特許第6110135号(P6110135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110135
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】油性固形口唇化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20170327BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20170327BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20170327BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/891
   A61K8/31
   A61Q1/04
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-287610(P2012-287610)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129274(P2014-129274A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森地 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】田屋 潤
(72)【発明者】
【氏名】宮本 國寛
【審査官】 天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−520119(JP,A)
【文献】 特開2007−238578(JP,A)
【文献】 特開2005−314391(JP,A)
【文献】 特表2005−501022(JP,A)
【文献】 特開2011−140481(JP,A)
【文献】 特開2010−265230(JP,A)
【文献】 特開2012−140417(JP,A)
【文献】 特開2011−098935(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0020263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/31
A61K 8/891
A61Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)ポリエチレンワックスを4.5〜6.5質量%
(b)フェニル変性シリコーンオイルを10〜25質量%
(c)重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンを15〜40質量%
とを含有し、(a)ポリエチレンワックス以外のワックスの含有量が1質量%以下であり、形状が崩れる温度が60℃以上であることを特徴とする油性固形口唇化粧料。(但し、不揮発性非フェニル変性シリコーンオイルを含有するものを除く。不揮発性非フェニル変性シリコーンオイルとは、室温及び大気圧での蒸気圧が、非ゼロであり、0.02mmHg(2.66Pa)未満であるオイルを意味する。)
【請求項2】
成分(c)の重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンの20℃の粘度が20,000〜200,000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の油性固形口唇化粧料。
【請求項3】
成分(b)と成分(c)の含有量が合わせて30質量%以上含有することを特徴とする請求項1または2記載の油性固形口唇化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特定量のポリエチレンワックスと、特定量のフェニル変性シリコーン油と、特定量の重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンとを含有する油性固形口唇化粧料に関し、詳しくは、低温や高温に対する経時安定性に優れる、油性固形口唇化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より油性固形口唇化粧料は、固形油、液状油を主骨格として構成されており、様々な使用感や化粧効果を得る為に、これらの配合量や成分の検討がなされてきた。例えば、液状油は、ツヤ感、滑らかな使用感、保湿感、密着感を得るために、炭化水素系やエステル系、アルコール系、シリコーン系等の多種多様の液状油を組み合わせることがなされてきた。そして、これらを固めるために、固形油も多種のものを組み合わせて用いることがなされてきた。特に固形状にするためには、固体油と液体油との相溶性の違いにより、固形状にならないものや、化粧料の表面に経時的に液体油がでてきしまう状態(発汗)が生じるものがあり、これらを改善するために固形油の検討や発汗を防止する方法の検討がなされてきた。(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−176411号公報
【特許文献2】特開2004−83502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温においてもなめらかに塗布出来、かつ例えば40℃のような高温でも塗布する際に崩れない、さらには真夏の車内のように、60℃のような高温であっても形状を維持することは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定量のポリエチレンワックスと、特定量のフェニル変性シリコーンオイルと特定量の重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンとを含有することにより、低温や高温に対する経時安定性に優れる油性固形口唇化粧料が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本願発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)ポリエチレンワックスを4〜8質量%
(b)フェニル変性シリコーンオイルを10〜50質量%
(c)重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンを10〜50質量%
