特許第6109733号(P6109733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6109733液体クロマトグラフィー用カラム及びヘモグロビン類の分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109733
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィー用カラム及びヘモグロビン類の分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20170327BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   G01N30/88 Q
   G01N30/60 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-505981(P2013-505981)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2012057135
(87)【国際公開番号】WO2012128276
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-62936(P2011-62936)
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】與谷 卓也
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−160731(JP,A)
【文献】 特開2000−131301(JP,A)
【文献】 特開2007−183236(JP,A)
【文献】 特開2010−260052(JP,A)
【文献】 特開2004−222831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムパイプ及びエンドフィッティングを有し、充填剤粒子を充填して用いられる液体クロマトグラフィー用カラムであって、
前記カラムパイプ及び前記エンドフィッティングは、ポリエチレン又はポリメチルメタクリレートからなり、カラム内に充填される充填剤粒子の平均粒径が2〜20μmである液体クロマトグラフィー用カラムを用いるヘモグロビン類の分析方法。
【請求項2】
分析時のカラムの通液圧力が0.8MPa以上4.0MPa以下である請求項記載のヘモグロビン類の分析方法。
【請求項3】
分析時の溶離液の送液速度が0.5mL/分以上2.5mL/分以下である請求項1又は2記載のヘモグロビン類の分析方法。
【請求項4】
ヘモグロビン類の測定に用いる緩衝液の塩濃度が10mmol/L以上1000mmol/L以下である請求項1、2又は3記載のヘモグロビン類の分析方法。
【請求項5】
ヘモグロビンA0、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS、ヘモグロビンC、ヘモグロビンD、及び、ヘモグロビンEからなる群より選択される少なくとも1種の測定に用いる請求項1、2、3又は4記載のヘモグロビン類の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィー用カラムに関する。また、本発明は、該液体クロマトグラフィー用カラムを用いるヘモグロビン類の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化学、生化学、医学等の分野において、検体中の成分の測定や分析に液体クロマトグラフィーが汎用されている。例えば、医学の分野では、糖尿病診断の指標となるヘモグロビンA1cの測定に液体クロマトグラフィーが利用されている。ヘモグロビンA1cは、血液中の糖がヘモグロビンのβ鎖N末端と化学的に結合した糖化ヘモグロビンであり、ヘモグロビン類中のヘモグロビンA1cの割合、すなわち、糖化ヘモグロビンと非糖化ヘモグロビンとの合計に対する糖化ヘモグロビンの割合は、1〜2ヶ月の期間の血糖値の平均を反映すると言われている。ヘモグロビン類中のヘモグロビンA1cの割合を示すヘモグロビンA1c値(%)は、血糖値と異なり、一時的な変動を示さないため、糖尿病診断の指標として広く用いられている。
【0003】
従来、高速液体クロマトグラフィーに用いられるカラムとしては、主に、耐圧性に優れるステンレス製のものが用いられていた。
しかしながら、ステンレス製のカラムを用いて、タンパク質、核酸、糖類等の生体由来の試料を測定すると、カラム内面に生体由来成分が非特異的に吸着し、分析に悪影響を及ぼすことがある。特に、ヘモグロビンA1cの分析時にカラム内面への非特異吸着が起こると、正確な測定値が得られないため、大きな問題となる。そのため、特許文献1に開示されているようなシリコーン樹脂等によるコーティング処理を行う必要がある。
【0004】
また、特許文献2には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に代表される強度(耐圧性)に優れたエンジニアリングプラスチックを用いたカラムが開示されている。このようなカラムを用いれば、生体由来成分の非特異吸着を抑制できる。
しかしながら、PEEKに代表されるエンジニアリングプラスチックは高価であるというデメリットがある。
そのため、安価に作製でき、生体由来成分の非特異吸着を抑制できるカラムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−131302号公報
