特許第6110131号(P6110131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110131
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】毛髪処理剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20170327BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20170327BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/86
   A61Q5/04
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-283901(P2012-283901)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125453(P2014-125453A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】岡本 喜日出
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/024300(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/074133(WO,A1)
【文献】 特開2006−342159(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0183483(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0081147(US,A1)
【文献】 特開2008−290971(JP,A)
【文献】 特開2011−173864(JP,A)
【文献】 特開2005−232117(JP,A)
【文献】 特開2011−006368(JP,A)
【文献】 特開平05−320030(JP,A)
【文献】 特開2012−111705(JP,A)
【文献】 米国特許第04913900(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温アイロン装置を用いた縮毛矯正処理における、縮毛矯正用前処理剤又は還元剤が配合された縮毛矯正用第1剤として用いられる毛髪処理剤であって、
下記一般式(I)で表されるグリセリン誘導体(I)又は下記一般式(II)で表されるポリオキシプロピレンアルキルエーテル(II)が配合され、
前記グリセリン誘導体(I)及び前記ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(II)の配合量が4.0質量%以下であることを特徴とする毛髪処理剤。
Gly−[O{(PO)x(EO)y}−(BO)zH]3 (I)
[上記一般式(I)において、Glyは水酸基を除いたグリセリン残基を表し、POはオキシプロピレン基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、BOはオキシブチレン基を表し、xはPOの平均付加モル数を表し、yはEOの平均付加モル数を表し、zはBOの平均付加モル数を表し、xは3以上7以下、yは5以上10以下、zは1以上5以下である。]
【化1】
[上記一般式(II)において、nは13以上20以下であり、mは平均付加モル数が10以上20以下であることを表す。]
【請求項2】
前記グリセリン誘導体(I)として、下記式(Ia)で表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)が配合された請求項1に記載の毛髪処理剤。
Gly−[O{(PO)5(EO)8}−(BO)3H]3 (Ia)
【請求項3】
前記縮毛矯正処理では、前記縮毛矯正用第1剤が塗布された毛髪を水洗した後に、前記高温アイロン装置を用いて毛髪を伸ばす処理が行われる、請求項1又は2に記載の毛髪処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪形状を変形するためのパーマ処理の前に用いられるパーマ用前処理剤又はパーマ用第1剤として使用される毛髪処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪にウェーブ形状を付与するパーマネントウェーブ処理や縮毛矯正処理を行うパーマ処理では、還元剤を配合したパーマ用第1剤の毛髪への塗布と、酸化剤を配合したパーマ用第2剤の毛髪への塗布が行われるのが一般的である。パーマ用第1剤の還元作用により毛髪のジスルフィド結合が切断され、パーマ用第2剤の酸化作用により毛髪のジスルフィド結合を形成させる。これら還元と酸化が毛髪形状を変形するパーマ処理での原理であり、化学反応を伴うパーマ処理では、毛髪に損傷を与え易い。
【0003】
