特許第6109776号(P6109776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109776
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】電気瞬間温水器システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20170327BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   F24H1/10 301Z
   F24H1/10 D
   E03C1/044
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-63159(P2014-63159)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-183974(P2015-183974A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019666
【氏名又は名称】株式会社日本イトミック
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−060379(JP,A)
【文献】 特開2003−056043(JP,A)
【文献】 特開平03−066334(JP,A)
【文献】 特開2012−172452(JP,A)
【文献】 特開2009−123625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
E03C 1/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手洗い器の周辺に装着され該手洗い器に給湯する瞬間温水器の電力量をコントロール装置で複数台制御する電気瞬間温水器システムであって、
各瞬間温水器は、各瞬間温水器への給水温度を感知する温度センサと、給水量を感知する流量センサと、各センサのデータを収集してコントロール装置に送信する制御装置とを備え、
コントロール装置は、各センサのデータから各瞬間温水器が稼働したときの1台分の消費電力量を予測する電力量予測手段と、稼働中の全ての瞬間温水器の総消費電力量を算出する電力量算出手段と、稼働中の全ての瞬間温水器の総消費電力量と予め設定された上限電力量との差が、現在予測される1台分の消費電力量より小さくなったときに緊急監視体制を設定する監視手段とを備え、
予め設定された上限電力量から現在同時使用可能な瞬間温水器の台数を算定し、同時使用可能な台数を超過する場合に、選択された一部の瞬間温水器又は稼働中の全ての瞬間温水器の消費電力量を規制し、又は緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器が稼働したときに、優先順位ごとに各瞬間温水器の通電を遮断するように構成したことを特徴とする電気瞬間温水器システム。
【請求項2】
前記各瞬間温水器は、使用頻度の低い順に通電が遮断される優先順位が設定され、該使用頻度は、前記コントロール装置が集積した各瞬間温水器の稼働率によって決定されるように構成した請求項1記載の電気瞬間温水器システム。
【請求項3】
前記コントロール装置は、稼働中の全ての瞬間温水器の総消費電力量と予め設定された上限電力量との差が、現在予測される1台分の消費電力量より小さくなったときに緊急監視体制を設定する監視手段を備え、該緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器が稼働したときに、稼働中の全ての瞬間温水器の総消費電力量を規制する手段を備えた請求項1記載の電気瞬間温水器システム。
【請求項4】
前記コントロール装置は、前記緊急監視体制設定時に新たな1台の瞬間温水器が稼働したときに、各瞬間温水器の稼働電力を、現在予測される消費電力量を稼働台数+1台の台数で除した値の電力量に規制するように構成した請求項記載の電気瞬間温水器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の手洗い器に温水を供給する電気瞬間温水器の電気容量をコントロールして消費電力を省エネ化することができる電気瞬間温水器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手洗い器に給湯する小型の電気温水器は、一般に、特許文献1に記載のような貯湯式の温水器が使用されている。この貯湯式の温水器は、タンク内に水をため、タンク内に配置した消費電力が小さなヒーターで時間をかけて温めるものである。
【0003】
貯湯式温水器のヒーターは、使用する1時間当たりの消費電力が小さいものの、電気を長時間消費し続けることから、タイマー等で沸かし上げをコントロールしないと消費電力が増大する虞があった。しかも、一定の温度まで沸かし上げるまでに時間がかかるので、一度に大量のお湯を使用するとタンク内の湯が切れてしまい、次に適温のお湯が使えるようになるまでにしばらく時間がかかる不都合がある。そのため、タンクの容量はできるだけ大きくする必要があり、手洗い器の周辺に装着する機器としては、大きなスペースを要するものであった。
【0004】
