特許第6110213号(P6110213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許6110213熱可塑性樹脂発泡体、発泡シール材及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法
<>
  • 特許6110213-熱可塑性樹脂発泡体、発泡シール材及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法 図000003
  • 特許6110213-熱可塑性樹脂発泡体、発泡シール材及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法 図000004
  • 特許6110213-熱可塑性樹脂発泡体、発泡シール材及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法 図000005
  • 特許6110213-熱可塑性樹脂発泡体、発泡シール材及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110213
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂発泡体、発泡シール材及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20170327BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   C08J9/12CER
   C08J9/12CEZ
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 R
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-109518(P2013-109518)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-5450(P2014-5450A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-120825(P2012-120825)
(32)【優先日】2012年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和通
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】畑中 逸大
(72)【発明者】
【氏名】児玉 清明
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/080491(WO,A1)
【文献】 特開平05−295150(JP,A)
【文献】 特開平11−035784(JP,A)
【文献】 特開2005−097566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂と、
動的架橋型熱可塑性エラストマーとを含む熱可塑性樹脂からなり、
下記で定義される、23℃での凹み回復率が50%以上、
23℃での厚み回復率が、50%以上及び
23℃での歪回復率が75%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体。
凹み回復率:熱可塑性樹脂発泡体を、刃角90度の治具によって、10Nの荷重で、前記発泡体の厚み方向の最下点まで圧縮して15秒間維持した後、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除60秒後の凹み部分の厚みの初期厚みに対する割合、
厚み回復率:樹脂発泡体を、初期厚みに対して20%の厚みに1分間圧縮した後、圧縮状態を解除した場合において、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期の厚みに対する割合、
歪回復率とは、厚み方向に、初期厚みに対して50%の厚みに24時間圧縮した後、圧縮状態を解除した場合において、圧縮状態解除24時間後の厚みの初期厚みに対する割合。
【請求項2】
平均セル径が10〜200μmであり、見掛け密度が0.01〜0.20g/cm3である請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡体。
【請求項3】
下記で定義される、23℃での50%圧縮時の反発応力が0.1〜3.0N/cm2である、
−10℃での50%圧縮時の反発応力が、10.0N/cm2未満である、及び
23℃での80%圧縮時の反発応力が、1.0〜9.0N/cm2である、からなる群から選択される1以上をさらに有する請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂発泡体。
50%圧縮時の反発応力:熱可塑性樹脂発泡体を、初期厚みに対して50%の厚みに圧縮した際の対反発荷重、
50%圧縮時の反発応力:樹脂発泡体を、初期厚みに対して50%の厚みに圧縮した際の対反発荷重、
80%圧縮時の反発応力:樹脂発泡体を、初期厚みに対して80%の厚みに圧縮した際の対反発荷重。
【請求項4】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法であって、
高圧ガスが含浸された熱可塑性樹脂組成物を減圧処理することによって熱可塑性樹脂発泡体を製造する熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記ガスが、不活性ガスである請求項4記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記不活性ガスが、二酸化炭素又は窒素である請求項5記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記ガスが、超臨界状態のガスである請求項4〜6のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体を含むことを特徴とする発泡シール材。
【請求項9】
熱可塑性樹脂発泡体の片面又は両面に配置された粘着材層を備える請求項8記載の発泡シール材。
【請求項10】
粘着材層が、フィルム層を介して、熱可塑性樹脂発泡体表面に配置されている請求項9記載の発泡シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡体及び発泡シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話及び携帯型情報端末機等のガスケット材として、樹脂発泡体が使用されている。
樹脂発泡体としては、例えば、低発泡で連続気泡構造を有する微細セルのウレタン樹脂発泡体、高発泡ウレタンを圧縮成形したもの、また独立気泡を有する発泡倍率30倍程度のポリエチレン樹脂発泡体、密度が0.2g/cm3以下のポリオレフィン系樹脂発泡体(特許文献1及び2参照)等が提案されている。
【0003】
このような樹脂発泡体は、通常、所定の形状に加工され、これら機器等の所定の部位に固定されることにより、携帯電話及び携帯型情報端末機等ガスケット材として適用される。
しかし、このような加工及び取り付けの際に、机の角、ロール芯等に衝突して、あるいは、指先及び爪、ピンセット等で把持することにより凹みが生じることがあった。
このような樹脂発泡体における凹みは、一般に時間の経過とともに回復する。その一方で、凹みの回復に長時間を要する、あるいは凹みの回復自体が不十分であるなどの場合には、ガスケット材としての本来の機能を十分果たさせることができない。
【0004】
特に、近年の携帯電話及び携帯型情報端末機等の小型・薄型、画像表示部の大型化又は高機能化(情報入力機能としてのタッチパネル機能の搭載等)の要請等により、これら機器が動的環境下で使用されることが多いため、凹みの十分かつ迅速な回復を実現して、凹みに起因するごみの侵入、光漏れ等の不具合の発生を防止することができる特性が強く求められている。また、小型・薄型の携帯電話及び携帯型情報端末機等の微小なクリアランスに追従させることができる柔軟性をも有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−227392号公報