パーマ処理での毛髪損傷を低減するために、パーマ処理前に塗布される前処理剤が用いられる場合がある。また、配合する原料を選定したパーマ用第1剤により、毛髪損傷の低減を実現する提案もある(特許文献1は、特定のリン酸エステル、脂肪族アルコール、ノニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤を含有する組成物を開示し、具体例としてPPG−15ステアリルを配合したものを開示する。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−290971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の毛髪損傷の低減は、基本的には第1剤による毛髪の還元反応を抑制するものである。この抑制は、ジスルフィド結合の切断を抑制するものでもあるから、毛髪形状の変形効率の低下を伴い易い。つまり、還元反応の抑制と、毛髪形状の変形効率の向上の両立は、困難になることが多い。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、パーマ処理における毛髪損傷を低減しつつ、毛髪形状の変形効率を良好にできる毛髪処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、特定のグリセリン誘導体又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルを所定量配合したパーマ用前処理剤又はパーマ用第1剤を用いれば、毛髪損傷を低減できる上に、毛髪形状の変形効率も良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る毛髪処理剤は、パーマ用前処理剤又は還元剤が配合されたパーマ用第1剤として用いられるものであって、下記一般式(I)で表されるグリセリン誘導体(I)又は下記一般式(II)で表されるポリオキシプロピレンアルキルエーテル(II)が配合され、前記グリセリン誘導体(I)及び前記ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(II)の配合量が4.0質量%以下であることを特徴とする。
Gly−[O{(PO)x(EO)y}−(BO)zH] (I)
[上記一般式(I)において、Glyは水酸基を除いたグリセリン残基を表し、POはオキシプロピレン基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、BOはオキシブチレン基を表し、xはPOの平均付加モル数を表し、yはEOの平均付加モル数を表し、zはBOの平均付加モル数を表し、xは3以上7以下、yは5以上10以下、zは1以上5以下である。]
【化1】
[上記一般式(II)において、nは13以上20以下であり、mは平均付加モル数が10以上20以下であることを表す。]
【0009】
本発明に係る毛髪処理剤には、前記グリセリン誘導体(I)として、下記式(Ia)で表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)が配合されていると良い。
Gly−[O{(PO)(EO)}−(BO)H] (Ia)
【0010】
本発明に係る毛髪処理剤は、縮毛矯正の前に用いられる縮毛矯正用前処理剤、又は、縮毛矯正で用いられる縮毛矯正用第1剤として使用するものであると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るパーマ用前処理剤又はパーマ用第1剤として用いられる毛髪処理剤によれば、特定のグリセリン誘導体又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルが所定量配合されたものであるから、毛髪損傷を低減できる上に、毛髪形状の変形効率も良好になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る毛髪処理剤を、第1実施形態に係るパーマ用前処理剤及び第2実施形態に係るパーマ用第1剤に基づき、以下に説明する。なお、「パーマ」とは、パーマ剤を用いる処理である。また、「パーマ剤」とは、医薬部外品及び髪型を整えて保持するカーリング剤などの化粧品を含む概念であり、毛髪をウェーブ状に形成するためのウェーブ剤、ウェーブ状等の毛髪を直線状に近づけるための縮毛矯正剤が挙げられる。
【0013】
(パーマ用前処理剤)
本発明の第1実施形態に係るパーマ用前処理剤は、特定のグリセリン誘導体(グリセリン誘導体(I))又は特定のポリオキシプロピレンアルキルエーテル(POPアルキルエーテル(II))が水に配合されたものである(水の配合量は、例えば50質量%以上)。また、本実施形態のパーマ用前処理剤には、公知のパーマ用前処理剤に配合される原料が任意原料として適宜配合される。
【0014】
グリセリン誘導体(I)
グリセリン誘導体(I)は、下記一般式(I)で表されるものであり、グリセリンに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加させた後、酸化ブチレンを付加させて得ることが可能である。
Gly−[O{(PO)x(EO)y}−(BO)zH] (I)
[上記一般式(I)において、Glyは水酸基を除いたグリセリン残基を表し、POはオキシプロピレン基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、BOはオキシブチレン基を表し、xはPOの平均付加モル数を表し、yはEOの平均付加モル数を表し、zはBOの平均付加モル数を表し、xは3以上7以下、yは5以上10以下、zは1以上5以下である。]
【0015】
本実施形態のパーマ用前処理剤には、グリセリン誘導体(I)として、下記式(Ia)で表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)(化粧品表示名称PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン)を配合すると良い。当該グリセリン誘導体は、日油社製「ウィルブライドS−753」として市販されている。
