(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109870
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】滅菌可能なポンプユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 53/00 20060101AFI20170327BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20170327BHJP
F16K 15/14 20060101ALI20170327BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
F04B53/00 A
F04B53/10 C
F16K15/14 A
A61L2/20
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-65013(P2015-65013)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187445(P2015-187445A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】14161813.2
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ワルデマール・ワンデル
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−509542(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0079580(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0091331(US,A1)
【文献】
特表2003−515497(JP,A)
【文献】
特開2008−045698(JP,A)
【文献】
特開2004−344442(JP,A)
【文献】
特開2008−256606(JP,A)
【文献】
特開2010−073541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
A61L 2/20
F04B 53/10
F16K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータージェット手術用のポンプユニット(10)であって、
第1筐体部(14)および第2筐体部(15)を有するポンプ筐体(13)と、
前記第1筐体部(14)に形成される吸引路(16)および圧力路(17)と、
前記第2筐体部(15)に形成され、ポンプピストン(25、29)を受けるように構成され、かつ、2本のポンプ路(23、24;27、28)がそれぞれから伸びている、少なくとも2個のポンプシリンダー(22、26)と、
前記筐体部(14、15)のうちの一方に形成される複数の弁室凹部(31)と、
前記弁室凹部(31)を閉じるために当該弁室凹部(31)と関連付けて、前記圧力路(17)または前記吸引路(16)が通じる弁室(30)をそれぞれ形成する複数の弁室閉塞部(32)とを備え、
前記吸引路(16)と前記圧力路(17)と前記ポンプ路(23、24、27、28)とは、前記弁室(30)に通じるように設けられており、
前記ポンプユニット(10)は、滅菌ガスを透過可能な弁体(37)を少なくとも1個有し、
前記弁体(37)は、シリコンで構成され、当該弁体(37)の厚みが10分の数ミリメートルとなるスプリングゾーン(41)を有する
ポンプユニット。
【請求項2】
前記弁体(37)は、プレート部分(38)と中央ピン(42)とを有し、当該中央ピン(42)が、前記吸引路(16)、前記圧力路(17)、または、前記ポンプ路(23、24、27、28)に延出するように前記弁室(30)に設けられる
請求項1に記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記弁室閉塞部(32)は、前記弁室凹部(31)内に突出している拡張部(33)として形成される
請求項1または2に記載のポンプユニット。
【請求項4】
前記弁室閉塞部(32)は、前記弁室凹部(31)と共に、環状の隙間(35)を規定するように形成される
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項5】
