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特許6109871発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6109871
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20170327BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-78657(P2015-78657)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-82861(P2016-82861A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0138236
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513192683
【氏名又は名称】スンシル ユニバーシティー リサーチ コンソルティウム テクノ−パーク
【氏名又は名称原語表記】SOONGSIL UNIVERSITY RESEARCH CONSORTIUM TECHNO−PARK
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】イ ミ リム
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン クン
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−110958(JP,A)
【文献】 特開平10−92673(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/098133(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力送信端に備えられるチップ間の無線電力伝送装置において、
第1端が第1電源に連結され、第2端を通じて第1出力信号が出力される第1トランジスタと、
第1端が前記第1電源に連結され、第2端が前記第1トランジスタのゲートに連結され、ゲートが前記第1トランジスタの第2端に連結され、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号が出力される第2トランジスタと、
N個の送信コイルが直列連結されており、第1送信コイルの第1端及び第N送信コイルの第2端が、前記第1トランジスタの第2端及び前記第2トランジスタの第2端にそれぞれ連結され、前記送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうち、選択された1つの接点に第2電源が連結される送信コイル端と、
前記N個の送信コイルにそれぞれ並列連結されるN個のキャパシタと、を含み、
前記N個の送信コイルは、前記第1及び第2トランジスタを通じて出力される交流電力をN個の電力受信端に対応するN個の受信コイルにそれぞれ無線伝送し、
前記Nは、偶数個であり、
前記第2電源は、前記送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうちから中央に位置した接点に連結される、
チップ間の無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記第1電源は、接地電源であり、前記第2電源は、前記第1電源よりも大きい請求項1に記載のチップ間の無線電力伝送装置。
【請求項3】
前記第1トランジスタの第2端と前記第2トランジスタのゲートとの間に連結される第1キャパシタと、
前記第2トランジスタの第2端と前記第1トランジスタのゲートとの間に連結される第2キャパシタと、
をさらに含む請求項1に記載のチップ間の無線電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置に係り、より詳細には、チップ間の電力供給のための積層構造を使うに当って、無線電力送信部の回路を発振器で構成することができる発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、集積回路設計時に設計面積を減らすために、複数のチップを積層する3次元半導体技術が研究されている。そのうち、最も代表的なTSV(Through Silicon Via)技術の場合、既存のMCP(Multi−Chip Package)技術と異なって、各チップ間の通信がビア(via)とバンプ(bump)とを通じてなされる。
【0003】
しかし、このようなTSV積層技術は、チップに物理的な孔を形成し、これを金属性物質で充填してビアを形成することによって、追加的な半導体工程による研究開発コストと、商用化コストと、が増加するという問題点がある。また、このように形成されたビアは、クラック(Crack)のような問題点によって収率を高めるための多くの努力が要求される短所がある。結局、TSV積層技術は、生産コストの上昇をもたらす。
