉じた状態のウインドレギュレータを示す図。
図3】(A)はドラムハウジングを側面からみた状態を示す図、(B)はドラムの側面図。
図4】第一保持部及び第二保持部の構成を分解して示した一部省略斜視図。
図5図4の第一保持部及び第二保持部を組み立てた状態を示す一部省略斜視図。
図6図5のI−I線断面図。
図7】ドラムに巻き取られることにより、上昇用インナーケーブルが揺動する状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明のウインドレギュレータ1の実施形態について説明する。図1及び図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、図示しない車両ドアの内部に収納されて、車両の窓ガラス2を昇降させる装置である。ウインドレギュレータ1は、車両の窓ガラス2を保持するキャリアプレート3と、キャリアプレート3を案内するガイドレール4と、ガイドレール4の下端に設けられる駆動装置5と、ガイドレール4の上端に設けられる方向転換部材6と、一端がキャリアプレート3に固定され、他端が方向転換部材6を介して駆動装置5に取り付けられ、駆動装置5の駆動力をキャリアプレート3へ伝達する上昇用インナーケーブル7と、一端がキャリアプレート3に固定され、他端が駆動装置5に取付けられる下降用インナーケーブル8と、方向転換部材6と駆動装置5との間に配索された上昇用インナーケーブル7の外周を覆うアウターケーシング9とを有している。
【0015】
なお、図1において、上昇用インナーケーブル7の方向転換部材6からキャリアプレート3までの部分及び下降用インナーケーブル8はガイドレール4の裏側に隠れて配索されているので視認できないが、説明の便宜上破線で示しており、同様にキャリアプレート3のガイドレール4の裏側に隠れる部分についても破線で示している。また、図1及び図2において窓ガラス2は一部を省略して記載している。
【0016】
キャリアプレート3は、ガイドレール4に窓ガラスの開閉方向へ摺動可能となるように取付けられており、図2に示すように、キャリアプレート3がガイドレール4の上端に上がった位置にあるとき、車両の窓ガラス2が完全に閉まっている。キャリアプレート3には、上昇用インナーケーブル7および下降用インナーケーブル8のそれぞれの図示しないケーブルエンドが固定されている。また、キャリアプレート3には窓ガラス2を固定する取付孔10が形成されている。そして、ガイドレール4は、キャリアプレート3が摺動可能な長手形状であって、略鉛直方向に向かって延びている。ガイドレール4にはアウターケーシング9の端部を保持する第一保持部11及び第二保持部12が形成されている。
【0017】
駆動装置5は、図示しない減速機及びモータを備える駆動モータアッセンブリ13と、駆動モータアッセンブリ13の不図示の出力軸に連結されるドラム14と、そのドラム14(図3)の上方を覆うドラムハウジング16とを備えている。ドラム14は、上昇用インナーケーブル7及び下降用インナーケーブル8の端部を係止する不図示の係止部と、図3(B)に示すように、上昇用インナーケーブル7及び下降用インナーケーブル8を巻き取るための螺旋状のガイド溝15を備えている。ドラムハウジング16は、ガイドレール4の下端が挿入されて固定される形状であって、図3(A)に示すように、ドラム14に巻き取られる上昇用インナーケーブル7が挿通される上昇側挿通部17、及び下降用インナーケーブル8が挿通される下降側挿通部18が設けられている。
【0018】
駆動装置5は、図1及び図2に示すように、ガイドレール4の下端に設けられることにより、車両のドアの内部の限られたスペースにウインドレギュレータ1を収まりよく収納することができる。しかも、駆動装置5がガイドレール4の下端に設けられることで、駆動装置5と第二保持部12との間の上昇用インナーケーブル7が露出している箇所が、車両ドアの不図示の窓ガラス開口部から離れた下端付近に配置されることになる。したがって、窓ガラス開口部から切断用工具が挿入されたとしても駆動装置5と第二保持部12との間の上昇用インナーケーブル7の露出している部分に届きにくく、上昇用インナーケーブル7が容易に切断されることを防ぐことができる。
【0019】
なお、上述の通り本実施形態では駆動装置5はガイドレール4の下端に設けられるが、駆動装置5の位置はこれに限定されず、ガイドレール4の上端又はガイドレール4の上端から下端までの間の適宜位置に設けられるものであってもよい。
【0020】