一方、瞬間式温水器にて給湯する手洗い器が特許文献2に記載されている。この手洗い器によると、瞬間式温水器に供給された水を瞬間的に温水に生成し、この温水を供給する第1吐水形態と、給水源から直接水が供給される第2吐水形態とを備え、第1吐水形態から供給する少量の温水に水を加えながら手洗いを可能にするという装置である。
【0005】
このように温水を瞬時に生成する瞬間式温水器では、一般に、通水路にヒーターを設置した瞬間湯沸かし器のような構成を採用している。この瞬間式温水器で使用するヒーターは、貯湯式のヒーターと比べて大容量の電気容量が必要になるが、加熱する時間が極めて短いことから、実質の消費電力は貯湯式の給湯器よりも少なくて済むことが知られている。
【0006】
ところが、例えばビル内に多数のトイレと共に手洗い器を設置する場合、全台の手洗い器を同時使用した場合の温水器の総電気消費量が設計段階で検討される。例えば10階建てのビルで、各フロア4台ずつの手洗い器を設置して合計40台の手洗い器に温水器を設置する場合、これらの温水器に使用する40台分のヒーターの電気消費量を検討することになる。仮に、貯湯式給湯器1台で必要な電気容量を800wとし、瞬間式給湯器1台の電気容量を5kwとして比較すると、同時使用の場合の必要電気容量は、貯湯式給湯器40台で合計32kw、一方、瞬間式給湯器40台で合計200kwが必要になる。
【0007】
このように、同時使用の場合の必要電気容量を検討すると、瞬間式温水器を使用した場合の必要電気容量が、貯湯式給湯器使用の場合より大きく上回り、ビル全体で使用可能な電気容量が超過して停電する虞もあることから、これまでビル等に多数設置される手洗い器用の給湯器には貯湯式温水器が選択されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2827308号公報
【特許文献2】特開2012‐172452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、同時使用の場合の必要電気容量は、あくまで設計上の必要電気容量であり、実際に使用した場合の電力消費量は、貯湯式温水器に比べて瞬間式温水器の方が少なくて済むものである。すなわち、実際の同時使用は、設置されている総数の10〜20%程度であり、設置されている全ての手洗い器が同時に使用されることは現実的ではない。
【0010】
しかも、1日1台の手洗いの使用状況として、手洗いの回数を20回とし、1回あたりの湯の使用時間を5秒と仮定し、貯湯式温水器と瞬間式温水器との消費電力を比較した実験結果は次のようになった。
【0011】
貯湯式温水器では、手洗いで使用した分の通電時間が17分となり、800wのヒーターで使用した電力量は227w、電力量料金に換算すると約2.9円になる。
【0012】
一方、瞬間式温水器によると、実質の通電時間は1.6分で、5kwのヒーターで使用した電力量は139w、電力量料金に換算すると約1.8円になり、1日の使用で1円以上の差が生じることが判明した。このように、瞬間式温水器によると、実際に手洗いの時間しか通電しないので、1日1台の比較でも省エネの差は歴然としている。
【0013】
しかしながら、ビル内に設置した多数の手洗い器に想定外の人数が集中し、瞬間式温水器の総消費電力量がビル全体で使用可能な電力量を超えるような場合には、瞬間式温水器の使用をコントロールする必要がある。
【0014】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、複数の瞬間式給湯器の電力量を安全に制御することができ、省エネ効果に優れた電気瞬間温水器システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決すべく本発明の第1の手段は、手洗い器Pの周辺に装着され該手洗い器Pに給湯する瞬間温水器10の電力量をコントロール装置20で複数台制御する電気瞬間温水器システムであって、各瞬間温水器10は、各瞬間温水器10への給水温度を感知する温度センサ11と、給水量を感知する流量センサ12と、各センサのデータを収集してコントロール装置20に送信する制御装置13とを備え、コントロール装置20は、各センサのデータから各瞬間温水器10が稼働したときの1台分の消費電力量を予測する電力量予測手段と、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量を算出する電力量算出手段と、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量と予め設定された上限電力量との差が、現在予測される1台分の消費電力量より小さくなったときに緊急監視体制を設定する監視手段とを備え、予め設定された上限電力量から現在同時使用可能な瞬間温水器10の台数を算定し、同時使用可能な台数を超過する場合に、選択された一部の瞬間温水器10又は稼働中の全ての瞬間温水器10の消費電力量を規制し、又は緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器10が稼働したときに、優先順位ごとに各瞬間温水器10の通電を遮断するように構成したことにある。
【0017】
