(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イオン交換体が充填された脱塩室と該脱塩室の両側にそれぞれイオン交換膜を介して配置された1対の濃縮室とを備える少なくとも1つのセルが陰極と陽極との間に配置されたEDIスタックと、前記陰極及び前記陽極に対して直流電圧を印加する直流電源と、を備える電気式脱イオン水製造装置において、
運転中の前記電気式脱イオン水製造装置における電流の向きとは逆向きの電流を阻止するように、前記EDIスタックと前記直流電源とを接続する配線に設けられたダイオードと、
前記ダイオードに並列に設けられ、前記電気式脱イオン水製造装置の運転期間中に前記ダイオードの両端を電気的に短絡するバイパス手段と、
を有することを特徴とする電気式脱イオン水製造装置。
前記バイパス手段は、前記直流電源のオフ状態からオン状態に遷移してから遮断状態から短絡状態に遷移し、前記直流電源がオン状態からオフ状態に遷移する前に短絡状態から遮断状態に遷移するように制御される、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
イオン交換体が充填された脱塩室と該脱塩室の両側にそれぞれイオン交換膜を介して配置された1対の濃縮室とを備える少なくとも1つのセルが陰極と陽極との間に配置されたEDIスタックと、前記陰極及び前記陽極に対して直流電圧を印加する直流電源と、を備える電気式脱イオン水製造装置において、
複数の前記EDIスタックを備えて前記複数のEDIスタックが相互に接続されて前記直流電源によって運転され、
前記EDIスタックごとに、当該EDIスタックの陽極及び陰極の各々に、運転中の前記電気式脱イオン水製造装置における運転電流を通過させ該運転電流とは逆向きの電流を阻止するダイオードが接続することを特徴とする、電気式脱イオン水製造装置。
前記不純物除去手段は、前記逆浸透膜透過水の一部及び前記電気式脱イオン水製造装置からの処理水の一部の少なくとも一方を前記逆浸透膜分離装置に循環させる配管であり、前記配管を経てきた水を前記逆浸透膜分離装置に通水することよって前記不純物を前記逆浸透膜分離装置から排出する、請求項6に記載の電気式脱イオン水製造装置。
イオン交換体が充填された脱塩室と該脱塩室の両側にそれぞれイオン交換膜を介して配置された1対の濃縮室とを備える少なくとも1つのセルが陰極と陽極との間に配置されたEDIスタックと、前記陰極及び前記陽極に対して直流電圧を印加する直流電源と、を備える電気式脱イオン水製造装置の運転方法において、
前記EDIスタックと前記直流電源とを接続する配線に設けられたダイオードによって、前記電気式脱イオン水製造装置の停止期間中に、運転期間中における電流の向きとは逆向きに前記EDIスタックから流れる逆電流を阻止し、
前記電気式脱イオン水製造装置の運転期間中は、前記ダイオードの両端を電気的に短絡することを特徴とする運転方法。
前記直流電源のオフ状態からオン状態に遷移してから前記ダイオードの両端を短絡し、前記直流電源がオン状態からオフ状態に遷移する前に前記ダイオードの両端を短絡状態から復旧させる制御を行う、請求項9に記載の運転方法。
イオン交換体が充填された脱塩室と該脱塩室の両側にそれぞれイオン交換膜を介して配置された1対の濃縮室とを備える少なくとも1つのセルが陰極と陽極との間に配置された複数のEDIスタックと、前記陰極及び前記陽極に対して直流電圧を印加する直流電源と、を備え、前記複数のEDIスタックが相互に接続されて前記直流電源によって運転される電気式脱イオン水製造装置の運転方法において、
前記EDIスタックごとに、当該EDIスタックの陽極及び陰極の各々に接続されたダイオードにより、前記電気式脱イオン水製造装置の停止期間中に、運転期間中における電流の向きとは逆向きに前記EDIスタックから流れる逆電流を阻止することを特徴とする、運転方法。
前記電気式脱イオン水製造装置の運転を停止する間に、前記脱塩室に対して被処理水として逆浸透膜透過水を供給する逆浸透膜分離装置において、該逆浸透膜分離装置内で逆浸透膜の1次側に存在する不純物の量を減少させる不純物除去工程を実行する、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の運転方法。
載の運転方法。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂などのイオン交換体に被処理水を通水させてイオン交換反応により脱イオンを行う脱イオン水製造装置が知られているが、このような装置は、イオン交換体のイオン交換基が飽和した場合に酸やアルカリなどの薬剤によってイオン交換体の再生を行う再生処理を行う必要があるので、連続運転を行えず、薬剤補充の手間もかかる、という課題を有する。そこで近年、これらの課題を解決するものとして、薬剤による再生が不要な電気式脱イオン水製造装置が開発され、実用化されている。
【0003】
電気式脱イオン水製造装置では、カチオン(陽イオン)のみを透過させるカチオン交換膜とアニオン(陰イオン)のみを透過させるアニオン交換膜との間にイオン交換体(アニオン交換体及び/またはカチオン交換体)を充填して脱塩室を構成し、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の外側に濃縮室を配置し、脱塩室とその両側の濃縮室とからなるものを基本構成としてこれを陽極と陰極との間に配置している。このとき、脱塩室から見て、脱塩室と陽極との間にアニオン交換膜が配置され、脱塩室と陰極との間にカチオン交換膜が配置される。陽極と陰極との間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水すると、被処理水中のイオン成分は脱塩室内のイオン交換体に捕捉される。同時に、イオン交換膜とイオン交換体との界面あるいはイオン交換体とイオン交換体との界面において生じる電位差により水の解離反応が進行して水素イオン(H
+)と水酸化物イオン(OH
