特許第6109689号(P6109689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109689
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】締結デバイス
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20170327BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20170327BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170327BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20170327BHJP
   F16B 39/24 20060101ALI20170327BHJP
   B64C 1/00 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   F16B5/02 U
   B05D7/14 R
   B05D7/24 302P
   F16B5/02 F
   F16B43/00 C
   F16B39/24 G
   !B64C1/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-187994(P2013-187994)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-55673(P2014-55673A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2016年7月5日
(31)【優先権主張番号】1258612
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513128349
【氏名又は名称】リシー・エアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ファム,シャルル
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03298725(US,A)
【文献】 米国特許第02884099(US,A)
【文献】 米国特許第04521147(US,A)
【文献】 特開2011−153510(JP,A)
【文献】 特開2005−090530(JP,A)
【文献】 特開2008−137666(JP,A)
【文献】 特開昭50−155016(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0272537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16B 23/00−43/02
B05D 7/14
B05D 7/24
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の構造部品と締結デバイスとの間に粘性又は流体組成物介在させて、前記構造体を組付けるようになっている締結デバイス(100、100A及び100B)であって、
−軸(104、104A及び104B)に沿って延在し、ヘッド(108、108A及び108B)及びシャフト(109、109A及び109B)を備えるロッド(107、107A及び107B);
−前記ロッドの軸に沿って延在し、前記ロッドのヘッドを格納することができるヘッド(112、112A及び112B)及び前記ロッドのシャフトを格納することができる本体(113、113A及び113B)を備えるスリーブ(111、111A及び111B)であって、前記スリーブ本体は、前記ロッドシャフトの直径より小さい内径を有することにより、前記スリーブ本体と前記ロッドシャフトの間に負隙間を提供することができる、スリーブ;
−剛性と圧縮性を有する材料で形成したリング(116、116A及び116B);
を備え、
前記リング(116、116A及び116B)は、前記スリーブ本体の外面(115、115A及び115B)に連結されるとともに前記スリーブヘッド近傍に配置され、前記スリーブ本体の外面は、前記構造体の構造部品に作製されたドリル穴の壁(106、106A及び106B)と接触することができ、前記リングは、前記スリーブ本体の外面(115、115A及び115B)と前記構造部品の壁(106、106A及び106B)との間で圧迫され、前記スリーブヘッドに接触する前記構造部品の部材(105、120、120C)と当該スリーブヘッドの外面の間にある前記粘性又は流体組成物の流出を防止する