【0004】
このような問題点を改善するために、最近、チップ間の無線通信技術が活発に研究されている。図1は、従来によるチップ間の無線通信技術の概念図である。このような図1は、積層構造で形成されたチップ間にインダクター形態のパッドを通じて磁気的結合(Inductive Coupling)で通信する。
【0005】
このようなチップ間の無線通信技術は、次世代3次元半導体技術と考えられている。しかし、このような無線通信技術の最大の問題点は、各チップに電源を供給することがややこしいという点である。特に、チップ間の無線通信を果たすために電力を送信する役割を行うチップの場合、DC電源をACに変換させる回路部が必須である。図2は、チップ間の無線電力伝送のための送信端の一般的な構造を示す。
【0006】
図2で、電力送信端(Power Transmitter)は、発振器(Oscillator)、DC−AC Converter、送信コイルで構成される。DC−AC Converterは、DC形態の電源電圧を無線で送信可能なAC電力に変換させる。発振器は、DC−AC Converterの内部に形成されるスイッチをOn−Offさせる。送信コイルは、DC−AC Converterで発生したAC電力を無線で送信する役割を果たす。
【0007】
図2で、電力受信端(Power Receiver)は、受信コイル、整流器(Rectifier)、DC−DC Converterで構成される。受信コイルは、前記送信コイルからAC電力を無線受信する。整流器は、AC電力をDC電力に変換する役割を果たす。DC−DC Converterは、整流器から出力されたDC電圧を受信チップの内部回路に適切な電圧値に変換する役割を果たす。このように、電力送信端でDC−AC Converterは、核心的な回路ブロックであると言える。
【0008】
図3は、図2のDC−AC Converterをさらに詳しく説明する図面である。図3の(a)は、発振器とDC−AC Converter及び送信コイルとで構成される電力送信部のみを再び示す図面である。図3の(b)は、図3の(a)に適用されるDC−AC Converterの一例であって、Class−E形態で構成されるDC−AC Converterを示す図面である。もちろん、Class−E以外の他の構造のDC−AC Converterを使うことができる。
【0009】
図3の(b)を参照すれば、発振器から発生するAC信号は、Class−Eで形成されるDC−AC Converterの2つのトランジスタに入力される。Class−Eのトランジスタは、発振器から出力される信号によってOnとOffとを繰り返しながら、VDDから入力されるDC電力をAC電力に変換する役割を果たす。この際、VDDとトランジスタとの間に形成されるインダクターL1は、Class−EがDC電力をAC電力に変換させるために必須的な素子である。このように変換されたAC電力は、Class−Eのトランジスタの出力ノードに連結される送信コイルL2を通じて無線送信される。
【0010】
このような従来技術による電力送信端の構造は、発振器、DC−AC Converter及び送信コイルなどが必須的な回路部として使われる。しかし、チップ間の無線電力伝送システムでは、要求される回路部のサイズ及び個数が大きくなるほど、チップのサイズが増加して、生産コストが増加するという問題点がある。
【0011】
本発明の背景となる技術は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1392888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、回路のサイズを減少させ、電力変換効率を増大させる発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電力送信端に備えられるチップ間の無線電力伝送装置において、第1端が第1電源に連結され、第2端を通じて第1出力信号が出力される第1トランジスタと、第1端が前記第1電源に連結され、第2端が前記第1トランジスタのゲートに連結され、ゲートが前記第1トランジスタの第2端に連結され、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号が出力される第2トランジスタと、第1端及び第2端が、前記第1トランジスタの第2端及び前記第2トランジスタの第2端にそれぞれ連結されるキャパシタと、第1端及び第2端が、前記第1トランジスタの第2端及び前記第2トランジスタの第2端にそれぞれ連結され、第3端が第2電源に連結され、前記第1及び第2トランジスタを通じて出力される交流電力を電力受信端の受信コイルに無線伝送する送信コイルと、を含むチップ間の無線電力伝送装置を提供する。
【0015】
ここで、前記送信コイル及び前記受信コイルは、第1送信コイル及び第1受信コイルであり、前記チップ間の無線電力伝送装置は、第1端と第2端が、前記第1送信コイルの第1端と第2端との間に並列連結され、第3端に前記第2電源がそれぞれ連結される少なくとも1つの第2送信コイルをさらに含み、前記少なくとも1つの第2送信コイルは、前記交流電力を少なくとも1つの第2電力受信端に対応する少なくとも1つの第2受信コイルにそれぞれ無線伝送しうる。
