特許第6110306号(P6110306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110306
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】組織傷害を診断するための新規な抗体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20170327BHJP
   G01N 33/534 20060101ALI20170327BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20170327BHJP
   A61B 3/00 20060101ALI20170327BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20170327BHJP
【FI】
   G01N33/53 R
   G01N33/53 Y
   G01N33/534
   A61B3/14 Z
   A61B3/00 Z
   !C07K16/18
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-542106(P2013-542106)
(86)(22)【出願日】2011年11月29日
(65)【公表番号】特表2014-500967(P2014-500967A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】US2011062418
(87)【国際公開番号】WO2012075023
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】61/417,682
(32)【優先日】2010年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513135314
【氏名又は名称】ノヴェルメッド セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】バンサル レカ
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/154251(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0081211(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0291106(US,A1)
【文献】 特表2003−535581(JP,A)
【文献】 Martin Oppermann,Quantitation of components of the alternative pathway of complement (APC) by enzyme-linked immunosorbent assays,Journal of lmmunological Methods,1990年,Vol. 133,pp. 181-190
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/534
A61B 3/00
A61B 3/14
C07K 16/18
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の組織上に沈着した新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントの新規なエピトープに結合する新規な抗体またはそのフラグメントの試料を被験者の組織に対して投与することと、
前記被験者の組織上に沈着した前記新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントの新規なエピトープに結合した新規な抗体の量を検出することと、
前記被験者の組織上に沈着した前記新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントに結合した新規な抗体の量が、沈着した補体活性化産物の指標であり、組織傷害を有さない被験者の対照群における基準値レベルと比較して組織傷害を有する被験者において著しく増加していることとを含む被験者における組織傷害の進展の診断に用いられる、新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントの新規なエピトープに結合する新規な抗体またはそのフラグメントであって、前記新規な抗体またはそのフラグメントが新規な抗C5b−9抗体であり、かつ前記新規な抗C5b−9抗体が、重合体のC9に結合できるが、単量体のC9に結合できない、新規な抗体またはそのフラグメント
【請求項2】
前記組織傷害が、組織に対する疾病の結果である、請求項1記載の新規な抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記組織傷害が、眼疾患の結果である、請求項1記載の新規な抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記眼疾患が、黄斑変性関連疾患である、請求項3記載の新規な抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
前記眼疾患が、加齢黄斑変性である、請求項4記載の新規な抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
前記新規な抗体またはそのフラグメントが、標識試薬、造影剤、又は画像化試薬で標識されており、前記組織に投与された前記標識された新規な抗体またはそのフラグメントを定量するために前記標識試薬、造影剤、又は画像化試薬による前記標識が検出される、請求項1に記載の新規な抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
前記標識が、放射性又は非放射性のトレース、99mTc、免疫陽電子放出トモグラフィー、及び二光子画像化剤よりなる群から選択され得る標識である、請求項6に記載の新規な抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
被験者の組織上に沈着した新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントの新規なエピトープに結合する新規な抗体またはそのフラグメントの試料を被験者の組織に対して投与を行い、
前記被験者の組織上に沈着した前記新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントの新規なエピトープに結合した新規な抗体の量の検出であって、
前記被験者の組織上に沈着した前記新規なエピトープを有する補体タンパク質またはフラグメントに結合した新規な抗体の量が、沈着した補体活性化産物の指標であり、組織傷害を有さない被験者の対照群における基準値レベルと比較して組織傷害を有する被験者において著しく増加していることの検出を行うための、被験者における組織傷害の進展を診断するキットであって、
前記組織に投与された標識された新規な抗体またはそのフラグメントを定量するために検出される、標識試薬、造影剤、又は画像化試薬で標識された新規な抗体またはそのフラグメントの試料を含
前記新規な抗体またはそのフラグメントが新規な抗C5b−9抗体であり、かつ前記新規な抗C5b−9抗体が、重合体のC9に結合できるが、単量体のC9に結合できない、被験者における組織傷害の進展を診断するキット。
【請求項9】
前記標識が、放射性又は非放射性のトレース、99mTc、免疫陽電子放出トモグラフィー、及び二光子画像化剤よりなる群から選択され得る標識である、請求項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2010年11月29日に出願された米国特許仮出願第61/417,682号を基礎とする優先権を主張し、その主題の全てを本願明細書に取り込む。
【0002】
この出願は、被験者における組織傷害を診断または識別するための組成物および方法に関し、より詳細には、被験者における補体媒介性の組織傷害を診断または識別するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