【特許文献2】特開2007−291337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、凹みの十分かつ迅速な回復を実現し得る熱可塑性樹脂発泡体及びシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂発泡体において、凹み回復率を所定の値以上とすること、あるいは良好な厚み回復率を有することに加えて凹み回復率を所定の値以上にすることにより、柔軟性を備えて微小なクリアランスへの追従を可能としながら、効果的に防塵性能を向上させることができる熱可塑性樹脂発泡体が得られることを見出し本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、以下の発明を含む。
(1)下記で定義される23℃での凹み回復率が50%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体。
凹み回復率:熱可塑性樹脂発泡体を、刃角90度の治具によって、前記発泡体の厚み方向の最下点まで圧縮して15秒間維持した後、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除60秒後の凹み部分の厚みの初期厚みに対する割合。
(2)平均セル径が10〜200μmであり、見掛け密度が0.01〜0.20g/cm3である(1)記載の熱可塑性樹脂発泡体。
(3)下記で定義される23℃での50%圧縮時の反発応力が0.1〜3.0N/cm2である(1)又は(2)記載の熱可塑性樹脂発泡体。
50%圧縮時の反発応力:熱可塑性樹脂発泡体を、初期厚みに対して50%の厚みに圧縮した際の対反発荷重。
(4)高圧ガスが含浸された熱可塑性樹脂組成物の減圧処理によって得られる(1)〜(3)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
(5)前記ガスが、不活性ガスである(4)記載の熱可塑性樹脂発泡体。
(6)前記不活性ガスが、二酸化炭素又は窒素である(5)記載の熱可塑性樹脂発泡体。
(7)前記ガスが、超臨界状態のガスである(4)〜(6)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
(8)下記で定義される23℃での厚み回復率が50%以上であり、かつ−10℃での50%圧縮時の反発応力が10.0N/cm2未満である(1)〜(7)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
厚み回復率:厚み方向に、初期厚みに対して20%の厚みに1分間圧縮した後、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期厚みに対する割合
(9)23℃での80%圧縮時の反発応力が1.0〜9.0N/cm2である(1)〜(8)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
(10)下記で定義される23℃での歪回復率が75%以上である(1)〜(9)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体。
歪回復率:厚み方向に、初期厚みに対して50%の厚みでに24時間圧縮した後、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除24時間後の厚みの初期厚みに対する割合。
(11)上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂発泡体を含むことを特徴とする発泡シール材。
(12)熱可塑性樹脂発泡体の片面又は両面に配置された粘着材層を備える(11)の発泡シール材。
(13)粘着材層が、フィルム層を介して、熱可塑性樹脂発泡体表面に配置されている(12)の発泡シール材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟性を備えて微小なクリアランスへの追従を可能としながら、効果的に防塵性能を向上させることができる熱可塑性樹脂発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の熱可塑性樹脂発泡体の凹み回復率の評価に用いる治具の形状を説明するための治具の正面図及び側面図である。
図2】動的防塵性を評価する際に使用される評価用サンプルの形状を示す平面図である。
図3】評価用サンプルを組み付けた動的防塵性評価用の評価容器の上面図及びA−A’線概略断面図である。
図4】評価容器を置いたタンブラーを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体(以下、単に「樹脂発泡体」ということがある)は、熱可塑性樹脂を含む発泡体であり、熱可塑性樹脂組成物を、発泡・成形することにより得られる。本発明の樹脂発泡体の形状は、特に限定されず、例えば、塊状、シート状、フィルム状等のいずれの形態であってもよい。
【0012】
〔樹脂発泡体の物性〕
本発明の樹脂発泡体は、下記で定義される23℃での凹み回復率が50%以上であり、好ましくは52%以上、55%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上である。
凹み回復率は、熱可塑性樹脂発泡体を、刃角90度の治具によって、樹脂発泡体の厚み方向の最下点まで圧縮して15秒間維持した後、圧縮状態を解除し、圧縮状態解除60秒後の凹み部分の厚みの初期厚みに対する割合として定義される。
【0013】
この凹み回復率の評価に用いる刃角90度の治具は、例えば、図1に示すように、樹脂発泡体に凹みを与える刃の先端が直角であり、その一辺の長さLが1〜20mm程度、好ましくは5mm程度であり、その厚みMが1〜20cm程度、好ましくは5cm程度のものが挙げられる。樹脂発泡体に凹みを与える刃の先端が、刃を側面から見た場合に直角である限り、一辺の長さL及び厚みMの変動は、凹み回復率にほとんど影響を与えない。
【0014】
本発明の樹脂発泡体は、23℃で50%以上の凹み回復率を有するため、歪の回復性に優れる。よって、本発明の樹脂発泡体は、良好な防塵性、特に良好な動的防塵性(動的環境下での防塵性能)を発揮することができる。その結果、本発明の樹脂発泡体を、発泡シール材として、携帯電話及び携帯型情報端末機等のクリアランスに組み付けた際、振動、落下時の衝撃によって樹脂発泡体が圧縮され、組み付けられたクリアランスを完全に塞がない状態に変形しても、速やかにかつ十分に凹みが回復し、クリアランスを十分に塞ぐことができ、塵等の異物の進入を効果的に防止することができる。
【0015】
特に、面単位での厚み回復率(後述する歪回復率)が良好であったとしても、凹み回復率が良好でなければ、部分的な凹みの回復が十分に得られず、クリアランスの閉塞を完全に行うことができないため、十分な防塵効果が得られないことがある。本発明のように、部分的な応力による凹み、つまり、面単位での圧縮に比較してより過酷な条件下での短時間での回復率が良好であることにより、より一層の動的防塵性を確保することが可能となる。
【0016】
本発明の樹脂発泡体は、例えば、気泡構造が、独立気泡構造又は半連続半独立気泡構造(独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造であり、その割合は特に限定されない)であることが好ましい。特に、樹脂発泡体の独立気泡率が50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下となっている気泡構造が挙げられる。この範囲により、衝撃が作用した際の圧縮変形時、樹脂から空気が抜けやすく、十分な衝撃吸収性を発揮させることができる。また、樹脂発泡体の独立気泡率が10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上となっている気泡構造が挙げられる。この範囲により、連続気泡の割合を調整して、塵等の微小な粒子の通過を阻止し、防塵性を向上させることができる。
なお、独立気泡率は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0017】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、気泡構造中の平均セル径が、10〜200μm、好ましくは10〜180μm、より好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは10〜90μm、特に好ましくは20〜80μmである。
この平均セル径は、例えば、デジタルマイクロスコープ(商品名「VH−8000」キーエンス株式会社製)により、気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」三谷商事株式会社製)を用いて画像解析することにより求めることができる。