方向転換部材6は、上昇用インナーケーブル7の配索方向を変換する部材であり、本実施形態においては、ガイドレール4の上端に設けられるプーリである。また、本実施形態においては、ガイドレール4の上端にのみ方向転換部材6が設けられているが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、駆動装置5の位置に応じてガイドレール4の上端、またはガイドレール4の上端及び下端にそれぞれ方向転換部材6が設けられる構成であってもよい。
【0021】
上昇用インナーケーブル7および下降用インナーケーブル8は複数の金属素線を撚り合せた従来公知のものである。またアウターケーシング9はチューブ状に形成され、内部に上昇用インナーケーブル7を収納し、当該上昇用インナーケーブル7の切断を妨害するものである。アウターケーシング9の材料は従来公知のものを用いることができるが、特に、金属線あるいは防刃性を有する合成樹脂線で編んだ網状の編組層、複数の細い鋼線等の金属線が螺旋状にされたシールド層又は1本の鋼線等の金属線が密に螺旋状にされた鎧層を設けると、一層、切断されにくく、防盗性が高くなる。
【0022】
なお、本実施形態においては、方向転換部材6とキャリアプレート3の間における上昇用インナーケーブル7及び下降用インナーケーブル8は、ガイドレール4の車内側に配索されているので、これらのインナーケーブル7,8が露出していたとしてもガイドレール4が障壁となってインナーケーブル7,8が容易に切断されることを防ぐことができるが、キャリアプレート3の摺動を阻害しない範囲で方向転換部材6とキャリアプレート3の間における上昇用インナーケーブル7及び下降用インナーケーブル8の外周にもアウターケーシング9を設け、より一層の安全を図ることもできる。また、本発明における「インナーケーブル」は、本実施形態においては上昇用インナーケーブル7がこれに相当するが、これに限定されるものではなく、切断を抑制する対象であるインナーケーブルであればよく下降用インナーケーブル8、または上昇用インナーケーブル7及び下降用インナーケーブル8が本発明の「インナーケーブル」に相当するものであっても良い。
【0023】
ガイドレール4に設けられている第一保持部11は、アウターケーシング9の方向転換部材6側の端部を保持するものであり、図4及び図5に示すように、ガイドレール4に固定される第一ブラケット19と、第一ブラケット19に支持されてアウターケーシング9の一方の端部を保持する第一アウターエンド20とにより形成されている。なお、図4及び図5において、アウターケーシング9は長尺であるため、中間部分を省略して記載している。第一ブラケット19は、ガイドレール4に固定される基端部21から腕部22がガイドレール4から離れる方向に延びており、腕部22の先端が筒状に丸まって第一アウターエンド20に外嵌する支持部23が設けられている。なお、支持部23の先端は腕部22との間に隙間をあけている。第一ブラケット19は例えば金属板をプレス成形することにより製造することができる。
【0024】
第一アウターエンド20は、図6に示すように、円柱形状に形成されており、軸方向の一端にフランジ24を備え、第一アウターエンド20を第一ブラケット19の支持部23内に挿入したときに、フランジ24が支持部23の軸方向端部に当接するように形成されている。なお、図6においてアウターケーシング9は長尺のため中間部を省略して記載している。
【0025】
第一アウターエンド20の一端の中心から軸方向内側に向かってアウターケーシング9の端部を挿入して係止するアウター係止穴25が形成されている。アウター係止穴25は、第一アウターエンド20の軸方向の中央まで形成されている。そしてアウター係止穴25の底面の中心部から第一アウターエンド20の他端までは、上昇用インナーケーブル7を通すためのインナー挿通孔26が形成されている。
【0026】
インナー挿通孔26は、第一アウターエンド20の他端側に向かって緩やかに拡がっている。このようなインナー挿通孔26の拡がりにより上昇用インナーケーブル7が揺動する場合にも、上昇用インナーケーブル7の摺動をスムーズにすることができる。第一アウターエンド20は、上昇用インナーケーブル7との摺動抵抗が小さく、強度の高い合成樹脂製が好適である。
【0027】
第一保持部11は、図1及び図2に示すように、方向転換部材6近傍に設けられている。ここで、方向転換部材6近傍とは、方向転換部材6から離間した位置であって、上昇用インナーケーブル7の配索経路上の方向転換部材6から近い位置をいう。方向転換部材6と第一保持部11との間は、アウターケーシング9が設けられていないため上昇用インナーケーブル7が露出するが、第一保持部11の配置される方向転換部材6近傍は、車両の窓ガラス2が完全に閉まっている場合に車両のドアの窓ガラス開口部から刃物などの切断用工具が挿入されても、窓ガラス2、キャリアプレート3、又は方向転換部材6などの部材が障壁となって、切断用工具が方向転換部材6と第一保持部11との間の上昇用インナーケーブル7が露出している部分に到達することがない位置であり、上昇用インナーケーブル7が切断されることを抑制できる。具体的には、第一保持部11の配置される方向転換部材6近傍は、例えば、窓ガラス2全閉時に窓ガラス2の下端が配置される位置、又は、窓ガラス2全閉時にキャリアプレート3が配置される位置が好ましい。