【0016】
そして、本発明は、電力送信端に備えられるチップ間の無線電力伝送装置において、第1端が第1電源に連結され、第2端を通じて第1出力信号が出力される第1トランジスタと、第1端が前記第1電源に連結され、第2端が前記第1トランジスタのゲートに連結され、ゲートが前記第1トランジスタの第2端に連結され、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号が出力される第2トランジスタと、第1端及び第2端が、前記第1トランジスタの第2端及び前記第2トランジスタの第2端にそれぞれ連結されるキャパシタと、N個の送信コイルが直列連結されており、第1送信コイルの第1端及び第N送信コイルの第2端が、前記第1トランジスタの第2端及び前記第2トランジスタの第2端にそれぞれ連結され、前記送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうち、選択された1つの接点に第2電源が連結される送信コイル端と、を含み、前記N個の送信コイルは、前記第1及び第2トランジスタを通じて出力される交流電力をN個の電力受信端に対応するN個の受信コイルにそれぞれ無線伝送するチップ間の無線電力伝送装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、電力送信端に備えられるチップ間の無線電力伝送装置において、第1端が第1電源に連結され、第2端を通じて第1出力信号が出力される第1トランジスタと、第1端が前記第1電源に連結され、第2端が前記第1トランジスタのゲートに連結され、ゲートが前記第1トランジスタの第2端に連結され、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号が出力される第2トランジスタと、N個の送信コイルが直列連結されており、第1送信コイルの第1端及び第N送信コイルの第2端が、前記第1トランジスタの第2端及び前記第2トランジスタの第2端にそれぞれ連結され、前記送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうち、選択された1つの接点に第2電源が連結される送信コイル端と、前記N個の送信コイルにそれぞれ並列連結されるN個のキャパシタと、を含み、前記N個の送信コイルは、前記第1及び第2トランジスタを通じて出力される交流電力をN個の電力受信端に対応するN個の受信コイルにそれぞれ無線伝送するチップ間の無線電力伝送装置を提供する。
【0018】
ここで、前記Nは、偶数個であり、前記第2電源は、前記送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうちから中央に位置した接点に連結されうる。
【0019】
また、前記第1電源は、接地電源であり、前記第2電源は、前記第1電源よりも大きい。
【0020】
そして、前記チップ間の無線電力伝送装置は、前記第1トランジスタの第2端と前記第2トランジスタのゲートとの間に連結される第1キャパシタと、前記第2トランジスタの第2端と前記第1トランジスタのゲートとの間に連結される第2キャパシタと、をさらに含みうる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置によれば、チップ間の無線電力伝送のための電力送信端を構成するに当って、既存のDC−ACコンバータの代わりに、発振器を用いて電力送信端を構成することによって、全体電力送信端回路の複雑度及びサイズを減少させ、電力変換効率を増大させる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来によるチップ間の無線通信技術の概念図である。
図2】チップ間の無線電力伝送のための送信端の一般的な構造を示す。
図3図2のDC−AC Converterをさらに詳しく説明する図面である。
図4】本発明の第1実施形態による電力送信端に備えられるチップ間の無線電力伝送装置の構成図である。
図5図4の装置が電力送信端に適用された構成図である。
図6図5の変形例を示す。
図7図5の変形例を示す。
図8図5の変形例を示す。
図9】本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置が電力送信端に適用された構成図である。
図10図9の変形例を示す。
図11図9の変形例を示す。
図12】本発明の第3実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置が電力送信端に適用された構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について当業者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態で具現され、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして、図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて類似した部分については、類似した図面符号を付する。
