特許第6110311号(P6110311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6110311導電性ペースト組成物ならびにそれらから形成される太陽電池電極および接点
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110311
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】導電性ペースト組成物ならびにそれらから形成される太陽電池電極および接点
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20170327BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20170327BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01L31/04 264
   H01B1/00 C
   H01B1/00 L
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-550537(P2013-550537)
(86)(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公表番号】特表2014-510990(P2014-510990A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】US2012021544
(87)【国際公開番号】WO2012099877
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年12月16日
(31)【優先権主張番号】61/433,706
(32)【優先日】2011年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512127176
【氏名又は名称】ヘレウス プレシャス メタルズ ノース アメリカ コンショホーケン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】モイヤー ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ファム トゥン タン
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−287678(JP,A)
【文献】 特開平02−010606(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/060341(WO,A1)
【文献】 特開2006−332032(JP,A)
【文献】 特表2010−526414(JP,A)
【文献】 特開2010−062319(JP,A)
【文献】 特開平07−302510(JP,A)
【文献】 特表2013−511132(JP,A)
【文献】 米国特許第5428249(US,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性金属粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)有機ビヒクルと、
を含む導電性ペースト組成物であって、前記導電性金属粒子が、
銀粉末と、
シェルと酸化スズ(IV)コアとを含むコアシェル粒子と
の混合物を含む導電性ペースト組成物。
【請求項2】
すべての比率が前記組成物の総重量に基づく重量%であるとき、40〜95重量%の導電性金属粒子、0.5〜6重量%のガラスフリット、および5〜35重量%の有機ビヒクルを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
べての比率が前記コアシェル粒子の総重量に基づくときに、前記銀シェルが50〜95重量%を含有し、前記酸化スズ(IV)コアが5〜50重量%を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
すべての比率が前記コアシェル粒子の総重量に基づくとき、前記コアシェル粒子が90重量%の銀シェルと10重量%の酸化スズ(IV)コアを含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
記コアシェル粒子が0.2〜20ミクロンの直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
記混合物中のコアシュル粒子に対する銀粉末の比率が95:5〜5:95である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記導電性金属粒子が、酸化スズ(IV)粉末をさらに含有し、