-)が生成し、この生成した水素イオンと水酸化物イオンとによって、先に捕捉されていたイオン成分がイオン交換されてイオン交換体から遊離する。遊離したイオン成分のうちカチオンは、直流電流によって駆動されてイオン交換体内を移動し、さらにカチオン交換膜を通過して陰極側の濃縮室に移動する。同様に、遊離したイオン成分のうちアニオンは、直流電流によって駆動されてイオン交換体内を移動し、さらにアニオン交換膜を通過して陽極側の濃縮室に移動する。これらの結果、脱塩室に供給された被処理水中のイオン成分は濃縮室に移行して脱塩室から処理水として脱イオン水が得られることとなり、同時に、脱塩室のイオン交換体も再生されることになる。濃縮室にはイオン成分が濃縮することとなるが、濃縮室に水を流すことによって、イオン成分を装置外に排出することができる。
【0004】
上記では、[濃縮室(C)|アニオン交換膜(AEM)|脱塩室(D)|カチオン交換膜(CEM)|濃縮室(C)]からなる基本構成(すなわちセル)が陽極と陰極との間に配置されているものとしたが、電極間にこのようなセルを複数個並置し、電気的には複数個のセルが一端を陽極とし他端を陰極として直列接続されるようにして処理能力の増大を図ることも可能である。この場合、隣接するセル間で隣り合う濃縮室を共有することができるから、電気式脱イオン水製造装置の構成としては、[陽極|C|AEM|D|CEM|C|AEM|D|CEM|C|AEM|D|CEM|…|C|陰極]の構成となる。このように1または複数のセルが配置されたものをEDIスタックと呼ぶ。EDIスタックの一端には陽極が配置され、他端には陰極が配置される。
【0005】
脱イオン水に含まれるイオン濃度を可能な限り低くし、また電気式脱イオン水製造装置内でのスケールの発生を防止するためには、脱塩室に供給される被処理水におけるイオン濃度をあらかじめ低下させておくことが望ましい。そこで、電気式脱イオン水製造装置に対する前段装置として逆浸透膜分離装置を設け、逆浸透膜分離装置からの透過水が被処理水として電気式脱イオン水製造装置に供給されるようにすることが一般的である。電気式脱イオン水製造装置自体は非イオン性不純物を除去できないが、逆浸透膜分離装置を設けることによって、微粒子状の非イオン性不純物を除去することも可能になる。
【0006】
電気式脱イオン水製造装置では、イオン交換体への不純物イオンの吸着とそのイオン交換体の電気的な再生、不純物イオンの濃縮室への移動という複数の過程によってイオンを除去する。このため、一般的なイオン交換樹脂を用いた吸着装置に比べ、装置を起動した時の水質の立ち上がりに時間がかかる傾向がある。特に、装置を一定時間運転したのちに装置を停止した場合に、運転再開時の水質の立ち上がりに長時間がかかることがある。これは、電気式脱イオン水製造装置は、その構成として、イオンが除去されイオン濃度が低減された脱塩室と、この脱塩室から移動してきたイオンによってイオン濃度が高められている濃縮室とが、イオン交換膜を挟んで配置しており、装置を停止したことによって陽極と陰極との間に電圧が印加されていないとすると、濃縮室と脱塩室とのイオン濃度の勾配に基づいてイオン成分が脱塩室に拡散して脱塩室内のイオン交換体に吸着してしまうからである。このため電気式脱イオン水製造装置では、その起動時に、脱塩室内のイオン交換体に吸着されている不純物イオンを再び濃縮室まで移動させる工程が必要となり、装置の運転停止前の状態に戻るまでに数時間から数十時間の時間を要するケースもあった。
【0007】
なお、電気式脱イオン水製造装置では、再起動時の水質立ち上がり時間を短縮するために、装置を停止する際に電極への直流電圧の印加を停止した後も濃縮室への水の供給を続けることによって、濃縮室内に滞留して不純物イオンを多く含む水を装置外に排出する(ブローする)ようにすることがある。このブローは、再起動時の水質立ち上がりが遅くなる影響を極力抑えるように、濃縮室から排出される水の導電率が濃縮室に供給される水の導電率と同程度にまで低下するまで行われる。
【0008】
特許文献1には、逆浸透膜分離装置と電気式脱イオン水製造装置とを組み合わせたシステムにおいて再起動時に水質立ち上がりに時間がかかるという問題を解決するために、脱イオン水の需要がないときには生成した脱イオン水を逆浸透膜分離装置及び電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に循環させることによりシステムを継続して運転させることや、あるいは、運転を停止する場合に、脱塩室や濃縮室への水の供給を停止した後も電気式脱イオン水製造装置の電極間に電圧を印加することが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、循環運転を行うことや直流電源を常時作動させることによる電力消費が無視できず、また、それに伴う循環水や脱塩室内の水の温度上昇が無視できなくなるなどの問題点がある。
【0009】
電気式脱イオン水製造装置において濃縮室でのスケールの発生を防止し、運転電圧を低減するために、特許文献2には、濃縮室にイオン交換樹脂を充填することが開示されている。本発明者らの研究によると、このような濃縮室にもイオン交換樹脂が充填されている種類の電気式脱イオン水製造装置では、装置の運転の停止の際に直流電源の停止後も引き続いて濃縮室に対するブロー運転を行ったとしても、濃縮室内のイオン交換樹脂に吸着しているイオンを装置外に排出することは不可能であり、かつ、イオン交換樹脂に吸着しているイオンが徐々に脱塩室に拡散するので、運転再開時の水質立ち上がりの遅延を回避することができないことが明らかになった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、電気式脱イオン水製造装置を備えるシステムの構成の一例を示している。
図1に示すシステムは、電気式脱イオン水製造装置30と、電気式脱イオン水製造装置30の前段に設けられた逆浸透膜分離装置20と、原水を逆浸透膜分離装置20に供給するポンプ10と、を備えている。逆浸透膜分離装置20の内部には逆浸透膜21が設けられている。逆浸透膜分離装置20において、逆浸透膜21を挟んで原水が供給される側を1次側、逆浸透膜21を透過してきた透過水が得られる側を2次側と呼ぶ。