補体媒介性の組織傷害は、補体活性化が最終経路を完成し、細胞膜傷害複合体(MAC、C5b−9)が生じる際に発生する。これらの複合体により、組織傷害が引き起こされることが知られている。補体は、黄斑変性、関節リウマチ、心筋梗塞および臓器再かん流傷害を含めた、複数の疾病の兆候において、重要な病理学的役割を果たす。非侵襲的な手法を使用して、組織損傷の部位、強度および度合いを判定するのは困難である。ヒトの被験者において、他の非侵襲的な手法を使用して、眼に対する傷害を含めた内部組織の傷害を判定するのは、一般的に困難である。しかしながら、本願において提示される診断手段は、そのような情報を明らかにするために適用し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この出願は、新規な抗体またはそのフラグメント、および、非侵襲的手法または最小限に侵襲的な手法において、被験者における組織傷害の診断または識別のための、新規な抗体またはそのフラグメントの使用に関する。一部の実施形態において、前記新規な抗体またはそのフラグメントを使用して、一般に高齢者に見られる眼の疾病等の疾病である黄斑変性を識別および/または診断し得る。前記新規な抗体またはそのフラグメントにより、補体媒介性の病変部位を明瞭に識別することが期待されている。沈着したC5b−9および、補体活性化の結果として生じるタンパク質上の他の新規なエピトープの存在により、前記病変部位を判定し得る。
【0005】
一部の実施形態において、前記疾病は、眼組織における病変部位となり得る、加齢黄斑変性(AMD)およびドルーセンであり得る。ドルーセンは、RPEとブルッフ膜との間の眼領域、視神経またはその抹消のいずれかの周辺に位置する、黄色または白色の細胞外沈着である。ドルーセンには2つのカテゴリーがあり、一つは病的な状態のもの、もう一つは、病的な状態にないものである。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントは、病的な状態のドルーセンに関連する補体タンパク質活性化産物を検出することにより、病的な状態のドルーセンの存在を検出し得る。
【0006】
本願の新規な抗体またはそのフラグメントは、補体活性化により生じ、補体活性化前の補体タンパク質上には存在しない、「新規なエピトープ」と呼ばれる特有のエピトープを標的とし得る。新規なエピトープは、補体タンパク質の切断の結果物である補体フラグメント上に生じ、親補体タンパク質上には存在しない特有のエピトープ、および、補体活性化による補体タンパク質またはフラグメントの凝集または複合体化の結果物である補体活性化産物に生じ、補体活性化前の補体タンパク質上には存在しない特有のエピトープを、含み得る。
【0007】
例えば、補体活性化中に、C3は、C3aとC3bとに変換される。C3aおよびC3bは両方とも、C3aとC3bとの両方に共通するエピトープを検出する抗C3抗体により検出され得る。C3aとC3bとは、C3の切断の結果として表れ、前記親C3分子には存在しない、新規なエピトープも含んでいる。補体活性化産物の新規なエピトープの検出を、被験者における補体媒介性の組織傷害の検出に使用し得る。同様に、C5aとC5bとは、C5の切断の結果として生じる新規なエピトープを含む。C5aとC5bとを標的とする新規な抗体またはそのフラグメントは、C5由来の両者ほどは、C5タンパク質と交差反応しない。B因子は、D因子により、BaとBbとに切断される。BaおよびBbに対する新規な抗体またはそのフラグメントを、補体媒介性の組織傷害の検出に使用し得る。BaとBbと結合する抗体は、B因子にも結合するであろうが、新規な抗Ba抗体および新規な抗Bb抗体は、B因子には結合しないであろう。
【0008】
MAC複合体としても公知のC5b−9に特異的な、新規な抗体またはそのフラグメントも、同様である。前記MACは、C5、C6、C7、C8およびC9のタンパク質からなる。C6、C7およびC8に対する抗体は、C5b−9の存在を検出するであろう。このような抗体は、血中に見られる各遊離タンパク質とMAC複合体とを区別しないであろう。MAC複合体C5b−9を特異的に検出できる、新規な抗体またはそのフラグメントは、抗重合体C9抗体または抗C5b−9抗体を含み得る。非新規の抗体も、これらのタンパク質を認識し、検出するであろう。しかしながら、新規な抗重合体C9抗体および新規な抗C5b−9抗体のみが、被験者におけるMAC複合体C5b−9と、その構成補体タンパク質とを区別し得る。これらの新規な抗体またはそのフラグメントは、前記MACを構成する可溶型の構成タンパク質を認識しないであろう。
【0009】
患者から採取した血液検体を、各種の抗補体抗体を使用して、補体タンパク質の存在について分析し得る。しかしながら、可溶性の補体タンパク質は、組織損傷に関わらず、血中に構造的に存在する。補体活性化により生じる新規なエピトープに対して特異的でない抗体は、可溶型のこれらのタンパク質を検出してしまい、病変の検出には信頼性がないであろう。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントを使用して、補体媒介性の組織損傷の特異的なプロファイルを取得し得る。
【0010】
一部の実施形態において、本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントを使用して、適切な量の前記新規な抗体またはそのフラグメントを投与することにより、組織における病的な状態のドルーセンの存在を検出し得る。MAC(C5b−9)を含む補体タンパク質は、眼組織におけるドルーセン、ブルーフ膜、網膜色素上皮(RPE)の基底面および網膜下色素上皮に関連することが見出されている。C3、C5、C9因子および前記C5b−9の終末複合体は、ドルーセンに関連することが見出されている。他の補体関連分子CR1、CR2、クラステリン(clustrin)およびビトロネクチンは、ドルーセンに関連することが見出されている。ブルーフ膜および/またはドルーセンに局在する、付加的な補体経路関連分子としては、C3d、C6、C7、C8、C9、D因子、H因子、L因子、B因子、クラステリンおよびマンノース結合タンパク質が挙げられる。さらに、CD21、CD35、CD55/分解促進因子およびCD59/プロテクチン等の一部の補体経路関連分子は、前記RPEの基底面に存在する。
【0011】
ドルーセンを検出するための新規な抗体またはそのフラグメントは、C5b−9複合体における重合体のC9により生じる新規なエピトープのみを認識する、新規な抗重合体C9抗体を含み得る。補体媒介性の病変において、組織損傷は、前記組織上へのC5b−9の沈着の結果として生じる。したがって、この沈着および組織損傷の度合いを、抗重合体C9抗体を使用して可視化し得る。これらの抗体を試薬により標識し、検出感度を向上し得る。
【0012】
本願明細書に記載の画像法により診断し得る眼関連疾患としては、加齢黄斑変性(AMD)、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、ソースビー眼底変性症、化学作用によるシュタルガルト病、模様ジストロフィー、ベスト病、家族性ドルーセン、マラッティア・レベンティネース(malatthia leventinese)、網膜剥離、脈絡網膜変性、網膜変性、光受容体の変性、RPE変性、ムコ多糖症、桿体錐体ジストロフィー、錐体桿体ジストロフィーおよび錐体変性が挙げられる。
【0013】
代替補体経路の異常活性化は、本来、急性および慢性の両方の各病理状態に関係している。代替経路活性化の副生成物レベルの向上は、下記に示す、体外循環傷害、心疾患、移植拒絶、眼疾患、溶血性疾患、呼吸器疾患、神経疾患、外傷誘因性傷害、全身性炎症および骨関連疾患、腎疾患、臓器の再かん流傷害、泌尿生殖器の疾病、皮膚病、消化器疾患、内分泌疾患または他の疾病の兆候等の、各種傷害の兆候において見出されている。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントを、これらの傷害に関連する産物による補体活性化の検出に使用し得る。
【0014】
体外循環傷害としては、例えば、心肺バイパス法後炎症、術後肺機能不全、心肺バイパス法、血液透析、白血球除去輸血、血漿交換、血小板フェレーシス、ヘパリン起因性体外LDL沈降法(HELP)、かん流後症候群、膜型人工肺(ECMO)、全身炎症反応および多臓器不全が挙げられる。
【0015】