前記酸化スズ(IV)粉末が前記混合物の総重量に対して0.1重量%〜50重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に従う前記導電性ペースト組成物を基板に塗布し、前記ペーストを焼成して、電極または接点を形成することにより形成される工程を含む太陽電池電極または接点の製造方法。
【請求項9】
すべての比率が前記組成物の総重量に基づくとき、前記ペースト組成物が、40重量%〜95重量%の導電性金属粒子、0.5重量%〜6重量%のガラスフリット、および5重量%〜35重量%の有機ビヒクルを含有する、請求項8に記載の太陽電池電極または接点の製造方法。
【請求項10】
べての比率が前記コアシェル粒子の総重量に基づくとき、前記銀シェルが50〜95重量%を含有し、前記酸化スズ(IV)コアが5〜50重量%を含有する、請求項8に記載の太陽電池電極または接点の製造方法。
【請求項11】
すべての比率が前記コアシェル粒子の総重量に基づくとき、前記コアシェル粒子が90重量%の銀シェルおよび10重量%の酸化スズ(IV)コアを含有する、請求項10に記載の太陽電池電極または接点の製造方法。
【請求項12】
記コアシェル粒子が0.2〜20ミクロンの直径を有する、請求項8に記載の太陽電池電極または接点の製造方法。
【請求項13】
記混合物中のコアシェル粒子に対する銀粉末の比率が95:5〜5:95である、請求項8に記載の太陽電池電極または接点の製造方法。
【請求項14】
前記ペースト組成物中の前記導電性金属粒子が、酸化スズ(IV)粉末をさらに含有し、
前記酸化スズ(IV)粉末が前記混合物の総重量に対して0.1重量%〜50重量%を含有する、請求項8に記載の太陽電池電極または接点の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示の全文を参照により本明細書に組み込む、2011年1月18日出願の米国仮特許出願第61/433,706号の優先権を主張する。
【0002】
太陽電池は、光起電力効果を利用して太陽エネルギーを電気に変換するデバイスである。ソーラーパワーは持続可能であり、かつ無公害であるため、魅力的なエネルギー源である。したがって、材料費および製造原価を低く維持しながら、効率を高めた太陽電池を開発することに、現在、多くの研究が充てられている。非常に単純に言うと、太陽光の中の光子がソーラーパネルに当たると、光子はケイ素などの半導性物質によって吸収される。電子がそれらの原子から叩き出され、これによって、電子がソーラーパネルの導電性部分を通って流れ、電気を作り出すことが可能になる。
【背景技術】
【0003】
最も一般的な太陽電池は、ケイ素に、より具体的には、2つの電気接点層または電極と接続された、n型拡散層をp型ケイ素基板上に付与することにより、ケイ素から作成されるp−n接合に基づく太陽電池である。太陽電池による太陽光の反射を最小限に抑えるために、窒化ケイ素などの反射防止コーティングをn型拡散層に塗布することで、太陽電池内に取り込まれる光の量が増加される。例えば、銀ペーストを使って、格子様の金属接点が反射防止膜にスクリーン印刷されて、前面電極としての役割を果たすようにしてもよい。電池の表側または前面の上にあるこの電気接点層は、光が進入する場所であり、典型的には、完全な層ではなく、「フィンガーライン(finger line)」および「バスバー(bus bar)」から構成される格子パターンで存在する。なぜなら、金属格子材料は光に対して透過性でないためである。最後に、基板の裏側全体に、裏側の銀ペーストまたは銀/アルミニウムのペーストを塗布した後、次いでアルミニウムペーストを塗布することにより、背面接点(rear contact)が基板に付与される。次いで、この金属ペーストを金属電極に変換するために、このデバイスは高温で焼成される。典型的な太陽電池およびその製造方法の記述は、例えば、欧州特許出願公開第1 713 093号に見出すことができる。
【0004】
典型的な銀ペーストは、銀粒子と、ガラスフリット(ガラス粒子)と、有機ビヒクルとを含む。太陽電池への組成物の結合を高めるための酸化ジルコニウムまたは酸化スズなどの金属酸化物添加剤も含まれてもよい。これらの構成要素は、結果的に得られる太陽電池の潜在能力を最大活用するために、慎重に選択される必要がある。例えば、電荷担体がフィンガーラインに流れ込みバスバーに沿って流れることができるように、銀粒子とSi表面との間の接触を最大にすることが必要である。抵抗が高すぎると、電荷担体はブロックされる。したがって、接触抵抗を最小にすることが望まれる。加えて、組成物の中のガラス粒子は、反射防止コーティング層を貫通してエッチングし、結果的にAg粒子とSi表面との間に接触をもたらす。しかしながら、このガラスは、p−n接合を貫通するほどに侵略的であってはならない。公知の組成物は、銀層とSiウェーハとの境界におけるガラスの絶縁効果に起因する高い接触抵抗、および接触領域での高い再結合などの他の短所を有する。バルク銀は、ガラスの境界をいったん横断した後は、電荷担体に対して導電性経路を提供する。銀以外の導電物質は、銀ペーストのコストを削減する機会を提供するため、興味の対象である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従う導電性ペースト組成物は、