【0024】
明細書全体で、ある部分が他の部分と“連結”されているとする時、これは、“直接連結”されている場合のみならず、その中間に他の素子を挟んで“電気的に連結”されている場合も含む。また、ある部分が、ある構成要素を“含む”とする時、これは、特に反対される記載のない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0025】
本発明は、発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置に関するものであって、チップ間の無線電力伝送のための電力送信端の構成において、既存のDC−ACコンバータを使わず、LC tankを利用した発振器を使い、発振器に備えられたインダクターを無線電力伝送のための送信コイルとして活用する。これを通じて、本発明の実施形態は、送信部の複雑度を減少させると共に、DC−AC Converterのために要求される集積回路上の面積を減少させ、送信部の全体電力変換効率を増大させる。
【0026】
積層構造で形成されたチップ間の無線電力伝送において、電力送信端の構成は、第1チップに備えられ、それに対応する電力受信端は、少なくとも1つの第2チップに備えられうる。もちろん、本発明が、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明の実施形態で、電力送信端は、発振器の形態を有しており、発振器は、多様な構造が適用可能である。以下の実施形態では、交差結合(Cross−Coupled)構造で形成された発振器を例示し、トランジスタは、N型のトランジスタを例示する。もちろん、本発明が、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
以下、本発明の実施形態に関してさらに詳しく説明する。図4は、本発明の第1実施形態による電力送信端に備えられるチップ間の無線電力伝送装置の構成図である。図5は、図4の装置が電力送信端に適用された構成図である。
【0029】
これを具体的に説明すれば、本発明の第1実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置は、第1トランジスタMN1、第2トランジスタMN2、キャパシタC、送信コイルLを含む。
【0030】
第1トランジスタMN1は、第1端が第1電源(ex、GND)に連結され、第2端を通じて第1出力信号(Positive output)が出力される。
【0031】
また、第2トランジスタMN2は、第1端が前記第1電源(ex、GND)に連結され、第2端が前記第1トランジスタMN1のゲートに連結されており、ゲートが前記第1トランジスタMN1の第2端に連結されて、前記第1トランジスタMN1と交差結合されている。このような第2トランジスタMN2は、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号(Negative output)を出力する。
【0032】
2つのトランジスタMN1、MN2は、それぞれ自体のドレイン端が相手トランジスタのゲート端と連結されており、発振に必須的な負性抵抗を形成する役割を行う。このように形成される交差結合型発振器の構造は、MN1及びMN2のドレイン端が出力ノードとして使われ、2つの出力ノードは、互いに差動信号を発生させる。
【0033】
次に、キャパシタCは、2つのトランジスタMN1、MN2の出力端(出力ノード)の間に連結される。すなわち、キャパシタCの第1端及び第2端は、第1トランジスタMN1の第2端及び第2トランジスタMN2の第2端にそれぞれ連結されている。
【0034】
送信コイルLは、第1端及び第2端が、第1トランジスタMN1の第2端及び第2トランジスタMN2の第2端にそれぞれ連結され、第3端が第2電源VDDに連結されている。このような送信コイルLは、センタータップ(center tap)タイプのインダクターに該当しうる。
【0035】
送信コイルLは、キャパシタCと共に発振器の発振周波数の決定に重要な役割を行うと同時に、第1及び第2トランジスタMN1、MN2を通じて出力される交流電力(AC)を電力受信端の受信コイルLに無線伝送する役割も行う。
【0036】
以上のように、本発明の実施形態によれば、従来の図3の(a)のように、発振器、DC−ACコンバータ、そして、送信コイルL2を個別的に使う必要がない。本実施形態の場合、図3の場合とは異なって、既存のDC−ACコンバータを使わず、LC tankを利用した発振器を使うが、発振器に必須的なインダクターLの構成を、共振周波数の形成用途以外に、無線電力伝送のための送信コイル用途としても活用している。
【0037】
前述したように、発振器で、インダクターは必須であり、電力を無線で送信するためには、送信用コイルも必須である。しかし、このようなインダクターとコイルは、その形成方法が互いに同一であり、動作原理も磁場(Magnetic Field)を利用するという点で同一である。
