(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の複数の予測シナリオおよび当該複数の予測シナリオの各々の発生確率を、当該設備の各々における過去の実績値の統計的処理を用いて算出する第1算出手段と、
前記設備において特定の予測シナリオの組み合わせが同時に発生する確率を、前記第1算出手段により算出された発生確率を用いて算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段により算出された発生確率が最大の予測シナリオの組み合わせを、統合シナリオとして出力する出力手段と
を有する情報処理システム。
負荷装置および制御対象装置を含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、予測の対象となる対象期間における電力需給の複数の予測シナリオを生成する第1生成手段と、
前記複数の予測シナリオの各々について、当該予測シナリオの発生確率を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段により算出された発生確率に基づいて、前記設備の各々について1つずつ予測シナリオを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された予測シナリオの組み合わせに基づいて、前記設備の制御計画を生成する第2生成手段と
を有する情報処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.はじめに
エネルギー需給について考えると、今後、二酸化炭素排出の削減や省エネルギーの推進が益々重要になる。これを実現するために、住宅への太陽光発電や電気自動車、燃料電池などの創エネルギー機器、住宅用の蓄電池などの蓄エネルギー機器の普及が進むと考えられる。こうした創エネルギー機器、蓄エネルギー機器の住宅への普及は、需要家のエネルギー調達・利用の選択肢を提供すると同時に、生活者が購入電力、太陽光発電、燃料電池、蓄電池や電気自動車からの放電を適切に管理しないと損をするという状況をもたらし、住宅内での創エネ、蓄エネルギー機器の利用を最適に制御する必要性も生じさせる。しかし、創エネルギー機器や蓄エネルギー機器は、それぞれの容量の限界や、発電、発熱の特性があり、気候や季節などにより変動する需要に合わせて最適に稼働させることは人手では不可能である。また、住宅内でのエネルギー需給の管理は、これまでの一般的な生活環境には存在しなかった業務であり、このような住宅に暮らす生活者の手を煩わせることなく、創エネ、蓄エネルギー機器を最適に制御する制御アルゴリズムの実現が不可欠である。本制御アルゴリズムは、こうした背景を踏まえ、系統電源、太陽光発電、電気自動車または住宅用蓄電池、燃料電池を持つ住宅において、住宅のエネルギー需要に合わせて創エネルギー機器、蓄エネルギー機器を無駄なく適切に制御することを目的とする。
【0014】
本実施形態においては、住宅における機器の制御計画を確率計画法によって最適化する。
【0015】
2.用語の定義
(1)電源
系統電源、PV、EV、蓄電池、または燃料電池。
(2)系統電源
電力会社が保有する商用の配電線網から供給される電源。
(3)創エネルギー機器
利用可能な電力を作り出し、エネルギーを有効活用する機器。例えば太陽電池パネルや燃料電池。
(4)PV
太陽電池パネル(Photovoltaic Panel)。
(5)蓄エネルギー機器
電力を蓄えて、必要な時に電力を供給するシステム。例えば蓄電池やEVの内蔵電池。
(6)EV
電気自動車(Electric Vehicle)。例えばVehicle to Home(V2H)を含む双方向充放電が可能なもの。
(7)蓄電池
家庭用定置型蓄電池。
(8)燃料電池
電気化学反応によって電力を取り出す電池。FCと略す場合もある。
(9)HEMS
ホームエネルギー・マネジメントシステム(Home Energy Management System)。
(10)ECHONET LiteまたはEchonet Lite
Energy Conservation and Homecare Networkの略。シンプルな電文構成で信頼性の高いホームネットワークを実現する標準通信プロトコル。
(11)制御アルゴリズム
戸建スマートハウスにおいて、系統電源、PV、EV、燃料電池のフルセットの分散電源による電力供給と、家庭内機器の電力需要とのバランスを最適制御するアルゴリズム。全体最適計画、制御ルールセット、および計画補正を含む。「アルゴリズム」「最適化アルゴリズム」も同義。
(12)制御アルゴリズム要件定義
制御アルゴリズムの概要、モデル構造(図および数式)、処理フロー、変数一覧(入力および出力)、および用語一覧を定義したもの。
(13)制御アルゴリズム設計
制御アルゴリズム要件定義に基づき、制御アルゴリズムの概要、構成、開発項目、機能、方式、テスト方針、外部インターフェース、初期処理等を設計すること。サブモジュール単位の入出力に関する概要設計と、サブモジュール内部に関する基本設計に分かれる。
(14)変数
時間毎に変化する数値や文字列。例えば家電電力需要実績。
(15)パラメータ
システム管理者や利用者が設定する数値や文字列。住宅ごとに異なる場合があり、定期・不定期に手動で更新される場合がある。例えば電力料金。
(16)最適化モード
電力需給を最適化するために用いる目的関数、制約条件、パラメータの組み合わせ。複数の組み合わせから1つの組み合わせを選択可能としたもの。個別の最適化モードについては3.4.最適化モードを参照。
(17)最適化問題
実数値または整数値の関数を最大化または最小化する問題。
(18)目的関数
最適化問題において、最小化または最大化される関数。
(19)最適化計算
最適化問題を解くための計算処理。
(20)制約条件
最適化問題において、その解が満たさなければならない等式または不等式。
(21)最適化ソルバ
最適化問題の制約条件および目的関数を入力とし、最適化計算を実行する数値計算ソフトウェア。
(22)HEMSサブシステム
HEMSを物理的に構成する情報管理サーバ、スマートフォン、ホームサーバ、機器ネットワーク、センサネットワークのこと。
(23)情報管理サーバ
HEMSのクラウドプラットフォーム。
(24)スマートフォン
戸建てスマートハウスに設置される携帯通信端末。主要なユーザインターフェースとなる。
(25)ホームサーバ
情報管理サーバ、機器ネットワーク、およびスマートフォンを接続するハードウェアインターフェース。情報管理サーバから受信したルールの条件を判定し、機器ネットワークに実行指示を送信する。
(26)デバイス
電力の需要・供給・蓄電を行う各機器を指す。
(27)機器ネットワーク
ECHONET Liteで動作する電源および家電機器からなる通信ネットワーク。
(28)センサネットワーク
各種機器の動作状態、温湿度計等のセンサからなる通信ネットワーク。計測データを収集するネットワークという位置づけで、EVの外部データセンタや気象情報サーバ、EV予約入力を同レベルで扱うことがある。
(29)最適化エンジンI/F
最適化エンジンと他とモジュールとのリクエストの呼び出しを仲介する機能。
(30)構成部
HEMSを論理的に構成する全体最適計画、制御ルールセット、実行指示、実行、およびモニタリングを指す。
(31)全体最適計画
情報管理サーバ上に設置され、制御アルゴリズムを含む構成部。実績データに基づいて、予測、最適化計算、制御ルール生成を行う。
(32)分析用DB
全体最適計画のモジュールではないが、情報管理サーバ上に設置される構成部であり、全体最適計画とデータの授受を行う。実績データの保管、予測データの保管、最適化計画データの保管、制御ルールの保管、パラメータの登録、個別制御ルールの登録、制御ルールサブセットの抽出、全体最適計画の呼び出し、ホームサーバと全体最適計画とのデータ授受を行う。
(33)実行指示
ホームサーバ上に設置される制御アルゴリズムの構成部。制御ルールサブセットの条件式を判定し、条件式を満たす動作の実行指示をECHONET Liteに変換し、機器ネットワークに送信する。
(34)実行
特に断りがない場合、各種機器が動作することを指す。
(35)モニタリング
各種機器の動作状態、温湿度等の実績データの計測。計測データを収集するという位置づけで、外部サーバが収集するEVの電力需要実績や気象情報、スマートフォンに入力されるEV予約も同レベルで扱うことがある。
(36)制御ルール
時刻または条件式に対して各種機器の動作を指定するルール。例えばIF THEN文で記述される。
(37)制御ルールサブセット
制御ルールセットの中から優先度と起動時刻で抽出された部分集合。
(38)EVデータセンタ
自動車メーカが運営するEV実績値のデータセンタ。
(39)気象情報サービス
気象情報を提供するサービス。例えば外部事業者により提供される。
(40)機能区分
全体最適計画を構成するメイン機能区分、需要機能区分、供給機能区分、蓄電機能区分、最適需給計画機能区分を指す。
(41)メイン機能区分
他の機能区分の統合・外部システムとの連携を実現する機能区分。
(42)需要機能区分
全体最適計画において、家電電力需要、EV電力需要および温水需要について、実績値をもとに予測値を計算し、更に実績値と予測値から予測誤差を計算する機能区分。
(43)供給機能区分
全体最適計画において、PV供給量と蓄熱ユニット熱量について、実績値をもとに予測値を計算し、更に実績値と予測値から予測誤差を計算する機能区分。
(44)蓄電機能区分
全体最適計画において、EV蓄電量と蓄電池蓄電量について、実績値をもとに予測値を計算し、更に実績値と予測値から予測誤差を計算する機能区分。
(45)最適需給計画機能区分
全体最適計画において、他の機能区分の計算結果とパラメータに基づき、最適化モードで設定された目的関数を最大化または最小化するような機器の稼働状況の計画値を算出し、更に計画値を実現するための制御ルールを生成する機能区分。
(46)モジュール
全体最適計画を構成する需要モジュール、供給モジュール、蓄電モジュール、および最適需給計画モジュールを指す。
(47)需要モジュール
全体最適計画において、家電電力需要、EV電力需要および熱需要について、実績値をもとに予測値を計算し、さらに実績値と予測値から予測誤差を計算するモジュール。計算結果の変数を他の全体最適計画モジュールから呼び出すことができる。
(48)供給モジュール
全体最適計画において、PV供給量と蓄熱ユニット熱量について、実績値をもとに予測値を計算し、さらに実績値と予測値から予測誤差を計算するモジュール。計算結果の変数を他の全体最適計画モジュールから呼び出すことができる。
(49)蓄電モジュール
全体最適計画において、EV蓄電量と蓄電池蓄電量について、実績値をもとに予測値を計算し、さらに実績値と予測値から予測誤差を計算するモジュール。計算結果の変数を他の全体最適計画モジュールから呼び出すことができる。
(50)最適需給計画モジュール
全体最適計画において、他のモジュールの計算結果とパラメータに基づき、最適化モードで設定された目的関数を最大化または最小化するような機器の稼働状況の計画値を算出し、さらに計画値を実現するための制御ルールを生成するモジュール。計算結果の変数を他の全体最適計画モジュールから呼び出すことができる。また、生成した制御ルールを分析用DBの制御ルールセットに送信する。また、全体最適計画の主要な計算結果を保持しており、他のモジュールや外部システムからバランス式や変数を呼び出すことができる。
(51)メッシュ
全体最適計画における時間の刻み幅(単位)。
(52)スパン
全体最適計画における時間の長さ。
(53)サイクル
全体最適計画の更新頻度。
(54)蓄熱ユニット
燃料電池を構成する貯湯槽。蓄熱ユニットに蓄積される熱量を蓄熱ユニット熱量という。
(55)需要基本パターン
曜日別24時間の需要曲線。朝夕型、夜型など、いくつかの類型を初期値として用意しておき、実績値が取得できてからは実績値の中央値に置換する。
(56)パーセンタイル値
百分位数または%点。度数分布で全体を100等分した時の境界値。0パーセンタイル値が最小値、50パーセンタイル値が中央値、100パーセンタイル値が最大値。他に、5、25、75、または95パーセンタ値がよく使われる。
(57)パーセンタイル点
パーセンタイル値に位置する実際の数値。
(58)パーセンタイル区間
2つのパーセンタイル値によって指定された区間。
(59)予測誤差
予測値から実績値を引いた差。1つの実績値に対して、予測時点ごとに異なる値が存在する。また、この予測誤差を蓄積することにより、予測誤差の分布(正規分布には限らない)および%点を生成することができる。
(60)需要シナリオ
時間軸に沿って需要予測値が将来とりうる値をつなぎ合わせた曲線。1つの実績値に対して、理論上は無限個のシナリオが存在しうる。本制御アルゴリズムでは、予測誤差の分布に基づき、%点を複数抽出し、複数のシナリオを生成する。
(61)供給シナリオ
時間軸に沿って供給予測値が将来とりうる値をつなぎ合わせた曲線。需要シナリオと同様。
(62)統合シナリオ
各需要シナリオ・供給シナリオを組み合わせたもの。
(63)発生確率
需要シナリオ・供給シナリオ・統合シナリオ通りの数値が実際に発生するとみられる確率。
(64)安全蓄電量
需要の不確実性に対応し、電池切れを防ぐために余分に残しておく蓄電量。
(65)管理幅
最適化により適切と判断された蓄電量の上限・下限。
(66)グラフ生成部
情報管理サーバ上に設置されるモジュール。全体最適計画が保持する実績値、予測値、計画値、および予測誤差をグラフ表示する。
(67)リスクパラメータ
予測誤差のリスクをコスト換算するパラメータ。大きく設定するとリスク回避的な計画になり、小さく設定するとリスク愛好的な計画になる。
(68)モデル
現象や振る舞いを数式を用いて表現したもの。
(69)カテゴリー
各住宅毎に、曜日、祝日、天候別に過去の家電電力需要量を分類したもの。
(70)リコースコスト
シナリオで想定した家電電力需要量やPV供給量が実現値となった場合に発生するであろう電力不足や余剰に与えられるペナルティーコスト。
(71)LDV(limited dependent variable)モデル
制限従属変数モデル。従属変数が観測できない欠損状態のとき、限られた観測情報と欠測構造を考慮し、推定するモデルのことである。Tobitモデルとも呼ばれる。欠損の発生がランダムではない場合、欠損データの発生構造を無視して推定すると、推定量にバイアスが生じるため、このようなモデルで推定する必要が生じる。
(72)一様乱数
ある有限の区間を区切って、その区間内で全ての実数が同じ確率(濃度)で現れるような乱数。
(73)目的変数
物事の結果を表す変数。予測の対象となる変数。
(74)説明変数
物事の原因と思われる変数。予測値の算出に使用する変数。
(75)線形回帰モデル
従属変数が独立変数に関して1次関数式で表せると仮定し、独立変数の係数および切片項を推定するモデル。
(76)単回帰
線形回帰モデルの一つで説明変数が1つのものを指す。
(77)感応度
ある2変数に対して、一方の変数がもう一方の変数にどの程度反応するかを示す指標。
(78)尤度
前提条件として仮定したモデルから見て、観測したデータがどの程度起こりやすかを表す指標。
(79)対数尤度
尤度の対数をとったもの。
(80)正規分布
ガウス分布。コインの裏表のように確率が等しい二値の独立試行を無限回繰り返した時に得られる、変数の値の起こりやすさの分布。独立な多数の因子の和として表される確率変数は正規分布に従う。正規分布をグラフ化した正規分布曲線は左右対称なつりがね状の曲線であり、鐘の形に似ている事からベル・カーブ(鐘形曲線)とも呼ばれる。
(81)標準正規分布
平均0、分散1としたときの正規分布。
(82)利用者
主にHEMS住宅の住人を指し、利用に応じてHEMS住宅の設定を行う。
(83)管理者
本システムを含む情報管理サーバなどを維持・運営する人を指す。
【0016】
3.概要
3.1.エネルギー利用最適化の課題
3.1.1.制御アルゴリズムの基本的な考え方
制御アルゴリズムにおいては、制御目標の基本的な考え方を、下記のとおり設定する。
(1)住宅内の電力需給について、需要家が制御により経済的なメリット(制御をしない場合よりも低コストでエネルギーを利用できること)を享受できることが望ましい。
(2)太陽光発電により生みだされた電力の利用を最優先とし、住宅内の電力需要に最大限活用する。
(3)住宅内での創エネルギー機器、蓄エネルギー機器の制御は、生活者の利便性を阻害しないよう、将来の時点での住宅のエネルギー需給をあらかじめ予測して行う。
(4)制御アルゴリズムで予測する将来の住宅内での電力需給状況は、過去のデータの蓄積に応じて精度を増す。
【0017】
3.1.2.エネルギー利用最適化の課題
図1は、制御アルゴリズムによる予測、制御の対象を例示する図である。本制御アルゴリズムでは、住宅内の創エネ、蓄エネルギー機器による発電、充電、熱供給を、上記の基本的な考え方に沿って、
図1の(1)〜(6)について適宜必要な予測を行い、(2)〜(6)を制御する。制御アルゴリズムにより住宅内でのエネルギー自立化を基本とした最適制御を実現するための課題を、住宅内での家電電力需要と、各制御対象機器ごとに以下に記す。
【0018】
(1)家電電力および熱需要
住宅内での家電電力需要および熱需要は、当日が平日であるか休日(祝日を含む)であるかによりそのパターンが異なる。このため、PVからの発電で家電電力需要を賄いきれない電力(家電電力需要とPVによる発電電力量の差分)をFCからの発電で賄うか、EVからの放電で賄うかを、その必要となる時点での経済性も考慮しながら決める必要がある。また、FCからの発電は、熱供給と密接に関係し、発電電力のみの利用ではそのエネルギー利用効率が大きく低下する。このため、住宅の家電電力需要と熱需要については、制御の当日および当日の制御に影響すると考えられる将来の時点までの推移を予測することが求められる。また予測に用いる変数は、実績データの蓄積に伴って修正され、より確度の高いものへと自動的に調整されることが求められる。
【0019】
(2)PV
PVの発電電力量は制御対象ではない。しかし、住宅の家電電力需要との差分を将来に渡り予測することが求められる。PVの発電電力量は、天候(日射量)により大きく左右されるため、将来の天候および天候によるPVの発電電力量との関係を考慮し、将来の発電電力量を予測する必要がある。また、PVの発電電力量の予測についても、予測に用いる変数は、実績データの蓄積に伴って修正され、より確度の高いものへと自動的に調整されることが求められる。
【0020】
(3)FC
FCは、コージェネレーション(電力、熱の併給)によって、高いエネルギー利用効率を実現する機器であり、住宅のエネルギーの自給自足を実現する上で貴重な電力および熱の供給源となる。FCからの発電電力量を制御する際には、住宅で必要とされる熱需要を満たすことが望ましい。このため、FCからの発電電力量の制御にあたっては、住宅での熱の不足を招かぬよう、必要な時点での十分な熱が確保できるよう適切な運転とすることが求められる。このためには、住宅の熱需要についての予測が必要となる。FCの発電電力量の予測についても、予測に用いる変数は、実績データの蓄積に伴って修正され、より確度の高いものへと自動的に調整されることが求められる。
【0021】
(4)EVおよび(定置型)蓄電池
EVの蓄電池は、住宅にEVがある場合には、蓄電池として、家電電力需要とPVの発電の差分を埋めるために活用することが期待される。ただし、EVが自動車として用いられ、住宅を離れる場合にはこうした活用が出来ない。また、EVからの放電を過度に行うと、走行時に必要な蓄電量を確保できず生活者の利便性を大きく阻害する。さらに、EVや蓄電池からの放電のタイミングは、購入電力の料金が高い昼間時間帯を中心に行うことが経済性の観点から必要になる。このため、住宅ごとに異なるEVの利用パターンを推計し、EVに期待できる充放電量を適切に制御することが求められる。EVについても、その利用の予測に用いる変数は、実績データの蓄積に伴って修正され、より確度の高いものへと自動的に調整されることが求められる。(定置型)蓄電池の場合も、EVと同様に、停電時の電力利用に必要な最低限の容量の確保、放電のタイミングを考慮した適切な充放電の制御を行う必要がある。
【0022】
図2は、EVおよび蓄電池の充放電制御の課題を例示する図である。
【0023】
3.2.全体構成
図3は、一実施形態に係るHEMSの構成を例示する図である。この例で、HEMSは、情報管理サーバ、クレードルサーバ、端末機器、制御対象機器(被制御機器)、およびセンサネットワークを有する。端末機器は、PC、タブレット、またはスマートフォンである。制御対象機器は、バッテリー、EV、または燃料電池である。センサネットワークは、電力およびガスのセンサである。端末機器、制御対象機器、およびセンサネットワークは宅内に設けられ、クレードルサーバと接続される。なお、この例では、エアコンディショナ等、負荷機器の運転制御は行われない。
【0024】
図4は、一実施形態に係るスマートハウスにおける機器構成を例示する図である。
【0025】
3.3.エネルギー利用最適化の課題と制御アルゴリズム導入の効果
図5は、各機器の制御による効果を例示する図である。前述の制御アルゴリズムのコンセプトおよび課題を踏まえた各機器の制御がなされた場合、制御を行わなかった場合に比べて、
図5に示す効果が生じることが期待される。制御アルゴリズムは、概ねこのレベルの効果の実現が期待できるものであることが望ましい。
【0026】
3.4.最適化モード
本実施形態に係るスマートハウスの特徴の一つは自給自足である。しかしながら、最適化には、自給自足のほか、経済や環境等、複数の目的が存在しうる。こうした複数の目的を達成するため、本実施形態における制御アルゴリズムでは、目的別に「最適化モード」を用意し、使用するモードをシステム管理者またはユーザが設定できる。最適化モードとは、電力需給を最適化するために用いる目的関数、制約条件、パラメータの組み合わせである。複数の組み合わせから1つの組み合わせが選択可能である。それぞれの最適化モードに対して費用やペナルティのパラメータを設定することで、様々な最適制御が実現される。
【0027】
図6は、最適化モードを例示する図である。ここでは、経済(節約)、自給自足、環境(エコ)、充電優先、静音(おやすみ)、電池長持ち、および非常(縮退)の7つのモードが例示されている。経済(節約)モードは、電力および燃料の費用を最小化するモードである。PVが費用ゼロであることから、PVを最優先する。さらに、料金プランや時間帯に応じて、系統電源と燃料電池のどちらが安いかを比較し、常に安い方の電力を用いる。以上のように、経済メリットを追求する。
【0028】
自給自足モードは、最重要の最適化モードの一つである。系統電源に依存せず、住宅ごとにできる限り自立した電力需給を実現するため、系統電源からの買電量を最小化する。PVを最大限活用することはもちろん、夜間やピーク時の電力需要には燃料電池も活用することで、平常時においても自立した電力需給の実現を目指す。本実施形態では、この自給自足モードを最適化モードの初期値とする。
【0029】
環境(エコ)モードは、二酸化炭素排出量を最小化するモードである。二酸化炭素排出量がゼロであるPVを最優先する。さらに、系統電源と燃料電池のうち二酸化炭素排出量が少ない方を優先することで、環境に優しい電力需給を目指す。
【0030】
充電優先モードは、電池切れの不安を極力減らすよう、電池残量を最大化するモードである。例えば、EV設置宅において、いつでもフル充電で出発できるように設定しておくことができる。また、停電の不安があるときにも有効である。ただし、日中にフル充電の状態ではPVで発電した電力を蓄電することができず、全て逆潮流してしまうため、自給率や費用の観点からはロスも大きいことに留意が必要である。
【0031】
静音(おやすみ)モードは、夜間における燃料電池やPCSの切替動作を最小化することで、夜間の音量を小さく抑えるモードである。自宅での安眠や近隣への配慮を目指す。
【0032】
電池長持ちモードは、充放電の切替回数にペナルティを設定することで、電池の劣化を防ぐモードである。
【0033】
非常(縮退)モードは、系統電力が解列された時に、自立運転期間を最大化するモードである。系統電源の潮流/逆潮流がゼロ、ただし燃料は供給可能という制約下で、PV、燃料電池、EV/蓄電池の3電源を組み合わせて、PVの発電量を極力無駄にせず、燃料電池を活用しながら需給の時間差をEV/蓄電池で吸収する。具体的には、通常の自給自足モードに対して、電池切れなどのペナルティ値を特別に設定する。ただし、EV不在時にはPVも発電できないなど、ハードウェア間の連携に制約がありうることに留意が必要である。
【0034】
3.5.計画時間
図7および
図8は、計画時間を例示する図である。計画時間には、メッシュ、スパン、およびサイクルの3つがある。これらは混同されることが多いため、ここで説明する。メッシュは、全体最適計画における時間の刻み幅である。本実施形態における制御アルゴリズムでは、時間の刻み幅は1時間である。しかし、本実施形態においては、将来の拡張性を考え、データ構造上は10分メッシュで保持している。これは、現在の気象情報の多くが最小1時間メッシュであること、メッシュが細かすぎるとデータ量が大きくなり、通信負荷が大きくなると想定されるためである。
【0035】
スパンは、全体最適計画における時間の長さであり、どのくらい先の時間まで計画を作成するかを表す。本実施形態における制御アルゴリズムでは1週間である。これは、曜日別のパターンが重要であること、1日分と7日分で計算負荷がさほど変わらないと想定されること、7日以上先の気象情報は入手困難かつ低精度であることからこのように設定される。仮に全体最適計画のサーバに障害が発生した場合でも、1週間先までのルールが生成済みであるため、1週間以内に復旧すれば、制御ルールが空白となることはなく、制御ルールの精度が下がるだけで済む。
【0036】
サイクルは、全体最適計画の更新頻度である。本実施形態における制御アルゴリズムでは1日である。これは、気象情報やEV走行情報等、1日単位で更新されるデータがあることと、当面の通信負荷、サーバ処理時間について安全を期するためである。さらに、本実施形態においては、EV接続時および解除時にも、全体最適計画が更新される。EVの接続/解除時に電源構成と実績値が大きく不連続に変化するため、これをトリガーとしてイベント起動による計画更新を行う。なお、ここで説明したメッシュ、スパン、およびサイクルはあくまで例であり、ここで説明した以外の期間が用いられてもよい。
【0037】
3.6.制御アルゴリズムを中心としたスマートハウス構成機器の動作フロー
図9は、HEMSの動作フローを例示する図である。本節では、制御アルゴリズムを中心に、電源や家電機器等のスマートハウス構成機器(機器ネットワーク)の動作との関係を説明する。本実施形態におけるHEMSの論理構成部は、制御アルゴリズムを含む全体最適計画、実績データと制御ルールを保持する分析用DB、実行指示、実行、モニタリングを含む。物理的には、全体最適計画と分析用DBはクラウドの情報管理サーバ上に、実行指示は住宅内のホームサーバ上に実装される。電源や家電機器からなる機器ネットワークが動作を実行し、センサネットワークが動作状況をモニタリングする。
【0038】
分析用DBは、全体最適計画で用いる実績データセットと最適化計算に用いる各種パラメータを保持(記憶)している。これらのデータに基づき、全体最適計画構成部は、住宅別の電力需給計画を作成する。全体最適計画構成部は、条件文(例えばIF−THEN文)で示された制御ルールの集合(制御ルールセット)を分析用DBに出力する。条件式は、例えば時刻または値の大小比較で記述される。
【0039】
分析用DBには、全体最適計画で生成される制御ルールセットとは別に、システム管理者が個別ルールを登録することができる。これらのルールには優先度が付されてもよい。分析用DBは、優先度に応じて、実行すべきルールのサブセット(制御ルールサブセット)を抽出し、実行指示構成部に例えば1時間毎に送信する。なお、分析用DBと実行指示構成部との通信の間隔は1時間に限定されない。システムの通信負荷に応じて、これより短い間隔で、または長い間隔で通信が行われてもよい。
【0040】
実行指示構成部は、モニタリング構成部から送信される毎分の動作状況や環境変数に基づき、これらが制御ルールの条件式を満たしているか判定する。この判定は所定の周期(例えば毎分)で行われる。実行指示構成部は、条件式の結果がTrueとなった制御ルールを発動し、実行構成部に例えばECHONET Lite形式で実行指示を送信する。なお、条件式の判定と実行指示の頻度は1分に限定されず、モニタリング構成部の性能や、運用状況、ホームサーバや家庭内通信の負荷などを考慮して設定されてもよい。
【0041】
実行構成部の動作状況は、モニタリング構成部で毎分計測される。計測結果は、実行指示構成部に送信される。
【0042】
図10〜15は、全体最適計画の入出力例を示す。多くの項目があるが、概ね、パラメータの設定、実績値の入力、予測値およびシナリオの出力、最適化後の計画値の出力、並びに最適化に基づく制御ルールの出力に分類される。
【0043】
図16は、全体最適計画の日次処理を例示する図である。
図16は、1日1回の全体最適計画の更新に関する処理の流れを示している。全体最適計画は実行指示部からの実績データ、外部サーバからの気象情報およびEV走行実績、スマートフォンからEV予約を受け取る。全体最適計画は、受け取った情報を用いて最適化計算を行い、制御ルールを生成する。制御ルールは分析用DBに送信される。
【0044】
図17は、接続/解除時の全体最適計画の再計算処理を例示する図である。
図17は、EV接続/解除時のイベント起動による全体最適計画の更新に関する処理の流れを示している。実行構成部の一部であるEVが接続/解除されると、モニタリング構成部と実行指示構成部を介して分析用DBへ、EVが接続/解除されたことを示すメッセージが送信される。分析用DBは、全体最適計画構成部を呼び出し、全体最適計画構成部が最新データに基づいて計画を更新する。更新された制御ルールは分析用DBに送信される。
【0045】
図18は、制御ルールセットの1時間毎の処理を例示する図である。
図18は、1時間毎の制御ルールの更新に関する処理の流れを示している。1時間毎に実行指示構成部から分析用DBには実績データの送信、逆に分析用DBから実行指示構成部には制御ルールサブセットの送信が行われる。
【0046】
図19は、実行指示の1分毎の処理を例示する図である。
図19は、1分毎の実行指示に関する処理の流れを示している。モニタリング構成部からの実績値送信、実行指示構成部での条件判定と実行指示、実行構成部での動作実行が、毎分のサイクルで繰り返される。
【0047】
週次、月次、四半期、年次または必要に応じて行われるパラメータ等の更新の処理に関しては、主としてシステム管理者が分析用DBで定期的または適宜行うが、最適化モードと安全蓄電量としての最小蓄電量は利用者がスマートフォンから設定・更新する。
【0048】
4.制御アルゴリズムのモジュール構成
4.1.モジュール一覧
図20は、制御アルゴリズムのモジュール一覧を例示する図である。制御アルゴリズムは、需要モジュール、供給モジュール、蓄電モジュール、および最適需給計画モジュールを有する。これらは、HEMSの機器構成を仮想的に再現したものである。さらに、
図20には、これらのモジュールに関係する構成として、分析用DBが記載されている。
【0049】
4.2.モジュール構成図
図21は、全体最適計画のモジュール構成を例示する図である。まず、分析用DBに保管された実績・予報データや各種パラメータに基づき、需要モジュールが需要予測と需要シナリオの生成を行う。需要モジュールの予測結果と需要シナリオは分析用DBと最適需給計画モジュールの双方に渡される。同様に、分析用DBに保管された実績・予報データや各種パラメータに基づき、供給モジュールが供給予測と供給シナリオの生成を行う。供給モジュールの予測結果と供給シナリオは分析用DBと最適需給計画の双方に渡される。最適需給計画モジュールは、分析用DBに保管された各種パラメータ、需要モジュールと供給モジュールの算出結果に基づき、統合シナリオの作成、最適化計画の計算、および制御ルールの生成を行う。最適計画モジュールで生成されたEV/蓄電池の充放電計画、燃料電池の稼働計画(起動、停止、および出力)、および条件文で表されたEV、蓄電池、燃料電池の制御ルールは、分析用DBに登録される。また、最適計画モジュールの算出結果のうち、系統電源、燃料電池、蓄熱ユニットのそれぞれの動作計画は供給モジュールに、EV/蓄電池の蓄電量の計画は蓄電モジュールに返される。供給モジュールと蓄電モジュールは、これらのデータを分析用DBに登録する。
【0050】
なお、本実施形態における制御アルゴリズムでは、系統電源潮流/逆潮流、燃料電池発電量、EV/蓄電池の蓄電量について、計画値の計算を最適需給計画モジュールで行っている。これは最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたためである。なお、供給モジュールや蓄電モジュールに異なる機能を実装し、分散処理が行われてもよい。
【0051】
4.3.モジュールフロー