の手段の前記各瞬間温水器10は、使用頻度の低い順に通電が遮断される優先順位が設定され、該使用頻度は、前記コントロール装置20が集積した各瞬間温水器10の稼働率によって決定されるように構成したものである。
【0018】
の手段の前記コントロール装置20は、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量と予め設定された上限電力量との差が、現在予測される1台分の消費電力量より小さくなったときに緊急監視体制を設定する監視手段を備え、該緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器10が稼働したときに、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量を規制する手段を備えている。
【0019】
の手段の前記コントロール装置20は、前記緊急監視体制設定時に新たな1台の瞬間温水器10が稼働したときに、各瞬間温水器10の稼働電力を、現在予測される消費電力量を稼働台数+1台の台数で除した値の電力量に規制するように構成したことにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1のごとく、予め設定された上限電力量から現在同時使用可能な瞬間温水器10の台数を設定し、同時使用可能な台数を超過する場合に瞬間温水器10の消費電力量を規制するように構成したことにより、複数の瞬間式給湯器の総消費電力量を安全に制御することができるものである。しかも、各瞬間温水器10の総消費電力は、実際に使用した時間分の電力量のみになるので、従来の貯湯式温水器と比べて高い省エネ効果が得られる。
【0021】
更に、各瞬間温水器10は、通電が遮断される優先順位が設定され、監視状況設定時に新たな瞬間温水器10が稼働したときに、優先順位ごとに各瞬間温水器10の通電を遮断するように構成したことで、一部の瞬間温水器10の給湯ができなくなるだけの規制になり、総消費電力量を合理的に規制することができる。
【0022】
請求項のごとく、使用頻度の低い順に通電が遮断される優先順位が設定され、該使用頻度は、前記コントロール装置20が集積した各瞬間温水器10の稼働率によって決定されるように構成したことで、通電が遮断されるのは使用頻度の低い手洗い器Pの瞬間温水器10に限られるので、実際の使用に与える影響が極めて少ない状態で総消費電力量を規制することが可能である。
【0023】
請求項のように、緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器10が稼働したときに、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量を規制する手段を備えることで、上限電力量を超える電力量は、総消費電力量から合理的に制御することができる。
【0024】
請求項のごとく、コントロール装置20は、前記緊急監視体制設定時に新たな1台の瞬間温水器10が稼働したときに、各瞬間温水器10の稼働電力を、現在予測される1台分の消費電力量を稼働台数+1台の台数で除した値の電力量に規制するように構成したことにより、上限電力量を超える電力量は、各瞬間温水器10の電力量から等分量だけ規制されるので、総消費電力量を合理的に規制することが可能である。
【0025】
このように、本発明によると、複数の瞬間式給湯器の電力量を安全に制御することができ、省エネ効果に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の使用例を示す概略図である。
図2】本発明の瞬間温水器とコントロール装置との連携を示す概略図である。
図3】本発明の一実施例を示すフロー図である。
図4】本発明の他の実施例を示すフロー図である。
図5】本発明の他の実施例を示すパワー分割の説明図である。
図6】本発明の他の実施例を示す時分割の説明図である。
図7】本発明の瞬間温水器の一実施例を示す模式図である。
図8】本発明の瞬間温水器の他の実施例を示す模式図である。
図9】本発明の瞬間温水器の他の実施例を示す模式図である。
図10】本発明の瞬間温水器を直列接続した動作フロー図である。
図11】本発明の瞬間温水器の他の実施例を示す模式図である。
図12】本発明の瞬間温水器の凍結防止運転を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明システムは、複数台の手洗い器Pに給湯する瞬間温水器10の総電力量をコントロール装置20で制御するシステムである。
【0028】
瞬間温水器10は各手洗い器Pの周辺に装着されるもので(図1参照)、瞬間温水器10への給水温度を感知する温度センサ11と、給水量を感知する流量センサ12と、各センサのデータを収集してコントロール装置20に送信する制御装置13とを備えている(図7参照)。制御装置13からコントロール装置20への送信方式は、双方向通信可能な通信線、或いは無線方式とする。この通信方式には、通常のLANの他、「LonWorks」や「Modbus」、「ZigBee」、「BACnet」、「RS‐485」等でも接続可能である。
【0029】