【0018】
本願発明の樹脂発泡体において、発泡体の平均セル径の上限を200μm以下、好ましくは180μm以下又は150μm以下、さらに好ましくは90μm以下、特に好ましくは80μm以下とすることにより、防塵性を高めるとともに、遮光性を良好とすることができる。その一方、発泡体の平均セル径の下限を10μm以上、好ましくは20μm以上とすることにより、クッション性(衝撃吸収性)を良好とすることができる。
【0019】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、見掛け密度が、好ましくは0.01〜0.20g/cm3、より好ましくは0.01〜0.15g/cm3、0.01〜0.10g/cm3、さらに好ましくは0.02〜0.08g/cm3である。見掛け密度をこの範囲とする場合には、強度を十分に確保することができ、良好な加工性(特に打ち抜き加工性)を得ることができる。同時に、柔軟性をも確保することができ、発泡シール材として用いた際に微小なクリアランスに対する追従性を得ることができる。
【0020】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、下記で定義される23℃での50%圧縮時の反発応力が、好ましくは0.1〜3.0N/cm2、好ましくは0.1〜2.0N/cm2、より好ましくは0.1〜1.7N/cm2である。23℃での50%圧縮時の反発応力は、樹脂発泡体を、上述したように、23℃で、初期厚みに対して50%の厚みに圧縮した際の対反発荷重として定義される。
【0021】
本願発明の樹脂発泡体がこの範囲の50%圧縮時の反発応力を有する場合には、良好な柔軟性を発揮させることができる。よって、特に、この樹脂発泡体を発泡シール材として用いた場合、微小クリアランスに対する追従性を発揮することができる。このため、本発明の樹脂発泡体を発泡シール材としてクリアランスに組み付けた場合、たとえクリアランスが狭くても、発泡シール材の反発による不具合(例えば、発泡シール材の周りの部材又は筐体等を変形させること、画像表示部に色ムラを生じさせること等)の発生を防止することができる。
【0022】
本発明の樹脂発泡体は、上述したように、特定の凹み回復率を備えるとともに、特定の平均セル径、特定の見掛け密度及び/又は特定の23℃での50%圧縮時の反発応力を有することにより、微小なクリアランスにより追従させることができ、防塵性及び柔軟性をより一層向上させることができ、特に動的防塵性を著しく向上させることが可能となる。
【0023】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、下記で定義される23℃での厚み回復率が、50%以上(例えば、50〜100%)であり、好ましくは65%以上(例えば65〜100%)であり、より好ましくは70%以上(例えば70〜100%)であり、さらに好ましくは75%以上(例えば75〜100%)である。
【0024】
23℃での厚み回復率は、樹脂発泡体を、上述したように、23℃で、初期厚みに対して20%の厚みに1分間圧縮した後、圧縮状態を解除した場合において、圧縮状態解除1秒後の厚みの初期の厚みに対する割合として定義される。
【0025】
本発明の樹脂発泡体は、50%以上の厚み回復率を有するため、歪の回復性が迅速であり、これにより良好な防塵性、特に良好な動的防塵性(動的環境下での防塵性能)を発揮することができる。この樹脂発泡体が、例えば、発泡シール材として、クリアランスに組み付けられている場合において、振動及び落下時の衝撃によって発泡シール材が変形した際、つまり発泡シール材が圧縮され、組み付けられたクリアランス以下の厚みになる状態に変形した際、極めて速やかに厚みが回復し、クリアランスを埋めることができる。これにより、塵等の異物の進入を防ぐことができる。
【0026】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、−10℃での50%圧縮時の反発応力が、好ましくは10.0N/cm2未満、より好ましくは、9N/cm2以下、8N/cm2以下さらに好ましくは7N/cm2以下又は5N/cm2以下である。
ここでの50%圧縮時の反発応力は、上述したように、23℃で、50%圧縮時の反発応力と、温度が異なる以外、同様の対反発荷重として定義される。
このように、低温における50%圧縮時の反発応力をこの範囲とすることにより、より柔軟性を確保することが可能となる。
【0027】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、23℃での80%圧縮時の反発応力が、好ましくは1.0〜9.0N/cm2、より好ましくは1.0〜8N/cm2、さらに好ましくは1.0〜7.5N/cm2である。
ここでの80%圧縮時の反発応力とは、樹脂発泡体を、上述したように、23℃において、初期厚みに対して80%の厚みに圧縮した際の対反発荷重として定義される。
【0028】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、23℃での歪回復率が75%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。
ここで、歪回復率とは、厚み方向に、初期厚みに対して50%の厚みに24時間圧縮した後、圧縮状態を解除した場合において、圧縮状態解除24時間後の厚みの初期厚みに対する割合として定義される。
【0029】
本発明の樹脂発泡体は、75%以上の歪回復率を有するため、長時間にわたった負荷が持続されても、その後の歪の回復性に優れ、良好な防塵性、特に良好な動的防塵性(動的環境下での防塵性能)を発揮することができる。
【0030】
このように、本発明の樹脂発泡体は、23℃での凹み回復率、−10℃での50%圧縮時の反発応力、23℃での厚み回復率、23℃での80%圧縮時の反発応力、23℃での歪回復率の2つ以上、好ましくは全てを良好なものとする場合には、通常考えられる樹脂発泡体の変形に対して、どのような温度範囲においても、十分かつ速やかに、その形状を回復することができ、特に本発明で意図する動的環境下での防塵性能を最大限に発揮させることができる。また、携帯電話等の画像表示部での使用に際しては、十分な遮光性又は光漏れを防止することができる。
【0031】
〔樹脂発泡体の材料〕
本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物によって形成される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン又はプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1など)との共重合体、エチレンと他のエチレン性不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニルアルコールなど)との共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド;ポリウレタン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリフッ化ビニル;アルケニル芳香族樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ビスフェノールA系ポリカーボネートなどのポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれの形態の共重合体であってもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、機械強度、耐熱性、耐薬品性等の特性面、溶融熱成形が容易等の成形面から、ポリオレフィン系樹脂が好適である。
ポリオレフィン系樹脂としては、分子量分布が広くかつ高分子量側にショルダーをもつタイプの樹脂、微架橋タイプの樹脂(若干架橋されたタイプの樹脂)、長鎖分岐タイプの樹脂などが好適に挙げられる。
【0033】
特に、ポリオレフィン系樹脂としては、発泡倍率が高く、かつ均一な気泡構造を有する樹脂発泡体を得る点から、溶融張力(温度:210℃、引張速度:2.0m/min、キャピラリー:φ1mm×10mm)が3〜50cN(好ましくは8〜50cN)であるポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0034】
熱可塑性樹脂には、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分が含まれる。