心疾患としては、例えば、川崎病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病腎炎、血管漏出症候群、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、急性心筋梗塞後の虚血再かん流、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、血管炎、免疫複合体性血管炎、敗血症、動脈炎、動脈瘤、心筋症、高安動脈炎、拡張型心筋症、静脈ガス塞栓症(VGE)、ヴェーゲナー肉芽腫症およびベーチェット症候群が挙げられる。
【0016】
移植傷害としては、例えば、移植拒絶、移植片対宿主拒絶反応、臓器または移植片の異種移植、臓器または移植片の異物移植および超急性拒絶が挙げられる。
【0017】
眼疾患としては、例えば、加齢黄斑変性(ウエット型およびドライ型)、脈絡膜血管新生(CNV)、角膜血管新生、網膜血管新生、網膜損傷、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜細小血管症、糖尿病性黄斑浮腫、眼のヒストプラズマ症、ブドウ膜炎、病的近視、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜色素上皮(RPE)およびプルチャー網膜症(Purtscher’s retinpathyretinopathy)が挙げられる。
【0018】
溶血性疾患としては、例えば、劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)、寒冷凝集素症(CAD)、自己免疫血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、内毒素血症、非定型的溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、敗血症、敗血性ショック、鎌状赤血球貧血、溶血性貧血、好酸球増加症候群、抗リン脂質抗体症候群(APLS)が挙げられる。
【0019】
呼吸器疾患としては、例えば、ぜんそく、好酸球性肺炎、過敏性肺炎、アレルギー性気管支炎、気管支拡張症、反応性気道疾患症候群、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、パラインフルエンザウイルス感染、ライノウイルス感染、アデノウイルス感染、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、結核、肺寄生虫症、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、気管支炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、輸血関連急性肺障害、急性肺障害、線肺症およびアスベスト起因性炎症が挙げられる。
【0020】
神経疾患としては、例えば、重症筋無力症、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、脳卒中、アルツハイマー病、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、ハンチントン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、変性円板疾患(DDD)、髄膜炎による脳神経損傷、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、特発性多発性神経障害および神経障害痛が挙げられる。
【0021】
外傷誘因性傷害としては、例えば、出血性ショック、血液量減少性ショック、脊髄損傷、ニューロン損傷、脳外傷、脳虚血再かん流、圧挫損傷、創傷治癒、重度のやけどおよび凍傷が挙げられる。
【0022】
全身性炎症、骨の炎症および骨関連疾患としては、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、若年性全身関節リウマチ、変形性関節症、骨粗しょう症、サルコイドが挙げられる。
【0023】
腎疾患としては、例えば、腎臓の再かん流傷害、連鎖球菌感染後の糸球体腎炎(PSGN)、グッドパスチャー病、膜性腎炎、ベルガー病/IgA腎症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎および腎皮質壊死(RCN)が挙げられる。
【0024】
臓器の再かん流傷害としては、例えば、心臓、脳、腎臓および肝臓が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
泌尿生殖器の疾病としては、例えば、自然流産、胎児母性耐性、子癇前症、知覚性膀胱疾患および間質性膀胱炎が挙げられる。
【0026】
皮膚病としては、例えば、類天疱瘡、後天性表皮水疱症、自己免疫水疱症、水疱性類天疱瘡、血管性浮腫、遺伝性血管神経性浮腫(HAE)、多形性紅斑、妊娠性疱疹、シェーグレン症候群、乾癬、皮膚筋症、好酸球性海綿状態、アトピー性皮膚炎および疱疹状皮膚炎が挙げられる。
【0027】
消化器疾患としては、例えば、クローン病、セリアック病/グルテン過敏性腸疾患、ウィップル病、腸虚血、炎症性大腸炎および潰瘍性大腸炎が挙げられる。
【0028】
内分泌疾患としては、例えば、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、I型糖尿病、ストレス性不安神経症、プロラクチン、成長因子、副腎皮質刺激ホルモンの放出に影響を与える疾病、膵炎、アジソン病ならびにインスリン耐性が挙げられる。
【0029】
他の疾病としては、例えば、グッドパスチャー病、パーキンソン病、やけど、アルツハイマー病、じんましん、ハンチントン病、ベルガー病、心臓手術、血液量減少性ショック、クローン病、臓器移植における超急性拒絶、熱傷、重度のぜんそく、腸炎、経皮冠動脈インターベンション、ヘパリン起因性膜型人工肺およびアナフィラキシーショックが挙げられ得る。
【0030】
本願の他の実施形態は、血流に注入された標識試薬に結合し、当該病的な状態の組織を検出可能な、新規な抗体またはそのフラグメントに関する。一部の実施形態において、新規な抗体は、完全なIgGまたはそのフラグメントを含み得る。新規な抗体またはそのフラグメントを、インドシアニングリーン、99mTc、免疫陽電子放出トモグラフィー等の標識試薬、画像化試薬または造影剤に結合し、このような標識試薬、画像化試薬または造影剤に特異的な画像法により検出し得る。
【0031】
本願のさらに他の実施形態は、組織における補体活性化のフラグメントを検出することにより、被験者における黄斑変性関連疾患を診断する方法に関する。任意の大きさのドルーセンの存在を、新規な抗体またはそのフラグメントにより検出可能である。このような抗体は、新規なエピトープの由来となる、遊離の親タンパク質と交差反応すべきでない。一部の実施形態において、前記新規な抗体は、眼組織内の補体経路関連分子に特異的に結合する。他の実施形態において、異常レベルの新規なエピトープのみを検出する。
【0032】
本願の他の実施形態は、被験者における黄斑変性関連疾患の進展の傾向を診断または識別する方法に関する。これらの方法は、眼組織における、新規なエピトープを含む補体タンパク質および/またはフラグメントの存在を検出する。前記眼組織は、黄斑変性の患者由来であり得る。前記黄斑変性に関連する新規な抗原としては、C3b、iC3b、C3dg、C3c、C5b、C5b−9、C3aおよびC5aからなる群から選択されるであろう分子が挙げられる。一部の実施形態において、疾病を患う被験者由来の組織試料を、診断の目的で使用し得る。前記組織試料は、体液および眼の液体を含んでもよい。
【0033】
他の実施形態において、前記検出工程は、黄斑の眼の疾病を患う患者の眼組織における新規なエピトープを検出するための、標識された新規な抗体またはそのフラグメントの使用を伴う。この方法において、前記標識された新規な抗体フラグメントは、黄斑変性関連分子(または新規な抗原)に結合し、続いて、画像システムを使用して検出する。前記方法は、前記被験者における少なくとも1つの黄斑変性関連の新規なエピトープを検出する工程を含んでもよい。前記方法は、さらに、眼科的な撮像法により被験者を検査する工程を含んでもよい。
【0034】
本願のさらに他の実施形態は、被験者における黄斑変性関連疾患の進展の傾向を診断または識別するキットに関する。前記標識抗体は、少なくとも1つの黄斑変性関連の新規な抗原、画像化試薬により標識された新規な抗体、および、前記新規な抗体と前記新規な抗原とを結合させる媒体試料を含むであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、新規な抗iC3b抗体の結合特性を示す。新規な抗iC3b抗体は、基板に結合したiC3bを検出するが、C3cおよびC3dを検出しない。