(a)導電性金属粒子と、
(b)ガラスフリットと、
(c)有機ビヒクルと、
を含み、ここで導電性金属粒子は、銀粉末と、ニッケル粉末、 酸化スズ(IV) 粉末、ならびに銀シェルとニッケルおよび/または酸化スズ(IV)のコアとを含むコアシェル粒子から成る群から選択される少なくとも1つとの混合物を含む。
【0006】
本発明に従う太陽電池電極または接点は、導電性ペースト組成物を基板に塗布し、ペーストを焼成して、電極または接点を形成することにより形成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に従う導電性ペースト組成物は、導電性金属粒子、ガラスフリット、および有機ビヒクルの3つの基本構成要素を含む。このようなペーストは、太陽電池における電気接触層または電極の形成に使用されてもよいが、このような用途に制限されるものではない。具体的には、これらのペーストは、太陽電池の前面側または太陽電池の裏面側に塗布することができる。
【0008】
この導電性ペースト組成物の中の各構成要素は、以下でより詳細に記述される。
【0009】
導電性金属粒子
導電性金属粒子は、導電性ペースト組成物中の導電金属として機能する。導電性粒子は、好ましくは、組成物の総重量に対して約40〜95重量%の量で組成物中に存在する。裏面または背面側のペーストの場合、導電性粒子の好ましい範囲は、約40〜約70重量%であるが、前面側ペーストの場合、導電性粒子の好ましい範囲は、約60〜95%である。
【0010】
銀粉末と第2の金属粉末との混合物を含む導電性粒子
導電性粒子は、銀粉末と、好ましくはニッケル粉末、銅粉末および酸化金属粉末から選択される少なくとも1つの第2の金属粉末との混合物を含み得る。第2の金属粉末は、好ましくは、混合物の総重量に対して、約0.1〜約50重量%の量で存在する。適切な酸化金属粉末としては、以下に制限されないが、SiO、Al、CeO2、TiO、ZnO、In、ITO、ZrO、GeO、Co、La、TeO、Bi、PbO、BaO、CaO、MgO、SnO、SrO、V、MoO、AgO、Ga、Sb、CuO、NiO、Cr、Fe、およびCoOが挙げられる。好ましい第2の金属粉末としては、ニッケルおよび酸化スズ(IV)(SnO)が挙げられる。銀粉末と第2の金属粉末(1種または複数種)とは、粉砕または3ロールミルや遊星型ミキサーを使った粉砕または混合などの、当該技術分野で公知の任意の適切な方法を使って組み合わせることができる。
【0011】
好ましい実施形態において、第2の金属粉末に対する銀粉末の比率は、太陽電池中の銀ペースト組成物の使用により決定される。具体的には、銀ペーストが、太陽電池の前面側(FS)または裏面側(BS)の形成のために使用されてもよい。FS銀ペーストは、前面電極として役割を果たすために、格子様の金属接点の層として塗布される。BS銀ペーストは、背面接点として役割を果たすために、太陽電池の裏面側に塗布され、続いて、アルミニウムペーストが塗布される。好ましくは、FS銀ペースト中の導電性粒子は、約75%の銀粉末と約25%の第2の金属粉末を含む。対照的に、BS銀粉末においては、導電性粒子中の第2の金属粉末の量は、最高約50%まで増加させることができる。銀ペーストを評価するには、導電性と基板への接着の2つの特性が重要である。2種類のペーストの特性要件が異なるため、BSペースト中の第2の金属粉末の可能性のある濃度をさらに高くすることが可能である。
【0012】
第2の金属粉末は、好ましくは約0.2〜約20ミクロン、より好ましくは約0.2〜約10ミクロンの粒径を有する。本明細書中に別途の断り書きがある場合を除き、本明細書中に記述される粒子の大きさはすべて、レーザ回折により測定されたd50粒径である。当業者には十分に理解されるように、d50粒径は、個々の粒子の(重量を基準とした)半分が指定の直径よりも小さくなる大きさを表す。
【0013】
銀粉末成分(薄片の形態での利用も可能)は、好ましくは、約0.3〜約10ミクロンの粒径を有する。このような直径は、太陽電池を形成するときに、適切な焼結挙動と反射防止層上への導電性ペーストの分散を銀に提供し、さらに結果的に得られる太陽電池の適切な接点形成および導電性をもたらす。銀の代わりにまたは銀に加えて、銅ならびに銀、銅、金、パラジウム、および/または白金などを含有する混合物などの他の導電性金属を利用することも本発明の範囲内である。あるいは、これらの金属の合金も、導電性金属として利用される場合がある。