【0038】
したがって、本発明の実施形態では、発振器のインダクターLを送信用コイルとして活用することによって、発振器のインダクターは、発振器の発振周波数を決定すると共に、無線で電力を送信するコイルの役割を同時に行う。但し、発振器が高出力電力を発生させなければならないが、これは、トランジスタのサイズを変更して実現することができる。
【0039】
以上のように、本発明の実施形態による電力送信端の構造は、従来の図3と比べる時、DC−AC Converterが除去され、発振器のインダクターL1と送信用コイルL2が、図4及び図5のように、1つのコイルLで統合されたために、送信端の構造が、全体チップで占める面積が減少して、結果的に生産コストを節減することができる利点がある。
【0040】
一方、本発明の実施形態で、発振器内の交差結合される経路上には、それぞれキャパシタが付加されうる。すなわち、第1トランジスタMN1の第2端と第2トランジスタMN2のゲートとの間にキャパシタが連結され、第2トランジスタMN2の第2端と第1トランジスタMN1のゲートとの間にキャパシタが連結されうる。このような交差経路上のキャパシタは、DC block capに該当するものであって、外部のDC電源が、各トランジスタのゲートへの流入を防止する役割を果たす。このような構成は、以下の他の実施形態でも適用可能である。
【0041】
図6ないし図8は、図5の変形例を示す。ここで、説明の便宜上、前記図5に基づく送信コイルL及び受信コイルLは、それぞれ第1送信コイルLS1及び第1受信コイルLR1と名付ける。図6ないし図8の場合、多数の送信コイルの個数に対応する多数の電力受信端が存在し、説明の便宜上、これら個別電力受信端を1つのブロックで括って図示していることを理解しなければならない。
【0042】
図6ないし図8の変形例は、前記第1送信コイルLS1の第1端と第2端との間に少なくとも1つの第2送信コイルの第1端と第2端とが連結されて、送信コイルが互いに並列関係を形成し、それぞれの第2送信コイルの第3端に第2電源VDDが連結された場合である。すなわち、1つの電力送信端に多数の送信コイルが互いに並列連結される構造を示す。それによれば、多数の送信コイルに対応する多数の受信電力端内の受信コイルにそれぞれ電力を無線供給することができる。
【0043】
図6は、1つの電力送信端に2個の送信コイルが並列連結されている。2個の送信コイルLS1、LS2は、トランジスタMN1、MN2を通じて出力される交流電力(AC)を2個の電力受信端に対応するそれぞれの受信コイルLR1、LR2に個別的に無線伝送する。
【0044】
図7は、図6を拡張したものであって、1つの電力送信端に4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4が並列連結されている。4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4は、トランジスタによって出力された交流電力(AC)を4個の電力受信端に対応するそれぞれの受信コイルLR1、LR2、LR3、LR4に個別的に無線伝送する。
【0045】
図8は、図6の構成を2回使ったものであって、2個の電力送信端を使い、それぞれの電力送信端に送信コイルを2個ずつ連結したものである。これも、結果的に送信コイルが4個であり、この4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4は、4個の受信コイルLR1、LR2、LR3、LR4で電力を無線伝送しうる。
【0046】
以上のような場合において、それぞれの送信コイルは、それぞれの負荷に対応する電力受信端の受信コイルで電力を無線送信する。また、図6ないし図8と同じ方式を適用すれば、2つあるいは4つ以上の複数個の電力受信端がある場合に容易に拡張適用可能である。
【0047】
図9は、本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置が電力送信端に適用された構成図である。図9を参照すれば、本発明の第2実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置は、第1トランジスタMN1、第2トランジスタMN2、キャパシタC、そして、送信コイル端を含む。
【0048】
まず、図9の第1トランジスタMN1は、第1端が第1電源(ex、GND)に連結され、第2端を通じて第1出力信号が出力される。
【0049】
第2トランジスタMN2は、前記図5の第1実施形態のように、第1端が第1電源(ex、GND)に連結され、第2端が前記第1トランジスタMN1のゲートに連結されており、ゲートが前記第1トランジスタMN1の第2端に連結されて、前記第1トランジスタMN1と交差結合されている。このような第2トランジスタMN2は、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号を出力する。