とを含有することにより、低温や高温に対する経時安定性に優れる油性固形口唇化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の油性固形口唇化粧料は、低温でもなめらかに塗布出来、かつ例えば40℃のような高温でも塗布する際に崩れない、さらには60℃のような高温であっても形状を維持することが出来る温度変化に対する経時安定性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明に用いられる成分(a)のポリエチレンワックスとは、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解により得られる偶数の炭化水素であり、口紅などの油性固形化粧料に適度な粘性や形状保持性を与えることが出来る。
【0009】
本願発明に用いられる成分(a)のポリエチレンワックスは、通常化粧料に使用されるものであればいずれのものも使用することができるが、融点が75〜120℃のものが好ましい。なめらかな使用感から、融点が80〜110℃がより好ましく、特に80〜100℃を使用することでツヤ感も更に向上する油性固形口唇化粧料を得ることができる。市販品としてはPERFORMALENE500、PERFORMALENE655、PERFORMALENE725、PERFORMALENE850(いずれもニューフェーズテクノロジー社製)、Lipwax A−4(日本ナチュラルプロダクツ社製)などが挙げられる。また、これらは必要に応じて1種または2種以上を用いることができる。
【0010】
本願発明に用いられる成分(a)の含有量は油性固形口唇化粧料中に4〜8質量%(以下、単に「%」と示す。)、好ましくは4.5〜6.5%である。含有量が4%未満であると、硬度が低くなるので高温において塗布の際崩れやすくなり、8%を超えると低温時において硬くてなめらかに塗布できない場合がある。
【0011】
本願発明に用いられる成分(b)フェニル変性シリコーンとは、フェニル基を有する、25℃で液状のシリコーン油の総称であり、通常化粧料に使用されるものであればいずれのものも使用することができる。例えば、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ビスフェニルプロピルジメチコンなどの名称で知られているものが挙げられる。市販品の例としてはKF−56A(信越化学工業株式会社製;ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン)、SH556(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;フェニルトリメチコン)、PH−1555 HRI COSMETIC FLUID(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製;トリメチルペンタフェニルトリシロキサン)、SF1555(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製;ビスフェニルプロピルジメチコン)等が挙げられる。また、これらは必要に応じて1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
本願発明に用いられる成分(b)のフェニル変性シリコーンオイルの含有量は油性固形口唇化粧料中に10〜50%であり、好ましくは15〜40%である。含有量が10%未満であると、硬度が低くなるため、高温において塗布の際崩れやすくなり、50%を超えると低温時において硬くてなめらかに塗布できない場合がある。
【0013】
本願発明に用いられる成分(c)の重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンの重質流動イソパラフィンは、側鎖を有する炭化水素の混合物であり、例えば、イソブテンとn−ブテンを共重合した後、水素添加して得られる混合物が挙げられ、水素添加したポリブテン(イソパラフィン)を脱臭処理したものを用いることができる。 また、ポリブテンは、イソブテンの共重合体であり、例えば、イソブテン(C4ガス)を、触媒を用いて重合して得られたものを用いることができる。
これらの重質流動イソパラフィンやポリブテンは、好ましくは、数平均分子量900〜5000の常温でペースト状のものを用いることができ、数平均分子量900〜5000であると、ツヤに優れ、経時や温度変化による安定性の点で好ましい。
市販品の重質流動イソパラフィンの例としては、パールリーム18(数平均分子量1000)、パールリーム24(数平均分子量1350)、パールリーム46(数平均分子量2650)(共に日本油脂社製)等が挙げられ、ポリブテンとしては、出光ポリブテン 2000H(数平均分子量2900)、出光ポリブテン 300H(数平均分子量1330)(共に出光興産社製)、精製ポリブテンHV−100F(SB)(数平均分子量940)(日本ナチュラルプロダクツ社製)等が挙げられる。
【0014】
成分(c)の重質流動イソパラフィンまたはポリブテンは、必要に応じて1種または2種以上を用いることができ、成分(c)の粘度としては、特に限定されるものではないが、20℃における粘度が20,000〜200,000mPa・sがツヤに優れ、経時や温度変化による安定性の点で好ましい。
【0015】
本願発明に用いられる成分(c)の含有量は油性固形口唇化粧料中に、10〜50%、好ましくは15〜40%である。含有量が10%未満であると、高温で形状を維持することができなくなり、50%を超えると伸びが重くなり、べたつきも生じ、なめらかな使用感の点で劣り、好ましくない。
【0016】
さらに、成分(b)と成分(c)の含有量が合わせて30%以上含有することが好ましい。成分(b)と成分(c)の含有量が30%未満であると、高温で形状を維持することができなくなる場合がある。
【0017】
また、本願発明において、成分(a)、(b)、(c)以外に、更に油剤を含有することにより、塗布時の感触を調整できる。ここで用いる油剤としては、通常化粧料に用いられる油分であれば特に制約なく使用することができ、動物油、植物油、合成油等の起源や、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油ゲル化剤等を使用することができる。具体的には、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリンの炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、オクタン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリンなどの油ゲル化剤が挙げられる。
【0018】
本願発明の油性固形口唇化粧料には、本願発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記成分以外の各種成分、例えば粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水性成分、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0019】