【0014】
銀粉末とコアシェル粒子との混合物を含有する導電性粒子
導電性粒子は、銀粉末と、銀シェルおよびニッケル、銅または酸化金属などの、少なくとも1つの第2の金属を含有するコアを有するコアシェル粒子との混合物を含有してもよい。適切な酸化金属としては、以下に限定されないが、SiO、Al3、CeO、TiO、ZnO、In、ITO、ZrO、GeO、Co、La、TeO、Bi、PbO、BaO、CaO、MgO、SnO、SrO、V、MoO、AgO、Ga、Sb、CuO、NiO、Cr、Fe3、およびCoOが挙げられる。好ましいコア金属としては、ニッケルと酸化スズ(IV)(SnO)が挙げられる。好ましくは、銀シェルは約50〜約95重量%のコアシェル粒子を含み、ニッケルおよび/またはSnOなどのコアは約5〜約50重量%を含む。好ましいコアシェル粒子としては、約90重量%の銀と約10重量%のニッケルを含む粒子および約90%の銀と約10%のSnOを含有する粒子、より好ましくは約92%の銀と約8%のSnOを含有する粒子が挙げられる。このようなコアシェル粉末は、Ames Goldsmith Corpおよび他の金属粉末製造業者から市販されており、好ましくは、約0.2〜約20ミクロン、より好ましくは約0.2〜約10ミクロンの粒径を有している。
【0015】
混合物の銀粉末成分(薄片の形態での活用も可能)は、好ましくは、約0.3〜約10ミクロンの粒径を有する。このような直径は、太陽電池を形成するときに、適切な焼結挙動と反射防止層上への導電性ペーストの分散を銀に提供し、さらに結果的に得られる太陽電池の適切な接点形成および導電性をもたらす。銀の代わりにまたは銀に加えて、銅ならびに銀、銅、金、パラジウム、および/または白金などを含有する混合物などの他の導電性金属を利用することも本発明の範囲内である。あるいは、これらの金属の合金も、導電性金属として活用されてもよい。
【0016】
銀粉末およびコアシェル粒子は、好ましくは、混合物の総量に対して約95:5〜約5:95の比率で存在する。銀およびコアシェル粉末は、3ロールミルおよび遊星型ミキサーを使った粉砕または混合などの、当該技術分野で公知の任意の適切な方法を使って組み合わせることができる。好ましい実施形態において、コアシェル粒子に対する銀粉末の比率は、太陽電池中の銀ペースト組成物の使用により決定される。好ましくは、FS銀ペースト中の導電性粒子は、約75%の銀粉末と約25%のコア/シェル粒子とを含有する。対照的に、BS銀粉末においては、導電性粒子混合物中のコア/シェル粒子の量は、約50%ほどまで増加されてもよい。銀ペーストを評価するには、導電性と基板への付着の2つの特性が重要である。2種類のペーストの特性要件が異なるため、BSペースト中のコア/シェル粒子の可能な濃度をさらに高くすることが可能である。
【0017】
第2の金属粉末(ニッケルおよび/または酸化スズ(IV)など)およびコアシェル粒子(銀シェルと、ニッケルおよび/または酸化スズ(IV)とを含有するコアを含むものなど)の両方と組み合わせた銀粉末を含有する導電性粒子を活用することも、本発明の範囲内である。このような粒子は、したがって、銀粉末、第2の金属粉末(1種または複数種)、およびコアシェル粒子の少なくとも3つの成分から成る混合物である。
【0018】
ガラスフリット
ガラスフリット(ガラス粒子)は、導電性ペースト組成物中で無機結合剤として機能し、焼成の間に基板の上へ銀を堆積させるための輸送媒体として作用する。このガラス系は、基板の上へ堆積される銀のサイズおよび深さを制御するために重要である。ガラスがペースト組成物に所望の特性を与えることができる限り、具体的なガラスの種類は重要ではない。好ましいガラスとしては、ホウケイ酸鉛およびホウケイ酸ビスマスが挙げられるが、他の無鉛ガラス、例えばホウケイ酸亜鉛も適切であろう。このガラス粒子は、好ましくは約0.1〜約10ミクロン、より好ましくは約5ミクロン未満の粒径を有し、かつ、好ましくは、ペースト組成物の総重量に対して約0.5〜約6重量%、より好ましくは約5重量%未満の量で組成物中に含有される。このような量は、この組成物に適切な接着強度および焼結特性を提供する。
【0019】
有機ビヒクル
粒子状の有機ビヒクルまたは結合剤は重要ではなく、当該技術分野で公知の有機ビヒクルもしくは結合剤またはこの種の応用のために開発されるべき粒子状有機ビヒクルもしくは結合剤とすることができる。例えば、好ましい有機ビヒクルは、セルロース樹脂および溶媒、例えばテルピネオールなどの溶媒の中のエチルセルロースなどを含有する。この有機ビヒクルは、好ましくは、組成物の総重量に対して約5〜約35重量%の量で導電性ペースト組成物中に存在する。より好ましくは、前面側ペーストは約5〜約20%の有機ビヒクルを含有し、裏面側ペーストは約15〜約35重量%の有機ビヒクルを含有する。