前記筐体部(14、15)は、広範囲にわたって一体的に結合された接合部(36)によって相互連結される
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項6】
前記接合部(36)は、摩擦溶接シームである
請求項5に記載のポンプユニット。
【請求項7】
前記接合部(36)は、前記拡張部(33)が突出している平面に設けられる
請求項5または6に記載のポンプユニット。
【請求項8】
前記弁室閉塞部(32)はそれぞれ、前記ポンプ路(23、24、27、28)のいずれかを有する
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項9】
入口路となる流路(23、27)を一つの前記弁室閉塞部(32)が有し、出口路となる流路(24、28)を別の前記弁室閉塞部(32)が有する、少なくとも2個の当該弁室閉塞部(32)が、前記各ポンプシリンダー(22、26)に関連付けられている
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項10】
前記入口路を有する前記弁室閉塞部(32)は、前記弁体(37)の端部(39)と共に、オーバーフロー構造(44)を規定するように形成される
請求項9に記載のポンプユニット。
【請求項11】
前記弁体(37)の中央ピン(42)は、前記圧力路(17)内または入口路となる前記ポンプ路(23、27)内に突出するように設けられる
請求項10に記載のポンプユニット。
【請求項12】
前記吸引路(16)は、前記弁体(37)が遊びをもたずに荷重をかける弁座(43)において開通する
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【請求項13】
弁座(43)は、前記圧力路(17)に通じる前記ポンプ路(24、28)に形成される
請求項9に記載のポンプユニット。
【請求項14】
前記弁体(37)は、遊びをもたずに前記弁座(43)に荷重をかけるよう設けられる
請求項13に記載のポンプユニット。
【請求項15】
前記弁室(30)には、同一の弁体(37)が設けられる
請求項1〜14のいずれか1項に記載のポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットに関し、医用、特にウォータージェット手術用のポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウォータージェット手術では、適切な器具を用いて生理食塩水の噴流を生体組織に当て、完全または部分的に組織の切り取りと切断の両方またはいずれか一方をおこなう。したがって、負担の少ない手術手法が可能である。対応器具は、処置液、特に塩化ナトリウム溶液を、所望の圧力と所望の供給量との両方またはいずれか一方で供給する必要がある。このため、従来技術では、通常、互いに逆方向へ作動する2個の独立駆動型ポンプピストンを備えるポンプユニットが用いられていた。このように、対応する入口弁および出口弁を介し、ポンプピストンが、塩化ナトリウム溶液を吸い上げ、器具に向けて供給することが保証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなポンプユニットは、滅菌状態、例えば、使い捨てのものとして提供される。ポンプユニットは、医用滅菌製品である。これには、ポンプユニットをクリーンルームなど特定の清浄度要件の下で生産し、必要な場合は、組み立て後に無菌にする必要がある。特に、後工程の組み立てでは、ポンプユニットを滅菌しなければならない。このため、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、過酢酸など、適切な滅菌ガスをポンプユニットの流路の中に通すガス滅菌方法を用いてもよい。しかしながら、ポンプユニットは、液体を運ぶように構成されていて、ガスを運ぶためではないので、実際に用いられる滅菌ガスをポンプユニットの全関連ポイントに確実に行き届かせることは難しい。
【0004】
また、調整可能な供給量には幅広い範囲が必要なため、ポンプユニットにさらなる問題が生じる。素早いピストン動作と、特に、非常に低速なピストン動作の両方で、脈動的でなく一様に連続した塩化ナトリウムの噴流を生成しなければならない。これは、ポンプユニットの入口弁および出口弁において特に要求されることである。
【0005】
以上より、本発明の目的は、改良型ポンプユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に係るポンプユニットで実現できる。
【0007】
