【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のエンジンバルブは、徐々に増径する傘部を軸部の先端に一体形成してなるバルブ本体と、前記傘部との間に隙間を形成しつつ前記傘部の外周側面を覆うように前記バルブ本体に取り付けられた傘カバーと、を備え、前記傘カバーがカシメ加工によって前記バルブ本体に取り付けられたエンジンバルブにおいて、バルブ本体の外周には、少なくとも一以上の凹部が周方向に設けられ、カシメ加工によって傘カバーに形成されるカシメ部と、バルブ本体の凹部との間に隙間が形成されるように、前記カシメ部をバルブ本体の凹部にカシメ加工することによって、傘カバーをバルブ本体に取り付けるようにした。
【0007】
(作用)バルブ本体に予め設けた凹部に向けて傘カバーをカシメ加工するため、カシメ加工する際に凹部の内部に形成された傘カバーのカシメ部と凹部との間に隙間を設けることが出来る。傘カバーのカシメ部は、バルブ本体の凹部との設けられた隙間によって凹部に強く押し当られないため、バルブ本体を塑性変形させない。また、傘カバーの熱膨張率がバルブ本体よりも高くても、傘カバーのカシメ部は、バルブ本体の凹部との設けられた隙間を埋めるように熱膨張するため、バルブ本体を塑性変形させない。
【0008】
また、傘カバーとバルブ本体とのカシメ加工による接合部分は、特許文献1のエンジンバルブのように密着せず、傘カバーのカシメ部とバルブ本体の凹部との接触面積は、カシメ部と凹部との間に形成される隙間によって特許文献1のエンジンバルブよりも小さくなるため、燃焼室からバルブ本体に伝達された熱が傘カバーに伝達されにくくなる。
【0009】
また、請求項2は、請求項1に記載のエンジンバルブであって、前記隙間は、前記傘カバーのカシメ部の先端と、前記バルブ本体の凹部の底部との間に形成されるようにした。
【0010】
(作用)傘カバーをバルブ本体の凹部にカシメ加工する方向、即ちカシメ加工によって形成される傘カバーのカシメ部の前方に位置する凹部の底部との間に隙間があるため、カシメ加工時にカシメ部を形成しても、カシメ部の先端がバルブ本体の凹部の底部に接触しない。その結果、カシメ加工時に傘カバーのカシメ部に作用する力が、バルブ本体の凹部に伝達されないため、傘カバーをバルブ本体にカシメ加工によって取り付けても、バルブ本体は、塑性変形しない。
【0011】
請求項3は、請求項1または2に記載のエンジンバルブであって、前記傘カバーのカシメ部が、軸方向の両端部を前記凹部に保持されることによって前記バルブ本体に固定されるようにした。
【0012】
(作用)傘カバーがバルブ本体に対して軸方向に位置決めされる。また、カシメ部の軸方向の両端部を凹部に保持されることによって傘カバーが、バルブ本体に支持されるため、傘カバーとバルブ本体の接触面積が特許文献1のエンジンバルブより小さくなる。
【0013】
請求項4は、請求項1または2に記載のエンジンバルブであって、前記傘カバーのカシメ部を前記凹部に付勢して前記傘部を前記バルブ本体に固定する弾性部材を有するようにした。
【0014】
(作用)傘カバーが弾性部材により、バルブ本体に対して軸方向に位置決めされる。また、傘カバーのカシメ部と接触したバルブ本体の凹部が塑性変形をしないような付勢力を傘カバーに付与する弾性部材を選択することにより、バルブ本体は、弾性部材によって傘カバーを付勢されたとしても、塑性変形しない。
【0015】
請求項5は、請求項1または2に記載のエンジンバルブであって、すすの付着を防止する撥油処理(油を弾く表面処理)が、傘カバーの外周表面に施されるようにした。
【0016】
傘カバーの温度が所定の温度範囲になった場合、傘カバーの外周表面には、燃焼室内のカーボンまたはオイルによるデポジットとよばれるすすが付着する。このすすは、燃焼室へ流通する気体に対して抵抗となって燃焼効率を低下させるため、すすの付着を防止する表面処理を傘カバーの外周表面に施すことがのぞましい。傘カバーには、すすの付着を防止する撥油処理を施すことが考えられるが、撥油処理には、傘カバーの温度が所定の温度範囲の上限を越えることによって破損するものがある。
【0017】