Gly−[O{(PO)(EO)}−(BO)H] (Ia)
【0016】
本実施形態のパーマ用前処理剤におけるグリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の総配合量は4.0質量%以下であるから、グリセリン誘導体(I)の配合量は、4.0質量%以下である。なお、グリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の総配合量が4.0質量%を超えると、これらグリセリン誘導体(I)等の毛髪表面への付着量が多くなり過ぎて、毛髪形状の変形効率が悪化する傾向がある。
【0017】
POPアルキルエーテル(II)
POPアルキルエーテル(II)は、下記一般式(II)で表されるものである。
【化2】
[上記一般式(II)において、nは13以上20以下であり、mは平均付加モル数が10以上20以下であることを表す。]
【0018】
POPアルキルエーテル(II)としては、例えば、POPステアリルエーテル(11P.O.)、POPステアリルエーテル(15P.O.)、POPセチルエーテル(10P.O.)、POPセチルエーテル(20P.O.)が挙げられる。なお、例示したPOPアルキルエーテルに続く括弧内の整数は、POPの平均付加モル数を表す。
【0019】
本実施形態のパーマ用前処理剤におけるグリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の総配合量は4.0質量%以下であるから、POPアルキルエーテル(II)の配合量は、4.0質量%以下となる。
【0020】
任意原料
本実施形態のパーマ用前処理剤に配合される任意原料は、上記の通り、公知のパーマ用前処理剤に配合される原料から適宜選定される。当該原料は、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、シリコーン、炭化水素、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、タンパク質、アミノ酸、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、香料などである。
【0021】
本実施形態のパーマ用前処理剤をクリーム状にする場合、例えば高級アルコール及びカチオン界面活性剤を配合すると良い。
【0022】
上記高級アルコールは、炭素数14以上22以下のものであると良く、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコールなどの分枝飽和アルコール;が挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを配合すると良く、本実施形態のパーマ用前処理剤における高級アルコールの配合量は、例えば3質量%以上8質量%以下である。
【0023】
上記のカチオン界面活性剤としては、例えば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる(なお、ここでの「長鎖アルキル」とは、炭素数が8以上の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、その炭素数が16以上22以下であると皮膚への刺激の抑制や毛髪に付与する感触の観点から好ましい。)。一種又は二種以上のカチオン界面活性剤を配合すると良く、パーマ用前処理剤におけるカチオン界面活性剤の配合量は、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0024】
剤型
パーマ用前処理剤の使用時の剤型は、特に限定されず、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状等が挙げられる。クリーム状剤型の場合の粘度は、B型粘度計において粘度に応じて選定したローターを使用して25℃で計測した60秒後の値が例えば4000mPa・s以上30000mPa・s以下である。
【0025】
pH
本実施形態のパーマ用前処理剤のpHは、2.5以上8.0以下が良く、3.0以上7.0以下が好ましい。このpH範囲であれば、毛髪におけるジスルフィド結合切断の抑制に適している。
【0026】
使用方法
公知のパーマ用前処理剤と同様、縮毛矯正用第1剤などのパーマ用第1剤を塗布する前の毛髪に本実施形態のパーマ用前処理剤を塗布して用いる。このパーマ用前処理剤を塗布してからパーマ用第1剤を塗布するまでの間に、毛髪を水洗しなくても良く、水洗しても良い。
【0027】
(パーマ用第1剤)
本発明の第2実施形態に係るパーマ用第1剤は、上記のグリセリン誘導体(I)又はPOPアルキルエーテル(II)、還元剤、及びアルカリ剤が配合されたものである(水の配合量は、例えば50質量%以上)。また、本実施形態のパーマ用第1剤には、公知のパーマ用第1剤に配合される原料が任意原料として適宜配合される。
【0028】
グリセリン誘導体(I)
上記の通り、グリセリン誘導体(I)が本実施形態のパーマ用第1剤に配合される。この配合されるグリセリン誘導体(I)として、上記式(Ia)で表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)(化粧品表示名称PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン)を配合すると良い。