ことを特徴とする、締結デバイス(100、100A及び100B)。
【請求項2】
前記リングは、アクリルポリマーを含む材料から作製される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記材料はマイカも含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記リングは、前記スリーブヘッド直下部の半径(117、117A及び117B)の周囲に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ロッドは、引き出しステム(122)を備えるネジ(107及び107A)又はリベット(107B)である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス(100、100A及び100B)を製造するための方法であって、
ポリマー材料の液滴を液体又は粘性状態でスリーブ(111、111A及び111B)の外面(115、115A及び115B)に塗布し、前記材料を重合させてリング形状(116、116A及び116B)に固化させるステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の締結デバイス(100、100A及び100B)を構造部品に組付けるための方法であって、
前記部品はドリル穴(103、103A及び103B)を備え、
前記穴は、スリーブ(111、111A及び111B)の本体(113、113A及び113B)を隙間を有して格納することができる壁(106、106A及び106B)を有し、
前記方法は、
−粘性又は液体組成物の層(118、118A及び118B)を、前記スリーブの前記ヘッド(112、112A及び112B)と接触するようになっている前記構造部品の一部(105、119及び119C)に塗布するステップ;
−前記リング(116、116A及び116B)が前記ドリル穴の前記壁を圧迫するように、前記ロッド(107、107A及び107B)の軸(104、104A及び104B)に沿って前記スリーブを前記構造部品の前記ドリル穴に配置するステップ;
−前記スリーブが前記ドリル穴に径方向に膨張し、前記リングが前記ドリル穴に対して膨張するように、前記ロッドを前記ロッドの軸に沿って前記スリーブに挿入するステップ、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法から作製される、締結デバイス(100、100A及び100B)の構造部品と組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結デバイスに関する。本発明は、より具体的には航空学の分野に応用されるが、この分野のみに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
ある構造体との締まり嵌め用に設計された締結デバイスは、先行技術から公知であり、この締結デバイスは、軸に沿って延在する、ヘッド及びシャフトを備えるネジと、ネジの軸に沿って延在する、ネジのシャフト及びヘッドのためのハウジングを備えるスリーブとを備え、このハウジングは、スリーブがドリル穴内の所定の位置にある時に、ネジの軸に沿ったスリーブの並進運動を阻害する。締まり嵌めは、負隙間嵌合である。上述の先行技術では、ネジのシャフトは、これを格納することになるスリーブの内径よりも大きい外径を有し、これにより、ネジの取り付け中、ドリル穴の内部でスリーブが径方向に十分膨張し、ドリル穴の内部で膨張する締結デバイスによるいずれの並進運動も防止することができる。このタイプの締結デバイスは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
従来、このような締結デバイスは、ネジの軸に沿って走るドリル穴を備える構造部品に取り付けられる。しかしながら、スリーブ及びドリル穴は一般に、スリーブのヘッド直下部の半径とドリル穴の入口の半径との間に間隙が形成されるように構成される。このような間隙により、スリーブのヘッドが構造体に完全に嵌合することが保証される。
【0004】
この先行技術は、スリーブのヘッドの下側に接触するよう設計された構造部品の一部分に、新鮮な密封剤の層を塗布して、この密封剤が乾燥すると(例えば水又は燃料に対する)気密性を保証することができるようにすることを推奨している。
【0005】
しかしながら、スリーブをドリル穴に挿入するステップの間に、新鮮な密封剤は、スリーブのヘッド直下部の半径とドリル穴の入口の半径との間に形成される間隙に入ってしまうことがある。ネジをスリーブに挿入して、スリーブのヘッド直下部の半径を径方向に膨張させると、密封剤が間隙からドリル穴へと排出され、スリーブ本体の周囲に広がってしまう。