【特許文献2】特開平6−229999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安価に作製でき、生体由来成分の非特異吸着を抑制できる液体クロマトグラフィー用カラムを提供することを目的とする。また、本発明は、該液体クロマトグラフィー用カラムを用いるヘモグロビン類の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カラムパイプ及びエンドフィッティングを有し、充填剤粒子を充填して用いられる液体クロマトグラフィー用カラムであって、上記カラムパイプ及び上記エンドフィッティングは、ポリエチレン又はポリメチルメタクリレートからなり、カラム内に充填される充填剤粒子の平均粒径が2〜20μmである液体クロマトグラフィー用カラムを用いるヘモグロビン類の分析方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
カラム内面への生体由来成分の非特異吸着を抑制し、正確な測定を行うためには、カラムを構成する材料を、疎水性の高いもの(具体的には、水の接触角が90°以上)にすることが考えられる。しかしながら、実際に疎水性の高い材料からなるカラムを作製してヘモグロビン類等の試料の測定を行った際、材料によっては分離性能が悪化することがある。また、比較的疎水性の低い材料を用いて作製したカラムの中にも、ヘモグロビン類等の試料の測定に用いた場合に良好に測定対象を分離検出できるものがある。そのため、カラムを構成する材料の疎水性の程度は、ヘモグロビン類等の分離性能には必ずしも影響しないと考えられる。
そこで本発明者は、疎水性の程度に関連付けることなく、種々の材料について鋭意検討した結果、カラムパイプ及びエンドフィッティングの材料として、ポリエチレン又はポリメチルメタクリレートを用いた場合に、生体由来成分の非特異吸着を抑制し、正確な測定を行うことができる液体クロマトグラフィー用カラムを安価に作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液体クロマトグラフィー用カラム(以下、「本発明のカラム」ともいう)は、ポリエチレン又はポリメチルメタクリレートからなるカラムパイプ及びエンドフィッティングを有する。疎水性の高いポリエチレンだけでなく、比較的疎水性の低いポリメチルメタクリレートを用いた場合にも、生体由来成分の非特異吸着が抑制され、正確な測定を行うことができる。また、ポリエチレン及びポリメチルメタクリレートは汎用樹脂であるため、本発明のカラムは安価に作製でき、焼却処分が可能なため、廃棄も容易である。
【0010】
ポリエチレン又はポリメチルメタクリレートからなるカラムを用いる場合の生体由来成分の非特異吸着を抑制する効果は、特にヘモグロビン類の測定において顕著に発揮される。即ち、本発明の液体クロマトグラフィー用カラムを用い、特定の圧力条件下で測定することによって、カラムの破損や液漏れ等の不具合を生じさせることなく、高い分離性能でヘモグロビン類を分析できる。
【0011】
本発明のカラムの製造方法としては、例えば、射出成型、押出成型、切削加工等が挙げられる。
また、カラムパイプ及びエンドフィッティングの形状は特に限定されない。カラムパイプとエンドフィッティングとを接続する方式としては、例えば、フェラル式、ねじ込み式等が挙げられる。
【0012】
本発明のカラムに充填剤粒子を充填した後、カラムに所定の条件で溶離液及び測定試料を送液することにより、試料が測定される。特に、ヘモグロビン類を測定する際、カラムパイプ及びエンドフィッティングが、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなるカラムを用いた場合は、カラム内面への非特異吸着が起こりやすいが、本発明のカラムを用いた場合はカラム内面への非特異吸着を抑制できるため、高い分離性能でヘモグロビン類を分析できる。
本発明のカラムを用いるヘモグロビン類の分析方法もまた、本発明の一つである。
【0013】
本発明のヘモグロビン類の分析方法に用いる液体クロマトグラフは、溶離液送液用のポンプ、検出器等を備えた公知の液体クロマトグラフに、充填剤粒子を充填した本発明のカラムを接続することにより構成することができる。
本発明のヘモグロビン類の分析方法において、分析時のカラムの通液圧力は、充填剤粒子の粒径や粒度分布、カラム内径、カラム長さ、溶離液の流速等によって決定される。従って、その圧力を一義的に決定することはできないため、所望の分離性能が得られる範囲内で適宜調整すればよいが、カラムの破損や液漏れ等の不具合を生じさせることなく、高い分離性能でヘモグロビン類を分析できるように、分析時のカラムの通液圧力を4.0MPa以下にすることが好ましく、3.0MPa以下にすることがより好ましい。
なお、カラムの通液圧力は、送液ポンプとカラムとの間に接続した圧力計から圧力値を読み取ることにより測定される。
【0014】
分離性能にも大きく影響する充填剤粒子の平均粒径、カラムの内径、カラムの長さ、及び、溶離液の送液速度については、以下の範囲内で調整することが好ましい。
【0015】
充填剤粒子の平均粒径の好ましい下限は2μm、好ましい上限は20μmである。充填剤粒子の平均粒径が2μm未満であると、カラムの通液圧力が高くなり、カラムの破損や液漏れ等の不具合が生じることがある。充填剤粒子の平均粒径が20μmを超えると、分離性能が低下し、ヘモグロビンA1cの測定に用いた場合にはヘモグロビン類の分離が不充分となることがある。上記充填剤粒子の平均粒径のより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は15μmである。
なお、充填剤粒子の平均粒径は、粒度分布測定装置(Particle Sizing Systems社製、「Accusizer780」)で測定された値である。
【0016】
本発明のカラムの内径の好ましい下限は2.0mm、好ましい上限は6.0mmである。カラムの内径が2.0mm未満であると、カラム内を流れる移動相の線速度が高くなりすぎて、カラムの通液圧力が高くなり、カラムの破損や液漏れ等の不具合が生じることがある。カラムの内径が6.0mmを超えると、カラム内における検体や移動相の拡散が起こりすぎて、分離性能が低下することがある。カラムの内径のより好ましい下限は3.0mm、より好ましい上限は5.0mmである。