本発明に係るポンプユニットは、少なくとも、1個の第1筐体部と1個の第2筐体部とを有するポンプ筐体を備える。ポンプ筐体は、単に、第1筐体部と第2筐体部とで構成されることが好ましい。一方の筐体部は、ポンプピストンを受けるためのポンプシリンダーを有し、他方の筐体部は、吸引路と圧力路とを備える。さらに、ポンプ筐体には複数の弁室が形成され、それらの内部には、弁体が設けられる。各弁室は、弁室凹部と弁室閉塞部とで形成される。弁室凹部は、一方の筐体部に設けられ、関連する弁室閉塞部は、他方の筐体に形成される。このように、弁室、つまり、弁の筐体は、ポンプ筐体自体で形成される。例えば、全ての弁室凹部を第1筐体部に形成し、全ての弁室閉塞部を第2筐体部に形成してもよい。筐体部を接合すると全ての入口弁と出口弁とが完成する、組み立てが容易でシンプルな構造を提供する。
【0008】
弁体は、滅菌ガスを透過させることができる。弁体は、例えば、EPM、EPDM、FPMなどのエラストマーまたはシリコンといった適切なプラスチックからなるプレートまたはディスクで構成されている。形状、つまり、弁体の薄壁形状と材料選択の連携により、低分子の滅菌ガスは十分な割合で弁体を通り抜けることができるので、圧力を加えてポンプユニットに押し込まなくてもポンプユニットの内部流路に到達することができる。特に、弁体は、付勢されずにまたはわずかに付勢されて、関連する弁座に荷重をかける。弁ばねなどを設けないことが好ましい。その結果、弁座における表面圧力は低くなるので、弁体が弁座に接着してしまうのを防ぐことができ、吸引弁で、特に、かなり低い流量(流速)でも液体を吸引することが可能になって、滅菌が促進される。したがって、弁を開く力は非常に小さいもので十分なので、この弁を開くには、弁において非常に小さな圧力差だけが必要となる。
【0009】
ポンプユニットは、断面が略T字形状、つまり、プレート部分と中央ピンとを有する形状の弁体を有することが好ましい。中央ピンは、吸引路、圧力路、または、ポンプ路に延出していてもよい。特に、弁体のプレート部分が放射面に対して非対象に形成されている場合には、中央ピンが基本組み立て補助具となる。また、中央ピンにより、弁体が正しい位置にあること、および、筐体部が一緒に持ってこられたときに弁体が損傷を受けないことが、筐体部を一緒に誘導する際に保証される。
【0010】
弁体は、剛性のハブ部分と、さらに剛性が高い端部と、ハブ部分と端部を弾性的につなぎ合わせる中間配置されたスプリング部分とを有していることが好ましい。流れを通すことができる環状の隙間が端部と弁室凹部の間に形成されるように、端部の直径は弁室凹部の直径よりも小さい。あるいは、オーバーフロー用のくぼみを弁室凹部の壁に形成してもよい。
【0011】
スプリングゾーンは、溝、つまり、軸方向に計測したプレート部分の材料厚が他の所よりも小さい所で形成された弾性環状ゾーンであることが好ましい。この溝は、同心円状にハブ部分を囲んでいることが好ましい。したがって、ハブ部分は端部に対して弾性的に軸方向へ移動できる。プレート部分は、弁座に面する側が凸状に湾曲していることが好ましい。さらに、環状スプリングゾーンの直径は、弁体に関連する環状弁座の直径と少なくとも同じ大きさであることが好ましい。
【0012】
弁室は、前述したように、弁室凹部と弁室閉塞部との間に形成される。弁室閉塞部は、弁室凹部内に突出している拡張部として形成されることが好ましい。拡張部は、弁室凹部に対して遊び部分があってもなくてもよい。好適な実施の形態では、円筒状またはわずかに円錐状である弁室閉塞部の外周面と、対応する弁室凹部の対向面との間に、環状の隙間が形成される。この環状の隙間はそれなりの幅なので、筐体部が相互連結されるまで、お互いに少なくとも半径方向へわずかに動くことができる。この動きは、特に、超音波溶接方法などの摩擦溶接方法で広範囲にわたって一体的に結合された接合部により、筐体部を相互連結できるように固定される。
【0013】
弁室閉塞部は、摩擦溶接シームで定義される平面よりも突出している拡張部に形成されるので、弁室は、摩擦溶接過程で生じるいかなる変形またはビードの影響も受けない。
【0014】
各弁の弁体は、同型、つまり、同一であることが好ましい。しかしながら、互いに異なるものでもよい。各弁体は、中央領域に密閉部分を有し、液体が流れる構造体が、弁体の周縁部または当該周縁部に隣接して設けられるポンプ筐体の構造体に固定される。液体が流れるこの構造体は、弁体の端部を貫通する1以上の凹部によって含められてもよいし、弁体の隣接ベアリング面における凹部で形成されてもよい。
【0015】