図2図2は、新規な抗C3d抗体の結合特性を示す。新規な抗C3d抗体は、C3dには結合するが、C3cには結合しない。
図3図3は、B因子に関連する抗Bb抗体および新規な抗Bb抗体の結合特性を示す。
図4図4は、新規な抗SC5b−9抗体の結合特性を示す。新規な抗SC5b−9抗体は、重合体のC9およびSC5b−9のみに結合する。
図5図5は、抗C5抗体、抗C6抗体、抗C7抗体、抗C8抗体および抗C9抗体に対する、C5、C6、C7、C8およびC9の結合特性の関連性を示す。
図6図6は、抗C5抗体の結合特性を示す。抗C5抗体は、C5には結合するが、SC5b−9には結合しない。
図7図7は、抗C6抗体の結合特性を示す。抗C6抗体は、C6およびSC5b−9に結合する。
図8図8は、抗C7抗体の結合特性を示す。抗C7抗体は、C7およびSC5b−9に結合する。
図9図9は、抗C8抗体の結合特性を示す。抗C8抗体は、C8およびSC5b−9に結合する。
図10図10は、抗C9抗体の結合特性を示す。抗C9抗体は、C9には結合するが、SC5b−9には結合しない。
図11図11は、新規な抗重合体C9抗体の結合特性を示す。新規な抗重合体C9抗体は、重合体のC9およびSC5b−9に結合する。
図12図12は、抗重合体C9抗体の結合特性を示す。抗重合体C9抗体による基板に結合したSC5b−9の検出は、ヒト血清中のタンパク質により阻害されない。
図13図13は、新規な抗重合体C9抗体、抗C6抗体、抗C7抗体および抗C8抗体の結合特性を示す。これらの抗体は、MAC複合体を検出した。
図14図14は、新規な抗重合体C9抗体の結合特性を示す。新規な抗重合体C9抗体は、病的な状態のドルーセンを検出する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本願明細書で使用される「抗体」という用語は、全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ナノボディおよび多重特異的抗体を含む。生物学的な抗体は、通常、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖とから構成される、150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。前記2本の重鎖は、ジスルフィド結合により互いに連結される。各重鎖は、ジスルフィド結合により1本の軽鎖に連結される。それぞれの全長IgG分子は、少なくとも2つの、特異的な標的または抗原のための結合部位を含む。軽鎖は、κ鎖またはλ鎖のいずれかである。両軽鎖は、可変領域と呼ばれる(「V領域」、「Vkappa領域」または「Vlambda領域」と、さまざまに呼ばれる)、可変のアミノ酸配列のドメインと、定常領域(「CL領域」)と呼ばれる、比較的保存されたアミノ酸配列のドメインとを含む。同様に、各重鎖は、1つの可変領域(「V領域」)と、3つの定常領域(「CH1領域」、「CH2領域」および「CH3領域」)と、1つのヒンジ領域とを含む。
【0037】
本願明細書で使用される、抗体の「抗体フラグメント」、「抗原結合フラグメント」または「そのフラグメント」という用語は、全長抗体の断片を意味し、一般的に、標的結合領域または可変領域と呼ばれる。例として、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントが挙げられる。「Fv」フラグメントは、完全な標的認識部位および結合部位を含む、最小の抗体フラグメントである。Fab、Fab’およびF(ab’)は、F領域を欠いている。フラグメントは、全長抗体からプロテアーゼ消化により調製し得る。標準的な組換えDNA手法を使用して、当業者により、フラグメントを産生してもよい。
【0038】
本願明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体またはそのフラグメントが結合し、その機能活性を果たす、タンパク質、ポリペプチド、補体因子、補体フラグメント上の部位を意味する。前記エピトープの用語は、「抗原部位」および「抗体結合部位」と同義である。
【0039】
本願明細書で使用される「Fabフラグメント」は、前記軽鎖の定常ドメインおよび前記重鎖の第1の定常ドメインを意味する。Fab’フラグメントは、前記抗体のヒンジ部から、1つ以上のシステインを含む前記重鎖のCH1ドメインのカルボキシル末端における数個の余分な残基により、Fabフラグメントと異なる。F(ab’)フラグメントは、F(ab’)のペプシン消化産物のヒンジ部のシステインにおけるジスルフィド結合の切断により産生される。
【0040】
本願明細書で使用される、抗体の「機能性フラグメント」という用語は、全長抗体と同様に、質的な生物学的活性を有する抗体フラグメントを意味する。
【0041】
本願明細書で使用される「ヒトコンセンサスフレームワーク」という用語は、ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHフレームワーク配列の選択における、最も共通して現れるアミノ酸残基を示す、フレームワークを意味する。一般的に、前記ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHフレームワーク配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループに由来する。
【0042】
本願明細書で使用される「ヒト化抗体」は、CDR1、CDR2およびCDR3を除く、大部分がヒトの配列からなる抗体を意味する。全てのフレームワーク領域も、ヒト化される。キメラ抗体は、マウスCDR、マウスフレームワーク領域およびヒト定常領域を含む。まとめると、キメラ抗体は、マウスの両可変領域と、ヒトの定常領域とを含む。
【0043】
本願明細書で使用される、抗体鎖ポリペプチド配列に関する「同一」または「実質的に同一」という用語は、前記抗原結合フラグメントの可変領域に存在する基準ポリペプチド配列に対して、少なくとも65%、70%、80%、90%または95%の配列相同性を示す、抗体鎖と解釈されてもよい。核酸配列に関する前記用語は、基準核酸配列に対して、少なくとも約65%、75%、85%、90%、95%または97%の配列相同性を示す、ヌクレオチド配列と解釈されてもよい。
【0044】
本願明細書で使用される「個体」または「被験者」という用語は、脊椎動物を意味し、好ましくは哺乳動物を、より好ましくはヒトを意味する。治療可能な個体には、現時点で無症状の個体だけでなく、代替補体経路が役割を果たす、または、代替補体経路の活性化が役割を果たす、症候性疾患の進展の危険性がある個体も含まれる。
【0045】
本願明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト、高等霊長類、家畜、馬、豚、牛、犬、猫およびフェレット等を含む哺乳動物として分類される動物を意味する。本発明の一実施形態において、前記哺乳動物は、ヒトである。
【0046】
本願明細書で使用される「モノクローナル抗体」は、抗体の均質集団を意味する。このような抗体は、単一の標的抗原に対して、特異性が高い。これらのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマの培養により均質的に産生され、他の免疫グロブリンが混入していない。モノクローナル抗体は、既知の方法によるファージディスプレイ等の他の手法によっても産生され得る。
【0047】
本願明細書に記載の実施形態は、タンパク質分子上の新規な(新規な)エピトープに結合する新規な抗体またはそのフラグメントを含む組成物および方法を含む。補体活性化産物に結合する新規な抗体またはそのフラグメントは、親補体タンパク質または分子には存在しない、補体活性化産物内の新規なエピトープに結合する抗体を含む。例えば、本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントは、C3bには結合し得るがC3には結合し得ず、C3aには結合し得るがC3には結合し得ず、C3dには結合し得るがC3には結合し得ず、C3cには結合し得るがC3には結合し得ず、iC3bには結合し得るがC3には結合し得ず、C5bには結合し得るがC5には結合し得ず、C5aに結合し得るがC5には結合し得ず、C5b−9に結合し得るがC5、C6、C7、C8、C9には結合し得ない。