【0028】
ガイドレール4に設けられている第二保持部12は、アウターケーシング9の駆動装置5側の端部を保持するものであり、図4及び図5に示すように、ガイドレール4に固定される第二ブラケット27と、第二ブラケット27に支持されてアウターケーシング9の他方の端部を保持する第二アウターエンド28とにより形成されている。これらの第二ブラケット27と、及び第二アウターエンド28の各部の構成は第一ブラケット19及び第一アウターエンド20の各部の構成と同一であるので、同一の名称及び符号を付する。
【0029】
第二ブラケット27は、第一ブラケット19と同様に、ガイドレール4に固定される基端部21から腕部22がガイドレール4から離れる方向に延びており、腕部22の先端が筒状に丸まって第二アウターエンド28に外嵌する支持部23が設けられている。なお、支持部23の先端は腕部22との間に隙間をあけている。第二ブラケット27は例えば金属板をプレス成形することにより製造することができる。
【0030】
第二アウターエンド28は、図6に示すように、第一アウターエンド20と同様に、円柱形状に形成されており、軸方向の一端にフランジ24を備え、第二アウターエンド28を第二ブラケット27の支持部23内に挿入したときに、フランジ24が支持部23の軸方向端部に当接するように形成されている。第二アウターエンド28の一端の中心から軸方向内側に向かってアウターケーシング9の端部を挿入して係止するアウター係止穴25が形成されている。アウター係止穴25は、第二アウターエンド28の軸方向の中央にまで設けられている。そしてアウター係止穴25の底面中心部から第二アウターエンド28の他端までは、上昇用インナーケーブル7を通すためのインナー挿通孔26が形成されている。インナー挿通孔26は、第二アウターエンド28の他端側に向かって緩やかに拡がっている。
【0031】
上昇用インナーケーブル7は、図7に示すように、ドラム14に設けられた螺旋状のガイド溝15に巻き取られるに従ってドラム14に設けられるガイド溝15の範囲でドラム14から延出する位置にずれが生じる。これによって、上昇用インナーケーブル7は第二保持部12の第二アウターエンド28を基点として揺動するが、インナー挿通孔26の拡がりにより上昇用インナーケーブル7の揺動に対応することができる。なお、図7においては、図示の都合上、第二保持部12のみ切断した状態で示している。なお、第二アウターエンド28は、上昇用インナーケーブル7との摺動抵抗が小さく、強度の高い合成樹脂製が好適である。
【0032】
第一保持部11及び第二保持部12は、図1及び図2に示すように、第一ブラケット19及び第二ブラケット27の腕部22によってガイドレール4から離間した位置にアウターケーシング9を保持している。これによって、アウターケーシング9及び上昇用インナーケーブル7の配索経路がキャリアプレート3などの他の部材と干渉しない位置とすることができ、アウターケーシング9の振動やアウターケーシング9が他の部材と衝突することにより異音が発生することを防止できる。
【0033】
第二保持部12は、ドラムハウジング16の上昇側挿通部17と当該第二保持部12とを繋ぐ直線軸の方向が、第一保持部11と方向転換部材6から駆動装置5へ向かって配索された上昇側インナーケーブル7が挿通される上昇側挿通部17とを繋ぐ直線軸の方向と同一又は近似した方向となる位置に設けられている。具体的には、ドラム14から延出した第二保持部12に至る範囲における上昇用インナーケーブル7が第一保持部11及び第二保持部12の間の上昇用インナーケーブル7の軸方向において作動時に略一致するようにガイドレール4に取り付けられている。なお、上昇側挿通部17は、アウターケーシング9に覆われるインナーケーブルが延出して挿通される部位であれば良く、下降用インナーケーブル8の外周をアウターケーシング9が覆うように構成して、下降側挿通部18を方向転換部材6から駆動装置5へ向かって配索される下降用インナーケーブル8が挿通される構成としてもよい。
【0034】