図22は、各モジュールの処理のフローを例示する図である。需要モジュールと供給モジュールは並列でそれぞれ予測とシナリオ生成を行う。それぞれの予測結果とシナリオに基づき、最適需給計画モジュールが統合シナリオ作成、最適化計算、およびルール生成を行う。その後、最適計画モジュールの算出結果のうち、系統電源、燃料電池、および蓄熱ユニットのそれぞれの動作計画は供給モジュールに、EV/蓄電池の蓄電量の計画は蓄電モジュールに返される。
【0052】
5.制御アルゴリズムのサブモジュール構成
5.1.需要モジュール
5.1.1.サブモジュール一覧
図23は、需要モジュールのサブモジュール一覧を例示する図である。需要モジュールの処理対象となる需要は住宅内の電力需要と熱需要である。需要モジュールは、本実施形態の制御アルゴリズムで把握・予測すべき3つの需要として、家電の電力需要、EVの電力需要、蓄熱ユニットの熱需要に対応して、家電電力需要シナリオ作成、EV電力需要シナリオ作成、熱需要シナリオ作成の3つのサブモジュールを有する。
【0053】
5.1.2.サブモジュール構成図
図24は、需要モジュールのサブモジュール構成を示す。3つのサブモジュールは並立であり、それぞれ分析用DBから実績データを取得し、需要予測と需要シナリオ生成を行い、計算結果としての需要予測と需要シナリオを分析用DBと最適需給計画モジュールに受け渡す。
【0054】
5.1.3.サブモジュールフロー
図25は、需要モジュールのサブモジュールのフローを例示する図である。3つのサブモジュールは並立であり、どの順序で処理してもよい。
【0055】
5.2.供給モジュール
5.2.1.サブモジュール一覧
図26は、供給モジュールのサブモジュール一覧を示す。供給モジュールは、PV供給シナリオ作成、系統電力、燃料電池、および蓄熱ユニット熱量の4つのサブモジュールを有する。これらは、HEMSの機器構成を仮想的に再現したものである。
【0056】
5.2.2.サブモジュール構成図
図27は、供給モジュールのサブモジュール構成を例示する図である。PV供給シナリオ作成サブモジュールは、分析用DBから実績データを取得し、供給予測により供給シナリオ生成を行い、計算結果としての予測シナリオを分析用DBと最適需給計画モジュールに受け渡す。なお、本実施形態における制御アルゴリズムでは、系統電源、燃料電池、蓄熱ユニット熱量の3つのサブモジュールは、最適需給計画モジュールの算出結果を受け取り、分析用DBに受け渡す。これは最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたためである。なお、これら3つのサブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0057】
5.2.3.サブモジュールフロー
図28は、供給モジュールのサブモジュールのフローを例示する図である。PV供給シナリオ作成サブモジュールは、最初に実行される。残り3つのサブモジュールは並立であり、最適需給計画モジュールの実行後ならどの順序で処理してもよい。
【0058】
5.3.蓄電モジュール
5.3.1.サブモジュール一覧
図29は、蓄電モジュールのサブモジュール一覧を示す。蓄電モジュールは、蓄電モジュールは、EV蓄電量および蓄電池蓄電量の2つのサブモジュールを有する。これは、HEMSの機器構成を仮想的に再現したものである。
【0059】
5.3.2.サブモジュール構成図
図30は、蓄電モジュールのモジュール構成を例示する図である。本実施形態における制御アルゴリズムでは、蓄電モジュールは、最適需給計画モジュールの算出結果を受け取り、分析用DBに受け渡す。これは最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたためである。なお、蓄電モジュールの各サブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0060】
5.3.3.サブモジュールフロー
図31は、蓄電モジュールのサブモジュールのフローを例示する図である。2つのサブモジュールは並立であり、どちらを先に処理してもよい。
【0061】
5.4.最適需給計画モジュール
5.4.1.サブモジュール一覧
図32は、最適需給計画モジュールのサブモジュール構成を例示する図である。最適需給計画モジュールのサブモジュール構成は、必要な処理の順序に対応して、統合シナリオ生成、最適化計画、制御ルール生成の3つのサブモジュールを有する。
【0062】
5.4.2.サブモジュール構成図
図33は、最適需給計画モジュールのサブモジュール構成を示す。3つのサブモジュールは直列である。まず需要モジュールと供給モジュールからそれぞれ需要シナリオと供給シナリオを統合シナリオ生成サブモジュールが受け取り、これらのシナリオを統合した統合シナリオを生成する。次に統合シナリオと分析用DBから取得した各種パラメータに基づいて、最適化計画サブモジュールが最適化計算の結果として各種計画を生成し、EV/蓄電池充放電計画と燃料電池稼働計画を制御ルール生成サブモジュールと分析用DBに受け渡す。また、系統電源、燃料電池、蓄熱ユニットの各供給計画を供給モジュールに、EV/蓄電池の蓄電計画を蓄電モジュールに、それぞれ受け渡す。最後に、EV/蓄電池充放電計画と燃料電池稼働計画に基づいて、制御ルール生成サブモジュールが制御ルールを生成し、生成された制御ルールを分析用DBに登録する。
【0063】
5.4.3.サブモジュールフロー
図34は、最適需給計画モジュールのサブモジュールのフローを例示する図である。3つのサブモジュールは直列であり、統合シナリオ作成サブモジュール、最適化計画サブモジュール、制御ルール生成サブモジュールの順に実行される。
【0064】
6.方式
6.1.需要モジュール
6.1.1.家電電力需要シナリオ作成サブモジュール
6.1.1.1.考え方
6.1.1.1.1.機能の概要
家電電力需要予測モデルでは、最初に、曜日・天候等(以下カテゴリー,Pで表記)によって異なる電力需要に対して、基本的なパターン(以下、「需要基本パターン」という)を定義する。需要基本パターンとは、カテゴリーによって分類された過去の電力需要量を用いて各カテゴリー内で時間帯別(1時間刻み)に代表値(平均、もしくは中央値)を算出し、カテゴリー別にまとめた代表値の集合である。この需要基本パターンは住宅毎に算出される。次に、予測対象となる住宅の過去の家電需要量と、当該家庭の基本パターンをカテゴリーによってマッチングし、家電電力需要量の実績値と需要基本パターンとの差異を計測する。そして、この差異を予測するモデルを構築する。季節要因は上記のカテゴリー分類の要素ではないが、季節要因も気温変化を通じて電力需要量に影響するため、季節別に気温を説明変数とするモデルを推定する。個々の住宅の生活スタイルの変化を考慮すると、需要基本パターン推定における期間は数年程度とすることが望ましい。より具体的には、進学や就職、転職、結婚などの生活スタイルの変化を反映する必要があることや、個人を特定できる可能性のある詳細な時間別需要データは、セキュリティ上長期、長期で保有しないことが望ましいため、データ期間は1年から2年程度であることが望ましい。
【0065】
図35は、需要基本パターンのカテゴリーを例示する図である。本モデルでは、需要基本パターンのカテゴリーを以下の16種類に分類する。
祝日でない場合:曜日(7種類)×降水の有無(2種類)
祝日の場合:降水の有無(2種類)
なお、本実施形態においては、季節による家電電力需要水準の違いはカテゴリーとして分類しない。12月から3月を冬季、6月から9月を夏季、それ以外を中間期とし、季節毎のモデルを推定することでその差異を予測に反映している。
【0066】
図36は、家電電力需要シナリオ作成フローを説明する図である。予測に関しては、まず、予測対象日の季節と予測気温を用いて、上記推定モデルの関係式に適用することにより、需要基本パターンからの差分を予測する。また、予測対象となる各家庭の電力需要が、どのカテゴリーに分類されるかを曜日・天候予測等で判断し、分類されるべき需要基本パターンを特定する。すなわち、モデルによって推定された上記差分と需要基本パターンの和を計算することで、予測すべき電力需要量が求められる。この推定量が当モジュールの予測値として出力される。また、当サブモジュールでは、予測値の振れ幅を予測モデルの誤差分布のパーセンタイル値から算出し、予測値に振れ幅を加減したものを予測シナリオとして、想定される発生確率と共に出力する。
【0067】
6.1.1.1.2.理由/根拠
本サブモジュールでは、需要基本パターンを定義し、そこからの電力需要の乖離を予測するという手法を採用している。その理由としては、住宅の電力利用は家庭間で均一ではないが、個々の家庭で見た場合、曜日・降水の有無による電力需要のパターンがあると仮定しているからである。(雨天では、洗濯を中止する、特定の曜日にアルバイトで外出してしまうなど。)電力需要のパターンがあれば、そのパターンを特定することにより、観察値からノイズを除去し、安定的な推定値を得ることができる。さらに、電力需要基本パターンからの乖離を予測気温の平均気温からの乖離を用いて予測することで、予測日の気温変化というスペシフィックな家電電力需要要因を推定に取り入れ、精度の向上を図っている。
【0068】
また、当モデルは季節別にモデルを推定するという方法を採用しているが、その根拠は以下の通りである。家電電力需要は、当該住宅付近の気温に影響を受け、その関係は以下のように仮定される。
夏季:住宅H付近の気温が平均気温と比較し、大きくなるほど住宅Hの電力需要は増す(需要量は気温変化に対して正の感応度)。
冬季:住宅H付近の気温が平均気温と比較し、小さくなるほど住宅Hの電力需要は増す(需要量は気温変化に対して負の感応度)。
春季および秋季:住宅H付近の気温と平均気温の差異の絶対値が一定以下の場合、気温変化に対する家電電力需要の感応度は無視できるほど小さい。一方、乖離幅が一定以上になると、その乖離の絶対値に比例して電力需要は増す。
この仮説の根拠としては、家電電力需要の主要部分がエアコンディショナによって占められているという事実によって示される。エアコンディショナは、人が快適であると思われる気温から乖離するほど、その利用が促進されるため、夏季と冬季では気温変化に対する感応度の符号が異なると想定されるからである。
【0069】
図37は、季節毎の家電電力需要の気温との関係を例示する図である。図の縦軸の電力需要を基本需要パターンからの乖離とし、横軸を需要基本パターンの分類に応じた平均気温からの乖離に置き換えたとしても、需要基本パターンは気温を要素として分類していないため、当該乖離幅も気温に対する感応度を持つこととなる。よって、この場合も、
図37同様、夏季シーズンはプラスの感応度、冬季シーズンはマイナス、中間期(春季秋季)は屈曲した直線となる。結局、夏季および冬季モデルの推定においては、説明変数を需要パターン分類毎の平均気温からの乖離とする線形回帰モデルを適用し、春秋期モデルでは、夏季・冬季モデルと同様の説明変数を用いたLDV(Limited Dependent Variable)モデルを推定する。
【0070】
6.1.1.2.入出力
図38は、家電電力需要シナリオ作成サブモジュールサブモジュールの入出力およびモデルで使われている変数・記号の一覧を例示する図である。
図39は、家電電力需要シナリオ作成サブモジュールの変数・記号一覧を例示する図である。
【0071】
6.1.1.3.モデルの詳細
6.1.1.3.1.夏季・冬季モデル
図40は、夏季・冬季における家電電力需要の気温との関係を例示する図である。前述した基本需要パターン16種類毎に、平均需要量aveE
H(H,P,t)を計算する。なおaveE
H(H,P,t)は、次式(1)と同じ意味である。本稿では記号の上にバーを付した文字を表すことが困難であるので、数式以外の部分では記号の上にバーを付す代わりに「ave」という接頭辞を用いる。なお、数式においては式(1)のように記号の上にバーを付した文字を用いる。
【数1】
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このとき、平均需要量は住宅H近辺の住宅(例えば住宅Hおよび住宅Hから所定の距離内にある他の住宅)を対象とし、時間メッシュ毎に計算される。Pは、基本パターンの種類であるカテゴリを表し、tは平均需要量の算出された時間帯を表す。そして、モデルの目的変数y(H,P,S,t)は、
【数2】
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と表される。ここで、E
H(H,P,S,t)は、シーズン別住宅HにおけるパターンPのt時における電力需要実績値であり、式のSはシーズンを表す。
【数3】
[この文献は図面を表示できません]
【0072】
一方、基本需要パターンのカテゴリー毎に観測された住宅付近の気温を分類し、その平均値と観測された気温の差分をモデルの説明変数とする。つまり、説明変数X(H,P,S,t)は、基本需要パターンに応じて計算された時間メッシュ毎の平均気温avem(P,S,t)からの乖離として、以下の式によって与えられる。
【数4】
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【0073】
結局、夏季・冬季モデルの推定式は、
【数5】
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となる。ここで、β(S)は季節で異なる気温変化に対する感応度を表す係数であり、推定式の切片項α(S)は、当該シーズンSの家電電力需要の基本パターンからの差異平均となり、季節要因による電力需要を表す変数である。
【0074】
6.1.1.3.2.春季・秋季モデル
図41は、春季・秋季における家電電力需要の気温との関係を例示する図である。前述のようにモデルは、LDVモデルを適用するが、説明変数は夏季・冬季モデルと同様、X(H,P,S,t)を適用する。目的変数は、下記の
図41のように、気温の水準によって、気温変化に対する感応度が変化すると仮定している。なお、y
m(H,P,S,t)は、状態2(平均±T度以内)の電力需要y(H,P,S,t)の平均を示している。
【0075】
つまり、図の各状態は
【数6】
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と表される。これは、平均気温において、基本需要パターンからの乖離が±T℃の範囲内で、気温変化に対する感応度は殆ど無く、状態2における電力需要の平均y
m(H,P,S,t)で一定と仮定していることを意味している。
【0076】
図42は、春季・秋季における家電電力需要の気温との関係の別の例を示す図である。いま、状態1と状態3における温度変化に対する感応度を等しいと仮定し、状態3の電力需要(平均からの乖離)の符号を反転させれば、
図41は
図42のように変形される。そして、
図42の気温感応度を推定することによって、電力需要と気温の関係式が推定される。
【0077】
前述の仮定の下では、
図42に示されるように、状態1と状態3の直線をそれぞれα1、α2だけシフトさせると中央の直線(
図42)に一致するので、推定には以下の対数尤度lnLを最大化すればよい。
【数7】
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なお、
【数8】
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【数9】
[この文献は図面を表示できません]
【数10】
[この文献は図面を表示できません]
である。また、Σ記号の下の記号iは状態を表す。すなわち、式(7)は、離散的なデータに対して、3つの区間に分割して和をとるという意味である。
【0078】
尤度に関して解説する。観察されるデータが状態1に属するとき、属するそれぞれのデータの生じる確率は確率密度関数であらわされる。このときの確率密度関数は、
【数11】
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であり、状態1のデータ全体に関しての生起確率は
【数12】
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となる。同様に、状態3では
【数13】
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となる。ここで、
【数14】
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である。状態2においては、温度変化に関して感応度がゼロであり、需要変化が観察されないが、もし、他の状態と同様の感応度があり、
図42の中央の直線を想定するなら、状態2に属するデータの個々の生起確率は、
【数15】
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で表される。このケースも、状態2に属するデータ全体での「尤もらしさ」は
【数16】
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で表される。すべての状態における「尤もらしさ」は、全データの生じる確率を掛け合わせた以下の式で表される。
【数17】
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この式が当モデルの尤度関数であり、尤もらしさを表す。この尤度を最大化するように、未知パラメータ(β、α1、α2)を決定する方法が最尤法である。一般的に、尤度関数は対数変換しても大きさの順序関係に変化は無いため、便宜的に尤度関数を対数変換し、その関数値を最大化させる方法が用いられることが多い。
【0079】
前述の対数尤度関数は、すべての目的変数が各々どの状態(状態1、状態2、状態3)に属するのか判別できれば、各状態の生起確率が判明するため、最大化するパラメータを推定することができる。実際の推定においては、状態を区分するTが既知の場合、α1、α2はそれぞれ、
【数18】
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【数19】
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となる。実際には、Tが既知ではないため、電力需要量の基本需要パターンからの乖離(目的変数)の下位X%以下のデータが状態2に属すると仮定し、それ以外のデータに関しては、当該データの気温の平均からの乖離値が正のときは状態3、負の時は状態1に属すると仮定し、観測値からα1、α2も含めて推定する。X%は未知であるため、前述の尤度が最大となるように推定されたパラメータおよび状態を用いて事後的な尤度が最大となるように、グリッド・サーチによってX%を決定する。推定されたパラメータを用いて、気温と電力需要の関係式が求められるので、この関係を将来予測に当てはめ、将来シナリオを算出する。
【0080】
6.1.1.3.3.モデルパラメータの推定方法
6.1.1.3.2節で提示した尤度関数を推定パラメータで微分し、ゼロと置くことで、以下の関係式を得る。
【数20】
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【数21】
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【数22】
[この文献は図面を表示できません]
【数23】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、
【数24】
[この文献は図面を表示できません]
【数25】
[この文献は図面を表示できません]
【数26】
[この文献は図面を表示できません]
Ni:
図42で示された状態iのデータ件数(i=1,2,3)
Φi:標準分布関数
Σ記号の下の添字は
図42で示された状態を表す変数(i=1,2,3)
【0081】
以上の関係を用いて、EM(Expectation Maximization)アルゴリズムの1つを用いて、対数尤度が最大値近辺で収束するようにパラメータ推定可能であり、その手順は以下のとおりである。
【0082】
【数27】
[この文献は図面を表示できません]
【0083】
【数28】
[この文献は図面を表示できません]
【数29】
[この文献は図面を表示できません]
【数30】
[この文献は図面を表示できません]
【数31】
[この文献は図面を表示できません]
【数32】
[この文献は図面を表示できません]
【0084】
【数33】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、λは更新幅である。
【0085】
ステップ4:k+1回目更新パラメータを用いて対数尤度lnL
(k+1)を計算し、尤度が収束するまでステップ2からステップ3の処理を繰り返す。
収束条件は
lnL
(k+1)−lnL
(k)<閾値
として、十分に小さな閾値を設定すればよい。同様にその他の手法を用いて尤度を最大化するパラメータを推定することも可能であり、採用する手法は頑健性や計算時間などを考慮して決定する。
【0086】
6.1.1.4.予測シナリオの作成
6.1.1.4.1.予測値の作成
将来予測値は、前節で示したモデル式を推定することで得られた気温と電力需要量の関係を気温予測に当てはめることにより、算出する。気温の予測値を1時間メッシュで取得する。さらに、予測対象が当てはまる基本需要パターンのカテゴリーとシーズンを考慮し、予測値のカテゴリーとシーズンに対応する過去の平均値avem(H,P,S,t)を算出する。そして、予測値のavem(H,P,S,t)からの乖離を計算し、6.1.1.3.節の推定モデルに代入することによって将来の予測値としてのy
*(H,P,S,t)を求める。実際のシナリオとして必要となる予測値は、基本需要パターンからの乖離ではなく、需要量そのものであるため、下記の式によって需要量データに変換する。
【数34】
[この文献は図面を表示できません]
【0087】
まとめると、
・予測は1週間先までを1日毎に行う。
・予測日の曜日、祭日かどうか、予想降水確率を用いて、予測に用いる基本パターンを決定する。但し、降水の有無は降水確率が50%以上のときに「降水有り」、50%未満のときに「降水無し」とする。
・予測日の季節から、適用すべき需要基本パターンからの差分を予測するモデルを推定する。
・1時間メッシュの住宅H付近の気温予測値を過去平均からの乖離に変換し、学習データから得られた差分を推定するモデルに適用して、予測値を得る。
【0088】
一方、1時間メッシュの気温予測データが将来の7日分得られない場合、以下の方法で推定値を得ることとする。
(1)予測するデータが、その予測時点から本稿で定義したシーズン(夏季、冬季、春季・秋季)のどれに相当するかを判別する。
(2)日次ベースでは、7日間先の日中最高気温および最低気温データは気象庁等より、公開されている。また、降水確率も同様である。
そこで、
(イ)予測降水確率が50%以上の場合、予測対象日の天候は“降雨あり”、予測確率が50%未満の場合、“降雨なし”と判別する。
(ロ)同じ天候、同じシーズンの過去データに関して、それぞれの日中最高気温および最低気温を取り出し、予測の最高気温および最低気温に対するそれぞれの乖離の自乗和を計算する。
(ハ)(ロ)で計算された乖離の自乗和に関して、昇順にデータを並べ替え、上位10位程度までのデータ(日次1時間刻み)を取得する。
(3)上記の手続きにより得られた最高気温・最低気温が近い過去データにおける家電電力需要の平均値を、時間帯毎(1時間メッシュ)に計算し、その平均値(1時間メッシュで計算)を予測データとする。
【0089】
6.1.1.4.2.予測値の振れ幅の設定
計算された予測値と実績値の差を予測誤差と定義する。1週間先の将来時点まで予測するため、予測値の種類を予測日までの期間の長さ(1日単位)で捉えると、7種類の誤差が存在することになる。予測誤差は予測時点毎に過去の予測値(7種、1時間刻み)を保持し、都度、これら保持データから予測誤差を計算することとする。以上の処理によって蓄積された誤差の分布から、予測の振れ幅に関する推定量を得ることとする。
【0090】
図43は、誤差分布から得られる代表値を例示する図である。横軸は誤差を、縦軸は確率密度を、それぞれ示している。
図46は、4つの振れ幅が設定された場合の例を示している。過去の予測誤差データから、誤差の大きさを基準として97.5%タイル点および85%タイル点、15%タイル点、2.5%タイル点を抽出(もしくは線形補間により推定)し、それらを予測値の振れ幅として設定する。
【0091】
6.1.1.4.2.3.予測シナリオの設定
前述の設定された予測値の振れ幅を用いて、予測シナリオを設定する場合、“予測値”、“予測値+85%タイル点”、“予測値+15%タイル点”、“予測値+97.5%タイル点”、“予測値+2.5%タイル点”が、それぞれ発生確率が50%、20%、20%、5%、5%のシナリオとして出力される。
【0092】
6.1.2.EV電力需要シナリオ作成サブモジュール
6.1.2.1.考え方
6.1.2.1.1.機能の概要
図44は、EV電力需要シナリオ作成フローを説明する図である。本サブモジュールでは、EV利用に伴う電力需要を予想し、予測値とその誤差を考慮したEV電力需要シナリオを作成する。しかし、将来のEV利用の予測を可能とする観測変数を得ることは難しい。そのため、EV利用の予測は居住者の利用予約が、生起確率の観点から尤もらしいシナリオとし、当該シナリオを当モジュールの予測値とする。当該シナリオに関しては、利用予約時間帯とその長さによって、利用予約情報を電力換算し、出力シナリオとする。一方、このメイン(生起確率の観点から尤もらしい)シナリオ以外に出力されるシナリオは、経験分布を反映させるため、EV電力需要実績からランダムにサンプリングすることによって得る。
【0093】
6.1.2.1.2.理由/根拠
予測が困難ながら、実際のEV電力需要実績データからサンプリングを行い、経験分布を反映させることによって実態の利用状況を反映したシナリオ作成を実現させる。利用予約は、ユーザ本人の意思表示の結果であり、これをメインシナリオとすることは合理的である。
【0094】
6.1.2.2.入出力
図45は、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール入出力を例示する図である。
図46は、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール変数・記号一覧を例示する図である。
【0095】
6.1.2.3.モデルの詳細
EV利用予約情報は、EVの利用時間帯情報であり、この情報を電力需要換算する必要がある。当サブモジュールでは、統計モデルは存在せず、EV利用予約を電力需要量換算するロジックのみが存在することになる。
【0096】
6.1.2.4.予測シナリオの作成
6.1.2.4.1.予測値の作成
前述のように、尤もらしい予測は、EV利用予約という、ユーザの入力情報となる。よって、このEV利用予約を電力需要量に変換したものが、当サブモジュールの予測値となる。
【0097】
6.1.2.4.2.予測値の振れ幅の設定
予測値以外のシナリオは、過去の実績値からのランダムサンプリングである。そのため、具体的な予測値の振れ幅は設定されていない。
【0098】
6.1.2.4.3.予測シナリオの設定
予測シナリオは、EV電力需要実績DBに格納された過去1年分のデータからのランダムサンプリングによって7日分(予測期間)作成される。以下に、その手順を詳述する。
【0099】
ステップ1:
予測日当日の曜日を計算する。(以下でx曜日であると仮定。)
ステップ2:
EV電力需要量に関する過去実績データを取得し、当該需要量を日次で合算し、その合計値が高い上位1%に含まれる日のデータを取得データから除外する。
ステップ3:
取得した過去データのx曜日のデータとそのデータ日付を抽出する。
ステップ4:
データ日付を含め、その後7日間のデータが連続して取得可能(欠損していない)であるデータ以外をステップ3の抽出データから削除する。
ステップ5:
残ったデータを日付の昇順に並べ替えると共に、残ったデータ数をカウントする。
ステップ6:
一様乱数をステップ5のカウント数分だけ発生させ、乱数をその発生順にデータの並び順で各データに付与する。
ステップ7:
n−1本(n−1はステップ5のカウント数以下である必要がある)のシナリオを取得すると仮定し、ステップ6で与えた乱数の昇順にn−1個のデータを抽出する。
ステップ8:
ステップ7で抽出されたデータのデータ日付を含め、各々のデータ日付以降7日間のデータを取得し、x曜日をスタートとして7日間連続したデータの集合を1単位のシナリオとしてまとめる。この時点でn−1本のシナリオが作成される。
ステップ9:
ステップ8でまとめられたシナリオ(n−1本)を出力する。
【0100】
次に、これらのシナリオの発生確率の設定であるが、シナリオは、それぞれ、サブシナリオがn−1本とメインシナリオが1本の計n本である。メインシナリオは、尤もらしい(生起確率が最も高いと想定される)シナリオであるため、当該シナリオに対しては高い発生確率を与えるべきである。
【0101】
そして、与えるべき具体的な発生確率は、現段階では80%から90%の発生確率を想定している。もし、当該設定を80%とした場合、残りの20%が、その他n−1本のシナリオに振り分けられることになる。一方、これらのシナリオはランダムサンプリングによって得られたシナリオであるため、それぞれの生起確率を等しく設定することが合理的である。よって、(100−80)%をこれらn−1本のシナリオに等配分したものを生起確率と設定するする。つまり、メインシナリオ以外のシナリオの生起確率は以下の式で与えられる。
【数35】
[この文献は図面を表示できません]
【0102】
6.1.3.熱需要シナリオ作成サブモジュール
6.1.3.1.考え方
6.1.3.1.1.機能の概要
図47は、熱需要シナリオ作成フローを説明する図である。熱需要は、気温の変化や季節、曜日と強い相関があることを仮定する。また、熱利用は、季節や曜日(以下カテゴリー)毎に、各住宅で一定のパターンに従うと仮定する。そこで、当サブモジュールの予測モデルは、上記の仮説に従い、過去の熱の実績需要データを用いた予測モデルとする。具体的には、過去の日別の熱需要実績データを各カテゴリーに分類する。次に、予測対象日がどのカテゴリーに属するのかを判別する。また、予測対象日の日中最高気温および最低気温データを取得する。一方、予測日が判別されたカテゴリーに関して、同一カテゴリーの過去実績需要データのデータ日付における日中最高気温および最低気温を算出する。そして、予測日に対応するカテゴリーの過去実績データの中から、予測日の日中最高気温および最低気温予測とデータ日付の日中最高気温・最低気温が近い過去実績データを複数抽出し、その代表値を予測需要データとして適用することとする。気温が近いかどうかは、最低気温および最高気温それぞれに対して差分の2乗を計算し、それぞれの和を計算した値を基準に判断する。
【0103】
6.1.3.1.2.理由/根拠
熱需要は、床暖房での利用などを通じ、気温と相関関係がある。また、入浴時のお湯の使用は、夏季と冬季では異なる。さらに、休日と平日では入浴時間が異なることが考えられる。これらに対処するため、曜日や季節、気温などの要素を予測に加味することが必要となる。そのため、本サブモジュールでは、過去の実績データを季節および曜日の組み合わせのカテゴリーに分類し、予測日に対応するカテゴリーの中から、気温を選択基準として需要量の代表値を抽出し、予測値を算出する方法を採用している。
【0104】
6.1.3.2.入出力
図48は、熱需要シナリオ作成サブモジュールの入出力を例示する図である。
【0105】
6.1.3.3.モデルの詳細
当サブモジュールの予測は、下記の手順に従って行われる。
ステップ1:
過去の日別の熱需要実績データを以下の24カテゴリーに分類する
祝日ではない場合:曜日(7カテゴリー)×季節(3カテゴリー)
祝日の場合:季節(3カテゴリー)
冬季:12月から3月
夏季:6月から9月
中間期:4月、5月、10月、11月
ステップ2:
予測するデータが、その予測時点からみて、上記で定義したどのカテゴリーに相当するかを判別する。
ステップ3:
日次ベースでは、7日間先の日中最高・最低気温データは気象庁等より、公開されている。そこで、
(1)同じカテゴリーの過去データに関して、それぞれの日中最高気温を取り出し、予測の日中最高気温との差異の2乗を計算する。最低気温に対しても同様の計算を施す。
(2)(1)で計算された最低気温と最高気温の2乗和を日次で計算し差異の小さい上位複数のデータ(日次1時間刻み)を取得する。
(3)取得した上位複数のデータの熱需要の平均値(1時間刻み)を各メッシュにおける代表値として計算し、その代表値を予測データとする。
【0106】
6.1.3.4.予測シナリオの作成
6.1.3.4.1.予測値の作成
当サブモジュールでは、過去の実績データからのカテゴリー別のサンプリングを実施するので、モデル詳細で得られた過去データの代表値が予測値そのものとなる。
【0107】
6.1.3.4.2.予測値の振れ幅の設定
計算された予測値と実績値の差を予測誤差と定義する。1週間先の将来時点まで予測するため、予測値の種類を予測日までの期間の長さ(1日単位)で捉えると、7種類の誤差が存在することになる。予測誤差は予測時点毎に過去の予測値(7種、1時間刻み)を保持し、都度、これら保持データから予測誤差を計算することとする。以上の処理によって蓄積された誤差の分布から、予測の振れ幅に関する推定量を得ることとする。
【0108】
図49は、誤差分布から得られる代表値を例示する図である。横軸は誤差を、縦軸は確率密度を、それぞれ示している。