【0048】
眼内部における補体活性化の進行を検出するために、遊離タンパク質に結合せず、活性化され、沈着したタンパク質を特異的に識別可能な、標的特異性が高いモノクローナル抗体が必要である。このように新規で特異的な部位起点のモノクローナル抗体は、本願明細書に記載の抗体が目的とするものの1つである。これらの抗体は、新規な抗体としても知られている。これらのモノクローナル抗体は、活性化後に生じるタンパク質上の新規なエピトープに結合する。C3を認識せず、新規な抗原を認識するモノクローナル抗体を、抗C3b抗体、抗iC3b抗体、抗C3c抗体および抗C3d抗体、ならびにC5、C6、C7、C8およびC9を認識せず、「重合性のC9」またはC5b−9複合体の他の新規エピトープを認識するモノクローナル抗体からなる群から選択し得る。
【0049】
本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントは、眼組織における新規な抗原を、画像システムを使用して検出し得る。画像化試薬により標識された新規な抗体を、前記眼に注入もしくは投与し、または任意の投与経路から投与し得る。ついで、前記新規な抗体は、補体が活性化される組織内に生じる、補体タンパク質上の新規な抗原エピトープに結合し得る。前記眼組織において、前記活性化された補体タンパク質(新規な抗原)は、病変の指標となる。このため、組織における新規なエピトープの識別は、病変部位の識別に言い換え得る。眼組織(例えば、RPE、脈絡膜)について、高度な画像技術を使用して、新規な抗体の結合を検査し得る。
【0050】
古典補体経路(CP)活性化の結果として生じる新規な抗原と、代替補体経路(AP)活性化の結果として生じる新規な抗原とを、区別可能である。古典補体経路が活性化される場合、CP活性化に特異的に生じる新規な抗原を識別することができる。代替経路が活性化される場合、AP活性化に特異的に生じる新規な抗原を識別することができる。
【0051】
巨大タンパク質を標的とする、多くの異なる抗体を作製することができる。新規な抗体またはそのフラグメントを、新規なエピトープに基づくスクリーニングにより選択する。例えば、抗C3b抗体、抗iC3b抗体、抗C3c抗体および抗C3d抗体は、新規なエピトープのみを認識し検出すべきであり、親分子C3を認識し検出すべきでない。モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方を、新規なエピトープに基づくスクリーニングに使用し得る。新規な抗原は、a)親分子には存在せず、b)新たに生じた娘分子にのみ存在する、新規なエピトープを含む。新規な抗原としては、例えば、C3b、iC3b、C3c、C3dgが挙げられる。これらの分子は前記C3分子に由来するが、個々のタンパク質フラグメントに特異的な、新規なエピトープを有する。
【0052】
(a)C3a、C3b、iC3b、C3c、C3dg;(b)Ba、Bb;(c)C5b、C5a;(d)C5b−9および(e)C4b等の、種々の黄斑変性に関連する新規な抗原は、これらに対する新規な抗体またはそのフラグメントにより、前記抗原の親分子と区別され得る。前述の各分子に特異的な、それぞれの新規な抗体またはそのフラグメントにより、これらの分子を検出し得る。本願明細書に記載の新規な抗体は、C3、B因子、C5、C6、C7、C8およびC9を検出しないであろう。
【0053】
例えば、C3a、C3b、iC3b、C3cおよびC3dgは、C3の切断産物である。このため、抗C3モノクローナル抗体および抗C3ポリクローナル抗体は、C3a、C3b、iC3b、C3cおよびC3dgに交差反応する場合がある。前述の新規な抗体またはそのフラグメントは、それぞれ、C3には交差反応せず、C3a、C3b、iC3b、C3cおよびC3dgにのみ結合する。C3フラグメントが生じると、新規なエピトープと呼ばれる、前記フラグメント内の新規なモチーフが露出する。このようなエピトープは、新規な抗体によってのみ検出され得る。
【0054】
C5b−9において、前記複合体は、C5の切断産物と、C6、C7、C8および多数の単量体のC9等のタンパク質とからなる。したがって、抗C6抗体、抗C7抗体、抗C8抗体は、前記C5b−9複合体を検出するであろう。これらの抗体は、遊離タンパク質をも検出し得るため、遊離タンパク質の存在と前記C5b−9複合体の一部であるタンパク質の存在とを区別し得ないであろう。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントは、前記複合体内の新規なエピトープを認識する、新規な抗体またはそのフラグメントのみを含む、すなわち、抗C5b抗体、抗重合体C9抗体および抗C5b−9抗体を含む。
【0055】
抗C5b抗体は、遊離のC5およびC5bの両方を認識し得る。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントは、C5bを認識し得るが、C5を認識し得ない。抗重合体C9抗体は、C5b−9を認識し得るが、遊離のC9を認識し得ない。抗C5b−9抗体は、MACを認識し得るが、個々の構成タンパク質を認識し得ない。
【0056】
本願の一部の実施形態は、補体の新規な抗原の存在を検出することにより、黄斑変性関連疾患の進展の傾向を診断または判定する方法を含む。これらの方法により診断され得る適応症としては、加齢黄斑変性(AMD)、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、ソースビー眼底変性症、シュタルガルト病、模様ジストロフィー、ベスト病、家族性ドルーセンおよびマラッティア・レベンティネース(malatthia leventinese)が挙げられる。これらの方法により診断され得る、他の眼の病変としては、網膜剥離、脈絡網膜変性、網膜変性、光受容体の変性、RPE変性、ムコ多糖症、桿体錐体ジストロフィー、錐体桿体ジストロフィーおよび錐体変性が挙げられる。
【0057】
本願明細書に記載の前記方法を、黄斑変性関連疾患の有無に関する、集団の大規模スクリーニングに使用し得る。前記方法は、診断、治療を受けている被験者についての、治療に対する反応のモニターにも使用し得る。複数の黄斑変性に関連する分子を対象とする、新規抗原の存在を検出する方法を、黄斑変性関連疾患またはドルーセン関連疾患と関連がある、他の表現型マーカーまたは遺伝子型マーカーを検出する方法と組み合わせて実行し得る。
【0058】
他の実施形態において、本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントを、標識試薬、造影剤、画像化試薬により標識し得る。タンパク質を標識するのに化学物質を使用するのは、周知である。これらの標識された新規な抗体を、in vitro、ex vivoおよびin vivoのアッセイに使用し得る。同様の性質を使用して、IgG、Fab、F(ab’)2、Fab’および一本鎖の新規な抗体に、化学物質を部位特異的に結合し得る。Fab’を使用してバイオコンジュゲートを産生することは、公知である。このようなバイオコンジュゲートを使用して、組織および/または体液中の新規な抗体の標的を検出し得る。これらのバイオコンジュゲートをヒトの身体に投与して、画像法により可視化し得る。新規な抗体またはそのフラグメントを、化学物質にも結合し得る。化学物質としては、種々の撮像法を使用して検出し得る、放射性同位体または画像化蛍光色素分子が挙げられる。
【0059】
一部の実施例において、前記標識は、テクネチウム−99mを含み得る。テクネチウム−99mは、過テクネチウム酸ナトリウムとして一般的に入手できる。過テクネチウム酸を、塩化第一スズ等の還元剤に接触させ得る。これにより、タンパク質、キレート剤、または放射性標識された同様の物質の存在下において、テクネチウムを+3、+4または+5の酸化状態に還元する。テクネチウムをこの還元状態に維持することで、テクネチウム分子と放射性標識された新規な抗体との間の化学結合を維持し得る。還元されたテクネチウムが、アッセイ中に、患者の血液または、利用可能な放射性標識された物質を含む他の媒体に存在する他の分子または他のタンパク質に移動しないように、テクネチウムを、新規な抗体に強固に結合し得る。複数の他の方法が、テクネチウム−99mにより放射性標識されたモノクローナル抗体について記載されている。