【0029】
本実施形態のパーマ用第1剤におけるグリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の総配合量は4.0質量%以下であるから、グリセリン誘導体(I)の配合量は、4.0質量%以下である。なお、グリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の総配合量が4.0質量%を超えると、毛髪形状の変形効率が悪化する傾向がある。
【0030】
POPアルキルエーテル(II)
上記の通り、POPアルキルエーテル(II)が本実施形態のパーマ用第1剤に配合される。この配合されるPOPアルキルエーテル(II)としては、POPアルキルエーテル(II)としては、例えば、POPステアリルエーテル(11P.O.)、POPステアリルエーテル(15P.O.)、POPセチルエーテル(10P.O.)、POPセチルエーテル(20P.O.)が挙げられる。
【0031】
本実施形態のパーマ用第1剤におけるグリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の総配合量は4.0質量%以下であるから、POPアルキルエーテル(II)の配合量は、4.0質量%以下となる。
【0032】
還元剤
公知のパーマ用第1剤に配合されている還元剤を、本実施形態のパーマ用第1剤に配合すると良い。
【0033】
上記還元剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩(チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン)、L−システイン、塩酸L−システイン、DL−システイン、塩酸DL−システイン、N−アセチル−L−システイン、システアミン、チオ乳酸、チオグリセリン、ラクトンチオールが挙げられる。
【0034】
本実施形態のパーマ用第1剤には、一種又は二種以上の還元剤を配合すると良い。当該パーマ用第1剤における還元剤の配合量は、適宜設定されるべきものであるが、例えば2質量%以上12質量%以下である。
【0035】
アルカリ剤
本実施形態のパーマ用第1剤の還元力を高めるために、公知のパーマ用第1剤を配合する。
【0036】
上記アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アミノアルコール(モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールなど)、塩基性アミノ酸(アルギニンなど)、モルホリン、炭酸塩(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、リン酸塩(リン酸一水素アンモニウム、リン酸一水素ナトリウムなど)、苛性アルカリ(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム)が挙げられる。
【0037】
本実施形態のパーマ用第1剤には、一種又は二種以上のアルカリ剤を配合すると良い。当該パーマ用第1剤におけるアルカリ剤の配合量は、設定するパーマ用第1剤のpHに応じた量にすると良い。
【0038】
任意原料
本実施形態のパーマ用第1剤に配合される任意原料は、上記の通り、公知のパーマ用第1剤に配合される原料から適宜選定される。当該原料は、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、シリコーン、炭化水素、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、タンパク質、アミノ酸、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、香料などである。
【0039】
本実施形態のパーマ用第1剤をクリーム状にする場合、例えば高級アルコール及びカチオン界面活性剤を配合すると良い。また、アニオン界面活性剤を配合しても良い。
【0040】
上記高級アルコールは、炭素数14以上22以下のものであると良く、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコールなどの分枝飽和アルコール;が挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを配合すると良く、本実施形態のパーマ用第1剤における高級アルコールの配合量は、例えば3質量%以上8質量%以下である。
【0041】
上記のカチオン界面活性剤としては、例えば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる。一種又は二種以上のカチオン界面活性剤を配合すると良く、本実施形態のパーマ用第1剤におけるカチオン界面活性剤の配合量は、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0042】