粉体としては、通常化粧料に用いられるものであればいずれのものでもよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、二酸化珪素・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば特に制約はなく、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が使用される。更に、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
また、水性成分はモイスチャー効果を付与する目的で用いることができ、水および水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0021】
本願発明の油性固形口唇化粧料の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、110℃で溶解した成分(a)〜(c)、および必要に応じて他の液状油剤や油ゲル化剤を含む油性成分を、他の成分と混合した後、ローラー処理した後に、100〜110℃で加熱溶解し、90〜100℃で容器に充填して、室温ないし−20℃にて冷却することにより得ることができる。
【0022】
本願発明において油性固形口唇化粧料とは、固形状の油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする実質的に水を含まない化粧料である。本願発明の油性固形口唇化粧料としては、リップクリーム、口紅、グロス、リップトリートメント、リップ下地が挙げられる。
また、形状は、スティック状やガラスまたはプラスチックジャー容器、あるいは金皿に充填されているものが挙げられるが、スティック状の場合は、低温や高温での安定性をより高めるためには、特許第4177864号または特許第4921277号記載の容器を用いることが好ましく、同様の機構を持つ容器であれば前記特許に限定されるものではない。即ち、油性固形口唇化粧料が容器充填部材内に密着して装填され、押出部の前進により容器の先端開口部から繰り出され、また、押出部と油性固形口唇化粧料とが容器充填部材内で密着状態を維持したまま、押出部の後退による吸引作用が働き油性固形口唇化粧料が容器充填部材内に引き戻されることを特徴とする容器を用いることが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて、本願発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本願発明を何ら限定するものではない。
【0024】
(実施例1〜15および比較例1〜11)口紅
表1〜表3に示す処方および下記に示す製造方法により、口紅を製造した。得られた各試料について、官能評価により、4℃における塗布時のなめらかさ、40℃における塗布時の崩れのなさを評価した。また、形状が崩れる温度は下記測定方法により測定を行った。これらの結果も併せて、表1〜表3に記載した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
*1:Lipwax A−4(日本ナチュラルプロダクツ社製;融点94℃〜96℃)
*2:PH−1555 HRI COSMETIC FLUID(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
*3:パールリーム 24(日本油脂社製)
*4:出光ポリブテン2000H(食添グレード)(出光興産社製)
*5:パールリーム EX(日本油脂社製)
*6:コスモール43V(日清オイリオグループ社製)
*7:オゾケライトワックス SP−1020P(Strahl&Pitsch INC.社製;融点73℃ 〜76℃)
*8:HNP−9(日本精蝋社製;融点74℃ 〜77℃)
*9:精製カルナウバワックス No.1(セラリカ野田社製;融点80℃ 〜86℃)
*10:KF−96A−10cs(10mm/s)(信越化学工業株式会社製)
*11:CARNATION(SONNEBORN.IMC.社製)
【0029】
(製造方法)
A〜Cを95〜100℃にて加熱混合し、脱泡後、95〜100℃で特許第4177864号記載の容器に充填し、室温で冷却固化して口紅を得た。
【0030】
(評価)
1.官能評価
(1)4℃における塗布時のなめらかな使用感、(2)40℃における塗布時の崩れのなさについて、専門パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
(評価方法)
10名の官能検査パネルにより、各試料を口唇に塗布し、下記評価項目について、パネル各人が絶対評価にて7段階に評価し、各試料のパネル全員の評点の平均値から4段階判定基準により判定した。
(評価項目)
(1)4℃における塗布時のなめらかな使用感
(2)40℃における塗布時の崩れのなさ
(絶対評価)
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
(判定基準)
(評点平均値) (判定)
5点を超える :非常に優れる:◎
3点を超えて5点以下:優れる :○
1点を超えて3点以下:劣る :△
1点以下 :非常に劣る :×
【0031】
2.口紅の形状が崩れる温度の測定
(3)形状が崩れる温度の測定については、温・湿度調節器(株式会社東洋製作所製 AGX−325型)を用い、40℃から66℃まで30分毎に2℃ずつ上げ、形状が崩れる温度を測定した。
【0032】
表1において、ポリエチレンワックスの含有量が4%以上のとき、40℃において塗布時に崩れがなく、また、60℃以上の高温でも形状を維持できることが示された。ポリエチレンワックスの含有量が4%より少ないと、40℃において塗布時に崩れが生じ、また、60℃よりも低い温度で形状が崩れる。8%より多くなると、4℃において、塗布時のなめらかな使用感が失われる。
【0033】
表2において、フェニル変性シリコーンの含有量が10%以上のとき、40℃において塗布時に崩れがなく、また、60℃以上の高温でも形状を維持できることが示された。フェニル変性シリコーンの含有量が10%より少ないと、40℃において塗布時に崩れが生じ、また、60℃よりも低い温度で形状が崩れる。フェニル変性シリコーンの含有量が50%より多くなると、4℃において、塗布時のなめらかな使用感が失われる。
さらに、重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンの含有量が10%以上のとき、40℃において塗布時に崩れがなく、また、60℃以上の高温でも形状を維持できることが示された。重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンの含有量が10%より少ないと、40℃において塗布時に崩れが生じ、また、60℃よりも低い温度で形状が崩れる。重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンの含有量が50%より多くなると、4℃において、塗布時のなめらかな使用感が失われる。