【0006】
スリーブ本体の周囲の新鮮な密封剤は、スリーブ本体とドリル穴との間に潤滑フィルムを形成して、スリーブとドリル穴との間の接着に影響を与えるため、特に問題である。しかしながら、ネジとスリーブとの間の接着が、スリーブとドリル穴の間の接着より強くなると、スリーブはネジによって駆動され、ネジを挿入するにつれて長くなる。
【0007】
このようなスリーブの延長により、例えば、スリーブのヘッド直下領域が薄くかつ弱くなるだけでなく、スリーブの径方向膨張が不完全となり、スリーブとドリル穴との間の干渉が弱まることがあり得る。従って、スリーブ本体の周囲の密封剤の存在は、特に機械的強度の点で、嵌合の品質に有意に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/142901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、スリーブ本体の周囲に新鮮な密封剤の層が広がるのを防止する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様が、この技術的課題を解決する。
【0011】
より詳細には、本発明は、軸に沿って延在する、ヘッド及びシャフトを備えるロッド;ロッドの軸に沿って延在する、ロッドヘッドを格納することができるヘッド及びロッドシャフトを格納することができる本体を備えるスリーブであって、スリーブ本体は、ロッドシャフトの直径より小さい内径を有することにより、スリーブとシャフトの間に負隙間を提供することができる、スリーブ;スリーブ本体の外面に連結され、スリーブヘッド近傍に配置された、剛性かつ圧縮性材料のリングであって、上記外面は、構造部品に作製されたドリル穴の壁と接触することができ、上記リングは、上記外面と上記壁との間で圧迫される、リングを備える、締結デバイスに関する。
【0012】
好ましくは、リングは、アクリルポリマーを含む材料から作製される。
【0013】
より好ましくは、リングは、マイカも含む材料から作製される。
【0014】
好ましくは、リングは、スリーブのヘッド直下部の半径の周囲に位置する。
【0015】
好ましくは、ロッドは引き出しシャフトを備えるネジ又はリベットである。
【0016】
本発明の更なる主題は、上述のようなデバイスを製造するための方法であって、この方法は、ポリマー材料の液滴を液体又は粘性状態でスリーブの外面に塗布し、上記材料を重合させてリング形状に固化させるステップを含む。
【0017】
本発明の更なる主題は、上述のような締結デバイスを構造部品に組付けるための方法であって、上記部品はドリル穴を備え、上記穴は、スリーブの本体を隙間を有して格納することができる壁を有する。この方法は、粘性又は液体組成物の層を、スリーブヘッドと接触するように設計された構造部品の一部に塗布するステップ;スリーブを構造部品のドリル穴に、ネジの軸に沿って挿入することにより、リングがドリル穴の壁を圧迫するステップ;及び、これに続いて、ロッドをスリーブに、ロッドの軸に沿って挿入することにより、スリーブがドリル穴の内部で径方向に膨張し、リングがスリーブ本体の外面とドリル穴の壁との間で圧迫されるステップを含む。
【0018】
本発明の更なる主題は、締結デバイスと組立体連結部品との組立体であって、上記組立体は、上述の方法の結果として得られるものである。
【0019】
本発明は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面について考察することにより、より良く理解することができ、これら説明及び図面は情報を提供する目的で挙げられたものであり、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による、組付け前の締結デバイスと2つの構造部品の、概略断面展開図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態による、組付け前の締結デバイスと2つの構造部品の、概略断面展開図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態による、組付け前の締結デバイスと2つの構造部品の、概略断面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の1つの実施形態による締結デバイス100と第1の構造部品101、及び第2の構造部品102の、概略図である。
【0022】
構造部品(101及び102)は、軸104に沿って配置されたドリル穴103を備える。図1に示す例では、ドリル穴103は皿穴105と、第1及び第2の構造部品(101及び102)を通る円筒形壁106とを有する。