図49は、4つの振れ幅を設定する場合の例である。過去の予測誤差データから、誤差の大きさを基準として97.5%タイル点および85%タイル点、15%タイル点、2.5%タイル点を抽出(もしくは線形補間により推定)し、それらを予測値の振れ幅として設定する。
【0109】
6.1.3.4.3.予測シナリオの設定
前述の設定された予測値の振れ幅を用いて、予測シナリオを設定する場合、“予測値”、“予測値+85%タイル点”、“予測値+15%タイル点”、“予測値+97.5%タイル点”、“予測値+2.5%タイル点”が、それぞれ発生確率が50%、20%、20%、5%、5%のシナリオとして出力される。
【0110】
6.2.供給モジュール
6.2.1.PV供給シナリオ作成サブモジュール
6.2.1.1.考え方
6.2.1.1.1.機能の概要
図50は、PV供給量シナリオ作成フローを説明する図である。本モジュールでは、過去の平年の日射量と気温を用い、太陽光発電(以下PV)との関係を表す非線形回帰モデルを推定する。設置角度係数は明示的にモデル内に組み込むことも可能であるが、デフォルトでは使用しない。そして、推定されたモデルパラメータを用いて、7日間(予測の時間刻みは1時間)の予測データ(天候および気温)と日射量(過去実績を予測値とする)に適用し、PVの将来供給量を予測する。予測モデルは、発電効率の関数および天気による日射量低下係数(晴天か否かのダミー変数の係数)をファクターとする非線形回帰モデルとしている。また、過去の予測誤差分布から、誤差のパーセンタイル値(例えば、2.5%、15%、85%、97.5%)を求め、期待値と共に予測シナリオを作成する。
【0111】
6.2.1.1.2.理由/根拠
日射量は、地域や天候が同じであれば、24時間周期で同じ形の単峰形を描くことが知られている。また、発電効率と気温はほぼ線形関係にある。そこで、発電量予測は、気温を変数とする発電効率の線形関数と日射量の積でモデリングし、日射量の予測値の代替として日次の実績データを適用することが可能であると考えられる。一方、天気による日射量低下係数(晴天か否かのダミー変数の係数)を考慮すると、推定モデルは日射量低下係数を含んだ日射量関数と発電効率の積(非線形)で表現されるため、モデル式には非線形回帰式を採用している。
【0112】
6.2.1.2.入出力
図51は、PV供給量シナリオ作成モジュールの入出力を例示する図である。
図52は、PV供給量シナリオ作成モジュールの変数・記号一覧を例示する図である。
【0113】
6.2.1.3.モデルの詳細
図53は、日射量と発電効率の関係を例示する図である。PV供給量は、日射量とPV発電効率の積で表されると仮定する。
【数36】
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【0114】
図54は、PV発電効率と気温の関係を例示する図である。PV発電効率は、気温に関する1次関数(直線)と設置角度係数の積とする。
【数37】
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【0115】
図55は、天候による日射量を例示する図である。推定モデルでは、日射量は、予測地域に応じた日次(24時間周期)の実績データを用いる。曇天および雨天時は、晴天時と比較して、一定比率下がると仮定することが合理的であるため、日射量低下係数を導入する。よって、予測に適用する日射量は、所定の外部機関または事業者が公表する多照年の日射量とし、天候による日射量低下は、実態にあわせてモデルで低下することとする。日射量、日射量低下係数は、以下の記号で表すこととする。
【数38】
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そして、曇天および雨天時の日射量は
【数39】
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で表される。
【0116】
以上、定義された変数を用いて、推定非線形回帰モデルを以下の回帰式(40)のように設定する。
【数40】
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ここで、
【数41】
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である。モデルは、日射量l{H,t}、気温θ(t)を入力として、発電効率の気温係数γ
Sθ(H)、発電効率の気温定数γ
S0(H)、日射量低下係数γ
lcloudyを推定する。目的変数は、PV供給量s(H,t)である。上記の回帰式は設置角度係数と発電効率パラメータが推定上、判別不能であるため、当初は設置角度係数を含まない回帰式として設定する。よって、この場合、発電効率のパラメータγ
Sθ(H)およびγ
S0(H)は、設置角度係数の効果を含んだ値として推定される。
【0117】
モデル式としては、上記の非線形回帰モデルを想定しているが、日射量の予測値として、雲量を予測した上で算出される日射量が取得できる場合、上記回帰式は、
【数42】
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となる。この場合、モデル式はθ(t)l{H,t}およびl{H,t}に対する線形モデルとなり、この式を用いて予測することとなる。
【0118】
6.2.1.4.予測シナリオの作成
6.2.1.4.1.予測値の作成
前述のモデル式を過去データに適用し、パラメータを推定することで得られた気温と日射量、天気、PV供給量の関係を、将来の天気予報および予測気温、過去の日射量に適用し、将来の予測値を算出する。予測は、予測日を含め、将来7日間(1時間刻み)のPV供給量に対して実施する。
【0119】
6.2.1.4.2.予測値の振れ幅の設定
計算された予測値と実績値の差を予測誤差と定義する。1週間先の将来時点まで予測するため、予測値の種類を予測日までの期間の長さ(1日単位)で捉えると、7種類の誤差が存在することになる。予測誤差は予測時点毎に過去の予測値(7種、1時間刻み)を保持し、都度、これら保持データから予測誤差を計算することとする。以上の処理によって蓄積された誤差の分布から、予測の振れ幅に関する推定量を得ることとする。
【0120】
図56は、誤差分布から得られる代表値のを例示する図である。
図56は、4つの振れ幅を設定する場合の例である。過去の予測誤差データから、誤差の大きさを基準として97.5%タイル点および85%タイル点、15%タイル点、2.5%タイル点を抽出(もしくは線形補間により推定)し、それらを予測値の振れ幅として設定する。
【0121】
6.2.1.4.3.予測シナリオの設定
前述の設定された予測値の振れ幅を用いて、予測シナリオを設定する場合、“予測値”、“予測値+85%タイル点”、“予測値+15%タイル点”、“予測値+97.5%タイル点”、“予測値+2.5%タイル点”が、それぞれ発生確率が50%、20%、20%、5%、5%のシナリオとして出力される。
【0122】
6.2.2.系統電源サブモジュール
6.2.2.1.考え方
6.2.2.1.1.機能の概要
概念的に、HEMSの機器構成を仮想的に再現したサブモジュールであり、最適需給計画モジュールで生成された系統電源の最適な潮流/逆潮流の計画を分析用DBに保存するためのサブモジュールである。
【0123】
6.2.2.1.2.理由/根拠
本実施形態における制御アルゴリズムでは、最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたため、簡素な機能となっている。なお、系統電源サブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0124】
6.2.2.2.入出力
図57は、系統電源サブモジュールにおける入出力を例示する図である。
【0125】
6.2.3.燃料電池サブモジュール
6.2.3.1.考え方
6.2.3.1.1.機能の概要
燃料電池サブモジュールは、概念的に、HEMSの機器構成を仮想的に再現したサブモジュールである。詳細には、燃料電池サブモジュールは、最適需給計画モジュールで生成された燃料電池の最適な稼働計画(起動、停止、出力)を分析用DBに保存するためのサブモジュールである。
【0126】
6.2.3.1.2.理由/根拠
本実施形態における制御アルゴリズムでは、最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたため、簡素な機能となっている。なお、燃料電池サブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0127】
6.2.3.2.入出力
図58は、燃料電池サブモジュールにおける入出力を例示する図である。
【0128】
6.2.4.蓄熱ユニット熱量サブモジュール
6.2.4.1.考え方
6.2.4.1.1.機能の概要
蓄熱ユニット熱量サブモジュールは、概念的に、HEMSの機器構成を仮想的に再現したサブモジュールである。詳細には、蓄熱ユニット熱量サブモジュールは、最適需給計画モジュールで生成された蓄熱ユニットの最適な蓄熱量計画を分析用DBに保存するためのサブモジュールである。
【0129】
6.2.4.1.2.理由/根拠
本実施形態における制御アルゴリズムでは、最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたため、簡素な機能となっている。なお、蓄熱ユニット熱量サブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0130】
6.2.4.2.入出力
図59は、蓄熱ユニット熱量サブモジュールにおける入出力を例示する図である。
【0131】
6.3.蓄電モジュール
6.3.1.EV蓄電量サブモジュール
6.3.1.1.考え方
6.3.1.1.1.機能の概要
蓄電モジュールは、概念的に、HEMSの機器構成を仮想的に再現したサブモジュールである。詳細には、蓄電モジュールは、最適需給計画モジュールで生成されたEVの最適な蓄電量計画を分析用DBに保存するためのサブモジュールである。
【0132】
6.3.1.1.2.理由/根拠
本実施形態における制御アルゴリズムでは、最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたため、簡素な機能となっている。なお、EV蓄電量サブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0133】
6.3.1.2.入出力
図60は、EV蓄電量サブモジュールにおける入出力を例示する図である。
【0134】
6.3.2.蓄電池蓄電量サブモジュール
6.3.2.1.考え方
6.3.2.1.1.機能の概要
蓄電池蓄電量サブモジュールは、概念的に、HEMSの機器構成を仮想的に再現したサブモジュールである。詳細には、蓄電池蓄電量サブモジュールは、最適需給計画モジュールで生成された蓄電池の最適な蓄電量計画を分析用DBに保存するためのサブモジュールである。
6.3.2.1.2.理由/根拠
本実施形態における制御アルゴリズムでは、最適化計算の効率を考慮して、最適需給計画モジュールで集中処理を行うこととしたため、簡素な機能となっている。蓄電池蓄電量サブモジュールに異なる機能を実装し、分散処理を行ってもよい。
【0135】
6.3.2.2.入出力
図61は、蓄電池蓄電量サブモジュールにおける入出力を例示する図である。
【0136】
6.4.最適需給計画モジュール
6.4.1.統合シナリオ生成サブモジュール
6.4.1.1.考え方
6.4.1.1.1.機能の概要
図62は、統合シナリオ作成サブモジュールのフローを説明する図である。本サブモジュールでは、需要モジュール内の家電、EV、熱需要シナリオ作成サブモジュールから作成されるシナリオと、供給モジュール内のPV供給サブモジュールから作成されるシナリオを統合し、その生起確率とともに、統合されたシナリオを最適化モジュールに引き渡す機能を保有する。ここで、統合とは、それぞれ独立に作成された上記の各サブモジュールシナリオを、相関構造を考慮して、それぞれのシナリオを組み合わせることを意味する。また、本稿の統合シナリオとは、この組み合わされたシナリオのことであり、その生起確率も当サブモジュールで推定される。
【0137】
6.4.1.1.2.理由/根拠
最適化モジュールの確率計画法では、離散分布に従う確率変数を仮定している。そのため、値とその発生確率pの組(シナリオ)を複数生成することで、予測値の分布を表現する必要が生じる。しかしながら、予測サブモジュール(家電電力需要予測、熱需要予測、EV電力需要予測、PV供給量予測)は、各々が独立に予測を実施しているため、各予測の組み合わせに関しては、その生起確率を別途計算する必要がある。その理由としては、EV電力需要予測を除き、気温や天候を通じて各予測モデルのシナリオは独立でないからである。仮に、各シナリオが独立であると仮定してしまうと、実現可能性が低いシナリオの組み合わせが統合シナリオとして生成され、他の実現可能性が高いシナリオと同等の生起確率が与えられることとなってしまう。
【0138】
6.4.1.2.入出力
図63は、統合シナリオ作成サブモジュールの入出力を例示する図である。
図64は、統合シナリオ作成サブモジュールの変数・記号の一覧を例示する図である。
【0139】
6.4.1.3.モデルの詳細
本サブモジュールのモデルの詳細は以下の通りである。まず、PV供給量予測および家電電力需要量予測、熱需要量予測のそれぞれに関して、誤差が格納されたデータベースより、誤差の時系列データを取得する。そして、それらを用いて誤差の相関行列を推定する。相関係数の推定は、誤差分布が非正規分布である可能性もあるため、順位相関によって与えることとする。一方、各予測モデルには、観察されない共通ファクターが存在することを仮定する。これは、実際、説明変数として温度や天候などの情報を採用していること、また、誤差には予測対象となっている住宅独自の生活様式が反映されると想定されるためである。
【0140】
この共通ファクターは、直接、観測されないが、ここでは便宜的に正規分布に従っていると仮定する。実際、正規分布であるとは限らないが、これらの予測モデルの誤差分布に多次元正規分布関数を採用することで、予測値が独立であると仮定した場合に比べ、現実に近い統合シナリオの発生確率が得られる。
【0141】
得られた相関行列を用いて、3次元正規密度関数(分散は1)を設定する。各予測モデルのシナリオは、各モデルの誤差のパーセンタイル値として得られているので、それらを標準正規分布関数に当てはめ、標準正規分布に従うと仮定した場合の値に変換する。具体的には、75%タイル点として得られた数値は、75%を標準正規分布関数の逆関数に与えることによって計算でき、その値は約0.6745となる。25%タイル点の場合では、‐0.6745である。
【0142】
図65は、多次元正規密度関数を仮定したシナリオの同時生起確率の生成フローを説明する図である。これらの変換された数値を上記の3次元正規密度関数に代入することで、シナリオの同時生起確率が得られる。
【0143】
以上の処理により、PV供給量予測モデル、家電電力需要量予測モデル、熱需要量予測モデルそれぞれから得られたシナリオの同時生起確率が計算された。当モジュールでは、この数値にEV電力需要量シナリオを組み合わせた場合の統合シナリオの同時生起確率を計算する必要がある。ここで、EV電力需要量は他のモデルとは独立に決まると仮定しているため、そのシナリオの生起確率を前述の3モデル(PV供給量、家電電力需要量、熱需要量)のシナリオの同時生起確率に掛け合わせることで、EV電力需要量も考慮した4モデル(PV供給量、家電電力需要量、熱需要量、EV電力需要量)のシナリオの同時生起確率を計算することが可能となる。
【0144】
図66は、PV供給量予測モデル、家電電力需要量予測モデル、熱需要量予測モデルそれぞれのシナリオが5本であるときのイメージ図である。3モデルのシナリオの組み合わせは125通りあるため、125本のシナリオにEV電力需要量予測モデルのシナリオが組み合わされ、統合シナリオの組み合わせとなる。その生起確率の算出方法は前述の通りである。
【0145】
6.4.1.4.統合シナリオの生成
前節のモデル詳細で述べた手法に従う事により、家電電力需要モデルおよびPV供給量モデル、熱需要モデル、EV電力需要モデルに関する全てのシナリオの組み合わせに関して、シナリオ同時発生確率は求められる。同時発生を考慮して計算された統合シナリオには、その発生可能性が極めて低いものも含まれることと、最適化モジュールへの現実の負荷を考慮し、本サブモジュールでは、生起確率の高いシナリオを選択して最終的な統合シナリオとする。そして、統合シナリオのそれぞれの生起確率は、選択されたシナリオの生起確率のトータルが100%になるように基準化した値とする。基準化された生起確率は、以下の式によって計算される。
【数43】
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【0146】
図67は、統合シナリオの生成を例示する図である。
図67は、m本のシナリオを選択した場合の例を示している。
【0147】
6.4.2.最適化計画サブモジュール
6.4.2.1.考え方
6.4.2.1.1.機能の概要
当サブモジュールでは、家電電力需要予測、EV電力需要予測、熱需要予測およびPV供給量予測から生成された将来1スパン(7日間)分のメッシュ時間(1時間)単位での統合シナリオを入力として、当該期間における機器の最適な制御方法の算出を行う。最適化には、数理計画法の1つである確率的混合整数計画法を用いる。確率的混合整数計画法では、例えば、電池の充電と放電が同時に生じないなどの制御上の制約条件を加味しつつ、さらに予測値が外れる場合のリスクを考慮に入れた制御計画が算出される。最適性の指標値は、指定された最適化モードに従って入力項目を調整することで設定される。例えば、「経済モード」であれば、1スパンでの合計の系統電力と燃料(ガス)使用料金が指標値となり、より料金を少なくすることに重みを置いた制御計画が出力される。サブモジュールからの出力は、シナリオと等しい将来1スパン分のメッシュ期間単位での各機器の制御(ON・OFFあるいは運転の出力レベルや電池の蓄電量)となる。蓄電池の蓄電レベルに関しては標準的なレベルに加え、リスク回避的な制御を行った場合に相当する上限蓄電レベル、および、リスク許容度が高くより最適化モード設定に重みをおいた下限蓄電レベルを出力する。なお、本システムでは1住宅には定置型蓄電池あるいはEVいずれか1台が設置されていることを前提としているが、当サブモジュールのアルゴリズムは、理論上は複数台の定置型蓄電池とEVが設置されている場合でも、各機器が独立に制御可能であればそのまま拡張が可能である。ただし、例えば2台以上のEVを同時に放充電が行えないといった制御上の制約条件がある場合には、モデル式の追加などの検討が必要となる。
【0148】
6.4.2.1.2.理由/根拠
本システムのように蓄電池を含んだHEMS機器の制御では、将来の予測に基づき機器を制御するという視点が重要である。例えば、最適化計算のもとになる家電電力需要やPV発電量は、将来の予測値であり、その通りの結果が必ずしも実現するとは限らない。そこで、将来どの程度ブレが生じる可能性があるのを、複数の予測値推移のケースとその発生確率をシナリオとして表現し最適化の入力としている。シナリオで表現された予測値の推移毎にブレの大きさをリスクと考え、将来のリスクに関しても最小化を考慮した制御を算出するためには、不確実性を考慮できる最適化手法が必要となるため、確率的計画法を採用している。さらに、電池の制御には、例えば、充電と放電を同時に行わないといった2者択一的な制約条件が存在し、これを扱うためには離散的な変数を含む最適化問題の枠組みが必要となるため、確率的混合整数計画法の採用となる。
【0149】
6.4.2.2.入出力
当サブジュールの入出力およびその定義に用いるための記号をまとめる。
6.4.2.2.1.入力
図68は、統合シナリオの項目を例示する図である。
図69〜
図72は、パラメータ項目を例示する図である。入力には統合シナリオ作成サブモジュールで生成されたシナリオおよびそれ以外に最適化処理の定数となるパラメータ項目がある。
【0150】
6.4.2.2.2.出力
図73は、当サブモジュールの出力を例示する図である。
【0151】
6.4.2.3.モデルの詳細
本サブモジュールで用いる最適モデルを構成する要素には、
1)変数
2)制約条件
3)目的関数
の3つがある。変数は、機器制御(ON/OFFや放充電量など)や電力や熱の変化量などを表す量であり、最適化処理により値を算出する対象である。
【0152】
これらの量の関係性を数式で表現したものが制約条件となる。制約条件は、複数本の1次の等式あるいは不等式により定められていなくてはならない。一般的にN個の変数がx1,x2,…,xNと表記されている場合、1次の等式あるいは不等式は、各変数の係数としてN個の定数a1,a2,…,aNと右辺の定数bを与えることでそれぞれ、
【数44】
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と定められる。目的関数は、例えば電力とガスの合計費用など最適化の際に最小化あるいは最大化を行う指標を計算する数式であり、制約条件と同様に各変数の係数を与えることで1次式となるように定められる。
【0153】
6.4.2.3.1.変数
図74〜
図76は、最適化モデルで用いている変数の一覧を例示する図である。最適化の変数は、各住宅(H)別、計画メッシュに対応した期間(t=1,2,...,T)別の機器制御(ON/OFFや放充電量など)や電力や熱の変化量などに対応している。
【0154】
6.4.2.3.2.制約条件
6.4.2.3.2.1.電力需給と熱需給のバランスを表す制約条件
図77は、最適化で考慮する機器の構成を例示する図である。
図77は、変数と最適化で考慮する機器および各変数との関連を示している。
【0155】
系内の回路から出ていく電力と入ってくる電力がバランスしている条件から以下の制約条件が導かれる。なお、シナリオi毎に家電電力需要E
Hi(H,t)とPV電池供給量s
i(H,t)が異なるため、リコース変数 e
i+(H,t)おおよびe
i-(H,t)を用いてその差分(電力余剰と電力不足)を表現している。なお、この差分がリスクとして最適化の目的関数に組み込まれ最小化される。
【数45】
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また、系統からの購入する電力量と逆潮流量に上限があり、以下の制約式を考える。
【数46】
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同様に、系内から出ていく熱と入ってくる熱がバランスしている条件から以下の制約条件が導かれる。
【数47】
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この場合も、シナリオ毎に熱需要量Q
i(H,t)が異なるため、リコース変数ω
i+(H,t)およびω
i-(H,t)を用いてその差分(熱余剰と熱不足)を表現している。電力の場合と同様に、この差分がリスクとして最適化の目的関数に組み込まれ最小化される。
【0156】
6.4.2.3.2.2.FCの発電量に関する制約条件
FCの発電量p
FC(H,t)と投入するガス燃料の量g(H,t)の関係は線形とする。比例係数をC
FCp(H)、切片項をC
FCp0(H)とすれば、FCの発電量と投入燃料の関係は以下の1次式で表現される。
【数48】
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【0157】
FCの単位時間当りの発電量には下限p
FCmin(H,t)および上限p
FCmax(H,t)があると仮定し、次の制約条件を導入する。
【数49】
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なお、メンテナンス等により将来の期間tでFCの運転中止が前もって予定されている場合などには、上限発電量p
FCmax(H,t)を0に設定することで、当該期間でのFCの運転中断を加味することが可能である。また、δ
FC(H,t)はFC蓄電池の起動と停止状態を区別する変数で、期間tで起動していれば1、停止していれば0となる0−1の離散変数として定義されている変数である。なお、1単位メッシュ時間の中では、FCの起動と停止を繰り返さないとしてモデル化を行った。これは、停止から起動する際には起動電力の消費が伴うため、メッシュ内での細かな起動停止を想定したモデル化を行っても効果は限定的と想定されるためである。
【0158】
次に、FCの起動あるいは停止に関する制約条件を定義する。変数δ
FCON(H,t)を期間tの開始時点でFCが停止状態から起動状態に推移する場合に1、それ以外では0となる0−1変数とすれば、起動する場合は起動停止を表す変数がδ
FC(H,t)=1かつδ
FC(H,t−1)=0なとなることから、次の制約条件を満たすことになる。
【数50】
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【0159】
逆に、燃料電池が停止する場合も同様で、変数δ
FCOF(H,t)を期間tの開始時点でFCが起動状態から停止状態に推移する場合に1、それ以外では0となる0−1変数とすれば、次の制約条件を満たすことになる。
【数51】
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起動と停止に関する変数δ
FCON(H,t)およびδ
FCOF(H,t)は、目的関数の中に組み込まれ、起動や停止の回数を考慮した最適化が行われる。
【0160】
6.4.2.3.2.3.EV蓄電池に関する制約条件
まず、期間tの初めの時点におけるEV蓄電池の蓄電量 には下限および上限があると考え、次のように制約条件を設定する。
【数52】
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下限値V
min(H,t)および上限値V
max(H,t)は、機器の仕様により定まる場合に加え、時間毎に利用者の設定値を反映させることが可能とする。充電量と放電量を表す変数をそれぞれv
+(H,t)およびv
-(H,t)とすれば、充電と放電は同時に行えないことを表す制約条件は、以下の通りである。
【数53】
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なお、メンテナンス等により将来の期間tでEVの運転中止がある場合などにはv
max(H,t)を0に設定する。また、δ
+(H,t)およびδ
-(H,t)は蓄電池の充電状態と放電状態を区別する0−1の離散変数として定義されている変数であり、それぞれの期間毎には同時に1とならない。そのため、δ
+(H,t)とδ
-(H,t)の和が1以下となる制約条件が付けられている。
【0161】
さらに、シナリオi毎に、EVが接続されていない場合には充電も放電も不可能となることを表す制約条件として、以下のものを定義する。
【数54】
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なお、δ
EVi(H,t)は、シナリオiでEVが接続され放充電が可能な状態であれば1、そうでない場合は0となる定数、またδ
i+(H,t)およびδ
i-(H,t)はシナリオi毎に導入した蓄電池の充電状態と放電状態を区別する0−1の離散変数である。
【0162】
すなわち、シナリオiでEVが接続している場合はδ
EVi(H,t)=1となることから、変数v
+(H,t)およびv
-(H,t)は0となり、制約条件は、
【数55】
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となり、これにより、充電か放電のいずれかが行われていることを表現できる。
【0163】
一方で、シナリオiでEVが接続していない場合はδ
EVi(H,t)=0より、変数δ
i+(H,t)とδ
i-(H,t)の和が0になり、結果的に制約条件は、
【数56】
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となる。したがって、v
+(H,t)−v
i+(H,t)もv
-(H,t)−v
i-(H,t)も0となり、シナリオiにおいて電池には充電も放電もされないことが表現された。
【0164】
次に、EV蓄電池の蓄電量の推移を表す制約条件を定義する。期間tの初めでEV蓄電池の蓄電量V(H,t)は、充放電あるいはEV利用による電力減少分によって、次の期間t+1の初めにはV(H,t+1)に変化することを、以下の制約式で表現している。
【数57】
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上の制約条件の中で、η
VC(H)およびη
VD(H)はそれぞれEV蓄電池の充電効率および放電効率である。また、シナリオi毎にEVの利用が異なるため、リコース変数g
i+(H,t)およびg
i-(H,t)を用いてその差分(電力余剰と電力不足)を表現している。なお、処理のスパン期間の開始時点でのEV蓄電池の初期蓄電容量をV
0とすれば、以下の制約条件となる。
【数58】
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【0165】
次に、EV蓄電池の充電と放電が切り替わる回数を表現するための制約条件を導入する。変数δ
VC(H,t)を期間tでEV蓄電池が放電状態から充電状態に推移する場合に1、それ以外では0となる0−1変数、同様に、変数δ
VD(H,t)を期間tでEV蓄電池が充電状態から放電状態に推移する場合に1、それ以外では0となる0−1変数とする。放電電状態から充電状態に推移する場合、充電を表す変数がδ
+(H,t)=1かつδ
+(H,t−1)=0となることから、変数δ
VC(H,t)は次の制約条件を満たすことになる。
【数59】
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【0166】
同様に、EV蓄電池が充電電状態から放電状態に推移する場合、放電を表す変数がδ
-(H,t)=1かつδ
-(H,t−1)=0となることから、変数δ
VD(H,t)は次の制約条件を満たすことになる。
【数60】
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起動と停止に関する変数δ
VC(H,t)およびδ
VD(H,t)は、目的関数の中に組み込まれ、起動や停止回数を考慮した最適化が行われる。
【0167】
6.4.2.3.2.4.定置型蓄電池に関する制約条件
EV蓄電池と同様に、期間tの初めの時点における定置型蓄電池の蓄電量R(H,t)には下限および上限があると考え、次のように制約条件を設定する。
【数61】
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下限値R
min(H,t)および上限値R
max(H,t)は、機器の仕様により定まる場合に加え、時間毎に利用者の設定値を反映させることが可能とする。
【0168】
放電量と充電量を表す変数をそれぞれr
+(H,t)およびr
-(H,t)とすれば、充電と放電は同時に行えないことを表す制約条件は、以下の通りである。
【数62】
[この文献は図面を表示できません]
なお、メンテナンス等により将来の期間tで蓄電池の運転中止がある場合などにはr
max(H,t)を0に設定する。また、δ
R+(H,t)およびδ
R-(H,t)は定置型蓄電池の充電状態と放電状態を区別する0−1の離散変数として定義されている変数であり、それぞれの期間毎に同時に1とならないことを和が1以下として表現している。
【0169】
次に、定置型蓄電池の蓄電量の推移を表す制約条件を定義する。期間tの初めで定置型蓄電池の蓄電量V(H,t)は、充放電によって次の期間t+1の初めにはR(H,t+1)に変化することを、以下の制約式で表現している。
【数63】
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上の制約条件の中で、η
BC(H)およびη
BD(H)はそれぞれ定置型蓄電池の充電効率および放電効率である。なお、処理のスパン期間の開始時点での定置型蓄電池の初期蓄電容量をR
0とすれば、以下の制約条件となる。
【数64】
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【0170】
次に、定置型蓄電池の充電と放電が切り替わる回数を表現するための制約条件を導入する。変数δ
RC(H,t)を期間tで定置型蓄電池が放電状態から充電状態に推移する場合に1、それ以外では0となる0−1変数、同様に、変数δ
RD(H,t)を期間tで定置型蓄電池が充電状態から放電状態に推移する場合に1、それ以外では0となる0−1変数とする。放電電状態から充電状態に推移する場合、充電を表す変数がδ
R+(H,t)=1かつδ
R+(H,t−1)=0となることから、変数δ
VC(H,t)は次の制約条件を満たすことになる。
【数65】
[この文献は図面を表示できません]
【0171】
同様に、定置型蓄電池が充電電状態から放電状態に推移する場合、放電を表す変数がδ
R-(H,t)=1かつδ
R-(H,t−1)=0となることから、変数δ