複数ある弁のうち少なくとも1つの弁の弁体は、遊びをもたずに弁座に荷重をかけるよう設けられることが好ましい。ここでは、弾性的に制御されていた流路の閉塞を解除できるよう、弁体自体がわずかに変形する。全ての弁がこのように形成されてもよい。全ての弁の弁体全てを、同等に付勢させて弁座に荷重をかけるように設けることが可能である。あるいは、異なる弁の弁体を別々に付勢させて弁座に荷重をかけるようにすることも可能である。例えば、入口弁の弁体は、軽く付勢されるか付勢されずに、または、遊びをもって弁座に荷重をかけ、出口弁の弁体は、強く付勢されて弁座に荷重をかけてもよい。
【0016】
本発明の実施の形態のさらなる内容は、明細書、図面、または、請求項に示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係るポンプユニットの概略縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に係るポンプユニットの入口弁の拡大縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に対応するポンプユニットの入口弁の別の実施の形態における縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に係るポンプユニットの第2筐体部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、医用目的のポンプユニット10を示している。例えば、ウォータージェット手術用の塩化ナトリウム溶液のためのポンプとして用いることができる。このポンプユニット10は、
図1の点線で示された接続部11で塩化ナトリウム溶液または他の所望の液体を吸引し、概略的に同様に示した接続部12を介してウォータージェット手術用器具に供給する。
【0019】
ポンプユニット10は、第1筐体部14と第2筐体部15とで構成される筐体13を備える。筐体13は、(望ましくは取り外しできない)互いに固定して連結された上記2個の筐体部のみで構成されることが好ましい。また、筐体部14、15は、プラスチック(望ましくは超音波溶接に適したプラスチック)から構成されることが好ましい。
【0020】
接続部11につながっている吸引路16と、接続部12につながっている圧力路17とを、第1筐体部14に設ける。吸引路16は、入口弁18、19につながっている。圧力路17は、出口弁20、21につながっている。
【0021】
入口弁18と出口弁20は、第1ポンプシリンダー22に関連付けられている。第1ポンプシリンダー22は、ポンプ路23を介して入口弁18に、ポンプ路24を介して出口弁20に連結している。ポンプピストン25は、第1ポンプシリンダー22内に設けられ、連結器(詳細には図示せず)を介して駆動装置に連結させて、汲み上げおよび汲み出しをするようにポンプシリンダー22内で動かすことができる。
【0022】
また、第2ポンプシリンダー26は、第2筐体部15に設けられ、ポンプ路27を介して入口弁19に、ポンプ路28を介して出口弁21に連結している。ポンプピストン29は、第2ポンプシリンダー26内に設けられ、連結器(詳細には図示せず)を介して駆動装置に連結させることができる。駆動装置は、確実に、対象液体が吸引路16を介して一様に吸引され、圧力路17を介して一様に供給されるようにポンプピストン25、29を互いに逆方向へ動かす。ここでは、可変速度と可変ストロークの両方またはいずれか一方でポンプピストン25、29を互いに逆方向へ動かして、対象液体の供給量と供給圧力とを望み通りの幅広い範囲内で調整できるように駆動装置を形成することが好ましい。
【0023】
2個のポンプシリンダー22、26への液体流入および当該ポンプシリンダー22、26からの液体流出が、逆止弁である入口弁18、19と出口弁20、21とを制御する。これらの弁の特性は、
図2を参照しながら、以下の入口弁18について詳しく説明する。その他の弁19、20、21については、入口弁18を参照する。
【0024】
入口弁18は、吸引路16とポンプ路23とにつながっている弁室30を備える。吸引路16とポンプ路23とは、弁室30のそれぞれ反対側に配置されるのが好ましい。
【0025】
弁室30を形成するため、一方の筐体部(ここでは、例えば第1筐体部14)が弁室凹部31を有する。この弁室凹部31は、もう一方の筐体部(ここでは、第2筐体部15)に設けられた弁室閉塞部32と関連付けられている。この弁室閉塞部32は、本実施の形態では、第2筐体部15の上端面34から弁室凹部31に向けて突出しているピン状の拡張部33によって形成される。ポンプ路23は、拡張部33に延在し、その端面に通じている(その他の弁19、20、21についても同様であり、弁室閉塞部32はそれぞれ、ポンプ路23、24、27、28のいずれかを有する)。