【0060】
一部の実施形態において、新規な抗体またはそのフラグメントを使用した補体媒介性の病変の検出は、ドライ型およびウエット型のAMDの両方における、疾病の進展の部位および度合いの正確な描写を提供し得る。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントを使用して、治療した個体における疾病の進展または退行の度合いも測定し得る。本願明細書に記載の新規な抗体またはそのフラグメントは、AMDの発病および進展も検出し得る。新規な抗体またはそのフラグメントを、眼に適した剤形で使用し得る。
【0061】
例として、眼底検査画像により、個体における疾病の進展が速いものと遅いものとを区別し得る。具体的には、病的な状態の傷害部位と傷害の萎縮性斑点とを、容易に識別し得る。一方の眼に脈絡膜血管新生(CNV)、もう一方の眼にソフトドルーセンを含む高齢女性の状況が、明確な例示となろう。本願明細書に記載の診断方法は、新規な抗体の沈着レベルに基づいて、CNVの眼とドルーセンの眼との疾病の進展の相対的な度合いを、区別し得る。画像化によって新規な抗体の相対的なレベルを比較することにより、臨床医は、ドルーセンのみを含む眼がCNVに進展するのかを、判断し得る。本願明細書に記載の前記方法は、疾病の進展を示す情報と、病的な状態のドルーセン沈着がCNVに変化する可能性とを明らかにし得る。
【0062】
ブルーフ膜の破裂は、ドライ型の非滲出性AMDからウエット型の滲出性AMDへの変化を判定する、重要な病理学的なマーカーである。ブルーフ膜の破裂は、網膜および脈絡膜における体液または出血性滲出液の臨床所見に関連する。したがって、本願明細書に記載の前記方法は、新規な抗体の高レベルな沈着を示す膜領域を検出することにより、ブルーフ膜の破裂部位を識別し得る。新規な抗体またはそのフラグメントを使用する画像化研究による情報は、外科的または薬理的な臨床的介入が必要かどうかの見識を与え得る。
【実施例】
【0063】
実施例1:新規な抗iC3b抗体はiC3bに結合し、C3cおよびC3dに結合しない
新規な抗iC3b抗体は、抗原iC3b上の新規なエピトープに結合する。この抗体は、C3cまたはC3dには結合しなかった。前記C3分子は、活性化によりC3bとC3aとに変換される。C3bは、I因子により不活性化されて、iC3bを生じる。新規な抗iC3b抗体は、前記iC3b分子上の新規なエピトープを認識した。この新規な抗体がC3cに結合しなかったことは、C3b分子のα鎖およびβ鎖が、前記新規なエピトープを有していないことを、示唆している。抗iC3b抗体がC3cおよびC3dに交差反応しないことは、前記C3cおよびC3dが生じる際、抗体が認識するエピトープが失われることを、示唆している。新規な抗iC3b抗体は、in vivoにおいても組織に対して同様の結合挙動を示すと期待される。
【0064】
ヒトの因子であるiC3b、C3dおよびC3c(Complement Technology、Tyler、TX)により、PBS中にそれぞれ(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、新規な抗iC3b抗体(Quidel Corporation、San Diego、CA)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0065】
タンパク質に結合した新規な抗iC3b抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Kirkegaard&Perry Laboratories、Gaithersburg、MD)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。基板に結合した各種タンパク質に結合する新規な抗iC3b抗体のKdを、最大結合の50%における新規な抗iC3b抗体の濃度に基づいて推定した(Microcal Origin、Northampton、MA)。
【0066】
新規な抗iC3b抗体は、262pMの親和性でiC3bに結合したが、C3dおよびC3cには結合しなかった。したがって、新規な抗iC3b抗体は、特異性が高い。最大半量の結合に達するのに必要な、新規な抗iC3b抗体の濃度として定義される、これらのデータからの見かけの結合定数は、およそ200〜300pMである。図1にデータを示す。
【0067】
実施例2:新規な抗C3d抗体はC3dに結合し、C3cに結合しない
新規な抗C3d抗体は、C3b分子のα鎖およびβ鎖を含むC3c分子には結合しなかった。C3bの切断により、C3cとC3dとが生じる。前記C3d分子は、前記C3b分子から放出され、C3cを生じる。新規な抗C3d抗体は、前記C3d分子に特異的に結合するが、C3cには結合しない。
【0068】
ヒトのC3dおよびC3c(Complement Technology)により、PBS中にそれぞれ(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、新規な抗C3d抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0069】
タンパク質に結合した新規な抗C3d抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。25℃で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。基板に結合した各種タンパク質に結合する新規な抗C3d抗体のKdを、最大結合の50%における新規な抗C3d抗体の濃度に基づいて推定した(Microcal Origin)。
【0070】
新規な抗C3d抗体は、447pMの親和性でC3dに結合したが、C3cには結合しなかった。したがって、新規な抗C3d抗体は、特異性が高い。最大半量の結合に達するのに必要な、新規な抗C3d抗体の濃度として定義される、これらのデータからの見かけの結合定数は、およそ350〜550pMである。図2にデータを示す。
【0071】
実施例3:抗Bb抗体と新規な抗Bb抗体とでは、B因子への結合に差異がある
新規な抗Bb抗体は、B因子には結合しないが、非新規の抗Bb抗体は、B因子に結合する。Bbは、代替経路に特有のタンパク質であり、前記新規な抗Bb抗体により検出され得る。
【0072】
ヒトのB(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、新規な抗Bb抗体および非新規の抗Bb抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、B因子が被覆されたウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0073】
B因子に結合した新規な抗Bb抗体および非新規の抗Bb抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。
【0074】
新規な抗Bb抗体が、B因子が被覆された基板に結合しないことは、新規なエピトープが、B因子上に生じていないことを示唆している。最大半量の結合に達するための、非新規の抗Bb抗体の濃度として定義される、これらのデータからの見かけの結合定数は、およそ212pMである。図3にデータを示す。新規な抗Bb抗体は、Bb上の新規なエピトープのみに特異的であるのが明らかである。
【0075】
実施例4:新規な抗SC5b−9抗体は、重合体のC9およびSC5b−9のみに結合する
新規な抗C5b−9抗体は、1.12nMの親和性で、基板に結合したC9を認識する。基板に結合したC9の機能は、SC5b−9複合体における重合体のC9と同様である。重合体のC9は、補体経路の活性化により生じる新規なエピトープを含む。前記新規な抗体は、SC5b−9複合体における重合体のC9により生じるエピトープに結合する。新規な抗SC5b−9抗体は、1.12nMの親和性で、基板に結合した(重合体の)C9に結合する。これと比較して、SC5b−9に対するこの抗体の結合親和性は、585pMである。この新規な抗体は、基板に結合したC5、C6、C7およびC8のタンパク質に結合しなかった。
【0076】
ヒトのC9またはSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、新規な抗SC5b−9抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0077】
