(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック部材は、前記係止部を有するロック部材本体と、前記押圧受部を有し前記ロック部材本体に対して前記操作部材に向けて移動可能に配設された受部材とを有し、前記受部材が受部用付勢部材によって前記操作部材に向けて付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱機器。
前記操作部材は前記ロック部材に向けて直動可能に配設され、前記機器本体および前記蓋体の一方に、前記操作部材の遊びによる回動を規制するガイド部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加熱機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、蓋体を開放操作した際の使用感を向上できる加熱機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の加熱機器は、加熱手段を有する機器本体と、前記機器本体に配設された蓋体と、前記機器本体および前記蓋体の一方に配設され、他方に形成された被係止部に係止する係止部を含む移動可能なロック部材と、前記被係止部と前記係止部との係止を解除する係止解除方向に前記ロック部材を移動させる操作部材とを有するロック機構とを備えた加熱機器において、前記操作部材に前記ロック部材を押圧する押圧部を設けるとともに、前記ロック部材に前記押圧部による押圧を受ける押圧受部を設け、前記押圧部および前記押圧受部のうち少なくとも一方に、傾斜角度が異なる第1および第2摺接部を設け、前記第1および第2摺接部が交わる切替部を、前記第1摺接部の当接により前記ロック部材を係止解除方向に移動させ、前記被係止部と前記係止部との係止が解除された後に前記第2摺接部に切り替わるように設定した。前記第1および第2摺接部の傾斜角度とは、操作部材の操作方向に対して直交方向に延びる基準線(面)と各摺接部とのなす角である。前記第1および第2摺接部は、直線(平面)状または曲線(曲面)状に形成される構成を含む。被係止部と係止部との係止が解除された後に第2摺接部に切り替わるとは、係止が解除されると同時に切り替わる構成、および、係止が解除された以降に切り替わる構成を含む。
【0007】
この加熱機器は、機器本体に対して蓋体を開放する際に、操作部材を操作する。これにより、操作部材の押圧部がロック部材の押圧受部を押圧し、ロック部材を係止解除方向に移動させる。操作部材の操作量に対するロック部材の係止解除方向の移動量は、摺接部の傾斜角度によって設定される。本発明では、傾斜角度が異なる第1および第2摺接部を設けているため、第1摺接部と第2摺接部の境界である切替部で、ロック部材の移動量が変わる。そのため、切替部を乗り越える際にユーザは、操作部材を介して切り替わりによる節度感を得ることができる。そして、本発明では、被係止部と係止部との係止が解除された後に切替部を通過するように設定している。その結果、機器本体に対する蓋体の係止が解除されたことを確実に認識できるため、ユーザの使用感を向上できる。
【0008】
前記押圧部は、前記操作部材の操作方向に突出するとともに前記ロック部材の移動方向に延び、その操作方向の先端縁に前記第1および第2摺接部が形成されている。このようにすれば、押圧部と押圧受部との間の摩擦抵抗を低減できる。よって、操作部材を操作する際の操作性を向上できる。
【0009】
前記第1摺接部の傾斜角度は、前記第2摺接部の傾斜角度より小さい。具体的には、前記第1摺接部は所定曲率で湾曲した曲線状に形成され、前記切替部を通る接線の傾斜角度が、前記第2摺接部の傾斜角度より小さい。このようにすれば、係止解除後の第2摺接部における操作部材の押込量が、係止解除前の第1摺接部における操作部材の押込量より大きくなる。よって、機器本体に対する蓋体の係止が解除されたことを確実に認識できるうえ、より一層ユーザの使用感を向上できる。
【0010】
前記ロック部材は、前記係止部を有するロック部材本体と、前記押圧受部を有し前記ロック部材本体に対して前記操作部材に向けて移動可能に配設された受部材とを有し、前記受部材が受部用付勢部材によって前記操作部材に向けて付勢されている。受部用付勢部材は、傾斜角度が小さい第1摺接部によって押圧される場合と、傾斜角度が大きい第2摺接部によって押圧される場合とで圧縮量が異なり、第1摺接部よる圧縮量より第2摺接部による圧縮量の方が小さい。そして、本発明では第1摺接部から第2摺接部に移ると受部用付勢部材が伸張するため、その際の圧縮変化により節度感をより認識できる。