図1は、本発明に基づく電気式脱イオン製造装置を備えるシステムを概略的に示すものであって、ポンプ10に接続する原水ラインや、逆浸透膜分離装置20からの透過水のライン、電気式脱イオン水製造装置30からの処理水のラインに、適宜、タンク、ポンプ、弁などを設置してもよい。
【0022】
逆浸透膜分離装置20の1次側には、背圧弁22と逆浸透膜21のフラッシングを行うためのフラッシング弁23とが接続している。通常の運転時にはフラッシング弁23は完全に閉じられており、ポンプ10によって原水を加圧して逆浸透膜分離装置20に供給すると、背圧弁22の作用によって逆浸透膜分離装置20の1次側が一定の圧力に保たれるので、原水の一部が逆浸透膜21を透過し、そのときに不純物が除去され、逆浸透膜分離装置20の2次側から不純物が除去された逆浸透膜透過水が得られる。この逆浸透膜透過水は、電気式脱イオン水製造装置30の脱塩室に被処理水として送られる。原水のうち逆浸透膜21を透過しなかった分は、不純物が濃縮されている濃縮水として背圧弁22を介して外部に排出される。
【0023】
図2(a),(b)は、電気式脱イオン水製造装置30の構成の一例を示している。電気式脱イオン水製造装置30は、両端にそれぞれ陽極31及び陰極32が配置されたEDIスタック33を備えている。EDIスタック33はイオン交換樹脂などのイオン交換体が充填された脱塩室とこの脱塩室の両側にそれぞれイオン交換膜を介して配置された1対の濃縮室とを備えるセルを有するものであり、直流電源35から陽極31及び陰極32に対して電圧が印加されるようにしたものである。EDIスタック33において、脱塩室と接して陽極31側に配置されるイオン交換膜はアニオン交換膜であり、脱塩室と接して陰極32側に配置されるイオン交換膜はカチオン交換膜である。1対の濃縮室の少なくとも一方の内部には、イオン交換樹脂などのイオン交換体が充填されていてもよい。背景技術の欄で述べたように、陽極31と陰極32との間で複数のセルが並置されるようにEDIスタック33を構成してもよく、その場合、隣接するセル間で隣り合う濃縮室はそれらセル間で共通のものとして構成される。
【0024】
陽極31が正、陰極32が負となるように直流電源35から陽極31及び陰極32に直流電圧を印加し、この状態で脱塩室に対して被処理水として逆浸透膜透過水を供給すると、背景技術の欄で説明した処理原理に基づいて被処理水中のイオン成分が除去され、脱塩室から処理水として脱イオン水が得られることになる。
【0025】
本発明者らの得た知見によれば、電気式脱イオン水製造装置を停止してその電極に対する直流電圧の印加を停止すると濃縮室に移動したイオン成分が脱塩室に拡散するが、その際、電極間に微弱な逆電流が流れていることが分かった。この逆電流は、停止状態の直流電源を介して陽極から陰極に向かって流れると考えられる。電気式脱イオン水製造装置において一般的に使用される直流電源では、出力部に平滑用の電解コンデンサが設けられて、この電解コンデンサの両端がそれぞれ正側出力端子と負側出力端子とに引き出されている。直流電源内の制御回路に対し出力電圧をフィードバックするための分圧抵抗などが、平滑用の電解コンデンサに対して並列に設けられる場合もある。このため直流電源自体は、電気式脱イオン水製造装置が停止状態のときに流れる逆電流を阻止する機能を備えない。
【0026】
逆電流はイオン成分の拡散に伴うものであり、逆に言えば、逆電流を阻止することによって、濃縮室から脱塩室へのイオン成分の拡散を抑制することができ、運転再開時の水質の立ち上がりを速くできると考えられる。したがって、直流電源を陽極及び陰極に接続する回路に、逆電流を阻止するための電子素子を挿入することにより、運転再開時の水質の立ち上がりを速くできることになる。逆電流を阻止するための電子素子としては、例えば、整流作用を有する半導体ダイオードを用いることができる。
【0027】
図2(a)に示した電気式脱イオン水製造装置30では、直流電源35の正側出力端子をEDIスタック33の陽極31に直接接続する一方で、直流電源35の負側出力端子と陰極32とを結ぶ配線に、逆電流を阻止するためのダイオードDが、そのアノードが陰極32と接続するように挿入されている。逆電流を阻止するためのダイオードDの挿入位置は、陰極32と直流電源35の負側出力端子との間の配線に限られるものではなく、
図2(b)に示すように、陰極32と直流電源35の負側出力端子を直接接続する一方で、陽極31と直流電源35の正側出力端子とを結ぶ配線にダイオードDを挿入してもよい。その場合は、ダイオードDのカソードが陽極31と接続するようにする。
【0028】
さらに、
図3に示すように、直流電源35の正側出力端子と陽極31を接続する配線と、直流電源35の負側出力端子と陰極32を接続する配線との両方に、それぞれダイオードDを挿入してもよい。本発明者らが行った実験によれば、
図2(a),(b)に示すように陽極31及び陰極32のいずれか一方のみに対応してダイオードDを挿入するよりも、
図3に示すように陽極31及び陰極32の各々ごとにダイオードDを挿入する方が、運転再開時の水質の立ち上がりが速かった。
【0029】
ところで、電気式脱イオン水製造装置の運転時において、逆電流阻止用のダイオードDには、直流電源35の正側出力端子から負側出力端子に向かう運転電流が順方向電流として流れる。ダイオードに順方向電流が流れると、ダイオードの電圧電流特性に応じて電圧降下が生じ、降下した電圧と順方向電流との積に相当する熱が発生する。ダイオードDによる電圧降下は、それ自体では電気式脱イオン水製造装置によって得られる処理水の品質に大きな影響を与えるものではないが、装置全体の消費電力を増大させることになり、運転コストを引き上げる要因ともなる。また、発熱は、ダイオードDやその周辺に配置される部材の劣化を促進する要因ともなる。そこで
図4に示す電気式脱イオン水製造装置では、