(作用)請求項5における傘カバーは、温度上昇が抑制されているため、すすの付着を防止する撥油処理を施しても、傘カバーの温度を所定の温度範囲の上限以下に抑制できる。従って、傘カバーの撥油処理を破損させずに保持出来るため、傘カバーの外周側面にすすが付着しない。
【0018】
請求項6は、請求項1または2に記載のエンジンバルブであって、前記カシメ部の外周端部を前記凹部の開口端部と面一にした。
【0019】
(作用)バルブ本体の外周面とカシメ部の外周面との間に段差が形成されず、両外周面が面一となるため、バルブ本体の外周面とカシメ部の外周面との間を流れる気体が、滑らかに流れる。
【0020】
請求項7のエンジンバルブの製造方法は、徐々に増径する傘部を軸部の先端に一体形成してなるバルブ本体に、カシメ加工により、前記傘部との間に隙間を形成しつつ傘部の外周側面を覆うように傘カバーを取り付けるエンジンバルブの製造方法において、バルブ本体の外周の周方向に少なくとも一以上の凹部を設け、
カシメ加工によって傘カバーに形成されるカシメ部と、バルブ本体の凹部との間に隙間を形成しつつ、傘カバーの一部をバルブ本体の凹部にカシメ加工するようにした。
【0021】
(作用)バルブ本体に予め設けた凹部に向けて傘カバーをカシメ加工するため、カシメ加工する際に凹部の内部に形成された傘カバーのカシメ部と凹部との間に隙間を設けることが出来る。傘カバーのカシメ部は、バルブ本体の凹部との設けられた隙間によって凹部に強く押し当られないため、バルブ本体を塑性変形させない。また、傘カバーの熱膨張率がバルブ本体よりも高くても、傘カバーのカシメ部は、バルブ本体の凹部との設けられた隙間を埋めるように熱膨張するため、バルブ本体を塑性変形させない。
【0022】
また、傘カバーとバルブ本体とのカシメ加工による接合部分は、特許文献1のエンジンバルブのように密着せず、傘カバーのカシメ部とバルブ本体の凹部との接触面積は、カシメ部と凹部との間に形成される隙間によって特許文献1のエンジンバルブよりも小さくなるため、燃焼室からバルブ本体に伝達された熱が傘カバーに伝達されにくくなる。
【0023】
また、請求項8は、請求項7に記載のエンジンバルブの製造方法であって、前記隙間を前記傘カバーのカシメ部の先端と、前記バルブ本体の凹部の底部との間に形成するようにした。
【0024】
(作用)傘カバーをバルブ本体の凹部にカシメ加工する方向、即ちカシメ加工によって形成される傘カバーのカシメ部の前方に位置する凹部の底部との間に隙間があるため、カシメ加工時にカシメ部を形成しても、カシメ部の先端がバルブ本体の凹部の底部に接触しない。その結果、カシメ加工時に傘カバーのカシメ部に作用する力が、バルブ本体の凹部に伝達されないため、傘カバーをバルブ本体にカシメ加工によって取り付けても、バルブ本体は、塑性変形しない。
【0025】
請求項9は、請求項7または8に記載のエンジンバルブの製造方法であって、前記傘カバーのカシメ部を軸方向の両端部を前記凹部に保持させて前記バルブ本体に傘カバーを固定するようにした。
【0026】
(作用)傘カバーがバルブ本体に対して軸方向に位置決めされる。また、カシメ部の軸方向の両端部を凹部に保持されることによって傘カバーが、バルブ本体に支持されるため、傘カバーとバルブ本体の接触面積が特許文献1のエンジンバルブより小さくなる。
【0027】
請求項10は、7または8に記載のエンジンバルブの製造方法であって、前記傘カバーのカシメ部を弾性部材で前記凹部に付勢することによって、前記傘カバーをバルブ本体に固定するようにした。
【0028】
(作用)傘カバーが弾性部材により、バルブ本体に対して軸方向に位置決めされる。また、傘カバーのカシメ部と接触したバルブ本体の凹部が塑性変形をしないような付勢力を傘カバーに付与する弾性部材を選択することにより、バルブ本体は、弾性部材によって傘カバーを付勢されたとしても、塑性変形しない。
【0029】
請求項11は、請求項7または8に記載のエンジンバルブの製造方法であって、すすの付着を防止する撥油処理を傘カバーの外周表面に施すようにした。
【0030】