【0026】
図1および
図6から分かるように、拡張部33は、円筒状または(極めてわずかに)円錐状に形成されてもよい。その略円筒状の外周面は、弁室凹部31の内壁に当接してもよいし、
図2に示すように、それらの間に環状の隙間35を設けてもよい。2個の筐体部14、15は、弁室30が吸引路16およびポンプ路23とやりとりする以外は密閉されるように、しっかりと相互連結されている。弁室凹部31内に拡張部33を圧入することにより、密封させることが可能である。また、リングシールなど別個のシール部材により、密封させてもよい。しかしながら、各拡張部33を全周において環状に囲む、一体的に結合された接合部、特に摩擦溶接シーム36、具体的には超音波溶接シームの形で密封させることが好ましい。このため、隙間35がゼロでない場合には、拡張部33は段形状が可能で、弁室凹部31は、環状の肩部を有してもよい。筐体部14、15を接合し、超音波にさらす場合は、段差と環状肩部の間に超音波溶接シームまたは摩擦溶接シーム36を形成するために、環状の隙間35によって十分な横方向の動きが確保される。全ての実施の形態において、この溶接シームは弁室30から離して設けられることが好ましい。
【0027】
弁体37は、弁室30に設けられる。これは、別途、
図3に示されている。弁体37は、全体的に、プラスチック、より好ましくは、滅菌ガスを透過可能な軟性の単一プラスチック材料で構成されることが好ましい。例として、弁体37は、EPM、EPDM、FPMなどで構成されてもよい。また、弁体37は、プレート部分38を有することが好ましい。このプレート部分は、わずかに凸状に湾曲した密封面を有し、その周縁には軸方向に突出した環状端部39が設けられることが好ましい。端部39と中央ハブ部分40との間に、プレート部分38が環状のスプリングゾーン41を有することが好ましい。このスプリングゾーン41は、凸状に湾曲した側から離れたハブ40を囲む環状の溝によって形成されてもよい。スプリングゾーン41によって、軸方向に、剛性のハブ部分40に対してさらに剛性が高い端部39がわずかに弾力性を有することが可能になる。弾性変形は、主にスプリングゾーン41で生じる。スプリングゾーンは、透過ゾーンとしても機能し、その壁の厚みは、最大でも10分の数ミリメートルである。滅菌ガスは、滅菌するのに十分な量がスプリングゾーン41において浸透できる。
【0028】
中央ピン42は、ハブ部分40から、好ましくは、同心円状に軸方向へ延出している。ここでは、中央ピン42は、弁室30から例えばポンプ路23に向かう流路内に、このポンプ路を塞ぐことなく突出している(その他の弁19、20、21についても同様であり、弁体37の中央ピン42は、圧力路17内または入口路となるポンプ路23、27内に突出するように設けられる)。中央ピン42は、向きおよび組み立て補助具として用いることができる。
【0029】
弁体37の凸状端面は、例えば、環状ビードで形成され、かつ、吸引路16を囲んでいる弁座43と関連付けられている。弁座43は、
図2で例示したように、円形リブで形成されてもよい。これと、弁体37のプラスチック弾性とにより、弁体37と弁座43とは広範囲にわたって密封接触される。弁座43の直径は、最大でも、スプリングゾーン41の直径と同じ大きさであることが好ましい。また、これらは共に同心円状に配置されることが好ましい。
【0030】
オーバーフロー構造44は、弁体37と関連付けられている。この構造は、弁室30に設けられ、弁座43とは逆側に設けられるのが好ましい。
図2に示すように、オーバーフロー構造44は、ポンプ路23から外側に向けて放射状に延びる1以上の放射状溝45で形成されてもよい。端部39の直径は、弁室30の直径よりも小さい。したがって、液体はプレート部分38からあふれて軸方向に流れる。
【0031】
上記ポンプユニット10は、以下のように機能する。
【0032】
動作の間、ポンプピストン25、29は交互に上下する。そして、ポンプシリンダー22または26の容量を増やす方向に動いているポンプピストン25または29は、吸引路16を介して塩化ナトリウム溶液を吸引する。吸引路16は、弁体37が遊びをもたずに荷重をかける弁座43において開通する。スプリングゾーン41と、場合によってはさらに別の部分とがわずかに変形することにより、弁体37が弁座43から離れて、通り道の閉塞が解除される。
【0033】