【0017】
本発明のカラムの長さの好ましい下限は10mm、好ましい上限は50mmである。カラムの長さが10mm未満であると、理論段数の低下に伴って分離性能が低下することがある。カラムの長さが50mmを超えると、カラムの通液圧力が高くなり、カラムの破損や液漏れ等の不具合が生じることがある。カラムの長さのより好ましい下限は15mm、より好ましい上限は40mmである。
【0018】
送液用ポンプによる溶離液の送液速度の好ましい下限は0.5mL/分、好ましい上限は2.5mL/分である。溶離液の送液速度が0.5mL/分未満であると、流速が遅いために測定時間が長くなる。溶離液の送液速度が2.5mL/分を超えると、カラムの通液圧力が大きくなり、カラムの破損や液漏れ等の不具合を生じことがある。上記溶離液の送液速度のより好ましい下限は1.0mL/分、より好ましい上限は2.0mL/分である。
【0019】
本発明のカラムに充填する充填剤粒子としては、従来公知のイオン交換液体クロマトグラフィー用の充填剤粒子が用いられる。なかでも、特許第3990713号に開示されているような、イオン交換基を有し、かつ、最表面がオゾン水により親水化処理された充填剤粒子が好適である。このような充填剤粒子を用いることにより、カラムの通液圧力を低くしても高い分離性能でヘモグロビン類等の試料を測定できる。
【0020】
本発明のカラムの上流側及び下流側には、カラム内の充填剤粒子が筒状容器から漏れ出るのを防止するためのフィルタが配置されていることが好ましい。該フィルタは、異物を捕捉するためのものではなく、充填剤粒子が筒状容器から漏れ出るのを防止することができればよい。
フィルタとしては、例えば、紙、樹脂、金属等からなるものが挙げられる。なかでも、特開2006−189427号公報に記載されたような、孔径の異なる3層からなる構造を有するステンレス製のフィルタが好適である。
フィルタの濾過面の形状は、円状でもよいし、その他の形状でもよい。
【0021】
繰り返して同一のカラムを用いて測定する場合には、カラムの上流側には、異物を捕捉するためのプレフィルタが設置されていることが好ましい。プレフィルタは、本発明のカラムと別々に配置されていてもよく、1つの筒状容器内に一体化されて配置されていてもよい。いずれの場合も、プレフィルタがカラムの上流となるように装置の配管に結合される。
【0022】
本発明のヘモグロビン類の分析方法において、液体クロマトグラフィーに用いる溶離液としては、公知の塩化合物を含む緩衝液類や有機溶媒類を用いることが好ましく、具体的には例えば、有機酸、無機酸、及び、これらの塩類、アミノ酸類、グッドの緩衝液等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等が挙げられる。
アミノ酸類としては、例えば、グリシン、タウリン、アルギニン等が挙げられる。
また、緩衝液には、他に一般に添加される物質、例えば、界面活性剤、各種ポリマー、親水性の低分子化合物、カオトロピックイオン類等を適宜添加してもよい。
【0023】
ヘモグロビン類の測定を行う際の緩衝液の塩濃度の好ましい下限は10mmol/L、好ましい上限は1000mmol/Lである。緩衝液の塩濃度が10mmol/L未満であると、イオン交換反応が行なわれず、ヘモグロビン類を分離することができなくなることがある。緩衝液の塩濃度が1000mmol/Lを超えると、塩が析出しシステムに悪影響を及ぼすことがある。
【0024】
本発明のヘモグロビン類の分析方法により、ヘモグロビンA0、ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)、ヘモグロビンA2等を測定することができる。また、異常ヘモグロビン類、例えば、ヘモグロビンS、ヘモグロビンC、ヘモグロビンD、ヘモグロビンE等を測定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安価に作製でき、生体由来成分の非特異吸着を抑制できる液体クロマトグラフィー用カラムが提供される。ステンレス製カラムを使用する場合、シリコーン樹脂によるコーティング処理等の表面処理を必要とするが、本発明のカラムはそのような表面処理が不要である。また、ポリエチレン及びポリメチルメタクリレートは汎用樹脂のため安価であり、経済的なメリットも大きい。更に、本発明のカラムは焼却処分が可能なため、容易に廃棄できる。
また、本発明によれば、該液体クロマトグラフィー用カラムを用いるヘモグロビン類の分析方法が提供される。本発明のヘモグロビン類の分析方法によれば、生体由来成分の非特異吸着を抑制でき、正確な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ポリエチレン製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図2】ポリメチルメタクリレート製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図3】シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図4】表面処理を施していないステンレス製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図5】ポリプロピレン製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図6】ポリエチレンテレフタレート製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図7】ポリカーボネート製のカラムを用いてヘモグロビン類を測定して得られたクロマトグラムである。
図8】実施例及び比較例における各材質のカラムとヘモグロビンA1cピークの半値幅との関係を示すグラフである。