【0023】
締結デバイス100は、軸104に沿って延在するネジ107を備える。ネジ107は皿穴状ヘッド108、先細シャフト109、及びヘッド108と反対側のネジ山付き部分110を有する。
【0024】
締結デバイス100はまた、軸104に沿って延在するスリーブ111も備える。スリーブ111は、ドリル穴103に挿入することができる。
【0025】
スリーブ111は、ネジ107のヘッド108を格納することができるヘッド112を備える。図1に示す例では、スリーブ111のヘッド112は皿穴状である。
【0026】
更に、スリーブ111は、ネジ107のシャフト109を格納することができる本体113を備える。スリーブ111の本体113の内面114は、ネジ107のシャフト109の形状とほぼ相補的である。よって、図1に示す例では、本体113の内面114は、先細形状を有する。スリーブ111の本体113の外面115は、ドリル穴103の壁106の形状とほぼ相補的である。よって、図1に示す例では、本体113の外面115は円筒形である。
【0027】
締結デバイス100は、構造部品(101及び102)中に締り嵌めされるようになっている。図1に示す例では、締まり嵌めは以下のように行われる。ネジ107のシャフト109は、軸104に沿って同一の高さに、スリーブ111の本体113の内面114の直径より大きな直径を有し、これにより、スリーブ111へのネジ107の挿入が、上記スリーブの径方向の膨張を引き起こす。スリーブ111の外面115の直径は、ネジ107の挿入前は、ドリル穴103の直径より小さく、これによりスリーブ111は、正隙間を有してドリル穴103に挿入される。最後に、スリーブ111へのネジ107のシャフト109の挿入は、上記スリーブの外径の膨張を引き起こし、これにより、締結デバイス100が軸104に沿って固定される。
【0028】
締結デバイス100は更に、剛性かつ圧縮性材料で作製されたリング116を備える。リング116は、スリーブ111の本体113の外面115に連結される。リング116は、スリーブ111のヘッド112の近傍にある。好ましくは、リング116は、スリーブ111のヘッド直下部の半径117、即ち、スリーブ111のヘッド112と本体113との間の境界部分に位置決めされる。リング116は、ドリル穴103の円筒形壁106を圧迫するように構成される。
【0029】
締結デバイス100をドリル穴103に挿入する前に、ドリル穴103の皿穴105を、粘性又は液体状態の組成物の層118でコーティングする。粘性又は液体状態の組成物は、例えば新鮮な密封剤である。新鮮な密封剤の層118を、好ましくは皿穴105の全周縁部に塗布し、締結デバイス100組立体並びに第1及び第2の構造部品(101及び102)を気密性にする。
【0030】
図2は、本発明の別の実施形態であり、上述の実施形態と共通の部品には、同一の参照符号に文字「A」を加えたものを付してある。図1の実施形態と共通の特徴については、以下の説明で再び触れることはない。
【0031】
図2は、締結デバイス100A、並びに、ドリル穴103Aを備える第1及び第2の構造部品(101A及び102A)の概略図を示す。図2に示す例では、壁103Aは円筒形である。
【0032】
締結デバイス100Aのネジ107Aは、突出した円筒形ヘッド108A、円筒形シャフト109A、及び、ヘッド108Aと反対側のネジ山付き部分を備える。締結デバイス100Aのスリーブ111Aは、ヘッド112A及び本体113Aを有し、本体113Aの内面114A及び外面115Aは円筒形である。
【0033】
図1及び2の例に代わって、壁106、106Aは先細形状であり、本体113、113Aの外面115、115Aもまた、同一の勾配の先細形状である。
【0034】
ネジ107Aのシャフト109Aの直径は、スリーブ111Aの本体113Aの内面114Aの直径より大きい。ネジ107Aをスリーブ111Aに挿入する前は、スリーブ111Aの本体113Aの外面115Aの直径は、ドリル穴103Aの直径よりも小さい。よって、締結デバイス100Aにより、構造部品(101A及び102A)内での締まり嵌めが可能となる。
【0035】
スリーブ111Aのヘッド112Aは、ネジ107Aの軸104Aに実質的に垂直に配置される、実質的に平坦なフランジである。締結デバイス100Aを第1及び第2の構造部品(101A及び102A)上に組付ける場合、フランジ112Aは、ネジ107Aの第1の構造部品101Aの表面119と、ネジ107Aのヘッド108Aとの間に挟まれる。
【0036】