タンパク質に結合した新規な抗SC5b−9抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。新規な抗SC5b−9抗体は、C9およびSC5b−9の両方に高い親和性で結合した。前記親和性を、Microcal Originを使用して算出した。
【0078】
新規な抗SC5b−9抗体は、585pMの親和性でSC5b−9に結合し、1120pMの親和性で重合体のC9に結合した。最大半量の結合に達するための、新規な抗SC5b−9抗体の濃度として定義される、これらのデータからの見かけの結合定数は、親和性が高い。図4にデータを示す。
【0079】
実施例5:各タンパク質に対する抗C5抗体、抗C6抗体、抗C7抗体、抗C8抗体および抗C9抗体の結合
C5、C6、C7、C8およびC9のタンパク質が、実施例4におけるELISAプレートに結合することを確認するために、これらのタンパク質を、各抗体を使用して検出した。抗C5抗体、抗C6抗体、抗C7抗体、抗C8抗体および抗C9抗体は、前記基板に結合したタンパク質に結合可能であった。図5に示すように、前記抗体は、同様の親和性で、各抗原に結合した。図5に単一濃度のプロットを示す。
【0080】
C5、C6、C7、C8およびC9(Complement Technology)により、PBS中に(1.0μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした各抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0081】
抗原に結合した抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。飽和結合曲線を生成し、飽和に近い単一の濃度を、全ての抗体についてプロットし、比較した。図5にデータを示す。
【0082】
図5に示すように、抗C5抗体、抗C6抗体、抗C7抗体、抗C8抗体および抗C9抗体の全ての抗体が、完全に活性を有し、各抗原に良好に結合することが説明される。
【0083】
実施例6:基板に結合したC5およびSC5b−9に対する抗C5抗体の結合
図6に示すように、抗C5抗体がC5に結合するが、SC5b−9複合体におけるC5bを検出しないことは、抗C5抗体はC5b−9により引き起こされる組織損傷を検出し得ないことを、示唆している。本発明では、SC5b−9またはC5b−9上の新規なエピトープを認識する新規な抗体を選択する。
【0084】
C5およびSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、抗C5抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0085】
C5およびSC5b−9に結合した抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。飽和結合曲線を生成し、飽和に近い単一の濃度を、全ての抗体についてプロットし、比較した。
【0086】
図6に示すように、抗C5抗体は、基板に結合したC5を認識するが、SC5b−9を認識しない。したがって、抗C5抗体は、補体媒介性の組織損傷を検出し得ない。
【0087】
実施例7:基板に結合したC6およびSC5b−9に対する抗C6抗体の結合
図7に示すように、抗C6抗体がC6およびSC5b−9複合体に、およそ200pMの同様の親和性で結合することは、抗C6抗体がC6およびSC5b−9の両方を検出し、SC5b−9と遊離のC6とを区別しないであろうことを、示唆している。
【0088】
C6およびSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(SigmaAldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、抗C6抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0089】
C6およびSC5b−9に結合した抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。飽和結合曲線を生成し、飽和に近い単一の濃度を、全ての抗体についてプロットし、比較した。
【0090】
図7に示すように、抗C6抗体は、基板に結合したC6およびSC5b−9の両方を認識する。したがって、抗C6抗体は、組織損傷を特異的には検出し得ない。
【0091】
実施例8:基板に結合したC7およびSC5b−9に対する抗C7抗体の結合
図8に示すように、抗C7抗体がC7およびSC5b−9複合体に、200〜400pMの範囲で結合することは、抗C7抗体がC7およびSC5b−9の両方を検出し、SC5b−9と遊離のC7とを区別しないであろうことを、示唆している。
【0092】
C7およびSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、抗C7抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0093】
C7およびSC5b−9に結合した抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。飽和結合曲線を生成し、飽和に近い単一の濃度を、全ての抗体についてプロットし、比較した。
【0094】
図8に示すように、抗C7抗体は、基板に結合したC7およびSC5b−9の両方を認識する。したがって、抗C7抗体は、組織損傷を特異的には検出し得ない。
【0095】
実施例9:基板に結合したC8およびSC5b−9に対する抗C8抗体の結合
図9に示すように、抗C8抗体がC8およびSC5b−9複合体に、600〜1000pMの範囲の親和性で結合することは、抗C8抗体がC8およびSC5b−9の両方を検出し、SC5b−9と遊離のC8とを区別しないであろうことを、示唆している。
【0096】
C8およびSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、抗C8抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0097】
C8およびSC5b−9に結合した抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。飽和結合曲線を生成し、飽和に近い単一の濃度を、全ての抗体についてプロットし、比較した。
【0098】
図9に示すように、抗C8抗体は、基板に結合したC8およびSC5b−9の両方を認識する。したがって、抗C8抗体は、組織損傷を特異的には検出し得ない。
【0099】
実施例10:基板に結合したC9およびSC5b−9に対する抗C9抗体の結合
図10に示すように、抗C9抗体がC9に結合し、SC5b−9複合体に結合しないことは、抗C9抗体がSC5b−9を認識しないために、組織損傷を検出しないであろうことを、示唆している。
【0100】
C9およびSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(1μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、抗C9抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0101】
C9およびSC5b−9に結合した抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。飽和結合曲線を生成し、飽和に近い単一の濃度を、全ての抗体についてプロットし、比較した。
【0102】
図10に示すように、抗C9抗体は、基板に結合したC9を認識するが、SC5b−9を認識しない。したがって、抗C9抗体は、SC5b−9により引き起こされる組織損傷を検出し得ない。
【0103】
実施例11:新規な抗重合体C9抗体は、重合体のC9およびSC5b−9に結合する
新規な抗重合体C9抗体は、基板に結合したC9を、1.12nMの親和性で認識する。基板に結合したC9は、重合体のC9と同様の特性を示し得る。重合体のC9を人工的に作り出しているため、C9は、単量体を含む重合体として存在する場合がある。前記基板に結合したC9は、重合体のC9と共通点があり得る。重合体のC9は、活性化により生じる新規なエピトープを含む。前記新規な抗重合体C9抗体は、重合体のC9および前記SC5b−9複合体における重合体のC9に結合する。前記新規な抗重合体C9抗体は、1.12nMの親和性で、基板に結合した(重合体の)C9に結合する。これと比較して、SC5b−9に対するこの抗体の結合親和性は、585nMである。この抗体には、基板に結合したC5、C6、C7およびC8のタンパク質への結合が見られなかった。