第一保持部11と第二保持部12は、ドラム14から第二保持部12を介して第一保持部11にまで至る間の上昇用インナーケーブル7が作動時においてほぼ同一軸線となるように第二保持部12が設けられていることが特に好ましい。なお、上昇用インナーケーブル7は、図7に示すように、ドラム14に設けられた螺旋状のガイド溝15に巻き取られるに従ってドラム14に設けられるガイド溝15の範囲で位置のずれが生じる。したがって、ドラム14から延出した第二保持部12に至る範囲における上昇用インナーケーブル7は、第二保持部12を基点に揺動する。そして第二保持部12の位置がドラム14から離れていればいるほど上昇用インナーケーブル7の揺動は抑制されるが、ドラム14から第二保持部12に至る範囲の上昇用インナーケーブル7は、アウターケーシング9に覆われていないため、切断用工具などで切断され易い。したがって、第二保持部12は、駆動装置5の作動時に、ドラム14から延出された上昇用インナーケーブル7の揺動が抑制される位置であって、尚且つ、上昇用インナーケーブル7が露出する範囲であるドラムハウジング16の上昇側挿通部17から第二保持部12までの距離が極力短くなる範囲であることが好ましい。
【0035】
以上のように第二保持部12は、ドラム14と第二保持部12との間の上昇用インナーケーブル7の軸方向と、第一保持部11及び第二保持部12の間の上昇用インナーケーブル7の軸方向とが、作動時に略一致するようにガイドレール4に取り付けられているので、第二保持部12に挿入される位置における上昇用インナーケーブル7の屈曲を極力小さくすることができる。したがって、上昇用インナーケーブル7が軸方向に摺動する際に、ドラム14の巻取り及び繰り出しによって生じる上昇用インナーケーブル7の揺動により、上昇用インナーケーブル7が第二保持部12に当って損傷することを抑制することができる。
【0036】
第一保持部11及び第二保持部12の間に保持されるアウターケーシング9は、ガイドレール4の長手方向に沿って直線状に配置され、第一保持部11及び第二保持部12間に配置されたアウターケーシング9が移動しないように、図6において矢印で示すように、一方の端部及び他方の端部がそれぞれ第一保持部11及び第二保持部12を押圧するようにされている。すなわち、アウターケーシング9は、ウインドレギュレータ1に取り付ける前の状態で、第一保持部11の第一アウターエンド20のアウター係止穴25の底面から第二保持部12の第二アウターエンド28のアウター係止穴25の底面までの距離よりも僅かに長く形成されおり、第一保持部11及び第二保持部12に取付けたときに、アウターケーシング9が第一保持部11及び第二保持部12と軸方向に隙間を生じないように圧接するように形成されている。言い換えると、アウターケーシング9は第一保持部11と第二保持部12との間に突っ張った状態で配置されている。これによって、第一保持部11及第二保持部12間に配置されたアウターケーシング9の端部はこれら第一保持部11及び第二保持部12に確実に保持されることになり、インナーケーブル7とアウターケーシング9は第一保持部11と第二保持部12との間で直線的に配置されるのでアウターケーシング9の移動が防止できる。したがって、フックのような工具を車両ドアの窓ガラス開口部から挿入し、アウターケーシング9に引っ掛けられたとしても、アウターケーシング9が窓ガラス開口部へ向けて引っ張られることを抑制できるので、上昇用インナーケーブル7が窓ガラス開口部から引き出されて切断されることを防ぎ、防盗性に優れたウインドレギュレータ1とすることができる。また、アウターケーシング9がガイドレール4に沿って直線状に配索されているため、上昇用インナーケーブル7がガイドレール4に近い位置に配索されることとなり、フック等の工具で引っ掛けられにくく、また、はさみ等も上昇用インナーケーブル7を挟み込みにくくなるため、上昇用インナーケーブル7が切断されることが抑制される。
【0037】
本発明のウインドレギュレータ1は、上述の形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るウインドレギュレータ1は、車両の窓ガラス2を昇降させるウインドレギュレータ1であって、防盗性にすぐれたウインドレギュレータ1として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ウインドレギュレータ
2 窓ガラス
3 キャリアプレート
4 ガイドレール
5 駆動装置
6 方向転換部材
7 上昇用インナーケーブル(インナーケーブル)
9 アウターケーシング
11 第一保持部
12 第二保持部
14 ドラム
17 上昇側挿通部(挿通部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7