【0050】
キャパシタCも、第1実施形態のように、2つのトランジスタMN1、MN2の出力端の間に連結される。すなわち、キャパシタCの第1端及び第2端は、第1トランジスタMN1の第2端及び第2トランジスタMN2の第2端にそれぞれ連結されている。
【0051】
このような図9の第2実施形態が、前記図5の第1実施形態と異なる点は、送信コイルが1つではない多数個であり、多数の送信コイルが直列連結された形態を有するという点である。また、多数の送信コイルは、端子が3個であるタップ形態ではない端子が2個である一般インダクター形態を有する。
【0052】
図9で、送信コイル端は、N個(ex、N=2)の送信コイルが直列連結されており、第1送信コイルの第1端及び第N送信コイルの第2端が、第1トランジスタMN1の第2端及び第2トランジスタMN2の第2端にそれぞれ連結されている。
【0053】
このような送信コイル端で、前記N個の送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうち、選択された1つの接点に第2電源(ex、VDD)が連結されている。図9の場合、2個の送信コイルの間の接点は1個であるので、この接点に第2電源が連結される。
【0054】
また、このようなN個(図9の場合、N=2)の送信コイルLS1、LS2は、第1及び第2トランジスタMN1、MN2を通じて出力される交流電力をN個の電力受信端に対応するN個の受信コイルLR1、LR2にそれぞれ無線伝送する。
【0055】
受信部が複数個形成される場合、送信部も同じ個数の回路部が要求されるので、全体システムのサイズが増加する。ところが、このような図9の実施形態のように構成する場合、2つの受信部に対して1つの送信部のみあれば良いので、全体チップ間の無線電力送受信システムのサイズが減少して、生産コストが減少する利点がある。
【0056】
電力送信端に発振器は1つであり、無線電力送信の役割を行う送信コイルを直列形態で分けて形成することによって、電力受信端の側面では、送信端がまるで2つに形成されたもののような効果を有しうる。この際、2つの送信コイル間の中心部(接点)は、差動信号の仮想接地が形成されるために、この仮想接地ノードを通じて発振器の電源電圧を供給することができる。
【0057】
図10及び図11は、図9の変形例を示す。図10は、送信コイル端の構成が4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4が直列連結された形態を示す。前記図9では、1つの発振器で2つの受信部に無線で電力を供給する一例であったならば、図10は、1つの発振器で4つの受信部に無線で電力を供給する一例を示したものである。
【0058】
図10で、4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4は、第1及び第2トランジスタMN1、MN2を通じて出力される交流電力を4個の電力受信端に対応する4個の受信コイルLR1、LR2、LR3、LR4にそれぞれ無線伝送する。
【0059】
但し、図10で、第2電源VDDが供給される地点は、4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4が形成する3個の接点のうち、中央に位置した接点部位(第1ないし第4送信コイルのうちから第2及び第3送信コイルの間の接点)に該当する。すなわち、4個の送信コイルの中心部は、差動信号の仮想接地が形成され、この仮想接地ノードを通じて発振器の電源電圧を供給することができる。
【0060】
以上のように、本発明の第2実施形態の場合、前記Nは、偶数個であり、前記第2電源は、前記N個の送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうちから中央に位置した接点に連結されるように構成することができる。すなわち、Nは、さらに拡張が可能である。図9及び図10と同じ方法で拡張すれば、1つの発振器を通じて2つあるいは4つ以上の複数個の受信部に無線で電力を供給させうる。
【0061】
図11は、図9の送信端の構成を2つの端として使ったものである。このような図11は、2個の送信端を使って4個の送信端に電力を供給するものであって、前記図10で、1個の送信端を使う方法とは差異点がある。
【0062】
図10のように、1つの送信端で4個の受信端に無線で電力を供給することも可能であるが、インダクター、すなわち、送信コイルは、チップ上で形成され、これにより、コイルを構成する金属線による寄生抵抗成分は、全体無線電力伝送システムの電力変換効率を制限する要素として作用することもある。
【0063】
したがって、もし、図10のように、4個の送信コイルが直列に連結される場合は、各コイルの寄生抵抗成分4個が直列に連結されるような効果を表わすことができるために、各コイルに伝達されるAC電力に抵抗性の損失が大きく発生することもある。
【0064】
図11は、このような問題点を解決するためのものであって、受信部が4個がある場合、図9による構成を用いて2つの送信端が4つの受信端に無線で電力を供給する。これは、図10に対するさらに他の実施形態に該当する。