【0011】
前記操作部材は前記ロック部材に向けて直動可能に配設され、前記機器本体および前記蓋体の一方に、前記操作部材の遊びによる回動を規制するガイド部を設けることが好ましい。また、前記操作部材に、前記ガイド部に当接する干渉部を前記操作部材の操作方向に沿って突出させることが好ましい。このようにすれば、操作部材を設定した操作方向に確実に移動させることができるため、意図しない蓋体の開放を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱機器では、傾斜角度が異なる第1および第2摺接部を設けているため、第1摺接部と第2摺接部の境界である切替部を通過する際に、ユーザが節度感を得ることができる。そして、切替部は、被係止部と係止部との係止が解除された後に設定されているため、機器本体に対する蓋体の係止が解除されたことを確実に認識できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1および
図2は、本発明の実施形態の加熱機器である炊飯器10を示す。
図2に示すように、炊飯器10は、炊飯する飯米および炊飯した米飯を収容する内鍋(被加熱物)11と、内鍋11を着脱可能に収容する炊飯器本体(機器本体)12と、炊飯器本体12に開閉可能に配設した蓋体20とを備える。本実施形態の炊飯器10は、蓋体20を開放操作した際に、ユーザが係止解除を認識できるようにして使用感を向上する。
【0016】
炊飯器10は、炊飯器本体12内および蓋体20内に配設した加熱手段によって内鍋11を加熱して、予熱、昇温、沸騰維持、むらし等の各工程を有する炊飯処理を実行し、内鍋11にセットした飯米を炊飯して米飯を炊き上げる。また、所定温度に維持するように加熱手段を制御する保温処理を実行し、炊き上げ米飯を保温する。
【0017】
炊飯器本体12は、有底筒状の胴体13と、胴体13の上端開口を覆う肩体14とを有する外装体を備える。肩体14の背面側には、蓋体20を回動可能に装着するためのヒンジ接続部15が設けられている。肩体14の正面側には、蓋体20を閉塞状態に維持するための係止孔(被係止部)16が設けられている。肩体14の中央には開口部17が設けられ、この開口部17の下側に内鍋11を着脱可能に収容する収容部が形成されている。胴体13の内部である収容部の外側に、内鍋11を加熱する加熱手段である誘導加熱コイル(図示せず)が配設されている。
【0018】
蓋体20は、炊飯器本体12のヒンジ接続部15に回動可能に取り付けられ、内鍋11の上端開口を含む炊飯器本体12の上部全体を開放可能に閉塞する。
図1および
図3に示すように、蓋体20は、閉塞状態で内鍋11の側に位置する内側部材23と、内側部材23の上部外側を覆う外側部材29とを有する外装体を備える。蓋体20には、
図2に示すように、内側部材23の下側に内鍋11の上端開口を密閉する内蓋21が着脱可能に取り付けられている。また、蓋体20には、
図3に示すように、外側部材29の背面側に排気通路の出口である蒸気口ユニット22が着脱可能に取り付けられる。
【0019】
図2および
図3に示すように、内側部材23は、炊飯器本体12の平面視形状と同一の平面視形状に形成されている。
図1に示すように、内側部材23の正面下側には、内蓋21を係止する係止部材24がスライド可能に配設されている。また、内蓋21の上部に位置するようにヒータカバーが配設され、その上面に加熱手段である蓋ヒータ(図示せず)が配設されている。
【0020】
図3に示すように、内側部材23の上側中央には、調圧弁収容部25A,25Bが設けられるとともに、駆動機構(ソレノイドおよびステッピングモータ)26A,26Bが配設されている。内鍋11内を大気圧より高い圧力に昇圧可能とする調圧弁(図示せず)が内蓋21に配設され、この調圧弁が調圧弁収容部25A,25B内に配置される。加圧による変形を防止するために、内側部材23には金属製の補強部材27が配設されている。この補強部材27の背面側には、蓋体20全体を炊飯器本体12のヒンジ接続部15に接続するためのヒンジ軸28が配設される。このヒンジ軸28には、蓋体20を開放方向に付勢するヒンジスプリング(図示せず)が配設されている。
【0021】
図3および
図4に示すように、外側部材29は、内側部材23の上部全体を覆うカバー本体30を備える。このカバー本体30には、内側部材23に対してネジ止めして固定するための第1ネジ止め部31と、後述する装飾パネル34をネジ止めして固定するための第2ネジ止め部32とが設けられている。カバー本体30の背面側に蒸気口ユニット22が着脱可能に配設される。また、カバー本体30には、蒸気口ユニット22の正面側に図示しない操作基板と液晶表示パネルを配設するパネル配設部33が形成されている。
