特許第6109646号(P6109646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109646
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】間仕切りパネル用の垂直調整装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 7/04 20060101AFI20170327BHJP
   E05D 15/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   E05F7/04
   E05D15/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-111473(P2013-111473)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-231670(P2014-231670A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000184621
【氏名又は名称】小松ウオール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】吉野 栄一
(72)【発明者】
【氏名】寺井 寛
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−146545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 7/04
E05D 15/00−15/06
E05D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールに沿って走行する吊車を介して左右に移動自在に吊下する間仕切りパネル用の垂直調整装置であって、縦長の固定ベースと、該固定ベースの上端部に前後動自在に組み付けるローラブラケットと、該ローラブラケットに装着し、垂直軸を介して水平回転するローラとを備えてなり、前記固定ベースは、下端部を間仕切りパネルに固定して前記ローラブラケットをガイドレールの上方の垂直部材に対向させ、前記ローラブラケットを前進させると前記ローラが垂直部材に押し付けられて間仕切りパネルの傾きを修正し、前記ローラは、間仕切りパネルの移動とともに垂直部材に沿って転動することを特徴とする間仕切りパネル用の垂直調整装置。
【請求項2】
前記固定ベースは、前記ローラブラケットを前後動自在に収納する収納部を上端部に形成することを特徴とする請求項1記載の間仕切りパネル用の垂直調整装置。
【請求項3】
前記ローラは、前記垂直軸上に上下一対を装着することを特徴とする請求項1または請求項2記載の間仕切りパネル用の垂直調整装置。
【請求項4】
前記固定ベースには、前記ローラブラケットを前進させる押しねじを付設することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の間仕切りパネル用の垂直調整装置。
【請求項5】
前記固定ベースには、前記ローラブラケットをロックするロックねじを付設することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の間仕切りパネル用の垂直調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、間仕切りパネルが前後に傾くことなく、正しく垂直に垂下しながら移動するように調整する間仕切りパネル用の垂直調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドレールに沿って走行する吊車を介して吊下し、左右に自在に移動させる間仕切りパネル(吊戸を含む、以下同じ)は、重心が前後方向(間仕切りパネルの表面に直角の方向)に偏るために前後に傾くことがある。
【0003】
そこで、間仕切りパネルの下端に戸車を装着し、床面上のガイドレールに戸車を係合させて間仕切りパネルの傾きを防止することが提案されている(特許文献1)。また、間仕切りパネルの下端から下向きに突出する係合部材を床側のガイド部材に摺動自在に係合させても、同様の効果を得ることができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62790号公報
【特許文献2】特開平11−236782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、床側に戸車用のガイドレールを敷設したり、係合部材用のガイド部材を配置したりする必要があるため、完全なバリアフリー構造を実現することができないという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、間仕切りパネルの上部に前後方向の力を加えることによって、間仕切りパネルの傾きを修正するとともに、完全なバリアフリー構造を実現することができる間仕切りパネル用の垂直調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、ガイドレールに沿って走行する吊車を介して左右に移動自在に吊下する間仕切りパネル用の垂直調整装置であって、縦長の固定ベースと、固定ベースの上端部に前後動自在に組み付けるローラブラケットと、ローラブラケットに装着し、垂直軸を介して水平回転するローラとを備えてなり、固定ベースは、下端部を間仕切りパネルに固定してローラブラケットをガイドレールの上方の垂直部材に対向させ、ローラブラケットを前進させるとローラが垂直部材に押し付けられて間仕切りパネルの傾きを修正し、ローラは、間仕切りパネルの移動とともに垂直部材に沿って転動することをその要旨とする。