図2(a)に示す電気式脱イオン水製造装置において、逆電流阻止用のダイオードDに対して並列に、制御信号によってオン/オフが制御されるスイッチSWを設けている。装置が運転状態にある時には制御信号によってスイッチSWを導通状態(オン状態)としてスイッチSWによりダイオードDのカソードとアノードとの間を短絡し、電流がこのスイッチSWを経由して流れるようにする。ダイオードDにはほとんど電流が流れないので、ダイオードDは電力を消費せず、発熱しない。運転状態にないときにはスイッチSWは遮断状態(オフ状態)となるので、スイッチSWには電流は流れず、逆電流はダイオードDによって阻止される。ここでは図示しないが、
図2(b)あるいは
図3に示す電気式脱イオン水製造装置においても、逆電流阻止用の各ダイオードDに対してスイッチSWを並列に設け、装置が運転状態にある時にはスイッチSWによってダイオードDの両端を短絡し、停止状態にある時にはスイッチSWを遮断状態としてダイオードDによって逆電流が阻止されるようにすることにより、逆電流を阻止しつつダイオードの発熱を抑えることができる。
【0030】
制御信号によるスイッチSWのオン/オフのタイミングは、直流電源35の動作と停止(オン/オフ)すなわち電気式脱イオン水製造装置30の運転と停止のタイミングに完全に一致させてもよいが、
図5に示すように、両者のタイミングに時間差を設け、直流電源35がオン状態からオフ状態への遷移する直前にスイッチSWをオン状態からオフ状態に遷移させ、直流電源35がオフ状態からオン状態に遷移した直後にスイッチSWをオフ状態からオン状態に遷移させるようにしてもよい。このとき、わずかな期間ではあるが、ダイオードDに運転電流が流れるタイミングが発生するが、このようなタイミングが存在することにより、EDIスタック33からの逆電流が発生するであろう時間帯においてダイオードDによって完全に逆電流を阻止することができるようになる。
【0031】
制御信号によって直流電源35の動作状態とは別個に制御されるスイッチSWをダイオードDに対して並列に設けることにより、ダイオードを設けずに直流電源35に同期するスイッチSWだけで逆電流を阻止しようとする場合に比べ、装置停止時に瞬時に発生する逆電流を確実に阻止できるようになって、装置の運転再開時における水質の立ち上がりをより速くすることができる。
【0032】
なおここで述べた例では、ダイオードDの発熱を抑制するためにダイオードDに対して並列にスイッチを設けているが、発熱による影響を緩和するだけでよいのであれば、例えば、ダイオードを収容する筐体に放熱板を設けたり筐体の材質を熱伝導率の高い金属にしたりする、あるいは、ダイオードに放熱板を取り付ける、などの手段を採用すればよい。
【0033】
次に、
図1に示されるシステムの運転方法について説明する。
【0034】
このシステムにおいて脱イオン水を電気式脱イオン水製造装置30からの処理水として生成する場合、フラッシング弁23を閉じた状態でポンプ10を作動させて逆浸透膜分離装置20の運転を開始するとともに、逆浸透膜分離装置20からの逆浸透膜透過水を被処理水として脱塩室に供給しつつ直流電源35によって陽極31及び陰極32に直流電圧を印加して電気式脱イオン水製造装置30の運転を開始する。
【0035】
システムの運転を停止する場合には、ポンプ10を停止して逆浸透膜分離装置20の運転を停止するとともに、直流電源35を停止して電気式脱イオン水製造装置30の運転を停止する。
【0036】
ところで逆浸透膜分離装置では、その運転中に、逆浸透膜を挟んで1次側と2次側との間での不純物濃度の差が例えば数十倍となる。運転によってこのような不純物濃度差が生じたまま装置の運転を停止すると、逆浸透膜を介して1次側のイオンが2次側に濃度拡散する現象が発生し、その結果、次に逆浸透膜分離装置の運転を再開したときに、再開直後の透過水における不純物濃度が一時的に上昇する。このように不純物濃度が上昇した透過水が電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に被処理水として与えられると、電気式脱イオン水製造装置において十分な脱イオンがなされず、結果として、脱イオン水における不純物濃度が上昇することとなる。そこで、
図1に示すシステムにおいては、運転を停止する間に、すなわちこのシステムを停止しようとする際に、直流電源35を停止して電気式脱イオン水製造装置30の運転を停止するとともに、その後の運転再開時における水質立ち上がりを速くするために、逆浸透膜分離装置20内において逆浸透膜21の1次側に存在する不純物の量を減少させる不純物除去工程を実施してから、システム全体を停止状態とすることが好ましい。不純物除去工程は、例えば、逆浸透膜21のフラッシングを行うことにより、フラッシング排水として逆浸透膜21の1次側に存在する不純物を外部に排出し、逆浸透膜分離装置20内で1次側に存在する不純物の量を減少させる工程である。
【0037】
逆浸透膜分離装置における逆浸透膜のフラッシングとは、一般に、逆浸透膜を透過させることなく逆浸透膜分離装置に供給される水のほとんどを逆浸透膜の1次側に流すことによって、逆浸透膜に付着しているものを代表とする不純物を逆浸透膜分離装置の外部に排出する処理である。このとき不純物は、逆浸透膜分離装置に供給された水とともに、1次側に接続する配管を介してフラッシング排水として外部に排出される。フラッシングを行う方法としては、給水用のポンプの吐出圧力を下げる、あるいは、濃縮水の出口の弁を開放するなどのものがある。
【0038】
図1に示すシステムの場合、ポンプ10を動作させたままフラッシング弁23を開けることにより、フラッシングを実行することができる。このとき、フラッシング排水はフラッシング弁23を介して外部に流出する。フラッシングは例えば数十秒にわたって実行し、その後、ポンプ10を停止させフラッシング弁23を閉じることによって、逆浸透膜分離装置20を完全に停止させる。
【0039】
図6は、電気式脱イオン水製造装置を備えるシステムの構成の別の例を示している。このシステムは、