上記アニオン界面活性剤としては、N−アシルアミノ酸塩、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸、アシル乳酸塩などのカルボン酸系アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩などのリン酸系アニオン界面活性剤;アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩などのスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩などの硫酸系アニオン界面活性剤;が挙げられる。一種又は二種以上のアニオン界面活性剤を配合すると良く、本実施形態のパーマ用第1剤におけるアニオン界面活性剤の配合量は、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0043】
剤型
パーマ用第1剤の使用時の剤型は、特に限定されず、液状、クリーム状、ゲル状などが挙げられる。クリーム状剤型の場合の粘度は、B型粘度計において粘度に応じて選定したローターを使用して25℃で計測した60秒後の値が例えば4000mPa・s以上30000mPa・s以下である。
【0044】
pH
本実施形態のパーマ用第1剤のpHは、例えば11.0以下のアルカリ性であり、8.0以上10.0以下が良い。
【0045】
使用方法
本実施形態のパーマ用第1剤は、公知の二剤式パーマ剤の使用方法と同様に用いると良く、また、公知の一剤式パーマ剤の使用方法と同様に用いても良い。つまり、加温を伴わないコールド式の二剤式ウェーブ剤の第1剤、60℃以下の加温を伴う加温式の二剤式ウェーブ剤の第1剤、コールド式の一剤式ウェーブ剤、コールド式の二剤式縮毛矯正剤の第1剤、加温式の二剤式縮毛矯正剤の第1剤、又は180℃程度の高温アイロン装置を用いる二剤式縮毛矯正剤の第1剤として用いると良い。
【0046】
本実施形態のパーマ用第1剤を二剤式パーマ剤の第1剤として用いる場合の第2剤は、公知の酸化剤及び任意原料が配合されたものであると良い。配合する酸化剤は、例えば、臭素酸塩(臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等)又は過酸化水素である。また、任意原料は、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、シリコーン、炭化水素、ロウ、高級アルコール、多価アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、タンパク質、アミノ酸、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、香料などである。この第2剤のpHは、臭素酸塩を配合する場合には、例えば5.0以上8.0以下であり、過酸化水素を配合する場合には、例えば2.0以上4.0以下である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0048】
(実施例1、比較例1a〜1f)
水と、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、グルタチオン、ジチオジグリコール酸アンモニウム、エトキシジグリコール、イソプロパノール、POEセチルエーテル(30E.O.)、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレングリコールから選択した原料を配合し、実施例1及び比較例1a〜1fの液状パーマ用前処理剤を調製した(水と配合した原料の配合濃度は、下記表1の通り。)。
【0049】
シャンプーで洗浄し、タオルで水分を拭き取った毛束(約2g、40cm程度の波状黒髪)に対して、実施例1のパーマ用前処理剤約1gを塗布し、この塗布後の毛束を二剤式縮毛矯正剤でパーマ処理した。また、このパーマ処理の比較として、実施例1のパーマ用前処理剤を比較例1a〜1fのパーマ用前処理剤に置き換えた処理と、パーマ用前処理剤を用いない処理を行った。
【0050】
上記のパーマ処理では、市販の縮毛矯正用第1剤(ミルボン社製「リシオ・グランフェ・VD−H第1剤」)と縮毛矯正用第2剤(ミルボン社製「リシオ・グランフェ第2剤)を使用した。また、パーマ処理での手順は、次の通り行った。2g程度の縮毛矯正用剤1剤を毛束に塗布し、20分程度放置してから水洗し、乾燥させた。続いて、毛束を挟持可能な一対のプレートを備える縮毛矯正用アイロン(プレート設定温度:180℃)を用いて毛髪を伸ばし、2g程度の縮毛矯正用第2剤を塗布してから、5分放置し、水洗し、乾燥させた。
【0051】
(評価)
上記各パーマ用前処理剤を用いることによる毛髪形状の変形効率の評価として、毛束における「伸びている毛髪」の百分率を算出した。この算出における具体的手順は、次の通りとした。水に濡らしたパーマ処理後の一本の毛髪の上端を固定し、自然乾燥させ、目視確認した毛髪がほぼ直線状であれば、「伸びている毛髪」と認定した。この認定作業を、100本の毛髪について行った。
【0052】
また、毛髪損傷の低減の評価として、毛束における「高損傷毛髪」の百分率を算出した。この算出は、上記同様の自然乾燥後の毛髪を対象として、細かく縮れている部位を目視確認できる毛髪及び感触が滑らかではない毛髪を「高損傷毛髪」と認定し、この認定作業を、100本の毛髪について行った。
【0053】
下記表1に、実施例1及び比較例1a〜1fのパーマ用前処理剤の製造のために水と配合した原料及び配合量、並びに、毛髪形状の変形効率を評価するために算定した「伸びている毛髪」の百分率及び毛髪損傷の低減を評価するために算定した「高損傷毛髪」の百分率を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