図9】実施例及び比較例における各材質のカラムと全ピーク面積との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0028】
(実施例1、2及び比較例1〜5)
(空カラムの準備)
カラムパイプ及びエンドフィッティングに表1に示す材料を用いて、内径4.6mm、長さ15mmのカラムを準備した。
なお、比較例1でステンレス(SUS316)製カラムに施したシリコーン樹脂によるコーティング処理は、SR2410(東レ・ダウコーニング社製)を用いて行った。
【0029】
【表1】
【0030】
(充填剤粒子の準備)
3重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製)水溶液2000mLに、テトラエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学工業社製)300g、トリエチレングリコールジメタアクリレート(新中村化学工業社製)100g、及び、過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加し、窒素雰囲気の反応器中で攪拌しながら、80℃で1時間重合した。
次に、イオン交換基を有する単量体として、2−メタアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製)100g、ポリエチレングリコールメタアクリレート(日油社製、エチレングリコール鎖n=4)100gをイオン交換水に溶解し、混合物を得た。得られた混合物を、1時間重合後の上記反応器中に更に添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら80℃で2時間重合した。得られた重合組成物を水及びアセトンで洗浄することにより、イオン交換基を有する粒子を得た。
得られたイオン交換基を有する粒子10gを溶存オゾンガス濃度100ppmのオゾン水300mLに浸漬し、30分間攪拌した。攪拌終了後、遠心分離機(日立製作所社製、「Himac CR20G」)を用いて遠心分離し、上澄みを除去する操作を合計2回繰り返し、充填剤粒子を得た。
得られた充填剤粒子について、粒度分布測定装置(Particle Sizing Systems社製、「Accusizer780」)を用いて測定したところ、平均粒径は10μm、CV値は14%であった。
【0031】
(カラムの準備)
得られた充填剤粒子0.5gを、40mmol/Lリン酸緩衝液(pH5.3)20mLに分散して撹拌しスラリー化した。5分間超音波処理した後、スラリー全量を、空カラム(内径4.6mm×長さ15mm)を接続したパッカー(アズワン社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(GLサイエンス社製、「PU−614」)を接続し、圧力8MPaで送液して、定圧充填した。
【0032】
<評価>
(液体クロマトグラフィーによる性能評価)
得られたカラムを用いて、ヘモグロビンA1cコントロール検体(シスメックス社製)の測定を行った。測定条件を表2に示す。また、各材質のカラムを用いて測定したときのクロマトグラムを図1〜7に示した。
【0033】
【表2】
【0034】
ポリエチレン(PE)製のカラム(図1)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)製のカラム(図2)を用いた場合、シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラム(図3)と同等の分離パターンを示した。
一方で、表面処理を施していないステンレス製のカラム(図4)やポリプロピレン(PP)製のカラム(図5)、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のカラム(図6)、ポリカーボネート(PC)製のカラム(図7)を用いた場合、図1〜3と比較して、ヘモグロビンA1cピークがブロード化するなど、分離パターンが悪化した。
【0035】
実施例及び比較例における各材質のカラムとヘモグロビンA1cピークの半値幅との関係を図8に示した。なお、図8及び後述する図9において、シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラムを「SUS316(処理有)」とし、表面処理を施していないステンレス製のカラムを「SUS316(処理無)」とした。
PE製のカラム、PMMA製のカラム、シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラムと比較して、明らかに他のカラムでは半値幅が大きくなり、ブロード化した。
また、各材質のカラムと全ピーク面積との関係を図9に示した。
なお、全ピーク面積の数値は、シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラムを100としたときの値としてプロットした。
PE製のカラム、PMMA製のカラムは、シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラムとほぼ同じ値を示したが、他のカラムは、明らかに低い値を示した。
これらのことから、PE製のカラム、PMMA製のカラムは、ヘモグロビン類の非特異的な吸着が起こりにくく、従来公知の、シリコーン樹脂によるコーティング処理を施したステンレス製のカラムと同等の性能が得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、安価に作製でき、生体由来成分の非特異吸着を抑制できる液体クロマトグラフィー用カラムが提供される。また、本発明によれば、該液体クロマトグラフィー用カラムを用いるヘモグロビン類の分析方法が提供される。
【符号の説明】
【0037】
1 ヘモグロビンA1c
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9