図1に示したものにおいて、逆浸透膜透過水及び処理水を逆浸透膜分離装置20の1次側に循環して逆浸透膜分離装置20に通水できるようにしたものである。そのために
図6に示すシステムでは、
図1に示すシステムに対し、電気式脱イオン水製造装置30の処理水出口に設けられた流量計60と、ポンプ10の入口側に設けられた弁61と、弁61とポンプ10との接続点に対して流量計60の出口から分岐して接続し逆浸透膜分離装置20の1次側に水を循環させる配管62と、配管62に設けられた弁63と、逆浸透膜分離装置20の2次側の出口から分岐して弁63の出口側に接続する配管64と、配管64に設けられた弁65とが追加されている。
図6は本発明に基づく電気式脱イオン水製造装置を備えるシステムを概略的に示すものであって、弁61とポンプ10を接続する原水ラインや、逆浸透膜透過水のライン、処理水のラインに、適宜、タンク、ポンプ、弁などを設置してもよい。
【0040】
図6に示すシステムでの電気式脱イオン水製造装置30としては、
図4に示されるように、直流電源35から陽極31及び陰極32の少なくとも一方へ接続する配線に逆電流阻止用のダイオードDが設けられ、このダイオードDに対し、制御信号によってオン/オフが制御されるスイッチSWが並列に接続しているものが用いられる。
【0041】
流量計60は、そこを流れる処理水の流量を計測することにより、電気式脱イオン水製造装置30が通常の運転状態にあるかどうかを判別するものであり、その判別結果が、制御信号としてスイッチSWに供給される。電気式脱イオン水製造装置30が通常の運転状態にあるかどうかが分かればよいので、流量計60の代わりに圧力センサを設けてもよく、その設置場所も、電気式脱イオン水製造装置30の入口側である被処理水側でもよく、あるいは、濃縮室に接続するライン上でも、電極室に接続するライン上でもよい。さらには、流量計も圧力センサも設けずに電気式脱イオン水製造装置30の直流電源35を制御する制御装置等から制御信号が出力されるようにしてもよい。
【0042】
次に、
図6に示したシステムの運転方法について説明する。
【0043】
このシステムにより脱イオン水を電気式脱イオン水製造装置30からの処理水として生成する場合、弁61を開け、フラッシング弁23及び弁63,65を閉じた状態でポンプ10を作動させて逆浸透膜分離装置20の運転を開始するとともに、逆浸透膜分離装置20からの逆浸透膜透過水を被処理水として脱塩室に供給しつつ直流電源35によって陽極31及び陰極32に直流電圧を印加して電気式脱イオン水製造装置30の運転を開始する。
【0044】
運転中のシステムの運転を停止する際には、直流電源35を停止して電気式脱イオン水製造装置30の運転を停止するとともに、その後の運転再開時における水質立ち上がりを速くするために、逆浸透膜分離装置20内において逆浸透膜21の1次側に存在する不純物の量を減少させる不純物除去工程を実施してから、システム全体を停止状態とする。ここで示す例では、不純物除去工程として、いくつかの態様がある。
【0045】
不純物除去工程として、
図1に示したものと同様に、逆浸透膜分離装置20においてフラッシングを行うことが挙げられる。
図6に示したシステムでは、逆浸透膜透過水及び処理水を循環させる配管62,64が設けられていることにより、フラッシングを行う際に、原水のほかにも逆浸透膜透過水あるいは処理水を逆浸透膜分離装置20に通水してフラッシングに用いることができる。フラッシングに原水を用いる場合には、弁61を開き、弁63,65を閉じた状態で、
図1に示したシステムの場合と同様の手順でフラッシングを行えばよい。
【0046】
逆浸透膜透過水を用いてフラッシングを行う場合には、このシステムの運転時に逆浸透膜透過水の一部を配管62上のポンプ10付近に設けられたタンク(不図示)に溜めておき、フラッシング時にポンプ10を動作させたまま逆浸透膜透過水フラッシング弁23と弁65とを開け、弁61を閉じればよい。フラッシングは例えば数十秒にわたって実行し、その後、ポンプ10を停止させフラッシング弁23と弁65とを閉じることによって、逆浸透膜分離装置20を完全に停止させる。フラッシングに逆浸透膜透過水を用いた場合には、原水を用いる場合に比べ、逆浸透膜分離装置20内で逆浸透膜21の1次側における不純物の量をより低減できるので、運転停止期間中に1次側から2次側に濃度拡散する不純物イオンも低減でき、後述する実施例から明らかになるように、運転再開時に、電気式脱イオン水製造装置30から得られる処理水での水質立ち上がりがより速くなる。
【0047】
電気式脱イオン水製造装置30からの処理水を用いてフラッシングを行う場合には、このシステムの運転時に処理水の一部を配管62上のポンプ10付近に設けられたタンク(不図示)に溜めておき、フラッシング時にポンプ10を動作させたままフラッシング弁23と弁63とを開け、弁61を閉じればよい。フラッシングは例えば数十秒にわたって実行し、その後、ポンプ10を停止させフラッシング弁23と弁63とを閉じることによって、逆浸透膜分離装置20を完全に停止させる。処理水は逆浸透膜透過水に比べてさらに不純物含有量が小さいので、フラッシングに処理水を用いる場合には、原水を使用する場合に比べてはもちろんのこと、逆浸透膜透過水を使用する場合に比べても、運転再開時における処理水の水質立ち上がりが速くなる。
【0048】
図6に示したシステムにおける不純物除去工程の別の態様としては、フラッシングを行う代わりに、逆浸透膜透過水または処理水を逆浸透膜分離装置20に対する供給水として通水し、逆浸透膜分離装置20を通常と同様に動作させるというものがある。逆浸透膜透過水を供給水として逆浸透膜分離装置20を動作させることにより不純物除去工程を実行する場合には、このシステムの運転時に処理水の一部を配管62上のポンプ10付近に設けられたタンク(不図示)に溜めておき、フラッシング時に電気式脱イオン水製造装置30を停止させるとともにポンプ10を動作させたまま弁65を開けて弁61を閉じ、逆浸透膜透過水が配管64,62を介して逆浸透膜分離装置20に供給されるようにする。フラッシング弁23は閉じたままとする。この状態を例えば数十秒間維持することによって、逆浸透膜分離装置20内で逆浸透膜21の1次側に存在していた不純物は濃縮水として外部に排出されることになる。その後、ポンプ10を停止し弁65も閉じて、システム全体を停止状態とする。