ゴム成分及び熱可塑性エラストマー成分は、例えば、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)であるため、樹脂発泡体としたときの柔軟性及び形状追随性が極めて良好となる。
【0035】
ゴム成分及び熱可塑性エラストマー成分としては、ゴム弾性を有し、発泡可能なものであれば特に限定はなく、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体及びそれらの水素添加物などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
なかでも、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分としては、オレフィン系エラストマーが好ましい。オレフィン系エラストマーは、熱可塑性樹脂として例示されているポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好である。
【0037】
オレフィン系エラストマーは、樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)とゴム成分Bとがミクロ相分離した構造を有するタイプであってもよいし、樹脂成分Aとゴム成分Bとを物理的に分散させたタイプであってもよいし、樹脂成分Aとゴム成分Bとを、架橋剤の存在下、動的に熱処理したタイプ(動的架橋型熱可塑性エラストマー、TPV)であってもよい。なかでも、オレフィン系エラストマーとしては、動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマー(TPV)が好ましい。
【0038】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーはTPO(非架橋型の熱可塑性オレフィン系エラストマー)より、弾性率が高く、かつ圧縮永久歪みも小さい。これにより、回復性が良好であり、樹脂発泡体とした場合に優れた回復性を示す。
【0039】
動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーとは、上述したように、マトリックスを形成する樹脂成分A(オレフィン系樹脂成分A)及びドメインを形成するゴム成分Bを含む混合物を、架橋剤の存在下、動的に熱処理することにより得られ、マトリックス(海相)である樹脂成分A中に、架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を有する多相系のポリマーである。
【0040】
このような動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーとしては、例えば、特開2000−007858号公報、特開2006−052277号公報、特開2012−072306号公報、特開2012−057068号公報、特開2010−241897号公報、特開2009−067969号公報、再表03/002654号等に記載のもの、「ゼオサーム」(日本ゼオン社製)、「サーモラン」(三菱化学社製)、「サーリンク3245D」(東洋紡績株式会社製)等として市販されているもの等が挙げられる。
【0041】
本発明の樹脂発泡体を構成する樹脂として、熱可塑性樹脂とともに、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分を含む場合、その含有率としては、特に限定されない。例えば、本発明の樹脂発泡体を構成する樹脂における、熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分との割合は、重量基準で、好ましくは70/30〜30/70が好ましく、より好ましくは60/40〜30/70であり、さらにより好ましくは50/50〜30/70であり、より一層好ましくは、60/40〜10/90、58/42〜10/90、55/45〜10/90である。ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合が少なすぎると樹脂発泡体のクッション性が低下しやすくなり又は圧縮後の回復性が低下することがあり、一方、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の割合が多すぎると発泡体形成時にガス抜けが生じやすくなり、高発泡性の発泡体を得ることが困難になることがある。
【0042】
本発明の樹脂発泡体では、高圧縮時の柔軟性及び圧縮後の形状回復を実現するために、つまり、大変形を可能とし、塑性変形を起こさないようにするために、いわゆるゴム弾性に優れた材料を用いることが適している。その観点から、本発明の樹脂発泡体では、構成する樹脂組成物として、上述した熱可塑性樹脂とともに、ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分を含むことが好ましい。
【0043】
本発明の樹脂発泡体は、その構成樹脂組成物において、さらに、造核剤が含まれることが好ましい。造核剤が含まれていると、セル径を容易に調整することができ、適度な柔軟性を有するとともに、切断加工性に優れた発泡体を得ることができる。
【0044】
造核剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、モンモリナイトなどの酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属水酸化物;カーボン粒子、グラスファイバー、カーボンチューブなどが挙げられる。なお、造核剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
造核剤の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.3〜1.5μmであり、より好ましくは0.4〜1.2μmである。このような平均粒子径とすることにより、造核剤としての十分な機能を発揮させることができる。また、造核剤がセルの壁を突き破ることなく、高発泡倍率を実現できる。
この平均粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定法により測定することができる。例えば、LEEDS & NORTHRUP INSTRUMENTS 社製「MICROTRAC MT−3000」により、試料の分散希釈液から測定(AUTO測定モード)することができる。
【0046】
本発明の樹脂発泡体において、造核剤を含む場合の含有量は、特に限定されないが、構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5〜150重量部、より好ましくは2〜140重量部、さらにより好ましくは3〜130重量部である。
【0047】
本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂により構成されているため燃えやすいことから、難燃剤を含有することが好ましい。
難燃剤としては、ノンハロゲン−ノンアンチモン系である無機難燃剤が好ましい。
このような無機難燃剤としては、例えば、金属水酸化物や金属化合物の水和物などが挙げられる。より具体的には、水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム;酸化マグネシウムや酸化ニッケルの水和物;酸化マグネシウムや酸化亜鉛の水和物などが挙げられる。なかでも、水酸化マグネシウムが好適に挙げられる。上記水和金属化合物は表面処理されていてもよい。難燃剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
本発明の樹脂発泡体において難燃剤が含まれる場合の含有量は、構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは5〜70重量部、より好ましくは25〜65重量部である。
【0049】
本発明の樹脂発泡体は、さらに、極性官能基を有し、融点が50〜150℃であり、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも一つの脂肪族系化合物を含有していてもよい。なかでも、脂肪酸、脂肪酸アミドが好ましい。
【0050】
本発明の樹脂発泡体において、このような脂肪族系化合物が含まれていると、加工(特に打ち抜き加工)の際に、気泡構造がつぶれにくくなり、形状回復性が向上し、加工性(特に打ち抜き加工性)がより向上する。このような脂肪族系化合物は結晶性が高く、上記熱可塑性樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)に添加すると樹脂表面に強固な膜を形成し、気泡構造を形成する気泡の壁面同士が互いにブロッキングすることを防ぐ働きを有するためと推測される。