VD(H,t)は次の制約条件を満たすことになる。
【数66】
[この文献は図面を表示できません]
起動と停止に関する変数δ
RC(H,t)およびδ
RD(H,t)は、目的関数の中に組み込まれ、起動や停止回数を考慮した最適化が行われる。
【0172】
6.4.2.3.2.5.蓄熱ユニットに関する制約条件
FCの発熱量p
FCin(H,t)と投入するガス燃料の量g(H,t)の関係は線形とする。比例係数をC
FCq(H)、切片項をC
FCq0(H)とすれば、FCの発熱量と投入燃料の関係は以下の1次式で表現される。
【数67】
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蓄熱ユニットからは自然放熱による熱の減少があり、これは蓄熱量に比例すると仮定できる。したがって、比例係数をη
FC(H)とすれば自然放熱による熱の減少量は以下の1次式で表現される。
【数68】
[この文献は図面を表示できません]
期間tの初めの時点における蓄熱ユニットの蓄熱量Q(H,t)には下限および上限があると考え、次のように制約条件を設定する。
【数69】
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下限値Q
min(H,t)および上限値Q
max(H,t)は、機器の仕様により定まる場合に加え、時間毎に利用者の設定値を反映させることが可能とする。
【0173】
次に、蓄熱ユニットの蓄熱量の推移を表す制約条件を定義する。期間tの初めで蓄熱ユニットの蓄熱量Q(H,t)は、FCによる供給q
FCin(H,t)、自然放熱μ
FC(H,t)、ラジエータによる放熱y
+(H,t)および宅内への熱供給q
FCout(H,t)によって、次の期間t+1の初めにはQ(H,t+1)に変化する。このことを以下の制約式で表現している。
【数70】
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また、δ
y(H,t)をラジエータによる放熱があれば1それ以外では0となる0−1変数、Mを十分に大きな数とすれば、変数y
+(H,t)とδ
y(H,t)の関係は以下の不等式を満たす。
【数71】
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なお、最適化処理のスパン期間の開始時点で、蓄熱ユニットの初期蓄電容量をQ
0とすれば、以下の制約条件となる。
【数72】
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【0174】
6.4.2.3.3.目的関数
図78は、目的関数を構成する一次式を例示する図である。目的関数は、コストに相当する以下の5つの一次式およびシナリオi毎に算出されるリスク量とシナリオの発生確率の積、すなわち期待値の総和として
図78のように定義される。
【0175】
当サブモジュールで扱う目的関数はコストとリスク確率で加重和したものとして、以下の式で与えられる。
【数73】
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ただし、θは正の値に設定されるリスクパラメータである。θの大小をコントロールすることで、リスク考慮の程度がコントロール可能である。例えば、θを大きく設定した場合には、リスク項の最小化が重視され、リスク回避的な機器の制御計画が算出される。例えば、電池切れリスクが強く考慮されれば、高い蓄電レベルを維持する制御になる。逆に、θを小さく設定した場合には、系統電力の購入といったコストを重視した制御計画が算出されることになる。
【0176】
図79は、最適化モード毎の入力パラメータの設定方法を例示する図である。目的関数の各一次式の係数は、当サブモジュールの入力として与えられる。その際、利用者の指定した最適化モードに従って、以下の表に示す適切な値が利用者あるいは管理者により設定される必要がある。
【0177】
6.4.2.4.最適計画の作成
図80は、出力項目と最適化で用いる変数との対応を例示する図である。当サブモジュールでは、入力値として指定された3つのリスクパラメータθ
S(H)、θ
L(H)およびθ
U(H)それぞれを目的関数のリスクパラメータθに設定し最適化処理を実行する。異なる3つのリスクパラメータで最適化を行うことで、電池に関しては3種類の蓄電量の計画を算出する。出力項目と最適化の変数の関連を以下の表に示す。
【0178】
6.4.3.制御ルール生成サブモジュール
6.4.3.1.考え方
6.4.3.1.1.機能の概要
制御対象のデバイスはEV蓄電池、定置型蓄電池(LIB)および燃料電池である。最適化計画サブモジュールの出力にはこれらの制御計画が含まれている。これらを基にして、各デバイスを制御するルール「制御ルール」を作成する。最適化計画サブモジュールの出力から、計画メッシュ内での各デバイスの基本状態を規定し、それをもとに各制御メッシュの制御ルールを作成する。基本状態は、最適化計画に基づいた計画メッシュ内でのデバイスの制御状態であり、最適化モードが非常モード以外では計画メッシュ内で不変とする。EV蓄電池・定置型蓄電池(以下「蓄電池」はEV蓄電池・定置型蓄電池の双方を指す)の最適化計画値には蓄電量管理幅(最適計画に基づく蓄電量の上限・下限)が含まれており、可能な限りこの範囲内で実際の蓄電量が推移するようデバイスを制御する。なお、制御ルールは最適化モードにも依存して生成される。特に、蓄電池の制御は、系統電源に接続されている場合にはある一定の速度での放充電制御となるのに対して、系統から解列した際の非常モードにおいては、EV/PV連携パワーコンディショナを使用しての負荷追従制御となるため、ルールの生成の方法も大きく異なる。
【0179】
本システムでは1住宅には定置型蓄電池あるいはEVいずれか1台が設置されていることを前提としており、当サブモジュールで生成される制御ルールも、これを前提としている。仮に、複数の蓄電池が設置されている場合には、最適化計画サブモジュールで各蓄電池の管理幅が算出できたとしても、それに従い制御ルールを構成するためには、複数蓄電池の同時制御といったハードウェア上の制約も考慮した、ルール生成アルゴリズムの検討が必要である。
【0180】
6.4.3.1.2.理由/根拠
最適化計画サブモジュールによるデバイス制御計画は各モードに設定された目的関数を最小化する。よって、本モジュールではこの結果に基づいた制御ルールを作成する。本モジュールでは、最適化計画モジュールで全体最適性を考慮して算出されたデバイスの状態を維持しつつ、その時点での電力の需給バランスを最適化モードの目標に従って維持する制御ルールを構築する。
蓄電池については蓄電量の管理幅が設定されており、この範囲を超えて充電・放電を行うと最適化計画から大きく乖離した状況となる。この管理幅からなるべく外れないよう蓄電池を制御する。
【0181】
蓄電池の制御にあたっては以下の制約が存在する。
1)蓄電池の充放電は仕様で定められた一定の速度で行われる。
2)充電から放電へ、放電から充電への切り替えを過度に繰り返すと充電池の劣化を早めてしまう。
これらの制約のもとで計画メッシュ内でのデバイスを操作することを考える。
【0182】
6.4.3.2.入出力
図81は、制御ルールサブモジュールの入出力を例示する図である。当サブモジュール入力は
図81に示すように、各計画メッシュにおけるEV蓄電池蓄電計画・定置型蓄電池蓄電計画・燃料電池発電計画である。これらの値は最適化計画サブモジュールの出力の一部である。これらの値を用いて、制御メッシュ毎のEV蓄電池・定置型蓄電池・燃料電池の制御ルールを作成し、出力とする。
【0183】
6.4.3.3.系統接続時のルールの作成
最適化計画から各計画メッシュにおけるデバイスの基本状態を求め制御ルールを作成する。
6.4.3.3.1.基本状態の作成
最適化計画により導出された各計画メッシュにおけるデバイスの状態を基本状態と呼ぶことにする。
【0184】
図82は、デバイスの基本状態を例示する図である。蓄電池では、計画メッシュで放電力量が正の場合に放電、充電力量が正の場合には充電、両方の値が0の場合にスタンバイ(充電も放電も行わない状態を意味する)とする。燃料電池では、燃料電池発電力量が正の場合に稼働、0の場合に停止とする。
【0185】
6.4.3.3.2.EV蓄電池充放電計画からの制御ルール作成
EV蓄電池充放電計画と各計画メッシュの基本状態から、計画メッシュ内の時刻tにおけるEV蓄電池の制御ルールを作成する。
【0186】
まず、各計画メッシュにおける基本状態を
図82の通りEV蓄電池放電量・充電力量から求める。同一計画メッシュ内では、蓄電池の過度な充放電切り替えを防ぐため、基本状態が充電の時には放電せず、逆に基本状態が放電の時には充電しない。EV蓄電池充放電計画にはEV蓄電池の蓄電量とその上限・下限を表す管理幅が含まれ、EV蓄電力量の実測値がこれを超えて推移するのは望ましくない。よって、EV蓄電池の蓄電量の実績値を可能な限りこの範囲に収めるための制御を行う。
【0187】
図83は、基本状態が放電時の制御の例である。
図84は、基本状態が充電時の制御の例である。計画メッシュの最初の制御ルール(12:00の制御ルール)で、EV蓄電池を放電状態にする。その後、蓄電量の実測値が管理幅の下限を下回ったときに、EV蓄電池をスタンバイ状態にする。次に、蓄電量の実測値が管理幅の上限を上回ったときに、EV蓄電池を再び放電にする。基本状態が放電の時には放電・スタンバイのみを許し、充電は行わない。同様に、基本状態が充電の時には放電・スタンバイのみを許し、放電は行わない(
図84)。これを実現するために、以下の処理に基づき制御ルールを作成する。
【0188】
6.4.3.3.2.1.計画メッシュ内における管理幅の算出
各計画メッシュ内における管理幅の算出を行う。最適化計画により得られる管理幅の値は計画メッシュ開始時刻におけるものであり、計画メッシュ内の時刻tにおいて管理幅が規定されているわけではない。そこで、当該計画メッシュの管理幅と次の計画メッシュの管理幅を基にして時刻tでの管理幅を算出する。計画メッシュ内においては管理幅の上限は一定の割合で推移するものと仮定し、当該計画メッシュの上限値V
1maxと次の計画メッシュの上限値V
2maxを結んだ直線を時刻tにおける上限とする。管理幅の下限についても同様に、当該計画メッシュの下限値V
1minと次の計画メッシュの下限値V
2minを結んだ直線を制御メッシュにおける下限値とする。
【0189】
計画メッシュ幅を1時間とした、各計画メッシュ内の時刻分における上限値・下限値v
max(t)およびv
min(t)は次式により求めることができる。
【数74】
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【0190】
6.4.3.3.2.2.制御ルールの作成方法
メッシュ内の各時点においては、以下の規則に従って制御ルールを作成する。
(ア)基本状態が放電のとき
(a)EV蓄電量の実測値が管理幅内に収まっているまたは管理幅の上限を超えている場合は、EV蓄電池は放電する
(b)EV蓄電量の実測値が管理幅の下限を下回るとき、EV蓄電池はスタンバイ状態になる
(イ)基本状態が充電の時
(a)EV蓄電量の実測値が管理幅内に収まっている、または管理幅の下限を超えている場合は、EV蓄電池は充電する
(b)EV蓄電量の実測値が管理幅の上限を上回るとき、EV蓄電池はスタンバイ状態になる。
(ウ)基本状態がスタンバイの時
(a)管理幅に依らず、EV蓄電池はスタンバイ状態になる
【0191】
図85は、EV蓄電池蓄計画値と基本状態を例示する図である。
図86は、
図85から作成される蓄電池の制御ルールを例示する図である。
【0192】
6.4.3.3.2.3.定置型蓄電池の制御ルール作成
定置型蓄電池充放電計画と各計画メッシュの基本状態から、制御メッシュにおける定置型蓄電池の制御ルールを作成する。定置型蓄電池の制御ルールの作成方法は、EV蓄電池のそれに準ずる。
【0193】
6.4.3.3.2.4.燃料電池充放電計画からの制御ルール作成
図87は、最適化モード毎の燃料電池の制御を例示する図である。燃料電池の基本状態が稼働であれば、その制御は最適化モードに依存して決められる。経済モードの場合、できるだけ電力費用が安くなるよう制御する必要がある。そのため、計画メッシュ毎に系統と燃料電池の発電単価を比較し、もし燃料電池の発電単価が安いのであれば、燃料電池発電を優先して使う方がよいことから、負荷追従モードによりできるだけ系統を使わない制御を行う。逆に、系統電力単価の方が安いのであれば、燃料電池の出力は最低レベルに制限され、電力の不足分は系統より賄われるよう制御する。自給自足モードでは、できるだけ系統電力を使わない制御を行うことが求められている。したがって、燃料電を負荷追従モードにより制御し系統電力量を最小化する。環境モードでは、できるだけ二酸化炭素排出量を少なくする必要があるため、経済モードにおける発電単価を二酸化炭素排出量に変えて、燃料電池と系統電力との優先度を決定する。他のモードでは、燃料電池と系統電力の双方が利用可能な場合には、発電方法に優先度に差が決められないことから、経済モードか自給自足モードのいずれかをデフォルトモードとして登録し従う。
【0194】
6.4.3.4.非常モードにおけるルールの作成
系統電力を解列し非常モードが選択された場合には、放充電能力の大きな蓄電池が系統に代わって宅内の電圧を一定に保つ役割を担うことになる。そのためには、一定の放充電量力を指定して蓄電池の制御を行うのではなく、宅内の電力需要に応じて負荷追従するモードにて運転が行われる。負荷追従モードにすることで、宅内電力が余剰となればその余剰分が充電され、不足となれば不足分の放電が行われる。したがって、非常モードでは制御対象となる機器は燃料電池のみとなり、その発電量をコントロールすることで最適化計画サブモジュールで算出した管理幅内に蓄電レベルを維持する必要がある。
【0195】
6.4.3.4.1.燃料電池の制御ルールの生成
図88は、蓄電池が放電状態の場合の燃料電池の制御を例示する図である。
図89は、蓄電池が充電状態の場合の燃料電池の制御を例示する図である。これらの図に示すように、計画メッシュ内の各時刻において、以下の規則に従って燃料電池の制御ルールを作成する。
(ア)EVあるいは定置型LIB蓄電量の実測値が管理幅の下限を下回った場合には、燃料電池の出力を増加する。
(イ)EVあるいは定置型LIB蓄電量の実測値が管理幅の上限を上回った場合には、燃料電池の出力を減少させる。ただし、最小の出力以下(すなわち停止状態)にはしない。
(ウ)EVあるいは定置型LIB蓄電量の実測値が管理幅の中に収まっている場合は、燃料電池の出力を変化させない(直前の出力を維持する)。
【0196】
7.概要
7章以降は、6節までに説明した事項をさらに詳細に説明する。
【0197】
7.1.制御アルゴリズムの構成
7.1.1.周辺システムからみた制御アルゴリズムの位置づけ
図90は、本システムとその周辺システムの連携を例示する図である。本システムは情報管理サーバ内で動作し、外部システムからのルール更新リクエスト最適化エンジンI/Fを経由して受け取り、制御ルール生成処理を実行する。制御ルール生成処理はメイン部とアルゴリズム部により構成され、分析用DB内の過去の実績データを用いて各機器の将来の状態の予測を行い、与えられた制約のもとCO2排出量を最小化するなどの指標に基づいて最適化計算を行い、HEMS住宅内のデバイスを最適制御するルールを作成する。作成したルールは分析用DBに保存する。
【0198】
本システムの最適化処理・ルール作成処理の契機については10節(外部シーケンス)を参照のこと。本システムの外部からのルール更新リクエストは最適化エンジン用I/Fを介して行われる。最適化エンジンと外部モジュールとのルール更新リクエストの呼び出しに関しては11節(外部IF)を参照のこと。
【0199】
最適化処理・ルール作成が終了した後、ルール作成処理が終了した旨を最適化エンジン用I/Fに通知し、最適化エンジン用I/Fはそれを受けて各HEMS住宅内のホームサーバに通知する。ホームサーバはその通知を受けて、最新のルールを取得する。本システムは外部モジュールからのルール作成処理リクエストを契機としてルール作成処理を実行し、ルール作成処理の終了イベントをリクエスト送信側が検知することで、HEMS住宅内で必要なときにルールを更新し、可能な限り最新・最適な制御ルールを用いてのデバイス制御が実現できる。制御ルール作成処理を完了するまでにある程度の時間がかかることが予想されるため、制御ルール作成処理はルール更新リクエストとは非同期に実行する。また、最適化エンジン用I/Fが最適化エンジンへのリクエストを仲介することで、開発STEP1から開発STEP2への移行時の可搬性を確保する。また、最適化エンジンサーバの増強などに備えての拡張性も確保できる。
【0200】
7.1.2.機能区分
図91は、制御アルゴリズムの概念的な機能区分構成を例示する図である。
図92は、制御アルゴリズムの機能区分を例示する図である。まず本システムを、メイン部・アルゴリズム部・分析DB部の3つに分ける。メイン部はメイン機能区分により、アルゴリズム部は需要、供給、蓄電、最適需給の4つの機能区分により、分析用DB部は分析用DB機能区分によりそれぞれ構成される。
【0201】
需要、供給、蓄電機能区分はHEMSの危機構成を仮想的に再現し、各機器における需要量・供給量・蓄電量それぞれと他の観測値の関係性を規定する。またこれらの機能区分は、それぞれの管理対象となる機器が動作する上での前提条件を規定する。
【0202】
最適需給計画機能区分は、需要・供給・蓄電器機能区分などで規定された制約の下で、最適化モードに対応する目的関数を最大化または最小化するような機器の稼働計画を作成する。また、算出した稼働計画を実現するための各機器の制御ルールを作成する。
【0203】
メイン機能区分は、これらの機能区分の統合・外部システムとの連携を実現する。分析用DBは、各機器に関する観測値、その他最適制御に必要なデータ、処理中の中間データ、最終的な出力となる制御ルール等を保持する。分析用DBの構築は設計・実装の対象外であるが、分析用DB上で本システムが使用するテーブルの論理設計は設計・実装対象とする。
【0204】
8.全体構成
図93は、細分化された機能区分を例示する図である。本章では、7節(概要)で示した機能区分をより細かい論理機能に分解し、各論理機能の果たす役割を明らかにする。メイン機能区分は、処理を行うメイン制御と制御に関する情報を保存する制御DBに分けることができる。需要・供給・蓄電機能区分については、機器または機器の集合単位に分解する。需要機能区分は家電電力需要、EV電力需要、熱需要に、供給機能区分はPV供給、系統電源潮流、燃料消費、温水貯水に、蓄電機能区分はEV蓄電、蓄電池蓄電の各論理機能に分解する。最適化需給計画機能区分は、最適制御を計算する最適化計画と、最適計画に基づき各機器をどの時刻にどのように制御するかを決定する制御ルール生成に分割できる。
【0205】
分析用DBでは、分析に用いるデータまたは分析処理を行う際の制御情報を格納する。分析対象となるデータは、住宅内の各機器の需要・供給実績値、走行データの実績値であり、これらをそれぞれ格納するライフログDB、走行データDBを作成する。分析対象となる実績値の変化に影響を与える要因として気象情報と暦があり、過去・将来における気象情報・暦を格納するため、気象DB・カレンダーDBを作成する。本システムの最終的な出力として各機器の制御ルールが作成される。これを格納するルールDBが必要となる。最適化設定DBは、最適化処理の入力となるパラメータを格納する。統計・最適化DBは、制御ルール作成処理過程において生成される中間データを格納する。また、メイン制御で使用する制御DBも分析DB部に含む。
【0206】
9.方式
9.1.方式の概要
本章では、本システムの実装を前提としてシステム全体の実装方式を決定し、3.2節(全体構成)で述べた各論理機能の機能を具体化する。具体化された論理機能を物理機能と呼び、それらを実装の対象とする。論理機能は、複数の物理機能に分割されることがある。論理機能の中には、実装の必要がない、または他の物理機能に統合されるものがある。これらの論理機能については物理機能を作成しない。
【0207】
図94は、本システムの物理機能とその機能・役割を例示する図である。本章における実装方式の決定により、本システムにおける物理機能とその機能・役割が
図94に示されている。
【0208】
図95は、システム構成図を例示する図である。本システムと最適化エンジン用IFとの連携については、10節(外部シーケンス)にて述べる。外部IFについては11節(外部IF)で述べる。図中の外部IFを除く物理機能(機能)の詳細を13節(機能)で、各DBの詳細に関しては、12節(データフロー)で述べる。
【0209】
9.2.メイン部の各物理機能における外部からの呼び出し・処理の実行
メイン部は、メイン処理、外部IFから構成され、制御DBを使用する。本システムは、最適化エンジン用IFからのHTTPリクエストによる制御ルール作成リクエストを受け付ける。制御ルール作成リクエストによって得られる情報・制御ルール作成処理の状態は制御DB内に保存される。メイン処理ではアルゴリズム部の各処理を呼び出し、最終的に各機器の制御ルールの生成を行う。制御ルールの処理が終了した後に、最適化エンジン用IFに対して処理が終了した旨を通知する。
【0210】
9.3.アルゴリズム部の各物理機能における需要・供給予測と最適化
9.3.1.需要機能区分と供給機能区分の各物理機能における需要・供給量の予測
家庭内の電力需要量、EVの利用状況、温水(熱)の消費、PVによる電力供給量などは、天気・居住者のライフスタイル等様々な要因により変化する。このような理由により将来における家電電力量需要量を予測することは困難であるが、過去の実績値用いるなどして将来の需要量の予測精度を上げることを考える。予測値は主に統計的手法により求める。それが困難な場合は、他の方法により予測値と同等の値を算出する。統計的手法による予測値の算出に際しては、各種統計ライブラリを備えている統計ソフトを用いることで、通常のプログラミング言語による開発に比べて開発効率を上げることができる。
【0211】
9.3.2.最適需給計画機能区分の各物理機能における最適化
9.3.2.1.最適化計画作成物理機能における確率混合計画法による最適化
最適化計画は、家電電力需要量・EV電力使用量・熱需要量・PV供給量の将来における推移(予測値)を入力とし、需要量・供給量の予測がある程度外れることを考慮した上で各機器の制御計画を作成する。これは確率混合計画法により実現可能であり、本システムに於いてはこの手法を用いる。確率混合計画法により制御計画を求める際には最適ソルバーを利用する。
【0212】
確率混合計画法を用いることで、将来のある時点における各需要量・供給量の予測値を点として推定するのではなく、予測値がどれだけばらつくかを考慮に入れて、ばらついた時でも可能な限り運用にあたっての諸制約を満たすような機器の制御計画を作成する。このような「ばらつきを持った予測値」を、シナリオ(需要シナリオまたは供給シナリオ)とその発生確率の1つ以上の組み合わせにより表現し、これらが最適化計画の入力となる。(需要または供給)シナリオとは、時間軸に沿って予測値がどのように推移していくかを表したものである。発生確率とは、シナリオの表す予測値の推移がどの程度の確度で起こりうるかを示したものである。
【0213】
9.3.2.2.統合シナリオ作成物理機能の必要性
最適化計画機能が需要・供給シナリオとその発生確率を入力とするため、家電電力需要、EV電力需要、熱需要、PV供給の出力も同様に需要・供給シナリオとその発生確率となる。最適化計画機能が前提とするシナリオは同時発生性を考慮に入れたものでなければならない。しかしながら、ここ上げた機能が出力するシナリオとその発生確率はそれぞれ独立事象として発生することを前提としている。そこで、統合シナリオ作成機能を導入する。統合シナリオ作成機能では、非同時発生性を前提としたシナリオと発生確率を入力とし、統合シナリオという同時発生性を考慮したシナリオの組み合わせとその発生確率を出力とする。
【0214】
9.4.機能の統廃合
一部の論理機能については、諸変数の関係が数式として明に規定される。これらの関係式はそのまま最適化計画の制約条件として利用されるため、それらの実装は最適化計画物理機能に統合される。これに該当するのは、系統電源潮流・燃料消費・温水貯水・EV蓄電・蓄電池蓄電の各論理機能である。
【0215】
10.外部シーケンス
10.1.制御ルール生成処理の起動
10.1.1.制御ルール作成処理の起動
図96は、制御ルール生成処理に係るシーケンス図を例示する図である。最適化エンジンI/FからのHTTPによるリクエストに対し、制御ルール生成処理を起動し、処理開始の通知を処理受付レスポンスとして最適化エンジンI/Fに応答する。その後、処理が完了したタイミングで処理完了の通知を最適化エンジンI/Fに対しHTTPによるリクエストとして通知する。なお、最適化エンジンの呼び出しは1住宅に対し1日4回程度の呼び出しを想定している。
【0216】
10.2.処理契機
図97は、処理契機となりうる事象を例示する図である。本システムの処理契機となりうるのは以下の様な場合である。
A) 制御ルールの定期的な更新
B) 前回のルール生成処理開始以降入力値が変更された場合
これらの事象についてその事象の影響度(制御ルール生成に際しての前提条件を大きく崩すものであるか)・発生頻度・検知可否を考慮して、処理契機とするか否かを判断する。ルールへの影響度とは、事象より制御ルールが更新された時に、そのルールがどの程度変わるかを示したものであり、影響度が大きい事象は処理契機とするのが良い。制御ルール生成処理にはある程度の処理時間がかかるため更新頻度が多いとシステムに負荷がかかる。そのため、発生頻度が大きい事象は処理契機としない。更新頻度が中の事象については処理契機とするが、頻度をコントロールできるのであればそれが低くなるようにするのがよい。検知が不可能な事象については処理契機としない。「ユーザ設定の変更が行われた場合」または「管理者設定の変更が行われた場合」に属する事象については、生活への影響度を考慮した上で処理契機とするか判断をする必要がある。「最適化モードの変更」「最適蓄電量の変更」の事象によるルールの更新は即座に反映されなくても利用者の生活を妨げる事にはならない。一方で、「EV予約の追加・変更」「満湯予約の追加・変更」については、それぞれEVを利用できない、お風呂に入れないなど生活に支障をきたす。前者については契機とせず、後者については契機とする。しかしながら「EV予約の追加・変更」については、EVの利用形態によって契機が頻発する場合が考えられるため、一定間隔内に契機が複数発生した場合は1つを除いて無視するなどの処理が必要となる。
【0217】
11.外部IF
11.1.制御ルール生成処理起動の引数と戻り値
11.1.1.制御ルール生成処理起動の引数と戻り値
11.1.1.1.処理起動リクエスト
図98は、制御ルール生成処理起動の引数を例示する図である。HTTPリクエストのGETパラメータとして取得する。
【0218】
11.1.1.2.受付通知レスポンス
図99は、受付通知状態を例示する図である。HTTPレスポンスのテキストデータとして受付状態を出力する。なお、引数に不備があった際は、受付失敗として返り値を返送する。エラーチェックの詳細は13.1.3.エラーチェック仕様を参照。
【0219】
11.1.1.3.処理完了通知リクエスト
図100は、受付通知状態を例示する図である。HTTPリクエストのGETパラメータとして処理完了状態を出力する。
【0220】
11.1.1.4.処理完了通知受付レスポンス
図101は、受付通知状態を例示する図である。HTTPレスポンスのテキストデータとして受付状態を取得する。
【0221】
12.データフロー
図102は、本システムにおけるデータフローを例示する図である。各種DBについて論理テーブルに分割した上で、それらのテーブルを含めたデータと各機能との入出力関係を明らかにする。制御アルゴリズム呼び出しリクエストでは、住宅ID・開始日時が引数として指定される。メイン処理はこれらの情報を受け取り、一時的に制御DBに格納される。制御DBには住宅マスタ、制御ルール作成処理管理が存在する。メイン処理は制御ルール作成処理管理テーブルから実行に必要な情報を取得し、各機能の呼び出しに際して制御ルール作成処理ID・制御ルール作成期間開始日時・制御ルール作成期間終了日時を引数として渡す。制御ルール作成処理・住宅IDを・開始日時を指定して呼び出される。
【0222】
気象DBには気象情報実績、時間別気象情報予報、日別気象情報予報の各テーブルが存在する。または、ライフログDBには家電電力需要実績、熱需要実績、PV供給実績の各テーブルが存在する。走行データDV内には、EV電力需要実績と走行予約が存在する。カレンダーDB内のカレンダーテーブルが存在する。これらのテーブルが、電力需要シナリオ作成機能、熱需要シナリオ作成機能、PV供給シナリオ作成機能、EV電力需要シナリオ作成機能の入力となる。気象DB、ライフログDB、走行データDB内の擬似実績テーブルには、人工的に作成した実績値を格納しておき、各機器の実績値がないまたは充分にない状況においても、各シナリオ作成機能に於いて動作またはある程度の予測精度を保証するためのものである。これら4つのシナリオ作成機能は、シナリオマスタ・シナリオテーブルに対して出力を行う。
【0223】
統計・最適化DBは、シナリオ作成処理、最適化処理の入出力となるシナリオ関連テーブル、最適化計画関連テーブルにより構成される。シナリオ関連テーブルには、シナリオマスタ、シナリオ、統合シナリオマスタがある。最適化計画関連テーブルには、EV蓄電池計画、定置型蓄電池計画、系統電力量計画、蓄熱ユニット熱量計画、熱計画、EV電力量計画、LIB電力量計画、FC発熱量計画テーブルがある。
【0224】
統合シナリオ作成機能は、シナリオマスタ、シナリオを入力とし、統合シナリオマスタ・統合シナリオの各テーブルに対して出力を行う。最適計画作成機能は、統合シナリオマスタ、統合シナリオ、最適化設定DB内のテーブル(最適化パラメータ、時系列最適化パラメータ、最適化エンジンパラメータ)を入力とし、最適化計画関連テーブルに対して出力を行う。制御ルールDBは制御ルールテーブルにより構成される。制御ルール作成機能は、EV電力量計画、LIB電力量テーブル、FC発熱量計画の各テーブルを入力とし、制御ルールテーブルに対して出力を行う。
【0225】
本システムは、運用規模次第でテーブルによっては数千万を超えるレコードを格納する事が考えられる(各テーブルの格納レコード数の見積もりは19.4節を参照のこと)。レコード数増加によりパフォーマンスの低下を回避するため、以下の3つの対処を行う。
A)パーティショニング
テーブル毎にパーティショニングを行う。日付に準ずる列の値に応じて格納するテーブルを変えることで、1つのテーブルに格納されるレコード数を防ぐ。
B)中間データの退避
統計・最適化DBに属するテーブルは本システムの処理途中で生成される中間データを格納するためのものである。これらのデータは、当該処理が終了した後には検証目的以外に使用されることがない。これらのテーブルについてはそれぞれバックアップテーブルを用意し、処理が終了する直前に当該処理において生成したデータをバックアップテーブルに移す。中間データ退避の対象となるテーブルは19.3節に示す。
C)実績データの退避
実績データは、過去2年分を参照することを前提としており、それ以前のデータについては各処理で使用しない。そのため不要なデータを定期的にバックアップ・削除することで、実績テーブルに対する処理のパフォーマンス低下を防ぐ。実績データ退避の対象となるテーブルは17.3節に示す。
【0226】
13.機能
13.1.メイン処理
13.1.1.機能概要
図103は、メイン処理IO関連図を例示する図である。メイン処理は外部からのリクエストを受け取り、リクエストに対応する制御ルール作成処理を管理、実行する。メイン処理呼び出しの契機となる外部からの呼び出しIFに関しては11節(外部IF)を参照のこと。メイン処理は、処理起動リクエスト(HTTP)に対し、制御ルール作成処理IDを発番、リクエストに対する受付通知レスポンス(HTTP)を返す。また、非同期処理にて各予測・最適化機能を実行し、処理完了の後最適化エンジン用I/Fに対し処理完了通知リクエスト(HTTP)を送信し、処理完了通知受付レスポンスを受け、制御ルール作成処理を完了する。
【0227】
図104は、処理順フロー図を例示する図である。メイン処理が実行する制御ルール作成処理は、
図104に示すとおり、需要モジュール・供給モジュール・最適需給計画モジュール内の各機能を呼び出す。
【0228】
13.1.2.引数と返り値
以下、メイン処理機能の引数(処理起動リクエストパラメータ)と返り値(受付通知レスポンスパラメータ)を説明する。また、処理完了後に最適化エンジン用I/Fに通知される処理完了通知リクエスト、および処理完了通知受付レスポンスに関しても以下で説明する。。
【0229】
13.1.2.1.引数
11.1.1.1.処理起動リクエストを参照。
【0230】
13.1.2.2.返り値
11.1.1.2.受付通知レスポンスを参照。
【0231】
13.1.2.3.処理完了通知リクエスト
11.1.1.3.処理完了通知リクエストを参照。
【0232】
13.1.2.4.処理完了通知受付レスポンス
11.1.1.4.処理完了通知受付レスポンスを参照。
【0233】
13.1.3.エラーチェック仕様