【0008】
なお、固定ベースは、ローラブラケットを前後動自在に収納する収納部を上端部に形成することができ、ローラは、垂直軸上に上下一対を装着することができる。
【0009】
また、固定ベースには、ローラブラケットを前進させる押しねじを付設してもよく、ローラブラケットをロックするロックねじを付設してもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、縦長の固定ベースは、水平回転するローラ付きのローラブラケットを上端部に前後動自在に組み付け、下端部を間仕切りパネルに固定して上端部のローラブラケットをガイドレールの上方の垂直部材に対向させることができる。そこで、ローラブラケットを前進させてローラを垂直部材に押し付けると、固定ベースを介して間仕切りパネルの上部を後方側から前方側に押し出して間仕切りパネルの傾きを修正することができる。また、ローラは、間仕切りパネルを左右に移動させると、間仕切りパネルの移動とともに垂直部材に沿って転動し、固定ベースを介して間仕切りパネルの垂下状態を正しく垂直に維持することができる。なお、床側には、間仕切りパネルの傾きを修正するための部材を何も設ける必要がなく、完全なバリアフリー構造を実現することができる。
【0011】
ただし、このときの間仕切りパネルは、重心が前方側に偏っており、下部が後方側に振れる方向に傾くものとし、固定ベースは、間仕切りパネルの上部の後面側に上向きに固定するものとする。すなわち、この発明において、前とは、間仕切りパネルの重心が偏っている方向をいうものとし、後とは、その反対方向をいうものとする。また、ローラを押し付ける垂直部材は、たとえば間仕切りパネルを吊下する吊車用のガイドレールを固定する建物の天井側の部材であって、間仕切りパネルを左右に移動させるとき、間仕切りパネルとともに移動するローラが一様に水平回転して転動可能な垂直面を有するものとする。
【0012】
ローラブラケットは、固定ベースの上端部の収納部に収納することにより、たとえば後方から押しねじで押すだけで、上下左右に傾いたりすることなく、正しく前向きの前進方向に駆動することができる。
【0013】
ローラは、共通の垂直軸に上下一対を装着することにより、垂直部材への着地点を上下に分離し、垂直部材に対して垂直軸を平行にして間仕切りパネルの傾きを容易に修正し、それを維持することができる。
【0014】
固定ベースに付設する押しねじは、ローラブラケットを後方側から前方側に前進させてローラを垂直部材に押し付け、間仕切りパネルの傾きを容易に修正することができる。また、固定ベースに付設するロックねじは、間仕切りパネルの傾きが修正された時点のローラブラケットの位置をロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】全体斜視図
図2】分解斜視図
図3】全体縦断面図
図4】使用状態を示す要部側面図
図5図4のX矢視相当要部拡大正面図
図6】使用状態を示す全体側面図
図7】不使用状態を示す図6相当図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
間仕切りパネル用の垂直調整装置10は、縦長の固定ベース11と、ローラブラケット12と、上下一対のローラ13、13とを主要部材としてなる(図1図2)。
【0018】
固定ベース11は、板材を断面コ字状に折り曲げるとともに、下端部に前向きの脚11a、11aを突設し、補助ブラケット11bを介して前面開放の角筒状の収納部11cを上端部に形成している。各脚11aの先端には、外向きのフランジ11a1 が形成され、各フランジ11a1 には、止め孔11a2 、11a2 が上下に並べて形成されている。補助ブラケット11bは、板材をコ字状に折り曲げて形成し(図2図3)、固定ベース11の上端部に嵌め込むようにして溶接されており、補助ブラケット11bの上面側には、前後方向の長孔11b1 が形成されている。補助ブラケット11bの後面側には、押しねじ15用のねじ孔11b2 が形成され、固定ベース11の後面側には、ねじ孔11b2 に対応する丸孔11dが形成されている。
【0019】
ローラブラケット12は、固定ベース11の上端部の収納部11cに前向きに収納可能なコ字状の部材である。ローラブラケット12の前端部には、垂直軸14用の軸孔12a、12aが上下対称に形成され、上面側後端部には、ロックねじ16用のねじ孔12bが形成されている。
【0020】
ローラ13、13は、内蔵のベアリング13a、13a、共通の垂直軸14を介し、ローラブラケット12の前端部に組み付けられている。垂直軸14は、ローラブラケット12の軸孔12a、12aに挿通され、ローラブラケット12内にローラ13、13を回転自在に保持するとともに、止め輪14aを介して抜け止めされている。なお、ローラ13、13は、たとえばベアリング13aの内輪相当の外径の図示しないスペーサワッシャまたは止め輪を垂直軸14に装着することにより、ローラブラケット12内の適切な高さ位置に保持することが好ましい。また、ローラ13、13は、少なくとも一方の片面をローラブラケット12の上辺または下辺の内面側に摺接させることにより、適切な回転抵抗を発生させてもよい。
【0021】