【0022】
また、外側部材29は、カバー本体30の上面に固定される装飾パネル34を備える。この装飾パネル34には、蒸気口ユニット22を露出させるための切欠部35が形成されている。また、パネル配設部33上に位置するように、液晶表示パネルを透視可能とする窓部36が設けられるとともに、スイッチに対応する操作部37が設けられている。
【0023】
内側部材23および外側部材29からなる蓋体20には、炊飯器本体12に対して閉塞状態を維持する一方、開放操作により開放可能とするロック機構38が設けられている。このロック機構38は、内側部材23に回動(移動)可能に配設したロック部材41と、外側部材29に直動可能に配設した操作部材58とを備える。
【0024】
図2および
図3に示すように、内側部材23には、補強部材27の前側端部に、ロック部材41を回動可能に配設するための回転軸39が配設されている。また、内側部材23には、ロック部材41の係止爪部44を貫通して炊飯器本体12側に突出させる貫通孔40が設けられている。そして、この内側部材23に配設されるロック部材41は、ロック用付勢部材であるキックバネ46によって付勢されたロック部材本体42と、受部付勢部材である第1コイルバネ52によって付勢された受部材48とを備える。
【0025】
図3および
図8Aに示すように、ロック部材本体42は、金属板を屈曲加工することにより形成される。このロック部材本体42は、両端に回転軸39が貫通されるブラケット部43aが形成された回転中心部43を備える。回転中心部43の正面両側には、貫通孔40を貫通して肩体14の係止孔16に係脱可能に係止する一対の係止爪部(係止部)44,44がL字形状をなすように設けられている。また、回転中心部43の中央には、背面上側に向けて突出する突出部45が設けられている。
【0026】
このロック部材本体42は、キックバネ46によって付勢されている。キックバネ46は、一対の係止突部47a,47bを備え、一方の係止突部47aが内側部材23に係止され、他方の係止突部47bが回転中心部43の下面に係止される。これによりロック部材41は、回転軸39を中心として、係止爪部44が係止孔16に係止可能な
図8A中反時計回りに付勢される。この反時計回りの方向を係止方向といい、係止爪部44と係止孔16との係止が解除される逆向きの時計回りの方向を係止解除方向という。
【0027】
受部材48は、ロック部材本体42の突出部45に挿通配置される軸部49と、軸部49の上端に設けられた押圧受部51とを備える断面T字形状に形成されている。軸部49の下部には、突出部45からの脱落を防止するために止め金具50が配設されている。押圧受部51は、平面視円形状で、上部が平坦な面状に形成され、操作部材58による押圧を受ける。押圧受部51と突出部45との間には第1コイルバネ52が配設され、この第1コイルバネ52によって操作部材58が位置する上向きに付勢されている。第1コイルバネ52の付勢力は、キックバネ46の付勢力より強く設定される。
【0028】
第1コイルバネ52は、内鍋11内を大気圧より高い圧力に昇圧可能とした炊飯器10の安全機構の役割を兼ねる。即ち、内鍋11の内圧が高くなると、蓋体20に対して開放方向の負荷が加わるため、係止爪部44が係止孔16に圧接され、摩擦抵抗が増大する。第1コイルバネ52は、この加圧状態で操作部材58を介して受部材48が押圧されると、収縮する付勢力(バネ定数)に設定される。また、内鍋11の内圧が低く、係止爪部44が係止孔16に圧接されていない状態では、操作部材58の操作では全く収縮しない、または、僅かに収縮する付勢力に設定される。
【0029】
図4に示すように、外側部材29のカバー本体30の正面側には、操作部材58を配設する操作部材配設部53が設けられている。この操作部材配設部53は、操作部材58の形状に対応した長円形状の孔からなる。操作部材配設部53の両側下部には、内向きに突出するバネ受部54が設けられている。このバネ受部54に操作用付勢部材である第2コイルバネ55が配設され、この第2コイルバネ55によって操作部材58が上(外)向きに付勢される。
【0030】
図1および
図8Aに示すように、装飾パネル34には、操作部材配設部53に対応し、操作部材58を露出させる露出孔56が設けられている。この露出孔56の内周部と操作部材58の外周部との間には、操作性を踏まえた遊びが設けられている。この遊びは、操作部材58を直動操作したときに、操作部材58が回動することを許容する隙間になる。そこで、