コントロール装置20は、瞬間温水器10の総消費電力量を規制する装置である(図2参照)。このコントロール装置20には、各センサのデータから各瞬間温水器10が稼働したときの1台分の消費電力量を予測する電力量予測手段と、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量を算出する電力量算出手段とを備えている。また、コントロール装置20は、HEMS(home energy management system)やBEMS(Building Energy Management Systems)といった住宅やビルのエネルギー監視システムとも接続が可能で、瞬間温水器10群とのハブ機能を果たすこともできる。
【0030】
そして、予め設定された上限電力量から現在同時使用可能な瞬間温水器10の台数を算定し、同時使用可能な台数を超過する場合に瞬間温水器10の総消費電力量を規制するように構成している。瞬間温水器10の総消費電力量を規制するには、次のような構成から選択することができる。
【0031】
第1の構成として、各瞬間温水器10に通電が遮断される優先順位を予め設けておく。一方、コントロール装置20は、稼働中の瞬間温水器10の総電力量が予め設定された上限電力量に近接した場合に緊急監視体制を設定する監視手段を備えるものである。この監視手段は、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量と予め設定された上限電力量との差が、現在予測される1台分の消費電力量より小さくなったときに緊急監視体制を設定する。
【0032】
そして、緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器10が稼働したときに、優先順位ごとに各瞬間温水器10の通電を遮断するように構成する。各瞬間温水器10の優先順位は、使用頻度の低い順に通電が遮断されるように設定する。この使用頻度は、コントロール装置20が集積した各瞬間温水器10の稼働率によって逐次設定されるものである。
【0033】
図3は、優先順位を予め設けた瞬間温水器10の総消費電力量を規制するフロー図を示している。同図中、符号Nは瞬間温水器10の接続台数を示す。符号LKWは、上限電力を示し、現在稼働している台数nの全ての瞬間温水器10でLKWを設定する。図示例ではグループがあるので、グループごとに上限電力LKWを設定する。符号kwは、1台当たりの使用電力を示す。符号GNKWは、グループNで現在使用されている総使用電力量を示している。
【0034】
第2の構成は、各瞬間温水器10に優先順位を設けない構成である。すなわち、コントロール装置20は、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量と予め設定された上限電力量との差が、現在予測される1台分の消費電力量より小さくなったときに緊急監視体制を設定する監視手段を備える構成は第1の構成と同じ構成である。そして、この緊急監視体制設定時に新たな瞬間温水器10が稼働したときに、稼働中の全ての瞬間温水器10の総消費電力量を規制するように構成している。
【0035】
図4は、優先順位を設けない場合の瞬間温水器10の総消費電力量を規制するフロー図である。同図において、符号nは瞬間温水器10の接続台数を示している。符号LKWは、上限電力を示し、現在稼働している台数nの全ての瞬間温水器10でLKWを設定する。図示例ではグループがあるので、グループごとに上限電力LKWを設定する。符号kwは、1台当たりの使用電力を示す。符号GNKWは、グループNで現在使用されている総使用電力量を示している。
【0036】
瞬間温水器10の総消費電力量を規制するには、コントロール装置20が各制御装置13から送信された各種データに基づく計算によって行われる。例えば、緊急監視体制設定時に新たな1台の瞬間温水器10が稼働したときに、各瞬間温水器10の稼働電力を、現在予測される消費電力量を稼働台数+1台の台数で割った値の電力量を算定する。そして、稼働中の各瞬間温水器10の供給電力量をこの算定された値の電力量に均等に規制するように構成するものである。このようなパワー分割の状態を図5に示している。
【0037】
コントロール装置20の計算に基づいて行われる総消費電力量の規制は、各瞬間温水器10への供給電力量を変えずに、稼働している各瞬間温水器10の通電時間をずらして遮断することも可能である(図6参照)。すなわち、稼働中の各瞬間温水器10への通電時間を1/(n+1)時間の時間差で通電するものである(n=稼働台数)。
【0038】
本発明システムでは、各瞬間温水器10をコントロール装置20で制御するシステムであることから、瞬間温水器10の構成を任意に変更することが可能になる。次に、本発明システムで使用する瞬間温水器10の各種構成について説明する。
【0039】
図7は、基準的な瞬間温水器10を示している。この瞬間温水器10は、給水が瞬間温水器10のT字型接続管に繋がり、何らかの不具合で瞬間温水器10への通電が制御できなくなったときに、内部の圧力を逃す安全弁14を接続している。
【0040】
ヒーター15にて温められた温水は、給湯栓17に直接給湯するのが一般的である。また、給湯栓17の配管に温度調節機能のある温調機能付混合弁16を接続し、この温調機能付混合弁16に直接給水する配管を接続することで、給湯栓17からの給湯温度を更に安定させることも可能である。