図105は、エラーチェック一覧を例示する図である。
図105は、メイン処理機能のエラーチェック仕様を示している。エラーチェックに該当した場合、リクエストされた処理を中断し受付失敗としてリクエスト元に対し受付通知レスポンスを返送する。詳細は11.1.1.2.受付通知レスポンスを参照。
【0234】
13.1.4.DB編集仕様
メイン処理機能におけるデータベースからの値の取得と格納に関して下記に示す。
13.1.4.1.取得データ一覧
データベースへの値の取得に関して下記に示す。
図106は、取得データ一覧を例示する図である。
【0235】
13.1.4.2.格納データ一覧
図107は、格納データ一覧を例示する図である。
【0236】
13.1.4.3.更新データ一覧
図108は、更新データ一覧を例示する図である。
【0237】
13.1.5.処理詳細
13.1.5.1.処理フロー
図109は、メイン処理のフローを例示する図である。メイン処理では、以下のフローにより、処理起動リクエスト(HTTP)に対して制御ルール作成処理IDを発番、リクエストへの受付通知レスポンス(HTTP)を返す。また、非同期処理にて各予測・最適化機能を実行し、処理完了の後最適化エンジン用I/Fに対し処理完了通知リクエスト(HTTP)を送信し、処理完了通知受付レスポンスを受け、制御ルール作成処理を完了する。それらをデータベースに保存する。
【0238】
13.1.5.2.処理ステータスの確認
図110は、処理ステータス更新内容を例示する図である。パラメータとして受け取った住宅ID、始点日時を取得条件として制御ルール作成処理管理テーブルを参照し、処理日時が最も新しいレコードの処理ステータスが2(実行中)の場合、同一レコードの処理ステータスを3(中断中)に更新する。レコードがない場合は何も更新しない。
【0239】
13.1.5.3.制御ルール作成処理データの格納
図111は、処理ステータス更新内容を例示する図である。パラメータとして受け取った住宅ID、始点日時を制御ルール作成処理管理テーブルに格納する。また、同時に処理日時にアプリケーションにて取得したシステム日時を、処理ステータスに2(処理中)を、作成日時に現在日付を格納する。なお、処理日時に格納したシステム日時は後の処理に使用するためその値を保持する。
【0240】
13.1.5.4.発番された制御ルール作成処理IDの取得
制御ルール作成処理IDを制御ルール作成処理管理テーブルより取得する。取得条件はパラメータとして受け取った住宅ID、始点日時、をそれぞれ制御ルール作成処理管理テーブルの住宅ID、始点日時として、また制御ルール作成処理データの格納処理にて取得したシステム日時を処理日時として実行する。
【0241】
13.1.5.5.受付通知レスポンスの返信
前処理で取得した制御ルール作成処理IDを、受付通知レスポンスとして、HTTPレスポンス本文に編集し返信する。
【0242】
13.1.5.6.処理実行数の確認と制御
制御ルール作成管理テーブルを参照し、処理ステータスが2(実行中)のレコード数とプロパティ情報より制御ルール作成最大同時実行数を比較し、レコード数が制御ルール作成最大同時実行数以上の場合、以降の処理実行を待機する。また、レコード数が制御ルール作成最大同時実行数未満となった際に、待機中の制御ルール作成処理をリクエスト順に順次開始するよう制御すること。
【0243】
13.1.5.7.プロパティ情報の取得
受付通知レスポンスの返信と非同期で当処理以降の処理を実行する。システムのプロパティファイルにて定義されているプロパティ情報を取得し、それぞれを定数として保持するオブジェクトを作成する。プロパティ情報に関しては19.1節を参照。
【0244】
13.1.5.8.制御ルール作成期間始点日時と制御ルール作成期間終点日時の確定
取得した始点日時より、制御ルール作成期間始点日時と制御ルール作成期間終点日時を確定する。始点日時は家電電力需要実績、EV電力需要実績、熱需要実績、PV供給実績、気象情報実績の各テーブルについて、住宅IDを抽出条件として、それぞれ最新の対象日時を得る。そのうち、最も古い対象日時について、分以降を切り捨てた日時を制御ルール作成期間始点日時とする。また、パラメータの始点日時を基に、プロパティ情報より取得したスパン長を加えた日付の24時を制御ルール作成期間終点日時とする。
【0245】
13.1.5.9.入力データの作成
図112〜
図115は、入力データの参照元と格納先を例示する図である。制御ルール作成処理の実行に先立ち、ユーザ設定、管理者設定、燃料・系統電源価格他の値を、シナリオ作成・最適化処理に適した形式に変換する。なお、表中の※印のついた参照元については、その所在と詳細を明確にする必要がある。これらのデータは、制御ルール作成リクエストが発行される前の段階で最新であること。
【0246】
13.1.5.10.各機能の実行
図116は、処理順フロー図(再掲)を例示する図である。制御ルール作成処理IDと制御ルール作成期間始点日時、制御ルール作成期間終点日時をパラメータとして順次各予測・最適化・制御ルール作成機能を実行する。各予測・最適化・制御ルール作成各機能の処理実行後、都度実行結果を確認し、異常終了していた場合は以降の機能を実行しない。また、処理の実行開始から予測最適化処理タイムアウト時間経過時点で処理が完了していない場合、タイムアウトとして扱う。その際、以降の予測・最適化・制御ルール作成機能を実行しない。なお、機能実行の間に制御ルール作成管理テーブルの処理ステータスを参照し、ステータスが3(処理中断中)の場合以降の予測・最適化・制御ルール作成機能を実行しない。
【0247】
13.1.5.11.データの退避
テーブル内のレコード数の肥大化が懸念されるテーブルに対してレコードの対比を行う。データ退避の対象となるテーブルに対して、当該リクエストを契機として格納された(制御ルール作成処理IDが同一)レコードを抽出・削除し、それらを対応するバックアップテーブルに格納する。データ退避の対象となるテーブルは、制御ルール作成処理IDをプライマリキーとして持つテーブルで、連続して使用した場合にレコード数が例えば1000万レコードを超える(各テーブルの見積もりテーブル数は
図212参照)。外得するテーブルは、シナリオマスタ、シナリオ、統合シナリオマスタ、統合シナリオ、EV蓄電計画、定置型蓄電池蓄電計画、EV電力量計画、定置型蓄電池蓄電量計画、系統電力量計画、蓄熱ユニット熱量計画、FC発電量計画、熱計画、時系列EV走行予約、最適化エンジンパラメータ、時系列最適化パラメータ、最適化パラメータとなる。
【0248】
13.1.5.12.処理ステータスの更新
図117は、処理ステータス区分一覧を例示する図である。
図118は、処理ステータス更新内容を例示する図である。機能の実行後、制御ルール作成処理IDの処理ステータスを更新する。処理ステータスを参照し、処理完了結果に応じて更新する。
【0249】
13.1.5.13.処理完了通知リクエストの発信
機能の実行完了後、処理完了通知リクエストを発信する。プロパティ情報より、処理完了通知リクエストURLを取得し、該当URLに対し処理結果をHTTPリクエストのGETパラメータに編集し、リクエストを送信する。処理結果のGETパラメータに関しては、14節(外部IFの処理完了通知受付レスポンス)を参照。
【0250】
13.1.5.14.処理完了通知受付レスポンスの受信
処理完了通知リクエストに対するレスポンスを受信する。その際、HTTPリクエストがタイムアウトした場合は3回まで処理完了通知リクエストを発信し、いずれもタイムアウトする場合はエラーとする。
【0251】
13.2.需要予測機能
13.2.1.家電電力需要シナリオ作成
13.2.1.1.機能概要
図119は、家電電力需要シナリオ作成IO関連図を例示する図である。家電電力の需要実績と気温・天候の実績、シーズン、カレンダー情報、気象情報実績、気象情報予報から、指定された住宅・期間における家電電力需要シナリオ・予測誤差・パーセンタイル値・家電電力需要シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。
【0252】
13.2.1.2.引数と返り値
13.2.1.2.1.引数
図120は、家電電力需要シナリオ作成機能の引数を例示する図である。
【0253】
13.2.1.2.2.返り値
図121は、家電電力需要シナリオ作成機能の戻り値を例示する図である。
【0254】
13.2.1.3.エラーチェック仕様
図122は、エラーチェック仕様を例示する図である。
図122は、家電電力需要シナリオ作成機能のエラーチェック仕様を示している。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.2.1.2.2.返り値を参照。
【0255】
13.2.1.4.DB編集仕様
家電電力シナリオ作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.2.1.4.1.取得データ一覧
図123は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0256】
13.2.1.4.2.格納データ一覧
図124は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0257】
13.2.1.4.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0258】
13.2.1.5.処理詳細
13.2.1.5.1.処理フロー
図125は、家電電力需要シナリオ作成処理フローを説明する図である。家電電力需要シナリオ作成処理では、以下のフローにより家電電力需要シナリオ・予測誤差・家電電力需要シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。
【0259】
13.2.1.5.2.シーズンの定義
シーズンは、冬季、夏季、春季・秋季の3つのより構成される。冬季、夏季、春季・秋季の各期間はパラメータ情報より取得する。
13.2.1.5.3.日付カテゴリーの定義
日付カテゴリーを作成する機能を実装する。日付カテゴリーは次のように規定する。
祝日の場合(2カテゴリー):降水の有無(2カテゴリー)
祝日でない場合(14カテゴリー):降水の有無(2カテゴリー)×曜日(7カテゴリー)
【0260】
降水の有無は、以下のように求める
A)対象日が実績期間に属する場合
気象情報実績テーブルから降水量を取得し、降水量が0より大きい場合は降水有り、降水量が0の場合降水無しとする。
B)対象日が予測期間に属し、時間別気象情報予報テーブルに該当日の各時間帯の降水確率がある場合
該当日の各時間帯の降水確率を取得し、降水確率が閾値以上の時間帯少なくとも1つがあれば降水有り、そうでなければ降水無しとする。なお、閾値はパラメータ情報から取得する。
C)対象日が予測期間に属し、日別気象情報予報テーブルに該当日の降水確率がある場合
降水確率が閾値以上の場合降水有り、閾値未満の場合降水無しとする。なお、閾値は上記Bで使用した値と同一である。
【0261】
曜日は、日月火水木金土の7カテゴリーとする。対象とする日が祝日か否かの判定は、カレンダーテーブル内に該当日に対応するレコードが存在するか否かにより判断する。
【0262】
13.2.1.5.4.予測期間・実績期間の決定
予測期間は、計画メッシュ毎の家電電力需要値を予測の対象とする期間を意味する。予測期間は、引数として与えられる制御ルール作成期間始点日時から制御ルール作成期間終点日時まで(開始点を含み、終了点は含まない)。実績期間は、予測モデルの学習に使用するデータを有する期間である。実績期間は、家電電力需要実績テーブル内ですべての計画メッシュにおいて家電電力需要実績を有する日の集合である(日が連続している必要はない)。ただし、2年以上過去のデータは使用しない。
【0263】
13.2.1.5.5.学習用の目的変数の作成
以下の処理により、学習データの目的変数である平均家電電力需要量からの乖離値を算出する。予測期間中のすべての計画メッシュに対して
A)計画メッシュが属する日を予測日とする。予測日の日付カテゴリーをPとする。
B)実績期間の日にちのうち、予測日と同じ日付カテゴリーPに属する日の家電電力需要量の実績値を取得する。家電電力需要量の実績値の取得処理は、13.2.1.5.6の処理に準じる。
C)取得した家電電力需要量の実績値について、同じ計画メッシュ時間帯値の平均値を求める。これを平均電力需要量aveE
H(H,P,t)と呼ぶ。ここで、Hは住宅を表し、tは計画メッシュの時間帯を表す。
D)実績期間のうち、予測日と同じカテゴリーP・同じシーズンSに属する日にちの家電電力需要量E
H(H,P,S,t)を取得する。
E)Dで求めた値について、当該計画メッシュと同じ計画メッシュの家電電力需要量とカテゴリー平均電力需要量の差分y(H,P,S,t)を求める。これを家電需要量乖離値と呼び、次式によって求められる。
【数75】
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上記処理により、計画メッシュ毎の家電需要量乖離値がカテゴリー実績日の数だけ得られる。
【0264】
13.2.1.5.6.計画メッシュ幅での家電電力需要実績の取得
家電電力需要量の実績値は10分毎の集計値として蓄積されている。計画メッシュは可変であり、パラメータ情報から取得する。本機能内の処理では、計画メッシュ単位の家電電力需要量の実績値が必要となる。そのため、実績値の集計幅と計画メッシュ幅が異なる場合、家電電力需要実績値は、家電電力需要実績テーブルの家電電力需要実績値を、計画モジュールの集計幅で再集計したものを使用する。ここで、計画メッシュ幅は実績値の集計幅より長いまたは等しいことを前提とする。
【0265】
13.2.1.5.7.学習用の説明変数の作成
以下の処理により、学習データの説明変数である、気温実績とその平均からの乖離値を算出する。予測期間中の計画メッシュに対して、
A)計画メッシュが属する日を予測日とする。
B)予測日と同じカテゴリーP・同じシーズンSに属する日の気温実績m(P,S,t)を取得する。気温は気象情報実績テーブルから取得する。
C)気温実績m(P,S,t)から、当該計画メッシュの計画メッシュ平均気温avem(P,S,t)を求める。
D)以下の式により当該計画メッシュの気温実績と平均気温の差分
【数76】
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を求める。これを気温実績乖離値と呼ぶ。上記処理により、計画メッシュ毎の気温乖離値がiの処理で取得した実績値の数だけ得られる。
【0266】
13.2.1.5.8.予測用の説明変数作成(予報気温の乖離値の計算)
以下の処理により、予報気温とその平均値の乖離値を算出する。予測期間中のすべて計画メッシュに対して、
A)計画メッシュが属する日を予測日とする。
B)13.2.1.5.9の処理により、当該計画メッシュにおける予報気温値m’(t)を取得する。
C)以下の式により気温と平均気温の差分
【数77】
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を求める。これを気温予報乖離値と呼ぶ。上記処理により、計画メッシュ毎の気温予報乖離値がカテゴリー実績値の数だけ得られる。
【0267】
13.2.1.5.9.予報気温の推移の取得
以下の処理により、予報気温の推移を取得する。
A)時間別の気象予報情報がある場合
時間別気象情報予報テーブルより最新の1時間毎(=計画メッシュ毎)の予報気温を取得する。
B)日付別の気象予報情報しかない場合
指定の予報日について、
i.予報日の最新の予報最高気温、予報最低気温を取得する。日別気象情報予報テーブルにから当該予報日の最高気温・最低気温を取得し、予報最高気温・予報最低気温とする。
ii.実績期間から、すべての日について最高・最低気温実績を取得し、以下の値を算出する。
iii.上記の値が小さい順にN日選び、気象情報実績テーブルより該当日の気温実績を取得し、計画メッシュ毎に平均値を算出する。この値を以って該当日の予報気温の推移とする。Nの値はパラメータ情報より取得する。
【0268】
13.2.1.5.10.予測値の作成(夏季・冬季の場合)
予測日が夏季・冬季カテゴリーに属するときは、次のようにして各計画メッシュにおける電力需要量の予測値を求める。先に作成した需要量乖離値Y
iを目的変数、気温実績乖離値X
iを説明変数として
【数78】
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の関係を仮定して単回帰を実行し、切片α^(S)と説明変数の係数β^(S)を推定する。これらの値を用いて、気温予報乖離値X’(t)から予測日の各計画メッシュにおける家電電力需要量乖離値の推定値y’(t)を得る。
【数79】
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これに平均需要量aveE
H(H,P,t)を加えて、各計画メッシュにおける電力需要量の予測値とする。
【0269】
13.2.1.5.11.予測値の作成(春季・秋季の場合)
A)準備
図126は、春季・秋季における家電電力需要と気温との関係を例示する図である。目的変数は、
図126のように、気温の水準によって、気温変化に対する感応度が変化すると仮定する。なお、y
m(H,P,S,t)は、状態2(平均±T度以内)の電力需要y(H,P,S,t)の平均を示す。
【0270】
つまり、図の各状態は、
【数80】
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と表される。これは、平均気温において、基本需要パターンからの乖離が±T℃の範囲内で、気温変化に対する感応度は殆ど無く、状態2における電力需要の平均y
m(H,P,S,t)で一定と仮定していることを意味している。
【0271】
図127は、春季・秋季における家電電力需要と気温との関係の別の例を示す図である。いま、状態1と状態3における温度変化に対する感応度を等しいと仮定し、状態3の電力需要(平均からの乖離)の符号を反転させれば、
図126は
図127のように変形される。そして、
図127から気温感応度を推定することによって、電力需要と気温の関係式が推定される。
【0272】
図中の中央部の直線の傾きをβとする。前述の仮定の下では、
図127に示されるように、状態1の状態3の直線を、ぞれぞれα1=βT、α2=−βTだけ縦にシフトさせると中央部の直線に一致する。パラメータα1、α2、βの推定には以下の対数尤度lnLを最大化すればよい。
【数81】
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なお、Σ記号の下の数値i(i=1,2,3)は状態を表す。離散的なデータに対して、3つの区間に分割して和をとるという意味である。
【0273】
この尤度関数を推定パラメータで微分し、ゼロと置くことで、以下の関係式を得る。
【数82】
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【0274】
B)パラメータの推定
以下の手順により、パラメータα1、α2、βを求める。
i.α1、α2、β、σに適当な初期値α1
(k)、α2
(k)、β
(k)、σ
(k)(k=1)を与える。
ii.α1
(k)、α2
(k)、β
(k)、σ
(kを尤度に代入し、対数尤度lnL(k)を計算する。
iii.以下の関係式からパラメータα^1、α^2、β^、σ2^を求める。
【数83】
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【0275】
iv.ステップiiの推定量を用いて、以下の式でパラメータを更新する。
【数84】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、λは更新幅である。
【0276】
v.k+1回目更新パラメータを用いて対数尤度lnL(k+1)を計算し、尤度が収束するまで(ii)から(iV)の処理を繰り返す。収束条件は
lnL(k+1)−lnL(k)<閾値
として、十分に小さな閾値を設定する。収束時のα1
(k)、α2
(k)、β
(k)を予測値の算出で使用する。
【0277】
C)予測値の算出
以下の処理により、家電電力需要量の予測値を求める。
推定されたα1、α2、βを基にし、各時間メッシュにおいてX’(t)が与えられた時の状態を判定し、下式により予測値 を算出する。
【数85】
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これに平均需要量aveE
H(H,P,t)を加えて、各計画メッシュにおける家電電力需要量の予測値とする。
【0278】
13.2.1.5.12.予測値の振れ幅の計算
以下の処理により、予測期間における計画メッシュ毎に、過去の実績との予測誤差を計算する。予測誤差の値は、各計画メッシュに過去の実績の数だけ存在する。予測期間のすべての計画メッシュに対して
A)計画メッシュが属する日を予測日とする。
B)実績期間から予測日と同じ日付カテゴリーの日をすべて取得する。
C)当該計画メッシュに対して、実績として取得した日の同時間帯の家電電力需要量(実績)と家電電力需要量(予測値)の差分を計算し、当該計画メッシュに於ける予測誤差とする。
【0279】
13.2.1.5.13.需要シナリオの作成・発生確率の付与
以下の処理により、需要シナリオを作成する。
A)各家電電力需要シナリオが占めるパーセンタイル区間をプロパティファイルから取得する。
区間の指定例)0.0,5.0,25.0,75.0,95.0,100.0
B)各家電電力需要シナリオが占めるパーセンタイル区間から代表パーセンタイル値を算出する。代表パーセンタイル値は区間の境界の中点である。
代表パーセンタイル値の計算例)2.5,15.0,50.0,85.0,97.5
C)パーセンタイル区間から家電電力需要シナリオの発生確率を算出する。家電電力需要シナリオの発生確率は、各パーセンタイル区間の両端のタイル値の差分の絶対値とする。
家電電力需要シナリオ発生確率の例)5.0,20.0,50.0,20.0,5.0
D)13.2.1.5.14の処理により、予測期間の各計画メッシュに対して、誤差の代表パーセンタイル点の時間推移を得る。
E)代表パーセンタイル点毎の差分値の時間推移を得る。
F)予測値に対して、各パーセンタイル点の差分値の時間推移を足し、各代表パーセンタイル値に対応するの家電電力需要シナリオとする。
G)各家電電力需要シナリオに対し、代表パーセンタイル値に対応する発生確率を付与する。
【0280】
13.2.1.5.14.誤差のパーセンタイル点の推移の取得
誤差のパーセンタイル点の推移は、以下の処理により求める。予測期間中のすべての計画メッシュに対して、
A)当該計画メッシュの属する予測日を取得する。
B)シナリオテーブルより、家電電力需要シナリオに関する過去のi日目予測日の各計画メッシュの予測誤差をすべて得る(最大過去2年まで)。
C)各計画メッシュに対して
i.予測誤差0の点を50%パーセンタイル点とする。
ii.予測誤差の実績分布からそれぞれのパーセンタイル点を求める。
上記の処理により、計画メッシュ毎の各誤差値のパーセンタイル点を得る。これを計画メッシュの時間でソートすることにより、各誤差のパーセンタイル点の時間推移を得る。
【0281】
13.2.1.5.15.DBへの保存
作成した複数の家電電力需要需要シナリオについて、それに対する予測誤差・パーセンタイル値・発生確率とシナリオ区分を1としてシナリオマスターテーブルに、シナリオID・対象日時・予測値・予測開始日時時間差・予測値・予測誤差をシナリオテーブルに格納する。
【0282】
13.2.2.EV電力需要シナリオ作成
13.2.2.1.機能概要
図128は、EV電力需要シナリオ作成機能のIO関連図を例示する図である。EV電力需要実績データと時系列EV走行予約データから、指定された住宅・期間におけるEV電力需要シナリオ、そののパーセンタイル値・発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。なお、本節ではEV利用宅のEV電力需要シナリオ作成機能について言及する。EVの備わっていない住宅においては、過去の履歴・その他の入力値にかかわらず、常に需要値0・発生確率0のEV電力需要シナリオを作成する。
【0283】
13.2.2.2 引数と返り値
13.2.2.2.1 引数
図129は、EV電力需要シナリオ作成機能の引数を例示する図である。
【0284】
13.2.2.2.2 返り値
図130は、EV電力需要シナリオ作成機能の戻り値を例示する図である。
【0285】
13.2.2.3 エラーチェック仕様
図131は、EV電力需要シナリオ作成機能のエラーチェック仕様を例示する図である。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.2.2.2.2返り値を参照。
【0286】
13.2.2.4.DB編集仕様
EV電力需要シナリオ作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.2.2.4.1.取得データ一覧
図132は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0287】
13.2.2.4.2.格納データ一覧
図133は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0288】
13.2.2.4.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0289】
13.2.2.5.処理詳細
13.2.2.5.1.処理フロー
図134は、EV電力需要シナリオ作成処理フローを説明する図である。EV電力需要シナリオ作成処理では、
図134のフローによりEV電力需要シナリオとその発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。本処理では、予測誤差の算出は行わない。
【0290】
13.2.2.5.2.シーズンの定義
シーズンは、冬季、夏季、春季・秋季3つのより構成される。冬季、夏季、春季・秋季の各期間はパラメータ情報から取得する。
【0291】
13.2.2.5.3.予測期間・実績期間の決定
予測期間は、計画メッシュ毎のEV電力需要値を予測の対象とする期間を意味する。予測期間は、引数として与えられる制御ルール作成期間始点日時から制御ルール作成期間終点日時まで(開始点を含み、終了点は含まない)。実績期間は、予測モデルの学習に使用するデータを有する期間である。実績期間は、EV電力需要実績テーブル内ですべての計画メッシュにおいてEV電力需要実績を有する日の集合である(日が連続している必要はない)。ただし、2年以上過去のデータは使用しない。
【0292】
13.2.2.5.4.EV利用予約からのEV電力需要シナリオ作成
以下の処理により、ユーザの指定したEV走行予約からEV電力需要シナリオを作成する。
A)EV電力需要実績より、過去のEV利用時における電力需要量が0でないものを取得し、その値の平均値を得る。ただし、2年以上過去のデータは除外する。
B)予測期間におけるEV走行予約の利用開始時間を得る。
C)すべての予測日に対して、EV走行履歴より予測日と同じ曜日の過去の走行時間を取得し、その90%タイル点を得る。ただし、2年以上過去のデータは除外する。
D)Bにより求めた利用開始時間に対してCで求めた走行時間を加えた値を求める。これを利用終了時間とする。利用開始時間から利用終了時間までをEV走行予約時間帯と呼ぶ。
E)予測期間中の各計画メッシュに対して、EV走行予約時間帯に含まれる場合はAので求めたEV電力需要の平均値を、それ以外の場合0を付与する。
F)E)により作成した10分単位の値を、計画メッシュ単位で再集計する。
上記処理により作成された計画メッシュ単位の値を以ってEV電力需要シナリオとする。予測期間においてEV走行予約が全くない場合は、EV走行予約からはEV電力需要シナリオを作成しない。
【0293】
13.2.2.5.5.EV走行実績からのEV電力需要シナリオ作成
以下の処理により、過去のEV走行実績からEV電力需要シナリオを作成する。
A)予測期間最初の日の曜日を取得し、これを開始曜日とする。また予測期間がまたがる日の数を予測期間日数とする。
B)開始曜日のシーズンを求める。
C)パラメータ情報から、EV電力需要シナリオ数N,EV電力需要シナリオ異常値除外数Mを取得する。
D)過去のEV電力需要量実績がある日付のうち、開始曜日と同じ曜日、同じシーズンの日から7日間連続して0以上のEV電力需要実績がある(データ欠損のない)期間で、かつ、連続した予測期間日数の間日間に祝日が含まれない期間を最大(N−1+M)件取得する。
E)Dの処理で選んだ期間すべてについて、EV電力需要量の推移を得る。
F)予測期間において平日かつ祝日が存在する場合、その平日かつ祝日である日の曜日を特定する。
G)過去のEV電力需要量実績がある日付のうち、平日かつ祝日に該当する日をすべて取得し、取得した日のEV電力需要量を得る。
H)Eで得たEV電力需要量の推移において、Fで特定された曜日に該当するEV電力需要量をGで得られたEV電力需要量で置き換える。このときの置き換えは、Fの日次単位のデータからの復元抽出によるランダムサンプリングとする。
I)取得した期間の各日について、1日の総EV電力需要量実績を求める。このとき、取得した期間の数がN−1+M未満のときは、1日の総EV電力需要量実績を昇順で順位付けし、N位以下となる日を含む期間を除外する。
上記処理により作成された計画メッシュ単位の電力需要量の推移を以ってEV電力需要シナリオとする。
【0294】
13.2.2.5.6.EV電力需要実績の取得
EV電力需要実績値は10分毎の集計値として蓄積されている。計画メッシュは可変であり、パラメータ情報から取得する。本モジュール内の処理では、計画メッシュ単位のEV電力需要実績値が必要となる。そのため、実績値の集計幅と計画メッシュ幅が異なる場合、EV電力需要実績値は、EV電力需要実績テーブルのEV電力需要実績値を、計画モジュールの集計幅で再集計したものを使用する。ここで、計画メッシュ幅は実績値の集計幅より長いまたは等しいことを前提とする。
【0295】
13.2.2.5.7.EV電力需要シナリオ発生確率の付与
以下の処理により、EV電力需要シナリオに対して発生確率を付与する。EV走行実績から作成したEV電力需要シナリオの数N
h=N−1とし、
A)予測期間中にEV走行予約がある場合
EV走行予約から作成したEV電力需要シナリオには発生確率P
regを付与する。
過去の実績から作成したEV電力需要シナリオには発生確率(1−P
reg)/N
hを付与する。
B)予測期間中にEV走行予約がない場合
過去の実績から作成したEV電力需要シナリオには発生確率1/N
hを付与する。
【0296】
13.2.2.5.8.DBへの保存
作成した複数のEV電力需要シナリオについて、それに対する予測誤差・パーセンタイル値・発生確率とシナリオ区分を2としてシナリオマスターテーブルに、シナリオID・対象日時・予測値・予測開始日時時間差・予測値・予測誤差をシナリオテーブルに格納する。
【0297】
13.2.3.熱需要シナリオ作成
13.2.3.1.機能概要
図135は、熱需要シナリオ作成機能IO関連図を例示する図である。熱需要実績データと、気象情報実績・予報の気温から、指定された住宅・期間における熱需要シナリオ・予測誤差・熱需要シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。
【0298】
13.2.3.2.引数と返り値
13.2.3.2.1.引数
図136は、熱需要シナリオ作成機能の引数を例示する図である。
【0299】
13.2.3.2.2.返り値
図137は、熱需要シナリオ作成機能の戻り値を例示する図である。
【0300】
13.2.3.3.エラーチェック仕様
図138は、熱需要シナリオ作成機能のエラーチェック仕様を例示する図である。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.2.3.2.2返り値を参照。
【0301】
13.2.3.4.DB編集仕様
熱需要シナリオ作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.2.3.4.1.取得データ一覧
図139は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0302】
13.2.3.4.2.格納データ一覧
図140は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0303】
13.2.3.4.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0304】
13.2.3.5.処理詳細
13.2.3.5.1.処理フロー
図141は、熱需要シナリオ作成処理フローを例示する図である。熱需要シナリオ作成処理では、以下のフローにより熱需要シナリオ・予測誤差・パーセンタイル値・熱需要シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。
【0305】
13.2.3.5.2.日付カテゴリーの定義
日付カテゴリーは次のように規定する。
祝日の場合(3カテゴリー):季節(3カテゴリー)
祝日でない場合(21カテゴリー):曜日(7カテゴリー)×季節(3カテゴリー)