図5および
図8Aに示すように、操作部材配設部53の正面側中央には、操作部材58の回動を規制するガイド部57が設けられている。ガイド部57は、カバー本体30の内面から下向きに突出する一対のリブからなる。
【0031】
図4および
図6A,Bに示すように、操作部材58は、操作部材配設部53内にロック部材41の受部材48に向けて直動可能に配設され、押圧操作によりロック部材41を係止解除方向に回動させる。操作部材58は平面視長円筒形状であり、下部には露出孔56の下縁に係合する段部59が設けられている。この段部59は、J字形状の溝であり、装飾パネル34の外側から浸入する水を受け、電気部品が無い蓋体20の正面側へ誘導する。また、操作部材58の下部には、操作部材配設部53の下縁に係合する係合突部60が設けられている。また、操作部材58の内部両側には、第2コイルバネ55を位置決めする一対の位置決め軸61,61が設けられ、その中心側に一対の補強リブ62,62が設けられている。
【0032】
図6A,B,Cに示すように、操作部材58の内部中央には、ロック部材41の押圧受部51を押圧し、係止解除方向にロック部材41を回動させる押圧部63が設けられている。この押圧部63は、操作部材58の操作方向に突出するとともに、ロック部材41の回動方向に延びる板状に形成される。押圧部63の操作方向の先端縁には、押圧受部51に摺接する第1および第2摺接部64,65が設けられている。
【0033】
第1および第2摺接部64,65は、操作部材58の操作方向前側に押圧受部51が位置するように形成される。第1摺接部64は、押圧受部51に対して係止解除方向後側に位置し、操作部材58の操作方向に突出するように、所定曲率で湾曲した曲線状に形成されている。第2摺接部65は、押圧受部51に対して係止解除方向前側に位置し、第1摺接部64に対して交差する方向に延びる直線状に形成されている。具体的には、第1摺接部64の交点である切替部66から背面側に向けて、操作部材58の操作方向逆向きに傾斜して延びる。第1および第2摺接部64,65は、操作部材58の操作方向に対して直交方向に延びる基準線(面)に対する傾斜角度θ1,θ2が異なる。曲線状をなす第1摺接部64の傾斜角度θ1とは、切替部66を通る接線と、基準線とのなす角である。第2摺接部65の傾斜角度θ2とは、基準線とのなす角である。そして、第1摺接部64の傾斜角度θ1は、第2摺接部65の傾斜角度θ2より小さく設定されている。
【0034】
ここで、操作部材58の第1および第2摺接部64,65とロック部材41の押圧受部51との関係について説明する。
【0035】
操作部材58を操作すると、第1摺接部64の下側頂部が押圧受部51を下向きに押圧する。これにより突出部45を下向きに移動させ、回転軸39を中心としてロック部材41を係止解除方向に回動させる。その結果、回転軸39に対して反対側に位置する係止爪部44が、係止孔16から離脱する方向に移動する。
図7に示すように、操作部材58の操作(押込)量に応じてロック部材41が係止解除方向に回動する。ロック部材41の回動により、押圧部63と押圧受部51との当接位置が、第1摺接部64側から第2摺接部65側へ移動する。そして、切替部66を乗り越えると、押圧受部51との当接位置が第2摺接部65に切り替わる。
【0036】
操作部材58の操作量に対するロック部材41の係止解除方向の回動(移動)量は、第1および第2摺接部64,65の傾斜角度θ1,θ2によって異なる。言い換えれば、第1および第2摺接部64,65の傾斜角度θ1,θ2によって、ロック部材41の回動量を設定できる。本実施形態では、第1および第2摺接部64,65の傾斜角度θ1,θ2が異なるため、切替部66を通過すると、ロック部材41の回動量が変わる。その結果、切替部66を乗り越える切替時には、傾斜角度θ1,θ2が異なる第1および第2摺接部64,65により、ユーザには操作部材58を介して衝撃(節度感)が加わる。
【0037】
節度感は、内鍋11の内圧が低い状態で僅かに収縮する付勢力に設定した第1コイルバネ52を用いることにより、切替時に第1コイルバネ52が伸張し、ロック部材41が僅かに係止方向に戻ることで、より確実に得ることができる。具体的には、第1コイルバネ52は、傾斜角度θ1が小さい第1摺接部64によって押圧される場合と、傾斜角度θ2が大きい第2摺接部65によって押圧される場合とで圧縮量が異なる。第1摺接部64よる圧縮量より、第2摺接部65による圧縮量の方が小さい。よって、第1摺接部64から第2摺接部65に移ると、第1コイルバネ52が伸張するため、その際の圧縮変化により節度感をより認識できる。そして、本実施形態では、係止孔16と係止爪部44との係止が解除されると同時(