【0020】
導電性ペースト組成物中に添加剤を含むことも、本発明の範囲内である。例えば、増粘剤(粘着剤)、安定剤、分散剤、粘度調節剤などの化合物を単独でまたは組み合わせて含むことが望ましい場合がある。このような成分は当該技術分野で十分に知られている。このような成分を含む場合、それらの量は所望される導電性ペーストの特性に応じて、定められた実験により求めることができる。
【0021】
導電性ペースト組成物は、当該技術分野で公知またはこれから開発されるペースト組成物を調製するための任意の方法によって調製することができ、調製方法は重要ではない。例えば、ペースト成分をミキサーなどを使って混合してもよく、その後、例えば3ロールミルを通過させて、分散した均一のペーストを作ってもよい。
【0022】
続いて、このようなペーストを利用して、太陽電池上に接点および電極を形成してもよい。前面側ペーストは、スクリーン印刷などによって基板上の反射防止膜に塗布し、次に焼成して、ケイ素の基板上に電極(電気接点)を形成してもよい。裏面側ペーストは、スクリーン印刷などによって基板の裏面に塗布し、これに続いてアルミニウムペーストを塗布し、次に焼成してもよい。このような製造方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、欧州特許出願公開第1 713 093号に記述されている。
【0023】
以下では、本発明の実施形態について、下記の非制限的な例と組み合わせて記述する。
【実施例】
【0024】
実施例1:前面側ペースト中の添加剤の濃度の変動
Heraeus Materials Technology LLC(W.Conshohocken,PA)から市販されている銀導電性ペースト、SOL952の成分(銀粉末、ガラス、添加剤および有機物)を組み合わせることにより、6種類の導電性ペーストを調製した。それぞれのペーストにおいて、純粋な銀粉末の一部を銀と第2の金属添加剤との混合物で置換した。ペーストA、CおよびEは、SnO粉末と銀粉末との混合物を含有し、ペーストB、DおよびFはニッケル粉末と銀粉末との混合物を含有した。Ag/Ni粉末混合物は、10重量%のNiおよび90重量%のAgを含有し、1.5g/cmのタップ密度、1.6m/gの表面積、および0.3ミクロンのD50を有していた。Ag/SnO粉末は、8重量%のSnOおよび92重量%のAgを含有し、1.6g/cmのタップ密度、0.8m/gの表面積、および0.3ミクロンのD50を有していた。この混合物の粒子は、Ames Goldsmith Corp(South Glen Falls,NY)から購入した。A〜Fのペーストは、銀/添加剤混合物を次のように異なる量で含有しており、8%(ペーストAおよびB)、16%(ペーストCおよびD)、25%(EおよびF)であり、すべての量は、結果として得られたペーストの総重量比に基づいている。
【0025】
次の手順で6種類の太陽電池を調製した。メタライゼーションの用意ができている(ready−to−be metalized)P型多結晶性(mc)ケイ素ウェーハの裏側に、アルミニウムペースト(RuXing 8252X)を印刷し、150℃で乾燥した。ペーストA〜Fから選択される銀ペーストをウェーハの表側に塗布し、印刷し、150℃で乾燥した。次に、これらの電池を、加熱炉の中で、750〜800℃の最高温度で数秒間、同時焼成した。4つの太陽電池をペーストA〜Fの各々を使って調製した。さらにもう1つの種類の太陽電池を市販の銀ペーストSOL952(コア/シェル粒子を含有していない)を使って対照として調製した。
【0026】
結果的に得られた太陽電池をI−Vテスターを使用して試験した。既知の強度の太陽光を模擬するためにI−Vテスターの中のXeアーク灯を使い、太陽電池の前面部を照射してI−V曲線を生成した。この曲線を使って、電気的性能比較を提供する、この測定方法に共通する、短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、シャント抵抗(Rsh)、直列抵抗(Rs)、およびエネルギー変換効率(Eff)を含む、様々なパラメータを決定した。
ペーストA〜Fを使って調製した電池、ならびに比較電池についての電気性能データを以下の表1に示してある。表の中の各値は、4つのデータセットの平均を表す。ニッケルおよびSnOはどちらも銀より低い導電性を有することを見ることができるが、電気性能が純粋な銀を含有する組成物に確実に匹敵するように第2の金属粉末の制御された量だけを組成物中に含むことができる。
【0027】
実施例2:裏面側ペーストでのコア/シェル付加剤濃度の変動