【0051】
このような脂肪族系化合物は、特に、ポリオレフィン系樹脂に対しては、極性の高い官能基を含むものが、相溶しにくいため、樹脂発泡体表面に析出しやすく、上記の効果を発揮しやすい。
【0052】
脂肪族系化合物の融点は、樹脂組成物を発泡成形する際の成形温度を下げ、樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)の劣化を抑制する、耐昇華性を付与する等の観点から、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜100℃である。
【0053】
脂肪酸としては、好ましくは炭素数18〜38程度、より好ましくは炭素数18〜22程度のものである。例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。なかでも、ベヘニン酸が特に好ましい。
【0054】
脂肪酸アミドとしては、好ましくは、脂肪酸部分の炭素数が18〜38程度、より好ましくは炭素数が18〜22のものである。例えば、モノアミド、ビスアミドの何れであってもよい。具体的には、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。なかでも、エルカ酸アミドが特に好ましい。
【0055】
脂肪酸金属石鹸としては、上記脂肪酸のアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛、鉛の塩などが挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂発泡体において、このような脂肪族系化合物が含まれる場合の含有量は、特に限定されないが、構成する樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは1.5〜3.5重量、さらにより好ましくは2〜3重量部である。これにより、樹脂が発泡成形の際に十分な圧力を保つことができ、発泡剤(例えば、二酸化炭素、窒素などの不活性ガス)の含有量を確保して、高い発泡倍率が得ることができる。
【0057】
本発明の樹脂発泡体は、滑剤が含有されていてもよい。これにより、樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、樹脂の熱劣化を抑制することができる。滑剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0058】
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリルなどのエステル系滑剤などが挙げられる。また、滑剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0059】
本発明の樹脂発泡体は、必要に応じて、その他の添加剤が含有されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、収縮防止剤、老化防止剤、熱安定剤、HALS等の耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、防菌剤、防かび剤、分散剤、粘着付与剤、カーボンブラックや有機顔料等の着色剤、充填剤などが挙げられる。特に、動的架橋型熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いる場合、それを含有する組成物として添加剤(例えば、カーボンブラックなどの着色剤、軟化剤等)を含有したものを用いてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
これらの添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0060】
〔樹脂発泡体の製造方法〕
本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂(ゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分を含む)、任意に、造核剤、脂肪族系化合物、滑剤等の添加剤を混合・混練するなどにより得られた樹脂組成物を用い、樹脂組成物を発泡・成形することにより製造することができる。
【0061】
樹脂組成物を発泡・成形する際に用いられる発泡方法としては、特に限定されず、例えば、物理的方法、化学的方法等の通常用いられる方法が挙げられる。一般的な物理的方法は、クロロフルオロカーボン類又は炭化水素類などの低沸点液体(発泡剤)を樹脂に分散させ、次に加熱し発泡剤を揮発することにより気泡を形成させる方法である。また、一般的な化学的方法は、樹脂に添加した化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法である。
【0062】
本発明では、発泡方法としては、セル径が小さくかつセル密度の高い発泡体を容易に得ることができる点から、発泡剤として高圧のガスを用いる方法が好ましい。特に発泡剤として高圧の不活性ガスを用いる方法が好ましい。
発泡剤として高圧のガスを用いる方法としては、樹脂組成物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法が好ましい。具体的には、樹脂組成物からなる未発泡成形物に高圧のガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成する方法、溶融した樹脂組成物にガスを加圧状態下で含浸させた後、減圧とともに成形に付して形成する方法などが挙げられる。
【0063】
不活性ガスとしては、樹脂発泡体の素材である樹脂に対して不活性でかつ含浸可能なものであれば特に限定されず、例えば、二酸化炭素、窒素、空気などが挙げられる。これらのガスは混合して用いてもよい。これらのうち、樹脂への含浸量が多く、含浸速度の速い点から、好ましくは二酸化炭素又は窒素、より好ましくは二酸化炭素である。
【0064】
さらに、樹脂組成物への含浸速度を速めるという観点から、上記高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)は、超臨界状態のガスであることが好ましい。超臨界状態では、樹脂へのガスの溶解度が増大し、高濃度の混入が可能である。また、含浸後の急激な圧力降下時には、上記のように高濃度で含浸することが可能であるため、気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度は気孔率が同じであっても大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。例えば、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0065】
発泡剤として高圧のガスを用いる方法により樹脂組成物を発泡・成形する方法としては、予め樹脂組成物を、シート状などの適宜な形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡樹脂成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ方式、樹脂組成物を加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続方式のいずれでもよい。
【0066】
バッチ方式で樹脂組成物を発泡・成形する際に、発泡に供する未発泡樹脂成形体を形成する方法としては、例えば、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を用いて成形する方法;樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練し、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス成形する方法;樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形する方法などが挙げられる。また、未発泡樹脂成形体は、押出成形、プレス成形、射出成形以外に、他の成形方法でも形成することもできる。さらに、未発泡樹脂成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて種々の形状を選択でき、例えば、シート状、ロール状、板状、塊状等が挙げられる。このように、バッチ方式で樹脂組成物を発泡又は成形する際には、所望の形状や厚さの未発泡樹脂成形体が得られる適宜な方法により樹脂組成物を成形することができる。