【0104】
ヒトのC9またはSC5b−9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。ブロッキング液中で種々の濃度にした、新規な抗SC5b−9抗体(Quidel Corporation)の一定分量を、前記ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。
【0105】
基板に被覆したC5b−9およびC9に結合した新規な抗SC5b−9抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。新規な抗SC5b−9抗体は、C9およびSC5b−9の両方に高い親和性で結合した。前記親和性を、Microcal Originを使用して算出した。
【0106】
新規な抗重合体C9抗体は、585pMの親和性でSC5b−9に結合し、1120pMの親和性で重合体のC9に結合する。最大半量の結合に達するための、新規な抗重合体C9抗体の濃度として定義される、これらのデータからの見かけの結合定数は、親和性が高い。図11にデータを示す。
【0107】
実施例12:正常なヒト血清の存在下で、抗重合体C9抗体は、基板に結合したSC5b−9を検出する
図1〜11の結果は、新規な抗体が、重合体のC9の発生により生じる組織損傷を検出することを説明している。例えば、新規な抗iC3b抗体、新規な抗C3d抗体、新規な抗Bb抗体および新規な抗重合体C9抗体は、補体活性化の種々の工程において、AP活性化を検出する。新規な抗重合体C9抗体は、AP活性化の最終工程を検出する。C5b−9複合体が細胞溶解に重要であるため、重合体のC9が存在することは、組織損傷を示す。in vivoにおいて、新規な抗重合体C9抗体が重合体のC9に特異的に結合するのを確認するために、競合アッセイを行った。このアッセイでは、過剰量の正常なヒト血清を使用して、新規な抗重合体C9抗体への結合について、基板に結合したSC5b−9と競合させた。正常なヒト血清は、新規な抗重合体C9抗体の基板に結合したSC5b−9に対する結合を、生理的な血清濃度の50%の高さまで阻害しなかった。したがって、新規な抗重合体C9抗体は、in vivoにおいて、C5b−9に対して特異的であり、血清に存在する遊離の補体タンパク質には結合しない。血清中に存在するC9量は、通常、60μg/mlである。今回の研究で使用した最も高い濃度の血清は、50%であり、C9は30μg/mlに換算される。nMの条件において、それぞれに希釈して使用した血清中のC9の濃度は、422nM、253nM、126nM、42nM、25nM、12nM、4.2nM、2.5nM、1.3nM、0.42nMおよび0nMである。
【0108】
新規な抗重合体C9抗体は、新規な抗原であるSC5b−9を検出するが、抗単量体C9抗体は、SC5b−9を検出しない。このことは、前記抗重合体C9抗体が、基板に結合したSC5b−9を特異的に検出することを、示唆している。この抗重合体C9抗体は、遊離のC9または単量体のC9を認識しないため、C5b−9により生じる新規なエピトープを特異的な標的とする。抗単量体C9抗体は、遊離のC9にのみに結合し、SC5b−9を認識しない。
【0109】
このモデルにおいて、C5b−9複合体を含む組織を示すSC5b−9により、ELISAのウェルを被覆する。ついで、種々の濃度の正常なヒト血清と、固定濃度の新規な抗重合体C9抗体とにより、この被覆されたプレートをインキュベートする。前記新規な抗体は、SC5b−9に結合するであろう。したがって、前記新規な抗体は、in vivoにおいて、C5b−9に特異的であろう。
【0110】
この実験において、SC5b−9またはC9(Complement Technology)により、PBS中に(0.5μg/50μl/ウェル)として、4℃にて一晩、ポリスチレンマイクロタイタープレートを被覆した。前記タンパク質溶液を吸引した後、1.0%BSA(Sigma−Aldrich)を含むPBSにより、1時間、室温で、ウェルをブロッキングした。タンパク質で被覆していないウェルを同様にブロッキングし、バックグランド対照とした。固定濃度の新規な抗SC5b−9抗体(Quidel Corporation)を、種々の濃度の正常なヒト血清と、ブロッキング液中で混合した。室温で1時間インキュベートした後、前記ウェルをPBSで洗浄した。SC5b−9に結合した新規な抗重合体C9抗体を、1:2000で希釈した、ペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウス抗体を添加して検出した。室温で1時間インキュベートした後、前記プレートを洗浄し、100μlのTMB基質(Kirkegaard&Perry Laboratories)を添加した。室温で30分間インキュベートした後、100μlの1Mリン酸を添加して、TMB反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250、Molecular Devices)で、450nmにおいて前記プレートを読み取った。血清またはそれ以外に存在する遊離のC9は、C5b−9複合体に結合する新規な抗重合体C9抗体の特異的な結合性に、影響を与えなかったであろう。
【0111】
図12に示すように、SC5b−9に対する新規な抗重合体C9抗体の結合は、正常なヒト血清により阻害されなかった。このことは、in vivoにおいて、新規な抗重合体C9抗体を使用して、組織損傷を検出し得ることを、示唆している。
【0112】
実施例13:新規な抗重合体C9抗体は、正常なヒト血清由来の、沈着したC5b−9を検出する
新規な抗重合体抗体が、正常なヒト血清から生じる、沈着したC5b−9に結合するかを判定するために、in vitroアッセイを使用した。このアッセイにおいて、リポ多糖(LPS)で被覆したウェルを、バッファー中に50%、30%、20%、10%、8%、6%、4%および0%とした正常なヒト血清でインキュベートし、代替経路(AP)を活性化させた。LPSは、代替経路を活性化することで知られている。結果として、LPSの表面にC5b−9が生じる。抗C5抗体、抗C6抗体、抗C7抗体、抗C8抗体および抗C9抗体ならびに新規な抗重合体C9抗体を使用して、新たに沈着したC5b−9を検出した。抗C6抗体、抗C7抗体および抗C8抗体は、沈着したC5b−9を検出可能であった。さらに、新規な抗重合体C9抗体は沈着したC5b−9を検出したが、抗単量体C9抗体は沈着したC5b−9を検出しなかった。新規な抗重合体C9抗体が高い親和性でC5b−9に結合したことは、この抗体がin vivoにおいて生じるC5b−9を検出するのに、効果的であろうことを示した。
【0113】
図13に示すように、新規な抗重合体C9抗体は、正常なヒト血清の存在下であっても、特異的にC5b−9を検出した。
【0114】
実施例14:新規な抗重合体C9抗体は、病的な状態のドルーセンにおける、沈着したC5b−9を検出する
IRBの承認のもと、アイ・バンクを通じて、AMD患者から眼球を取得した。パラフィンブロックを調製し、黄斑が表示されるように、切片を切り出した。新規な抗重合体C9抗体を使用して、前記切片を染色した。図14に示すように、AMD患者由来の組織において、新規な抗重合体C9抗体は、重合体のC9の沈着によるドルーセンを検出した。したがって、正常と分類される個体には、AMDのリスクがある場合がある。
【0115】
本発明は、参照としてその好ましい実施形態を具体的に示し、記載しているが、添付のクレームに含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細において、さまざまに変更し得ることが、当業者により理解されるであろう。先の明細書において引用した、全ての特許、公報および参考文献を、参照としてその全体が本願明細書に取り込まれる。本発明を説明してきたが、以下の対象が特許請求される。
図1
図2
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図7
図8
図9
図10
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図14