【0049】
一方、処理水を供給水として逆浸透膜分離装置20を動作させることにより不純物除去工程を実行する場合には、この運転時に処理水の一部を配管62上のポンプ10付近に設けられたタンク(不図示)に溜めておき、フラッシング時にポンプ10を動作させたまま弁63を開けて弁61を閉じ、処理水が配管62を介して逆浸透膜分離装置20に供給されるようにする。フラッシング弁23は閉じたままとする。このとき、逆浸透膜分離装置20の2次側から逆浸透膜透過水が流出して電気式脱イオン水製造装置30の脱塩室に流入するので、直流電源35も動作させ続けて電気式脱イオン水製造装置30を動作状態としておく。この状態を例えば数十秒間維持することによって、逆浸透膜分離装置20内で逆浸透膜21の1次側に存在していた不純物は濃縮水として外部に排出されることになる。その後、直流電源35とポンプ10を停止し弁63も閉じて、システム全体を停止状態とする。
【0050】
なお、脱イオン水製造システムの運転時に逆浸透膜透過水や処理水の一部を溜めるタンクは、弁61の上流側に設けられる原水タンクと兼用してもよい。
【0051】
図6に示すシステムでは、電気式脱イオン水製造装置30内に設けられているダイオードDによって運転休止期間中の逆電流が阻止され、さらに不純物除去工程によって、運転を休止する際に逆浸透膜分離装置の1次側に存在する不純物の量が低減されるので、運転の休止後、運転を再開したときに、処理水の水質立ち上がりを速くすることができる。また、運転期間中にダイオードDの両端をスイッチによって短絡するので、ダイオードDの発熱を抑制することもできる。
【0052】
運転再開時の水質立ち上がりの速さに関し、逆浸透膜分離装置20から電気式脱イオン水製造装置30に供給される逆浸透膜透過水の水質の観点で検討すると、
図1や
図6に示すシステムは、運転停止期間中における逆浸透膜分離装置の2次側での不純物濃度の上昇を防止することによって、運転再開時に処理水の水質立ち上がりを速くすることができる。したがって、
図1や
図6に示したシステムにおいて、例えば逆浸透膜分離装置20と電気式脱イオン水製造装置30とを接続する配管に遮断弁を設けるなどして逆浸透膜分離装置20を単独で動作させることができるようにした上で、システムの運転停止期間中に、定期的に、逆浸透膜分離装置20に通水して逆浸透膜分離装置20を運転し、逆浸透膜分離装置20の2次側における不純物濃度を低下させるようにしてもよい。このとき、遮断弁などによって、逆浸透膜分離装置20からの逆浸透膜透過水が電気式脱イオン水製造装置30には流れ込まないようにする。逆浸透膜分離装置20には原水を通水しても、逆浸透膜透過水を通水してもよい。
【0053】
次に、本発明に基づく電気式脱イオン水製造装置の別の実施形態について説明する。
【0054】
電気式脱イオン水製造装置に設けられるEDIスタックにおいて、濃縮室内にイオン交換樹脂などのイオン交換体を充填すると、イオン交換体自体がイオン伝導による導電性を示すので、個々のEDIスタックにおける運転電圧を引き下げることが可能となる。
【0055】
運転電圧が高いEDIスタックを用いる場合には、1台の直流電源で1台のEDIスタックを運転するのが一般的であるから、大流量での処理を実行するために複数台のEDIスタックを設置する場合にはEDIスタックの台数と同数の直流電源を用意する必要があり、コスト増につながっていた。これに対し、運転電圧の低いEDIスタックを用いれば、1台の直流電源の容量によって複数台のEDIスタックを運転することが可能となり、直流電源の台数を減らすことができてコストの大幅な削減が可能となる。
【0056】
複数台のEDIスタックを定電流で運転するためには、これらの複数台のEDIスタックを電気的に直列に接続した上で1台の直流電源から直流電圧を印加することとなる。直列接続された複数台のEDIスタックを1台の直流電源で運転する電気式脱イオン水製造装置を運転した場合、運転を停止したときに各EDIスタック間において、それぞれのEDIスタックの電位差により逆電流が流れることが予想される。したがって、このような電気式脱イオン水製造装置では、直列接続における両端のEDIスタックと直流電源の1対の出力端子との間にそれぞれ逆電流阻止用のダイオードを挿入するほかに、隣接するEDIスタック間にも逆電流阻止用のダイオードを設けることで、運転再開時の水質立ち上がり時間をより短縮することが可能になる。
【0057】
図7は、2台のEDIスタック33を直列に接続して1台の直流電源で運転するようにした電気式脱イオン水製造装置30を示している。1番目(図示左端)のEDIスタック33の陽極と直流電源35の正側出力端子とがダイオードDを介して接続し、1番目のEDIスタック33の陰極と2番目のEDIスタックの陽極とがダイオードDを介して接続し、2番目のEDIスタック33の陰極と直流電源35の負側出力端子とがダイオードDを介して接続している。
【0058】
また、複数台のEDIスタックを1台の直流電源によって定電圧で運転する場合もあり得る。この場合はEDIスタックを相互に並列に接続することになるが、運転を停止したときにEDIスタック間の電位差によって逆電流が流れることが考えられる。したがって、EDIスタックごとに、その陽極に接続するダイオードとその陰極に接続するダイオードとの合わせて2つの逆電流阻止用のダイオードを設けることとして、各EDIスタックの陽極に接続されるダイオードはそれらのアノードが直流電源の正側出力端子に共通接続し、各EDIスタックの陰極に接続されるダイオードはそれらのカソードが直流電源の負側出力端子に共通接続されるようにする。