傘カバーの温度が所定の温度範囲になった場合、傘カバーの外周表面には、燃焼室内のカーボンまたはオイルによるデポジットとよばれるすすが付着する。このすすは、燃焼室へ流通する気体に対して抵抗となって燃焼効率を低下させるため、すすの付着を防止する表面処理を傘カバーの外周表面に施すことがのぞましい。傘カバーには、すすの付着を防止する撥油処理を施すことが考えられるが、撥油処理には、傘カバーの温度が所定の温度範囲の上限を越えることによって破損するものがある。
【0031】
(作用)請求項11における傘カバーは、温度上昇が抑制されているため、すすの付着を防止する撥油処理を施しても、傘カバーの温度を所定の温度範囲の上限以下に抑制できる。従って、傘カバーの撥油処理を破損させずに保持出来るため、傘カバーの外周側面にすすが付着しない。
【0032】
請求項12は、請求項7または8に記載のエンジンバルブの製造方法であって、前記傘カバーの
カシメ部の外周端部が前記凹部の開口端部と面一になるように前記カシメ部を凹部にカシメ加工した。
【0033】
(作用)バルブ本体の外周面とカシメ部の外周面との間に段差が形成されず、両外周面が面一となるため、バルブ本体の外周面とカシメ部の外周面との間を流れる気体が、滑らかに流れるエンジンバルブを製造できる。
【発明の効果】
【0034】
請求項1のエンジンバルブによれば、傘カバーをバルブ本体に取り付けるためのカシメ加工を行ってもバルブ本体の塑性変形が発生しないため、クラックが発生しない。また傘カバーの温度上昇が抑制される。
【0035】
請求項2のエンジンバルブによれば、傘カバーをカシメ加工によって取り付けてもバルブ本体に塑性変形が発生しないため、クラックが発生せず、傘カバーの温度上昇も抑制される。
【0036】
請求項3のエンジンバルブによれば、カシメ加工によるバルブ本体の塑性変形とクラックが発生せず、また傘カバーの温度上昇が抑制される。
【0037】
請求項4のエンジンバルブによれば、傘カバーへのカシメ加工と、バルブ本体への傘カバーの位置決めを行ってもバルブ本体の塑性変形とクラックが発生しない。また、弾性部材が傘カバーをバルブ本体に押し付けるため、傘カバーとバルブ本体との間に寸法誤差があっても、傘カバーは、バルブ本体に容易に取り付けられる。
【0038】
請求項5のエンジンバルブによれば、燃焼室へ流通する流体の抵抗となるデポジットが傘カバーに付着しないため、エンジンバルブの燃焼効率が低下することなく維持される。
【0039】
請求項6のエンジンバルブによれば、バルブ本体及び傘部を介して燃焼室へ流入する流体の抵抗が少ないため、エンジンバルブの燃焼効率が低下することなく維持される。
【0040】
請求項7のエンジンバルブの製造方法によれば、傘カバーをバルブ本体に取り付けるためのカシメ加工を行ってもバルブ本体の塑性変形が発生しないため、クラックが発生せず、傘カバーの温度上昇が抑制されたエンジンバルブを製造できる。
【0041】
請求項8のエンジンバルブの製造方法によれば、傘カバーをカシメ加工によって取り付けてもバルブ本体に塑性変形が発生しないため、クラックが発生せず、傘カバーの温度上昇も抑制されたエンジンバルブを製造できる。
【0042】
請求項9のエンジンバルブ
の製造方法によれば、カシメ加工によるバルブ本体の塑性変形とクラックが発生せず、また傘カバーの温度上昇が抑制されたエンジンバルブを製造できる。
【0043】
請求項10のエンジンバルブの製造方法によれば、傘カバーへのカシメ加工と、バルブ本体への傘カバーの位置決めを行ってもバルブ本体の塑性変形とクラックが発生しない。また、傘カバーとバルブ本体との間に寸法誤差があっても、傘カバーは、弾性部材でバルブ本体に押し付けられることにより、バルブ本体に容易に取り付けられる。
【0044】
請求項11のエンジンバルブの製造方法によれば、燃焼室へ流通する流体の抵抗となるデポジットが傘カバーに付着しないため、エンジンバルブの燃焼効率が低下することなく維持されたエンジンバルブを製造できる。
【0045】
請求項12のエンジンバルブ
の製造方法によれば、バルブ本体及び傘部を介して燃焼室へ流通する流体の抵抗が少ないため、エンジンバルブの燃焼効率が低下することなく維持されたエンジンバルブを製造できる。