季節は、冬季、夏季、秋季・秋季の3つのカテゴリーにより構成される。冬季、夏季、春季・秋季の各期間はパラメータ情報から取得する。曜日は日月火水木金土の7カテゴリーとする。対象とする日が祝日か否かの判定は、カレンダーテーブル内に該当日に対応するレコードが存在するか否かにより判断する。
(例)2012/ 5/3 →祝日/春季・秋季
2012/12/1 →祝日でない/土曜日/冬季
【0306】
13.2.3.5.3.予測期間・実績期間の決定
予測期間は、計画メッシュ毎の熱需要値を予測の対象とする期間を意味する。予測期間は、引数として与えられる制御ルール作成期間始点日時から制御ルール作成期間終点日時まで(開始点を含み、終了点は含まない)。実績期間は、予測モデルの学習に使用するデータを有する期間である。実績期間は、熱需要実績テーブル内ですべての計画メッシュにおいて熱需要実績を有する日の集合である(日が連続している必要はない)。ただし、2年以上過去のデータは使用しない。
【0307】
13.2.3.5.4.予測値の作成
以下の処理により、予測期間における熱需要量の予測値を作成する。
A)実績期間・予測期間のすべての日付について、日付カテゴリーを付与する。
B)予測期間のすべての日付に対して
i.実績期間から、予測日と同じ日付カテゴリーに属する日をすべて取得する。これをカテゴリー実績日と呼ぶ。
ii.カテゴリー実績値の数に応じて、次の用に予測値の作成に使用する実績日を決定する。
iii.上記処理によって取得した日から、集計対象となる日を以下のように選ぶ。
ア)カテゴリー実績日の日数が1日以上でX日以内ある場合、すべてのカテゴリー実績日のすべてを集計対象とする。なお、Xの値はパラメータ情報より取得する。
イ)カテゴリー実績日の日数がX+1日以上ある場合、カテゴリー実績日のうち以下の値Cが上位X位までの日を集計対象とする。
【数86】
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過去データの最高気温・最低気温は気象情報実績テーブルの該当日の時間帯別気温の最大値・最小値とする。予測日の最高気温・最低気温は、気象情報予報テーブルから得る。
iv.(iii)で選んだ日を集計対象にして、各計画メッシュにおける温水温度の平均値を算出、これを熱需要の予測値とする。
C)予測期間の各計画メッシュの予測値を計画メッシュの時間の昇順にならべ、予測期間における熱需要予測値とする。
【0308】
13.2.3.5.5.熱需要実績値の取得
熱需要の実績値は10分毎の集計値として蓄積されている。計画メッシュは可変であり、パラメータ情報から取得する。本モジュール内の処理では、計画メッシュ単位の熱需要の実績値が必要となる。そのため、実績値の集計幅と計画メッシュ幅が異なる場合、熱需要実績値は、熱需要実績テーブル内の実績値を、計画モジュールの集計幅で再集計したものを使用する。ここで、計画メッシュ幅は実績値の集計幅より長いまたは等しいことを前提とする。
【0309】
13.2.3.5.6.予測値の振れ幅の計算
以下の処理により、予測期間における計画メッシュ毎に、過去の実績との予測誤差を計算する。予測誤差は、各計画メッシュに過去の実績の数だけ存在する。予測期間すべての日(予測日)に対して
A)実績期間から予測日と同じ日付カテゴリーの日をすべて取得する。
B)予測日内のすべての計画メッシュに対して、実績として取得した日の同時間帯の熱需要量(実績)と熱需要量(予測値)の差分を計算する(過去の日付分の差分値が得られる)。
【0310】
13.2.3.5.7.熱需要シナリオの作成・発生確率の付与
以下の処理により、熱需要シナリオを作成する。
A)各熱需要シナリオが占めるパーセンタイル区間をプロパティファイルから取得する。
区間の指定例)0.0,5.0,25.0,75.0,95.0,100.0
B)各熱需要シナリオが占めるパーセンタイル区間からパーセンタイル点を算出する。パーセンタイル点は区間の境界の中点である。
パーセンタイル点の計算例)2.5,15.0,50.0,85.0,97.5
C)各熱需要シナリオが占める区間から熱需要シナリオの発生確率を算出する。熱需要シナリオの発生確率は、各パーセンタイル区間の両端のタイル値の差分の絶対値とする。
熱需要シナリオ発生確率の例)5.0,20.0,50.0,20.0,5.0
D)13.2.3.5.8の処理により、予測期間の各計画メッシュに対して、パーセンタイル点に相当する誤差値の時間推移を得る。
E)パーセンタイル点毎の差分値の時間推移を得る。
F)予測値に対して、各パーセンタイル点の差分値の時間推移を足し、各パーセンタイル点の熱需要シナリオとする。
G)各パーセンタイル点の熱需要シナリオに対し、パーセンタイル点に対応する発生確率を付与する。
【0311】
13.2.3.5.8.誤差のパーセンタイル点の推移の算出
以下の処理により、熱需要シナリオを作成する。
A)各熱需要シナリオが占めるパーセンタイル区間をプロパティファイルから取得する
区間の指定例)0.0,5.0,25.0,75.0,95.0,100.0
B)各熱需要シナリオが占めるパーセンタイル区間から代表パーセンタイル値を算出する。代表パーセンタイル値は区間の境界の中点である。
代表パーセンタイル値の計算例)2.5,15.0,50.0,85.0,97.5
C)パーセンタイル区間から熱需要シナリオの発生確率を算出する。熱需要シナリオの発生確率は、各パーセンタイル区間の両端のタイル値の差分の絶対値とする。
熱需要シナリオ発生確率の例)5.0,20.0,50.0,20.0,5.0
D)13.2.1.5.14の処理により、予測期間の各計画メッシュに対して、誤差の代表パーセンタイル点の時間推移を得る。
E)代表パーセンタイル点毎の差分値の時間推移を得る。
F)予測値に対して、各パーセンタイル点の差分値の時間推移を足し、各代表パーセンタイル値に対応するの熱需要シナリオとする。
G)各熱需要シナリオに対し、代表パーセンタイル値に対応する発生確率を付与する。
【0312】
13.2.3.5.9.DBへの保存
作成した複数の熱需要シナリオについて、それに対する予測誤差・パーセンタイル値・発生確率とシナリオ区分を3としてシナリオマスターテーブルに、シナリオID・対象日時・予測値・予測開始日時時間差・予測値・予測誤差をシナリオテーブルに格納する。
【0313】
13.3.供給予測機能
13.3.1.PV供給シナリオ作成機能
13.3.1.1.機能概要
図142は、PV供給シナリオ作成機能IO関連図を例示する図である。PV供給実績データと、気象情報実績の気温、天候、日射量、また気象情報予報の気温、天候から、指定された住宅・期間におけるPV供給シナリオ・予測誤差・PV供給シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。
【0314】
13.3.1.2.引数と返り値
13.3.1.2.1.引数
図143は、PV供給シナリオ作成機能の引数を例示する図である。
【0315】
13.3.1.2.2.返り値
図144は、PV供給シナリオ作成機能の戻り値を例示する図である。
【0316】
13.3.1.2.3.エラーチェック仕様
図145は、PV供給シナリオ作成機能のエラーチェック仕様を例示する図である。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.3.1.2.2返り値を参照。
【0317】
13.3.1.3.DB編集仕様
PV供給シナリオ作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.3.1.3.1.取得データ一覧
図146は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0318】
13.3.1.3.2.格納データ一覧
図147は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0319】
13.3.1.3.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0320】
13.3.1.4.処理詳細
13.3.1.4.1.処理フロー
図148は、PV供給シナリオ生成処理フローを説明する図である。PV供給シナリオ作成処理では、以下のフローによりPV供給シナリオ・予測誤差・パーセンタイル値・PV供給シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。
【0321】
13.3.1.4.2.予測期間・実績期間の決定
予測期間は、計画メッシュ毎のPV供給値を予測の対象とする期間を意味する。予測期間は、引数として与えられる制御ルール作成期間始点日時から制御ルール作成期間終点日時まで(開始点を含み、終了点は含まない)。実績期間は、予測モデルの学習に使用するデータを有する期間である。実績期間は、PV供給実績テーブル内ですべての計画メッシュにおいて実績を有する日の集合である(日が連続している必要はない)。ただし、2年以上過去のデータは使用しない。
【0322】
13.3.1.4.3.予報気温の推移の取得
以下の処理により、予報気温の推移を取得する。
A)時間別の気象予報情報がある場合
時間別気象情報予報テーブルより最新の1時間毎(=計画メッシュ毎)の予報気温を取得する。
B)日付別の気象予報情報しかない場合
指定の予報日について、
i.予報日の最新の予報最高気温、予報最低気温を取得する。
日別気象情報予報テーブルにから当該予報日の最高気温・最低気温を取得し、予報最高気温・予報最低気温とする。
ii.実績期間から、すべての日について最高・最低気温実績を取得し、以下の値を算出する。
iii.上記の値が小さい順に可能な限り多くN日選び、気象情報実績テーブルより該当日の気温実績を取得し、計画メッシュ毎に平均値を算出する。この値を以って該当日の予報気温の推移とする。
【0323】
13.3.1.4.4.パラメータの推定
以下の処理により、発電効率の気温係数γ
sθ(H)、発電効率の気温定数γ
s0(H)を推定する。
A)PV供給量実績s(H,t)をPV供給用実績テーブルから取得する。
B)気温実績θ(t)、日射量実績l(H,t)を象情報実績テーブルから取得する。
C)s
i(H,t)、θ
i(t)、l
i(H,t)を、それぞれ個別のPV供給量実績、気温実績、日射量実績データとして、以下の値が最小となるγ^
sθ、γ^
s0を求める。
【数87】
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【0324】
13.3.1.4.5.予測値の作成
以下の処理により、PV供給量の予測値s'(H,t)を求める。
A)予測期間中の各計画メッシュの予報気温・日射量実績を取得する。
B)パラメータ推定処理によって得られたγ^
sθ、γ^
s0と予報気温・日射量実績を用いて、下式により各計画メッシュのPV供給量を取得する。
【数88】
[この文献は図面を表示できません]
この値を以って、PV供給量の予測値とする。
【0325】
13.3.1.4.6.予測値の振れ幅の計算
以下の処理により、予測誤差を計算する。予測期間におけるすべての日(予測日)に対して、計画メッシュ毎にPV供給予測値とPV供給実績値の差分を取る。これを以って予測誤差とする。
【0326】
13.3.1.4.7.PV供給シナリオの作成・発生確率の付与
以下の処理により、PV供給シナリオを作成する。
A)各PV供給シナリオが占めるパーセンタイル区間をプロパティファイルから取得する。
区間の指定例)0.0,5.0,25.0,75.0,95.0,100.0
B)各PV供給シナリオが占めるパーセンタイル区間からパーセンタイル点を算出する。パーセンタイル点は区間の境界の中点である。
パーセンタイル点の計算例)2.5,15.0,50.0,85.0,97.5
C)各PV供給シナリオが占める区間からPV供給シナリオの発生確率を算出する。PV供給シナリオの発生確率は、各パーセンタイル区間の両端のタイル値の差分の絶対値とする。
PV供給シナリオ発生確率の例)5.0,20.0,50.0,20.0,5.0
D)13.3.1.4.8の処理により、予測期間の各計画メッシュに対して、パーセンタイル点に相当する誤差値の時間推移を得る。
E)パーセンタイル点毎の差分値の時間推移を得る。
F)予測値に対して、各パーセンタイル点の差分値の時間推移を足し、各パーセンタイル点のPV供給シナリオとする。
G)各パーセンタイル点のPV供給シナリオに対し、パーセンタイル点に対応する発生確率を付与する。
【0327】
13.3.1.4.8.誤差のパーセンタイル点の推移の算出
以下の処理により、PV供給シナリオを作成する。
A)各PV供給シナリオが占めるパーセンタイル区間をプロパティファイルから取得する。
区間の指定例)0.0,5.0,25.0,75.0,95.0,100.0
B)各PV供給シナリオが占めるパーセンタイル区間から代表パーセンタイル値を算出する。代表パーセンタイル値は区間の境界の中点である。
代表パーセンタイル値の計算例)2.5,15.0,50.0,85.0,97.5
C)パーセンタイル区間からPV供給シナリオの発生確率を算出する。PV供給シナリオの発生確率は、各パーセンタイル区間の両端のタイル値の差分の絶対値とする。
PV供給シナリオ発生確率の例)5.0,20.0,50.0,20.0,5.0
D)13.2.1.5.14の処理により、予測期間の各計画メッシュに対して、誤差の代表パーセンタイル点の時間推移を得る。
E)代表パーセンタイル点毎の差分値の時間推移を得る。
F)予測値に対して、各パーセンタイル点の差分値の時間推移を足し、各代表パーセンタイル値に対応するのPV供給シナリオとする。
G)各PV供給シナリオに対し、代表パーセンタイル値に対応する発生確率を付与する。
【0328】
13.3.1.4.9.DBへの保存
作成した複数のPV供給シナリオについて、それに対する予測誤差・パーセンタイル値・発生確率とシナリオ区分を3としてシナリオマスターテーブルに、シナリオID・対象日時・予測値・予測開始日時時間差・予測値・予測誤差をシナリオテーブルに格納する。
【0329】
13.4.最適需給計画機能
13.4.1.統合シナリオ作成
13.4.1.1.機能概要
図149は、統合シナリオ作成機能のIO関連図を例示する図である。家電電力需要シナリオ、EV電力需要シナリオ、熱需要シナリオ、PV供給シナリオデータを統合し、統合シナリオデータを作成する。
【0330】
13.4.1.2.引数と返り値
13.4.1.2.1.引数
図150は、統合シナリオ作成機能の引数を例示する図である。
【0331】
13.4.1.2.2.返り値
図151は、統合シナリオ作成機能の戻り値を例示する図である。
【0332】
13.4.1.3.エラーチェック仕様
図152は、統合シナリオ作成機能のエラーチェック仕様を以下に示す。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.4.1.2.2返り値を参照。
【0333】
13.4.1.4.DB編集仕様
統合シナリオ作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.4.1.4.1.取得データ一覧
図153は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0334】
13.4.1.4.2.格納データ一覧
図154は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0335】
13.4.1.4.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0336】
13.4.1.5.処理詳細
13.4.1.5.1.処理フロー
図155は、統合シナリオ作成処理フローを説明する図である。統合シナリオ作成処理では、以下のフローにより統合シナリオ・統合シナリオの発生確率を得て、それらをデータベースに保存する。統合シナリオとは、家電電力需要シナリオ群・EV電力需要シナリオ群・熱需要シナリオ群・PV供給シナリオ群から、1つずつ各シナリオを選んで合わせた4つの時系列値の総体とそれに付随する情報を指す。
【0337】
13.4.1.5.2.シナリオの組み合わせの作成
以下の処理により、需要・供給シナリオの組み合わせを作成する。
A)制御ルール作成処理IDに対応する家電電力需要シナリオ・EV電力需要シナリオ・熱需要シナリオ・PV供給シナリオのシナリオIDを、シナリオテーブルから取得する。
B)家電電力需要シナリオ・EV電力需要シナリオ・熱需要シナリオ・PV供給シナリオのシナリオID、それぞれ1つずつシナリオを選び、4つのシナリオIDの組み合わせを作る。このシナリオIDの組み合わせをすべてのパターンについて作成する。
【0338】
13.4.1.5.3.統合シナリオの発生確率の算出
以下の処理により、すべての統合シナリオについて発生確率を算出する。
A)家電電力需要シナリオ・EV電力需要シナリオ・熱需要シナリオ・PV供給シナリオについて、統合シナリオ の各シナリオIDに対応する予測値・予測誤差・発生確率・パーセンタイル値、家電電力需要シナリオテーブル・EV電力需要シナリオテーブル・熱需要シナリオテーブル・PV供給シナリオテーブルからそれぞれ取得する。
B)家電電力需要シナリオ・熱需要シナリオ・PV供給シナリオの予測誤差の相関行列を作成する。
C)
図156は処理の例を示す。このRサンプルの処理により、相関行列のクリーニングを行う。
D)すべての統合シナリオに対して、
i.以下の処理により、家電電力需要シナリオ・熱需要シナリオ・PV供給シナリオの3つのシナリオについて、各シナリオ群を構成するシナリオの組み合わせの同時発生確率を算出する。
ア)平均0,分散1の標準正規分布を仮定して、各シナリオのタイル値に相当する位値を算出する 。
イ)3次元正規密度関数により、3シナリオの同時発生確率を求める。
図157は、Rによる実装例を示す。
ii.先に求めた3つのシナリオの発生確率に対して、EV電力需要シナリオの発生確率をかけて、統合シナリオSの発生確率P
Sとする。
【0339】
13.4.1.5.4.統合シナリオの選択と発生の基準化
作成した統合シナリオが最大統合シナリオ数Nを上回る場合、発生確率の大きい順に上位N個を選択し、本モジュールの出力とする。選択したN個の統合シナリオについて、下式により基準化した統合シナリオSの発生確率P
*Sを求め、これを最終的な発生確率とする。
【数89】
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なお、最大統合シナリオ数Nはパラメータ情報より取得する。
【0340】
13.4.1.5.5.DBへの保存
作成した最大N個の統合シナリオについて、家電電力需要予測値・EV電力需要予測値・熱需要予測値・PV供給予測値とそれに対する発生確率P
*Sを、統合シナリオテーブルに格納する。
【0341】
13.4.2.最適化計画作成
13.4.2.1.機能概要
図158は、最適化計画作成のIO関連図を例示する図である。統合シナリオより各種最適化計画を作成する。
【0342】
13.4.2.2.引数と返り値
13.4.2.2.1.引数
図159は、最適化計画作成機能の引数を例示する図である。
【0343】
13.4.2.2.2.返り値
図160は、最適化計画作成機能の戻り値を例示する図である。
【0344】
13.4.2.3.エラーチェック仕様
図161は、最適化計画作成機能のエラーチェック仕様を例示する図である。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.4.2.2.2返り値を参照。
【0345】
13.4.2.4 DB編集仕様
最適化計画作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.4.2.4.1.取得データ一覧
図162〜
図166は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0346】
13.4.2.4.2.格納データ一覧
図167〜
図169は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0347】
13.4.2.4.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0348】
13.4.2.5.処理詳細
13.4.2.5.1.処理フロー
図170は、処理一覧を例示する図である。最適化計画作成処理では、以下に示すA)からF)の処理を順番に実行することで、最適化計算を実施し、EV蓄電池、定置型蓄電池およびFCの最適な運転計画を算出する。処理の最後では、計算結果をデータベースに保存する処理を実施する。
【0349】
A)初期化処理
初期化で設定が必要な定数は、13.4.2.4.1で述べたようにデータベースより取得する。取得したシナリオIDの総数をNとし、各IDに1,2,…,Nと番号付けをする。また、処理対象の1スパン内のメッシュ総数をTとして、各メッシュは時刻の古い順に1,2,…,Tと番号付けをする。なお、EV接続の有無を表すため、統合シナリオiの期間tでEVが接続されている(利用されていない)場合1、それ以外では0となる値をδ
EVi(t)として設定する。最適化モードが非常モードの場合には、系統から解列した状態となるため、z
max-(t)およびz
max+(t)は0に固定され、PV電力を使用するためEVも接続状態となりE
Vi(t)は0に、δ
EVi(t)は1に設定する。
【0350】
B)変数作成
図171〜
図173は、最適化モデルを定義するために必要な変数の一覧を例示する図である。変数を定義する際には、表中で指定するように「型」と範囲を指定する。型には「連続」と「0−1」の2種類いずれかの指定があり、範囲の指定には上限と下限を指定する。上限や下限を特に指定する必要のない場合には表中で「−」と記している。変数はそれぞれT+1個生成する。例えば、逆潮流電力電量の変数であれば、z
+(1)からz
+(T+1)までのT+1個を生成する。z
+(t)であれば計画スパンの第t期(最初からt番目のメッシュ期間)の逆潮流量を表す変数となる。なお、一般的にT個の変数がx(1),x(2),…,x(T)と表記されている場合、Gurobiでの変数定義はModel.addVar()で行われる。
図174は、Pythonで記述した例を示している。
【0351】
ここで、vtypeでは型を指定する。連続であればGRB.CONTINUOUS、また0−1であればGRB.BINARYと指定する。変数の値の範囲の上下限の指定がある場合には、luで下限をubで上限を指定する。範囲の上下限の指定が無い場合は不要であるが、上下限の指定が無いことを明示的に示すために、lb = -GRB.INFINITYや ub = GRB.INFINITYと記述することも可能である。
【0352】
C) 制約条件作成
図175〜
図177は、制約条件を例示する図である。一般的にN個の変数がx(1),x(2),…,x(T)と表記されている場合、1次の等式あるいは不等式は、各変数の係数としてN個の定数a(1),a(2),…,a(T)と右辺の定数bを与えることでそれぞれ
【数90】
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と定められる。
【0353】
Gurobiでの制約条件の定義は、右辺と左辺の1次式をLinExpr()でそれぞれ定義し、それらをmodel.addConstr()でモデルに追加することで行われる。
図178は、1次の等式を生成してモデルに追加する場合のPythonでの実装例を示す。この例では、addTerms(a[t],x[t])左辺の数式に係数a(t)と変数x(t)の組を追加し、addConstant(b)で定数bの追加を行う。モデルに制約条件を追加するにはmodel.addConst()を用いlhsに左辺、rhsに右辺の一次式を指定する。また、右辺と左辺の関係はsenseで指定する。等号の場合にはsense = "="とし、不等号であれば、その向きに応じて、sense = "<=" 、あるいはsense = ">="と指定する。なお、最適化モードが非常の場合には、充電量が固定値から可変となるため、上の表の13番目の制約条件を
【数91】
[この文献は図面を表示できません]
と変更する必要がある。
【0354】
D)目的関数作成
図179は、目的関数を構成する一次式を例示する図である。目的関数は、以下の表ようにコストに相当する以下の番号1から番号5の一次式、および統合シナリオi毎に算出されるリスク量(番号6)より構成される。目的関数は、統合シナリオiの発生確率p
iおよびリスクパラメータθを使い以下のように設定する。
【数92】
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なお、Gurobiでの目的関数を設定するためには、exprに目的関数の1次式を設定し、それをmodel.setObjective()でモデルに追加することで行われる。
図180は、Pythonを使った実装例を示している。この例では、GRB.MINIMIZEで最小化を実行することを指定している。
【0355】
E)最適化計算実施
図181および
図182は、出力項目に対応するリスクパラメータと変数を例示する図である。目的関数のリスクパラメータθに、最適化エンジンパラメータテーブルより取得した3つのリスクパラメータθ
S、θ
Lおよびθ
U(設定値に関しては14.2初期パラメータを参照)それぞれを設定した目的関数を生成し、それぞれの目的関数毎に最適化処理を実行する(3回最適化処理を実行する)。
図181および
図182は、出力項目毎に、その値を設定するために用いる最適化の変数および最適化の目的関数を生成するために用いるリスクパラメータの設定値を例示している。
【0356】
なお、Gurobiで最適化計算を実行するためには、制約式および目的関数をモテ゛ルに設定した後、model.optimize()を用いる。これにより、大域的最適解を得ることが可能なアルゴリズムにより最適な解が算出される。最適化実行後は、各変数に最適化された値が設定される。
図183は、Pythonを用いた、変数x[t]の取得の例を示している。
【0357】
F)結果格納
図181および
図182に示した各項目を、13.4.2.4.2格納データ一覧に示したテーブルに格納する。
【0358】
13.4.3.制御ルール生成
13.4.3.1.機能概要
図184は、制御ルール作成機能のIO図を例示する図である。最適化された各計画データより、制御ルールを作成する。
【0359】
13.4.3.2 引数と返り値
13.4.3.2.1.引数
図185は、最適化計画作成機能の引数を例示する図である。
【0360】
13.4.3.2.2.返り値
図186は、最適化計画作成機能の戻り値を例示する図である。
【0361】
13.4.3.3.エラーチェック仕様
図187は、最適化計画作成機能のエラーチェック仕様を例示する図である。エラーチェックに該当した場合、処理を中断し処理失敗としてメイン処理に対し返り値を返送する。詳細は13.4.3.2.2返り値を参照。
【0362】
13.4.3.4.DB編集仕様
最適化計画作成機能におけるデータベースからの値の取得と格納について説明する。
13.4.3.4.1.取得データ一覧
図188は、データベースからの値の取得を例示する図である。
【0363】
13.4.3.4.2.格納データ一覧
図189は、データベースへの値の格納を例示する図である。
【0364】
13.4.3.4.3.更新データ一覧
当機能にてデータベースの更新はしない。
【0365】
13.4.3.5.処理詳細
13.4.3.5.1.処理フロー
図190は、制御ルール生成処理フローを説明する図である。制御ルール生成処理では、以下のフローによりEV蓄電池・定置型蓄電池・燃料電池の最適化計画から、各デバイスの制御ルールを得て、それらをデータベースに保存する。
【0366】
13.4.3.5.2.デバイスの制御状態
図191は、デバイスへの制御を例示する図である。各デバイスへは以下の制御状態を指定する。
【0367】
13.4.3.5.3.デバイスの基本状態
図192は、デバイスの基本状態(系統電源接続時)を例示する図である。
図193は、デバイスの基本状態(系統電源から解列時)を例示する図である。最適化計画により導出された各計画メッシュにおけるデバイスの状態を基本状態と呼ぶ。EV蓄電池および定置型蓄電池では、計画メッシュで放電力量が正の場合に放電、充電力量が正の場合には充電、両方の値が0の場合にスタンバイ(充電も放電も行わない状態を意味する)とする。燃料電池では、燃料電池発電力量が正の場合に稼働、0の場合に停止とする。
【0368】
13.4.3.5.4.計画メッシュ内における蓄電池の管理幅の算出
各計画メッシュ内における蓄電池の管理幅の算出を行う。各住宅にはEV(蓄電池)・定置型蓄電池のいずれか1つが設置されている。ここでは、各住宅に設置されているデバイスの管理幅について言及する。計画メッシュ内においては管理幅の上限は一定の割合で推移するものと仮定し、当該計画メッシュの上限値V
1maxと次の計画メッシュの上限値V
2maxを結んだ直線をt分経過時における上限とする。管理幅の下限についても同様に、当該計画メッシュの下限値V
1minと次の計画メッシュの下限値V
2minを結んだ直線を制御メッシュにおける下限値とする。計画メッシュ幅が60分の場合、各計画メッシュ内でt分経過時における管理幅の上限値・下限値v
max(t)、v
min(t)はそれぞれ次式により求めることができる。
【数93】
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【0369】
13.4.3.5.5.ルール生成処理(系統電源接続時)
EV設置住宅の場合はAの処理を行い、定置型蓄電池設定住宅の場合はBの処理を行う。
A)EV蓄電池の制御ルール作成(EV設置住宅の場合)
以下の処理により、EV蓄電池の制御ルールを作成する。
i.EV蓄電池の充放電計画の取得
EV蓄電計画テーブルからEV蓄電計画上限値・EV蓄電計画下限値を、EV電力量計画テーブルからEV放電力量計画・EV充電力量計画を取得する。
ii.基本状態の作成
計画メッシュ毎のEV放電力量計画・EV充電力量計画から、計画メッシュ毎の基本状態を作成する。
iii.制御メッシュ幅を取得する
制御メッシュ幅をパラメータ情報から取得し、計画メッシュを制御メッシュ単位に分割する。ただし制御メッシュ幅が計画メッシュ幅を上回る場合は計画メッシュ幅と等しく設定する。
iv.制御メッシュにおける管理幅算出
13.4.3.5.4の処理により、各計画メッシュ内の管理幅を算出する。
【0370】
v.制御ルールの作成方法
各制御メッシュ内においては、以下の規則に従って制御ルールを作成する。
(ア)基本状態が放電のとき
(a)EV蓄電量の実測値が管理幅内に収まっているまたは管理幅の上限を超えている場合は、EV蓄電池は放電する。
(b)EV蓄電量の実測値が管理幅の下限を下回るとき、EV蓄電池はスタンバイ状態になる。
(イ)基本状態が充電の時
(a)EV蓄電量の実測値が管理幅内に収まっている、または管理幅の下限を超えている場合は、EV蓄電池は充電する。
(b)EV蓄電量の実測値が管理幅の上限を上回るとき、EV蓄電池はスタンバイ状態になる。
(ウ)基本状態がスタンバイの時
(a)管理幅に依らず、EV蓄電池はスタンバイ状態になる。
【0371】
図194は、EV蓄電池蓄計画値と基本状態の例を示している。
【0372】
vi.制御ルールの形式
図195は、
図194から作成される蓄電池の制御ルールを例示する図である。制御ルールはif−then形式で記述される。if節には時刻または大小比較式を記述し、then以降に動作対象機器とその機器の動作状態を記述する。一般式としては以下のようになる。
・時刻起動:if YYYYMMDDhhmm then action(object, state)
・大小比較起動:if variable < threshold then action(object, state)
【0373】
B)定置型蓄電池の制御ルール作成(定置型蓄電池設置住宅の場合)
以下の処理により、制御メッシュにおける定置型蓄電池の制御ルールを作成する。
i.定置型蓄電池の充放電計画の取得
LIB蓄電計画テーブルからLIB蓄電計画上限値・LIB蓄電計画下限値を、LIB電力量計画テーブルからLIB放電力量計画・LIB充電力量計画を取得する。
ii.基本状態の作成
計画メッシュ毎のLIB放電力量計画・LIB充電力量計画から、計画メッシュ毎の基本状態を作成する。
iii.制御メッシュ幅を取得する
制御メッシュ幅をパラメータ情報から取得し、計画メッシュを制御メッシュ単位に分割する。ただし制御メッシュ幅が計画メッシュ幅を上回る場合は計画メッシュ幅と等しく設定する。
iv.制御メッシュにおける管理幅算出
13.4.3.5.4の処理により、各計画メッシュ内の管理幅を算出する。
v.制御ルールの作成方法
EV蓄電池の制御ルール作成方法に準ずる。
【0374】
C)燃料電池の制御ルール作成
i.FC発電量計画の取得
FC発熱量計画テーブルからFC発電計画値を取得する。
ii.基本状態の作成
計画メッシュ毎のFC発電計画値から、計画メッシュ毎の基本状態を作成する。
iii.燃料電池制御メッシュ幅を取得する
制御メッシュ幅をパラメータ情報から取得し、計画メッシュを制御メッシュ単位に分割する。ただし制御メッシュ幅が計画メッシュ幅を上回る場合は計画メッシュ幅と等しく設定する。