図8C参照)に、切替部66を通過するように設定している。なお、係止が解除された以降に切り替わるように設定してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、第2摺接部65の傾斜角度θ2を第1摺接部64の傾斜角度θ1より大きくしている。そのため、係止解除後の第2摺接部65によるロック部材41の回動量は、係止解除前の第1摺接部64によるロック部材41の回動量より少なくなる。よって、キックバネ46の付勢力を無視した無負荷状態では、第1摺接部64によってロック部材41を回動させる操作力より、第2摺接部65によってロック部材41を回動させる操作力の方が小さい。一方、キックバネ46によって係止方向に付勢されたロック部材41は、係止解除方向への回動量が増えるに従って反発力が大きくなる。即ち、キックバネ46による反発力が大きくなる後半部分の操作力を、第2摺接部65の傾斜角度θ2によって軽減できるようにしている。
【0039】
図5および
図8Aに示すように、操作部材58には、操作部材配設部53のガイド部57に当接する干渉部67が設けられている。この干渉部67は、操作部材58の正面側中央において、操作部材58の操作方向に沿って突出されている。
図9に示すように、干渉部67は、操作部材58の操作により第2コイルバネ55を収縮させると、ロック部材本体42に当接する寸法で形成される。この当接位置は、ロック部材41の回転軸39に対して係止解除方向後側(係止方向)である回転中心部43に位置するように設定されている。
【0040】
ガイド部57が設けられていない場合、
図9中一点鎖線で示すように、露出孔56と操作部材58との間の遊びにより、操作部材58が回動することができる。この場合、干渉部67がロック部材41に当接することなく、または、干渉部67とロック部材41の当接が滑って解除されることにより、押圧部63だけが押圧受部51に当接するように回動する。よって、内鍋11の内圧が高い状態であっても、ロック部材41を係止解除方向に回動させ、蓋体20が開放される可能性がある。この操作部材58の遊びによる回動を阻止するために、外側部材29にガイド部57が設けられ、操作部材58に干渉部67が設けられている。
【0041】
次に、操作部材58の開放操作によるロック部材41の動作について説明する。
【0042】
図8Aに示すように、操作部材58を操作していない状態では、操作部材58が第2コイルバネ55によって外向きに付勢され、ロック部材41がキックバネ46によって係止方向に付勢され、受部材48が第1コイルバネ52によって操作部材58に向けて付勢されている。また、蓋体20に配設したロック部材41の係止爪部44が、炊飯器本体12に形成した係止孔16に係止している。
【0043】
蓋体20が無負荷状態で操作部材58を開放操作し、受部材48に向けて直動させると、
図8Bに示すように、押圧部63の第1摺接部64がロック部材41の押圧受部51に当接する。そして、操作部材58を介して押圧受部51を下向きに押圧することにより、ロック部材41が係止解除方向に移動する。なお、操作部材58の操作力は、ロック部材41の移動が進むにつれて、キックバネ46、第1コイルバネ52および第2コイルバネ55が弾性的に収縮されるため、増大する。
【0044】
図8Cに示すように、操作部材58の操作により、押圧受部51と押圧部63の当接部位が切替部66に至ると、係止爪部44と係止孔16との係止が解除される。そして、切替部66を乗り越えて、押圧受部51と押圧部63の当接部位が第2摺接部65に移行すると、傾斜角度θ1,θ2の違いと第1コイルバネ52の復元力により、ユーザには操作部材58を介して切り替わりによる衝撃が伝わる。また、キックバネ46および第2コイルバネ55の収縮は継続されるが、第2摺接部65の傾斜角度θ2が大きくなるため、操作部材58の操作力は実質的に軽くなる。
【0045】
図8Dに示すように、押圧受部51と押圧部63の当接部位が第2摺接部65において進むと、係止爪部44と係止孔16との係止が完全に解除された状態をなす。そのため、ユーザが操作部材58から手を離すと、ヒンジスプリングの付勢力によって、蓋体20が開放方向に回動する。
【0046】