上記表1において、グリセリン誘導体(I)を配合した実施例1のみが、比較例1a〜1fと異なり、伸びている毛髪の割合がわりに、高損傷毛髪の割合が低い。すなわち、比較例においては、伸びている毛髪の割合が高ければ高損傷毛髪の割合も高くなる傾向があるが(特に比較例1e〜1f)、この高損傷毛髪が高くなる傾向は、実施例1では低減されている。
【0056】
(実施例2、比較例2a〜2b)
水と、POPステアリルエーテル(15P.O.)、POE・POPブチルエーテル(9E.O.)(10P.O.)、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(5E.O.)、POEセチルエーテル(30E.O.)、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレングリコールから選択した原料を配合し、実施例2及び比較例2a〜2bの液状パーマ用前処理剤を調製した(水と配合した原料の配合濃度は、下記表2の通り。)。
【0057】
実施例1等と同様、実施例2及び比較例2a〜2bのパーマ用前処理剤を評価した。なお、ここでの評価で用いた毛束は、実施例1で用いた毛束の由来人物とは異なる人物から採取した毛髪によるものとした。
【0058】
下記表2に、実施例2及び比較例2a〜2bのパーマ用前処理剤の製造のために水と配合した原料及び配合量、並びに、「伸びている毛髪」及び「高損傷毛髪」の結果を示す。
【0059】
【表2】
【0060】
上記表2において、POPアルキルエーテル(II)を配合した実施例2のみが、比較例2a〜2bと異なり、伸びている毛髪の割合が高いわりに、高損傷毛髪の割合が低い。
【0061】
(実施例3、比較例3a〜b)
水と、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)、POPステアリルエーテル(15P.O.)、POEセチルエーテル(30E.O.)、及びモノステアリン酸ポリオキシエチレングリコールから選択した原料を配合し、実施例3及び比較例3a〜bの液状パーマ用前処理剤を調製した(水と配合した原料の配合濃度は、下記表3の通り。)。
【0062】
実施例1等と同様、実施例3及び比較例3a〜3bのパーマ用前処理剤を評価した。なお、ここでの評価で用いた毛束は、実施例1〜2で用いた毛束の由来人物とは異なる人物から採取した毛髪によるものとした。
【0063】
下記表3に、実施例3及び比較例3a〜3bのパーマ用前処理剤の製造のために水と配合した原料及び配合量、並びに、「伸びている毛髪」及び「高損傷毛髪」の結果を示す。
【0064】
【表3】
【0065】
上記表3において、グリセリン誘導体(I)及びPOPアルキルエーテル(II)の配合量が4.0質量%を超える比較例3a〜3bは、前処理を行わなかった場合より、伸びている毛髪の割合が低下する傾向を示している。一方で、配合量が4.0質量%以下の実施例3は、伸びている毛髪の割合が高い。
【0066】
(実施例4a〜4b、比較例4)
水と、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3B.O.)(8E.O.)(5P.O.)、POPステアリルエーテル(15P.O.)、POEステアリルエーテル、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、POEセチルエーテルリン酸、リン酸ジセチル、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、カチオン化セルロース、シリコーン、ジプロピレングリコール、イソプロパノール、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、ジチオジグリコール酸ジアンモニウム、モノエタノールアミン、炭酸水素アンモニウム、キレート剤、及び香料から選択した原料を配合し、実施例4a〜4b及び比較例4のクリーム状パーマ用第1剤を調製した(水と配合した原料の配合濃度は、下記表4の通り。)。
【0067】
実施例4a〜4b及び比較例4のパーマ用第1剤を用いて、パーマ処理を行った。このパーマ処理では、市販の縮毛矯正用第1剤(ミルボン社製「リシオ・グランフェ・VD−H第1剤」)と縮毛矯正用第2剤(ミルボン社製「リシオ・グランフェ第2剤)を使用した。また、パーマ処理では、2g程度の縮毛矯正用剤1剤を洗浄した毛束に塗布し、20分程度放置してから水洗し、乾燥させ、続いて、毛束を挟持可能な一対のプレートを備える縮毛矯正用アイロン(プレート設定温度:180℃)を用いて毛髪を伸ばし、2g程度の縮毛矯正用第2剤を塗布してから、5分放置し、水洗し、乾燥させた。
【0068】
上記の実施例4a〜4b及び比較例4のパーマ用第1剤を用いたパーマ処理後の毛髪について、実施例1と同様、「伸びている毛髪」及び「高損傷毛髪」の百分率を算出した。
【0069】
下記表4に、実施例4a〜4b及び比較例4のパーマ用第1剤の製造のために水と配合した原料及び配合量、並びに、「伸びている毛髪」及び「高損傷毛髪」の結果を示す。
【0070】
【表4】
【0071】
上記表4において、グリセリン誘導体(I)又はPOPアルキルエーテル(II)を配合した実施例4a〜4bは、比較例4に比して伸びている毛髪の割合が高いが、比較例4と同等の高損傷毛髪の割合である。つまり、パーマ用第1剤にグリセリン誘導体(I)又はPOPアルキルエーテル(II)を配合することで、毛髪損傷を低減しつつ、毛髪形状の変形効率が良好となっていた。