iv.制御ルールの作成方法
各計画メッシュの基本状態は、最適化アルゴリズムによって起動時におけるエネルギーロスも考慮の上最適化されたものに従い決定されている。制御ルールもそれに従い、以下の表のようになる。
【0375】
図196は、最適化モードと燃料電池の制御を例示する図である。
【0376】
13.4.3.5.6.ルール生成処理(系統電源切断時:非常モード)
A)EV蓄電池の制御ルール作成(EV蓄電池設置住宅の場合)
非常モードでは、計画メッシュ内のすべての制御メッシュにおいて蓄電池をON・負荷追従モードとし、それを表すEV蓄電池の制御ルールを作成する。
B)定置型蓄電池の制御ルール生成(定置型蓄電池設置住宅の場合)
非常モードにおける定置型蓄電池の制御ルールの作成方法は、EV蓄電池のそれに準ずる。
C)燃料電池の制御ルール作成
図196は、蓄電池が放電状態の場合の燃料電池の制御を例示する図である。
図197は、蓄電池が充電状態の場合の燃料電池の制御を例示する図である。これらの図に示すように、計画メッシュ内のすべての制御メッシュにおいて、以下の規則に従って燃料電池の制御ルールを作成する。
i.蓄電量の実測値が管理幅の下限をΔkWh下回った場合には、燃料電池の出力を以下のように算出される値ΔW分増加させる。ただし、ΔTは計画メッシュ幅の時間間隔とし、また増加後の出力がFCの最大出力以上には設定しない。
【数94】
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ii.蓄電量の実測値が管理幅の上限をΔkWh上回った場合には、燃料電池の出力を以下のように算出される値ΔW分減少させる。ただし、ΔTは計画メッシュ幅の時間間隔とし、また減少後の出力がFCの最小出力以下には設定しない。
【数95】
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iii.蓄電量の実測値が管理幅の中に収まっている場合は、燃料電池の出力を変化させない(直前の出力を維持する)。
【0377】
13.4.3.5.7.DBへの保存
作成した制御ルールを制御ルールテーブルに保存する。
【0378】
14.初期処理
14.1.初期処理
当システムにおいて初期処理はない。また、システム再起動時にも特別な処理は必要ない。
【0379】
14.2.初期パラメータ
図199〜
図201は、住宅マスタの設定項目のうち時系列最適化パラメータテーブルにコピーされる項目について示している。本システムの利用に際しては、利用者あるいは管理者を住宅マスタの各項目に設定する必要がある。住宅マスタに設定された各項目は、制御ルール処理リクエストを受け付けた後、住宅マスタでの設定内容が、時系列最適化パラメータテーブル・最適化パラメータテーブル・最適化エンジンパラメータテーブルにコピーされ、一連の制御ルール生成処理が呼び出される。
【0380】
なお、住宅に設定している機器の有無により、以下の通りパラメータ値が設定されていることが必要である。
(ア)EVを持たない住宅の場合は、以下のパラメータを0に設定する。
・EV蓄電池最小放電力量
・EV蓄電池最大放電力量
・EV蓄電池最小充電力量
・EV蓄電池最大充電力量
(イ)定置型蓄電池を持たない住宅の場合は、以下のパラメータを0に設定する。
・定置型蓄電池最小放電力量
・定置型蓄電池最大放電力量
・定置型蓄電池最小充電力量
・定置型蓄電池最大充電力量
(ウ)FCを持たない住宅の場合は、以下のパラメータを0に設定する。
・燃料電池最小発電量
・燃料電池最大発電量
【0381】
図202は、住宅マスタの設定項目のうち最適化パラメータテーブルにコピーされる項目について示している。
【0382】
図203は、住宅テマスタの設定項目のうち最適化エンジンパラメータテーブルにコピーされる項目について示している。なお、表中の設定値は、処理時間の要件を満たすことや、予測精度向上のために、今後のシミュレーションの中で変更される可能性がある。
【0383】
15.障害処理、異常処理
本システムで発生しうるエラーとして以下のものがあげられる。
A)データベースへの接続・クエリ発行時のエラー
B)R,Gurobiなど使用しているライブラリのエラー
C)その他プログラムのバグに依るエラー
D)最適化エンジンIFへの接続エラー
E)HW故障によるエラー
F)予測値と実績値の乖離が一定値以上の場合
【0384】
上記A〜Eのエラーが発生した場合制御ルールの更新が行えなくなる。影響範囲については、上記いずれのエラーが発生した場合も、処理ごとにデータを分けて管理しているためデータの不整合は起きない。また上記A〜Dのエラー発生時は、エラー発生の旨ログに出力する。A〜Cのエラー発生時は、先の処理に加え、制御ルール生成までの一連の処理が異常終了した旨を最適化エンジンIFに対して通知する。通知のためのプロトコル・インターフェースについては、11節にて記載する。これにより、A〜Cのエラー発生時においては、呼び出し側でエラーの発生を検知し、回避策を取ることが可能となる。また、上記Dのエラーが発生した際は最適化エンジンIFが制御ルール生成処理を起動することができないか、もしくは最適化エンジンIFに応答を返すことができない。これによりD、Eのエラー発生時においても呼び出し側での接続エラーを検知する、もしくは一定時間たっても応答がなかった場合応答を待たずに1世代前の制御ルールを取得しにいくことで、回避策をとることが可能となる。いずれの場合も1週間先までの制御ルールを保持しているため、1週間以内に障害が復旧すれば致命的な問題なく制御を行うことができる。また障害が1週間以上にわたる場合でも、前週同曜日の制御ルールを適用すれば前週と同様の制御を継続することができる。さらに何らかの原因で制御ルールが悪影響を及ぼす懸念が発覚した場合、全体最適計画による制御ルールをオフにして、STEP1の制御ルールで固定的な制御をおこなうこともできる。また上記Fについては、予測値と実績値の乖離幅、および乖離率がログに記載されるので、ログを監視しておくことで乖離幅が一定値以上の際にすぐに気付くことができる。
【0385】
16.保守運用
本システムにおけるバックアップ対象のデータはデータベース内のデータである。また障害監視のための監視項目はログファイルである。ログに出力するのは(1)各処理が正常終了したことおよびその日時、もしくは(2)データベースへの接続・クエリ発行時のエラー、R, Gurobiなど使用しているライブラリのエラー、最適化エンジンIFへの接続エラー、その他プログラムのバグに依るエラーなどが発生し異常終了したことおよびその日時とスタックトレース、または(3)予測値と実績値の間の乖離である。そのためログを監視することで(1)いつどの処理でエラーが発生したか、また(2)いつどの処理で処理の遅延が発生したか、また(3)予測が実績に対して著しく乖離していることを検知することができる。ただし(1)エラーが発生した原因およびの改修方法などや、(2)処理時間が規定値よりも長くかかっていることの原因およびその改修方法など、(3)予測が実績に対して著しく乖離していることをどのように判定するか、乖離の原因およびその改修方法などは詳細設計段階で決定する。また、ログファイルの出力先およびログファイル名は詳細設計段階で決定することとする。なお具体的なバックアップの手法や具体的な監視の手法、運用業務のフローについてはオペレーション担当者の運用に任される。
【0386】
17.システム非機能要件
17.1.性能要件
各処理においてDBからのデータ取得が完了した時から処理が終了した時間を計測し、その値を全ての処理について積算した処理時間の要件を下記のように定める。1戸分の制御ルール生成リクエストに対して、制御ルール生成処理が30分以内に終了すること。これは、1日に最低でも16件分の制御ルール生成処理を処理する必要性から、また、過去の類似実績から同程度の処理時間がかかることがわかっているためである。また、同時に発行された16戸分の制御ルール生成リクエストに対して、制御ルール生成処理が5時間以内に終了すること。
【0387】
最適化エンジン用I/Fが処理起動リクエストを行ってから、処理完了通知リクエストを受け取るまでの時間に関しては、ネットワーク状況や各種DBサーバの性能、リソース状況に依存するため、ここでは性能目標値を設定しない。そのため別途実機での測定を行う必要がある。
【0388】
17.2.セキュリティ
外部システムからの接続が特定されておりかつ限定的であるため、セキュリティについては考慮しない。
【0389】
17.3.信頼性
冗長構成、負荷バランスの制御といったシステムの信頼性に関する部分についてはオペレーション担当者の運用に任される。
【0390】
17.4.保守性
運用監視、データのバックアップといった保守運用についてはオペレーション担当者の運用に任される
【0391】
18.前提条件・制約条件
18.1.稼働制約
図204は、システム稼働の前提条件を例示する図である。この適用範囲は、種々の態様で拡張されてもよい。
【0392】
18.2.最適化の前提となる条件
最適化の実行に際しては、以下の前提条件がある。
・1住宅にはEV蓄電池あるいは定置型蓄電池いずれか1台が設置されている。
・各機器は他の機器の充電、放電、停止などの状態によらず、独立に制御可能(例えばEVの放充電制御が燃料電池やPVの稼働状況に依存せず可能)である。
・各機器は制御指令を受ければ遅れることなく動作し、指定された状態に遷移する。ただしFCが停止状態から起動状態に遷移するためには、1メッシュ時間の起動時間を必要とする。
・各機器は全て住宅に接続されていて、発電した電力は全ての家電需要に使用可能である。
・各機器で発電した電力は系統に逆潮流が可能。
・燃料電池は満湯時でもラジエータを使い放熱しながら連続運転が可能。連続運転の継続時間には上限はない。
・燃料電池の発電量は消費したガス燃料と比例の関係とする。
・燃料電池の発熱量は消費したガス燃料と比例の関係とする。
・ガスボイラによる発熱量は消費したガス燃料と比例の関係とする。
【0393】
19.参考資料
19.1.指定可能パラメータ一覧
図205〜
図207は、当システムにて指定可能なパラメータを下記に示す。これらは、プロパティ情報としてプロパティファイルに格納される。
【0394】
19.3.データベーステーブル一覧(論理設計)
図208〜
図210は、テーブル一覧を例示する図である。「中間データ」の列に丸印のあるテーブルについては、同一の項目を有するバックアップを作成する。
【0395】
19.4.テーブル別レコード数見積もり
図211および
図212は、各テーブルの格納レコード数の算出式と概算値を例示する図である。
図213は、概算値の算出に使用したパラメータの値を例示する図である。試算1の値は、システムをもいて行う実証実験(住宅数16戸)を想定した値、試算2の値は商用化(住宅数1万)を想定し、スパン長の短縮などにより処理の計量化・高速化をした値、試算3は、試算2に対して各テーブルを7日単位でパーティショニングした場合の値である。
【0396】
19.5.データベース項目一覧(論理設計)
図214〜
図250は、各テーブルのデータ項目一覧を例示する図である。なお、
図214〜
図250における注釈は以下のとおりである。
※1 最適化パラメータテーブルの同名項目に対応
※2 最適化エンジンパラメータテーブルの同名項目に対応
※3 時系列最適化パラメータの同名項目に対応
【0397】
20.まとめ
本稿で説明された発明は、例えば以下の例を含んでいる。以下の説明において異なる例の事項として説明された2以上の事項が組み合わせて用いられてもよい。なお、具体的な例の説明をする前に、まずシステム構成の概要を説明する。
【0398】
図251は、一実施形態に係る電力制御システム1の装置構成を例示する図である。電力制御システム1は、サーバ装置10と、端末装置20と、設備30と、サーバ装置40と、サーバ装置50とを有する。電力制御システム1は、いわゆるHEMSに関する。この例で、サーバ装置10は複数のHEMSを制御するが、図面を簡単にするため、
図251においては単一のHEMSのみ図示、すなわち単一の住宅のみ図示している。各住宅には、端末装置20、設備30、およびサーバ装置50が設けられている。
【0399】
設備30は電力を消費または供給する装置である。設備30は、電気機器、電力供給装置、熱供給装置、およびEV(電気自動車)のうち少なくとも2つを含む。設備30の具体例は、各住宅において異なっていてもよい。例えばある住宅の設備30にはEVが含まれ、別の住宅の設備30にはEVが含まれなくてもよい。電機機器は、例えばいわゆる家電である。電力供給装置は、他の装置に電力を供給する装置であり、例えば、PV(太陽電池)、FC(燃料電池)、および定置型蓄電池の少なくとも1つを含む。熱供給装置は、住宅に熱(具体的には例えば温水)を供給する装置であり、例えば燃料電池を用いたコージェネレーション装置を含む。
【0400】
端末装置20は、UIを提供する。すなわち、システム(例えばサーバ装置10)から提供される情報をユーザに提供し、また、ユーザからシステムに対する指示の入力を受け付ける。端末装置20は、例えば、タブレット端末、スマートフォンである。端末装置20は、上述の実施形態における端末機器である。端末装置20は、処理を実行するプロセッサ、データおよびプログラムを記憶するメモリおよびストレージ、ネットワークを介して通信する通信インターフェース、並びにUIを提供するための入出力装置を有する。
【0401】
サーバ装置50は、設備30の制御および管理を行う。サーバ装置50は、設備30の制御の実績データや、センサネットワークが取得した環境情報(例えば温度や湿度)を収集し、サーバ装置10に提供する。また、サーバ装置50は、サーバ装置10から提供される制御ルールに従って、設備30を制御する。サーバ装置50は、上述の実施形態におけるホームサーバである。なお、単一の装置が、端末装置20およびサーバ装置50の機能を有していてもよい。
【0402】
サーバ装置10は、各種のデータを解析し、設備30を制御するための制御ルール(すなわち制御情報)を、設備30に提供する。サーバ装置10が解析するデータには、例えば、設備30の制御の実績データ(EVの走行データを含む)、センサネットワークが収集した環境情報、気象データが含まれる。サーバ装置10は、上述の実施形態における情報管理サーバである。サーバ装置40は、各種のデータを提供するサーバ装置である。サーバ装置10、サーバ装置40、およびサーバ装置50は、処理を実行するプロセッサ、データおよびプログラムを記憶するメモリおよびストレージ、並びにネットワークを介して通信する通信インターフェースを有する。
【0403】
図252は、電力制御システム1の機能構成を例示する図である。電力制御システム1は、データベース部51と、予測部52と、制御ルール生成部53と、機器管理部54と、UI部55とを有する。データベース部51は、予測シナリオの生成に用いられるデータを記憶する。データベース部51は、各種のデータを記憶している。データベース部51は、EV走行データ記憶部511と、気象データ記憶部512と、カレンダー記憶部513と、分析用DB514とを有する。EV走行データ記憶部511は、EVの走行に関するデータであり、例えば、いつどのEVがどれくらいの距離を走行したかを示している。気象データ記憶部512は、気象に関するデータであり、例えば、過去の気象情報および将来の予報を示している。カレンダー記憶部513は、暦に関するデータであり、例えば日付、曜日、および祝祭日を示している。分析用DB514は、予測シナリオの生成に用いられるデータを集めたデータベースである。分析用DB514は、EV走行データ記憶部511から取得したデータ、気象データ記憶部512から取得したデータ、およびUI部55から入力されたデータ、機器管理部54により収集されたデータを含んでいる。
【0404】
予測部52は、予測シナリオを生成する。予測部52は、PV発電予測部521と、電力需要予測部522と、EV走行予測部523と、熱需要予測部524と、予測シナリオ記憶部525とを有する。PV発電予測部521はPVによる発電の予測シナリオを生成する。電力需要予測部522は電気機器による電力需要の予測シナリオを生成する。EV走行予測部523は、EV走行の予測シナリオを生成する。熱需要予測部524は、熱需要の予測シナリオを生成する。予測シナリオ記憶部525は、PV発電予測部521、電力需要予測部522、EV走行予測部523、および熱需要予測部524が生成した予測シナリオを記憶する。
【0405】
制御ルール生成部53は、予測部52が生成した予測シナリオを用いて制御ルールを生成する。制御ルール生成部53は、最適化計画算出部531と、最適化計画記憶部532と、制御ルール生成部533と、制御ルール記憶部534と、料金表テーブル535と、CO2排出管理表536と、目的関数定義表537とを有する。最適化計画算出部531は、予測シナリオおよび各種データ(例えば料金表テーブル535、CO2排出管理表536、および目的関数定義表537)を用いて、設備30の制御計画を最適化する。最適化された制御計画を最適化計画という。最適化計画記憶部532は、最適化計画を記憶する。制御ルール生成部533は、最適化計画に基づいて制御ルールを生成する。制御ルール記憶部534は、制御ルール生成部533により生成された制御ルールを記憶する。
【0406】
機器管理部54は、設備30を制御および管理する。機器管理部54は、状態収集部541と、ライフログ記憶部542と、予測/実績判定部543と、制御ルール実行管理部544と、機器制御部545とを有する。状態収集部541は、設備30の各々から、各種の状態を示す情報(例えば、家電の消費電力量、PVの発電量、室温等、すなわち実績値)を収集する。ライフログ記憶部542は、状態収集部541により収集された情報を記憶する。予測/実績判定部543は、予測シナリオおよび実績値のいずれを用いるか判断する。制御ルール実行管理部544は、制御ルール生成部53により生成された制御ルール、予測シナリオ、および実績値に応じて、制御ルールの実行を管理する。機器制御部545は、制御ルールに従って、設備30の各々を制御する。
【0407】
UI部55は、UIを提供する。UI部55は、制御計画表示部551と、モード選択部552と、機器予約部553とを有する。制御計画表示部551は、制御計画を表示する。制御計画は、例えば制御ルールから生成される。モード選択部552は、複数の最適化モードのうち一の最適化モードを、ユーザの指示に応じて選択する。機器予約部553は、設備30の予約(例えば、EVの使用予約、温水の使用予約、特定の電気機器の停止予約等)を行う。
【0408】
PV発電予測部521の具体例は、上述の実施形態におけるPV供給シナリオ作成サブモジュール(6.2.1節)である。電力需要予測部522の具体例は、家電電力需要シナリオ作成サブモジュール(6.1.1節)である。EV走行予測部523の具体例は、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール(6.1.2節)である。熱需要予測部524の具体例は、熱需要シナリオ作成サブモジュール(6.1.3節)である。最適化計画算出部531の具体例は、最適化計画サブモジュール(6.4.2節)である。制御ルール生成部533の具体例は、制御ルール生成サブモジュール(6.4.3節)である。
【0409】
一実施形態において、データベース部51は、サーバ装置40に実装される。予測部52および制御ルール生成部53は、サーバ装置10に実装される。機器管理部54およびUI部55は、端末装置20に実装される。各装置において、
図252に示される機能は、プログラムにより実行される。
【0410】
20.1.例1
例1は、統計的手法を用いて予測シナリオを生成する技術に関する。具体的には、例1は以下のように記載される。
【0411】
(例1−1)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の複数の予測シナリオおよび当該複数の予測シナリオの各々の発生確率を、当該設備の各々における過去の実績値の統計的処理を用いて算出する第1算出手段と、
前記設備において特定の予測シナリオの組み合わせが同時に発生する確率を、前記第1算出手段により算出された発生確率を用いて算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段により算出された発生確率が最大の予測シナリオの組み合わせを、統合シナリオとして出力する出力手段と
を有する情報処理システム。
【0412】
電力負荷となる装置は、電力を消費する装置である、制御対象となる装置は、オンおよぶオフ等の駆動がこの情報処理システムにより制御される装置である。電力負荷となる装置は、例えば、家電、LIB、およびEVである。制御対象となる装置は、例えば、LIB、EV、FC、制御可能な家電(例えば、エアーコンディショナー等、EchonetLiteで制御可能な機種)である、例えばLIBは、電力負荷となる装置であり、かつ、制御対象となる装置でもある。
【0413】
第1算出手段の具体例は、5.1.1節で説明されている予測シナリオを生成するサブモジュール、詳細には、家電電力需要シナリオ作成サブモジュール、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール、および熱需要シナリオ作成サブモジュールである(すなわち
図252の電力需要予測部522)。家電電力需要シナリオ作成サブモジュールについては、6.1.1節において概要が説明されており(例えば
図36)、また、13.2.1節において、家電電力の需要予測機能(予測シナリオ作成)について詳細に説明されている。また、EV電力需要シナリオ作成サブモジュールについては6.1.2節および13.2.2節において説明されている。
【0414】
第2算出手段および出力手段の具体例は、5.4.1節で説明されている統合シナリオ作成サブモジュールである。統合シナリオ作成サブモジュールについては、6.4.1節および13.4.1節において説明されている。
【0415】
情報処理システムの具体例は、
図252のサーバ装置10(
図3の情報管理サーバ)である。なお、この情報処理システムは、物理的に単一の装置により構成されてもよいし、ネットワークを介して接続された複数の装置群(例えば各住宅に設置されたサーバとネットワーク上の情報管理サーバ)により構成されてもよい。この情報処理システムは、ネットワーク上のサーバ装置を含んでいてもよい(いわゆるクラウド上のサーバ装置を含んでいてもよい)し、各住宅に設置されるサーバ装置および端末装置の少なくともいずれか一方のみにより構成されてもよい。
【0416】
ユーザは不確定な行動をとるため、単一の予測シナリオを用いることは予測の外れを引き起こす可能性がある。しかし、この例では、各々発生確率が得られた複数の予測シナリオを用いることで、予測の精度を高めることができる。
【0417】
(例1−2)
前記設備の各々における過去の実績値を所定の基準により複数のカテゴリーに区分し、当該複数のカテゴリーの各々に対応する実績値から、当該複数のカテゴリーの各々について需給のパターンを取得する第1取得手段を有し、
前記第1算出手段は、前記第1取得手段により取得された需給のパターンのうち、予測の対象となる期間に対応するパターンを用いて、前記複数の予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例1−1に記載の情報処理システム。
【0418】
過去の実績値が複数のカテゴリーに区分されること、および予測の対象となる期間に対応する需要基本パターンが用いられることについては、6.1.1.1.1節で説明されている(
図35)。なお、予測の対象となる期間の単位は1日に限定されない。週、時、分など、日以外の期間を単位として予測が行われてもよい。
【0419】
(例1−3)
前記予測の対象となる期間の環境の予測を取得する第2取得手段と、
前記実績値が得られたときの前記環境を示す環境情報を前記複数のカテゴリーに区分して記憶したデータベースから、前記予想の対象となる期間に対応するカテゴリーの環境情報を取得する第3取得手段と、
前記第2手段により取得された環境情報および前記第3取得手段により取得された環境情報の差を算出する第3算出手段と
を有し、
前記第1算出手段は、前記パターンおよび前記第3算出手段により算出された差を用いて、前記複数の予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例1−2に記載の情報処理システム。
【0420】
第2取得手段、第3取得手段、および第3算出手段の具体例は、家電電力需要シナリオ作成サブモジュールである。例えば
図36には、気象情報会社より天気予報を取得し、取得した天気予報に応じて将来の基本需要パターンを設定し、これと気温差(環境情報の差の一例)を用いて、予測シナリオを生成することが記載されている。
【0421】
(例1−4)
前記第1算出手段は、前記差について所定の確率分布を仮定し、当該確率分布において当該差を複数の区間に分割し、当該複数の区間の各々の代表値に対応する発生確率を用いて、前記複数の予測シナリオの各々の発生確率を算出する
ことを特徴とする例1−3に記載の情報処理システム。
【0422】
環境情報の差について所定の確率分布(例えば正規分布)を仮定すること、この確率分布において差を複数の区間に分割すること、各区間の代表値に対応する発生確率を用いることは6.1.1.4.2節および6.1.1.4.3節(
図43)に記載されている。
【0423】
(例1−5)
前記第1算出手段は、前記パターンに対して前記複数の区間の代表値を加減することにより、前記複数の予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例1−4に記載の情報処理システム。
【0424】
各区間の代表値を基本需要パターンに加減することは、6.1.1.4.1節に記載されている。
【0425】
(例1−6)
前記出力手段により出力された統合シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を最適化する最適化手段
を有する例1−1ないし5のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0426】
最適化手段の具体例は、5.4.1節で説明されている最適化計画サブモジュールである(すなわち
図252の最適化計画算出部531)。
【0427】
(例1−7)
前記最適化手段により最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成する生成手段
を有する例1−6に記載の情報処理システム。
【0428】
生成手段の具体例は、5.4.1節で説明されている制御ルール生成サブモジュールである(すなわち
図252の制御ルール生成部533)。
【0429】
(例1−8)
コンピュータに、
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の複数の予測シナリオおよび当該複数の予測シナリオの各々の発生確率を、当該設備の各々における過去の実績値の統計的処理を用いて算出するステップと、
前記複数のモデルにおいて特定の予測シナリオの組み合わせが同時に発生する確率を、前記算出された発生確率を用いて算出するステップと、
前記算出された発生確率が最大の予測シナリオの組み合わせを、統合シナリオとして出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【0430】
(例1−9)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の複数の予測シナリオおよび当該複数の予測シナリオの各々の発生確率を、当該設備の各々における過去の実績値の統計的処理を用いて算出するステップと、
前記設備において特定の予測シナリオの組み合わせが同時に発生する確率を、前記算出された発生確率を用いて算出するステップと、
前記算出された発生確率が最大の予測シナリオの組み合わせを、統合シナリオとして出力するステップと
を有する電力制御方法。
【0431】
(例1−10)
例1−1ないし7のいずれか一項に記載の情報処理システムと、
前記情報処理システムと通信する通信端末と、
前記設備と
を有する電力制御システム。
【0432】
20.2.例2
例2は、機器の使用予定を反映して予測シナリオを生成する技術に関する。具体的には、例2は以下のように記載される。
【0433】
(例2−1)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備のうち少なくとも1つについての使用予定を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された使用予定を反映して、前記設備の各々について電力需給の予測シナリオを生成する生成手段と
を有する情報処理システム。
【0434】
取得手段の具体例は、
図252の分析用DB514である。分析用DB514は、機器予約部553から入力された、機器の予約すなわち使用予定を示す情報を取得し、取得した情報を記憶している。
【0435】
生成手段の具体例は、EV電力需要予測シナリオ作成サブモジュールおよび熱需要予測サブモジュールである。6.1.2.3節には、EV利用予約を電力需要量換算することが記載されている。熱需要予測サブモジュールについては6.1.3節に記載されているが、熱需要予測サブモジュールにおいてEVと同様に利用予約を熱需要量換算して予測に反映してもよい。
【0436】
例えばある住宅にPVおよびFCの両方が備えられている場合のように、電力供給装置が複数ある場合、日常的な利用で発電量が余ることがあるが、この例によれば、例えばFCの使用予定がユーザにより入力されていれば、これを反映して予測シナリオ(ひいては制御ルール)を生成することにより、ユーザの利便性と電力量の有効活用とを両立させることができる。
【0437】
(例2−2)
前記取得手段は、ユーザの操作入力に応じて前記使用予定を取得する
ことを特徴とする例2−1に記載の情報処理システム。
【0438】
使用予定は、ユーザによる機器予約部553の操作に応じて入力されてもよい。
【0439】
(例2−3)
前記取得手段は、過去の使用実績を示すデータから抽出された周期的な使用パターンに基づいて、前記使用予定を取得する
ことを特徴とする例2−1に記載の情報処理システム。
【0440】
この例で、サーバ装置10は、ライフログ記憶部542に記憶されている過去の使用実績を示すデータから、周期的な使用パターン(例えば、月曜から金曜までの日中はEVを使用しているが、土日は使用頻度が低い、等)を抽出する。サーバ装置10は、抽出した使用パターンを電力需要に換算し、予測シナリオの生成に反映する。
【0441】
(例2−4)
前記生成手段は、前記取得手段により使用予定が取得された期間については当該使用予定を用いて、当該使用予定が取得された期間以外の期間については、過去の実績値の統計処理を用いて前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例2−1ないし3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0442】
この例で、サーバ装置10は、使用予定が取得された期間(例えば、機器予約部553から使用予定が入力された期間、またはライフログ記憶部542に記憶されている過去の使用実績から抽出された周期的な使用パターンにより使用が示された期間)についてはその使用予定を電力需要に換算し、それ以外の期間については過去の実績値の統計処理により予測シナリオを生成する。
【0443】
(例2−5)
前記電力供給装置が、太陽光発電装置を含み、
前記熱供給装置が、コージェネレーション装置を含む
ことを特徴とする例2−1ないし4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0444】
(例2−6)
前記生成手段により生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を最適化する最適化手段と、
前記最適化手段により最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成する生成手段と
を有する例2−1ないし5のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0445】
最適化手段の具体例は、5.4.1節で説明されている最適化計画サブモジュールである(すなわち
図252の最適化計画算出部531)。生成手段の具体例は、5.4.1節で説明されている制御ルール生成サブモジュールである(すなわち
図252の制御ルール生成部533)。
【0446】
(例2−7)
コンピュータに、
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備のうち少なくとも1つについての使用予定を取得するステップと、
前記取得された使用予定を反映して、前記設備の各々について電力需給の予測シナリオを生成するステップと
を実行させるためのプログラム。
【0447】
(例2−8)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備のうち少なくとも1つについての使用予定を取得するステップと、
前記取得された使用予定を反映して、前記設備の各々について電力需給の予測シナリオを生成するステップと