【0067】
バッチ方式で樹脂組成物を発泡又は成形する場合、得られた未発泡樹脂成形体を耐圧容器(高圧容器)中に入れて、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、未発泡樹脂成形体中に高圧のガスを含浸させるガス含浸工程、十分に高圧のガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、樹脂中に気泡核を発生させる減圧工程、場合によっては(必要に応じて)、加熱することによって気泡核を成長させる加熱工程を経て、樹脂中に気泡を形成させる。加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。
【0068】
連続方式での樹脂組成物の発泡又は成形としては、樹脂組成物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら、高圧のガス(特に不活性ガス、さらには二酸化炭素)を注入(導入)し、十分に高圧のガスを樹脂組成物に含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイスなどを通して樹脂組成物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程により発泡又は成形することが挙げられる。これら混練含浸工程及び成形減圧工程では、押出機のほか、射出成形機などを用いてもよい。また、連続方式での樹脂組成物の発泡又は成形の際には、必要に応じて、加熱することによって気泡を成長させる加熱工程を設けてもよい。
【0069】
バッチ方式又は連続方式のいずれにおいても、気泡を成長させた後、必要により冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化してもよい。高圧のガスの導入は連続的に行ってもよく不連続的に行ってもよい。気泡核を成長させる際の加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知の方法を採用することができる。
【0070】
本発明の樹脂発泡体を製造する場合、効率的に安定した発泡体を作製するために、上述した工程を経た後又は上述した工程中に延伸することが好ましい。
【0071】
延伸は、樹脂の押し出し速度と成形速度との比率が1:1.2〜5となるように行うこ
とが好ましい。
延伸をこの範囲で行うことにより、樹脂シートの送りが、ロール又はベルトの摩擦抵抗
で不安定になることを防止し、過剰な延伸で厚み方向に押しつぶされることを回避できる
。その結果、空孔率、クッション性及び柔軟性を確保することができる。
通常、樹脂がゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分を多く含有する場合には、
ロール又はベルトに対する滑り性が低下するが、延伸を上記範で行うことにより
、樹脂の組成にかかわらず、安定してシートを送ることができ、形状が安定した樹脂発泡
体を得ることができる。
ここで、成形速度とは、ロール又はベルトによって樹脂シートが送られる速度を意味す
る。成形速度は、特に限定されるものではなく、例えば、2〜100m/分とすることが
好ましい。これにより、安定的に樹脂シートを成形することができ、生産効率を確保する
ことができる。
また、ロール又はベルトによって樹脂シートをニップする場合、ニップ圧は、発泡体が
厚み方向で潰れない程度とすることが好ましい
【0072】
樹脂組成物の発泡又は成形する際のガスの混合量は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物中の樹脂成分全量に対して、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは2.5〜8重量%、さらにより好ましくは3〜6重量%である。この範囲とすることにより、成形機内でガスが分離することなく、発泡率の高い発泡体を得ることができる。
【0073】
本発明の樹脂発泡体において、樹脂組成物の発泡・成形する際のバッチ方式におけるガス含浸工程や連続方式における混練含浸工程で、ガスを未発泡樹脂成形体又は樹脂組成物に含浸させるときの圧力は、ガスの種類や操作性等を考慮して適宜選択できる。例えば、ガスとして不活性ガスを、特に二酸化炭素を用いる場合には、好ましくは6MPa以上(例えば、6〜100MPa)、より好ましくは8MPa以上(例えば、8〜100MPa)である。このような圧力に設定することにより、発泡時の気泡成長を適度に制御して、セル径を小さくすることができ、ひいては、良好な防塵効果を与えることができる。これは、ガスの含浸量が適当な量となり、気泡核形成速度を制御して、形成される気泡核数を適度な数に調整することができるためである。また、セル径及び気泡密度の制御が容易となる。
【0074】
樹脂組成物の発泡又は成形する際のバッチ方式におけるガス含浸工程又は連続方式における混練含浸工程で、高圧のガスを未発泡樹脂成形体又は樹脂組成物に含浸させるときの温度は、用いるガス又は樹脂の種類等によって異なる。この温度は、広い範囲で選択でき、操作性等を考慮した場合、好ましくは10〜350℃である。例えば、バッチ方式において、シート状の未発泡樹脂成形体に高圧のガスを含浸させる場合の含浸温度は、好ましくは10〜250℃、より好ましくは40〜240℃、さらにより好ましくは60〜230℃である。また、連続方式において、樹脂組成物に高圧のガスを注入し混練する際の温度は、好ましくは60〜350℃、より好ましくは100〜320℃、さらにより好ましくは150〜300℃である。高圧のガスとして二酸化炭素を用いる場合には、超臨界状態を保持するため、含浸時の温度(含浸温度)は32℃以上(特に40℃以上)であることが好ましい。
【0075】
バッチ方式や連続方式で樹脂組成物を発泡・成形する際の減圧工程での減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜300MPa/秒である。加熱工程での加熱温度は、例えば、40〜250℃(好ましくは60〜250℃)である。
【0076】
樹脂組成物の発泡又は成形する際に上記の方法を用いると、高発泡の樹脂発泡体を製造することができ、厚い樹脂発泡体を製造することが可能となる。例えば、連続方式で樹脂組成物の発泡又は成形する場合、混練含浸工程において押出し機内部での圧力を保持するためには、押出し機先端に取り付けるダイスのギャップはできるだけ狭く(通常0.1〜1.0mm程度)設定される。従って、厚い樹脂発泡体を得るためには、狭いギャップを通して押出された樹脂組成物を高い倍率で発泡させることが好ましい。しかし、従来は、高い発泡倍率が得られないことから、形成される樹脂発泡体の厚みは薄いもの(例えば0.5〜2.0mm)に限定されていた。これに対して、本発明では、高圧のガスを用いて樹脂組成物を発泡又は成形することにより、最終的に0.50〜5.00mmの厚みの樹脂発泡体を連続して得ることが可能である。
【0077】
本発明の樹脂発泡体は、凹み回復率、厚み回復率、歪回復率、平均セル径、圧縮時反発応力、見掛け密度、相対密度等を、用いるガス、熱可塑性樹脂やゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分などの種類に応じて、例えば、ガス含浸工程や混練含浸工程における温度、圧力、時間などの操作条件、減圧工程や成形減圧工程における減圧速度、温度、圧力などの操作条件、減圧後又は成形減圧後の加熱工程における加熱温度などを適宜選択、設定することでも調整することができる。
【0078】
特に、本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂に加えて、造核剤、脂肪族系化合物を少なくとも含む樹脂組成物に、高圧のガス(特に不活性ガス)を含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることが好ましい。これによって、平均セル径が小さく、独立気泡構造率が低い気泡構造を有し、高発泡倍率であり、良好な柔軟性を有し、気泡構造が変形又は圧縮しにくく、押圧したときの歪回復性に優れ、加工性に優れる樹脂発泡体を容易に得ることができる。
【0079】