【0065】
もちろん、このような本発明の第2実施形態は、これと同じ方法で4個以上の複数個の受信部を有するチップ間の無線電力伝送システムで拡張して適用することができる。
【0066】
また、図10図11とを互いに比べると、送信コイルを構成する金属線の寄生抵抗成分が小さい場合には、図10のような形成技法を適用して全体システムの複雑度及びサイズを緩和させ、逆に送信コイルを構成する金属線の寄生抵抗成分が大きい場合は、図11のような形成技法を適用して送信コイルの寄生抵抗成分に起因して、全体システムの効率低下を緩和させることができる。
【0067】
図12は、本発明の第3実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置が電力送信端に適用された構成図である。
【0068】
図12を参照すれば、本発明の第3実施形態によるチップ間の無線電力伝送装置は、第1トランジスタMN1、第2トランジスタMN2、キャパシタC、そして、送信コイル端を含む。
【0069】
まず、図12の第1トランジスタMN1は、第1端が第1電源(ex、GND)に連結され、第2端を通じて第1出力信号が出力される。
【0070】
第2トランジスタMN2は、前記第1及び第2実施形態のように、第1端が第1電源(ex、GND)に連結され、第2端が前記第1トランジスタMN1のゲートに連結されており、ゲートが前記第1トランジスタMN1の第2端に連結されて、前記第1トランジスタMN1と交差結合されている。このような第2トランジスタMN2は、第2端を通じて前記第1出力信号と逆位相の第2出力信号を出力する。
【0071】
送信コイル端は、前記第2実施形態のように、N個(図12の場合、N=4)の送信コイルが直列連結されており、第1送信コイルの第1端及び第N送信コイルの第2端が、第1トランジスタMN1の第2端及び第2トランジスタMN2の第2端にそれぞれ連結されている。このような図12は、N=4である場合である。
【0072】
このような送信コイル端で、前記N個の送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうち、選択された1つの接点に第2電源(ex、VDD)が連結されている。図12の場合、4個の送信コイルの間の接点は、3個であり、その中間に該当する接点に第2電源(ex、VDD)が連結される。
【0073】
ここで、キャパシタCは、前記の実施形態とは異なって、送信コイルごとに並列連結されている。すなわち、4個のキャパシタCが、4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4にそれぞれ並列連結されている。
【0074】
このような第3実施形態の場合も、4個の送信コイルLS1、LS2、LS3、LS4は、第1及び第2トランジスタMN1、MN2を通じて出力される交流電力を4個の電力受信端に対応する4個の受信コイルLR1、LR2、LR3、LR4にそれぞれ無線伝送する。また、前記第2実施形態の場合のように、送信コイルの個数であるNは、偶数個で構成し、第2電源は、前記送信コイル間に形成される少なくとも1つの接点のうちから中央に位置した接点に連結されるように具現可能であり、回路の拡張も可能である。
【0075】
このような図12の場合は、発振器の共振周波数を決定するインダクターとキャパシタとの形成を異ならせたものである。前記の第1及び第2実施形態では、共振周波数を決定するインダクター(ここでは、送信コイルの役割を同時遂行)とキャパシタとを形成するに当って、無線で電力を供給する送信用コイルの役割を行うインダクターは、受信部の個数に合わせて複数個形成したならば、キャパシタは、共通して1つのみ使う例を示したものである。一方、図12は、これを変形して、キャパシタも複数個形成して、互いに対を成しているインダクターとキャパシタのそれぞれが共振周波数を有するように形成したのである。もちろん、図12の場合も、1つの送信端を通じて複数の受信端に無線で電力を供給することができる構造を有する。
【0076】
以上のような本発明による発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置によれば、送信端でDC−AC Converterを除去することによって、送信端を構成するチップの全体サイズを減少させ、生産コストを節減することができる利点がある。それだけではなく、DC−AC Converterでの消耗電力を根本的に除去し、発振器のインダクターと送信コイルとを1つに結合することによって、受動素子で消耗する電力漏水を節減し、全体チップ間の無線電力伝送システムの電力伝送及び変換効率を増大させることができる。
【0077】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、発振器を利用したチップ間の無線電力伝送装置に利用されうる。
図1
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図10
図11
図12