【0034】
表3において、ポリエチレンワックスの代わりに他のワックスを使用すると、4℃における塗布時のなめらかな使用感が失われ、40℃において塗布時に崩れが生じ、また、60℃よりも低い温度で形状が崩れる。
また、フェニル変性シリコーンの代わりにジメチルポリシロキサンを使用すると、口紅が分離し調製できない。
さらに、重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンの代わりに流動イソパラフィンや流動パラフィンを使用すると、40℃において塗布時に崩れが生じ、また、60℃よりも低い温度で形状が崩れる。
【0035】
実施例16:日焼け止めリップリーム(金皿成型)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス*12 7
2.フェニル変性シリコーン*13 25
3.重質流動イソパラフィン*14 30
4.スクワラン 10
5.リンゴ酸ジイソステアリル*15 10
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル*6 残量
7.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル*16 7
8.香料 0.05
*12:PERFORMALE 500(ニューフェーズテクノロジー社製)
*13:KF−56A(信越化学工業株式会社製)
*14:パールリーム 18(日本油脂社製)
*15:コスモール 222(日清オイリオグループ社製)
*16:ノムコートTAB(日清オイリオグループ社製)
(製造方法)
成分1〜8を95〜100℃にて加熱混合し、脱泡後、95〜100℃で金皿(アルミニウム製)に充填し、冷却固化して日焼け止めリップクリームを得た。
【0036】
実施例16について、実施例1〜15で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、低温でもなめらかに塗布出来、かつ高温でも塗布する際に崩れない、さらには60℃のような高温であっても形状を維持することが出来る温度変化に対する経時安定性に優れた日焼け止めリップリームであった。
【0037】
実施例17:口紅(ガラス成型)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス*1 5.5
2.マイクロクリスタリンワックス*17 1
3.フェニル変性シリコーン*2 10
4.フェニル変性シリコーン*18 15
5.重質流動イソパラフィン*14 20
6.重質流動イソパラフィン*19 5
7.スクワラン 10
8.イソノナン酸イソトリデシル*20 15
9.トリイソステアリン酸ジグリセリル*6 残量
10.ベンガラ被覆雲母チタン 8
11.赤色202 0.2
12.黄色4号 0.1
13.シリカ*21 1
14.香料 0.1
*17:MULTIWAX W 445(SONNEBORN.IMC.社製)
*18:SH556(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)
*19:パールリーム 46(日本油脂社製)
*20:KAK 139(高級アルコール工業社製)
*21:絲粒子シリカ P−1500(日揮触媒化成社製)
(製造方法)
成分1〜13を95〜100℃にて加熱混合し、脱泡後、95〜100℃でガラスジャー容器に充填し、冷却固化して口紅を得た。
【0038】
実施例17について、実施例1〜15で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、低温でもなめらかに塗布出来、かつ高温でも塗布する際に崩れない、さらには60℃のような高温であっても形状を維持することが出来る温度変化に対する経時安定性に優れた口紅であった。
【0039】
実施例18:リップグロス(ポリエチレン容器成型)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス*22 4.5
2.パルミチン酸デキストリン 0.3
3.フェニル変性シリコーン*13 20
4.重質流動イソパラフィン*14 35
5.ポリブテン*23 10
6.ワセリン 5
7.スクワラン 5
8.リンゴ酸ジイソステアリル*15 10
9.トリイソステアリン酸ジグリセリル*6 残量
10.香料 0.05
*22:PERFORMALE 655(ニューフェーズテクノロジー社製)
*23:出光ポリブテン 300H(出光興産社製)
(製造方法)
成分1〜10を95〜100℃にて加熱混合し、脱泡後、95〜100℃でポリエチレン容器に充填し、冷却固化してリップグロスを得た。
【0040】
実施例18について、実施例1〜15で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、低温でもなめらかに塗布出来、かつ高温でも塗布する際に崩れない、さらには60℃のような高温であっても形状を維持することが出来る温度変化に対する経時安定性に優れたリップグロスであった。
【0041】
実施例19:リップ下地(金皿成型)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス*1 8
2.パラフィン*8 0.5
3.フェニル変性シリコーン*13 20
4.重質流動イソパラフィン*14 20
5.流動パラフィン*11 残量
6.リンゴ酸ジイソステアリル*15 10
7.イソノナン酸イソトリデシル*20 20
8.ジメチルシリル化シリカ*24 1
9.赤色202 0.1
10.黄色4号 0.2
11.酸化チタン 0.1
12.黒色酸化鉄 0.01
13.香料 0.05
*24: AEROSIL R976(日本アエロジル社製)
(製造方法)
成分1〜13を95〜100℃にて加熱混合し、脱泡後、95〜100℃で金皿容器に充填し、冷却固化してリップ下地を得た。
【0042】
実施例19について、実施例1〜15で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、
低温でもなめらかに塗布出来、かつ高温でも塗布する際に崩れない、さらには60℃のような高温であっても形状を維持することが出来る温度変化に対する経時安定性に優れたリップ下地であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明の油性固形化粧料は、特定量のポリエチレンワックスと、特定量のフェニル変性シリコーンオイルと特定量の重質流動イソパラフィンおよび/またはポリブテンとを含有することにより、低温や高温に対する経時安定性に優れる油性固形口唇化粧料が得られる。