本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂に加えて、平均粒径が特に小さい造核剤、脂肪族系化合物を少なくとも含む樹脂組成物に、超臨界状態の不活性ガスを含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることがより好ましい。これにより、平均セル径が極めて小さく、独立気泡構造率が低い気泡構造を有し、高発泡倍率であり、良好な柔軟性を有し、気泡構造が変形又は圧縮しにくく、押圧したときの歪回復性に優れ、造核剤が気泡壁を突き破ることをより抑制できる。よって、より加工性に優れる樹脂発泡体を容易に得ることができる。
【0080】
本発明の樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂とゴム成分及び/又は熱可塑性エラストマー成分の混合物であり、その割合が、重量基準で、70/30〜30/70である熱可塑性樹脂に加えて、該熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5〜150重量部の造核剤、該熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜5重量部の脂肪族系化合物を少なくとも含む樹脂組成物に、高圧のガス(特に不活性ガス)を含浸させた後、減圧する工程を経て形成されていることが好ましい。
【0081】
〔発泡シール材〕
本発明の発泡シール材は、上記樹脂発泡体を含む部材である。発泡シール材の形状は、特に限定されず、シート状(フィルム状を含む)が好ましい。発泡シール材は、例えば、樹脂発泡体のみからなる構成であってもよいし、樹脂発泡体に、粘着剤層、基材層などが積層されている構成であってもよい。
【0082】
特に、本発明の発泡シール材は、粘着材層を有することが好ましい。例えば、本発明の発泡シール材がシート状の発泡シール材である場合、その片面又は両面に粘着材層を有していてもよい。発泡シール材が粘着材層を有していると、例えば、発泡シール材上に粘着材層を介して加工用台紙を設けることができ、さらに、被着体へ固定、仮止め等することができる。
【0083】
粘着材層を形成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤を適宜選択して用いることができる。粘着剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、粘着剤は、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、ホットメルト型粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固系粘着剤などのいずれの形態の粘着剤であってもよい。なかでも、粘着剤としては、被着体への汚染防止などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0084】
粘着材層の厚みは、好ましくは2〜100μm、より好ましくは10〜100μmである。粘着材層は、薄層であるほど、端部のゴミや埃の付着を防止する効果が高いため、厚みは薄い方が好ましい。
粘着材層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよいし、発泡性又は非発泡性のいずれであってもよい。なかでも、非発泡性の粘着材層が好ましい。
【0085】
本発明の発泡シール材において、粘着材層は、他の層(下層)を介して、設けられていてもよい。このような下層としては、例えば、他の粘着材層、中間層、下塗り層、基材層(特にフィルム層、不織布層など)などが挙げられる。下層は、発泡性の層であってもよいし、多孔質の層であってもよいが、非発泡性の層であることが好ましく、樹脂層であることがより好ましい。
粘着材層は、剥離フィルム(セパレーター)(例えば、剥離紙、剥離フィルムなど)により保護されていてもよい。
【0086】
本発明の発泡シール材は、本発明の樹脂発泡体を含むため、良好な防塵性、特に良好な動的防塵性を有し、微小なクリアランスに対して追従可能な柔軟性を有する。
【0087】
本発明の発泡シール材は、所望の形状や厚みなどを有するように加工が施されていてもよい。例えば、用いられる装置や機器、筐体、部材等に合わせて種々の形状に加工が施されていてもよい。
【0088】
本発明の発泡シール材は、各種部材又は部品を、所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる部材として好適に用いられる。特に、本発明の発泡シール材は、電気又は電子機器において、電気又は電子機器を構成する部品を所定の部位に取り付ける(装着する)際に用いられる部材として好適である。
【0089】
発泡部材を利用して取付(装着)可能な各種部材又は部品としては、特に限定されないが、例えば、電気又は電子機器類における各種部材又は部品などが挙げられる。このような電気又は電子機器用の部材又は部品としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に装着される画像表示部材(表示部)(特に、小型の画像表示部材)、いわゆる「携帯電話」及び「携帯情報端末」等の移動体通信の装置に装着されるカメラ及びレンズ(特に、小型のカメラ及びレンズ)等の光学部材又は光学部品などが挙げられる。
【0090】
本発明の発泡シール材の好適な具体的使用態様としては、例えば、防塵、遮光、緩衝等を目的として、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部周り、LCD(液晶ディスプレイ)等の表示部と筐体(窓部)との間に挟み込んで使用するものが挙げられる。
本発明の発泡シール材を、このような部材又は部品に取り付ける場合には、そのクリアランスを塞ぐように取り付けることが好ましい。このクリアランスとしては、特に限定されず、例えば、0.05〜0.5mm程度が挙げられる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂発泡体及び発泡シール材を、実施例に基づいて説明する。
【0091】
(実施例1)
樹脂組成物として、
ポリプロピレン 35重量部、
熱可塑性エラストマー組成物 60重量部、
滑剤 5重量部、
造核剤 10重量部及び
エルカ酸アミド(融点80〜85℃) 2重量部を、二軸混練機にて200℃の温度で混練した。
【0092】
ここで、
ポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)が0.35g/10minの樹脂、
熱可塑性エラストマー組成物は、カーボンブラックを15.0重量%含み、ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー、TPV)、ポリプロピレン:エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体=25:75(重量基準)、
滑剤は、ステアリン酸モノグリセリド1重量部にポリエチレン10重量部を配合したマスターバッチ、
造核剤は、平均粒子径が0.8μmの水酸化マグネシウムである。
【0093】
その後、樹脂組成物をストランド状に押出し、水冷し、ペレット状に切断して成形した。
このペレットを、日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、14(注入後18)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを3.8重量%注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させ、発泡に適した温度まで冷却した。その後、ダイから押出して、樹脂の押し出し速度と成形速度の比率が1:1.2〜2の範囲になるように調整し、樹脂発泡体(シート状)を得た。この樹脂発泡体は、独立気泡率が32%の半連続半独立気泡構造を有していた。
【0094】
(実施例2)
日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に、二酸化炭素ガスを3.7重量%注入したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0095】
(実施例3)
日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に、二酸化炭素ガスを3.5重量%注入したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0096】
(比較例1)
樹脂組成物として、
ポリプロピレン 45重量部、
熱可塑性エラストマー組成物 55重量部、