別の実施の形態では、弁体37が軸方向にわずかな遊びをもつように、弁室30と弁体37とが互いに合っていてもよい。この場合も、各ポンプピストン25または29の吸引動作によって、対象となる入口弁18または19が開く。
【0034】
逆に、ポンプピストン25、29のうちの一方がポンプシリンダー22、26の容量を減らす方向に動いている場合は、液体の圧力および流れによって、入口弁18、19は閉じられ、その入口弁18、19に対応付けられている出口弁20、21が開く。構造的な差異は、ポンプ路24または28を囲むように、弁座43が第1筐体部14ではなく第2筐体部15に設けられているという点だけである。つまり、弁座43は、圧力路17に通じるポンプ路24、28に形成される。したがって、オーバーフロー構造44は、第1筐体部14と関連付けられ、弁室凹部31の底部に設けられる。
【0035】
上記ポンプユニット10は、以下のように製造される。
【0036】
まず、筐体部14、15を準備し、そして、弁体37を、
図6に示した筐体部15に嵌め合わせる。弁体37はそれぞれ、
図1に定義されているような向きで、対応する拡張部33に置かれる。そして、第1筐体部14を、弁室凹部31を介して拡張部33と嵌め合わせる。第1筐体部14は、当該第1筐体部14の底面が上端面34に達する前に、拡張部33に形成された環状肩部46と接触する。ここで、接合部(摩擦溶接シーム36)は、拡張部33が突出している平面に設けられる。つまり、環状の超音波溶接シームまたは摩擦溶接シーム36(
図1)が、超音波効果によって肩部46に形成される。
【0037】
次のような組み立ての場合には、ポンプピストン25、29を用いるか用いずにポンプユニットを滅菌する。このため、好ましくはプラスチックで構成されている筐体部14、15を温度負荷のない環境にさらすか、または、わずかな温度負荷環境にさらすガス滅菌法の原理を適用するのが好ましい。ポンプユニット10を滅菌ガスで洗い流す際、吸引路16と圧力路17の両方またはいずれか一方に、例えば連結部11、12を介して滅菌ガスを供給する。すると、入口弁18、19と出口弁20、21の両方またはいずれか一方がガスによって容易に開くか、または、特にスプリングゾーン41の領域では拡散によりガスが薄いプラスチック膜を透過する。あるいは、弁が開き、かつ、ガスが透過する。このように、ポンプユニット10の信頼性ある滅菌が可能である。
【0038】
上記ポンプユニット10では、様々な変形例が可能である。例として、
図4および
図5に示したようなオーバーフロー構造44を、弁体37の端部39に形成された凹部47によって形成してもよい。一方、本実施の形態では、平面状の閉じたベアリング面48を端部39と関連付けてもよく、このベアリング面48が、拡張部33または弁室閉塞部32の端面を形成している。なお、図示するように、弁座43周辺の流路16は、多数の個別流路によって形成されてもよいし、断面がより大きな単一の流路によって形成されてもよい。さらなる変形例も可能である。
【0039】
本発明に係るポンプユニット10は、特にシンプルな構造であり、単に、2個の筐体部14、15と、4個の弁体37と、ポンプピストン25、29とを備える。弁体37は、同一であることが好ましく、両筐体部14、15の間のくぼみに設置される。筐体部14、15は、超音波溶接シームで恒久的に相互連結されることが好ましい。弁体は、それ自体に弾性があるディスク状またはプレート状のプラスチック部品で形成され、場合によっては、組み立ておよび向き補助具として中央ピン42を備えてもよい。希望通り、弁体は、付勢されてまたは付勢されずに各弁座43に荷重をかけ、そして、確実に開閉し、最も低速な流速にも反応し、かつ、容易に滅菌できる弁を形成する。
【符号の説明】
【0040】
10 ポンプユニット
11 塩化ナトリウム貯蔵部への接続部
12 ウォータージェット手術用器具への接続部
13 筐体
14 第1筐体部
15 第2筐体部
16 吸引路
17 圧力路
18 入口弁
19 入口弁
20 出口弁
21 出口弁
22 第1ポンプシリンダー
23、24 第1ポンプシリンダー22のポンプ路
25 ポンプピストン
26 第2ポンプシリンダー
27、28 ポンプ路
29 ポンプピストン
30 弁室
31 弁室凹部
32 弁室閉塞部
33 拡張部
34 第2筐体部15の上端面
35 環状の隙間
36 摩擦溶接シーム
37 弁体
38 プレート部分
39 端部
40 ハブ部分
41 スプリングゾーン
42 中央ピン
43 弁座
44 オーバーフロー構造
45 放射状溝
46 環状肩部
47 凹部
48 ベアリング面