このように、本発明の炊飯器10は、係止爪部44と係止孔16との係止が解除される時に、押圧部63と押圧受部51との当接部位が第1摺接部64から第2摺接部65に移り替わるようにしている。そのため、係止解除時にユーザが節度感を得ることができる。その結果、炊飯器本体12に対する蓋体20の係止が解除されたことを認識できるため、ユーザの使用感を向上できる。また、これらの節度感および使用感は、第1および第2摺接部64,65の傾斜角度の違いより、一層向上される。また、押圧部63は板状に形成され、その先端縁に第1および第2摺接部64,65を形成しているため、押圧部63と押圧受部51との間の摩擦抵抗を低減できる。よって、操作部材58を操作する際の操作性を向上できる。
【0047】
一方、本実施形態の炊飯器10は、内鍋11の内圧が上昇した炊飯中に、ユーザが誤って操作部材58を操作することがある。この場合、
図9に示すように、係止爪部44と係止孔16との間の摩擦抵抗の増大により、ロック部材41は係止解除方向に回動することなく、第1コイルバネ52を弾性的に収縮させて受部材48だけが後退する。そして、干渉部67がロック部材41の回転中心部43に当接することで、操作部材58の操作が不可能になる。また、回転中心部43を干渉部67によって下向きに押圧すると、ロック部材41は係止方向に回動する。
【0048】
このように、内圧が高くなった状態で蓋体20が開放されることを確実に防止できる。しかも、干渉部67およびガイド部57は、操作部材58の押圧部63だけがロック部材41の押圧受部51に当接するように回動することを阻止するため、ユーザが操作部材58を無理押しすることで、ロック部材41が係止解除方向に回動することを確実に防止できる。このように、意図しない蓋体20の開放を確実に防止できるため、炊飯器10の安全性を確実に向上できる。
【0049】
なお、本発明の加熱機器は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、操作部材58の押圧部63に傾斜角度が異なる第1および第2摺接部64,65を形成したが、
図10に示すように、ロック部材41の押圧受部51に傾斜角度が異なる第1および第2摺接部64,65を形成してもよい。この場合、基準線に対する傾斜角度が小さい第1摺接部64をロック部材41の係止解除方向前側に設け、基準線に対する傾斜角度が大きい第2摺接部65をロック部材41の係止解除方向後側に設ける。また、第1および第2摺接部64,65は、ロック部材41の押圧受部51および操作部材58の押圧部63の両方に形成してもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、第1摺接部64を曲線状に形成し、第2摺接部65を直線状に形成したが、第1摺接部64を直線状に形成し、第2摺接部65を曲線状に形成してもよい。また、両方の摺接部64,65を曲線状または直線状(
図10参照)に形成してもよい。また、曲線状の摺接部64,65は、凸状および凹状の曲線であってもよい。また、各摺接部64,65は線状に限らず、所定幅の面状に形成してもよい。また、曲面状とする場合、押圧受部51または押圧部63に向けて突出する曲線状に限らず、受け皿状に窪む曲線により構成してもよい。また、第1コイルバネ52は、内鍋11の内圧が低く、係止爪部44が係止孔16に圧接しない状態では、全く収縮しない付勢力に設定してもよい。
【0052】
図11に示すように、ロック部材41は、係止爪部44を有する回動可能なロック部材本体42と、押圧受部51を有する受部材48とからなる構成に限らず、係止爪部44および押圧受部51を一体的に設けた構成としてもよい。また、ロック部材41は、回転軸39を中心として回動可能に配設する構成に限らず、横方向にスライド移動可能に配設する構成としてもよい。また、操作部材58は、外側部材29に対して直動可能に装着する構成に限らず、回動可能に装着する構成としてもよい。なお、操作部材58を回動可能に装着する場合には、少なくともガイド部57は設ける必要はない。
【0053】
また、前記実施形態では、炊飯器本体12に被係止部である係止孔16を設け、蓋体20にロック機構38を配設したが、炊飯器本体12にロック機構38を配設し、蓋体20に被係止部を設けてもよい。また、係止部および被係止部の構成も係脱可能に係止できる構成であれば、希望に応じて変更が可能である。
【0054】
そして、前記実施形態では、本発明の加熱機器として炊飯器10を例に挙げて説明したが、電磁調理器、電気ポットおよび加湿器などの加熱機器であればいずれでも適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。