滑剤 10重量部及び
造核剤 10重量部を、二軸混練機にて200℃の温度で混練した。
【0097】
ここで、
熱可塑性エラストマー組成物は、カーボンブラックを15.0重量%含み、ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(TPO):ポリプロピレンとエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体=30/70(重量基準)であり、
ポリプロピレン、滑剤及び造核剤は実施例1と同様のものを用いた。
【0098】
その後、樹脂組成物としてストランド状に押出し、水冷し、ペレット状に切断して成形した。
このペレットを、日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気下、14(注入後18)MPaの圧力で、二酸化炭素ガスを3.8重量%注入した。二酸化炭素ガスを十分飽和させ、発泡に適した温度まで冷却した。その後、ダイから押出して、樹脂発泡体(シート状)を得た。この樹脂発泡体は、独立気泡率が46%の半連続半独立気泡構造を有していた。
【0099】
(比較例2)
日本製鋼所社製のタンデム型単軸押出機に、二酸化炭素ガスを3.7重量%注入したこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂発泡体(シート状)を得た。
【0100】
(独立気泡率の測定方法)
実施例及び比較例で得られた樹脂発泡体の独立気泡率は、以下の方法に従って測定した。
得られた樹脂発泡体から、一定厚みで、一辺5cmの平面正方形状の試験片を切り出す。続いて、この試験片の重量W(g)及び厚み(cm)を測定して、試験片の見掛け体積V(cm)を算出する。
次に、得られた値を式(1)に代入し、気泡の占める見掛け体積V(cm)を算出する。なお、試験片を構成する樹脂の密度をρg/cmとする。
気泡の占める見掛け体積V=V−W/ρ (1)
続いて、この試験片を23℃の蒸留水中に、試験片の上面から水面までの距離が40mmとなるように沈め、24時間放置する。その後、試験片を蒸留水中から取り出して、試験片の表面に付着した水分を除去する。得られた試験片の重量W(g)を測定し、式(2)に基づいて、連続気泡率F1を算出する。この連続気泡率Fから独立気泡率Fを求める。
連続気泡率F=100×(W−W)/V (2)
独立気泡率F=100−F (3)
【0101】
(評価)
実施例及び比較例で得られた樹脂発泡体のシートについて、それぞれの見掛け密度、50%圧縮時の反発力、凹み回復率、平均セル径、動的防塵性及び厚み回復率を測定又は評価した。その結果を表1に示す。
【0102】
(凹み回復率の測定方法)
熱可塑性樹脂発泡体(幅2mm×厚さ1mm×長さ5cm)に、23℃にて、刃角90度の治具を10Nの荷重で樹脂発泡体の厚み方向の最下点まで圧縮し、15秒間圧縮状態を維持した。圧縮解除60秒後の凹み部分の厚みを測定した。下記式から凹み回復率を求めた。
凹み回復率=(圧縮状態解除60秒後の凹み部分の厚み)/(初期厚み)×100
【0103】
(見掛け密度の測定方法)
発泡体の密度(見掛け密度)を以下のように算出した。
各実施例及び比較例の発泡体を30mm×30mmサイズに打ち抜き、試験片とし、試験片の寸法をノギスで測定した。次に、試験片の重量を電子天秤にて測定した。そして、次式により算出した。
見掛け密度(g/cm3)=試験片の質量/試験片の体積
【0104】
(平均セル径の測定方法)
樹脂発泡体のMD方向(流れ方向)に対する直交方向に平行に、カッターにて樹脂発泡体の主面に対して垂直方向(厚み方向)に切断し、平滑な断面を作成した。これら断面を、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−500」キーエンス株式会社製)により、樹脂発泡体の気泡の拡大画像を取り込み、同計測器の解析ソフト(三谷商事(株)製:Win ROOF)を用いて、画像解析することにより、平均セル径(μm)を求めた。取り込んだ拡大画像の気泡数は200個程度であり、この200個の平均とした。
【0105】
(50%又は80%圧縮時の対反発荷重)
JIS K 6767に記載されている圧縮硬さ測定法に準じて測定した。
樹脂発泡体を幅:30mm×長さ:30mmに切り出し、シート状の試験片とした。次にこの試験片を、23℃又は−10℃にて、圧縮速度:10mm/minで、厚さ方向に、圧縮率が50%又は80%に圧縮したときの応力(N)を単位面積(1cm2)当たりに換算して反発力(N/cm2)とした。
これら50%又は80%圧縮時の対反発荷重は、50%又は80%圧縮時の反発応力あるいは50%又は80%圧縮荷重とも称される。
【0106】
(厚み回復率の測定方法)
圧縮試験機((株)島津製作所製 マイクロサーボ)を用いて、23℃にて、厚み方向に、初期厚み(1mm)に対して20%の厚みに1分間圧縮し、圧縮解除し、圧縮解除1秒後の厚みの回復挙動を、高速度カメラを用いて撮影した。厚み回復率は、圧縮解除1秒後の厚みの初期厚みに対する割合として表した。
【0107】
(歪回復率の測定方法)
樹脂発泡体を23℃にて、初期厚みに対して50%の厚みに24時間圧縮し、その圧縮状態を解除した後24時間の厚み方向の初期厚みに対する割合とした。
【0108】
(動的防塵性の評価方法)
まず、樹脂発泡体を、図2に示す額縁状(窓枠状)(40mm×56mm、幅:2mm)に打ち抜き、評価用サンプル22とした。
この評価用サンプル22を、図3に示す動的防塵性評価用容器2に装着した。装着時の評価サンプル22の圧縮率は初期厚みに対して厚み方向に50%とした。
評価用サンプル22は、図3に示すように、フォーム圧縮板27を介してベース板24にねじ26によって取り付けられた黒色アクリル板211と、ベース板24に、ピンによって固定され、アルミニウムスペーサ23上に配置する黒色アクリル板212との間に設けられている。なお、評価用サンプル22の圧縮率は、アルミスペーサー23の厚み調整により、調整することができる。評価用サンプル22を装着した評価用容器2では、評価用サンプル22により、一定の内部空間29が閉塞された系となっている。
また、評価用容器2では、評価用サンプル22よりも外側に隣接して位置し、評価用サンプル22とフォーム圧縮板27との間に、一定の外部空間25が閉塞された粉末供給部として構成されている。この外部空間25には、粉塵にみたてた粉末(例えば、粒径17μmのコンスターチ)が0.1g充填されている。
このような評価用容器2を、図5に示す評価容器をダンブラー1(回転槽、ドラム式落下試験器)に入れ、1rpmの速度で回転させた。そして、評価用容器2で100回の衝突回数(繰り返し衝撃)が得られるように、所定回数を回転させた。その後、パッケージを分解した。そして、粉末供給部である外部空間25から、評価用サンプル22を通過して、内部空間の上下壁として機能させた黒色アクリル板211及び黒色アクリル板212に付着した粒子を、デジタルマイクロスコープ(装置名「VHX−600」、キーエンス株式会社製)で観察した。
黒色アクリル板211及び黒色アクリル板212について静止画像を作成し、画像解析ソフト(ソフト名「Win ROOF」、三谷商事株式会社製)を用いて2値化処理を行い、コンスターチの粒子の個数をカウントした。なお、観察は、空気中の浮遊粉塵の影響を少なくするためクリーンベンチ内で行った。
【0109】
【表1】
【0110】
表1によれば、実施例1〜3の樹脂発泡体は、凹み回復率が50%以上であることから、凹み回復率が50%以下の比較例に対して、良好な動的防塵性得られることが確認された。
特に、厚み回復率が良好であっても、さらに、凹み回復率が良好である場合には、迅速な樹脂発泡体の凹みの回復を期待することができ、より一層の動的防塵性をもたらすことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、電子機器等の内部絶縁体、緩衝材、遮音材、防塵材、衝撃吸収材、遮光材、断熱材、食品包装材、衣用材、建材用等として有用な、クッション性及び歪回復性に優れ、高発泡倍率を有する樹脂発泡体及び発泡シール材であり、特に、携帯電話、携帯型情報端末機、LCD等の表示部周り等、より詳細には、LCDと筐体(窓部)との間など、種々の部材に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 タンブラー
2 動的防塵性評価用容器
22 評価用サンプル
24 ベース板
26 ねじ
27 フォーム圧縮板
211、212 黒色アクリル板
23 アルミニウムスペーサ
29 内部空間
25 外部空間
図1
図2
図3
図4