図8は、3台のEDIスタック33を電気的に並列に配置してこれらを1台の直流電源で運転するようにした電気式脱イオン水製造装置を示している。この電気的脱イオン水製造装置には6個のダイオードDが設けられており、このうち3個のダイオードDのアノードが直流電源35の正側出力端子に共通接続し、これらの3個のダイオードDのカソードは、3台のEDIスタック33の陽極にそれぞれ接続している。残り3個のダイオードDのカソードは直流電源35の負側出力端子に共通接続し、これらの3個のダイオードDのアノードが3台のEDIスタック33の陰極にそれぞれ接続している。
【0059】
図7及び
図8に示したような複数台のEDIスタック33を単一の直流電源35で運転する電気式脱イオン水製造装置においても、逆電流阻止用の各ダイオードDに対し、装置の運転期間中に当該ダイオードDのアノードとカソードとの間を短絡してダイオードDの発熱を防止するスイッチSWを並列に設けてもよい。
【実施例】
【0060】
次に、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0061】
[実施例1]
電気式脱イオン水製造装置30の前段に逆浸透膜分離装置20を備える
図6に示したシステムを組み立てた。逆浸透膜分離装置20としては、超低圧膜である逆浸透膜(RO膜)を有するものを用いた。逆浸透膜分離装置20からの逆浸透膜透過水の温度が20±2℃となるように制御を行った。
【0062】
電気式脱イオン水製造装置30としては
図4に示すものを用い、EDIスタック33としては、単一のセルを有するものを使用した。
図9は、組み立てた電気式脱イオン水製造装置におけるEDIスタック33の構成を示している。陽極31は陽極室41に設けられており、陰極32は陰極室51に設けられている。陽極室41と陰極室51の間には、陽極室41側から、濃縮室43、脱塩室40、濃縮室49が配置し、陽極室41と濃縮室43との間、脱塩室40と濃縮室49との間には、それぞれ、カチオン交換膜42,48が設けられている。濃縮室43と脱塩室40の間、濃縮室49と陰極室51との間には、それぞれ、アニオン交換膜44,50が設けられている。
【0063】
脱塩室40は、陽極31側の第1小脱塩室45と陰極32側の第2小脱塩室47とに分けれており、第1小脱塩室45と第2小脱塩室47の間にはアニオン交換膜46が設けられている。逆浸透膜透過水である被処理水は、図示上側からまず第1小脱塩室45に供給され、第1小脱塩室45の下端から第2小脱塩室47の下端に入り、処理水すなわち脱イオン水として第2小脱塩室の上端から排出されるようになっている。
【0064】
陽極室41の寸法を100×300×4mmとし、陽極室41内にはカチオン交換樹脂を充填した。陰極室51の寸法を100×300×4mmとし、陰極室51内にはアニオン交換樹脂を充填した。濃縮室43,49については、いずれも、アニオン交換樹脂が充填された100×300×4mmの寸法のものとした。第1小脱塩室45については、100×300×8mmの寸法としてアニオン交換樹脂を充填した。第2小脱塩室47については、100×300×8mmの寸法とし、その下部にはカチオン交換樹脂を充填し、上部にはアニオン交換樹脂を充填した。
【0065】
このシステムの運転時において、逆浸透膜分離装置20から逆浸透膜透過水は、脱塩室40に供給されるほか、濃縮室43,49、陽極室41、陰極室51にも供給されるようにした。
【0066】
最初に初期運転として、フラッシング弁23及び弁63,65を閉じた状態で原水供給用の弁61を開け、ポンプ10を駆動して逆浸透膜分離装置20を動作させ、さらに、電気式脱イオン水製造装置30において直流電源35から陽極31及び陰極32に直流電圧を印加することによって電気式脱イオン水製造装置30を動作させた。このとき、脱塩室40での被処理水の通水流量を20L/hとし、濃縮室43,49での水の通水流量をそれぞれ5L/hとし、陽極室41及び陰極室51での水の通水流量をそれぞれ10L/hとした。この初期運転は2時間にわたって実行した。ポンプ10を停止して逆浸透膜分離装置20を運転を停止し、同時に直流電源35からの電圧印加を停止して電気式脱イオン水製造装置30の運転も停止することによって、初期運転を終了させた。初期運転の開始時に原水の導電率を測定し、初期運転の終了時に、原水及び逆浸透膜透過水の導電率を測定し、処理水の水質の指標として処理水の抵抗率を測定した。
【0067】
48時間にわたって停止状態を維持し、その後、システムの運転を再開した。運転再開後の運転条件は初期運転時と同一である。運転再開時(すなわち、初期運転の開始時から50時間の経過時)に原水及び逆浸透膜透過水の導電率を測定し、さらに運転再開後の原水及び逆浸透膜透過水の導電率と処理水の抵抗率の時間変化を調べた。停止期間中は、電気式脱イオン水製造装置20においてスイッチSWが遮断状態となっており、ダイオードDによって逆電流が阻止された。導電率及び抵抗率の測定結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[実施例2]
実施例1において、初期運転の終了時に原水による逆浸透膜分離装置20のフラッシング処理を行うようにして、システムを動作させた。
【0070】
実施例1と同様に初期運転を開始して2時間にわたって初期運転を行った後、初期運転の終了時に、直流電源35からの電圧印加を停止した後もポンプ10を駆動させ続け、同時にフラッシング弁23を全開とすることによって、30秒間にわたって原水による逆浸透膜21のフラッシングを行った。このフラッシング処理により、逆浸透膜分離装置20内において逆浸透膜21の1次側に存在する不純物の量を減少させた。フラッシングが終了したら直ちにポンプ10を停止しフラッシング弁23も閉じて、システムの全体を停止状態とした。
【0071】