フランジ112Aと、第1の構造部品101Aの表面119との間の接触領域120は、新鮮な密封剤の層118Aでコーティングされる。好ましくは、新鮮な密封剤の層118Aを、フランジ112Aの接触領域120の全周縁部に塗布し、これにより、締結デバイス100A組立体並びに第1及び第2の構造部品(101A及び102A)を気密性にする。
【0037】
リング116Aを、スリーブ111Aの本体113Aの外面115A上で、スリーブ111Aのヘッド直下部の半径117Aに位置決めする。
【0038】
図3は、本発明の別の実施形態を示し、図1及び図2と共通の部品は、同一の参照符号に文字「B」を加えたものを有し、図2のみと共通の部品は、同一の参照符号に文字「C」を加えたものを有する。図1及び2の実施形態と共通の特徴については、以下の説明で再び触れることはない。
【0039】
図3は、締結デバイス100B、並びに、ドリル穴103Bを備える第1及び第2の構造部品(101B及び102B)の概略図を示す。図3に示す例では、ドリル穴103Bは円筒形の壁106Bを有する。
【0040】
締結デバイス100Bは、突出したヘッド108B、円筒形シャフト109B、ロック部分121及び引き出しステム122を有する、リベット107Bを備える。引き出しステム122はリベット107Bのヘッド108Bの反対側に位置し、ロック部分121はシャフト109Bと引き出しステム122との間に位置する。図3に示す実施例では、ロック部分121は、かしめ溝の形態である。
【0041】
締結デバイス100Bのスリーブ111Bは、図2に示すスリーブ111Aと同様である。スリーブ111Bは、フランジ形状のヘッド及び本体113Bを有し、この本体113Bの内面及び外面(114B及び115B)は円筒形である。よって、図2に示す例と同様に、フランジ112Bと、第1の構造部品101Bの表面119Cとの間の接触を形成する領域120Cは、新鮮な密封剤の層118Bでコーティングされる。
【0042】
リベット107Bのシャフト109Bの直径は、スリーブ111Bの本体113Bの内面114Bの直径より大きい。リベット107Bをスリーブ111Bに挿入する前は、スリーブ111Bの本体113Bの外面115Bの直径は、ドリル穴103Bの直径よりも小さい。よって、締結デバイス100Bにより、構造部品(101B及び102B)内での締まり嵌めが可能となる。
【0043】
代替として、リベット107Bのヘッド108Bは皿穴状であり、及び/又はロック部分121は、ナットを受容できるネジ山の形態である。
【0044】
リング116Bを、スリーブ111Bの本体113Bの外面115B上で、スリーブ111Bのヘッド直下部の半径117Bに位置決めする。
【0045】
図1、2及び3に示したような組立体は、スリーブの本体とドリル穴との間で圧迫されるリングを用いて、新鮮な密封剤がスリーブ本体の外面へと流出しないように保ち、これにより、スリーブとドリル穴との間の接着が劣化するのを防ぐ、という利点を有する。
【0046】
リング(116、116A及び116B)が充填しなければならない隙間は極めて小さく、可変である。従って、リングは好ましくは、ドリル穴内での締結デバイスの適切な嵌合を損なわないよう、また特に、ドリル穴内でのスリーブの径方向膨張を制限しないよう、比較的大きい圧縮率を有する。リング(116、116A及び116B)はまた、構造部品内で締結デバイスを締める際にひび割れたり摩耗したりしないよう、良好な圧縮強度を有する。
【0047】
これらの制約を満たす1つの特定の材料は、アクリルポリマーベースの材料である。この材料は、マイカを含んでもよい。
【0048】
表1及び2はそれぞれ、リング(116、116A及び116B)の製造に特に適した密封剤組成物の例を示す。
【表1】
【表2】
【0049】
Loctite社によって市販されている、Vibra-Seal(登録商標)503及びVibra-Seal(登録商標)506組成物は、リング(116、116A及び116B)の製造に特に適した組成物の例である。これらの組成物は、締結装置の業界では公知であり、ネジのネジ山に塗布される。これらの組成物は、重合すると、ネジ/ナットタイプの締結装置のネジ山をひとつに密封し、これらの組成物のうちの1つでコーティングされたネジ山にナットをねじ込んだ後、ナットの緩みを制限又は防止する。
【0050】
出願人は、制限された圧縮率及び低い圧縮強度を有する、プラスチック又はラバーによる密封とは異なり、これらの組成物が、乾燥させると、本発明が解決しようとしている問題に特に適していることを発見した。よって、この組成物は乾燥させると、ひび割れや摩耗なしに、またクリープも殆どなく、圧縮による形状の欠損及び体積変化に適合し、これは締まり嵌めの完全性を損なわない。例えばリング(116、116A及び116B)を、表1又は表2の組成物に応じた新鮮な密封剤の液滴をスリーブに塗布し、その後室温で重合を行うか、又は重合プロセスを加速するための硬化を行うことにより、作製する。液滴が重合すると、締結デバイスは構造部品に嵌合することができる。