【0041】
通常の給水経路は、嵌合凹部11及び係止突起12からヒーター15を経て温調機能付混合弁16を介し給湯栓17から給湯されるものである。また、給湯栓17自体に温度調節機能を備えたものもある。この場合、給湯栓17と温調機能付混合弁16とが一体になる。尚、温度センサ11を給湯口18に設置したり、又は給湯口18の両方に温度センサ11を設置したりするなど、温度センサ11の設置位置は任意である。
【0042】
図8は、複数の瞬間温水器10を並列に接続した例を示す模式図である。このように2台の瞬間温水器10を並列接続することで、ヒーター15や配管が2倍になり、同じ設定温度のお湯が2倍の流量で利用することができる。図示例では、Aの瞬間温水器10とBの瞬間温水器10とを四方弁と温調機能付混合弁16とで並列に接続している。このとき、四方弁はヘッダーに変更したり、あるいは予め二つに分岐した給水から繋いだりすることも可能である。
【0043】
並列接続時の給水経路は、1台の瞬間温水器10と同様に、流量センサ12からヒーター15へ流れて加熱され、温調機能付混合弁16を介して給湯栓17から給湯される。2台を並列に接続する場合、従来では、2倍の電気容量と2倍の流量が得られる瞬間温水器10を別途設計する必要があるが、本発明システムでは、各瞬間温水器10に制御装置13と共に流量センサ12や温度センサ11を備え、これらのデータを基づいてコントロール装置20がコントロールするので、単純に2台を並列に接続することが可能になる。また、瞬間温水器10を3台、4台と並列に接続することも可能である。
【0044】
図9は、複数の瞬間温水器10を直列に接続した例を示す模式図である。このように2台の瞬間温水器10を直列接続することで、ヒーター15が2倍になり、同じ流量であれば、より高い温度の給湯が可能になる。Aの瞬間温水器10とBの瞬間温水器10とを直列接続した場合の給水経路は次の通りである。まず、Aの間温水器10の流量センサ12及び温度センサ11からヒーター15に流れて加熱される。次に、Bの瞬間温水器10の流量センサ12及び温度センサ11からヒーター15に流れて再び加熱された後、給湯栓17から給湯される。
【0045】
図10は、複数の瞬間温水器10を直列に接続した場合の給湯動作をフロー図である。同図中、符号FLAはAの瞬間温水器10の流量センサ12を示し、符号FLBはBの瞬間温水器10の流量センサ12を示す。符号MKWAはAの瞬間温水器10の必要供給電力を示し、符号nkwBはBの瞬間温水器10の必要供給電力を示す。この状態で、給湯栓17が開かれると、各瞬間温水器10の流量センサ12が水量を検知する。次に、各温度センサ11のデータを基に、各瞬間温水器10の必要供給電力を計算し、通電する。例えば、A及びBの瞬間温水器10の設定温度が同じ温度に設定されていたとしても、給水側のAの瞬間温水器10側では、常にMKWAが通電されても設定温度に達しない。一方、Bの瞬間温水器10は、給湯栓17側に接続されているので、Aの瞬間温水器10側である程度温められた温水が流れ込んでくるので、nkwBを通電することで、温水は設定温度に達する。
【0046】
このような直列状態では、常に給水側のAの瞬間温水器10に最大の負荷がかかるので、例えばAの設定温度を40度とし、Bの設定温度を60とするなど、A及びBの瞬間温水器10の設定温度を予め変えることで、同程度の負荷で稼働させることができる。更に、別の手段として、各瞬間温水器10の設定温度を変えずに、Aの瞬間温水器10に予めリミッタを設定し、例えば、必要供給電力が5kwの場合に5kwまでに制限することでバランスをとることができる。
【0047】
2台を直列に接続する場合、従来では、2倍の電気容量と2倍の流量が得られる瞬間温水器10を別途設計する必要があるが、本発明システムでは、各瞬間温水器10に制御装置13と共に流量センサ12や温度センサ11を備え、これらのデータを基づいてコントロール装置20がコントロールするので、単純に2台を直列に接続することが可能になる。また、瞬間温水器10を3台、4台と直列に接続することも可能である。
【0048】
図11は、凍結運転が可能な瞬間温水器10を示す模式図である。寒冷地仕様の場合、環境温度によって配管内に残った少量の水が凍結することが想定される。このような場合に、瞬間温水器10に電磁弁付循環ポンプ19A及び三方弁19Bを接続し、温度センサ11からヒーター15で加熱した温水を、電磁弁付循環ポンプ19Aから三方弁19Bに循環させることで凍結を防止することができる。
【0049】
図12は、瞬間温水器10の凍結防止運転を示すフロー図である。図中、符号THは温度センサ11が感知する水温を示す。符号PVは電磁弁付循環ポンプ19A、Tは三方弁19B、Hはヒーター15である。このように、瞬間温水器10をコントロール装置20が制御することで、寒冷地での凍結防止運転も可能になるものである。
【符号の説明】
【0050】
P 手洗い器
10 瞬間温水器
11 温度センサ
12 流量センサ
13 制御装置
14 安全弁
15 ヒーター
16 温調機能付混合弁
17 給湯栓
18 給湯口
19A 電磁弁付循環ポンプ
19B 三方弁
20 コントロール装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12