を有する電力制御方法。
【0448】
(例2−9)
例2−1ないし6のいずれか一項に記載の情報処理システムと、
前記情報処理システムと通信する通信端末と、
前記設備と
を有する電力制御システム。
【0449】
20.3.例3
例3は、環境モードを含む1以上の最適化モードの中から選択された最適化モードにより制御ルールを生成する技術に関する。具体的には、例3は以下のように記載される。
【0450】
(例3−1)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の予測シナリオを生成する第1生成手段と、
前記第1生成手段により生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を最適化をする最適化手段であって、前記最適化のアルゴリズムが、前記設備で使用される電力を生成するための二酸化炭素排出量を最小化する第1モードを含む1以上の動作モードに対応する複数のアルゴリズムを含み、当該1以上の動作モードから選択された一の動作モードに従って前記最適化を行う最適化手段と、
前記最適化手段により最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成する第2生成手段と
を有する情報処理システム。
【0451】
第1生成手段の具体例は、5.1.1節で説明されている予測シナリオを生成するサブモジュール、詳細には、家電電力需要シナリオ作成サブモジュール、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール、および熱需要シナリオ作成サブモジュールである(すなわち
図252の電力需要予測部522)。家電電力需要シナリオ作成サブモジュールについては、6.1.1節において概要が説明されており(例えば
図36)、また、13.2.1節において、家電電力の需要予測機能(予測シナリオ作成)について詳細に説明されている。また、EV電力需要シナリオ作成サブモジュールについては6.1.2節および13.2.2節において説明されている。
【0452】
最適化手段の具体例は、5.4.1節で説明されている最適化計画サブモジュールである(すなわち
図252の最適化計画算出部531)。また、二酸化炭素排出量を最小化する第1モードの具体例は、環境(エコ)モードであり、3.2節および
図6で説明されている。
【0453】
第2生成手段の具体例は、5.4.1節で説明されている制御ルール生成サブモジュールである(すなわち
図252の制御ルール生成部533)。
【0454】
従前のHEMSは、売電を最大化することや、運転効率を高めることを目的としていたが、この例によれば、二酸化炭素排出量の削減という新たな価値を生み出している。
【0455】
(例3−2)
前記設備の各々について、電力需給の複数の予測シナリオおよび当該複数の予測シナリオの各々の発生確率を、当該設備の各々における過去の実績値の統計的処理を用いて算出する第1算出手段と、
前記設備において前記生成手段により生成された予測シナリオのうち特定の予測シナリオの組み合わせが同時に発生する確率を、前記第1算出手段により算出された発生確率を用いて算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段により算出された発生確率が最大の予測シナリオの組み合わせを、統合シナリオとして出力する出力手段と
を有し、
前記最適化手段は、前記出力手段により出力された統合シナリオを用いて前記最適化を行う
ことを特徴とする例3−1に記載の情報処理システム。
【0456】
第1算出手段の具体例は、5.1.1節で説明されている予測シナリオを生成するサブモジュール、詳細には、家電電力需要シナリオ作成サブモジュール、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール、および熱需要シナリオ作成サブモジュールである(すなわち
図252の電力需要予測部522)。家電電力需要シナリオ作成サブモジュールについては、6.1.1節において概要が説明されており(例えば
図36)、また、13.2.1節において、家電電力の需要予測機能(予測シナリオ作成)について詳細に説明されている。また、EV電力需要シナリオ作成サブモジュールについては6.1.2節および13.2.2節において説明されている。
【0457】
第2算出手段および出力手段の具体例は、5.4.1節で説明されている統合シナリオ作成サブモジュールである。統合シナリオ作成サブモジュールについては、6.4.1節および13.4.1節において説明されている。
【0458】
(例3−3)
前記第1モードに対応するアルゴリズムは、前記電気機器、前記電力供給装置、および前記熱供給装置におけるガスの燃焼により発生する二酸化炭素排出量に基づいて算出される二酸化炭素排出量を最小化するアルゴリズムである
ことを特徴とする例3−1または2に記載の情報処理システム。
【0459】
二酸化炭素排出量を最小化するアルゴリズムについては、6.4.2.3.3節および
図78において説明された目的関数において、系統電力単価、および燃料単価の項目に排出二酸化炭素量に相当する数値を設定することが記載されている(
図79)。
【0460】
(例3−4)
前記電力供給装置は、
燃料を水蒸気改質して水素ガスを得る改質器と、
前記改質器により得られた水素と空気中の酸素を反応させて電力を発生させる燃料電池部と
を有し、
前記第1モードに対応するアルゴリズムは、前記改質器における二酸化炭素発生量に基づいて算出される二酸化炭素排出量を最小化するアルゴリズムである
ことを特徴とする例3−3に記載の情報処理システム。
【0461】
この例において、サーバ装置10は、コージェネレーション装置における改質器における二酸化炭素発生量を考慮してもよい。改質器における二酸化炭素発生量は、例えば、ガスによる給湯コストおよび排熱のコストを示す目的関数(
図78)において、燃料単価の項目に排出二酸化炭素量に相当する数値を設定すればよい。
【0462】
(例3−5)
前記第1モードに対応するアルゴリズムは、前記住宅において用いられる系統電力の電力組成に基づいて得られる二酸化炭素排出量を最小化するアルゴリズムである
ことを特徴とする例3−3または4に記載の情報処理システム。
【0463】
この例において、サーバ装置10は、系統電力に起因する二酸化炭素発生量を考慮してもよい。系統電力に起因する二酸化炭素発生量は、電力組成に基づいて推定される。電力組成とは、発電方法別の電力の割合をいう。例えば、系統電力における、火力発電、水力発電、および原子力発電の割合がデータベース等から提供される。さらに、発電方法毎に、単位電力量あたりの二酸化炭素発生量がデータベース等から提供される。
【0464】
(例3−6)
コンピュータに、
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の予測シナリオを生成するステップと、
前記生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を最適化をするステップであって、前記最適化のアルゴリズムが、前記設備で使用される電力を生成するための二酸化炭素排出量を最小化する第1モードを含む1以上の動作モードに対応する複数のアルゴリズムを含み、当該1以上の動作モードから選択された一の動作モードに従って前記最適化を行うステップと、
前記最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成するステップと
を実行させるためのプログラム。
【0465】
(例3−7)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の予測シナリオを生成するステップと、
前記生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を最適化をするステップであって、前記最適化のアルゴリズムが、前記設備で使用される電力を生成するための二酸化炭素排出量を最小化する第1モードを含む1以上の動作モードに対応する複数のアルゴリズムを含み、当該1以上の動作モードから選択された一の動作モードに従って前記最適化を行うステップと、
前記最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成するステップと
を有する電力制御方法。
【0466】
(例3−8)
例3−1ないし5のいずれか一項に記載の情報処理システムと、
前記情報処理システムと通信する通信端末と、
前記設備と
を有する電力制御システム。
【0467】
20.4.例4
例4は、それぞれ目的関数が異なる複数の最適化モードの中から選択された最適化モードにより制御ルールを生成する技術に関する。具体的には、例4は以下のように記載される。
【0468】
(例4−1)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の予測シナリオを生成する第1生成手段と、
前記第1生成手段により生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を、目的関数を用いた確率計画法により最適化をする最適化手段であって、前記最適化のアルゴリズムが、各々異なる目的関数を用いる複数の動作モードに対応する複数のアルゴリズムを含み、当該複数の動作モードから選択された一の動作モードに従って前記最適化を行う最適化手段と、
前記最適化手段により最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成する第2生成手段と
を有する情報処理システム。
【0469】
第1生成手段の具体例は、5.1.1節で説明されている予測シナリオを生成するサブモジュール、詳細には、家電電力需要シナリオ作成サブモジュール、EV電力需要シナリオ作成サブモジュール、および熱需要シナリオ作成サブモジュールである(すなわち
図252の電力需要予測部522)。家電電力需要シナリオ作成サブモジュールについては、6.1.1節において概要が説明されており(例えば
図36)、また、13.2.1節において、家電電力の需要予測機能(予測シナリオ作成)について詳細に説明されている。また、EV電力需要シナリオ作成サブモジュールについては6.1.2節および13.2.2節において説明されている。
【0470】
最適化手段の具体例は、5.4.1節で説明されている最適化計画サブモジュールである(すなわち
図252の最適化計画算出部531)。また、複数の動作モードの具体例は、複数の最適化モードであり、3.2節および
図6で説明されている。
【0471】
第2生成手段の具体例は、5.4.1節で説明されている制御ルール生成サブモジュールである(すなわち
図252の制御ルール生成部533)。
【0472】
この例によれば、ユーザの要望に応じたより柔軟な電力制御が提供される。
【0473】
(例4−2)
前記複数の目的関数は、買電に関するコストを示す第1目的関数を含み、
前記複数の動作モードは、二酸化炭素排出量を最小にする第1モードを含み、
前記第1モードにおいて、前記第1目的関数における係数として二酸化炭素排出量に応じた数値が用いられる
ことを特徴とする例4−1に記載の情報処理システム。
【0474】
第1目的関数の具体例は、
図78に記載されている、買電に関するコストを示す目的関数である。第1モードの具体例は、
図79に記載されている環境モードである。
【0475】
(例4−3)
前記複数の目的関数は、買電に関するコストを示す第1目的関数および燃料に関するコストを示す第2目的関数を含み、
前記複数の動作モードは、電力および燃料の費用を最小化する第2モードを含み、
前記第2モードにおいて、前記第1目的関数における係数として系統電力の費用に応じた数値が用いられ、前記第2目的関数における係数として燃料の費用に応じた数値が用いられる
ことを特徴とする例4−1に記載の情報処理システム。
【0476】
第2目的関数の具体例は、
図78に記載されている、燃料電池に投下される燃料コストおよび起動・停止に関係するコストを示す目的関数である。第2モードの具体例は、
図79に記載されている経済モードである。
【0477】
(例4−4)
前記複数の目的関数は、買電に関するコストを示す第1目的関数を含み、
前記複数の動作モードは、買電量を最小化する第3モードを含み、
前記第3モードにおいて、前記第1目的関数における係数として系統電力の費用に応じた数値が用いられる
ことを特徴とする例4−1に記載の情報処理システム。
【0478】
第3モードの具体例は、
図79に記載されている自給自足モードである。
【0479】
(例4−5)
前記複数の目的関数は、前記電気自動車における蓄電池の切り換えおよび残量に関するコストを示す第3目的関数を含み、
前記複数の動作モードは、前記蓄電池における電力残量を最大化する第4モードを含み、
前記第4モードにおいて、前記第3目的関数における係数として電池残量に対するペナルティに応じた数値が用いられる
ことを特徴とする例4−1に記載の情報処理システム。
【0480】
第3目的関数の具体例は、
図78に記載されている、EV蓄電池の切り換えおよび残量に関するコストを示す目的関数である。第4モードの具体例は、
図79に記載されている充電優先モードである。
【0481】
(例4−6)
前記電力供給装置は、定置型の蓄電池を含み、
前記複数の目的関数は、前記蓄電池の切り換えおよび残量に関するコストを示す第4目的関数を含み、
前記複数の動作モードは、前記蓄電池における電力残量を最大化する第4モードを含み、
前記第4モードにおいて、前記第4目的関数における係数として電池残量に対するペナルティに応じた数値が用いられる
ことを特徴とする例4−1に記載の情報処理システム。
【0482】
第4目的関数の具体例は、
図78に記載されている、定置型蓄電池の切換えおよび残量に関するコストを示す目的関数である。
【0483】
(例4−7)
前記複数の目的関数は、買電に関するコストを示す第1目的関数、および前記電気自動車における蓄電池の切り換えおよび残量に関するコストを示す第3目的関数または定置型蓄電池の切り換えおよび残量に関するコストを示す第4目的関数を含み、
前記複数の動作モードは、系統電力を解列し、自立運転期間を最大化する第5モードを含み、
前記第5モードにおいて、前記第1目的関数における係数として系統電源からの潮流量をゼロにする数値が用いられ、前記電気自動車における蓄電池または前記定置型蓄電池の電池残量に対するペナルティに応じた数値が用いられる
ことを特徴とする例4−1に記載の情報処理システム。
【0484】
第5モードの具体例は、
図79に記載されている非常モードである。
【0485】
(例4−8)
コンピュータに、
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の予測シナリオを生成するステップと、
前記生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を、目的関数を用いた確率計画法により最適化をするステップであって、前記最適化のアルゴリズムが、各々異なる目的関数を用いる複数の動作モードに対応する複数のアルゴリズムを含み、当該複数の動作モードから選択された一の動作モードに従って前記最適化を行うステップと、
前記最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成するステップと
を実行させるためのプログラム。
【0486】
(例4−9)
電気機器、電力供給装置、熱供給装置、および電気自動車のうち電力負荷となる装置を1つ以上かつ制御対象となる装置を1つ以上含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、電力需給の予測シナリオを生成するステップと、
前記生成された予測シナリオを用いて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車の制御計画を、目的関数を用いた確率計画法により最適化をするステップであって、前記最適化のアルゴリズムが、各々異なる目的関数を用いる複数の動作モードに対応する複数のアルゴリズムを含み、当該複数の動作モードから選択された一の動作モードに従って前記最適化を行うステップと、
前記最適化された制御計画に基づいて、前記電気機器、前記電力供給装置、前記熱供給装置、および前記電気自動車のうち少なくとも1つを制御する制御ルールを生成するステップと
を有する電力制御方法。
【0487】
(例4−10)
例4−1ないし7のいずれか一項に記載の情報処理システムと、
前記情報処理システムと通信する通信端末と、
前記設備と
を有する電力制御システム。
【0488】
20.5.例5
例5は、統計的手法を用いて予測シナリオを生成する技術に関する。具体的には、例1は以下のように記載される。
【0489】
例5−1から例5−10までは、予測シナリオの生成に関する。具体的には、6.1.1節において概要が説明されている家電電力需要シナリオ作成サブモジュールの機能に関する。
【0490】
(例5−1)
負荷装置および制御対象装置を含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、予測の対象となる対象期間における電力需給の複数の予測シナリオを生成する第1生成手段と、
前記複数の予測シナリオの各々について、当該予測シナリオの発生確率を算出する第1算出手段と、
前記第1算出手段により算出された発生確率に基づいて、前記設備の各々について1つずつ予測シナリオを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された予測シナリオの組み合わせに基づいて、前記設備の制御計画を生成する第2生成手段と
を有する情報処理システム。
【0491】
(例5−2)
前記第1生成手段は、前記設備のうち少なくとも1の装置について、当該装置における過去の電力需要の実績値の統計的処理結果を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−1に記載の情報処理システム。
【0492】
(例5−3)
前記第1生成手段は、前記設備のうち少なくとも1の装置について、前記実績値を所定の基準で複数のパターンに分類し、当該複数のパターンのうち、前記対象期間に対応するパターンを用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−2に記載の情報処理システム。
【0493】
(例5−4)
前記基準は、カレンダーに関する事項を含む
ことを特徴とする例5−3に記載の情報処理システム。
【0494】
(例5−5)
前記基準は、気候に関する事項を含む
ことを特徴とする例5−3または4に記載の情報処理システム。
【0495】
(例5−6)
前記第1生成手段は、前記設備のうち少なくとも1の装置について、当該装置における電力需要の過去の予測シナリオと当該予測シナリオに対応する実績値との差の統計的処理結果、および前記パターンの組み合わせにより、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−3ないし5に記載の情報処理システム。
【0496】
(例5−7)
前記第1生成手段は、前記差についての所定の数理モデルにおけるパラメーターを、前記差の統計的処理結果を用いて決定し、当該決定されたパラメーターを用いた当該数理モデルを用いて前記パターンにおける予測値の振れ幅を算出し、当該算出された振れ幅を用いて前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−6に記載の情報処理システム。
【0497】
(例5−8)
前記第1算出手段は、前記差について所定の確率分布を仮定し、当該確率分布において当該差を複数の区間に分割し、当該複数の区間の各々の代表値に対応する発生確率を用いて、前記複数の予測シナリオの各々の発生確率を算出する
ことを特徴とする例5−7に記載の情報処理システム。
【0498】
(例5−9)
前記第1生成手段は、前記パターンに対して前記代表値を加減することにより、前記複数の予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−8に記載の情報処理システム。
【0499】
(例5−10)
前記第1生成手段は、前記設備のうち少なくとも1の装置について、当該装置における電力需要の過去の予測シナリオに対して、当該予測シナリオと対応する実績値との差の統計的処理結果を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−2に記載の情報処理システム。
【0500】
例5−11から例5−14までは、予測シナリオの生成に関する。具体的には、6.1.2節において概要が説明されているEV電力需要シナリオ作成サブモジュールの機能に関する。
【0501】
(例5−11)
前記設備は、電気自動車を含み、
前記電気自動車の使用予定を取得する取得手段を有し、
前記第1生成手段は、前記電気自動車については、前記取得手段により取得された使用予定を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−1ないし10のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0502】
(例5−12)
前記取得手段は、ユーザの操作入力に応じて前記使用予定を取得する
ことを特徴とする例5−11に記載の情報処理システム。
【0503】
(例5−13)
前記電気自動車の過去の使用実績を示すデータから、周期的な使用パターンを抽出する抽出手段を有し、
前記取得手段は、前記抽出手段により抽出された使用パターンを、前記使用予定として取得する
ことを特徴とする例5−11に記載の情報処理システム。
【0504】
(例5−14)
前記第1生成手段は、曜日毎に区分された前記電気自動車の過去の使用実績のうち前記対象期間に対応する曜日の使用実績の中から所定の条件を満たす使用実績を抽出し、当該抽出された使用実績に基づいて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−11ないし13のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0505】
例5−15から例5−19までは、予測シナリオの生成に関する。具体的には、6.1.2節において概要が説明されているEV電力需要シナリオ作成サブモジュールの機能を、給湯装置に適用したものである。
【0506】
(例5−15)
前記設備は、給湯装置を含み、
前記給湯装置の使用予定を取得する取得手段を有し、
前記第1生成手段は、前記給湯装置については、前記取得手段により取得された使用予定を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−1ないし10のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0507】
(例5−16)
前記取得手段は、ユーザの操作入力に応じて前記使用予定を取得する
ことを特徴とする例5−15に記載の情報処理システム。
【0508】
(例5−17)
前記給湯装置の過去の使用実績を示すデータから、周期的な使用パターンを抽出する抽出手段を有し、
前記取得手段は、前記抽出手段により抽出された使用パターンを、前記使用予定として取得する
ことを特徴とする例5−15に記載の情報処理システム。
【0509】
(例5−18)
前記第1生成手段は、曜日毎に区分された前記給湯装置の過去の使用実績のうち前記対象期間に対応する曜日の使用実績の中から所定の条件を満たす使用実績を抽出し、当該抽出された使用実績に基づいて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−15ないし17のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0510】
(例5−19)
前記第1算出手段は、前記使用予定に対応する予測シナリオに所定の発生確率を割り当て、前記使用実績に基づいて生成された予測シナリオには、残りの発生確率を均等に割り当てることにより、前記複数の予測シナリオの各々について発生確率を算出する
ことを特徴とする例5−14または18に記載の情報処理システム。
【0511】
例5−20から例5−28までは、予測シナリオの生成に関する。具体的には、6.1.3節において概要が説明されている熱需要シナリオ作成サブモジュールの機能に関する。
【0512】
(例5−20)
前記設備は、熱供給装置を含み、
前記第1生成手段は、前記熱供給装置について、当該装置における過去の熱需要の実績値の統計的処理結果を用いて、前記対象期間における熱需給の複数の予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−1ないし19のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0513】
(例5−21)
前記第1生成手段は、前記熱供給装置について、前記実績値を所定の基準で複数のカテゴリーに分類し、当該複数のカテゴリーのうち、前記対象期間に対応するカテゴリーに属する実績値を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−20に記載の情報処理システム。
【0514】
(例5−22)
前記基準は、カレンダーに関する事項を含む
ことを特徴とする例5−21に記載の情報処理システム。
【0515】
(例5−23)
前記基準は、気候に関する事項を含む
ことを特徴とする例5−21または22に記載の情報処理システム。
【0516】
(例5−24)
前記第1生成手段は、前記熱供給装置について、前記対象期間に対応するカテゴリーに属する実績値のうち、前記対象期間と最高気温の差が所定の条件を満たす実績値を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−21ないし23に記載の情報処理システム。
【0517】
(例5−25)
前記第1生成手段は、前記熱供給装置における熱需要の過去の予測シナリオに対して、当該予測シナリオと対応する実績値との差の統計的処理結果を用いて、前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−20に記載の情報処理システム。
【0518】
(例5−26)
前記第1生成手段は、前記差について所定の確率分布を仮定し、当該確率分布において当該差を複数の区間に分割し、当該複数の区間の各々の代表値を用いて、前記複数の予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−25に記載の情報処理システム。
【0519】
(例5−27)
前記第1算出手段は、前記統計的処理結果を用いて、前記発生確率を算出する
ことを特徴とする例5−25または26に記載の情報処理システム。
【0520】
(例5−28)
前記第1算出手段は、前記確率分布において前記複数の区間の各々の代表値に対応する発生確率を用いて、前記発生確率を算出する
ことを特徴とする例5−26に記載の情報処理システム。
【0521】
例5−29から例5−30までは、予測シナリオの組み合わせの選択に関する。具体的には、6.4.1節において概要が説明されている統合シナリオ作成サブモジュールの機能に関する。
【0522】
(例5−29)
前記設備において特定の予測シナリオの組み合わせが同時に発生する確率を、前記第1算出手段により算出された発生確率を用いて算出する第2算出手段を有し、
前記選択手段は、前記第2算出手段により算出された発生確率が最大の予測シナリオの組み合わせを選択する
ことを特徴とする例5−1ないし28のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0523】
(例5−30)
前記設備の各々について得られた予測シナリオに対応する誤差の時系列データから、前記設備の各々の間の相関を推定する推定手段を有し、
前記第2算出手段は、前記推定手段により得られた相関および多次元正規密度関数から、前記組み合わせの発生確率を算出する
ことを特徴とする例5−29に記載の情報処理システム。
【0524】
例5−31から例5−34は、モデルによる推定を行うタイミング(各種計算のタイミングまたは頻度)に関する。なおこの点について上述の実施形態では詳細には言及されていないので以下で説明する。実施形態におけるシステムでは、予測シナリオ(予測値)が外れた場合、すなわち、例えば予測シナリオと実績値との差が所定の範囲(しきい値)を超えた場合にどのような処理を行うかが問題となる。
【0525】
この問題の対処方法としては、例えば以下の3つの方法がある。第1の方法は、モデルのパラメーターを頻繁に(例えばメッシュに相当する時間間隔で)更新し、常に最新の実績値を反映した予測を行なう方法である。この方法は、より高精度の予測が行えるという利点があるが、計算の負荷が増大するという問題がある。第2の方法は、予測シナリオと実績値との差が所定の範囲内にあるうちはモデルのパラメーターを更新せず、予測シナリオと実績値との差がこの範囲内を超えた場合にモデルのパラメーターを更新する方法である。第3の方法は、第2の方法は、予測シナリオと実績値との差がこの範囲を超えた場合は制御を一時的に中断し、実績値が計画値に再び入ってきたときに制御を再開する方法である。
【0526】
(例5−31)
前記第1生成手段は、
前記設備のうち少なくとも1の装置について、当該装置における電力需要の過去の予測シナリオと当該予測シナリオに対応する実績値との差の統計的処理結果を用いて前記予測シナリオを生成し、
前記差についての所定の数理モデルにおけるパラメーターを、前記差の統計的処理結果を用いて決定し、
当該決定されたパラメーターを用いた当該数理モデルを用いて前記パターンにおける予測値の振れ幅を算出し、
当該算出された振れ幅を用いて前記予測シナリオを生成する
ことを特徴とする例5−1ないし30のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【0527】
(例5−32)
前記第1生成手段は、前記予測シナリオの生成が指示されるたびに、前記パラメーターを決定する
ことを特徴とする例5−31に記載の情報処理システム。
【0528】
(例5−33)
前記予測シナリオに対応する実績値と当該予測シナリオとの差が所定の範囲を超えていた場合、前記選択手段は、当該実績値に基づいて予測シナリオを選択し直し、
前記第1算出手段は、前記選択し直された予測シナリオの各々について、当該予測シナリオの発生確率を算出する
ことを特徴とする例5−31に記載の情報処理システム。
【0529】
(例5−34)
前記予測シナリオに対応する実績値と当該予測シナリオとの差が所定の範囲を超えていた場合、前記第2生成手段は、前記設備の制御を一時的に中断させる制御計画を生成し、
前記予測シナリオに対応する実績値と当該予測シナリオとの差が所定の範囲に入った場合、前記第2生成手段は、前記設備の制御を一時的に中断させる制御計画を生成する
ことを特徴とする例5−31に記載の情報処理システム。
【0530】
例5−35から例5−38は、例5−1ないし例5−34の他の態様に関する。実施形態において説明した、需要モジュールの各サブモジュールの機能は、相互に入れ換えまたは組み合わせられてもよい。例えば、家電電力需要シナリオ作成サブモジュールにおいて、EV需要シナリオ作成サブモジュールと同様に、使用予定に基づいた予測シナリオの生成が行なわれてもよい。また、EV需要シナリオ作成サブモジュールにおいて、家電電力需要シナリオ作成サブモジュールと同様に、数理モデルに基づいた予測シナリオの生成が行われてもよい。また、数理モデルのパラメーターは、過去の実績値の統計処理により決定されてもよい。
【0531】
(例5−35)
前記設備が熱供給装置および電気自動車のうち少なくとも一方を含む
ことを特徴とする例5−1に記載の情報処理システム。
【0532】
(例5−36)
コンピュータに、
負荷装置および制御対象装置を含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、予測の対象となる対象期間における電力需給の複数の予測シナリオを生成するステップと、
前記複数の予測シナリオの各々について、当該予測シナリオの発生確率を算出するステップと、
前記算出された発生確率に基づいて、前記設備の各々について1つずつ予測シナリオを選択するステップと、
前記選択された予測シナリオの組み合わせに基づいて、前記設備の制御計画を生成するステップと
を実行させるためのプログラム。
【0533】
(例5−37)
負荷装置および制御対象装置を含む設備を有する住宅における、当該設備の各々について、予測の対象となる対象期間における電力需給の複数の予測シナリオを生成するステップと、
前記複数の予測シナリオの各々について、当該予測シナリオの発生確率を算出するステップと、
前記算出された発生確率に基づいて、前記設備の各々について1つずつ予測シナリオを選択するステップと、
前記選択された予測シナリオの組み合わせに基づいて、前記設備の制御計画を生成するステップと
を有する電力制御方法。
【0534】
(例5−38)
例5−1ないし37のいずれか一項に記載の情報処理システムと、
前記情報処理システムと通信する通信端末と、
前記設備と
を有する電力制御システム。