ローラ13、13は、押しねじ15を介してローラブラケット12を前向きに駆動することにより、収納部11cの前方側に押し出すことができる。なお、押しねじ15は、丸孔11dを介して補助ブラケット11bのねじ孔11b2 にねじ込まれており、付属のロックナット15aによりロックすることができる。一方、ロックねじ16は、補助ブラケット11bの上側からスプリングワッシャ16a、ワッシャ16bを介して補助ブラケット11bの長孔11b1 に挿通し、スペーサワッシャ16c、16cを介してローラブラケット12のねじ孔12bにねじ込まれている。そこで、ローラ13、13、ローラブラケット12は、押しねじ15を介して収納部11cの前方側に前進させて位置決めし、ロックねじ16を介してロックすることができる。
【0022】
垂直調整装置10は、間仕切りパネル20の傾きを修正するために、間仕切りパネル20の上部に左右一対を固定して使用する(図4図5)。ただし、間仕切りパネル20は、左右の吊車31、31を介し、ガイドレール32から左右に移動自在に吊下されている。各吊車31は、ガイドレール32に収納され、ガイドレール32に沿って走行可能である。
【0023】
ガイドレール32は、断面L字形の補助板33aを介して垂直部材33の下端にビス止めされており、垂直部材33は、下向きのチャンネル材33bを介して天井板Cの下面に垂設されている。また、天井板Cは、チャンネル材33bとともに、軽量鉄骨の天井下地材の野縁C1 にビス止めされている。ガイドレール32、垂直部材33は、補助板33a、チャンネル材33bとともに図4の紙面に垂直方向に連続しているものとする。なお、図5では、ガイドレール32以外の各固定部材の図示が省略されている。
【0024】
間仕切りパネル20は、前面板21の後面側に対し、断面ハット形の上骨22、側骨23、23、下骨24を付設して構成されている(図5図6)。なお、前面板21の四周は、直角に2回ずつ後面側に折り返されている。上骨22の幅は、左右の側骨23、23のそれより狭く、下骨24のそれと同等である。また、上骨22の高さは、側骨23、23、下骨24のそれより低くなっている。前面板21の上端は、天井板Cの近傍にまで高く延長されている。また、前面板21の下端は、付け幅木25を介して床Fの近くにまで垂下しており、付け幅木25の後面側は、下骨24、付け幅木25に連結する補助部材25aを介して側骨23、下骨24と同一高さに形成されている。
【0025】
間仕切りパネル20は、吊車31、31の吊りボルト31a、31aを上骨22上の吊りブラケット26、26に連結することにより、吊車31、31を介してガイドレール32から吊下されている(図4図5)。なお、吊りブラケット26、26は、上骨22の左右両端部にねじ止めされている。
【0026】
垂直調整装置10、10は、上骨22の左右両端部において、吊りブラケット26、26の各外側に上向きにねじ止めして固定されている。上骨22の左右両端部には、それぞれ垂直調整装置10、吊りブラケット26に共通の補強板27が内装されており、垂直調整装置10の固定ベース11、吊りブラケット26をねじ止めする各ボルトは、上骨22を貫通して補強板27のねじ孔にねじ込むものとする。
【0027】
そこで、各垂直調整装置10は、押しねじ15を介してローラブラケット12を前進させることにより、ローラ13、13を垂直部材33の後面側に着地させて間仕切りパネル20の傾きを修正し、間仕切りパネル20を正しく垂直に垂下させることができる。なお、ローラブラケット12、ローラ13、13は、押しねじ15を介して位置決めすると、ロックねじ16を介してロックすることができ、ローラ13、13は、間仕切りパネル20を左右に移動させると、垂直部材33の後面に沿って転動する。また、このときのローラ13、13は、適切な回転抵抗を発生させることにより、間仕切りパネル20の移動に対し、適度の制動機能を実現することができる。
【0028】
間仕切りパネル20は、前面板21を有する前方側に重心が偏っているため、垂直調整装置10、10がないと、ガイドレール32内の吊車31、31を中心にして下部が後方側に振れるように傾く(図7)。そこで、間仕切りパネル20の上部に垂直調整装置10、10を上向きに固定し、押しねじ15を介してローラ13、13を垂直部材33の後面側に押し付けると(図4図5)、ローラ13、13の前進とともに固定ベース11を介して間仕切りパネル20の上部を前方側に押し出し(図4の矢印A方向)、間仕切りパネル20の傾きを修正することができる(図4図6)。間仕切りパネル20が正しく垂直になったら、その時点で押しねじ15をロックしてローラブラケット12、ローラ13、13を位置決めし、ロックねじ16を介してローラブラケット12をロックすればよい。
【0029】
以上の説明において、ローラ13、13は、単一のローラとしてもよく、上下に長い円柱状に形成してもよい。また、ガイドレール32は、吊車31を内蔵する形式に代えて、たとえば断面L字状に形成し、吊車31の走行車輪を片側から係止させる形式としてもよい。なお、垂直部材33は、天井板Cから垂下させるに代えて、建物駆体の壁面を利用することも可能である。また、図示の間仕切りパネル20の構成は、単なる一例であって、他の任意の構成に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、床側を完全なバリアフリー構造にすることが要請される建築物の任意の開口部に対し、広く、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10…垂直調整装置
11…固定ベース
11c…収納部
12…ローラブラケット
13…ローラ
14…垂直軸
15…押しねじ
16…ロックねじ
20…間仕切りパネル
31…吊車
32…ガイドレール
33…垂直部材

特許出願人 小松ウオール工業株式会社
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7