Heraeus Materials Technology LLC(W.Conshohocken,PA)から市販されている銀導電性ペースト、CL80−9418の成分(銀粉末、ガラス、添加剤および有機物)を組み合わせることにより、4種類の導電性ペーストを調製した。それぞれのペーストにおいて、純粋な銀粉末の一部を、Ames Goldsmith Corp(South Glen Falls,NY)から市販されている金属コアでコーティングされた銀で置換した。2つの粉末(MおよびN2)は銀でコーティングされたNiを含有し、2つの粉末(PおよびR2)は銀でコーティングされたSnOを含有した。AgでコーティングされたNi粉末は、10重量%のNiおよび90重量%のAgを含有し、1.5g/cmのタップ密度、1.6m/gの表面積、および1.4ミクロンのD50を有していた。AgでコーティングしたSnO粉末は、8重量%のSnOおよび92重量%のAgを含有し、1.6g/cmのタップ密度、0.8m/gの表面積、および2.6ミクロンのD50を有していた。MおよびPの粉末では、十分な量の市販されている粉末をコアシェル粒子で置換し、結果的に得られた粉末中の銀の50%がコアシェル粒子に由来した。N2およびR2の粉末では、十分な量の市販されている粉末をコアシェル粒子で置換し、結果的に得られた粉末中の銀の33%がコアシェル粒子に由来した。
【0028】
ペーストを、メタライゼーションの用意ができているP型多結晶性(mc)ケイ素ウェーハの裏側に塗布した後、アルミニウムペースト(RuXing 8252X)を塗布し、150℃で乾燥した。Heraeus Materials Technology LLC(W.Conshohocken,PA)から市販されている銀ペースト、9235HLをウェーハの表側に塗布し、150℃で乾燥した。次に、これらの電池を、加熱炉の中で、750〜800℃の最高温度で数秒間、同時焼成した。4つの太陽電池をペーストM、N2、PおよびR2の各々を使って調製した。さらにもう1つの種類の太陽電池をCL80−9418銀ペースト(コア/シェル粒子を含有していない)を使って対照として調製した。
【0029】
電池の接着を評価するために、半田でコーティングした銅線(幅2mm、太さ200μm)を太陽電池に半田付けし、半田接合部を作った。接合部に融剤を塗布し、銅線を太陽電池に半田付けした。半田ゴテを使って、半田を加熱し、銀のバスバーに半田を流れさせた。銅線を約10インチの長さに切断し、6インチの太陽電池の一方の端に4インチのリードが垂れ下がるようにした。銅のリード線を力計測器に接続し、電池を一定の速度で力計測計から離れる方向に移動するステージにはり付けた。コンピュータを力計測器に接続し、瞬間力を記録した。半田接合部に対して180°の角度で線を引っ張ることにより、半田接合部の製作から1日後および7日後に接着を測定した。複数のデータポイントを収集し、平均接着データを表2に示す。
【0030】
太陽電池の電気性能も、I−Vテスターを使って評価した。既知の強度の太陽光を模擬するためにI−Vテスターの中のXeアーク灯を使い、太陽電池の前面部を照射してI−V曲線を生成した。この曲線を使って、電気的性能比較を提供する、この測定方法に共通する、短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、曲線因子(FF)、シャント抵抗(Rsh)、直列抵抗(Rs)、およびエネルギー変換効率(Eff)を含む、様々なパラメータを決定した。
【0031】
M、N2、PおよびR2の粉末を使って調製した電池、ならびに比較電池の電気性能データが、以下の表3に示されている。表の中の各値は3つのデータセットの平均を表す。電気的な結果は、統計的な観点から、対照および実験ペーストについて同等であると見ることができる。SnOおよびNiコア/シェル粉末の添加は、電池の直列抵抗にほとんど影響を及ぼさない。接着の結果は、SnOおよびNiコア/シェル粉末が接着を低下させることを示している。しかしながら、これらの結果は、良好な接合部の接着を提供するためのそれらに内在する限界からよりも、この試験で用いられた表面積および粒子のサイズにより大きく影響される。
【0032】
上記の実施形態の幅広い独創的な技術思想から逸脱することなく、上記の実施形態に変更を加えることが可能であることは、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明は開示された特定の実施形態に限定されず、改変物を、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲の中に包含することが意図されているということが理解される。
【0033】
前面銀ペーストにおける異なるAg/添加剤混合物粒子の比較
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
裏面側銀ペーストにおける異なるコア/シェル粒子の比較
【表3】