48時間にわたって停止状態を維持し、その後、システムの運転を再開した。運転再開後の運転条件は初期運転時と同一である。運転再開時に原水及び逆浸透膜透過水の導電率を測定し、さらに運転再開後の原水及び逆浸透膜透過水の導電率と処理水の抵抗率の時間変化を調べた。導電率及び抵抗率の測定結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例3]
実施例1において、初期運転の終了時に逆浸透膜透過水による逆浸透膜分離装置20のフラッシング処理を行うようにして、システムを動作させた。
【0074】
実施例1と同様に初期運転を開始して2時間にわたって初期運転を行った後、初期運転の終了時に、直流電源35からの電圧印加を停止した後もポンプ10を駆動させ続け、同時にフラッシング弁23及び弁65を開け、弁61を閉じることによって、30秒間にわたって逆浸透膜透過水による逆浸透膜21のフラッシングを行い、逆浸透膜21の1次側に存在する不純物の量を減少させた。フラッシングが終了したら直ちにポンプ10を停止しフラッシング弁23、弁65も閉じて、システムの全体を停止状態とした。
【0075】
48時間にわたって停止状態を維持し、その後、システムの運転を再開した。運転再開後の運転条件は初期運転時と同一である。運転再開時に原水及び逆浸透膜透過水の導電率を測定し、さらに運転再開後の原水及び逆浸透膜透過水の導電率と処理水の抵抗率の時間変化を調べた。導電率及び抵抗率の測定結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
[比較例1]
逆電流阻止用のダイオードの有無による違いを検討した。電気式脱イオン水製造装置30において逆電流阻止用のダイオードDとスイッチSWとを設けないで陰極32と直流電源35の負側出力端子とを直接接続した以外は実施例1と同一にしてシステムを動作させ、導電率及び抵抗率を測定した。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
実施例1〜3と比較例1とを比較すると、逆電流阻止用のダイオードを設けた各実施例では、運転再開後30分(経過時間では50.5時間)の時点において既に処理水の抵抗率が16.8MΩ・cmとなって速やかな水質立ち上がりが得られたのに対し、逆電流阻止用のダイオードを設けない場合(比較例1)では、運転再開後1時間(経過時間では51.0時間)を経過しても処理水の抵抗率が14.1MΩ・cmと悪く、十分な水質立ち上がりが得られないことが分かった。
【0080】
また初期運転終了時に逆浸透膜のフラッシングを行ったことの効果を検討すると、フラッシングを行った場合(実施例2,3)には、行わなかった場合(実施例1)に比べ、運転再開時での逆浸透膜透過水の導電率が小さく、その分、逆浸透膜透過水での不純物量が少ないことが分かる。また、運転再開後から0.1時間(経過時間では50.1時間)での処理水の抵抗率から、フラッシングを行った方が抵抗率が高くて処理水の水質が良好であり、運転停止時に逆浸透膜のフラッシングを行い逆浸透膜の1次側に存在する不純物を外部に排出して不純物量を減少させることによって、運転再開時の処理水の水質立ち上がりがよくなることが分かった。フラッシングに用いる水の違いについて検討すると、フラッシングに逆浸透膜透過水を用いた場合(実施例3)の方が、フラッシングに原水を用いる場合(実施例2)に比べ、運転再開時における逆浸透膜透過水の不純物濃度が低く、また、経過時間50.1時間での処理水抵抗率が高く、運転再開時の処理水の水質立ち上がりがより速くなることが分かった。
【0081】
[実施例4]
図10に示す電気式脱イオン水製造装置を組み立てた。この電気式脱イオン水製造装置は3台のEDIスタック33を直列に接続して1台の直流電源35によって運転するようにしたものであり、直流電源35の正側出力端子及び負側出力端子にそれぞれ逆電流阻止用のダイオードDが設けられるとともに、直列接続において隣接するEDIスタック33の間にも逆電流阻止用のダイオードDが設けられており、合計で4個のダイオードDが設けられている。各EDIスタック33としては、実施例1において用いたEDIスタック33(
図9参照)を使用した。
【0082】
各EDIスタック33に対する通水条件は実施例1の場合と同様にして、直流電源35によって直流電圧を印加し、10時間にわたって初期運転を行って3台のEDIスタック33の間に性能差がないことを確認した。このとき、直列接続における2番目のEDIスタック33(図示「A」で示されたスタック)の処理水の抵抗率は18.2MΩ・cmであった。初期運転の終了後、10時間にわたって停止状態とし、その後、装置を再度起動して、初期運転時と同じ通水条件として、2番目のEDIスタック33(すなわちスタックA)からの処理水の水質の時間変化を調べた。結果を
図12に示す。
【0083】
[比較例2]
図11に示す電気式脱イオン水製造装置を組み立てた。この電気式脱イオン水製造装置は、実施例4に示すものと同様のものであるが、隣接するEDIスタック33の間に逆電流阻止用のダイオードが設けられていない点で、実施例4に示すものと異なっている。
【0084】
各EDIスタック33に対する通水条件は実施例4の場合と同様にして、直流電源35によって直流電圧を印加し、10時間にわたって初期運転を行って3台のEDIスタック33の間に性能差がないことを確認した。このとき、直列接続における2番目のEDIスタック33(図示「B」で示されたスタック)の処理水の抵抗率は18.2MΩ・cmであった。初期運転の終了後、10時間にわたって停止状態とし、その後、装置を再度起動して、初期運転時と同じ通水条件として、2番目のEDIスタック33(すなわちスタックB)からの処理水の水質の時間変化を調べた。結果を
図12に示す。
【0085】
図12において運転再開後0.1時間での処理水質を比較すると、隣接するEDIスタック33間にもダイオードDを設ける実施例4の方が、隣接するEDIスタック33間にはダイオードDを設けない比較例2よりも処理水の水質が高く、複数のEDIスタックを直列接続する場合においては隣接するEDIスタック間にも逆電流阻止用のダイオードを設ける方が水質立ち上がりが速くなることが分かった。