【0051】
上述の組立体を形成するための1つの方法は、以下のようなものである。
【0052】
まず、新鮮な密封剤の層(118、118A及び118B)を、スリーブ(111、111A及び111B)のヘッド(112、112A及び112B)を受容するよう設計された第1の構造部品(101、101A及び101B)の一部分(105、120及び120C)に塗布する。
【0053】
図1に示す例では、層118を、ドリル穴103の皿穴105に塗布する。
【0054】
図2及び3に示す例では、層(118A及び118B)を、スリーブ(111A及び111B)がドリル穴(103A及び103B)内の所定の位置にある時の、スリーブ(111A及び111B)のフランジ(112A及び112B)と第1の構造部品(101A及び101B)の表面(119及び119C)との間の接触領域(120及び120C)に塗布する。
【0055】
続いて、リベット107B又はネジ(107及び107A)を、スリーブ(111、111A及び111B)に部分的に挿入する。用語「部分的な挿入」は、ロッド又はネジを、力を用いずに、又は限定された力を用いて、スリーブに挿入することを意味する。よって、スリーブ内へのロッド又はネジの部分的な挿入によって、スリーブが径方向に膨張することはない。典型的には、ネジ又はリベットをスリーブに部分的に挿入した場合、ネジ又はリベットのシャフト(109、109A及び109B)は少なくとも部分的にスリーブから外に出ている。同様に、ネジのネジ山付き部分(110及び110A)又はリベットの引き出しステム122は部分的にスリーブから外に出ている。
【0056】
そして、スリーブに部分的に挿入されたリベット107B又はネジ(107及び107A)を備える締結デバイス(100、100A及び100B)を、スリーブ(111、111A及び111B)のヘッド(112、112A及び112B)が新鮮な密封剤の層(118、118A及び118B)に接触するように、ドリル穴(103、103A及び103B)内に正隙間を有して配置する。リング(116、116A及び116B)は、ドリル穴(103、103A及び103B)の円筒形壁(106、106A及び106B)と、スリーブ本体の外面(115、115A及び115B)との間で僅かに圧迫され、これにより、新鮮な密封剤の層(118、118A及び118B)が、スリーブ(111、111A及び111B)の本体(113、113A及び113B)の外面(115、115A及び115B)へと流出するのを防ぐ障壁が形成される。
【0057】
図1及び2に示す例では、ナット(123及び123A)をネジ(107及び107A)のネジ山付き部分(110及び110A)上に位置決めして締め、スリーブ(111及び111A)内にネジを完全に挿入する。ネジのヘッド(108及び108A)がスリーブのヘッド(112及び112A)に接触すると、ネジは完全に挿入されたものと考えられる。ネジ(107及び107A)の挿入により、スリーブ(111及び111A)の径方向膨張、並びにリング(116及び116A)の最終的な圧迫が引き起こされる。
【0058】
図3に示す例では、リベット107Bをスリーブ111Bに完全に挿入するために、引き出しステム122を引っ張るためのツールを使用する。リベットのヘッド(108B)がスリーブのヘッド(112B)に接触すると、ロッドは完全に挿入されたものと考えられる。リベット107Bの挿入により、スリーブ111Bの径方向膨張、並びにリング116Bの最終的な圧迫が引き起こされる。使用するリベットのタイプに応じて、リング123Bをロック部分121上にかしめた後に引き出しステム122が破壊されるか、又は、リベットが破壊された後にリング123Bをロック部分121上にかしめる。ロック部分121がネジ切りである変形例によると、ナットをこのネジ山上へと締める。
【0059】
最後に、最終ステップは、層(118、118A及び118B)の密封剤を固化させて組立体を確実に密封するために、組立体を乾燥させるステップである。
【0060】
このような組付けプロセスは、新鮮な密封剤の層(118、118A及び118B)がドリル穴内で、スリーブ(111、111A及び111B)の本体(113、113A及び113B)の周囲に広がるのを防止するという利点を有する。このようにして、締結デバイス(100、100A及び100B)及び構造部品の高品質な組付けのために必要な、スリーブ(111、111A及び111B)とドリル穴(103、103A及び103B)との間の接着を保証する。
図1
図2
図3